判例検索β > 平成18年(あ)第99号

祈とう師悪霊ばらい集団殺害事件

傷害致死,殺人,殺人未遂被告事件
事件番号平成18(あ)99
事件名傷害致死,殺人,殺人未遂被告事件
裁判年月日平成20年9月16日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁集刑 第295号71頁
原審裁判所名仙台高等裁判所
原審裁判年月日平成17年11月22日
判示事項死刑の量刑が維持された事例(祈とう師悪霊ばらい集団殺害事件)
裁判日:西暦2008-09-16
情報公開日2017-10-17 13:54:58
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主文
本件上告を棄却する
理由
弁護人高澤文俊,同高橋正俊の上告趣意のうち,死刑制度に関して憲法13条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度がこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
付言すると,本件各犯行時における被告人の完全な責任能力を肯定した原判断は,正当として是認することができる。
また,本件は,祈とう師として活動していた被告人が,自宅で共同生活を送っていた信者らと共謀の上,2名の信者に対し,ほぼ並行的に,1か月近くの間,悪霊を追い払うための儀式的な行為として,御用と称した上,それぞれ連日のように数時間ずつ断続的に,顔面,大腿部,頭部,背部等を手けんや太鼓のばち等で多数回殴打し足げにするなどの暴行を加え,両名を打撲等の傷害に基づく挫滅症候群により死亡させたという各傷害致死と,その後,5か月足らずの間に,別の信者5名に対し,やはり他の信者らと共謀の上,順次あるいは並行的に,いずれも殺意をもって,同様の暴行を加え,うち4名を同様に死亡させて殺害し,最後の1名については傷害を負わせるにとどまったという各殺人及び殺人未遂の事案である。いずれにおいても多人数で長期間にわたり執ような暴行を加え続けた各犯行の態様は,なぶり殺しともいえる陰惨なものであり,6名もの命を次々に奪った結果は誠に重大である。被告人にすがりながら,救われることなく命を失った被害者らの苦痛,無念さは察するに余りあり,本件で両親又はその一方を失った子供たちの前途も案じられる。被害者らの遺体が部屋に寝かされて腐敗するままに放置されていたことなどもあり,遺族らの被害感情は極めて厳しい。宗教的集団による事件として本件が社会に与えた影響も非常に大きい。
被告人は,自らを神ないし神の使いであるとする宗教的な集団を形成し,その絶対的な力を背景に,利己的で酌量の余地のない動機に基づいて,特定の信者を次々に標的に選び出した上,自ら,あるいは共犯者となった他の信者に命令して,上記のような暴行を加え,被害者らを死に至らしめ,あるいは殺害したのであり,その刑事責任は,共犯者らに比較して際立って重い。しかも,被告人は,公判廷において,当時は宗教的な確信のために被害者らの死についての認識もなかったなど,不合理な弁解をして自己の刑責を免れようとしており,十分な反省の情が認められない。
このような諸事情に照らすと,本件各犯行について被告人の宗教的確信の影響があったことは否定できないこと,被害者らが必ずしも被告人らの暴行から逃げようとしていなかったこと,前科がないことなど,被告人のために酌むべき情状を十分考慮しても,被告人の罪責は誠に重大であり,被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。検察官渋佐愼吾
(裁判長裁判官
田原睦夫

公判出席
藤田宙靖

裁判官

裁判官

堀籠幸男

近藤崇晴)
裁判官

那須弘平

裁判官

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