判例検索β > 平成19年(あ)第1317号

静岡大学生強殺事件

公務執行妨害,器物損壊,銃砲刀剣類所持等取締法違反,住居侵入,殺人,強盗殺人被告事件
事件番号平成19(あ)1317
事件名公務執行妨害,器物損壊,銃砲刀剣類所持等取締法違反,住居侵入,殺人,強盗殺人被告事件
裁判年月日平成20年9月29日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁集刑 第295号135頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審裁判年月日平成19年6月14日
判示事項被殺者2名の殺人,強盗殺人等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(静岡大学生強殺事件)
参照法条刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
裁判日:西暦2008-09-29
情報公開日2017-10-17 13:54:57
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主文
本件各上告を棄却する
理由
検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であり,弁護人小川秀世,同前田裕司の上告趣意のうち,刑法240条後段の憲法違反をいう点は,同条後段所定のような法定刑を定めることは立法政策の範囲内にとどまる問題であって憲法適否の問題ではないから,前提を欠き,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論にかんがみ,被告人の量刑について,職権で判断する。
本件は,被告人が,(1)敬愛していた年長の女性ががんで死亡したことから,その治療に当たっていた医師への復しゅうを企て,医師を殺害する目的で医師が住む診療所の建物に侵入したが,医師が見付からなかったため,同建物内の健康関連商品販売店にいたA(当時60歳)及びB(当時57歳)に医師の所在を確認するなどしたところ,医師は不在でしばらく戻らないことが分かり,医師を殺害する目的を遂げるためには,被告人が医師をねらっていることを知った被害者両名の口を封じるため殺害するほかないと決意し,Bの頸部を絞め付けるなどして気絶させた上,所携のナイフ様の物でその前頸部を切り裂き,失血死させて殺害し,さらに,行きずりの強盗犯人の犯行であると見せ掛けようと考え,建物内を物色した状況を作り出すとともに,現金を強取しようと企て,殺害前にBに命じて手足を緊縛させていたAの頸部を絞め付けて気絶させた上,前記ナイフ様の物でその前頸部を切り裂き,失血死させて殺害し,A殺害と相前後して,上記販売店のレジスター内等から現金合計約6万6000円を強取したという,住居侵入殺人強盗殺人の事案,(2)その際,刃体の長さ約8.3㎝のナイフを携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案,及び,(3)警察官から上記(1)の事件について取調べに応じるよう説得されていた際に行った公務執行妨害器物損壊の事案である。量刑の中心となる上記(1)の犯行について見るに,医師に対する復しゅうを遂げるという目的のために,全く関係のない被害者2名を殺害したという理不尽な動機に酌量の余地はなく,犯行の態様は冷酷かつ残虐であって,結果も甚だ重大である。遺族の処罰感情は厳しく,本件が社会に与えた影響も大きい。これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は誠に重大であって,被告人に対しては,死刑を選択することも十分に考慮されるところである。
しかし,他方において,強盗殺人については当初から財物奪取を意図していたものではないこと,あらかじめ被害者両名の殺害を計画したものではないこと,被告人が,自らが犯人であることを認め,反省悔悟の態度を示すに至っていること,若年で前科,前歴がないこと,過大に評価すべきではないものの,その不遇な生育歴が犯行の決意につながる被告人の偏った価値観等の形成に少なからぬ影響を与えている可能性を否定できないことなどの事情が認められる。
そうすると,以上のような事情を酌んで被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は,これを破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官
田原睦夫

那須弘平

裁判官

裁判官

藤田宙靖

近藤崇晴)
裁判官

堀籠幸男

裁判官

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