判例検索β > 平成19年(行コ)第9号
休業補償不支給処分取消請求控訴事件(通称 札幌東労基署長休業補償不支給処分取消)
事件番号平成19(行コ)9
事件名休業補償不支給処分取消請求控訴事件(通称 札幌東労基署長休業補償不支給処分取消)
裁判年月日平成19年10月19日
裁判所名札幌高等裁判所
分野労働
裁判日:西暦2007-10-19
情報公開日2017-10-19 19:11:37
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主1
本件控訴を棄却する

2文
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
札幌東労働基準監督署長が,控訴人に対して平成14年7月22日付けでした労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。

3
札幌東労働基準監督署長が,控訴人に対して平成15年4月11日付けでした労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。

4
第2
1
訴訟費用は,第1,第2審とも被控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は,株式会社北海道銀行(以下訴外銀行という。)の従業員であった控訴人が,在職中の過重な業務が原因でうつ病を発症し,その後増悪したことにより退職を余儀なくされたとして,札幌東労働基準監督署長に対し,労働者災害補償保険法(以下労災保険法という。)に基づく休業補償給付の支給を請求したところ,平成14年7月22日付け及び平成15年4月11日付けでそれぞれ同署長から同給付を支給しない旨の処分(以下,それぞれ平成14年処分平成15年処分といい,併せて本件各処分という。)を受けたため,それらの取消しを求める訴えを提起したところ,原審がいずれの請求も棄却したので,控訴人が控訴の趣旨の裁判を求めて控訴した事案である。
2
事実及び争点(当事者の主張)は,原判決書事実及び理由欄の第2事案の概要の1る事実,2前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められ争点及び3争点に対する当事者双方の主張に各記載
のとおりであるから,これを引用する。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求をいずれも棄却するのが相当であると判断する。その理由は,以下のとおり訂正,加入をするほかは,原判決書事実及び理由欄の第3当裁判所の判断に記載のとおりであるから,これを引用す
る。
(1)

原判決書19頁1行目の)から同頁3行目末尾までを

。ただし,甲9,乙2,12ないし18,控訴人本人は,以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実経過につき以下の事実を認めることができ,この認定事実に反する証拠は採用しない。

に改める。(2)

原判決書19頁4行目の174頁の次に

。なお,以下において,乙2,3の頁は,それぞれの証拠に付された頁である。

を加入する。(3)

原判決書20頁4行目の平成10年を平成9年に改める。

(4)

原判決書23頁26行目の

少なかった。

それほど多くはなかった。

に改める。
(5)

原判決書25頁26行目末尾の次に,以下を加入する。

(5)審査請求時,再審査請求時の控訴人の主張等ア平成14年7月26日の審査請求時の控訴人の主張控訴人は,平成14年7月26日,平成14年処分に対する審査請求をしたが,その際,災害の原因及び発生状況として,おおむね①平成10年4月1日付けの名寄支店から野幌支店への人事異動の前後の長時間の時間外労働により発病したこと,②同年8月の休暇願いが認められなかったこと,③同年10月9日には,上司から,翌週から休暇を取るようにいわれたが,退職させられると考えて同月12日に出勤したところA支店長とB支店長代理により自宅に連れ戻されたこと,④同月26日からの出勤を命じられて出勤すると,医師から係を換えない方が良い旨言われたことを伝えてあったにもかかわらず,融資係から営業係に係換えとなり,その後,C支店長代理から怒鳴られたり,名指しで応接室に呼ばれて説教されたりし,また雑用や新入行員の面倒を見させられる等したことなどを掲げていた。イ平成14年11月11日の再審査請求時の控訴人の主張控訴人は,平成14年11月11日,平成14年処分に対する審査請求を棄却した決定に対し,再審査請求をしたが,その際,災害の原因及び発生状況として,おおむね①名寄支店にいた平成8年4月から直属の支店長代理がD代理に替わったが,同人が係の男子行員と折り合いが悪く,主任であった控訴人は,一般行員との間に挟まって心理的負担を強いられたほか,自分の仕事以外に本来D代理が行うべき仕事も,支店長からの直接の指示に基づいて行っていたこと,②D代理が超勤時間について,控訴人が苦情を言っていると支店長に伝えたが,そのような事実がないことを支店長面接で説明したこと,③平成9年4月にE支店長に交代し,D代理と二人で控訴人のことを悪く言っているので気を付けた方が良いと顧客から言われたこと,④同年10月には,上記二人による嫌がらせがピークに達し,支店長から退職を強要される等心理的負荷もピークに達してきたこと,⑤平成10年4月の異動の際,業務を引き継ぐべき者が3名いたが,通常は行わない3名同行での挨拶回りをしたことや,異動直前まで顧客に異動の事実を告げないようにいわれていたこと,引継書の量が多かったこと,⑥同月の野幌支店への異動後も過重な相談業務をこなしていたことのほか,⑦上記ア②ないし④(ただし,ア④の係換えは控訴人を監視するためのもので入行1年目にするような業務であって,精神的苦痛を受けたと主張している。)と同様の事実を掲げていること,⑧A支店長,B支店長代理の取った行動により,精神的苦痛が計り知れないものになったことなどに加え,⑨本店事業部でも忙しかったが心身に異常はなく,名寄支店勤務を経て野幌支店に転勤する間際から急に時間外労働が多くなったことが原因であること,⑩業務以外に他の原因はないことなどを掲げていた。ウ平成15年4月18日の審査請求時の控訴人の主張控訴人は,平成15年4月18日,平成15年処分に対する審査請求をしたが,その際,災害の原因及び発生状況として主張したのは,上記イ①ないし⑧とほぼ同様の事実であった。エ平成15年8月20日の再審査請求時の控訴人の主張控訴人は,平成15年8月20日,平成15年処分に対する審査請求を棄却した決定に対し,再審査請求をしたが,その際,再審査請求の理由として,具体的な事実関係は主張せず,自己の意見を中心に述べたが,その中で,①診断書どおりの休暇を認めていれば,症状が軽快・完治した可能性があったこと,②上記ア③④の事実のため,心理的負荷が強かったこと,③退職を強要されたことなどを主張していた。を加入する。

(6)

原判決書26頁1行目の(5)を(6)に改める。

(7)

原判決書27頁16行目の単に「聴取書という。」の次に

F代理の聴取書は,乙2の77頁ないし84頁,15。以下,単に「乙15

という。」を加入する。
(8)

原判決書27頁26行目の一方,の次に控訴人が,このような退行時刻を手帳に記載して時間外労働の時間を管理しようとしていたことに照らせば,を加入する。(9)

原判決書32頁22行目のとどまり,の次に控訴人の服装等への意見等はあったものの,を加入する。(10)

原判決書添付別表2の認定欄の各E・Fの供述記載等をいず

れもA・Fの供述記載等に改める。
2
なお,控訴理由にかんがみ,付言する。

(1)

時間外労働時間の認定について
控訴人は,控訴人の時間外労働時間について,控訴人の手帳(甲7)は,控訴人の覚書程度のものであって,退行時刻が記載されていないものも存在するとして,上記認定の時間外労働時間より更に多くの時間外労働時間があると主張する。


しかしながら,控訴人の手帳(甲7)はかなり細かく記載されており,わざわざ時間外労働の管理をしようとしていた控訴人が記載していないものについては,他に客観的な証拠もないのであるから,これを認めることはできない。


控訴人は,名寄支店での転勤間際の時間外労働について,持ち帰り仕事として,引継書のほか,ドッジファイルを作成しなければならなかったと主張し,その旨記載した陳述書(甲9)を提出するが,厚さ5センチメートルにも及ぶドッジファイル自体が証拠として提出されておらず,その具体的な記載内容の詳細が必ずしも明らかではない上,転勤は必ず予定されており,その場合には引継書に加えて,控訴人の主張によれば大部のドッジファイルも作成する必要があるというのであるから,転勤を命じられるまでドッジファイルを一切作成していなかったとはいえず(この点は控訴人も尋問の際で認めている。),これを,異動の通知があってから作成したとの客観的証拠もなく,作成に多くの時間を要したとは考え難いから,控訴人の主張を認めることはできない。


控訴人は,野幌支店での時間外労働も,始業時刻については,控訴人は午前7時20分であると主張するものの,これを認めるに足りる客観的証
拠はなく,かえって,控訴人を自車に乗せて出勤していたF代理が,その聴取書(乙15)においておおむね午前8時ころまでには野幌支店に着いていたと述べていることに照らせば,これを認めることができない。また,退行時刻についても,控訴人は,平成19年4月15日以降,自身の手帳(甲7)には退行時刻の記載をしていないところ,連日午後10時,11時まで時間外労働した旨主張するが,控訴人の陳述書(甲9)でも,退行時刻は原審において陳述された控訴人準備書面(4)に添付の労働時間集計表のとおりであり,同表は手帳(甲7)に記入されたものを基にして作成したとの記述はあるものの,具体的な帰宅方法や帰宅時刻についての言及はなく,平成14年8月22日付けの控訴人の聴取書(乙2の254頁ないし260頁)において,控訴人の妻の家計簿に帰宅時刻のメモがあると述べるものの,証拠としては提出されていないこと,かえって,A支店長の聴取書(乙2の71頁ないし76頁,14)やF代理の聴取書(乙15)で,退行時刻は必ずしもF代理とは一緒ではなく,時間外労働も2時間程度であったと述べられていることに照らせば,控訴人の主張するような時間外労働が続いていたとは認められない。
さらに,控訴人は,ほとんどF代理と一緒に退行していたと主張するが,仮にそうであったとしても,F代理の退行時刻が明らかではない上,Gの聴取書(乙2の89頁ないし93頁,17)によれば,控訴人が,業務を遂行しながらF代理の退行を待っていたとまではいえないから,このことが,控訴人の退行時刻を左右するものとはいえない。

控訴人は,持ち帰り残業や休日残業も行っていたと主張し,控訴人の手帳(甲7)にその旨の記載がないのは,あらかじめ計画できないものであり,平日の残業が記載されていないのと同様に,記載のないことによって残業がなかったとはいえない旨主張するが,そもそも,控訴人は,業務の過重性をいうために,時間外労働があったことを立証すべき立場にあると
ころ,控訴人の供述等以外に,これを認めるに足りる客観的証拠はない。また,当時の野幌支店での融資事務管理表や個人ローン受付件数を記載した一覧表(乙2の272頁,273頁)においても,控訴人の業務量は,平成10年4月における野幌支店での融資取扱件数が平成9年4月や平成11年4月に比しても多いとはいえず,控訴人が反映されていないと述べる相談業務についても,午前9時から午後3時までの窓口が開いている時間以外にこれがあるとは考え難いから,控訴人の業務量が多くの時間外労働をするほどの客観的状況にあったと認めることはできない。
さらに,休日の残業については,その作業内容が客観的に明らかになっておらず,その作業内容も控訴人の手帳(甲7)に記載されておらず,かえって私用が予定されていることなどが認められるから,控訴人の主張するような残業を自宅で行ったとも認めることはできない。

控訴人は,接待や飲み会への出席についても時間外労働として認められるべきである旨主張するが,飲み会への参加等は,必ずしも業務の一環と認めることはできない上,控訴人の手帳(甲7)に退行時刻が記載されている時期においても,その参加時間や終了時間のメモもなく,控訴人においてもこれを業務の一環と認識していたとはいえないから,これを認めることはできない。

(2)

名寄支店勤務時の状況について
控訴人は,名寄支店のE支店長やD代理からのいじめの事実が認定されていないと主張する。
しかしながら,控訴人の主張によっても,D代理からの指示が,業務上のものであったとすれば,いじめ等に当たらないのは当然であること,上司と折り合いが悪かったことは認められるものの,そもそもこのことについて控訴人が問題視し始めたのは,平成14年11月11日付けの平成14年処分の再審査請求の時からであり,それまでは,平成14年処分に対
する審査請求時にも,本店事業部での忙しさは問題にしながらも,名寄支店での問題点については触れていないこと,控訴人は平成13年11月5日付けの聴取書(乙2の63頁ないし65頁,乙12)でも野幌支店への転勤までは心身共に健康であったと述べ,平成14年8月22日付けの聴取書(乙2の254頁ないし260頁)でも,名寄支店のE支店長に対する不満等を述べるものの,精神的には何もなかったと述べるなどしていること(控訴人は,上記の聴取の機会に他の問題点については述べているのであるから,体調が十分でなかったために言いたいことがいえなかったとは認められない。)を考えると,控訴人自身もいじめのような状況があったとまでは認識していなかったと認められるから,控訴人がE支店長やD代理からいじめを受けていたとは認められない。

転勤時の業務について
控訴人は,ドッジファイルや挨拶回りについて考慮が十分でないと主張するが,上記(1)ウのとおり,ドッジファイルの作成に相当量の時間を要すると認めるに足りる証拠はなく,挨拶回りについても,一般に,後任者を同行して挨拶回りをすることはあり,転勤時の業務として,特に過重なものであるとは認められない。


D代理の業務の代行について
控訴人は,控訴人の行っていたD代理が行うべき業務につき,支店長からD代理をサポートするよう要請されて行ったのであり,単なる補佐ではなく代行であったから,控訴人は,自分の業務とD代理の業務の両方を行っていたと主張する。
しかしながら,このような要請があったとしても,控訴人の主張するとおり,控訴人がD代理の業務を肩代わりするものであったとすれば,D代理は,自らの職責を果たしていないことになるのであり,支店長からの要請も飽くまでサポートであるから,業務の代行をすることまでの要請を受
けたとは認め難い。確かに,控訴人が,一定の業務について,D代理が行うべき業務も行ったことは認められるものの,大した時間外労働も行った様子もなく,上記の検討からすれば,D代理の業務を代行したとまではいえず,その業務も過重であったとはいえない。
(3)

野幌支店での業務内容について
本部検査について
控訴人は,本部検査につき,自分が立会いをして,対応する場面も多かった旨主張する。
しかしながら,控訴人は,異動してきたばかりであり,主体的な説明者として不適切であったと考えられるところ,控訴人が立ち会っていた可能性は否定できないものの,主体的に対応したとは考え難く,また,3日目と4日目が忙しい状況であったとの事実を認めるに足りる十分な証拠はなく,4日目の控訴人の退行時刻も午後9時であって,他の業務も抱えながら対応した控訴人の時間外労働としては,それほど遅い時間であったともいえないから,検査の対応が多かったとまではいえない。


融資業務について
控訴人は,融資業務が多かったと主張し,特に相談業務について全く考慮されていない旨主張する。
しかしながら,相談業務は,融資実行の前提であって,融資実行が多く見ても3件しかない状況を考えれば,相談業務自体は,融資係の通常の業務であると考えられること,融資実行に至らない場合の業務内容としてそれほど多くの時間を要するとは考え難いことなどに照らして,控訴人の融資業務が忙しかったと認めることはできない。


研修の必要性
控訴人は,研修が必要ではなかったとはいえないと主張するが,研修は主に機械端末の操作に関するものであると認められるところ,控訴人も認
めるとおり,必ず研修が行われるものではなく,また,機械端末の操作もさることながら,控訴人は実質的な融資の判断に迷っていたこともうかがわれるから,中堅行員である控訴人に,必ずしも研修が必要であったと認めることはできない。
(4)

控訴人に対して療養が認められなかったり,退職の強要がなされたこと
について
控訴人は,平成10年8月18日に療養を申し出たが認められなかった旨主張する。
確かに,控訴人は,同日付けの診断書を得て,それには

病状は不安定で9月末までの自宅療養を要す。

との記載があることが認められるものの,それまでも控訴人が心因反応等を理由に欠勤を繰り返しており,訴外銀行がその欠勤をとがめたり,欠勤をしたことで控訴人に不利益が生じたような事情はうかがわれないし,その後に控訴人から短期間でも欠勤の申出がなされたような状況も見受けられず,控訴人が出勤してきたのに,控訴人の様子を見て,仕事をすることは無理と判断し,控訴人を自宅に送り届けた同年10月12日のA支店長らの対応に照らせば,控訴人が主張するような申出があったとは認められない。
また,退職の強要についても,控訴人は,配置換えをしないように医師から言われたことを支店長に伝えていたのにこれを行ったことが実質退職の強要に当たると主張するが,そもそも配置換えをしないようにすべきであることを,控訴人が医師の発言として支店長らに伝えていたことを認めるに足りる客観的証拠はなく,そして,配置換えには,原判決のとおり,控訴人の病状からやむを得ない事情が認められるのであり,これを退職の強要であると認めることはできない。さらに,控訴人は,同年10月12日に,控訴人が自宅に戻された時に退職の強要があったとも主張するが,支店長らから,退職を強要するような具体的な文言が発せられたわけではないこと(控訴人本人),同日の控訴人の妻の家計簿(甲6)の同日欄にはしょうげきの1日です…との記載は見られるが,退職を求められたような記載はなく,あしたからまたウチにいるそうですとの記載や,翌日には控訴人の妻がエステに出掛けていることの記載が見られ,控訴人方で,控訴人が退職になるとの認識を有し,深刻な事態になっている様子はうかがえないことに照らせば,同日に退職の強要があったとも認められない。
(5)

精神疾患の業務起因性について
控訴人は,業務起因性の判断基準につき,労働の過重性と疾病・病気の発症・増悪との間には,通常,相当因果関係が認められる(あるいは事実上推定される。)とする最高裁判決があり,業務起因性の立証責任を転換して,相当因果関係がないことを被控訴人が立証すべきであると主張するが,労働の過重性については,これまでの検討から,控訴人の業務に特段の過重性が認められないから,事実上の推定の前提がないこと,立証責任の転換については,独自の見解であってこれを採用できないから,控訴人の主張は理由がない。


心理的負荷による精神障害の業務上外の判断要件について,控訴人は,総合的判断をすべきである旨主張する。この点については,原判決においても,控訴人の業務を一体として検討しており,総合的な判断をしているといえるから,控訴人の主張は原判決を正しく理解していないというべきである。


控訴人は,控訴人の業務起因性の判断について,原判決において,事実認定に誤りがあったと主張する。
しかしながら,(ア)控訴人の時間外労働時間について,原判決の認定に誤りがないことは上記(1)で検討したとおりであること,(イ)仕事の量・質の変化についても,控訴人が,名寄支店でD代理の業務の代行をしていたとは認められず,野幌支店での業務も特段過重であるとは認め難いこと,(ウ)職場の人間関係においても,名寄支店ではいじめと評価すべき状況はなく,控訴人自身も精神的な問題が生じていない旨述べていること,(エ)野幌支店において,申し出た療養が認められなかったとはいえないこと,(オ)野幌支店で,退職強要や配置転換による心理的負荷があったとまでは認められないこと等に照らせば,控訴人に強度な心理的負荷が掛かったとはいえない。
控訴人は,業務起因性の判断基準に照らして,控訴人に生じた事象を総合的に判断すれば,基準のⅢと評価すべきであると主張するが,基準のⅡに該当する出来事が複数あり,時間的に接近しているとしても,基準のⅢに該当することになるわけではない。
よって,控訴人の主張は理由がない。
3
以上によれば,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官

末永
裁判官

千葉和則
裁判官

住友隆行進
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