判例検索β > 平成21年(行コ)第38号
事業認可取消等、土地建物明渡請求処分取消、各建物明渡、損害賠償反訴請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第622号〔第1事件〕、同平成18年(行ウ)第336号〔第2事件〕、同年(ワ)第29737号〔第3事件〕、同年(ワ)第29743号〔第4事件〕、同平成19年(ワ)第4985号〔第5事件〕、同年(ワ)第13748号〔第6事件〕)
事件番号平成21(行コ)38
事件名事業認可取消等,土地建物明渡請求処分取消,各建物明渡,損害賠償反訴請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第622号〔第1事件〕,同平成18年(行ウ)第336号〔第2事件〕,同年(ワ)第29737号〔第3事件〕,同年(ワ)第29743号〔第4事件〕,同平成19年(ワ)第4985号〔第5事件〕,同年(ワ)第13748号〔第6事件〕)
裁判年月日平成21年9月16日
法廷名東京高等裁判所
判示事項独立行政法人都市再生機構が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行規程及び事業計画の変更で,新たな施行地区の編入を伴わないものについての認可の行政処分性
裁判要旨独立行政法人都市再生機構が施行する第一種市街地再開発事業に係る施行規程及び事業計画の変更で,新たな施行地区の編入を伴わないものについての認可は,都市再開発法が建築行為等の制限や宅地等の処分制限は同法60条2項各号に掲げる公告があった場合に生ずるものであると規定し,同機構が施行する事業について定める同法60条2項5号が「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更」と規定していることからすると,すべての変更認可について建築行為等や宅地等の処分の制限が生ずるのではなく,「新たな施行地区の編入に係る事業計画の変更」の認可の公告があった場合についてのみ,前記各制限が認められるにすぎないと解されることや,同法71条6項が「事業計画を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合」に限り,新たに権利変換を希望するか否か等を申し出ることと規定していることから,前記認可が公告されたとしても,前記各制限や権利変換に関する選択の強制という効果が新たに生ずるものではなく,当初の事業計画等の認可による効果が残存する状態にあると解するほかなく,施行地区内の宅地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものとはいえないから,前記認可は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
裁判日:西暦2009-09-16
情報公開日2017-10-19 14:18:01
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主文1
本件控訴をいずれも棄却する

2
控訴費用は,控訴人らの負担とする。

第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
(第1事件)
(1)

国土交通大臣が被控訴人都市再生機構に対し平成17年8月1日付けでし
た小金井都市計画α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業に係る施行規程及び事業計画の変更の認可を取り消す。
(2)

被控訴人都市再生機構が平成17年12月2日付けでした小金井都市計画
α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業に係る権利変換に関する処分を取り消す。
3
(第2事件)
(1)

被控訴人都市再生機構が控訴人aに対し平成18年2月3日付けでした小
金井都市計画α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業に係る明渡請求処分を取り消す。
(2)

被控訴人都市再生機構が控訴人bに対し平成18年2月3日付けでした小
金井都市計画α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業に係る明渡請求処分を取り消す。
(3)

被控訴人都市再生機構が控訴人株式会社cに対し平成18年2月3日付け
でした小金井都市計画α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業に係る明渡請求処分を取り消す。
4
(第3,4,5事件)
被控訴人都市再生機構の請求をいずれも棄却する。

5
(第6事件)

被控訴人都市再生機構は,控訴人dに対し,110万円及びこれに対する平成18年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2
1
事案の概要等(略語は,原判決のそれに従う。

原審第1事件は,小金井都市計画α駅南口第1地区第一種市街地再開発事業
(以下本件事業という。の施行地区内に宅地及び建築物を有していた控訴)
人a及び同bが,①被控訴人国に対し,国土交通大臣がした本件事業に係る施行規程及び事業計画の変更に関する認可(以下本件変更認可という。は,)
それに先行する都市計画決定並びに本件事業に係る施行規程及び事業計画の認可(以下本件事業認可という。に存する違法事由を承継し,また,本件変)
更認可自体に違法があると主張して,その取消しを求めるとともに,②被控訴人都市再生機構に対し,同被控訴人が同控訴人らについてした本件事業に係る権利変換処分(以下本件権利変換処分という。には関係権利者間の衡平を)
欠くなどの違法があると主張して,その取消しを求めた事案である。なお,参加行政庁東京都及び同小金井市は,原審から同事件に参加した行政庁である。原審第2事件は,被控訴人都市再生機構から本件事業の施行地区内の土地及び土地上の物件の明渡しの請求(以下本件明渡請求処分という。を受けた)
控訴人a,同b及び同株式会社cが,同処分は,上記①及び②の違法事由を承継し違法であると主張して,それぞれ,その取消しを求めた事案である。原審第3事件ないし第5事件は,被控訴人都市再生機構が,本件事業の施行地区内の原判決別紙物件目録1(2)記載の建物を占有している控訴人b原審第(
3事件被告)同目録2(2)記載の建物を占有している控訴人a,,
同目録2(3)記
載の建物を占有している控訴人株式会社c,同株式会社e,同特定非営利活動法人f,
同特定非営利活動法人g,
同目録2(4)記載の建物を占有している控訴
人d(以上,原審第4事件各被告)及び同目録2(5)記載の建物を占有している控訴人a(原審第5事件被告)に対し,本件権利変換処分により被控訴人都市再生機構が同各建物の所有権を取得したとして,所有権に基づき,各控訴人ら
の占有部分の明渡しを求めた事案である(なお,原審第5事件の相被告hに対する原判決は確定した。。

原審第6事件は,
原審第4事件被告である控訴人dが,
同事件の反訴として,
同事件原告である被控訴人都市再生機構に対し,同事件の提起は訴権の濫用であり違法であると主張して,不法行為に基づき慰謝料等の支払を求めた事案である。
2
原判決は,
原審第1事件のうち,①本件変更認可の取消請求については,事業計画の認可は建築行為等の制限や宅地等の処分制限等の効果が生じるから処分性があるが,本件変更認可は新たな施行地区の編入を伴うものではなく,新たな法的効果は生じないから処分性がないとして,訴えを却下し,②本件権利変換処分の取消請求については,具体的な権利変換計画の策定は施行者の合目的的な見地からする裁量的判断に委ねられており,権利変換計画が違法といえるかどうかは,同計画の内容が法令上所定の各要素に照らして社会通念上不相当であり,その裁量権を逸脱,濫用したといえるかどうかにより決すべきところ,そのような点は認められないなどとして,請求を棄却し,
原審第2事件本件明渡請求処分の取消請求)

については,
明渡請求処分は,
事業計画等の認可や権利変換処分という先行処分と連続した一連の手続ではなく,これらの先行処分の違法性を承継しないから,先行処分の違法性を理由として本件明渡請求処分の違法をいうことはできないとして(本件明渡請求処分固有の違法の主張はない。,請求を棄却し,

原審第3事件ないし第5事件(所有権に基づく明渡請求)については,控訴人らが抗弁として主張した本件権利変換処分の無効事由(都市計画決定,本件事業計画等の認可及び本件変更認可の各違法・無効ないし本件権利変換処分固有の違法・無効)は認められないとして,請求をいずれも認容し,原審第6事件(不法行為に基づく損害賠償請求)については,被控訴人都市
再生機構が原審第4事件を提起したことは権利の行使として当然に許されるべき行為であり,訴権の濫用に当たると評することはできないなどとして,請求を棄却した。
原判決を不服として,控訴人らが本件控訴をした。
3
争いのない事実等,
争点及び争点に関する当事者の主張の概要は,
原判決の事
実及び理由第2の1から3までに摘示されたとおりであるから,これを引用する。

第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人らの各請求のうち,本件変更認可の取消請求は却下すべきものであり,その他の請求はいずれも理由がなく,被控訴人都市再生機構の控訴人らに対する建物明渡請求はいずれも理由があるものと判断する。その理由は,原判決を次のとおり訂正し,
控訴理由に対する判断を付加するほか,
原判決の事
実及び理由第3の1から11までに説示されたとおりであるから,これを引用する。
(原判決の訂正)
(1)

15頁20行目のそして,の次に第一種市街地再開発事業における」

を加える。(2)17頁20行目の「したがって

から同頁23行目末尾までをまた,被控訴人都市再生機構は,事業計画等の認可によって,施行地区内の宅地の所有者等の法的地位に影響を及ぼす具体的な第一種市街地再開発事業の遂行権限を付与されることになる(法58条2項前段,都市計画法59条4項)し。たがって,公告された事業計画等の認可は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解される。に改める。(3)

20頁23行目冒頭から21頁4行目末尾までを次のとおり改める。
ところで,複数の行政処分によって行政目的が達成される場合であっても,それぞれの行政処分はそれぞれの審査事項と効果を有し,それぞれが抗告訴訟の対象となるものであり,各処分の違法性は各別に審査されるべきものであるから,先行処分の違法性(取消事由)は後行処分に承継されないと解される。ただし,一定の法律効果のために,複数処分が連続した一連の手続を構成し,後行処分においても先行処分と同様の違法性審査が予定される場合には,取消事由たる違法性の承継が認められると解される。(4)

21頁10行目のこの両者から11行目の「できない。」までをこの両処分は,第一種市街地再開発事業を構成する一連の手続ではあるが,それぞれが異なる法的効果を有し,先行処分の効果を確定させ,これを前提に後行処分がされる関係にあり,一定の法律効果のために,複数処分が連続した一連の手続を構成するものということはできないから,先行処分の無効は後行処分を無効ならしめるが,先行処分の取消事由が後行処分の取消事由になるものではない。に改める。(5)

22頁25行目冒頭から23頁9行目末尾までを次のとおり改める。
以上によれば,都市計画決定の違法(争点6,7)は本件事業計画等の認可の違法事由として考慮され上記2(1))本件権利変換処分の取消事由に,(,本件事業計画等の認可についての取消事由たる違法は含まれないが(これに反する控訴人aらの主張は採用しない。,本件変更認可についての取消事由)たる違法は含まれる(上記2(2))。また,本件明渡請求処分において先行処分についての取消事由たる違法を主張することはできない上記3)もっと(。も,先行処分である事業計画等の認可が無効となる場合には,これを前提とする後行処分である権利変換処分や明渡請求処分も適法根拠を失うこととなるから,違法性の承継の有無について論ずるまでもなく後行処分の取消訴訟において同違法を取消事由として争うことが可能であると解される(争点5ないし7に関する控訴人aらの主張は,この無効事由の主張をも含むものと認められる。。)そこで,事業計画等の認可の違法(争点5ないし7)は,本件権利変換処分及び本件明渡請求処分の先行処分の無効事由たる違法の主張として検討を加える。(6)

23頁17行目の②の次に同規定は,壁面の位置の制限を「道路に面する壁面の位置に限ることを明示した規定なのであるから,道路に面する壁面の位置の制限の名の下において,道路に面しない壁面の位置の制限」を定めることは,法の潜脱行為として許されないところ,1-Ⅱ街区における壁面の位置の制限(原判決別紙図面2のア)は,実質的には道路に面しない北側の壁面を制限しているから,違法,無効である,③を加える。(7)

24頁18行目のしたがって」
から同頁19行目末尾までを次のとおり改め,25頁3行目の「②を③に改める。都市計画法8条3項2号チに規定する「壁面の位置の制限は,建築基準法54条(都市計画法8条3項2号ロ参照)に規定する外壁の後退距離の限度が現実の壁面を予定しているのとは異なり,建物が築造されれば当該道路に面することとなる壁面の位置を規定するものであり,壁面の位置の制限の結果,当該制限の範囲内において建物(壁面)が存在し得ない事態を排除するものとは解されない。なお,都市計画法8条3項2号リは,特定街区についての壁面の位置の制限につき,同号チのような限定を加えていないが,特定街区に関する都市計画は利害関係を有する者の同意が前提となっていることから(都市計画法17条3項,都市計画法施行令11条)壁面の位,
置の制限における公益性からの制約に差異が生じたものと解されるのであって,高度利用地区における壁面の位置の制限(同号チ)は,敷地内に道路に接して有効な空間を確保して市街地の環境の向上を図るため必要な場合であって,
かつ,当該道路に面する壁面」
の制限に限る
という限定を付し,そのような必要性がない場合や,道路にまったく面しない敷地内部の部分のみに壁面の位置の制限を設けることを禁止し,建築規制の適用を市街地環境の向上の効果の蓋然性が高い部分に限定するものと解され,限るという文言により,道路に面する建物の壁面が存在する場合の壁面の制限に限る旨を定めたものと解することもできない。控訴人らは,上記説示のように解するならば,都市計画法8条3項2号チは「道路に接する空地について,建物の建築を禁止することができると規定したはずであると主張するが,条文の規定の仕方は立法技術の問題であり,別の規定の仕方が考えられるからといって,上記解釈を否定する理由とはならない上,そもそも壁面の位置の制限は一切の建物の構造部分が存することを禁ずるものではない(建築基準法59条2項)
。したがって,この点に関する上記(1)①の主張は採用できない。次に上記(1)②の主張については,
確かに,
原判決別紙図面2のアの壁面の
位置の制限は,1-Ⅱ街区のうち南口交通広場に面する東側境界線を始点とし,その対面する西側境界線を終点として,その間のすべての区間について道路に面する壁面の位置の制限をした結果,各制限の終点までの街区内部分に建物が存在する余地がなくなったが,これは道路に面する壁面の位置の制限をすることにより,結果として,1-Ⅱ街区の建物につき北側の外壁が後退させられる結果となったものであり,これが高度利用地区における壁面の位置の制限において通常想定された形態と異なるとしても,法の文理に反し,又は都市計画法の趣旨を潜脱するものとは解されない(なお,上記壁面の位置の制限により生み出された空地(敷地内通路やコミュニティ広場)は,
本件地区計画においても,
同一の部分が地区施設と位置付けられた上都

市計画法12条の5第2項3号参照)同部分につき壁面の位置の制限同条,

7項2号参照)が設けられており(争いのない事実等(2)カ,戊6),地区計
画においても同空地を設けることが予定されている。。したがって,この点)
に関する上記(1)②の主張は採用できない。

(8)

30頁14行目のしかしながら,の次に,次のとおり加える。

東京都駐車場条例17条1項が駐車場整備地区等に一定の面積を超える建築物を建築しようとする者に駐車場の附置義務を課している趣旨は,駐車場整備地区等における建物を利用する者の車両の駐車場所を確保して,建物周辺地域の交通渋滞や交通の混雑を防止する点にあると解されるから,当該建物が外形上分棟となっている場合であっても,客観的に両棟が一体の建物である場合と同様の態様で一方の棟の利用者が他方の棟に存する駐車場を利用し得る状態にあり,その機能において一体性を有しているといえる場合には,これらを一体の建物とみて適正な規模の駐車場が整備されていれば特段の不都合はないというべきであって,条例の定める要件に違背するものではないと解するのが相当である。しかるところ,本件におけるA部分とB部分は,両部分の間に空間はあるものの,原判決別紙図面1・3・5のとおり,相互に密接して建築されており,本件変更認可に係る事業計画の設計図(設計の概要)でも,2階及び3階に連絡通路が設けられて両棟が接続されており(原判決27頁2行目から7行目まで。なお,建築計画通知の際の設計図面では,さらに4階及び5階にも連絡デッキが設けられた設計となっている。甲69,70)1階のエン,トランス部分はβ街道からの出入口として一体的な空間を共有しており,利用者は敷地外に出ることなく容易に各棟のエレベーターを行き来することが可能であること(甲17の2・3)に照らすと,両建物はその機能上の一体性を有しているといえる。そして,(9)

30頁26行目末尾に行を改めて,次のとおり加える。
控訴人らは,①B部分の利用者がA部分に設置された駐車場を利用できる保証もないことから,両棟に機能的な一体性はない,②外観上も,各部分では外壁の素材が異なるから,両建物は別個の建物であると主張する。しかし,①上記のとおり,東京都駐車場条例17条1項は,一定の面積の建物は,一定の規模を有する駐車場を整備すべき旨を定めるものであって,当該駐車場の権利者が,建物内の各専有部分の所有者と一致すべきことや,建物内の各専有部分の所有者が駐車場を利用する権利を確保すべきことまでを定めたものではなく,一般権利者棟の利用者が権利としてi棟に設置された駐車場を利用できる保証がないとしても,このことをもって,両棟に客観的に機能的な一体性がないものとも,本件変更認可が東京都駐車場条例違反であるともいえないし,②外観の素材の違いによって両棟の機能的な一体性が左右されるものとはいえないことは明らかであるから,同各主張は採用できない。(10)

36頁21行目末尾に行を改めて,次のとおり加える。

また,控訴人らは,平成21年度の課税台帳では1-Ⅱ街区の方が1-Ⅲ街区よりも土地単価が高いのに,本件権利変換計画においては1-Ⅲ街区の方が1-Ⅱ街区よりも土地単価が高く設定されたことは極めて不合理であると主張するが,権利変換計画における従後資産の価額は,法81条及び都市再開発法施行令46条の規定に従って(本件では平成17年2月11日を評価基準日として)算定されるところ,本件権利変換計画における評価額と異なる課税評価額が存したというだけでは,当然に本件権利変換計画における評価過程が不合理であったということはできない。(11)

40頁7行目冒頭から41頁2行目末尾までを次のとおり改める。
法73条1項12号は,権利変換処分により,従前の宅地や建築物に関する権利を失い,かつ,当該権利に対応して,施設建築敷地等を与えられない者に関して,それぞれ失われる宅地等の価額を定めなければならない旨を規定し,同号の価額は,法80条1項に基づいて定められ,同価額が法91条1項の補償金の基準となるものとされる。そして,上記失われる宅地等の価額が記載された権利変換計画は施行者により公衆の縦覧に供されて,関係権利者から施行者への意見提出の機会が与えられ(法83条1項,2項)提出,した意見書が採択されないとの通知を受けた者は,収用委員会にその価額の裁決を申請し,裁決に不服がある場合には訴えを提起することができる(法85条1項,3項)以上に照らすと,法73条1項12号の趣旨は,権利変。換処分により従前の宅地や建築物に関する権利を失う者については,適正な補償が受けられるように,取引価額が認められるようなものがあれば,その価額を権利変換計画に記載することを定めたものと解するのが相当である。被控訴人都市再生機構が本件権利変換処分に先立ってjから買い受けた土地(本件k土地)は,本件事業の施行地区内の土地であるから,権利変換処分の対象となる。そして,施行者である被控訴人都市再生機構は,本件権利変換処分により,jから買い受けた土地(従前土地)の権利を失うが,被控訴人都市再生機構は,同権利に対応する施設建築敷地等を取得しない(当事者間に争いがない。から,法73条1項2号に規定する者には該当せず,形)式的には法73条1項12号に規定する者に該当するが,補償金の支払を受けるものではないから,上記のとおりの同規定の趣旨に照らして,従前土地の価額を権利変換計画に記載すべき者には当たらない。そうすると,被控訴人都市再生機構が本件k土地の価額を権利変換計画に記載しなかったことが,同号に反するとはいえない。これに対し,控訴人らは,①従前資産の価額は,権利変換手続及び清算手続において重要な事項であるから,各手続の適正・平等を担保するために,一律に例外なく記載し,縦覧することが求められている,②個々の地権者が,自らが所有する土地等の従前価額と他の地権者が所有する近隣の土地等の従前価額とを比較して,自らの土地等の従前価額が適正であるか否かを検討する機会を保障するためにも必要不可欠である,③被控訴人都市再生機構は取得した土地を補償金支払の対象とし,他の地権者と同じ鑑定基準によって評価された土地の価額相当額を補償金として取得すべきものであり,取得費用を「事業に要した費用法103条1項)に算入することを認めると,施行(
者がどのような価額で土地を取得しようともその全額を事業費に組み込み,他の地権者に清算金として負担させることができることになり,不正の温床となると主張する。
しかし,①②は権利変換手続における価額の適正・平等を判断する資料と
して,③は権利変換手続自体の公正を担保するために,権利変換計画に被控訴人都市再生機構の取得した土地の価額を記載すべきであるとするものであるが,法73条1項12号に規定する者を権利変換計画に記載する趣旨は上記のとおりであって,被控訴人都市再生機構の取得した土地の価額が権利変換手続における他の土地等の価額の適正・平等を判断する資料となり,また,
土地取得価額の適否を判断する機会となるとしても,これを記載しないことが上記規定に違反するものではない。なお,被控訴人都市再生機構が取得土地に対する補償金を取得し,これを購入代金に充てることとした場合,その差益・差損を確定的に施行者に帰属させることは,制度上予定されていないと解されるから,
差益と同様,
差損も事業収支に帰属する事業費と解される。
そうすると,補償金を取得せずに購入代金額を費用としても,補償金相当分を施行者が一旦取得してこれを購入代金に充てることとし,その差損を費用としても,事業からの支出は変わらないから,③の指摘は本件k土地からの取得価額の適正さに関わるものというべきところ,売買取引における土地の売買価額は,その所在,環境等による個別性を有するものであって,権利変換の適正を主眼とする評価と一致するものではなく,被控訴人都市再生機構が本件k土地購入によりjに対して特別の利益を与えたものでないことは,既に説示したとおりである。
したがって,控訴人らの主張はいずれも採用できない。

(12)

48頁3行目のdは,の次に「本件店舗部分の明渡しが遅れたのは,
被控訴人都市再生機構の事情によるものであったにもかかわらず,と加え,」
同頁5行目のdは,の次に「本件店舗部分を被控訴人都市再生機構に対して明け渡すことを約束したにもかかわらず,その後,同約束に反して,と加」
え,同頁7行目あるから,を「あり,控訴人dが本件店舗部分を明け渡したとしても,同人が本件店舗部分の占有を控訴人aに対して移転すれば,被控訴人都市再生機構は新たに控訴人aないしは同人から占有を承継した者に
対して本件店舗部分の明渡しを求める必要が生じるのであるから,控訴人dが明渡しの意思を有しているだけでは紛争解決が不十分であるとして,と改」
め,48頁9行目の認められ,の次に「その後も被控訴人都市再生機構に対して占有が移転されないため,占有移転禁止の仮処分による当事者恒定効を前提として,控訴人dに対して」を加える。
2
よって,原判決は相当であり,控訴人らの本件控訴は,いずれも理由がない。なお,
本件変更認可については,
被控訴人都市再生機構に対し本件事業認可から
の変更部分につき事業遂行権を付与する処分であると解する余地があるが,この場合,控訴人a及び同bが権利変換の対象となる可能性のある建物の構造,仕様につき法律上の利害を有し,本件変更認可の取消しを求める法律上の利益を有するとしても,本件変更認可は事業計画認可の違法性を承継するものではなく,本件変更認可に取消事由は認められないから(争点8に関する前記認定判断)本件変更認可の取消請求を棄却すべきこととなるところ,

不利益変更禁
止の趣旨に従い,本件変更認可に係る取消しの訴えを却下した原審判決を維持することとなる。そこで,本件控訴を棄却することとして,
主文のとおり判決す
る。
東京高等裁判所第11民事部

裁判長裁判官

富越和厚
裁判官

小野洋一
裁判官

大寄麻代
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