判例検索β > 平成20年(ワ)第3188号
応援妨害予防等請求事件
事件番号平成20(ワ)3188
事件名応援妨害予防等請求事件
裁判年月日平成22年1月28日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  民事第9部
裁判日:西暦2010-01-28
情報公開日2017-10-17 20:35:17
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平成20年(ワ)第3188号

応援妨害予防等請求事件

判主1決文
本件訴えのうち,別紙団体原告目録記載の原告らの各訴え並
びに別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告
らが被告Y1に対し販売拒否対象者指定の意思表示の無効確認
を求める訴えを却下する。

2
別紙被告目録1ないし13記載の被告らと別紙個人原告目録
81ないし101及び104記載の原告らそれぞれとの間にお
いて,同被告らが平成20年3月27日付けで原告X1に対し
表示した,同被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野
球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下
選手による試合その他の試合及びこれに関連する催事等の入場
券を販売することを拒否し,並びにこれらが行われる球場等施
設の管理区域に入場することを禁止する旨の意思表示が無効で
あることを確認する。

3
被告らは,連帯して,別紙個人原告目録81ないし101及
び104記載の原告らそれぞれに対し,各1万1000円及び
これに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済み
まで年5分の割合による金員を支払え。

4
別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告ら
のその余の請求並びに同目録1ないし80,102及び103
記載の原告らの請求をいずれも棄却する。

5
訴訟費用のうち,被告らに生じた費用の5分の1並びに別紙
個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らに生じ
た費用は,これを5分し,その1を被告らの負担とし,その余

を同原告らの負担とし,被告らに生じた費用の5分の4並びに
別紙個人原告目録1ないし80,102及び103記載の原告
ら並びに別紙団体原告目録記載の原告らに生じた費用は,別紙
個人原告目録1ないし80,102及び103記載の原告ら並
びに別紙団体原告目録記載の原告らの代表者の負担とする。
6
この判決は,主文第3項に限り,仮に執行することができる。

第1

実及び理由
請求

1(1)被告らは,別紙団体原告目録記載の原告らそれぞれに対し,被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らの構成員(ただし,平成19年12月に同原告らが被告らに対し提出した特別応援許可更新申請書添付の団体構成員の名簿記載の同原告らの構成員)が別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害してはならない。(2)被告らは,別紙個人原告目録記載の原告らそれぞれに対し,被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らが,その所属団体として組織的に,別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害してはならない。
(3)被告らと別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らそれぞれとの間において,被告らが平成20年3月27日付けで原告X1に対し表示した,被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合及びこれに関連する催事等の入場券を販売することを拒否し,並びにこれらが行われる球場等施設の管理区
域に入場することを禁止する旨の意思表示が無効であることを確認する。(4)被告らは,別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らそれぞれに対し,被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による野球試合及びこれに関連する催事等の入場券を取得した同原告らが試合や催事等の行われる球場に入場し試合や催事等を観ることを,退場を求め,あるいは退場させるなどして妨害してはならない。
(5)被告らは,連帯して,別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らそれぞれに対し,各22万円及びこれに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)被告らは,連帯して,別紙個人原告目録1ないし80並びに102及び103記載の原告らそれぞれに対し,各11万円及びこれに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2(1)被告らは,別紙団体原告目録記載の原告らそれぞれに対し,同原告らが平成19年12月にした平成20年度の特別応援許可更新申請について,被告らが連名で平成20年3月27日付けで同原告らに対してした通知を撤回せよ。(2)被告らは,別紙個人原告目録記載の原告らそれぞれに対し,その所属団体である別紙団体原告目録記載の原告らが平成19年12月にした平成20年度の特別応援許可更新申請について,被告らが連名で平成20年3月27日付けで同原告らに対してした通知を撤回せよ。
(3)ア被告Y1を除く被告らは,別紙団体原告目録記載の原告らそれぞれに対し,同被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らの構成員(ただし,平成19年12月に同原告らが被告らに対し提出した特別応援許可更新申請書添付の団体構成員の名簿記載の同原告らの構成員)が別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を
求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害してはならない。

被告Y1は,別紙団体原告目録記載の原告らそれぞれに対し,同被告を除く
被告らに,その主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らの構成員(ただし,平成19年12月に同原告らが被告らに対し提出した特別応援許可更新申請書添付の団体構成員の名簿記載の同原告らの構成員)が別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害するようにさせる行為をしてはならない。
(4)ア被告Y1を除く被告らは,別紙個人原告目録記載の原告らそれぞれに対し,同被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らがその所属団体として組織的に,別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害してはならない。

被告Y1は,別紙個人原告目録記載の原告らそれぞれに対し,同被告を除く
被告らに,その主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合その他の試合において,当該試合の入場券を取得した同原告らがその所属団体として組織的に,別紙応援方法目録記載の方法で応援を行うことを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害するようにさせる行為をしてはならない。(5)ア被告Y1を除く被告らは,別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らそれぞれに対し,被告らがそれぞれ主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による野球試合及びこれに関連する催事等の入場券を取得した同原告らが試合や催事等の行われる球
場に入場し試合や催事等を観ることを,退場を求め,あるいは退場させるなどして妨害してはならない。

被告Y1は,別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告らそ
れぞれに対し,同被告を除く被告らに,その主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合及びこれに関連する催事等の入場券を取得した同原告らが試合や催事等の行われる球場に入場し試合や催事等を観ることを,退場を求め,あるいは退場させるなどして妨害するようにさせる行為をしてはならない。
第2

事案の概要

本件は,中日ドラゴンズの応援団である別紙団体原告目録記載の原告ら(以下団体原告らという。)及びその構成員である別紙個人原告目録記載の原告ら(以下個人原告らという。)が,被告らから,平成20年度において,楽器,応援旗等を使用して観客を組織化し又は統率して行われる集団による応援(以下応援団方式による応援という。)の申請を不許可とされ,原告X1の構成員のうち別紙個人原告目録81ないし101及び104記載の原告ら(以下販売拒否対象原告らという。)については,同不許可に加えて入場券の販売拒否対象者にも指定され,これらにより原告らの人格的権利が侵害されたなどと主張し,また,被告らがした応援団方式による応援の不許可及び販売拒否対象者の指定は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独禁法という。)2条9項5号の不公正な取引方法に当たると主張して,被告らに対し,前記第1記載の各請求をする事案である。
なお,原告らは,請求1(1)及び同(2)につき,請求1(1)が主位的請求,同(2)が予備的請求の関係,請求2(1)及び同(2)につき,請求2(1)が主位的請求,同(2)が予備的請求の関係,請求2(3)ア及び同(4)アにつき,請求2(3)アが主位的請求,同(4)アが予備的請求の関係,請求2(3)イ及び同(4)イにつき,請求2(3)イが主位的請求,同(4)イが予備的請求の関係にあり,請求1(1)と同2(3)ア及びイ,請求
1(2)と同2(4)ア及びイ,請求1(3)と同2(2)のうち,販売拒否対象原告らにつき入場券販売拒否及び入場禁止を通知したものの撤回請求に係る部分,請求1(4)と同2(5)ア及びイは,それぞれ選択的併合の関係にあり,このほかは単純併合の関係にあるものであるとしている。
1
前提事実(当事者間に争いがないか,証拠上明らかである。)

(1)当事者等

原告ら

(ア)原告X2は,別紙個人原告目録1ないし16記載の原告らを正会員の一部とし,原告X3は,同目録17ないし19記載の原告らを正会員の一部とし,原告X4は,同目録20ないし38記載の原告らを正会員の一部とし,原告X5は,同目録39ないし57記載の原告らを正会員の一部とし,原告X6は,同目録58ないし66記載の原告らを正会員の一部とし,原告X7は,同目録67ないし78記載の原告らを正会員の一部とし,原告X8は,同目録79及び80記載の原告らを正会員の一部とする中日ドラゴンズの私設応援団である。
原告X2,原告X3,原告X4,原告X5,原告X6,原告X7及び原告X8は,中日ドラゴンズ私設応援団全国A連合(以下全国A連合という。)を組織する。
(イ)原告X1は,別紙個人原告目録81ないし104記載の原告らを正会員の一部とする中日ドラゴンズの私設応援団である。
(ウ)なお,団体原告らは,ほかの中日ドラゴンズの私設応援団であるB,C,D及びEと共に,無限責任中間法人全国中日ドラゴンズ私設応援団連合を組織する。イ
被告ら

(ア)被告Y2は,わが国における野球水準を高め,これを普及して国民生活の明朗化と文化的教養の向上をはかるとともに,野球を通してスポーツの発展に寄与し,日本の繁栄と国際親善に貢献することを目的として設立された社団法人であり,プロフェッショナル野球(以下プロ野球という。)の運営を統括する。
(イ)被告Y1は,セントラル野球連盟及びその構成球団と,パシフィック野球連盟及びその構成球団が,日本プロフェッシナル野球協約(以下野球協約という。)を締結して構成される団体であり,被告Y2と連携してプロ野球の運営を統括する。被告Y1には,機関として,コミッショナー,コミッショナー事務局,各連盟会長及び連盟事務局が置かれている。
(ウ)被告Y2及び被告Y1を除く被告らは,いずれも野球の興行等を目的とする株式会社であり,それぞれのプロ野球球団を運営する(以下,プロ野球球団を運営する被告らを併せて被告12球団という。)。
(2)試合観戦契約約款及び特別応援許可規程の制定

プロ野球の各球場において,暴力団や悪質応援団による粗暴行為,不当行為
等が問題視されるようになり,平成15年11月18日,被告Y1のコミッショナー及びコミッショナー事務局,被告12球団並びに各球場で構成されるプロ野球暴力団等排除対策協議会(以下暴排協という。)が設立された。暴排協には,上部組織として中央協議会が,下部組織として地区協議会が,それぞれ設けられた。イ
中央協議会は,平成15年12月9日,①

に入れない,②
い,③

暴力団及び悪質な応援団を球場

暴力団及び悪質な応援団を,選手,監督,コーチらに接触させな

暴力団及び悪質な応援団の不当な要求に屈しない,④
暴力,威迫など粗

暴行為,ダフ屋行為,物品の無許可販売など,不正行為に対しては厳正に対処し,断固たる措置を取る,という4項目からなる暴力団排除宣言を採択した。ウ
暴排協は,プロ野球の観戦について,野球協約のほかに各球場ごとに定めた
球場規則や応援ルールが定められていたものの,観戦に際しての内容を定める一般的な約款が存在しなかったことなどから,統一的な約款を策定するための議論を重ね,その結果,平成17年6月,試合観戦契約約款(以下本件約款という。)及び特別応援許可規程(以下本件許可規程という。)が暴排協において承認され,その内容に従って,一般の試合の主催者である被告12球団並びに日本シリーズ及びオールスターゲームを主催する被告Y2が,それぞれ個別に本件約款及び本
件許可規程を制定し,本件約款及び本件許可規程は,同年7月19日から施行された。

本件約款の内容は,別紙試合観戦契約約款記載のとおりであり(同別紙
は被告Y3が制定したものであるが,他の球団においても同内容のものが制定されている。),試合観戦契約は,試合観戦を希望する者が,正規入場券を取得したときに,本件約款に基づき成立し,正規入場券を有する者は,本件約款及び主催者が予め告知した条件に基づき,球場に入場し,指定された座席又は場所において試合を観戦することができること(2条),暴力団又はこれに類する反社会的団体に所属する者等,所定の事由に該当する者に対し入場券を販売しないこと(3条),トランペット等の楽器を用いた応援,応援旗等の他の観客の観戦に支障を及ぼすおそれのある物を使用した応援,観客を組織化し又は観客の応援を統率して行われる集団による応援等(応援団方式による応援)は,球団から許可があった場合にのみ認められること(9条),主催者は,販売拒否事由に該当する者である場合等,所定の事由に該当する観客に対して退場措置を取ることができること(10条),主催者は,観客が禁止行為に違反した場合等,所定の事由に該当する者を販売拒否対象者として指定することができること(11条1項),主催者は,同項の場合において,当該違反者が応援を行う団体に所属する場合,事情により,当該団体の構成員及び当該団体と同一の連合組織に属する他の団体の構成員並びに当該違反の時に構成員であった者を販売拒否対象者として指定することができること(同条2項),何人も,同条1項,2項の判断に何ら異議を出すことはできないこと(同条3項)などが定められている。

本件許可規程の内容は,別紙特別応援許可規程記載のとおりであり,応
援団方式による応援を行おうとする団体は,予め当該球団所定の許可申請書を提出し,当該球団の許可(以下特別応援許可という。)を得なければならないこと(2条),本件約款3条所定の事由に該当する構成員が過去又は現在所属し又は関与したことのある団体等,所定の不適格事由に該当する団体は,特別応援許可を受
けることができないこと(5条),当該球団は,2条の許可申請に基づき,5条所定の不適格事由に該当しない団体のうち,当該球団の定める要件及び手続に基づき,当該球団が応援団方式による応援を認めるのが適当であると判断する団体につき,応援団方式による応援の許可をすること(4条1項),この応援の許可は,連盟選手権試合の年度ごとに期間を特定して行うこと(同条5項),同条に基づく許可等の判断は,当該球団の自由な裁量に基づくものであり,何人も,本件許可規程に基づき許可を受ける権利を有するものではなく,また,本件許可規程に基づく許可の可否等について異議を申し立て又はこれを争うことはできないこと(8条1項),当該球団は,4条に基づく許可等の判断に関し理由の告知を行わないこと(8条2項)などが定められている。
(3)原告らに対する応援団方式による応援の許否等

団体原告らは,原告X6を除き,平成18年度及び平成19年度において,
いずれも特別応援許可を受けた。
なお,原告X6は,平成18年度においては,平成17年度の開幕戦で一般会員(準会員)がグラウンドにメガホンを投げ入れたことが申請書に記載されていなかったとして,特別応援許可の申請が不許可とされたが,平成19年度においては特別応援許可を受けた。

団体原告らは,平成19年12月,平成20年度の特別応援許可の申請(以
下本件申請という。)をした。特別応援許可の申請書には,申請団体又は連合組織等関係団体の中に刑事事件を受けた者,暴力団等にかかわった者,本件約款及び本件許可規程の定める禁止行為を行った者,球団,球場の関係者から注意,警告,入場禁止処分等を受けた者等,17項目に該当する者がいるかどうかを記載することとされているが,本件申請の各申請書には,

2007年1月から11月の間に,球団,球場の関係者から,注意,警告,入場禁止処分等を受けた者はいますか。

という項目の連合組織等関係団体の中にいたの欄(原告X4の申請書においては,団体構成員の中にいたの欄)に○が付されていたが,他の項目は,いずれ
もそのような者はいなかったの欄に○が付されていた。

被告12球団及び被告Y2は,暴排協の協議において,本件約款及び本件許
可規程に基づき,本件申請を不許可とする旨の決定(以下本件応援不許可という。)をし,原告X1の構成員のうち平成18年度から平成20年度までの3年度に申請した販売拒否対象原告らを含む26名の団員に対し,主催する野球試合及びこれに関連する催事等の入場券を販売することをすべて拒否するともに,団員が試合や催事等に入場すること,これらが行われる球場等施設の管理区域へ立ち入ることを一切禁止する旨の決定(以下本件販売拒否対象者指定という。)をし,被告Y2及び被告Y1は,平成20年3月27日付けで,原告X1を除く団体原告らに対し,本件応援不許可を通知し,原告X1に対し,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定を通知した。
2
争点

(1)本案前の争点

団体原告らの当事者能力の有無(民訴法29条の要件充足性)


被告Y1の被告適格の有無(請求1(1)ないし(4),2(1),(2),(3)イ,(4)
イ,(5)イに係る訴えについて)

不起訴の合意の成否


確認の利益の有無(請求1(3)に係る訴えについて)

(2)本案の争点

請求1(1)ないし(6)の各請求の成否(本件応援不許可及び本件販売拒否対象
者指定が,人格的権利の侵害,継続的契約関係違反又は権利濫用であり,違法,無効か否か)

請求2(1)ないし(5)の各請求の成否(本件応援不許可及び本件販売拒否対象
者指定が,独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に当たるか否か)3
争点に関する当事者の主張

(1)本案前の争点


団体原告らの当事者能力の有無(民訴法29条の要件充足性)

(原告らの主張)
(ア)団体原告らは,以下に述べるように民訴法29条の要件を充足し,いずれも当事者能力が認められる。

原告X2ないし8について

会則を有し,会長,総代表等が確定し,名簿が整備され,全国A連合役員会の決議によって意思決定がなされており,団体自体の財産も有している。多数決原則が行われているか否かは,組織の内部的独立性を判断するための要件の一つにすぎず,本件請求をする上での団体としての組織性にとっては問題とならない。また,原告X2ないし8における個々の会員は,全国A連合役員会の意思決定にゆだねることについて承諾ないし授権をしている。

原告X1について

役職や役員の選出方法は慣例により定まっており,名簿も整備され,総会において多数決の原則も行われ,団体自体の財産も有している。
準会員が意思決定への関与の機会を有しないことについては,本訴請求をする上での団体としての組織性には問題とならない。また,準会員は,正会員の意思決定に従うとの承諾ないし正会員への授権を行っている。
(イ)被告らは,団体原告らが民訴法29条の要件を充足しないと主張するが,そもそも,被告らは,団体原告らを,権利義務を統一的に帰属させることができる実体を備えた団体として,本件応援不許可という法的な不利益処分を課しているのであるから,その不利益処分の効力を争う本件訴訟において,団体原告らの民訴法29条の要件充足性を争うことは,禁反言の法理により,信義則上許されない。(被告らの主張)
団体原告らは,法人格がなく,団体内部規律の存在すら明らかとはいえない上,いずれも多数決での意思決定をするとの要件を満たしておらず,準会員には意思決定に関与する機会すら与えられていないから,民訴法29条の要件を満たしていない。

被告Y1の被告適格の有無(請求1(1)ないし(4),2(1),(2),(3)イ,(4)
イ,(5)イに係る訴えについて)
(原告らの主張)
被告Y1は,プロ野球試合を主催する被告12球団に指令を出すいわば上位団体として自らも意思決定を行い,その結果,自らの名義においても本件応援不許可や本件販売拒否対象者指定を行っているのであるから,被告Y1が,本件各請求に係る訴えにつき被告適格を有するのは明らかである。
(被告らの主張)
被告Y1は,プロ野球試合を主催することがないから,主催者による販売拒否や,主催者による応援団方式による応援の許可を前提としている本訴訟においては,被告Y1は第三者にすぎず,金銭請求以外の請求(請求1(1)ないし(4),2(1),(2),(3)イ,(4)イ,(5)イ)に係る訴えにつき被告適格はない。ウ
不起訴の合意の成否

(被告らの主張)
応援団方式による応援は,本件約款及び本件許可規程上の許可を得た限度で,認められる行為であり,本件許可規程に基づく許可の可否等について異議を申し立て又はこれを争うことはできず(本件許可規程8条1項),販売拒否対象者指定に関する主催者たる被告ら(ただし,被告Y1を除く。)の判断には,何人も何ら異議を出すことはできない(本件約款11条3項)とされている。
そうすると,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定について,本件約款及び本件許可規程上,異議の申出が禁止されているのであるから,不起訴の合意が存するというべきであり,これらが違法,無効であることを理由とする訴えを提起することは許されない。
(原告らの主張)
被告らは,本件約款11条3項及び本件許可規程8条1項により,異議の申出が禁止されていることを理由に,不起訴の合意が存するとし,本件応援不許可及び本
件販売拒否対象者指定が違法,無効であることを理由とする訴えを提起することは許されないと主張する。
しかしながら,何人も裁判を受ける権利を有しており(憲法32条),紛争当事者が一方的に作成したにすぎない約款のたぐいにより不起訴の合意の成立が安易に認められてはならない上,本件約款11条3項及び本件許可規程8条1項の文言上,民事訴訟の提起まで禁止したものか必ずしも判然としないから,上記各規定については民事訴訟の提起まで禁止する趣旨ではないと制限的に解釈するのが相当である。また,仮に上記各規定の文言を上記のように制限的に解釈することができないとしても,上記各規定は,行政機関による認可等による公的審査も何ら受けずに被告らが一方的に策定しただけでのもので,応援団方式による応援をしようと許可申請をした者や球場でプロ野球試合の観戦をしたいと考えている者の憲法上の権利に由来する訴権を一方的かつ完全に剥奪せんとする内容であるから,公序良俗に反し民法90条により無効であるとともに,消費者契約法10条によっても無効であるというべきである。
したがって,上記各規定を理由に不起訴の合意が存するとの被告らの主張は理由がない。

確認の利益の有無(請求1(3)に係る訴えについて)

(原告らの主張)
本件販売拒否対象者指定により,販売拒否対象原告らは,入場券を購入してプロ野球を観戦したいという意思があるにもかかわらず,将来にわたって,入場券を購入することができない状況にあるところ,本件販売拒否対象者指定の無効が確認されれば,販売拒否対象原告らは観戦を希望する試合に係る入場券を購入して球場に入場し,退場させられることなく試合観戦をすることができることになる。したがって,本件販売拒否対象者指定の意思表示そのものの有効性を問うことが紛争解決に直接的につながるのであり,請求1(3)につき確認の利益は十分認められる。

(被告らの主張)
販売拒否対象者の指定(本件約款11条3項)は,将来入場券の購入の申込みがあっても承諾をする意思はないという事実を伝達したものにすぎず,直接的に法律効果の発生に向けられた行為ではない。
また,仮に販売拒否対象者の指定が無効であり,その無効を宣言したとしても,それによって,被告らに対し当然に入場券の売買契約締結義務が課されるわけではなく,その実質は法律効果とは何ら関係のない事実の確認をしたにすぎないから,原告らと被告らとの間の法的紛争の解決にはならない。
したがって,請求1(3)に係る訴えは,解決に直接的につながらないものを確認の対象とするものであって,確認の利益がないというべきである。(2)本案の争点

請求1(1)ないし(6)の各請求の成否(本件応援不許可及び本件販売拒否対象
者指定が,人格的権利の侵害,継続的契約関係違反又は権利濫用であり,違法,無効か否か)
(原告らの主張)
(ア)球場でプロ野球を観戦する権利,応援団方式による応援をする権利についてa
プロ野球は日本人の日々の生活にすっかり溶け込んで,かけがえのない文化となっており,そこでの高揚感,幸福感は,古今東西,人間の本質(闘争本能)に根ざすものである。特に野球ファンの青少年にとってプロ野球選手は憧れであり,夢であって,人生の目標にすらなるほど深く人格に影響を与え得るものである。

球場における野球観戦は,目の前で自らが応援する球団所属の選手の,まさ
にプロの技を堪能し,ファンが一体となって自らが応援する球団を応援して,球場全体で試合の動向に喜び,ため息を漏らすなど,その臨場感,高揚感は,テレビ視聴等による楽しみ方の比ではなく,単に野球を楽しむこととは別の内実を持った独自の権利利益である。入場券を購入して野球観戦する者は,そのほとんどが特定球
団のファンとして入場するものであり,その球団を球場で応援することはその本質的,根源的な欲求である。

応援団方式による応援は,野球が我が国にもたらされてしばらくの後に生ま
れ,これまで洗練され発展してきたもので,本件約款及び本件許可規程制定以前より我が国おいて野球観戦における一つの文化を形成している。

上記aないしcの事情を背景として組織される応援団を運営する者又はそれ
に参加する者にとって,応援団方式による応援をすることはかけがえのない自己表現あるいは自己実現の場となり,貴重な社会活動あるいは人格形成の場でもあり,生活の不可欠の一部を構成し生きがいとなっており,憲法13条に基づく幸福追求権の一内容をなす人格権ないし法律上保護された利益であるというべきである。(イ)本件約款及び本件許可規程の解釈,運用の在り方
プロ野球が公共性を有し,球場での試合観戦及び応援団方式による応援が法律上保護された人格的権利であり,応援団方式による応援が本件約款及び本件許可規程の制定以前から行われてきたことからすれば,被告らによる本件約款及び本件許可規程の運用は,手続的公正を維持し,恣意性を排除して,公平,公正,合理的であるべきであり,いやしくも日本プロ野球ファンである国民,市民に対し差別的取扱いその他不当な取扱いをすることが許されてはならない。
本件約款及び本件許可規程は,暴力団等排除等の目的達成のため被告ら自らの行為規範を定めたものであるから,特別応援許可をしないことあるいは販売拒否対象者指定は,本件約款及び本件許可規程にのっとってなされなければならない。そして,本件約款及び本件許可規程に定める特別応援許可をしないことあるいは販売拒否対象者指定の根拠事由の認定等につき被告らに一定の自由裁量はあるものの,上記で述べたとおりの合理性が要求され,その裁量権を逸脱して違法な処分がなされたかどうかは司法審査の対象となり,違法な処分を受けた者はその司法的救済がなされなければならない。
(ウ)継続的契約関係が形成されていたこと

団体原告らは,本件約款及び本件許可規程が施行されるまでの間,長年にわたり応援団方式による応援を行うことを継続して許されてきた。平成18年度から,本件約款及び本件許可規程が適用されることとなったが,団体原告らは,原告X6を除き,平成18年度及び平成19年度において,いずれも許可を受けて応援団方式による応援をした。なお,原告X6は,平成17年度の開幕戦において,一般会員(準会員)がグラウンドにメガホンを投げ入れたことが申請書に記載されていなかったとして,平成18年度は不許可となったが,平成19年度は特別応援許可を受けた。
したがって,団体原告らと被告らとの間において,団体原告らが応援団方式による応援をすることにつき黙示の契約が成立していたというべきである。また,団体原告らと被告らとの間において,円滑な試合進行や観客の安全かつ平穏な試合観戦を妨害する等の問題行動を起こすなど特段の事情の認められない限り団体原告らの構成員が球場でプロ野球を観戦することを,許諾する旨の黙示の契約が成立していたというべきである。
(エ)原告X2ないし8に対する本件応援不許可が違法,無効であること被告らは,原告X2の役員である原告X9(別紙個人原告目録15,以下原告X9という。)が,暴力団員としての経歴を有し暴力団関係者との密接な付き合いがあると認められるFに親和性を持つ人物であり,反暴排協の中心人物として活発に活動している上,原告X2ないし8そのものも,悪質応援団と親和性を有していることなどを理由に,原告X2ないし8に対する本件応援不許可は適法,有効である旨主張する。
しかし,被告らが主張する原告X9に関する事実関係は,いずれも過去に原告X2ないし8に対して特別応援許可がされた際には問題とされなかった事情である上,原告X9が暴力団員であったFの墓参りをするなどしていたとしても,一般的に行われている関係者への墓参りとして行ったものにすぎない。原告X9がプロ野球応援協会の設立にかかわったとしても,当該協会は反暴排協を目的とするも
のではないから,被告らの主張する原告X9に関する事実関係は,事実誤認か偏見に基づくものであり,本件応援不許可の理由とはなり得ない。
むしろ,原告X9は,他の許可団体も加入する中日私設応援団連合を取りまとめて,入場券管理システムを構築,運用し,率先して暴力団排除運動をしてきたものであり,暴力団等と親和性があると断ずるのは,正に原告X9に対する偏見に基づく恣意的判断にほかならない。
過去の事例と比較しても,原告X2ないし8に対する本件応援不許可が不当で平等原則に反することは明らかであり,被告Y3も,最終的な判断がされるまで特別応援許可が相当である旨の意見を維持していたものである。
以上のとおり,原告X2ないし8について本件応援不許可を正当化する事情は何ら見いだすことはできないから,原告X2ないし8に対する本件応援不許可は,応援団方式による応援をする権利を侵害し,権利濫用に当たり,上記(ウ)の応援団方式による応援を許諾する旨の黙示の契約に反するから,違法,無効である。(オ)本件販売拒否対象者指定が違法,無効であること

被告らは,原告X1の代表者である原告X10(別紙個人原告目録81,以
下原告X10という。)が,暴力団に類する反社会的団体に所属する者(本件約款3条1号),暴力団員等と組織上の関係を有する団体に所属する者(同条3号)及び暴力団員等と社会的に相当と認められない密接な関係を有する者(同条4号)に該当すると主張する。
しかしながら,原告X10が愛知県本部長を務めるG同盟は,暴力団とは無関係の純粋な政治団体であり,同団体は平成20年2月に解散している。また,原告X10は,平成16年2月に原告X1を創設し,それ以後,模範的な応援団活動をしており,一般会員の保護者をはじめ周囲からも信頼を集めており,原告X10はもちろん,販売拒否対象原告ら及び原告X1は,少なくともこの間何らの不祥事も起こしてはいない。
したがって,原告X10が,暴力団に類する反社会的団体に所属する者(本件約
款3条1号)や暴力団員等と組織上の関係を有する団体に所属する者(同条3号)に該当しないことは明らかである。また,本件約款3条4号の社会的に相当と認められない密接な関係を有する者とは,その文言からも,条文構成からも,暴力団等又は暴力団員等と組織上又は業務上の関係を有し又は当該関係を有する団体に所属する者(同条3号)や資金その他の便益を提供する者(同条4号前段)と同程度の事情が認められる者,すなわち暴力団の準構成員,いわゆるフロント企業及び恒常的にその周辺にいる者と解されるべきであり,親族に暴力団関係者が存在するにすぎないとか,地域社会の中での顔見知りで,多少の付き合いがある程度の者は,これに該当しないというべきであるから,原告X10が,当該条項に該当しないことも明らかである。

被告らは,原告X1の団員であったHが,暴力団に類する反社会的団体に所
属する者(本件約款3条1号)に該当すると主張するが,Hに係る事情は,原告X10ほか原告X1の関係者は認識し得なかったものである。

被告らは,原告X1の平成17年ないし平成19年の特別応援許可申請書に
虚偽記載をしたとし,そのことを理由として,その虚偽記載の実行者として原告X10が販売拒否対象者に当たるとし(本件約款11条1項),また,その虚偽記載のあった3年間の原告X1の他の構成員に対しても販売拒否対象者として指定できる(同条2項)と主張する。
しかし,本件約款11条1項に基づいて販売拒否対象者の指定ができるのは,実際に試合を観戦し,所定の違反行為をした観客に対してであり,試合観戦とは無関係な特別応援許可申請時の事情に基づく販売拒否対象者の指定は許されない。しかも,被告らが指摘する特別応援許可申請書における不利益事項の不記載は,愛知地区協議会の指導によるものであるから,被告らがその不記載を原告らに不利益に扱うことはできないし,少なくとも悪質であると評価することはできない。また,所属する応援団が特別応援許可申請時に不利益事項を申告しなかったとしても,それは組織ぐるみで行っているわけではなく,その事務にかかわらない者に法
的な責任が生ずるものとはいえない。
さらに,過去に販売拒否対象者の指定がされた事例と比較しても,本件販売拒否対象者指定は,処分内容が著しく均衡を失しており,平等原則や比例原則に反するものである。
以上のとおり,販売拒否対象原告らについて,本件販売拒否対象者指定を正当化する事情は何ら見いだすことはできないから,本件販売拒否対象者指定は,球場でプロ野球を観戦する権利を侵害し,権利濫用に当たり,上記(ウ)の特段の事情の認められない限り球場でのプロ野球観戦を許諾する旨の黙示の契約に反するものであるから,違法,無効である。
(カ)原告X1に対する本件応援不許可が違法,無効であること
被告らは,原告X1に対する本件応援不許可の理由について特に言及していないが,本件販売拒否対象者指定に関して主張している理由がそのまま本件応援不許可の理由であると主張しているものと思われる。
しかし,本件販売拒否対象者指定に関して主張する事実関係については,前記(エ)のとおり,本件応援不許可の理由とはなり得ないし,過去の事例と比較しても,原告X1に対する本件応援不許可は,処分内容が著しく均衡を失しており,平等原則や比例原則に反するものである。
したがって,原告X1について本件応援不許可を正当化する事情は何ら見いだすことはできないから,原告X1に対する本件応援不許可は,応援団方式による応援をする権利を侵害し,権利濫用に当たり,上記(ウ)の応援団方式による応援を許諾する旨の黙示の契約に反するものであるから,違法,無効である。(キ)請求1(1)ないし(6)の各請求について

請求1(1),(2)

上記のとおり本件応援不許可は違法,無効であるところ,被告らは,団体原告らが応援団方式による応援をしようとすれば,団体原告らの構成員が別紙応援方法目録記載の方法で応援することを,その中止や退場を求め,あるいは退場させ,又は
今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害するおそれがあることは明らかであるから,原告らは,被告らに対し,上記の妨害行為の差止めを求める。b
請求1(3)

上記のとおり本件販売拒否対象者指定は権利濫用により違法,無効であるというべきであるから,販売拒否対象原告らは,被告らに対し,本件販売拒否対象者指定が無効であることの確認を求める。

請求1(4)

上記のとおり本件販売拒否対象者指定は違法,無効であるところ,被告らは,販売拒否対象原告らが入場券を取得した上で球場に入場し試合や催事等を観ようとすれば,退場を求め,あるいは退場させるなどして妨害するおそれがあることは明らかであるから,販売拒否対象原告らは,被告らに対し,上記の妨害行為の差止めを求める。

請求1(5),(6)

上記のとおり本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定は違法であり,被告らに民法709条,719条の共同不法行為が成立するところ,原告らはこれによって多大な精神的苦痛を被ったから,販売拒否対象原告らは,被告らに対し,慰謝料20万円及び弁護士費用2万円並びにこれらに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを(請求1(5)),販売拒否対象原告ら以外の個人原告らは,慰謝料10万円及び弁護士費用1万円並びにこれらに対する別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを(請求1(6)),それぞれ求める。
(被告らの主張)
(ア)原告X2ないし8に対する本件応援不許可について
原告X2の役員である原告X9は,暴力団員としての経歴を有し暴力団関係者との密接な付き合いがあると認められるFに親和性を持つ人物であり,反暴排協の中
心人物として活発に活動している上,原告X2ないし8そのものも,悪質応援団と親和性を有している。このような団体は,悪質応援団排除の制度趣旨に照らし応援団方式による応援を行う許可団体としてふさわしくないことは明らかである。応援団方式による応援に関する許可は,主催球団の完全な裁量に属するものであり,上記の事情を斟酌して原告X2ないし8の申請を不許可としたことは適法,有効である。
(イ)原告X1の構成員に対する本件販売拒否対象者指定についてa
原告X10について

原告X1の代表者である原告X10は,暴力団幹部が少なくとも2代にわたって議長を務めるなど,暴力団と極めて関係の深いWの傘下団体であり,幹部らが多数の犯罪行為を繰り返しているG同盟の要職にあるばかりでなく,暴力団との親交も深く,暴力団がらみの犯罪歴を複数有しているのであるから,暴力団に類する反社会的団体に所属する者(本件約款3条1号),暴力団員等と組織上の関係を有する団体に所属する者(同条3号)及び暴力団員等と社会的に相当と認められない密接な関係を有する者(同条4号)に該当する。

Hについて

原告X1の平成20年度の特別応援許可申請書に同原告の幹事と記載されているHは,少なくとも暴力団員と報道されている者であり,暴力団に類する反社会的団体に所属する者(本件約款3条1号)に該当する者である。Hは,平成16年3月に傷害罪で逮捕され,罰金刑に処せられている。

虚偽記載とその他会員の排除について

上記各事実にもかかわらず,原告X1の平成18年度の特別応援許可申請書には,暴力団等と密接な関係を有していた者はいない旨記載され,平成19年度及び平成20年度の特別応援許可更新申請書には,罰金以上の刑を受けた者はいない旨記載されている。これは本件許可規程2条5項(許可申請書への虚偽記載の禁止)に違反し,本件許可規程は本件約款の一部を構成するから(本件許可規程12
条1項),本件約款に違反する。
構成員の犯罪事実や暴力団との関係の有無は当該応援団の性質を判断する上で極めて重要な意味を持つから,上記虚偽記載は極めて悪質と評価せざるを得ない。したがって,上記虚偽記載を行った原告X10に対して販売拒否対象者と指定することができる上(本件約款11条1項),上記虚偽記載のあった3年度の原告X1の他の構成員に対しても販売拒否対象者として指定することができる(同条2項)。
したがって,本件販売拒否対象者指定は,本件約款にのっとって正当に行われていることは明らかであり,これを違法,無効とする余地はない。
(ウ)原告らの主張に対し,次のとおり反論する。

球場でプロ野球を観戦する権利,応援団方式による応援をする権利が存しな
いこと
原告らは,球場でプロ野球を観戦すること及び応援団方式による応援をすることは,憲法13条に基づく幸福追求権の一内容をなす人格権ないし法律上保護された利益であると主張する。
しかしながら,人格権的権利として物権的な構成がなされる以上,当該権利の内容が,特定の者にとってではなく,一般人にとって,客観的に人間の基本的生活利益にかかわる重要なものであることが必要である。原告らは,自らが野球の観戦や,それに伴う応援団方式による応援に熱心であったことを根拠として,球場でプロ野球を観戦することや応援団方式による応援をすることが人格権ないし法律上保護された利益であると主張するが,当該観戦や応援行為が物権的権利として構成されるほど,一般的かつ客観的に,人間の生活上の基本的利益にかかわるものと認められないことは明らかである。

継続的契約関係が認められないこと

原告らは,団体原告らと被告らとの間において,団体原告らが応援団方式による応援をすることや,円滑な試合進行や観客の安全かつ平穏な試合観戦を妨害する等
の問題行動を起こすなど特段の事情の認められない限り団体原告らの構成員が球場でプロ野球を観戦することを,許諾する旨の黙示の契約が成立していたと主張する。しかしながら,過去に応援団方式による応援を認めたことがあるからといって,将来にわたり,応援団方式による応援を認められ,また販売拒否対象者として指定されないという利益又は権利が,継続的契約関係に関する法理から導き出されることはない。
主催球団が,どの応援団に対し,応援団方式による応援を認めるかは,主催球団の契約自由の原則及び経営判断に基づく裁量権の行使であり,また,主催球団が入場券の販売をしないとの決定をすることも契約自由の原則として認められる。原告らが主張する事実関係によって,上記の裁量権や契約自由の原則が制限されることはない。c
権利濫用には当たらないこと

原告らは,本件不許可及び本件販売拒否者指定が,権利濫用に当たると主張する。しかしながら,原告らの主張が成り立つためには,原告らに,侵害の対象となる一定の権利ないし利益が存在することが前提となるべきところ,上記aのとおり,プロ野球観戦,応援団方式による応援行為にそのような権利ないし利益を認める余地はなく,権利濫用に基づく主張が認められる余地はない。

請求2(1)ないし(5)の各請求の成否(本件応援不許可及び本件販売拒否対象
者指定が,独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に当たるか否か)(原告らの主張)
(ア)優越的地位の濫用禁止
事業者は,不公正な取引方法を用いてはならず(独禁法19条),事業者団体は,事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにしてはならない(同法8条1項5号)。不公正な取引方法とは,独禁法2条9項各号のいずれかに該当する行為であって,公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものいう(同法2条9項)。独禁法2条9項5号は,自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引することを不公正な取引方法の一つに挙げてお
り,昭和57年公正取引委員会告示第15号(以下一般指定という。)14項は自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,次の各号のいずれかに掲げる行為をすること(優越的地位の濫用)を不公正な取引方法として指定している。そして,同項3号で相手方に不利益となるように取引条件を設定し,又は変更することが,同項4号で前三号に該当する行為のほか,取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えることが,それぞれ優越的地位の濫用行為の具体的行為類型として掲げられている。(イ)被告らの事業者,事業者団体該当性
被告12球団は,いずれも,プロ野球競技の興行等の事業を行う者で,事業者に該当する。
被告Y2は,事業者である被告12球団の共通の利益を増進することを主たる目的とする,被告12球団を社員とする社団法人であり,営利事業を営むことを主目的としていないことから,事業者団体に該当する。また,被告Y2は,自らもプロ野球試合の主催を行っており,事業者にも該当する。
被告Y1は,事業者である被告12球団の共通の利益を増進することを主たる目的とする,被告12球団の連合体であり,営利事業を営むことを主目的としていないことから,事業者団体に該当する。
(ウ)被告らの優越性
プロ野球試合の観戦契約を締結するという取引においては,被告Y3という特定球団の応援団ないしその構成員である原告らは,被告Y3をはじめとする被告12球団及び被告Y2との取引に完全に依存し,被告ら以外に取引先を変更する余地は全くなく,被告12球団や被告Y2との上記取引の継続が困難になることが原告らにとって多大な不利益となるため,同被告らが原告らにとって著しく不利益な要請等を行っても原告らがこれを受け入れざるを得ないような状況が存する。したがって,被告12球団及び被告Y2の上記取引上の地位は,原告らに優越していると認められる。

(エ)本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定の不当性
本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定は,いずれも,原告らの責めに帰すべき事由が見当たらないにもかかわらず,事前に告知聴聞の機会を与えず,理由すら告げず,他の応援団や過去の事例と比し不合理な差別をしてなされたものである上,異議申立ての機会も与えていないことなどからすれば,公正な競争秩序の維持,促進の立場から是認される商慣習に照らし不当であることは明らかである。(オ)本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定が独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に該当すること
本件応援不許可は,プロ野球試合の観戦契約を締結するという取引において,相手方に不利益となるように取引条件を設定し,又は変更すること(一般指定14項3号)に,本件販売拒否対象者指定は,プロ野球試合の観戦契約を締結するという取引の…実施について相手方に不利益を与えること(同項4号)に,それぞれ該当し,これらは自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること(独禁法2条9項5号)に該当する。(カ)請求2(1)ないし(5)の各請求について

請求2(1),(2)

上記のとおり本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定は独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に当たるところ,原告らは,これにより応援団方式による応援をする機会を奪われるという著しい損害を被っており,また,販売拒否対象者として指定された原告X1の構成員らは,これにより球場に入場してプロ野球の試合等を観戦することができないという著しい損害を被っているから,原告らは,被告らに対し,独禁法24条に基づいて,本件応援不許可に係る通知の撤回を求める。b
請求2(3),(4)

上記のとおり本件応援不許可は独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に当たるところ,原告らは,これにより応援団方式による応援をする機会を奪われるという著しい損害を被っており,被告らは,原告らが別紙応援方法目録記載の方法で応援
を行うことを,その中止や退場を求め,退場させ,又は今後の入場を禁止することを告知するなどして妨害し,あるいは妨害するようにさせるおそれがあることは明らかであるから,原告らは,被告らに対し,独禁法24条に基づいて,上記の妨害行為の差止めを求める。

請求2(5)

上記のとおり本件販売拒否対象者指定は独禁法2条9項5号の不公正な取引方法に当たるところ,販売拒否対象原告らは,これにより球場に入場してプロ野球の試合等を観戦することができないという著しい損害を被っており,被告らは,入場券を取得した販売拒否対象原告らが試合や催事等の行われる球場に入場し試合や催事等を観ることを,退場を求め,又は退場させるなどして妨害し,あるいは妨害するようにさせるおそれがあることは明らかであるから,販売拒否対象原告らは,被告らに対し,独禁法24条に基づいて,上記の妨害行為の差止めを求める。(被告らの主張)
被告ら(被告Y1を除く。)による本件約款及び本件許可規程の運用は,悪質応援団問題に端を発した暴力団排除活動の一環として,観客が平穏,安全にプロ野球を観戦できるようにするという同被告らの施設管理権の行使及び安全配慮義務の履行として行っているものであるから,同被告らのこのような措置について,経済法,競争法である独禁法上の規制が及ぶことはあり得ないのであり,同被告らの対応が,独禁法の観点から違法,不当と評価される余地はない。
一般指定14項の不当性は,商慣習上の不当性すなわち独禁法2条9項における公正競争阻害性を意味すると解すべきところ,被告らの上記の行為が公正競争阻害性を有しないことは明らかである。原告らの主張は,公正競争阻害性をあえて無視し,原告ら独自の概念に基づくものであり,失当である。
また,独禁法2条9項5号にいう取引することは,文理上取引拒絶と読み替えることはできないから,本件応援不許可や本件販売拒否対象者指定のような行為は,上記取引することに該当しない。

さらに,一般指定14項適用の前提となる独禁法2条9項の公正競争阻害性について,非事業者に直接の不利益を与えることのみを理由として,公正な競争阻害のおそれがあるかのごとく論ずる原告らの主張は,独禁法の解釈を誤る独自の解釈であり,失当である。
したがって,原告らの独禁法24条を根拠とする請求が成立する余地はない。第3
1
当裁判所の判断
本案前の争点について

(1)団体原告らの当事者能力の有無について
団体原告らは,いずれも法人格を有しない団体であるから,民訴法29条の要件を満たす場合にのみ当事者能力が認められるところ,法人でない社団として同条により当事者能力が認められるためには,団体としての組織を備え,当該団体の意思決定において多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要するものと解すべきである(最高裁昭和35年(オ)第1029号同39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。
そこで,以上の観点から,団体原告らが民訴法29条の要件を満たすかどうかについて検討する。

原告X2ないし8について

証拠(甲48)によれば,原告X2ないし8は,中日ドラゴンズ私設応援団全国A連合会則を定めこれに従って運営されており,原告X2には,役員として代表者の総代表のほか総本部長,事務総長等が,原告X2以外の各本部には,役員として代表者の会長のほか副会長,事務局長等が,それぞれ置かれていること,これらの代表者は,基本的に先代の代表者の指名により役員会で承認されて決定され,他の役員は総代表の指名等により役員経験者等から決定されること,原告X2ないし8の意思決定は,毎年4月,9月,11月に開催され
る全国A連合役員会での決議によっており,この決定事項が各会員に伝達されることが認められる。
以上の事実関係によれば,全国A連合を組織する原告X2ないし8は,それぞれの団体を個別にみると,各団体固有の会則を有するものではなく,また,各団体において,その団体の意思が多数決の原則によって決定されているということもできない。
したがって,原告X2ないし8は,それぞれの団体が法人でない社団として民訴法29条の要件を満たすものとは認められないから,原告X2ないし8について当事者能力を認めることはできない。

原告X1について

証拠(甲35,49,原告X10)によれば,原告X1は,平成16年に中日ドラゴンズを応援する団体として発足したもので,会則が定められておらず慣例により運営されていること,代表者の会長のほか,役員として団長,幹事長,事務局長等が置かれているが,設立時から原告X10が代表者を務め,他の役員は会長である原告X10が指名してきたこと,原告X1には,十数名の団員のほか,約200名の一般会員がおり,一般会員からも会費を徴収していること,原告X1の総会が原告X10の経営する会社の事務室等で毎年12月及び2月に開催され,役員決定,会計報告その他の決議事項について決議,承認がされていたが,総会には一般会員は出席していなかったことが認められる。
以上の事実関係によれば,原告X1は,会則が定められておらず慣例によって運営されているものであるから,代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているということはできず,また,一般会員は会費を支払っているから原告X1の財産の使途につき利害関係を有するところ,原告X1の意思が一般会員を含めた多数決の原則によって決定されているということもできない。したがって,原告X1は,法人でない社団として民訴法29条の要件を満たすものとは認められないから,原告X1について当事者能力を認めることはできない。

被告らが団体原告らの民訴法29条の要件充足性を争うことが信義則に反す
るとの原告らの主張について
原告らは,被告らが,団体原告らに対し本件応援不許可という不利益処分を課している以上,団体原告らについて民訴法29条の要件充足性を争うことは,禁反言の法理により信義則に反する旨主張するが,同条の要件を充足するか否かは,当該団体がその名において訴訟を追行することができるかどうかという当事者能力の問題であり,その団体が備えている独立性,組織性等から客観的に判断されるべき事柄であるから,被告らが団体原告らに対し本件応援不許可をしたことがその判断に影響を及ぼすものではない。
したがって,被告らが団体原告らの民訴法29条の要件充足性を争うことが信義則に反するという原告らの主張は,採用することができない。
(2)被告Y1の被告適格の有無について

被告は,請求1(1)ないし(4),2(1),(2),(3)イ,(4)イ,(5)イに係る訴
えについて,被告Y1が被告適格を有しないと主張するところ,給付の訴えにおいては,その訴えを提起する者が給付義務者であると主張している者に被告適格があり,その者が当該給付義務を負担するかどうかは本案請求の当否にかかわる事柄であると解すべきであるから,本件販売拒否対象者指定の無効確認を求める訴え(請求1(3))を除く上記各訴えについて,いずれも被告Y1は被告適格を有するものというべきである。

次に,本件販売拒否対象者指定の無効確認を求める訴え(請求1(3))につ
き被告Y1が被告適格を有するか否かについて検討する。
本件約款及び本件許可規程によれば,応援団方式による応援の許否及び販売拒否対象者の指定をすることができるのはプロ野球の主催者であり,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定をしたのは,プロ野球の主催者となる被告12球団及び被告Y2である(甲3∼10)。
被告Y1は,野球協約(甲11)によれば,セントラル野球連盟及びその構成球
団とパシフィック野球連盟及びその構成球団により構成されており(1条),そのコミッショナーは,被告Y1を代表し,管理統制するものとされ(8条(1)),コミッショナーは被告Y1に属する団体あるいは個人に指令を発することができ(9条(1)),コミッショナーが下す指令等は,最終決定であって,被告Y1に属するすべての団体と個人を拘束するものとされ(8条(2)),また,コミッショナーは,日本選手権シリーズ試合及びオールスター試合を管理し,被告Y2に主催させるものとされているから(8条(6)),日本選手権シリーズ試合及びオールスター試合を主催する被告Y2,年度連盟選手権試合を主催する被告12球団の上位団体として,各試合の統一的な運営を図るべく意思決定,指令を行っているものというべきであるが,プロ野球の主催者になることは予定されていない。
したがって,本件販売拒否対象者指定の無効確認については,その直接の判断権者である被告12球団及び被告Y2を被告とする請求に対して判断すれば,販売拒否対象原告らの権利救済を図る上で必要にして十分であると認められるから,被告Y1は被告適格を有しないものというべきである。
(3)不起訴の合意の成否について
被告らは,本件約款11条3項及び本件許可規程8条1項により,異議の申出が禁止されていることを理由に,不起訴の合意が存するとし,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定が違法,無効であることを理由とする訴えを提起することは許されないと主張する。
しかしながら,本件約款及び本件許可規程は,被告12球団及び被告Y2が制定したものであり,対等な当事者間でされた合意とは性格を異にするものである上,その内容は,後述のとおりの公共的な性格を有するプロ野球の観戦について,一定の制約を加える事柄を含むものであるから,本件約款11条3項及び本件許可規程8条1項が販売拒否対象者の指定や特別応援許可等に関する判断に対し異議の申立てやこれを争うことができない旨の定めをしているとしても,それをもって,販売拒否対象者の指定を受けた者や特別応援許可を受けられなかった者との間で不起訴
の合意があったとまで解するのは相当ではない。
したがって,本件約款11条3項及び本件許可規程8条1項により本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定が違法,無効であることを理由とする訴えを提起することが許されないとする被告らの主張は,採用することができない。(4)確認の利益の有無について
被告らは,請求1(3)に係る訴えについて,販売拒否対象者の指定(本件約款11条3項)は,将来入場券の購入の申込みがあっても承諾をする意思はないという事実を伝達したものにすぎず,直接的に法律効果の発生に向けられた行為ではないし,仮に販売拒否対象者の指定が無効であり,その無効を宣言したとしても,それによって,被告らに対し当然に入場券の売買契約締結義務が課されるわけではないから,請求1(3)の訴えは確認の利益を欠く旨主張する。
しかしながら,本件約款によれば,プロ野球の主催者は,販売拒否対象者の指定を受けた者に対して,入場券を販売せず,また,入場券を取得したとしてもその入場を拒否することができるとされているから(3条8号),販売拒否対象原告らは,たとえプロ野球の観戦のため球場への入場を希望したとしても,本件販売拒否対象者指定により,将来にわたって入場券を購入することができず,また,何らかの方法により入場券を取得しても,その入場を拒否される地位に置かれるのである。本件では,販売拒否対象原告らがそのような地位に置かれるのが正当であるのかどうかが争われているところ,その争いは,後述のとおりのプロ野球の公共的な性格を考慮すると,販売拒否対象原告らの法的な利益と何ら関係のない単なる事実上の争いと見るのは相当でなく,法律上の争訟の範ちゅうに属するものと見るのが相当である。そして,仮に本件販売拒否対象者指定の無効が確認されれば,販売拒否対象原告らは,その他の販売拒否事由及び入場拒否事由に該当しない限り,一般の観客と同じように入場券を購入して球場に入場し,退場させられることなく試合観戦をすることができるようになることが合理的に期待できるから,本件販売拒否対象者指定の無効確認を求めることは,上記の紛争を解決するための有効,適切な方法で
あるということができる。
したがって,販売拒否対象原告らは,本件販売拒否対象者指定の無効確認について確認の利益を有するものと認めるのが相当である。
(5)小括
以上によれば,本件訴えのうち,請求1(1),2(1),(3)ア,イの各訴え,被告Y1に対する請求1(3)の各訴えは,いずれも不適法であるから却下すべきである。2
本案の争点について

本件各請求のうち,請求1(2)ないし(6),2(2),(4)ア,イ,(5)ア,イの各請求(請求1(3)につき被告Y1に対するものを除く。)について,以下,本案の争点につき検討する。
(1)請求1(2)ないし(6)の各請求(請求1(3)につき被告Y1に対するものを除く。)の成否について

球場でプロ野球を観戦する権利,応援団方式による応援をする権利の存否に
ついて
原告らは,球場でプロ野球を観戦すること及び応援団方式による応援をすることは,憲法13条に基づく幸福追求権の一内容をなす人格権ないし法律上保護された利益であると主張する。
しかしながら,プロ野球は,他のプロスポーツと同様に,主催者の主催の下にそのスポーツを職業とする選手が球場で試合を行い,観客は入場料を支払ってその試合を観戦することにより成り立っているものであって,その試合をどのように行うか,どのようなイメージのスポーツを目指すか,観客席の雰囲気をどのようなものにするかなど,その運営に関する事項は,主催者がその裁量によって決定することができるものであり,主催者と観客との法律関係は,基本的には契約自由の原則によって規律されるものである。
したがって,球場でプロ野球を観戦すること及び応援団方式による応援をすることについても,基本的には契約自由の原則を前提として,主催者の裁量によってそ
の許否が決せられる事柄であるというべきであり,球場でプロ野球を観戦することや応援団方式による応援をすることが,主催者の裁量的判断に優越する人格権ないし法律上保護された利益であるということはできない。

継続的契約関係の形成に関する原告らの主張について

原告らは,団体原告らが長年にわたり応援団方式による応援を行うことを継続して許されてきたことから,団体原告らと被告らとの間において,団体原告らが応援団方式による応援をすることや,円滑な試合進行や観客の安全かつ平穏な試合観戦を妨害する等の問題行動を起こすなど特段の事情の認められない限り団体原告らの構成員が球場でプロ野球を観戦することを許諾する旨の黙示の契約が成立していたと主張する。
しかしながら,上記アのとおり,プロ野球の主催者と観客との関係は,契約自由の原則に基づくものである上,本件許可規程によれば,特別応援許可が主催者の裁量事項に属し(8条),許可の期間は年度ごととされているから(4条5項),団体原告らが過去に特別応援許可を受けたことがあったとしても,それは当該年度に限ったものであることが明らかである。
したがって,原告らが主張するような過去の事実関係のみから,原告らと被告らの間に,被告らにおいて応援団方式による応援や球場でのプロ野球観戦を許諾することが義務付けられるような継続的契約関係が形成されたものと認めることはできない。

権利濫用の主張について

上記アで述べたとおり,プロ野球の主催者である被告12球団及び被告Y2は,プロ野球の運営に関する事項を,その裁量によって決定することができるものである。
もっとも,プロ野球は,我が国で最も人気のある伝統的なプロスポーツの一つであり,多くのプロ野球ファンが全国各地の球場で試合観戦をし,一部の試合はテレビでも放映されテレビにより観戦するファンも少なくない上,プロ野球は,公益を
目的とする社団法人である被告Y2がその運営を統括しており,オリンピックやワールド・ベースボール・クラシック等の全国民の期待を担う日本代表選手やスタッフを輩出し,その運営にも深くかかわっているから,国民的なスポーツとしての公共的な性格を有するものということができる。このようなプロ野球の公共的な性格を考慮すると,上記のような主催者の裁量に属する事項であっても,その判断が事実の基礎を欠くものであるか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであって,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合には,権利濫用として違法となり得る余地があるというべきである。
そこで,以下,上記の観点から,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定が権利濫用として違法と認められるか否かについて検討する。
(ア)前記前提事実に証拠(甲3∼10,27∼37,51∼53,56,59,60,62,乙1∼26,33∼39《枝番号を含む。》,証人I,原告X9,原告X10)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。a
プロ野球の各球場において,暴力団や悪質応援団による粗暴行為,不当行為
等が問題視されるようになり,平成15年11月18日,被告Y1のコミッショナー及びコミッショナー事務局,被告12球団並びに各球場で構成される暴排協が設立された。暴排協に設けられた中央協議会は,同年12月9日,暴力団排除宣言を採択した。

暴排協は,その下部組織として各地区協議会を設立するとの方針を立て,平
成16年1月19日,東京地区協議会が設立された。東京地区協議会は,同月28日,悪質応援団に対する処分の基準として,①


暴力団関係者が支配する応援団,

暴力団関係者が直接支配していないが密接な関係がある応援団,③
密接な関

係がなくても粗暴行為,不正行為,不当要求等,暴力団と同質の犯罪性,反社会性が認められる応援団という3つ類型を定め,この類型に当てはまる応援団のメンバー全員を入場禁止とする方針をまとめ,同年2月6日,J,K,L,Mの4団体を排除団体に指定し,平成16年度中の東京ドーム及び神宮球場への立入りを禁止す
る旨の決定をした。被告Y1のコミッショナーは,これらの4団体を一斉排除するため,同年3月10日,各地区協議会に対し,これらの4団体に排除通知書を送付することを要請し,各地区協議会は,これを受けて,排除通知書を送付した。また,同コミッショナーは,各地区協議会に対し,各応援団に構成員の名簿の提出を求めることを要請した。

そのころ,全国の応援団を束ねるプロ野球応援協会を特定非営利活動法
人として設立する動きが起きた。同協会の定款によれば,理事のうち報酬を受ける者は,N,O,原告X9及びPの4名であったが,Nは,Qの中心人物であり,応援団の仲間に対する脅迫と暴行の罪で有罪判決を受けた者であり,Oは,Rの総裁を務めるとともに,右翼団体のSを主宰しており,同団体にかかわる政治資金規正法違反の罪で有罪判決を受けた者であった。Oは,暴力団との関係も疑われていた。Nらは,大阪府知事に対し,プロ野球応援協会について特定非営利活動法人として設立することを申請した。被告Y1及び被告12球団は,同協会の事業計画書において,自由な応援活動を維持するための署名活動等の費用,野球場内及びその周辺での迷惑行為・危険行為の防止,トラブル等の仲裁の費用,野球場内の観客席を確保し,無料で提供すること等のスポーツ振興事業の費用等が計上されており,同協会が,暴排協の活動に反対することが目的とされ,本来主催者側が行うべきトラブル等の仲裁を行ったり,過剰な席取りを前提とした活動をする団体であると考えられたことから,特定非営利活動法人としての設立に反対する旨を表明した。大阪府知事は,平成16年6月24日,上記申請を認証しない旨の決定をした。d
本件約款及び本件許可規程が被告12球団及び被告Y2により制定され,平
成17年7月19日から施行された。
団体原告らは,原告X6を除き,平成18年度及び平成19年度において,いずれも特別応援許可を受けた。なお,原告X6は,平成18年度においては,平成17年度の開幕戦で一般会員(準会員)がグラウンドにメガホンを投げ入れたことが申請書に記載されていなかったとして,特別応援許可の申請が不許可とされたが,
平成19年度においては特別応援許可を受けた。

平成19年12月20日に開催された中央協議会において,月刊誌実話ドキュメントの平成18年9月号に,原告X1会長の原告X10及び原告X2の当時の総代表の原告X11が,それぞれ街宣車を背景にし戦闘服を着て立っている姿を写した写真が掲載されていたことが問題とされた。
その後に開催された中央協議会において,原告X10につき,平成9年に暴走族の集団暴走による道路交通法違反の罪で,同年に暴力団幹部と共謀し被害者を組事務所に呼び付けて30万円を脅し取った恐喝の罪で,平成14年に暴力団員と共に被害者を組事務所に連れ込んで暴行を加え傷害を追わせた暴行,傷害の罪で,それぞれ処罰されたこと,平成14年時点で暴力団Tと密接な交際があると認められること,原告X10の所属している右翼団体であるG同盟の本部長,幹部,元隊員等が犯罪行為をしていること,原告X1による特別応援許可申請において,暴力団と密接な関係があることについての記載がなかったことなどが報告された。原告X2ないし8については,原告X9が会長を務めていた中部応援団協議会(セントラル野球連盟の6球団の名古屋地区応援団の連合組織)から,M,R及びプロ野球応援協会に多額の金員が支払われていたこと,原告X9が中部応援団協議会の2代目会長を務め,初代会長はFであったこと,Fと原告X9は,共に右翼団体であるUに所属し,Fは元V組組長でダフ屋行為をしていたこと,原告X2ないし8が近年もFの墓参りを組織的に行っていること,原告X2ないし8が販売拒否対象者処分を受けた応援団に宴会代や差入代等を支出していることなどが報告された。このほか,団体原告らの構成員数が極端に多いことも問題とされた。
その結果,被告12球団及び被告Y2は,原告X2ないし8については特別応援許可申請を不許可とし,原告X1については,これに加えて,平成18年度から平成20年度までの3年度に申請した正会員25名を販売拒否対象者として指定することとし,平成20年3月27日付け書面により,原告X1を除く団体原告らに対し本件応援不許可を,原告X1に対し本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定
を,それぞれ通知した。

上記の事実関係のほか,次のような事実が存する。

(a)平成20年度の特別応援許可更新申請書に原告X1の幹事として記載されているHは,平成16年3月に傷害罪で逮捕され,罰金刑に処せられた者であり,同月16日の中日新聞の朝刊には,Hが暴力団組員として報道されている。(b)原告X2の役員である原告X9は,昭和63年11月27日,被告Y3の私設応援団であるCが有力選手等を招いて開催したパーティーに乱入し,同会の役員等5名に傷害を負わせた事件に関与し,傷害の罪で罰金刑に処せられた。(イ)以上の事実関係を基に,以下検討する。

原告X2ないし8に対する本件応援不許可について

応援団方式による応援は,観客が個々人でする応援とは異なり,トランペット等の楽器を用いたり,応援旗等の他の観客の観戦に支障を及ぼすおそれのある物を使用したり,観客を組織化し又は観客の応援を統率して行われるものであって,その応援方法によっては,他の観客に迷惑をかけ,球場における秩序を乱すことがあり得るものであるから,応援団方式による応援を認めるか否か,その際にどのような条件を付するかなどについては,本来的に主催者が自由に決定できるものである。また,主催者は,どのようなイメージのスポーツを目指すか,観客席の雰囲気をどのようなものにするかなど,その運営に関する事項をすべてその裁量によって決定することができることからすると,当該団体について球場の秩序を乱す具体的な危険が認められなくとも,主催者が応援団方式による応援をするのにふさわしくないと判断した場合には,これを不許可とすることも許されるものと解される。このことは,本件許可規程8条1項において,特別応援許可等の判断が,当該球団の自由な裁量に基づくものであると定められていることからも明らかである。被告らは,原告X2ないし8に対する本件応援不許可の理由として,原告X2の役員である原告X9が,暴力団員としての経歴を有し暴力団関係者との密接な付き合いがあると認められるFに親和性を持つ人物であり,反暴排協の中心人物として
活動している上,原告X2ないし8そのものも悪質応援団と親和性を有していることから,応援団方式による応援をするにはふさわしくないと判断した旨主張しているところ,被告らが原告X2ないし8につき把握していた上記の事実関係について,明らかな事実誤認があるとは認めらず,これらの事実関係を基に,被告12球団及び被告Y2において,原告X2ないし8につき応援団方式による応援をするにはふさわしくないと判断したことが,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるとも認められない。
なお,原告らは,プロ野球応援協会が暴排協に反対することを目的とするものではない旨主張するが,被告12球団及び被告Y2が,同協会の中心人物2名の素行上の問題点や同協会の事業計画書の内容から,暴排協に反対することを目的としていると判断したことは不合理であるとはいえないし,仮に,原告X9が同協会の設立にかかわった事実を除いたとしても,被告12球団及び被告Y2において,原告X2ないし8につき応援団方式による応援をするにはふさわしくないと判断したことが,事実の基礎を欠くものであるとか,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるとは認められない。
また,原告らは,過去の事例と比較して原告X2ないし8に対する本件応援不許可が不当で平等原則に反すると主張するが,本件記録上うかがわれる他の事例と比較しても,原告X2ないし8に対する本件応援不許可が平等原則に反するものとは認められない。
原告X2ないし8については,原告X2ないし8が暴力団の排除に向けた努力をし,IDカードによる入場券管理システムを構築するなどして球場の健全化に努めていたことや,平成17年度に原告X6の一般会員(準会員)がグラウンドにメガホンを投げ入れたことや平成19年度に原告X4の団員がジャイアンツの応援団が作成した奪回と書かれたボードを破ったことのほか原告X2ないし8において特段の問題行動がなかったこと(甲15,16,51《枝番号を含む。》,原告X9)などの事情が認められるが,これらの事情を考慮したとしても,被告らが把握
していた前記の事実関係の下においては,被告12球団及び被告Y2が原告X2ないし8に対してした本件応援不許可が,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないから,権利濫用として違法になるものとは認められない。

原告X1に対する本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定について
被告らは,原告X1の代表者である原告X10が,暴力団と極めて関係の深いWの傘下団体であり,幹部らが多数の犯罪行為を繰り返しているG同盟の要職にあるばかりでなく,暴力団との親交も深く,暴力団がらみの犯罪歴を有していること,原告X1の幹事であったHが暴力団員で平成16年3月に傷害罪で逮捕され罰金刑に処せられたこと,それにもかかわらず,原告X1の平成18年度の特別応援許可申請書には,暴力団等と密接な関係を有していた者はいない旨記載され,平成19年度及び平成20年度の特別応援許可更新申請書には,罰金以上の刑を受けた者はいない旨記載されていたことが,本件許可規程2条5項(許可申請書への虚偽記載の禁止)に違反し,本件許可規程は本件約款の一部を構成するから,上記の虚偽記載は本件約款に違反し,それが悪質であるとして,被告12球団及び被告Y2において,虚偽記載を行った原告X10につき本件約款11条1項に基づき,虚偽記載のあった3年度の原告X1の他の構成員につき同条2項に基づき,それぞれ本件販売拒否対象者指定をしたと主張する。
しかしながら,本件約款11条1項は,観客が,主催者又は主催者以外の者の主催する試合において,持込禁止物を持ち込んだ場合,禁止行為に違反した場合,禁止された応援行為を行った場合,その他本約款に違反した場合において,主催者が当該行為を悪質であると判断するとき,主催者は,当該違反者を第3条の販売拒否対象者として指定する。と定めているところ,この文言からすれば,同項は,観客が試合観戦をする際に本件約款に違反する行為を行い,主催者がこれを悪質であると判断した場合に当該観客を販売拒否対象者として指定することができることを定めたものであり,試合観戦の際に何ら違反行為をしていない者について,特別
応援許可申請において虚偽記載があったことを理由として販売拒否対象者として指定することまでを予定した規定であるとは解されない。
被告12球団及び被告Y2は,公共的な性格を有するプロ野球の主催者として,円滑な試合進行と観客の安全かつ平穏な試合観戦の確保を目的として本件約款及び本件許可規程を定め,これらをホームページ等で公表しているのであるから,これらの定めに従ってプロ野球を運営すべきであり,プロ野球を支える全国のプロ野球ファンにおいても,そのように運営されることが合理的に期待されているというべきである。そして,販売拒否対象者の指定は,球場での観戦自体を制限するものであるから,応援団方式による応援のように,他の観客に迷惑をかけ球場における秩序を乱す危険性を内在する行為を制限する場面とは異なり,その制限についてはより慎重にすべきであり,本件約款の定める販売拒否対象者指定の要件を欠くにもかかわらず,その指定を行うことは,入場券の販売に関し主催者が裁量権を有することを考慮しても,その裁量権の範囲を逸脱するものとして,許されないというべきである。
本件全証拠によっても,原告X1が設立されてからその団員が試合観戦の際に本件約款に違反する等の問題行動をした事実を認めることはできず,販売拒否対象原告らにつき本件約款11条所定の販売拒否対象者指定の要件に該当する事実を認めることはできないから,被告12球団及び被告Y2が販売拒否対象原告らに対してした本件販売拒否対象者指定は,本件約款の定める販売拒否対象者指定の要件を欠くものであって,その裁量権の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。したがって,本件販売拒否対象者指定は,権利濫用として違法であり,無効なものというべきである。
一方,原告X1に対する本件応援不許可については,被告12球団及び被告Y2は,原告X1に関する前記事実関係を基に本件応援不許可をしたものと解されるところ,前記aで述べた応援団方式による応援に対する許否の判断の性質に照らせば,原告X1に対し応援団方式による応援を許可しないこととした判断が事実の基礎を
欠くものであるとか,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであるとは認められない。したがって,被告12球団及び被告Y2が原告X1に対してした本件応援不許可は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないから,権利濫用として違法になるものとは認められない。

小括

以上の判断に基づき,請求1(2)ないし(6)の各請求(請求1(3)につき被告Y1に対するものを除く。)の成否をみると,次のとおりである。
(ア)請求1(2),(6)について
本件応援不許可は適法,有効であるから,請求1(2),(6)は理由がない。(イ)請求1(3)(被告Y1に対するものを除く。)について
本件販売拒否対象者指定は違法であり,無効であるというべきであるから,販売拒否対象原告らが被告12球団及び被告Y2に対し,その無効確認を求める請求1(3)は理由がある。
(ウ)請求1(4)について
本件販売拒否対象者指定は違法,無効であるから,被告12球団及び被告Y2は,本件約款3条8号の販売拒否事由に該当することを理由として,本件約款6条2号に基づき,入場券を取得した販売拒否対象原告らに対し球場への入場を拒否することは許されないというべきである。しかしながら,本件約款3条は,1号から7号までにおいて,販売拒否対象者として指定された者のほかにも販売拒否事由を定めており,また,本件約款6条は,1号及び3号から8号までにおいて,販売拒否事由に該当する者のほかにも入場拒否事由を定めているのであるから,販売拒否対象原告らがこれらの事由に該当する場合には,たとえ入場券を取得したとしても,被告12球団及び被告Y2は,同条に基づき,販売拒否対象原告らに対し球場への入場を拒否することができるのである。そして,販売拒否対象原告らが,これらの事由に該当するかどうかは,販売拒否対象原告らがそれぞれ球場へ入場しようとする際に判断すべき事柄であるから,現時点において,請求1(4)のような球場への入
場等に対する妨害行為の差止請求を認容するのは相当でないというべきである。したがって,請求1(4)は理由がない。
(エ)請求1(5)について
本件応援不許可は適法であるから,請求1(5)のうち,本件応援不許可の違法を請求原因とする部分は理由がない。
一方,被告12球団及び被告Y2がした本件販売拒否対象者指定は違法であるところ,被告Y1は,被告12球団及び被告Y2の上位団体であり,そのコミッショナー及びコミッショナー事務局,被告12球団並びに各球場で構成される暴排協の中央協議会で協議をした上,被告12球団及び被告Y2において本件販売拒否対象者指定をしたのであるから,被告らは,いずれも違法な販売拒否対象者の指定をしたことについて,販売拒否対象原告らに対し共同不法行為責任(民法709条,719条)を負うものというべきである。
そして,販売拒否対象原告らは,違法な本件販売拒否対象者指定により,球場での野球観戦を希望してもそれができないことによる精神的苦痛を被ったものと認められるところ,その制限の内容,期間,その他本件記録上うかがわれる一切の事情を考慮すると,その慰謝料は1人当たり1万円,弁護士費用は1000円とするのが相当である。
(2)請求2(2),(4)ア,イ,(5)ア,イの各請求の成否について請求2(2),(4)ア,イ,(5)ア,イの各請求は,本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定が独禁法2条9項5号の不公正な取引方法(自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること)に当たることを前提として,独禁法24条に基づき侵害の停止又は予防の請求をするものである。
独禁法2条9項によれば,ある行為が独禁法上の不公正な取引方法に当たるというためには,当該行為が公正な競争を阻害するおそれがあるものであることが必要となるところ,ここでいう競争とは事業者間の競争をいうものと解される。本件応援不許可及び本件販売拒否対象者指定は,非事業者である団体原告らに対して
されたものであり,その内容は,前者が応援団方式による応援を許可しないというもの,後者がその団体の構成員につき入場券の販売を拒否する対象者に指定するというものであって,その行為は事業者間の競争とはかかわりのないものであるから,これによって事業者間の公正な競争が阻害されるおそれがあるとは認められない。そうであるとすれば,独禁法24条に基づく上記各請求は,いずれもその前提を欠くものであり,理由がないというべきである(なお,原告らは,請求1(3)と同2(2)のうち,販売拒否対象原告らにつき入場券販売拒否及び入場禁止を通知したものの撤回請求に係る部分は,選択的併合の関係にあるとしているところ,上記(1)エ(イ)で述べたとおり,販売拒否対象原告らの被告12球団及び被告Y2に対する請求1(3)は理由があると認められるので,同被告らに対する請求2(2)のうち上記撤回請求に係る部分については判断の対象としない。)。
3
結論

以上によれば,本件訴えのうち,団体原告らの各訴え,販売拒否対象原告らの請求1(3)の訴えのうち被告Y1に対するものはいずれも不適法であるからこれらを却下し,販売拒否対象原告らの請求のうち,請求1(3)につき被告12球団及び被告Y2に対するものについて,並びに請求1(5)につき被告らに対し連帯して販売拒否対象原告らそれぞれに対し1万1000円及びこれに対する不法行為後の日である別紙遅延損害金起算日目録記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があるから認容し,販売拒否対象原告らのその余の請求及びその余の個人原告らの請求は,いずれも理由がないから棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。

名古屋地方裁判所民事第9部

裁判長裁判官

増田稔
裁判官

前田郁勝
裁判官

杉浦一輝
(別紙)
応援方法目録

(1)トランペット,太鼓,カネ,笛その他の楽器又はこれに類する物を使用した応援
(2)団体原告目録記載の原告らそれぞれにつき別紙写真目録記載の応援旗,横断幕等を使用した応援
(3)観客を組織化し又は観客の応援を統率して行われる集団による応援
(別紙)
試合観戦契約約款

第1章

総則

第1条(目的)
1
本約款は,被告Y3(以下,当球団という)及び当球団から試合(本条
に定義する)に関する興行の許諾を受けた者(以下,当球団とあわせて主催者という。)の主催するプロフェッショナル野球の年度連盟選手権試合,非公式試合,出場選手以外の支配下選手による試合,その他の試合(以下,試合という)の観客の観戦に関する事項を定め,もって,円滑な試合進行と観客の安全かつ平穏な試合観戦を確保することを目的とする。
2
本約款において,以下の用語の意義は,特に文脈上他の意義を有することが
明らかな場合を除いて,それぞれ各号に定めるところによる。
(1)球場とは,試合の行われる球場をいい,球場管理者とは当該球場を管理運営する主体をいう。
(2)試合観戦契約とは,入場券の券面記載の日時及び場所における球場への入場並びに入場券により指定された座席又は場所における試合観戦に関わる契約をいう。
(3)入場券とは,主催者又は主催者からの委託を受けた者が発行した球場への入場及び試合観戦のための証票をいう。
(4)正規入場券とは,入場券のうち,試合観戦を希望する者が,主催者又は主催者の指定する者から取得したもの又は第4条の定めに違反することなく第三者から取得したものをいい,それら以外の態様で取得された入場券,副券が切り離された入場券,入鋏済みの入場券,その他主催者が別途定める入場券を含まない。(5)主催者の職員等とは,主催者の役員及び正社員のほか,契約社員,パートタイマー,アルバイト,派遣社員その他主催者の指揮監督に服する者及び請負契
約,委託契約その他の契約に基づき主催者のために役務を提供する警備員,球場管理者の関係者その他の者をいう。
第2章

観戦契約

第2条(契約の成立)
1
試合観戦契約は,試合観戦を希望する者が,正規入場券を取得したとき,本
約款に基づき成立する。
2
正規入場券を有する者は,正規入場券の定めに従い,本約款及び主催者が予
め告知した条件に基づき,球場に入場し,指定された座席又は場所において試合を観戦することができる。
3
観客は,球場への入場に際し,主催者所定の方法により,正規入場券を提示
したうえで改札を受けるものとし,また,入場後においても球場を退出するまでの間,正規入場券の半券を保持し,主催者の職員等の求めがある場合,これを提示しなければならない。
4
入場券及び入場に関する細目については,第7条の規定によるほか,別途,
主催者において定めるものとする。
第3条(販売拒否事由)
主催者は,以下の各号の一に該当する者に対し入場券の販売をしない。また,その者が当該事由にかかわらず,自ら又は第三者を通じ入場券を取得した場合,主催者はその者に対し,第6条に基づき入場を拒否することができる。(1)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年5月15日

律第77号)第2条の暴力団又はこれに類する反社会的団体(以下,暴力団等という)に所属する者(以下,暴力団員等という)
(2)暴力団員等でなくなった時から5年を経過しない者
(3)暴力団等又は暴力団員等と組織上又は業務上の関係を有し又は当該関係を有する団体に所属する者
(4)暴力団等又は暴力団員等に対し,資金その他の便益を提供し又は社会的に相
当と認められない密接な関係を有する者
(5)第4条に違反する行為を目的として入場券を取得する者
(6)主催者主催の試合に関わるものであるか否かを問わず,第4条に違反する行為,球場もしくはその管理区域内での行為又は組織的な応援に関する活動に関連して罰金以上の刑の言渡を受け,当該裁判の確定の日から5年を経過しない者(7)自ら又は第三者を通じ,主催者が別途定める一人あたりの取得制限枚数を超えて入場券を取得する者(団体の場合は当該団体に所属する者すべてを対象とする)
(8)第11条により販売拒否対象者として指定された者
第4条(転売等の禁止)何人も第三者に対し,主催者の許可を得ることなく,入場券を転売その他の方法で取得させてはならない。但し,家族,友人,取引先,その他これらに類する特定の関係に基づき,営利を目的とせず,かつ,業として行われない場合については,この限りでない。
第5条(持込禁止物)
1
観客は,球場に以下の物を持ち込んではならない。

(1)銃砲刀剣類,花火,爆竹,劇薬物,その他の危険物
(2)著しい悪臭を放ち,観戦を妨げる音量を発し,又は,その他の態様で他の観客の観戦を妨げる虞のある物
(3)ビン,缶類,アイスボックス及びこれらに類する物
(4)ペットその他の動物(但し,盲導犬,聴導犬等を除く)
(5)過度な座席確保を目的とする物
(6)その他主催者又は球場管理者が別途指定する物
2
前項の実効性を確保するため,主催者は,入場時に観客の鞄,袋その他の開
披及び内容の提示を求め,手荷物検査を行うことができる。
第6条(入場拒否)
主催者は,以下の各号の一に該当する者の球場への入場を拒否することができる。
(1)正規入場券を所持せず又はその提示をしない者
(2)第3条の販売拒否事由に該当する者
(3)第5条1項の持込禁止物の持込をしようとし又は同条2項の手荷物検査に応じない者
(4)第8条の禁止行為に違反し又はその虞のある者
(5)著しく酒気を帯びている者
(6)試合の円滑な進行を妨害し又はその虞のある者
(7)他の観客の観戦に著しい支障を生じる行為を行ない又はその虞のある者(8)その他前各号に準じる事由により入場を拒否することが相当と認められる者第3章

観戦

第7条(入場及び退場)
1
観客は,主催者が定めた時刻から球場に入場することができ,試合が終了し
たときは,主催者の職員等の指示に従い,速やかに球場から退場しなければならない。
2
観客は,試合観戦において,次条及び第9条に定めるほか,主催者が適宜定
める注意事項を遵守し,また,主催者の職員等による指示を遵守しなければならない。
第8条(禁止行為)
観客は,以下の行為を行ってはならない。
(1)正規入場券により指定された座席以外の座席を占拠し,又は,通路,階段,出入り口等でたむろしもしくは観戦する行為
(2)自らの試合観戦に不要な自由席や立ち見エリア等を確保する行為(3)フラッシュ,光線,その他これらに類するものを使用した試合妨害の虞のある行為
(4)球場の施設及び物品の毀損行為
(5)物品販売,宣伝広告,アンケート又はチラシの配布その他これらに類する行

(6)他の観客及び監督,コーチ,選手,主催者の職員等,販売店その他の球場関係者への威嚇,作為又は不作為の強要,暴力,その他の迷惑を及ぼす行為(7)座席の確保,応援,観戦その他に関し他の観客に対し金品その他の利益を求める行為
(8)グラウンドへの乱入,客席,コンコース,グラウンド等への物品の投げ入れ,フェンス,ダグアウト,柵,手すり,ネット等へのよじ登り又はぶら下がり行為,グラウンド内に身を乗り出す行為,その他自己又は他人の生命,身体,財産に危険を及ぼす虞のある行為
(9)グラウンド,バックスクリーンその他の立入禁止場所への立入行為(10)宴会,パーティ,賭博,麻雀,その他試合観戦にふさわしくない行為(11)みだりに球場外で気勢を上げ騒音を出す行為
(12)球場管理者の定める球場管理に関する規則又は球場での掲示その他の方法で告知された注意事項に違反する行為
(13)試合の円滑な進行又は他の観客の観戦を妨げ又は妨げる虞のある行為(14)主催者の職員等の指示に反する行為
第9条(応援行為)
1
観客は,当球団の許可を得ることなく,試合観戦に際し,以下の各号の応援
行為をしてはならない。
(1)トランペット,太鼓,カネ,笛その他の楽器又はこれに類する物を使用した応援
(2)応援旗,横断幕等の他の観客の観戦に支障を及ぼす虞のある物を使用した応援
(3)観客を組織化し又は観客の応援を統率して行われる集団による応援(4)その他当球団が別途指定した方法による応援
2
観客は,試合の応援において,主催者が適宜定める注意事項を遵守し,また,
主催者の職員等による指示に従わなければならない。
3
本条1項の許可の基準及び手続は,別途,当球団において定める。
第4章

違反に対する措置

第10条(退場措置)
1
主催者は,以下の各号の一に該当する観客につき,試合中その他如何なる場
合でも,球場から退場させる。但し,当該観客が,速やかに退場事由を解消し,かつ,他の観客に対する迷惑の程度が軽微と認められる場合,主催者は退場を猶予することがある。
(1)第3条の販売拒否事由に該当する者である場合
(2)第5条1項の持込禁止物を球場内に持ち込んだ場合
(3)第6条の入場拒否事由に該当する者である場合
(4)第8条の禁止行為に違反した場合
(5)第9条に基づく許可を得た者又は団体が,その許可の範囲を逸脱し又は許可に付された条件に反する行為を行った場合
(6)主催者の職員等による指示を遵守しない場合
(7)その他前各号に準じる退場事由があると主催者が判断した場合2
主催者が退場を相当と認める場合において,主催者の職員等の退場要求にも
かかわらず観客が退場をしない場合,主催者は,警察へ通報し又は相当と認められる限度で退場を促すための措置を講じることができる。
第11条
1
(販売拒否対象者の指定)

観客が,主催者又は主催者以外の者の主催する試合において,持込禁止物を
持ち込んだ場合,禁止行為に違反した場合,禁止された応援行為を行った場合,その他本約款に違反した場合において,主催者が当該行為を悪質であると判断するとき,主催者は,当該違反者を第3条の販売拒否対象者として指定する。2
前項の場合において,当該違反者が応援を行う団体に所属する場合,主催者
は,事情により,当該団体の構成員及び当該団体と同一の連合組織に属する他の団
体の構成員及び当該違反のときに構成員であった者につき,第3条の販売拒否対象者として指定する。
3
何人も,主催者の前2項の判断に何ら異議を出すことはできない。
4
本条1項又は2項の指定を受けた者は,主催者の職員等の求めに応じ,その
身元を明らかにしなければならない。
5
主催者は,本条1項又は2項の指定を受けた者が,その行為を反省し,今後
当該違反行為の虞がないと認めた場合,プロ野球暴力団等排除対策協議会における協議を経たうえで,当該指定を解除することがある。
6
主催者は,前項の指定解除に関する判断のために必要と認めるときは,特定
の試合又は特定の期間の試合につき経過観察の期間を設け,当該期間内の観戦又は応援の態度が良好であったことを条件とすることができる。
第5章

入場料の払戻等

第12条(入場料の払戻)
1
第6条に基づく入場拒否又は第10条に基づく退場措置の場合は,入場料の
払戻はしない。
2
前項に定めるほか,入場料の払戻の条件及びその詳細は,別途,主催者にお
いて定める。但し,払戻事由の如何を問わず,正規入場券以外の入場券の払戻はしない。
第13条(責任の不存在)
1
主催者は,観客が被った以下の損害についての責任は負わないものとする。
(1)ホームラン・ボール,ファール・ボール,その他試合又は練習行為に起因する損害
(2)暴動,騒乱等の他の観客の行為に起因する損害
(3)球場施設に起因する損害
(4)本約款その他主催者の定める規則又は主催者の職員等の指示に反した観客の行為に起因する損害

(5)第6条の入場拒否又は第10条の退場措置に起因する損害
(6)前各号に定めるほか,主催者又は主催者の職員等の故意行為又は重過失行為に起因することなく発生した損害
2
主催者が負担する損害賠償の範囲は,治療費等の直接損害に限定されるもの
とし,逸失利益その他の間接損害及び特別損害は含まれないものとする。第6章

その他

第14条(詳細の定め)
試合観戦に関するその他の詳細については,別途主催者において定めるものとする。
第15条(管轄)
試合観戦契約に関する観客と主催者との間の紛争については,訴額により,主催者の本店所在地の地方裁判所又は簡易裁判所をもって,第1審の専属的管轄権を有する裁判所とする。
第7章

附則

第16条(効力)
1
本約款は,平成17年7月19日に効力を発するものとする。

2
本約款は,年度連盟選手権試合開催期間中といえども,主催者において改訂
することができ,改訂された約款は,当該改訂の施行日以降に開催される試合に関する試合観戦契約に適用される。
第17条(本約款発効前の行為)
本約款の発効日以前の行為が,本約款が適用されたとすれば,第11条1項又は2項の規定に該当する場合,主催者は,同条1項又は2項に基づき,その者を第3条の販売拒否対象者として指定することができる。

(別紙)
特別応援許可規程
当球団は,試合観戦契約約款(以下,本約款という)第9条に基づき,以下の通り特別の応援に関する規程を定める(以下,本規程という)。
第1条(目的)
1
本規程は,観客を組織化し又は統率して行われる集団による応援(以下,
応援団方式の応援という)の許可の基準と手続を定めるものである。2
当球団は,本規程に基づく場合のほか,本約款第9条1項各号に規定された
態様による応援の許可をしない。
第2条(許可申請)
1
応援団方式の応援を行おうとする団体は,当球団に対し,予め,当球団所定
の許可申請書を提出し,当球団の許可を得なければならない。
2
前項の許可申請を行う団体は,当球団所定の許可申請書に以下の事項を記載
し,代表者が署名押印をしたうえで,これを当球団に提出しなければならない。(1)団体名
(2)代表者名
(3)団体の連絡先
(4)構成員(経常的に応援団方式の応援に関わる者を含む。以下,同じ。)の数(5)構成員の氏名,住所,連絡先を記載した名簿
(6)応援形態
(7)その他当球団が求める事項
3
本条に基づく許可申請を行う団体が,連合組織に属する場合,当該団体は,
連合組織を構成する各応援団の名称,連合組織の役員の氏名その他当球団が求める事項を記載した書面を当球団に提出しなければならない。
4
本条に基づく許可申請を行う団体は,許可申請書とあわせて,当該団体の構
成員全員が本約款第3条の規定に該当しないこと並びに本約款及び本規程の規定を遵守することを確約した書面を当球団に提出しなければならない。5
本条に基づく許可申請を行う団体は,許可申請書,許可申請書の添付書類,
その他の関係書類に虚偽の記載又は不記載をしてはならない。
6
本条に基づく許可申請の後,許可申請書又はその添付書類に記載した事項に
変更が生じた場合,当該団体は,速やかに当該変更を書面で当球団に提出しなければならない。
7
当球団は,適宜,本条に基づく許可申請手続の細則を定めることができる。
第3条(個人情報)
1
本規程に関して取得された名簿その他の個人情報(以下,名簿等とい
う)は,当該団体に関する本約款第3条の事由の判断,応援状況の把握及び管理,本約款及び本規程の運用,その他これらに関連する目的で利用されるものとする。2
名簿等に記載された情報は全て,日本野球機構,日本プロフェッショナル野
球組織を構成する連盟及び球団,並びに,球場管理者において,それらの者の関係する試合に関し,前項の利用目的の範囲で,共同で利用する。
3
当球団は,他に法令で認められる場合のほか,名簿等を,警備会社その他第
1項の目的を達するために必要な範囲で,日本野球機構,日本プロフェッショナル野球組織を構成する連盟及び球団,球場管理者,並びに,球団又は球場管理者の委託を受けた第三者に対して提供する。
4
本条に定めるほか,当球団は,名簿等を当球団において別途定める個人情報
保護規定に従って管理する。
第4条(許可)
1
当球団は,第2条の許可申請に基づき,第5条各号の事由に該当しない団体
のうち,当球団の定める要件及び手続に基づき,当球団が応援団方式の応援を認めるのが適当であると判断する団体につき,応援団方式の応援の許可をする。2
第2条の許可申請を行う団体は,当該許可申請手続に関し,当球団の職員等
に金品その他の便宜の提供又は提供の申込をし,その他許可申請手続の公正を疑われる行為を行ってはならない。
3
当球団は,第5条の事由に該当する団体につき,当該事由の生じた時期,当
該事由の内容,当該事由に関する構成員の状況,その他一切の事情を考慮したうえで,当球団において適当と認める場合には,当該団体について応援団方式の応援を許可することがある。
4
当球団は,1項及び3項の判断のために必要と認めるときは,許可申請を行
う団体につき,特定の試合又は特定の期間の試合に限り,試験的に応援団方式の応援を許可することがある。
5
1項及び3項の許可は,連盟選手権試合の年度毎に,期間を特定して行う。
第5条(不適格事由)
以下の各号に定める事由の一に該当する団体は,第4条1項に基づく許可を受けることができない。
(1)本約款第3条各号の事由の一に該当する構成員が過去又は現在所属し又は関与したことのある団体
(2)当球団又は当球団以外の者の主催する試合において退場措置を受けたことのある構成員が過去又は現在所属し又は関与したことのある団体
(3)本約款第8条各号の一に違反し又は違反する虞がある構成員が過去又は現在所属し又は関与したことのある団体
(4)当球団の定めた条件又は当球団の職員等の指示を遵守せず又は遵守しない虞がある構成員が過去又は現在所属し又は関与したことのある団体
(5)当該団体が連合組織に属する場合において,過去又は現在における当該連合組織の役職員,運営責任者その他これに類する地位の者が本約款第3条各号の事由の一に該当する団体
(6)当該団体が連合組織に属する場合において,過去又は現在における当該連合組織の役職員,運営責任者その他これに類する地位の者が本約款第8条各号の一に
違反し又は違反する虞のある団体
(7)当該団体が連合組織に属する場合において,当該連合組織の役職員,運営責任者その他これに類する地位の者が当球団又は当球団以外の者が主催する試合において退場措置を受けたことのある団体
(8)当該団体が連合組織に属する場合において,当該連合組織の役職員,運営責任者その他これに類する地位の者が当球団の定めた条件又は当球団の職員等の指示を遵守せず又は遵守しない虞があると認められる団体
(9)当該団体の応援の実情,組織の状況,その他一切の事情に鑑み,真摯に試合の応援を行い,かつ,当球団の試合運営に積極的な協力を行うと認めることのできない団体
第6条(許可の条件等)
1
当球団は,第4条の許可につき,許可の付与に際し又はその後において,当
球団が適当と認める条件を付すことができる。
2当球団は,当球団が適当と認めるときは,第4条の許可を受けた団体(以下,許可団体という)に対し,当該団体の応援が円滑かつ秩序だって行われることを確保するために,当球団が適切と認める限度において,特定区域の座席を確保し,また,本約款第9条1項(1)号,(2)号又は(4)号の応援を許可する。3
当球団は,適宜,本条1項の条件及び前項の許可の内容を自由に変更するこ
とができる。
第7条(許可の取消)
当球団は,許可団体が第5条に該当する団体であることが判明した場合又は許可団体もしくはその構成員が本約款もしくは本規程に違反した場合のほか,当球団が必要と認めるときは,許可期間中といえども,当該許可を取消し又は一定期間許可の効力を停止することができる。
第8条(許可の性質)
1
第4条,第6条及び第7条に基づく許可等の判断は,当球団の自由な裁量に
基づくものであり,何人も,本規程に基づき許可を受ける権利を有するものではなく,また,本規程に基づく許可の可否,許可の取消,許可の内容,条件その他一切の事項について異議を申立て又はこれを争うことはできない。
2
当球団は,第4条,第6条及び第7条に基づく許可等の判断に関し理由の告
知は行わない。
第9条(プロ野球暴力団等排除対策協議会)
当球団は,当球団が必要であると認めたときは,プロ野球暴力団等排除対策協議会の協議を経て,第4条,第6条及び第7条に基づく許可等の判断を行うものとする。
第10条(規定等の遵守)
1
許可団体及びその構成員は,監督,コーチ,選手,主催者の職員等,販売店
その他の球場関係者並びに他の応援団及び観客との紛争を回避し,円滑な試合の進行と他の観客の観戦に配慮し,当該団体に属さない観客の理解を得られるような応援を心がけなければならない。
2
許可団体及びその構成員は,当球団の職員等に金品その他の便宜の提供又は
提供の申込をし,その他本規程の運用の公正を疑わせるような行為を行ってはならない。
3
許可団体及びその構成員は,本規程に基づく許可を濫用し又は濫用を疑われ
るような行為を行ってはならない。
4
許可団体は,その構成員に対し,本約款並びに本規程及び本規程に基づく許
可の条件を遵守させなければならない。
第11条(協議及び報告)
1
許可団体は,当球団の求めに応じ,当該団体の応援方法,応援態様,その構
成員の応援への参加状況その他の事項について報告し,応援方法等に関し当球団と協議し,本約款及び本規程の目的を達するために,当球団に対し積極的な協力をしなければならない。

2
許可団体は,当球団に対し,その構成員が本約款第3条の事由に該当するこ
と又は本約款第8条の違反を行ったことを認めた場合,速やかに,書面をもって当該事実を報告しなければならない。
3
許可団体は,前2項のほか,当球団の求める事項につき,当球団の求める態
様による報告をしなければならない。
第12条(本約款との関係)
1
本規程は,本約款の一部を構成するものとする。

2
本約款において定義された語は,特に文脈上他の意義を有することが明らか
な場合を除いて,本規程においても,本約款で定義された意義を有する。
〔別紙当事者目録,遅延損害金起算日目録,写真目録

添付省略〕

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