判例検索β > 平成12年(わ)第923号
覚せい剤取締法違反、死体遺棄、傷害、殺人(認定は傷害致死)、傷害致死被告事件
事件番号平成12(わ)923
事件名覚せい剤取締法違反、死体遺棄、傷害、殺人(認定は傷害致死)、傷害致死被告事件
裁判年月日平成16年4月7日
裁判所名・部広島地方裁判所
裁判日:西暦2004-04-07
情報公開日2017-10-13 01:42:38
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主 文
被告人を懲役15年に処する
未決勾留日数中900日をその刑に算入する。
押収してあるプラスチック袋入り覚せい剤結晶粉末2袋(平成13年押第6号符号1,2)を没収する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,広島市内の風俗店で稼働していたAと出会って交際を始め,平成11年7月上旬ころ,広島市○○区○○丁目○○番○○号Bビル301号室のA方に転がり込み,以来,Aの長男C(当時6歳)及び長女D(当時4歳)らと同居を始めたものであるが,
第1 同年8月16日ころ,上記Bビル301号室において,虐待の目的で,Cに対し,左前頭部を右手拳で殴打する暴行を加え,よって,同児に加療約1週間を要する頭部打撲,皮下血腫の傷害を負わせ
第2 Aと共謀の上,同年9月26日ころ,上記Bビル301号室において,被告人において,Cに対し,虐待の目的で同児を2重のビニール袋に入らせて同袋の口を真結びにしたうえ,同袋ごと大型スポーツバッグに入れ,同バッグのファスナーを閉めて密封状態にして,Aとともに様子を窺いながら数分間放置する暴行を加え,よって,そのころ,同所において,同児を窒息死するに至らせ第3 Aと共謀の上,上記第2の犯行の発覚を免れるため,Cの死体を遺棄しようと企て,被告人において,同月27日ころ,あらかじめビニール袋に入れた同児の死体を普通貨物自動車(軽四)に積み,同市○○区○○町○○峠東広島市境界から南西方約450メートル付近道路まで運搬した上,同道路上から同道路下西側斜面に同死体を投げ捨て,もって,死体を遺棄し
第4 上記第3の犯行後,一旦,被告人から逃れて上記Bビル301号室を出たAに復縁を求め,再度,同女らと行動をともにするようになったところ,同年10月12日ころ,広島市○○区○○町○○番○○号E旅館301号室において,虐待の目的で,Dに対し,その顔面,腹部を平手及び手拳で多数回殴打する暴行を加えて腹部臓器損傷の傷害を負わせ,よって,そのころ,同所において,同児を上記傷害に基づく失血により死亡するに至らせ
第5 Aと共謀の上,上記第4の犯行の発覚を免れるため,Dの死体を遺棄しようと企て,同日ころ,あらかじめビニール袋に入れた同児の死体を,普通貨物自動車(軽四)に積み,被告人が同車を運転し,Aが同乗して,広島県呉市○○丁目○○番○○号○○銀行○○支店○○出張所南東方約2100メートルにある○○山登山道路まで運搬した上,同道路上から同道路下東側斜面に同死体を投げ捨て,もって,死体を遺棄し
第6 平成12年11月28日午前10時15分ころ,広島市○○区○○町○○番○○号○○ビル202号室の当時の被告人方において,フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約0.641グラム(平成13年押第6号符号1,2)をみだりに所持し
たものである。
(証拠の標目)
(省略)
(事実認定の補足説明)
1 判示第2に関し,検察官が掲げる訴因は,被告人とAがCを判示の密封状態にし,共謀の上,殺意をもって,助けを求めるCの声を無視してそのまま放置し,よって同児を窒息死させて殺害したというものであり,殺人の共同正犯の事実を主張し,弁護人は,被告人にもAにも殺意はなく,また,Aとの間の共謀もなかったとしてこれを争っているところ,当裁判所は,判示のとおり,傷害致死の共同正犯の限度で認定したので,説明を加える。
2 Aの供述等関係各証拠を総合して詳細にその犯行に至る経緯及び犯行状況を見ると,次の事実が認められる。
(1)被告人は,平成11年6月上旬ころ,風俗店において,Aと知り合い,間もなく,Aと交際を始めた。そのころ,被告人は,被告人の暴力等が問題となってその妻との夫婦関係がうまくいっていなかった上,同月末ころには,請け負った仕事を怠ったために親会社から仕事をもらえなくなり,不満が鬱積していた。被告人は,同年7月上旬ころから,判示Bビル301号室において,A,C,Dとともに生活するようになってからは,Aから金銭をもらってパチンコをしたり,覚せい剤
を買ったりして無為徒食の生活を続け,一方で,仕事にあぶれてしまっていることや別居中の妻の元に帰れないことなどからますます不満を募らせていた。そして,同月中旬ころには,鬱積していた不満をはらすため,Cに対し,しつけと称して,執拗に説教したり,平手で叩いたり,もぐさを使ってお灸を据えたり,火のついた煙草を押しつけたりするようになった。Aは,これらの事実を知りながら,被告人の機嫌を損ねると被告人と別れなければならなくなるかもしれないことを恐れ,制止することがなかった。
(2)被告人は,同年8月16日ころ,判示第1のとおり,手拳でCの頭部を殴打して傷害を負わせた。この時は,帰宅してそのたんこぶの大きさに驚いたAが,被告人の承諾を得て病院に連れて行った。被告人は,その後も毎日のようにCに暴行を加え続け,かつその態様は,げんこつで顔面を殴ったり,足蹴にしたり,布団たたきで殴打したり,頭からビニール袋をかぶせ首輪をつけてカーテンレールにつないで殴る蹴るしたりなど,次第に激しさを増していった。また,同月下旬ころからは,Cを子ども部屋に入らせて出入口を塞ぎ,食事も与えずトイレにも行かせないなどして閉じこめる虐待や,頭上から花火の火の粉を浴びせかけたり,靴の消臭スプレーに火をつけて噴射して炎を身体に当てるようにしたり,ライターオイルを同児の手足にかけて火をつけたり,背中にティッシュペーパーを貼って火をつけたりするなどの火を用いた虐待や,手足を縛って浴槽に入れて水の中に頭をつけたり上げたりするなど水を使った虐待を頻繁に繰り返すようになった。また,陰茎を縛って排尿できなくしたり,同児自身の尿を飲ませたり,排泄物のついた下着を頭からかぶせたり,首輪をつけてつないでおきその様子をビデオで撮影するなどもした。
同年9月中旬ころには,被告人が,Cをスポーツバッグに入らせてバッグを浴槽内に置き,バッグがつかるまで水を入れ,バッグを繰り返し水につけたり持ち上げたりしているうちに,Cが意識を失うに至り,被告人が同児をバッグから出して腹を押して水を吐かせるなどしてようやく意識を取り戻させるということがあった。
これら一連の暴行によってCは衰弱していき,同月下旬ころには,やせてあばら骨が浮き出ていて,また,頭や頬が腫れ,顔,手足,背中,尻などの多数のやけどや傷口の皮膚の穴が治らず,そこから膿や血が混じった汁が出ている状態になり,ほとんど一日中横になっているか座っているかしていた。
(3)Aも,9月ころからは,被告人に指示されると,自ら花火を持ってCに火の粉を浴びせかけたり,被告人がCを水槽に沈めた際に,Cの首につながれたひもを持って同児を上げ下げしたりして同児に対する虐待に直接加担するようになった。このようなとき,Aは,Dを別室に連れて行き,虐待の様子をDに見せないようにしていた。また,Cに対する虐待が発覚するのをおそれて同児を幼稚園に通わせなくなり,同児の実父であるFや自分の父親から電話があっても,家に来ないようにさせるなどして虐待の事実が外部に知られないように配慮していた。 (4)判示第2の犯行当日である9月26日午前零時過ぎころ,被告人は,Aに命じてDを他の部屋に連れて行かせた後,Cがいた6畳和室において,Cに対し,食事をとるのを禁じられているのに何か食べただろうなどと因縁を付け,激しく殴打するなどの暴行を約30分間加え続けた。その後,被告人は,Aを呼び,バッグとビニール袋を取ってきて,同女の見ている前でバッグの中にビニール袋を入れて口を開け,Cにその中に入るよう命じた。Cは,よろめきながら立ち上がって,自らビニール袋内に入り,正座して身体を丸めた。被告人は,バッグのチャックを閉め,これを持って別の部屋に移動し,Aもこれに従った。被告人は,敷いてあった布団の近くにバッグを置き,被告人とAは,その布団の上に寝ころんだ。 (5)被告人は,Cがバッグ内で酸素不足のためもがき苦しむと考えていたが,予期に反して,そのまま1分間くらい物音がしなかったため,被告人がバッグのチャックを開けて中を見たところ,Cは意識を失っておらず,バッグの外に手を伸ばすなどしていた。被告人は,

こいつ,息をしようる。袋を2重にしたろうよ。

などと言ってもう1枚ビニール袋を取ってきて1枚目の上からかぶせて二重にし,2枚のビニール袋の端を重ねて持って,両端を交差させる結び方で2回結び,再びチャックを閉めた。被告人らは部屋を暗くして,頭をバッグの方に向けてバッグから約1メートルの位置に寝ころび,Cが

G君ごめんなさい。

と言ったのに対して,被告人がAに小声で

静かにしとけよ。

と言うなどして,2人で部屋にいないかのように装った。
Cは,

G君ごめんなさい。G君開けて。

などと繰り返し言って,バッ
グの中で身体を動かすなどしていたが,次第にその声は大きくなっていき,被告人がバッグを閉めてから5分くらい経ったころ,助けを求める声は止み,いびきのようなガアッという大きい音声(以下,いびき音という)が七,八秒間あって,途絶えた。Aは,被告人がCを殴ったりし始めてからそれまでの間,何ら被告人に対して反対の姿勢を示さなかった。
(6)いびき音がしなくなると,被告人とAは起きあがり,被告人は,C死んだんじゃないかと言って飛び起きてバッグの方に行ってチャックを開け,2人でビニール袋を破ってバッグからCを出して布団の上に寝かせた。被告人とAは,Cに対して計2時間半くらい代わる代わる人工呼吸や心臓マッサージをしたが,Cは息を吹き返さなかった。
3 以上認定した事実に,医師の供述等を加えて検討を加える。 まず,被告人は,自己の鬱積した不満をはらすため,Cに対する虐待行為を繰り返すようになり,次第にその態様をエスカレートさせていたこと,9月に入ると,その虐待行為はさらにエスカレートし,Cの顔を水中に沈めたりバッグの中に同児を入れて水没させるなど,Cに対して死の恐怖を味わわせるに至り,そのため同児を仮死状態に陥らせて危うく一命を取り留めたこともあったこと,そして,Cは,本件当時には全身性炎症反応症候群の状態にあって,全身が衰弱しており,敗血症あるいは菌血症を引き起こしていた可能性もあり,敗血症の状態になった人間に治療を施さなければ,数週間以内に死に至ること,被告人は,8月中旬である判示第1の傷害事件直後を除いて,同児に病院で治療を受けさせるようなことは一切なく,それどころか,Aに対し,Cに食事も与えないように指示するなどもしていたことが認められる。こうした経緯及び状況に照らすと,このまま特段の治療を受けさせずに虐待を続ければ,いずれはCが死に至るであろうとの認識を有していながら,これを継続していたと考えるのが合理的であり,被告人の検察官調書中にも,その趣旨の供述が見られるところである。こうした心情にあった中で,本件密封行為が行われたが,本件のような密封行為は,その密封状態を継続することによって確実に死の結果を招来する行為であるところ,その機序は,低酸素血症(窒息)により死亡するに至るもので,健康な6歳くらいの男児なら10分から15分程度で死に至るが,本件当時のCのような全身衰弱状態にあれば,健康な状態の時と比較して短時間で死亡すると考えられること,Cは,本件密封行為により死に至ったが,最後に七,八秒間いびき音を発しているところ,これは死の直前に舌根沈下が起こり,そのため気道が閉塞されていびき音が生じ,その音声が途絶えた時点で死亡するに至ったと考えられること,被告人らは,Cの助けを求める声を無視し,その声が止んでいびき音に変わっても,なお救助行為に出なかったこと,そして,そのいびき音もしなくなった時点で,被告人は,Cが死んだのではないかと言って飛び起き,Aと2人で同児の蘇生に努めたが,Cが息を吹き返すことはなかったことが認められる。こうした本件の状況,特にCから有意的な叫び声が途絶えていびき音に変わった事実は,Cの意識がなくなり同児の死が迫っていることを表すものであり,被告人においても,そのことを認識していたと考えられるから,同児の叫び声がいびき音に変わった時点で直ちに救助行為に出なかったことは,Cに徹底的に死の恐怖を味わわせようとする余り,たとえ救助行為が手遅れになって同児が死に至るようなことがあっても,その結果をいとわない気持があったからではないかとも考えられる。
しかしながら,被告人が本件まで種々の虐待行為を継続する中で,いずれCが死に至るであろうとの認識を有していたとは考えられるものの,これまで実際に行った虐待行為に際して具体的に同児の死を認識し,かつこれを認容していたような状況までは認められないうえ,その虐待行為の延長線上で行われた密封行為の際の被告人の意図も,Cに死の恐怖を味わわせることにあったと認められるから,被告人は,密封行為の際はもちろん,その後同児がバッグ内で助けを求めていた際にも,同児が死亡する以前にビニール袋から解放するつもりであったことは否定できない。そして,被告人は,Cを密封した後,Aとともにその側にいて終始Cの反応を窺っており,同児を助け出そうと思えば容易にそうすることのできる状態にあったこと,医学的に素人である被告人において,Cの発したいびき音が極めて切迫した生命の危険を示す兆候であると認識していなかったとしてもやむを得ない面があること,Cがいびき音を発していたのは,約7,8秒という短い時間であり,被告人は,いびき音が途絶えるや慌ててバッグ内からCを出し,同児を蘇生させるべく,Aとともに長時間にわたって真摯な救命措置を講じており,このような救命行動は,Cの死を認容していた者の行動とはそぐわないものがあることなどの事情に
鑑みれば,被告人は,Cの死が相当切迫していることを認識していながら直ちに救出行為に出なかったものではあるが,その際同児が死に至ることを認容していたと断じるには,なお合理的な疑いが残るというべきである。
よって,被告人に殺意までは認められないところ,前掲関係各証拠によれば,傷害致死の共同正犯の事実は優に認定することができるから,判示のとおりその限度で認定した。
(法令の適用)
(省略)
(責任能力についての判断)
弁護人は,判示第4のDに係る傷害致死の事実について,被告人は性格のかたよりやCを死に追いやったことによるストレス,覚せい剤使用の影響などにより犯行当時情動反応を生じており,心神喪失または心神耗弱の状態にあった旨主張するので,検討する。
Aの供述等関係各証拠を総合すると,被告人は,従前Dに対しては暴行を加えていなかったものの,平成14年10月10日,Dがだだをこねて物をくわえるなどしたことに怒って平手で同児の頭を殴ったのを初めとして,翌11日にかけて,パチンコ店やスポーツ店で自動車内に残された同児が無断で車外に出たことに怒って頭や顔を殴打するなどの暴行を加え,11日夜から12日にかけて,E旅館において,Dが

G君たたくけえ嫌い。

などと言ったことに激怒して,同児の顔面や腹部を繰り返し殴打するなどの本件犯行に至ったことが認められるところ,被告人の暴行は,むろん残忍非道なものではあるが,いずれもDの言動が気に入らなかったことをきっかけとして行なわれたという点で,了解可能な行動と言える。また,被告人は,犯行前にパチンコ店駐車場の自動車内やE旅館において複数回覚せい剤を使用しているが,10日から11日にかけて,自動車を運転したり,パチンコ店で遊興したり,スポーツ店で買物をするなどの行動を問題なく行っているほか,犯行後は発覚をおそれて同児の遺体をE旅館から運び出して遺棄するなど合理的な行動をとっているのであって,他に本件犯行前後に精神障害をうかがわせるような言動も認められない。
そして,鑑定人Hは,本件犯行当時被告人の判断能力に影響を与えた可能性があると考えられる各要因について検討し,まず,被告人は犯行時反社会性人格障害を有していたと認められるが,これ自体が責任能力に影響するものではないとし,次に,覚せい剤の長期使用により神経衰弱状態にあったことは認められるが,その影響は一般的な反応にとどまるものであって幻覚妄想などの病的体験は否定されるとし,さらに,情動反応については,これが生じた場合も高熱やてんかん発作など他に正常な判断を損なうような条件がある場合以外は基本的に判断能力は保たれるとの理解を前提として,本件においてはそのような条件は認められず,種々の条件から情動反応を生じやすい状態にあったといえるものの,意識障害を生ずるほど高度の興奮状態にあったとはいえないとして,結局被告人の判断能力はこれらいずれの要因によっても本質的な影響を受けておらず,被告人が犯行当時の状況について想起不能を訴えている点についても,情動反応による意識野の狭窄や覚せい剤による注意集中の困難,心因性の健忘の影響によるものであって,犯行時の意識障害を示すものではないと結論付けている。そして,当該鑑定は,精神医学において広く用いられている客観的な診断基準や標準的な考え方を示したうえで,被告人との面接,各種検査結果及び訴訟記録を基に具体的な検討を加えており,十分信頼することができる。
以上によれば,被告人は本件犯行当時是非善悪を弁識する能力またはその弁識に従って行動する能力を全く欠いていたと言えないことは勿論,著しく欠いていたとも言い得ないのであって,完全な責任能力を有していたものと認められる。(量刑の理由)
本件は,被告人が,当時6歳の男児に対して虐待を加えて傷害を負わせ,結局同児を虐待によって死亡させ,その遺体を遺棄した傷害傷害致死,死体遺棄の事案,その後同児の妹である当時4歳の女児に対して虐待を加えて死亡させ,遺体を遺棄した傷害致死,死体遺棄の事案及び覚せい剤所持の事案である。 傷害及び各傷害致死の事案を見ると,被告人は,妻やその親に暴力をふるったりしたことで妻子と別居し,仕事を失ったことなどで鬱積した不満を有していたことを背景に虐待行為に及んだものであって,身を守るすべもなく逃げ出すこともできない弱者を不満解消のはけ口にしたとしか考えられない理不尽かつ卑劣なものであり,鬱積した不満の原因も,いわば身から出た錆であって,全く酌量の余地はな
い。しかも,男児を死亡させた後,悔い改めるどころか,わずか20日足らずで今度は女児に虐待を加えて死に至らしめたものであって,言語同断である。男児においては,約2か月間にわたって凄惨な虐待を受けた末に,死の恐怖におののきながら窒息死させられたものであり,女児においては臓器からの出血で死亡するほど繰り返し腹部を殴打されて死亡するに至ったものであって,同児らが死の直前までに受けた苦痛や恐怖には想像を絶するものがある。子どもらは,将来のあらゆる可能性を奪われて短い一生を終えねばならなかったのであり,その結果はあまりにも重大である。また,犯行隠ぺいのため被告人らの手によって遺体を山中に投棄され,約1年の間,誰に弔われることもなく山中で白骨化した姿は,まことに哀れというほかない。子どもたちの祖父母や親戚らは,子どもたちを失った喪失感や助けてやれなかった後悔にさいなまれており,これら関係者の被告人に対する処罰感情が峻烈であるのも当然であり,加えて,本件が明らかとなって社会に対して与えた衝撃も大きい。また,覚せい剤事犯についても,これまでストレスが溜まるなどするたびに断続的に覚せい剤の使用を繰り返していたもので,軽視できない。 以上によれば,被告人の刑事責任は甚だ重く,被告人に前科,前歴がないこと,法廷において自己の責任を自覚して亡くなった子どもたちの冥福を祈る心境に至っていることなど被告人のために斟酌することのできるあらゆる事情を考慮してもなお,被告人に対しては,主文程度の刑をもって臨むのが相当であると判断した。(求刑-無期懲役,覚せい剤の没収)
平成16年4月7日
広島地方裁判所刑事第一部
裁判長裁判官 田 邉 直 樹
裁判官 飯 畑 正一郎
裁判官 三 澤 節 史


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