判例検索β > 平成12年(わ)第2671号
非現住建造物等放火、建造物侵入、窃盗、現住建造物等放火、現住建造物等放火未遂、器物損壊、建造物等以外放火被告事件
事件番号平成12(わ)2671
事件名非現住建造物等放火,建造物侵入,窃盗,現住建造物等放火,現住建造物等放火未遂,器物損壊,建造物等以外放火被告事件
裁判年月日平成15年2月25日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  刑事第5部
裁判日:西暦2003-02-25
情報公開日2017-10-13 01:44:54
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主文
被告人を無期懲役に処する
未決勾留日数中600日を上記の刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1(平成14年1月31日起訴(同年(わ)第173号)の公訴事実第1) 被告人は,平成11年10月22日午後9時10分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在のA及び有限会社B(代表取締役C)共同倉庫において,同社所有の珍味20袋(仕入価格合計4350円相当)を窃取した。
第2(平成14年1月31日起訴(同年(わ)第173号)の公訴事実第2) 被告人は,平成11年10月22日午後9時20分ころ,D等所有の前記共同倉庫(木造瓦葺平家建。床面積約67.76平方メートル)に放火すれば,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない同倉庫を焼損した上,その東側に隣接しているEら5名が現に住居に使用している名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在の木造瓦葺2階建店舗兼居宅と木造瓦葺2階建倉庫とが一体連結した建物(床面積合計約209.62平方メートル)に延焼することを認識しながら,あえてその放火を決意して,前記共同倉庫の有限会社Bが使用している中央北側区画において,同所に積まれていた段ボール箱に所携のライターで点火して火を放ち,この火を同倉庫板壁等に燃え移らせて,同倉庫を全焼させた上,これを経て上記E方建物に燃え移らせ,よって,同建物の
倉庫2階部分(焼損面積約32.4平方メートル)を焼損させた。第3(平成13年11月27日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月13日午後11時ころ,名古屋市西区甲丁目乙丙号所在の有限会社F(代表取締役G)所有の現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない木造鋼板一部塩化ビニール製波板葺3階建店舗(床面積合計約1223.74平方メートル)東側において,同建物に取り付けられていた戸板を斜めに倒したところ,建物内に段ボール箱が積まれていたことから,これに放火して同建物を焼損しようと企て,同段ボール箱に所携のライターで点火して火を放ち,その火を同建物1階北東角の物置部分南側板壁等に燃え移らせ,よって,上記物置部分南側板壁等(焼損面積約1.12平方メートル)を焼損させた。
第4(平成14年3月8日起訴の公訴事実第1)
被告人は,平成11年12月13日午後11時24分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在の株式会社H名古屋支店資材置き場において,同所に駐車中のI株式会社(代表取締役J)所有の普通貨物自動車の後部荷台に取り付けられた幌に所携のライターで点火し,その炎を同車及びその荷台に積載していた同社所有の食器棚等30点に燃え移らせて,これらを焼損(損害額合計約117万2000円相当)し,もって他人の器物を損壊した。
第5(平成14年3月8日起訴の公訴事実第2)
被告人は,平成11年12月13日午後11時45分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在のK所有のマンションL(鉄骨造陸屋根4階建事務所,車庫兼共同住宅。床面積合計約530.07平方メートル)1階駐車場において,同駐車場内に積まれていたM株式会社(代表取締役N)所有の接着剤等の商品が入った段ボール箱に所携のライターで点火して放火し,同段ボール箱や同所に置かれていたベニヤ板を焼損し,そのまま放置すれば上記マンション等に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ,もって公共の危険を生じさせた。
第6(平成14年4月25日起訴の公訴事実第1)
被告人は,平成11年12月14日午前零時5分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在のO株式会社(代表取締役P)所有の現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない木造瓦葺平家建居宅とコンクリートブロック造陸屋根2階建車庫兼物置とがビニール製波板屋根で接続された一体の建物〔床面積(建物を接続する屋根部分の面積を含む)合計約259.2平方メートル〕に放火してこれを焼損しようと企て,上記居宅部分東側において,同所に置かれていた段ボール箱に所携のライターで点火して火を放ち,その火を上記居宅部分東側木製庇等に燃え移らせ,よって,上記建物のうち木造瓦葺平家建居宅部分東側木製庇及びビニール製波板屋根部分(焼損面積合計約2.1平方メートル)を焼損させた。
第7(平成14年4月25日起訴の公訴事実第2)
被告人は,平成11年12月14日午前零時20分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番地所在のQ株式会社(当時の代表取締役R)所有の現に人が住居に使用せず,か
つ,現に人がいない軽量鉄骨造スレート葺2階建居宅(床面積約128.25平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同居宅北側において,同所に設置されたアルミ製玄関ドアに貼られている段ボールに所携のライターで点火して火を放ち,その火を同ドア内側の木枠等に燃え移らせ,よって,上記居宅のうち玄関ドア内側の木枠部分(焼損面積0.613平方メートル)を焼損させた。第8(平成14年4月25日起訴の公訴事実第3)
被告人は,平成11年12月14日午前零時35分ころ,名古屋市西区甲町乙番地所在のS所有の現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない木造瓦葺平家建共同住宅(床面積合計約104.34平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同共同住宅西側において,同所に落ちていた枯れ葉等を同共同住宅の中央居室の玄関北側板壁付近に接着させるように集めて所携のライターで点火して火を放ち,その火を同建物板壁等に燃え移らせ,よって,上記中央居室の玄関北側板壁(焼損面積約4.1平方メートル)を焼損させた。
第9(平成13年1月31日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月14日午前1時12分ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番地所在のTら5名が現に住居に使用している木造瓦葺2階建店舗兼居宅(床面積合計約216.19平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物北側路上において,同建物北側壁面に接して設置された冷蔵庫用室外機上に段ボールを載せた上,これに所携のライターで点火して火を放ち,その火を上記建物の野地板等に燃え移らせ,よって,同建物の野地板及び天井板(焼損面積約3.19平方メートル)を焼損させた。
第10(平成13年2月22日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月14日午前1時20分ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番丙号所在のUら3名が現に住居に使用している木造セメント瓦葺2階建店舗兼居宅(床面積合計約119.76平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物西側路上において,同建物西側木製雨戸のベニヤ板部分に所携のライターで直接点火して火を放ち,同建物を焼損しようとしたが,点火した火が自然鎮火したため,上記雨戸の一部を焼損したにとどまり,その目的を遂げなかった。第11(平成13年3月30日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月14日午前1時35分ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番丙号所在のVらが飲食店として入居し,同人及び飲食客ら8名が現在する木造瓦葺平家建集合店舗(通称W。床面積合計約418.48平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物内南側共同トイレ西側通路において,同トイレ木製外壁に設置された木製棚の前面に掛けられていた布に所携のライターで点火して火を放ち,その火を上記共同トイレ西側木製外壁等に燃え移らせ,よって,上記建物を全焼させて,これを焼損した上,さらに,この火を,隣接するXが現に住居に使用している同市a丁目b番c号所在の木造瓦葺2階建居宅(床面積合計約228.66平方メートル),Yら4名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の鉄筋コンク
リート造陸屋根地下1階付3階建居宅(床面積合計約313.1平方メートル)及びZら5名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の鉄筋コンクリート造陸屋根一部瓦葺2階建居宅と木造瓦葺2階建居宅が一体連結した建物(床面積合計約465.32平方メートル)に燃え移らせて,上記X方居宅を全焼させるとともに,上記Y方居宅1階南西側雨戸戸袋(焼損面積約5平方メートル)及び上記Z方建物の2階北側庇等(焼損面積合計約24平方メートル)をそれぞれ焼損させた。
第12(平成13年6月21日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月14日午前1時50分ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番丙号所在のaら6名が現に住居に使用している木造一部鉄骨トタン葺2階建居宅等5棟が廊下及び通路で連結された一体の建物(床面積合計約430.81平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,上記2階建居宅南側テラスにおいて,同所に設置された物干し竿にかけてあった布製衣類に所携のライターで点火して火を放ち,その火を同テラスのアクリル製庇,居宅外壁等に燃え移らせ,よって,同建物のうち2階建居宅及びこれと連結する木造瓦葺平家建居宅(両者の床面積合計約146.64平方メートル)を全焼させるとともに,木造瓦葺2階建店舗兼居宅の2階南西部外壁(焼損面積約1.62平方メートル)を焼損させた上,さらに,この火を隣接する
bら3名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の木造瓦葺2階建居宅
(床面積合計116.68平方メートル),cが現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の鉄筋コンクリート造陸屋根2階建居宅兼倉庫(床面積合計約151.88平方メートル),dら6名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の木造瓦葺2階建居宅(床面積合計約118.26平方メートル),eら2名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の居宅に隣接する木造ビニール波板葺平家建風呂場(床面積約6.23平方メートル)及び木造トタン葺平家建物置(床面積約26.28平方メートル),fら5名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の木造瓦葺2階建居宅(床面積合計約146.7平方メートル)に燃え移らせて,
上記b方居宅を全焼させるとともに,上記c方居宅2階台所東側板壁等(焼損面積約1.5平方メートル),上記d方居宅2階北側8畳間天井板等(焼損面積約6.3平方メートル),上記e方居宅に隣接する木造ビニール波板葺平家建風呂場屋根等(焼損面積約1.56平方メートル)及び木造トタン葺平家建物置東側庇等(焼損面積約1.35平方メートル)及び上記f方居宅2階東側雨戸用戸袋等(焼損面積約16.5平方メートル)をそれぞれ焼損させた。
第13(平成13年7月11日起訴の公訴事実第1)
被告人は,平成11年12月14日午前2時ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番丙号所在のgら3名が現に住居に使用している木造瓦葺平家建居宅に木造ビニール波板葺平家建洗濯場及び木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建車庫が一体連結された建物(床面積合計約171.96平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,上記居宅南東側テラスにおいて,同テラスの庇に吊されていた葦製簾に所携のライターで点火して火を放ち,同建物を焼損しようとしたが,点火した火が自然鎮火したため,上記庇等の一部を溶解するなどしたにとどまり,その目的を遂げなかった。第14(平成13年7月11日起訴の公訴事実第2)
被告人は,平成11年12月14日午前2時10分ころ,愛知県一宮市甲丁目乙番丙号所在のh所有の木造トタン一部コンクリート瓦葺平家建倉庫(床面積約25.5平方メートル)に放火すれば,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない同倉庫を焼損した上,同倉庫南側に近接して建てられている上記h所有の人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない木造コンクリート瓦葺2階建居宅(床面積約71.28平方メートル)及び同倉庫東側に近接して建てられているiら6名が現に住居に使用している同市甲丁目乙番丙号所在の軽量鉄骨造鋼板葺2階建居宅と木造瓦葺2階建居宅が一体連結した建物(床面積合計約294.72平方メートル)に延焼することを認識しながら,あえてその放火を決意して,上記倉庫東側出入口前において,付近に
あった紙屑,段ボール,木屑等を同倉庫東側木製引き戸に接着させて置き,これに所携のライターで点火して火を放ち,その火を同倉庫板壁等に燃え移らせて,同倉庫を全焼させた上,これを経て上記h所有の居宅及び上記i方居宅にそれぞれ燃え移らせ,よって上記h所有の居宅を全焼させた上,上記i方居宅西側玄関天井等(焼損面積約7平方メートル)を焼損させた。
第15(平成13年9月11日起訴の公訴事実)
被告人は,平成11年12月14日午前2時25分ころ,愛知県一宮市甲町乙番地の丙所在のjら3名が現に住居に使用している木造瓦一部トタン葺2階建居宅兼店舗に放火してこれを焼損しようと企て,上記建物西側に接着して建てられている木造トタン葺平家建物置(床面積約11.1平方メートル)内において,同所に置かれていた紙類に所携のライターで点火して火を放ち,その火を同物置内の柱等に燃え移らせ,同物置を全焼させた上,これを経て上記居宅兼店舗(床面積合計約145.36平方メートル)に燃え移らせ,よって,これを全焼させた上,さらに,この火を隣接するkら4名が現に住居に使用している同町乙番地の丙所在の木造瓦一部トタン葺2階建居宅兼店舗(床面積合計約184.86平方メートル)に燃え移らせて同建物を全
焼させた。
第16(平成13年10月26日起訴の公訴事実第1)
被告人は,平成11年12月14日午前2時35分ころ,愛知県一宮市甲町乙番地所在のlら5名が現に住居に使用している木造瓦葺平家建共同住宅(床面積合計約178.58平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,上記共同住宅西側敷地内において,同建物西側壁面に接して置かれていた段ボールに所携のライターで点火して火を放ち,同建物を焼損しようとしたが,間もなく,近隣住民らに炎上している上記段ボール等を発見されて消し止められたため,上記共同住宅西側
トタン壁の一部を変色させたにとどまり,その目的を遂げなかった。第17(平成13年10月26日起訴の公訴事実第2)
被告人は,平成11年12月14日午前3時35分ころ,愛知県一宮市甲町乙番地の丙所在のmが現に住居に使用している木造瓦葺一部2階建居宅兼店舗(床面積合計約148.41平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,上記建物北側敷地内において,同建物北側東寄り壁面に接して積み重ねて置かれていた段ボール箱に所携のライターで点火して火を放ち,その火を段ボール箱上方の窓に設置された木製格子に燃え移らせ,よって,上記建物1階北側東寄りの窓の木製格子(焼損面積約0.84平方メートル)を焼損させた。
第18(平成14年1月31日起訴(同年(わ)第174号)の公訴事実) 被告人は,平成12年4月3日午後11時15分ころ,愛知県一宮市甲町乙番地の丙所在のnら4名が現に住居に使用している木造瓦葺平家建共同住宅(床面積合計約76.98平方メートル)に放火して,これを焼損しようと企て,同共同住宅東側に接着している資材置き場内において,同所内に落ちていた枯れ枝に所携のライターで点火して火を放ち,この火を同所に置かれていたビニールシート,段ボール箱等に燃え移らせた上,これを経て上記nら4名が現に住居に使用している上記共同住宅に燃え移らせ,よって,同共同住宅のうちn方居宅部分(焼損面積約37.8平方メートル)を焼損し,さらに,この火を上記資材置き場の東側に接して建てられているoら2名が現に住居に使用している木造瓦葺平家建居宅(床面積約45.5平方メートル
)に燃え移らせて,同居宅を全焼させた。
第19(平成12年12月27日起訴の公訴事実)
被告人は,平成12年4月4日午前2時55分ころ,愛知県一宮市甲町乙番地丙所在のp所有の現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない木造スレート葺平家建工場(床面積約71.95平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同工場西側反物置場前路上において,同工場の反物置場に積み上げられた反物に所携のライターで点火して火を放ち,その火を同工場反物置場西側塩化ビニール製波板の壁面等に燃え移らせ,よって,同工場を全焼させた。
第20(平成13年11月20日起訴の公訴事実)
被告人は,平成12年5月29日午後11時25分ころ,名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在のqら3名が現に住居に使用している木造瓦葺2階建店舗兼居宅と木造トタン葺2階建同店事務所及び木造瓦葺平家建店舗が一体連結している建物(床面積合計約214.29平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物1階作業場内において,同所に積み上げられた段ボールに所携のライターで点火して火を放ち,その火を同作業場板壁等に燃え移らせ,よって,上記建物の板壁,天井板等(焼損面積約63.1平方メートル)を焼損させた上,さらに,この火を隣接する現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない同所所在のr所有の木造瓦葺一部トタン葺2階建店舗(床面積合計約132.39平方メートル)に燃え移らせ,同店舗の天井等
(焼損面積約96.7平方メートル)を焼損させた。
第21(平成13年12月14日起訴の公訴事実)
被告人は,平成12年5月30日午前零時45分ころ,愛知県岩倉市甲町乙番地の丙所在のsら3名が現に住居に使用している鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺陸屋根2階建店舗兼居宅(床面積合計約42.56平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,同建物西側店舗前において,同店舗部分に固定された木製カウンターの下に置かれたテーブルの布製テーブルクロスに所携のライターで点火して火を放ち,その火を上記木製カウンターに燃え移らせ,よって,上記木製カウンター(焼損面積約0.30平方メートル)を焼損させた。
第22(平成12年12月6日起訴の公訴事実)
被告人は,金品窃取の目的で,平成12年11月1日午後11時40分ころ,tが看守する名古屋市西区甲丁目乙番丙号所在のu店舗兼倉庫に東側出入口扉から侵入した上,同所において,同人所有の現金約5万4000円及びシールカード10箱ほか93点(時価合計約17万6710円相当)を窃取した。(証拠の標目)(省略)
(量刑の理由)
1 犯行に至る経緯および犯行の概況
(1)被告人は,昭和33年ころから愛知県一宮市内の自宅で昔ながらの駄菓子店 を営んでいたが,10年くらい前からその経営が苦しくなり,憂さ晴らしのた
めパチンコをするようになった。しかしながら,被告人はこれに負けることが 多く,憂さが晴れるどころか,かえっていらだちが高じるようになり,次第に パチンコに注ぎ込む金額が増え,ついには預金を引き出してパチンコに費やす までになったものの,結局パチンコに負け,上記駄菓子店の仕入資金にも窮す るようになるとともに,いらだちを募らせることとなった。
(2) そこで,被告人は,パチンコに費消した金の穴埋めやパチンコ代等を手に入 れるために,仕入れ先から商品を盗んでこれを店舗で販売するようになった。 そして,数年前からは,パチンコに負けた際,憂さ晴らしのために自動車や建 造物等に放火するようになり,これが高じて,パチンコに負けるとその腹いせ に窃盗放火を繰り返すようになっていった。
(3) 平成11年10月22日,パチンコに負けた被告人は,名古屋市西区内の菓 子の卸問屋街にある取引先が商品等を保管している倉庫から,販売する目的で 商品の珍味を窃取したが,これを通行人に目撃されたことから,犯行の発覚を 恐れてこの倉庫に放火した。
(4) さらに,同年12月13日預金を引き出して注ぎ込んだもののパチンコに負 けた被告人は,その腹いせに上記名古屋市西区内の菓子の卸問屋街にある取引 先の店舗等から商品等を盗み出そうとしたものの果たせず,放火してその憂さ を晴らそうとして,同日から翌14日にかけた深夜に,同店舗付近の7か所の 建物に放火し,その後まだ憂さが晴れないとして,今度は自宅のある一宮市内 に移動して9か所の建物に対して放火に及んだ。
(5) また,平成12年4月3日から翌4日にかけての深夜,被告人は同様にパチ ンコに負けた腹いせに,やはり一宮市内の2か所の建物に放火し,同年5月2 9日から30日にかけての深夜にも同様の目的で,名古屋市西区内及び愛知県 岩倉市内の2か所の建物に放火した。
(6) 同年11月1日,預金を引き出してまで注ぎ込んだものの結局パチンコに負 けた被告人は,その結果商品仕入代にも窮することになったことから,仕入先 である玩具卸店から商品を盗み出して販売しようと企て,同日の深夜,同店の 出入口ドアを壊して侵入して,これを窃取した。
2量刑上特に考慮した事情
本件は,上記のとおり,パチンコにのめり込んでいた被告人が,パチンコに負 けた腹いせに敢行した,現住建造物の放火(未遂を含む)13件,非現住建造物 の放火5件,建造物等以外の放火1件,放火による器物損壊1件,窃盗1件及び 建造物侵入窃盗1件の事案である。
本件一連の放火行為は,平成11年10月22日夜,被告人が,卸問屋の倉庫 から店で販売する商品を盗み出し,これを通行人に目撃されたと思い証拠隠滅の ため同所に放火したことに始まり,同年12月13日から翌14日にかけての深 夜には,商品を盗む目的で卸問屋に入ろうとして果たせなかった腹いせなどのた め,同所に放火したのを皮切りとして,それだけではパチンコに負けたいらいら 等が解消しないことから,上記を含めて実に15か所で連続放火を行ったもので ある。このうち,一宮市内の放火では,多くの飲食店が入居し営業中の店もある 建物内で火を放ち,その建物を全焼させただけでなく,周りの3棟の建物にも類 焼させて1棟を全焼させ,建物の一部を焼損させるだけでなく(第11),一度 は逃げ出したもの
の再び燃える建物に戻った住人1名の尊い生命を奪うとともに, 周りの5棟の建物に類焼させて1棟を全焼させ(第12),人が住む建物2棟を 全焼させる(第15)などの甚大な被害を生じさせた誠に重大で,特に悪質な犯 行であった上,結果も取り返しのつかない悲惨な結果を生じさせたのに,被告人 は,さらに,その後も,同様にパチンコにのめり込んだ生活を続け,いずれもパ チンコに負けたいらだちを解消するため,平成12年4月3日から翌4日にかけ てと同年5月29日から翌30日にかけての夜間にも,それぞれ2か所で連続し て放火した,というものである。
これらの犯行動機は,前記のとおりパチンコに負けたいらいらを解消するため 等という身勝手かつ短絡的なもので,酌量の余地は全くない。被告人は,約7か 月間にわたり,多くは人の寝静まった深夜に放火行為を繰り返しているだけでな く,一晩で合計15件の放火を連続して敢行するなど,犯行態様は非常に危険で 悪質である。本件により上記のとおり被害にあった建物の住民の生命が奪われる 取り返しのつかない結果が生じており,また,一連の放火により焼損した建物は 30棟に上り,焼損面積は合計約1840平方メートルに達し,その被害金額は
合計約5億5000万円と莫大である。建物が全焼するなどして焼け出され,生 活や営業の基盤となる建物や家財道具などを失った被害者の経済的,精神的打撃 は大きい。また,
死亡しするに至った住人の苦痛,無念さは筆舌に尽くし難く, 遺族の精神的苦痛及び犯人に対する怒りの大きさは察するに余りある。これらの 被害はおよそ金銭等によっては癒しがたい性質のものである上,経済的損失や精 神的打撃に対して被告人らが行った弁償や慰謝の措置は誠に不十分でって,多く の被害者の処罰感情は厳しく,とりわけ上記遺族の処罰感情が非常に厳しいのも 当然のことである。そして,地域住民を長期間にわたり不安に陥れるなど,本件 連続放火が地域社会に与えた影響も大きい。さらに,本件の犯行は,被告人が長 期間にわたって繰り返した同種の犯行の一部であることが窺われ,被告人は上記 のとおり自己の放火により人命を奪った事実を知った後も,なおも身勝手な理由 によって同様の重大な犯行を繰り返し
たものであって,その自己の犯罪結果につ いての自覚のなさは到底社会人として信じ難いほどであり,その遵法精神は麻痺 した状態にあったと認めざるを得ない。
以上の各事情を総合すると,被告人の刑事責任は極めて重く,重罰をもってこ れを償わせる必要があると思料される。
一方,被告人は,資産を処分するなどして金650万円を捻出し,極めて不十 分なものではあるが,被害弁償に努めていること,弁償金の受取りを拒まれた分 については贖罪寄付をしていること,被告人は公訴事実の全てを自供し,捜査及 び公判を通じて自己の犯した罪の重大さを自覚するに至り,反省の気持ちが深ま っていると認められること,被告人とその妻が被害者らに対し謝罪文を書いてそ の気持ちを表していること,妻が被告人の社会復帰を待ちその更生を支えてゆく 意思を示していること等酌むべき事情も認められるが,これらを最大限に考慮し ても,本件事案の重大さからして被告人に対しては無期懲役刑に処するのが相当 と認めて主文のとおり量刑したものである。
(求刑-無期懲役)
平成15年2月25日
名古屋地方裁判所刑事第5部
裁判長裁判官 伊藤新一郎

裁判官 後藤眞知子

裁判官 高橋信幸

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