事件番号 | 昭和37(あ)416 |
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事件名 | 医師法違反 |
裁判年月日 | 昭和39年5月7日 |
法廷名 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判種別 | 決定 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | 集刑 第151号151頁 |
原審裁判所名 | 東京高等裁判所 |
原審裁判年月日 | 昭和36年12月13日 |
判示事項 | 医師法第一七条にいわゆる「医業」を組成する医行為にあたるとされた事例。 |
裁判要旨 | 原判決の確定しているパスハツピと称する水薬は、薬事法第二条第一項第二号所定の「医薬品」にあたり、被告人等が疾病治療の目的でこれを患者の患部に塗布し又は患者をして持つ帰つて塗布させるためにこれを交付した行為は、所論あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和二二年法律第二一七号)附則第一九条第一項による届出にかかる医業類似行為の範囲内には属せず、同条第二項により同条第一項の届出医業類似行為者に準用されている同法律第四条所定の薬品の投与等の禁止規定に違反し、医師法第一七条にいわゆる「医業」を組成する医行為に当たる。 |
参照法条 | あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)4条,あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)附則19条1項,あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和22年法律217号)附則19条2項,薬事法2条1項2号,医師法17条 |
裁判日:西暦 | 1964-05-07 |
情報公開日 | 2017-10-17 14:17:47 |
本件上告を棄却する。 理 由 被告人両名の弁護人守屋栄夫の上告趣意第一について。 論旨は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、原判決の確定している本件バスハツピと称する水薬は、薬事法二条一項二号所定の医薬品に当たり、被告人等が疾病治療の目的でこれを患者の患部に塗布し又は患者をして持ち帰つて塗布させるためにこれを交付した本件行為は、所論届出にかかる医業類似行為の範囲内には属せず、昭和二二年一二月法律第二一七号附則一九条二項により同条一項の届出医業類似行為者に準用されている同法律四条所定の薬品の投与等の禁止規定に違反し、医師法一七条にいわゆる医業を組成する医行為に当たるものであつて、被告人等が医師でないのに業としてなした本件行為は、医師法一七条に違反するとした原判決の判断は、相当であり、原判決には所論のような法令の解釈を誤つた違法は存しない。) 同第二について。 論旨は、要するに、本件バスハツピなる水薬は、被告人Aにおいて創業以来三〇年の長きに亘り使用し、しかもそれは医師でさえも難かしいとしている神経痛、リユーマチの治療に貢献こそすれ、曾つて一度も人の健康に危険実害を及ぼしたことがなく、人体に対し全く無害有効のものであり、従つて右水薬を患者に施用した被告人等の本件行為は、何人も自由になし得るところの広義の医業即ち医業類似行為に属するものであつて、医師法一七条にいわゆる狭義の医業又はそれを組成する医行為には属しないものであるから、被告人等の本件行為を医師法一七条違反として処罰した原判決は、憲法二二条、九八条に違反すると主張する。 しかし、本件バスハツピなる水薬は、これを気浴、温浴、湿布等に使用した場合、極めて稀ではあるが特定の体質の人に高度の皮膚炎、悪心、下痢、発熱等の重い副作用を惹起することがあり、人体に無害であるとはいいきれず、正しい医学的注意の下に患者に施用することを要するものであることは、原判決の確定するところである。したがつて、本件水薬が人体に対し全く無害にして有効なものであることを前提として違憲をいう所論は、その前提を欠き、上告適法の理由とならない。よつて、刑訴四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 昭和三九年五月七日 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 斎 藤 朔 郎 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 松 田 二 郎 |