判例検索β > 昭和51年(オ)第402号
損害賠償請求
事件番号昭和51(オ)402
事件名損害賠償請求
裁判年月日昭和52年5月27日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
判例集等巻・号・頁集民 第120号607頁
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号昭和47(ネ)1254
原審裁判年月日昭和50年12月9日
判示事項借家法一条ノ二の正当事由に基づく解約申入の認定について狭義の弁論主義違反の違法があるとされた事例
裁判要旨「被告は、賃借家屋を改造するにつき賃貸人たる原告に立会の機会を与えず、原告の予期しなかつた改造を行い、また、原告に対して賃借家屋の補強工事をすると約束したのにその完全な履行をしなかつた。被告のこのような改造の方法、程度及びその後の補強のしかたは、賃貸借における当事者間の信頼関係を破壊するものであるから、賃貸借契約を解除する。」との原告主張は、被告の賃借家屋の用方義務違反を理由とする契約解除の主張であつて、このような場合に、裁判所が借家法一条ノ二の正当事由に基づく解約申入及び正当事由の存在を認定して原告の家屋明渡請求を認容したのは、当事者の主張しない事実を認定した違法がある。
参照法条民訴法186条
裁判日:西暦1977-05-27
情報公開日2017-10-18 06:54:01
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主 文
本件上告に基づき原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 本件附帯上告を却下する。
附帯上告費用は附帯上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人澤田和也の上告理由六について
所論は、要するに、被上告人らが原審において追加した予備的請求は、上告会社の本件家屋改造が賃貸借契約における当事者間の信頼関係を破壊するものであることを理由とする民法五四一条の適用又は同法六二八条の類推適用による契約解除をその請求原因として主張するものであるにもかかわらず、原判決は、これを借家法一条ノ二の正当事由による解約申入の主張と解したうえ、右解約申入による契約終了の効果を認めたものであつて、原判決には、上告会社に対する不意打の訴訟指揮をした点において狭義の弁論主義に違背し、また、訴えの変更につき民訴法二三二条の解釈適用を誤つた違法があるというのである。
記録によれば、被上告人らが原審において追加した右予備的請求の請求原因事実は、上告会社は、本件家屋を改造するにつき被上告人Bに立会の機会を与えなかつたうえに、同被上告人の予期しなかつた改造すなわち本件家屋の間柱十数本の撤去を行つた。また、被上告人Bが仮処分の申請を取り下げるについては、上告会社が、本件家屋正面中央庇にパイプ鉄柱を立てること、家屋内部の柱三か所の基礎を補強するために鉄アングルで根元を固定すること、各柱の上部を固定して補強すること、入口の東西両側にすじかいを入れること等の補強工事をすることが条件となつていたにもかかわらず、上告会社は、その完全な履行をせず、被上告人Bを欺罔した。上告会社のこのような本件家屋に対する改造の方法、その程度及びその後の補強のしかたは、賃貸借における当事者間の信頼関係を破壊するものである。よつて、右事実をもつて、上告会社に対し、賃貸借契約を解除する旨の意思表示をする。というのであつて、被上告人らの右主張は、上告会社の本件家屋無断改造すなわち賃借家屋の用法義務違反を理由とする契約解除をいうものであり、賃貸借契約関係の継続を著しく困難ならしめるような信頼関係の破壊がある場合であるから催告を必要としない旨の主張であると解するのが相当であつて、これを原判決摘示のように借家法一条ノ二の正当事由による解約申入の主張と解することはできない。 ところで、請求を理由あらしめ又は排斥するうえに必要な法律効果の発生を理由づける構成要件たる事実(主要事実)については、当事者の主張がなければ裁判所はその事実を認定することができない。もとより、主要事実についての当事者の主張内容とこれに対する裁判所の認定内容とが社会観念上同一と認められる限り、両者が厳密に細部まで一致していることは必要ではないが、原告が賃借人の用法義務違反の債務不履行を理由とする契約解除の主張をしている場合に、裁判所が借家法一条ノ二正当事由に基づく解約申入の効果を認めることによつて原告の家屋明渡請求を認容することは、右主張と認定との間に事実において同一性があるとはいえず、したがつて、かような認定をすることがこれにより不利益を受ける当事者すなわち被告の適切な防禦権行使の機会を不当に奪つたと認められないような特段の事情のない限り、狭義の弁論主義に違背することとなり許されないものと解するのが、相当である。
これを本件についてみるのに、記録によると、本件において右のような特段の事情があることは、これを認めることができない。したがつて、当事者の主張がないのに借家法一条ノ二の正当事由に基づく解約申入の効果を認めて被上告人らの本件家屋明渡請求を認容した原判決には、狭義の弁論主義に違背した違法があり、右違法はその結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決はこの点において破棄を免れず、本件はなお審理を尽くす必要があるので、これを原審に差し戻すのが相当である。 附帯上告理由について
附帯上告は、上告理由と別個の理由に基づくものであるときは、当該上告についての上告理由書の提出期間内に原裁判所に附帯上告状を提出してすることを要するものであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和三七年(オ)第九六三号同三八年七月三〇日第三小法廷判決・民集一七巻六号八一九頁参照)。本件附帯上告理由が本件上告理由(上告理由四及び五は、上告会社が全部勝訴した被上告人らの主位的請求に関する原判決の認定を非難するものであつて適法な上告理由にあたらないから、これを除く。)と独立した別個の理由に基づくものであること、及び、本件附帯上告状が提出されたのは昭和五一年六月二一日であり、上告代理人澤田和也に上告受理通知書が送達されたのは同年一月一三日であつて、本件附帯上告状は右上告受理通知書が送達された日から五〇日を超えたのちに提出されたものであることは、記録上明らかである。したがつて、本件附帯上告は、不適法であり、却下を免れない。
よつて、民訴法四〇七条、三九九条ノ三、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 服 部 高 顯 裁判官 天 野 武 一 裁判官 江 里 口 清 雄 裁判官 高 辻 正 己 裁判官 環 昌 一
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