事件番号 | 昭和34(オ)681 |
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事件名 | 農地買収計画決定取消請求 |
裁判年月日 | 昭和37年3月1日 |
法廷名 | 最高裁判所第一小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | 集民 第59号1頁 |
原審裁判所名 | 名古屋高等裁判所 金沢支部 |
原審裁判年月日 | 昭和34年4月27日 |
判示事項 | いわゆる刈分小作地の一部で基準時後自創法第二条第二項の小作地となつた土地につき、従前の「作人」であつた小作人らによつてなされた遡及買収の申請が違法とされた事例 |
裁判要旨 | いわゆる刈分小作地が昭和二二年三月頃当事者間の合意によつて、そのうちの約四割を地主の自作地とし残余の部分を数名の「作人」らの小作地とした場合、従前の「作人」で新らたに小作人となつた者によつてなされた右小作地についての遡及買収の申請であつても、許されないものと解すべきである。 |
参照法条 | 自作農創設特別措置法6条の2,自作農創設特別措置法6条の4 |
裁判日:西暦 | 1962-03-01 |
情報公開日 | 2017-10-18 07:27:53 |
本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人堤敏恭の上告理由第一点について。 原審の確定したところによれば、先ず、本件農地がもと被上告人所有のいわゆる刈分地一町二畝二一歩の一部であり、昭和二二年三月頃被上告人と原判示の訴外Dら六名の者との間で、右刈分地全部について従来右六名の者が行なつてきたいわゆる刈分耕作をすべてやめ、右刈分地のうち約四割に当たる四反五畝六歩を被上告人(地主)の自作地とし、約六割に当たる五反七畝一五歩を右六名の者の小作地として、それぞれ耕作する旨の合意が成立し、その頃から右合意に基づき耕作形態および耕作者の変更がなされ、本件農地が右刈分地の約六割に当たる五反七畝一五歩であるというのである。そして、原審はさらに、右地主たる被上告人と前記六名の者との間における前記の耕作形態および耕作者の変更に関する合意は、本件刈分地における従来の収穫物の分割の割合(四割、六割)に応じてそれぞれ右土地を分けて耕作するためになされたものであること、および右六名の者が右合意成立後本件農地につき従来の刈分耕作をやめ小作地として従前どおり耕作してきたことを認定した上、右刈分地につき実際に耕作の業務に従事しているのは、作人であつて地主ではなく、地主と作人の関係はあたかも請負ないし雇傭に類する無名の身分的な契約関係にあるものと解することができるから、右刈分地は結局において自作農創設特別措置法(以下単に自創法という。)二条二項所定の小作地というよりも、むしろ同法三条五項二号所定の自作地に該当するものと解するのが相当であると判示し、また、右刈分地ないし本件農地についてみるに、右刈分地の耕作形態および耕作者の変更に関する前記合意に基づき右刈分地の約四割に当たる四反五畝六歩を被上告人の自作地とし、約六割に当たる五反七畝一五歩の本件農地については、これを作人たる前記六名の者の小作地とし同人らにおいて従前どおり耕作してきたのであるから、すくなくとも本件農地に関するかぎり、右六名の者は右刈分地について自創法に定める基準時以後耕作の業務をやめたということはできない旨を判示している。右原審の認定、判断は、挙示の証拠関係に照らしこれを是認できる。それ故、所論は、原審の裁量に属する証拠の取捨、判断、事実の認定を非難し、これを前提として原判決の違法をいうに帰するものであつて、採るを得ない。 同第二点、第三点について。 原審の事実認定がその挙示の証拠に照らし是認し得ることは、論旨第一点に対する前記説示において述べたとおりである。そして、右事実関係の下においては、本件農地は、その耕作形態および耕作者に、前記のような変更がなされたとしても、右農地を一団として見た場合には、その変更の前後において自創法六条の四にいわゆる耕作の業務をやめたものには該当しないと解するのが正当である。しからば本件農地は、自創法六条の二、三条一項二号、六条の四に則り遡及買収することはできないものというべきであつて、右と同趣旨に出た原判示は正当である。それ故、所論の違法は認められない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 下 飯 坂 潤 夫 裁判官 高 木 常 七 |