判例検索β > 昭和43年(オ)第410号
家屋明渡請求
事件番号昭和43(オ)410
事件名家屋明渡請求
裁判年月日昭和43年11月7日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁集民 第93号119頁
原審裁判所名名古屋高等裁判所
原審事件番号昭和41(ネ)1046
原審裁判年月日昭和43年2月5日
判示事項借家法七条(昭和四一年法律第九三号による改正前のもの)に基づく増額請求により賃料が増額された後における賃借人の賃料債務の不履行が賃貸借の基礎たる信頼関係を破壊するものとして賃貸借契約の解除が認められた事例
裁判要旨(省略)
参照法条民法541条,民法601条,借家法7条
裁判日:西暦1968-11-07
情報公開日2017-10-18 07:12:54
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人堤幸一、同大池龍夫の各上告理由について。
原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の確定したところによれば、本件家屋の賃貸人である被上告人から賃借人である上告人A1および同A2に対し、昭和四〇年六月二四日頃到達した書面をもつて、借家法七条(昭和四一年法律九三号による改正前のもの。以下同じ。)により、本件家屋の賃料を同年七月分から一ケ月金二六、二五〇円に増額する旨の意思表示がなされ、その当時における本件家屋の適正賃料たる一ケ月金二二、四九六円の限度で右意思表示による増額の効果を生じたところ、右上告人らは、同月分については従前の賃料金七、七五〇円を、また翌八月分以降については一ケ月金一〇、〇七五円宛を提供ないし供託するにとどまつたので、被上告人は、昭和四一年三月二八日に、昭和四〇年七月一日以降同四一年三月末日までの一ケ月金二六、二五〇円の割合による賃料を一週間以内に支払うよう右上告人らに催告したが、右上告人らは、当時すでに本訴が提起されて調停に付され、その手続上三名の鑑定人の各鑑定書が提出されていて、それらにより昭和四〇年七月一日現在における本件家屋の適正賃料が少なくとも一ケ月金二〇、〇〇〇円以上であることを知り得たにかかわらず、その態度を翻さず催告に応じなかつたというのである。
右に牴触する上告人ら主張のような賃料に関する特約の存在は認められないとした点を含め、原審の右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右認定の違法を主張する論旨は理由がなく、採用し得ない。 ところで、借家法七条による賃料増額請求権はいわゆる形成権に属し、右権利行使の意思表示が相手方に到達すれば、これによつてその時から賃料は適正額に増額されるのであつて、その具体的金額について当事者間に意見が合致せず、裁判によつてそれが確認される場合でも、右裁判によつてはじめて増額の効果が発生するものではないことは、当裁判所の判例(昭和三八年(オ)第一三六五号同四〇年一二月一〇日第二小法廷判決民集一九巻九号二一一七頁参照)とするところであり、前記改正法施行後においても、本件のように同法施行前になされた増額請求にかかる事案につき、右判例を変更すべき必要は認められない。それゆえ、論旨のうち、右判例と異なり、当裁判所の採らない独自の見解を主張する部分は、採用することができない。
そして、前記事実関係によるときは、適正賃料の半額にも達しない金額をもつてした上告人A1、同A2の賃料の提供ないし供託をもつて債務の本旨に従つた履行の提供と同視しうべくもないことは明らかであるから、右上告人らは履行遅滞の責を免れないところ、同上告人らは、増額の意思表示を受けた当時だけでなく、前記のように、各鑑定書により客観的に相当とされるべき賃料の額が少なくとも一ケ月金二〇、〇〇〇円を下らないことを知りえたのちにも、なお従前の態度を固執して被上告人の催告を無視し、履行遅滞を継続したのであるから、賃借人として通常つくすべき義務に著しく違反したものというべく、上告人らの右不履行をもつて賃貸借の基礎たる当事者相互間の信頼関係を破壊するものとして、催告期限の経過後に被上告人のした契約解除の効力を認め、これをもつて権利の濫用にあたるものとすることもできないとした原審の判断は正当であり、この点においても、原判決に何ら所論の違法は認められない。したがつて、右判断の違法をいう論旨も理由がなく、採用するを得ない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 松 田 二 郎 裁判官 岩 田 誠 裁判官 大 隅 健 一 郎
トップに戻る

saiban.in