判例検索β > 平成16年(わ)第1598号
強姦、強盗、強姦未遂被告事件
事件番号平成16(わ)1598
事件名強姦,強盗,強姦未遂被告事件
裁判年月日平成16年10月1日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第7刑事部
裁判日:西暦2004-10-01
情報公開日2017-10-13 01:41:54
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被告人を懲役14年に処する
未決勾留日数のうち130日をこの刑に算入する。






【有罪と認定した事実】
被告人は,
第1〔平成16年4月23日付各公訴事実。被害者A子関係〕
1 通行中の女性を強姦しようと企て,平成15年12月28日午前2時13分ころ,大阪市a区bc丁目d番e号先路上において,帰宅途中のA子(当時21歳)に対し,いきなり背後から抱き付き,

静かにしろ。声出したら刺すぞ。

俺はB組のCや。

静かにしとけよ。

などと脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女を同区bc丁目f番g号D北側路上に連行し,同所において,同女を強姦した。
2 そのころ,上記路上において,同女が上記犯行により被告人を極度に畏怖しているのに乗じて同女から金員を強奪しようと企て,同女に対し,

小銭でええから出せ。

などと更に脅し付けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,同女から財布1個(現金約1万9200円及び鍵等約21点在中。物品時価合計約1万0500円相当。いずれも同女所有)を奪い取って強奪した。
第2〔平成16年5月21日付各公訴事実。被害者E子関係〕
1 通行中の女性を強姦しようと企て,平成15年12月31日午前零時ころ,大阪市a区bh丁目i番j号Fビル3階通路において,帰宅途中のE子(当時23歳)に対し,いきなり背後から抱き付いて手でその口をふさぎ,

声出すな。声出したら刺すぞ。

などと低い声で脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女を同ビル階段の2階から3階に通じる踊り場に連行し,同所において,同女を強姦した。
2 そのころ,上記踊り場において,同女が上記犯行により被告人を極度に畏怖しているのに乗じて同女から金員を強奪しようと企て,同女に対し,

お前何号室や。金くれたらここには来うへん。

などと更に脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女の差し出した現金1万円(同女所有)を強奪した。
第3〔平成16年3月25日付各公訴事実。被害者G子関係〕

1 帰宅してきた女性を強姦しようと企て,平成16年2月7日午後11時50分ころから同月8日午前零時ころまでの間,大阪市a区kc丁目l番m号H方前において,帰宅して自宅のドアを開けようとしたG子(当時16歳)に対し,いきなり,その背後から抱きつき,

騒ぐな。騒いだら刺すぞ。俺,ナイフを持ってんねんぞ。

などと脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女を同ハイツ非常階段の4階から5階に通じる踊り場に連行し,同所において,同女を強姦した。
2 そのころ,上記踊り場において,同女が上記犯行により被告人を極度に畏怖しているのに乗じて同女から金員を強奪しようと企て,その顔面をコートで覆って目隠し状態にした同女に対し,

それ取ったら殺すぞ。

などと更に脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女から手提げかばん1個(現金約9300円及び財布等15点在中。物品時価合計約6万3000円相当。いずれも同女所有又は管理)を強奪した。
第4〔平成16年7月29日付公訴事実。被害者I子関係〕
帰宅してきた女性を強姦しようと企て,平成16年2月27日午後11時55分ころ,大阪市a区no丁目p番q号I子方前廊下において,帰宅して自宅のドアを開けようとした同女(当時22歳)に対し,いきなり背後から抱きついて着衣の上から同女の胸をもみながら,

騒ぐな。分かっているやろな。

などと脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女を強姦しようとしたが,同女が大声を出したため犯行の発覚を恐れて逃走し,その目的を遂げなかった。
第5〔平成16年6月16日付公訴事実。被害者J子関係〕
通行中の女性を強姦しようと企て,平成16年3月3日午前零時30分ころ,大阪市a区br丁目s番t号K正面出入り口前において帰宅途中のJ子(当時16歳)に対し,いきなり背後から抱きついて,着衣の上から同女の胸をもみながら,

騒いだら刺すぞ。

などと脅し付けて,その反抗を抑圧した上,同女を同区br丁目u番v号Lに連行し,同所において,同女を強姦しようとしたが,同女から強姦しないよう何度も懇願されたため,同女を強姦するのが可愛そうになって強姦自体は中止し,同女に口淫をさせたり,陰部を直に弄ぶなどしたにとどまり,その目的を遂げなかった。
【有罪認定に供した証拠】
<省略>
【法令適用の過程】
(1) 有罪と認定した事実に記載の被告人の各行為は,次の各刑罰法令にそれぞれ該当する(〔 〕内は法定刑)。
第1の1,第2の1,第3の1の各行為

…いずれも刑法177条前段〔2年以上の有期懲役〕
第1の2,第2の2,第3の2の各行為
…いずれも刑法236条1項〔5年以上の有期懲役〕
第4,第5の各行為
…いずれも刑法179条,177条前段〔2年以上の有期懲役〕 ところで,第5の罪は中止未遂であるから刑法43条但書,68条3号により法律上の減軽をし,上記各罪は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により,刑及び犯情の最も重い第3の2の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重を行う。
その結果導き出された刑期の範囲内で,当裁判所は,後記量刑の理由により,被告人を主文の刑に処することとした。(2) 被告人には未決勾留の期間があるので,刑法21条を適用して,その日数のうち主文の日数をこの刑に算入する。
(3) 訴訟費用(国選弁護費用)が生じているが,刑事訴訟法181条1項但書を適用して,被告人にはこれを負担させない。
【量刑の理由】
1 事案の概要
本件は,定職にも就かず,同棲中の女性に経済的に依存する生活を送っていた被告人が,性的欲求不満の解消を図るとともに,生活費・遊興費の足しにする意図もあって,約2か月間に,(1) 帰宅途中の女性3名をその自宅のすぐ近くで相次いで襲ってそれぞれ強姦し,更には,強姦後被害女性が畏怖しているのに乗じていずれも金品を強奪するまでし(第1~第3の各1,2の犯行),(2) その後やはり,帰宅してきた女性が自宅の部屋の鍵を開けようとしている際に,襲いかかって強姦しようとしたが,同女に騒がれたため,着衣の上から胸を触っただけで,強姦は未遂に終わり(第4の犯行),(3) その後同じく,帰宅途中の女性を襲って強姦しようとし,同女の陰部を直に弄んだり,同女に口淫させたりもしたものの,強姦自体は自己の意思により中止した(第5の犯行)という事案である。
2 量刑上特に考慮した事情
以上見たとおり,被告人は,約2か月間の短期間に,いずれも常習として,5人の若い女性に対し相次いで強姦の犯行に及び,うち2名については未遂に終わったものの,残り3名の女性については,強姦の犯行を遂げたばかりか,あろうことか被害女性の畏怖に乗じて強盗既遂の犯行にまで及んでいるのである。もとより,本件各犯行に至る経緯・動機は,身勝手極まりないものであって,全く酌むべきものがなく,その犯行態様も,凶器の所持や暴力団との関係を装って被害者を脅迫するなど,すこぶる悪質である。

そして,本件各犯行の結果は非常に重大である。各被害女性は,いずれも何らの落ち度がないのに,自宅を目前に被告人の毒牙にかかってしまっているのであって,その無念はいかばかりかと思われ,誠に気の毒であるというほかない。ことに,被告人に強姦を遂げられたばかりか,金品まで奪われてしまった第1~第3の各被害女性は,まさに踏んだり蹴ったりの状態であって,その肉体的・精神的苦痛の
大きさは余人には計り知れないものがある。3名とも,犯行後相当時間が経過した段階でも,なお恐怖の念が去らず,暗くなると外を出歩けなくなったとか,出歩くのが怖くなったという女性もいるし,またあるいは,昼間にもかかわらず,客の男性が近づいただけでピクッとなってしまうという女性もいる。若い彼女らのこれからの長い人生において,本件犯行が大きな影を落とすことがないのか,誠に憂慮されるところである。第4,第5の各被害女性は,幸い強姦は未遂に終わっており,第1~第3の各被害女性ほどの被害の深刻さはないにせよ,少なくとも強制わいせつ行為の被害は被っているのであって,ことに第5の被害者は,上記のとおり,陰部を直に弄ばれたり,姦淫を免れる条件に,口淫までさせられているのであって,その屈辱の思いはいかばかりかと察せられる。
被告人は,以上のような被害の重大さにもかかわらず,各被害者に謝罪文1通を送付した以外には,何らの被害弁償や慰謝の措置も行っていないのであって,各被害者らが,被告人に対する極めて厳重な処罰を望んでいるのも,けだし当然のことといわねばならない。
ただ,その一方で,被告人のために酌むべき事情として,上記第5の犯行は中止未遂であること,被告人には少年時代に同種の非行歴はあるものの,同種前科はなく,異種前科も平成4年に窃盗罪で懲役1年6か月・執行猶予4年(保護観察付)に処せられた1犯があるだけであること,被告人は,任意同行以後,余罪も含め,事実を正直に認め,各犯行につき深く反省する態度を示していること,内縁の女性が被告人の帰りを待っていること,などの事情を窺うことができる。3 総合判断
そこで,以上の諸事情を総合すると,上記のような被告人のために酌むべき事情を十分考慮に入れても,なお,被告人の刑事責任は非常に重大であるといわざるを得ない。
そして,上述したような本件の犯情や被告人の一般情状に鑑み,各犯罪類型ごとに,量刑の幅の最低ラインを考えていくと,(1) まず,第1~第3の各犯行については,性犯罪と財産犯の最も悪質な犯罪形態である強姦強盗であって,被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視すると,いずれ
も懲役5年を下回ることはない(酌量減軽を行うことは全く不適当である。)と解される。(2) 次に,第4,第5の各犯行については,強姦未遂であるとはいえ,強制わいせつ行為は行われており,ことに第5のそれはかなり悪質なものであることに加え,やはり,いずれも被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視すると,第4については懲役1年を,第5については懲役1年6か月を下回ることはないと解される。
そこで,これらを合算すると被告人の刑事責任は懲役17年6か月を下回ることはないということになる。もとより,刑法45条前段の併合罪の関係にある数罪を併合審判する場合には,実務上,被告人には併合の利益があるとされており,各罪において相当とされている刑を合算した刑よりは,相当程度下回る刑を言い渡すのが通例となっているが,本件のように,併合罪の関係にある数罪が,いずれも人身に対する罪であって,各被害者の心身にわたる被害が相当深刻であるような場合には,あまりに過大な併合の利益を見積もることは,被害者保護の見地からして相当ではなく,基本的には,合算刑をベースとして(但し,刑法47条や14条の制約の範囲内で),それに比較的近い範囲内で量刑を行うことが相当ではないかと考えられる。ことに本件各罪に共通する強姦(未遂)罪は,女性の性的自由を侵害するというにとどまらず,女性の人格そのものを蹂躙する性質を持つ犯罪であるだけに,なお一層このことが妥当するといわねばならない。
そして,このような観点からすると,検察官の懲役12年の求刑は,前述のような被告人の罪責やこれに基づく合算刑の最低ラインに比して,軽きに過ぎるものといわざるを得ない。公益の代表者たる検察官の科刑意見は十分傾聴すべきものであり,実務上も量刑の上限を画する事実上の役割を果たしていることは歴然たる事実であるが,本件の場合は,その意見を十分に尊重し考慮してもなお,上述のような理由から,その意見には到底賛同することができない。
当裁判所は,以上のような考察の下に,前述のような合算刑の最低ラインに鑑みると,改めて被告人のために酌むべき事情を最大限考慮し,本件における併合の利益を併せ考えてもなお,主文程度の刑の量定は免れないと判断した次第である。
平成16年10月1日
大阪地方裁判所第7刑事部

裁判長裁判官 杉 田 宗 久



裁判官 鈴 嶋 晋 一



裁判官 菅 野 昌 彦

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