判例検索β > 昭和34年(オ)第1174号
建物収去、土地明渡請求
事件番号昭和34(オ)1174
事件名建物収去、土地明渡請求
裁判年月日昭和37年10月2日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
判例集等巻・号・頁集民 第62号637頁
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審裁判年月日昭和34年7月16日
判示事項明瞭な書面上の記載に反した意思表示の解釈が経験法則に違反するとされた事例。
裁判日:西暦1962-10-02
情報公開日2017-10-18 07:26:09
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主 文
原判決を破棄する
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理 由
被上告人B1、同B2、同B3、同B4に対する上告理由について。 上告代理人岩野稔の上告理由第二点および上告代理人中村達の上告理由第三点は、原判決が甲第二号証による上告人の意思表示を、本件賃貸借契約の即時解除の趣旨に解釈しなかつたのは違法であると主張する。
原判決は、被控訴人(上告人)と控訴人B1、同B2、同B3の先代Dとの間に締結された本件宅地賃貸借契約において、賃借人が賃料の支払を怠つたときは、賃貸人は通知催告をしないで直ちに契約を解除することができる旨の特約がなされたこと、被控訴人は昭和三〇年七月二三日附内容証明郵便(甲第二号証)で右控訴人三名に対し賃料不払を理由として本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなし、右書面が翌二四日同控訴人らに到達したが、右書面には、本件宅地の賃料については昭和三〇年三月末までの分の支払を受けたが、同年七月末までの滞り賃料二万九四四〇円の支払がないので賃貸契約書第八項により解約の意思表示をする、との趣旨が記載されている事実を確定したものである。前記特約は、右当事者間に取り交わされた賃貸契約書第八項によつてなされたものであることは、原判決が右特約の認定に供した甲一号証(賃貸拠約書)の文言に徴し明らかであるから、右内容証明郵便による契約解除の意思表示は、その到達によつて即時解除する趣旨に解するのが順当である。しかるに原判決は、右内容証明郵便による書面の末尾に仍て来る七月末日迄に右金額相違なく御支払下さる様に御願ひ申上げますとの記載のあることと、第一審における証人E、被控訴本人の各供述並びに弁論の全趣旨を綜合し、被控訴人は前記内容証明郵便をもつて、前記控訴人三名に対し、昭和三〇年七月三一日までに当日までの延滞賃料四ヶ月分合計二万九四四〇円の支払を催告し、若しその支払をしない場合には本件賃貸借契約を解除する旨催告並びに条件附契約解除の意思表示をしたものと解釈したが、賃貸借契約を即時解除したからといつて同時に延滞賃料の支払を督促することは何ら不自然ではないし(厳密にいえば、昭和三〇年七月二四日右内容証明郵便の到達と同時に契約が解除されたのであれば、翌二五日より月末までは明渡義務不履行による損害金が発生し賃料債権は存しないことになるが、明渡義務不履行による損害金は原則として賃料額と同額であるところから、請求金額に誤りがない以上、請求権の法律上の性質について正確な表現を怠ることは巷間多く見受けられるところである)、第一審における証人Eおよび被控訴本人の供述を録取した調書において、右内容証明郵便による契約解除の意思表示が即時解除の趣旨であることを否定する趣旨の記載が見当らない。また、記録を精査しても、弁論の全趣旨によつて原判決の解釈を正当とすべき根拠がうかがわれない。されば、原判決の前記意思表示の解釈は、挙示の証拠によつては経験則上是認できないものというべきであり、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決中被上告人B1、同B2、同B3、同B4に関する分はこの点において破棄を免れない。本件は、右意思表示の趣旨の解釈についてさらに審理してこれを確定する必要があるから、本件中、右被上告人らに関する分を原審裁判所に差戻すことを要する。
被上告人合資会社B5鉄工所に対する上告理由について。
上告代理人岩野稔の上告理由第五点は、原判決はDより被上告会社への借地権譲渡および上告人のこれに対する黙示の承諾を認定したのは経験法則に違反すると主張する。
原判決は、その所掲の証拠により、控訴会社(被上告会社)がDの同族を主たる社員とする同族会社として、昭和二三年一二月一六日設立され、Dより個人経営時代の鉄工所の設備および本件宅地の賃借権を譲受けてその常業を継続したものであつて、同会社の本件宅地上の建物には会社の名称を表示した看板を掲げていること、Dの生前本件宅地の賃料は控訴会社の振出した小切手を以て支払つていたこと、従つて被控訴人は、控訴会社が本件宅地を使用することをかねて諒知していたのにかかわらず、何等の異議を述べず控訴会社振出の右小切手を以て賃料の支払を受けていたものと認定し、右事実によれば、被控訴人は前記賃借権の譲渡を黙認したものと認めるのが相当である旨判示したものである。しかしながら、その所掲の証拠によつても、長年に亘り継続的に会社振出の小切手をもつて賃料が支払われたものであるかどうかが明らかでなく、賃料は第三者振出の小切手をもつて支払われることもありうるから、他に何らかの賃借権譲渡承諾を認むべき徴憑事実があるならば格別、単にDの借地上の建物に会社名義の看板が掲げられ、また賃料を会社振出名義の小切手で支払われたことがあるからといつて、直ちに地主が右借地につき賃借権の譲渡が行われたことを諒知し、これを黙認したことを認めうるとすることは早計である。論旨は理由があり、原判決中被上告人合資会社B5鉄工所に関する分はこの点において破棄を免れない。本件は、賃借権譲渡についての上告人の承諾の有無に関しさらに審理しこれを確定する必要があるから、本件中被上告会社に関する分をも亦原審に差戻すことを要する。
よつて、その余の上告理由についての判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 石 坂 修 一 裁判官 垂 水 克 己 裁判官 五 鬼 上 堅 磐 裁判官 横 田 正 俊
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