判例検索β > 平成14年(わ)第306号
強姦致傷、死体遺棄、強姦、殺人、傷害、窃盗被告事件
事件番号平成14(わ)306
事件名強姦致傷,死体遺棄,強姦,殺人,傷害,窃盗被告事件
裁判年月日平成15年3月27日
裁判所名・部前橋地方裁判所  刑事部
裁判日:西暦2003-03-27
情報公開日2017-10-13 01:44:33
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平成15年3月27日宣告
平成14年(わ)第306号,343号,398号,531号 強姦致傷,死体遺棄強姦殺人傷害窃盗被告事件
主文
被告人を無期懲役に処する
未決勾留日数中240日をその刑に算入する。
理由
(犯行に至る経緯等)
1 被告人は,昭和18年,北海道苫小牧市内で出生し,地元の中学校を卒業後,陸上自衛隊に約10か月間勤務した後,苫小牧市内,東京都内及び群馬県内において,工員,上下水道工事の作業員,塗装工などとして働いたが,平成5年1月前刑の強姦致傷罪等により服役し,平成10年11月に出所した後は,重機の運転手,大工手伝いなどとして働いたものの,平成13年12月以降は無職であった。被告人は,昭和48年7月に婚姻したが,昭和49年10月協議離婚し,その後昭和58年6月にAと再婚し,昭和59年に長男を,昭和61年に次男を,平成元年に長女(B)をそれぞれもうけたが,平成4年8月に前刑により逮捕され,同年10月に離婚し,3人の子の親権者をAと定めた。
2 Aは,被告人と離婚した後も,被告人が前刑から出所した後である平成11年春ころから,週に一,二回程度,長女らを連れて被告人の自宅に行き,食事を作ったり,寝泊まりする生活を送っていた。また,被告人は,平成12年ころから,長男及び次男と同居するようになった。被告人は,短気で激高しやすい性格であり,日頃から,気に入らないことがあると,Aや子供たちを殴打するなどの暴力をふるうなどしていたため,Aや子供たちは,被告人の機嫌を窺うようにして生活していた。被告人は,平成11年ころ,当時小学校5年生であった長女に対し,その陰部に手指を挿入するなどのわいせつ行為に及ぶようになり,やがて,同女を自宅に呼び出したり,車で連れ出したりして,強いて姦淫するようになった。長女は,被告人を恐れており,その被告人から厳しく口止めされたので,誰にも相談できずに1人思い悩んでいたが,平成13年ころ,Aに対し,被告人から性的関係を強要されていることを打ち明けた。しかしながら,Aも,上記のとおり,被告人を恐れていたことから,直接説得して止めさせることはできず,それ以後も,被告人による長女に対する性的関係の強要は続いていた。3 被告人は,その自宅南側に位置するアパートに平成13年4月ころ一人暮らしをするようになったCに関心を抱くようになり,その後,同女の駐車の仕方や回覧板の回し方等に難癖をつけて言い争いをしたり,自宅付近で同女を見かけるとおまえ,また男んとこにでも行くんかなどと声をかけるなどしていた。(犯罪事実)
被告人は,
第1 平成13年7月23日ころ,群馬県佐波郡a町大字bc番地の被告人方南側洋間において,A(当時36歳)に対し,その顔面を扇風機で殴打し,よって,同人に全治8週間を要する左眼窩底吹き抜け骨折の傷害を負わせた。
第2 同県北群馬郡d村大字ef番地の作業小屋において,
1 同年8月ころ,D所有の木製置物3個(時価合計3万円相当)を, 2 同年10月ころ,前記D所有の木製置物1個(時価1万円相当)を,それぞれ窃取した。
第3 B(当時13歳)を強いて姦淫しようと企て,平成14年5月6日午前9時ころ,同県高崎市g町h番地先路上に駐車中の普通乗用自動車内において,同女に対し,人が来るから,黙ってろなどとすごんで脅迫し,その左顔面及び両耳を手拳等で殴打するなどして,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫し,その際,上記暴行により同女に全治約1週間の左頬部打撲傷等の傷害を負わせた。
第4 同月9日午後7時30分ころ,同県佐波郡a町大字bi番資材置場付近路上において,軽四貨物自動車を運転中,歩行中のC(当時33歳)を認めるや,同女を強いて姦淫しようと企て,同女に対し,その背後から同車両を衝突させて転倒させ,病院に連れて行くなどと嘘を言って同女を助手席に乗せ,同町大字bj番地残土置場において,同車両から降車した同女に対し,その顔面を鈍器で殴打するなどし,同女を同車両の助手席に乗せ,再び上記資材置場に至り,同所において降車させた同女を,同所に駐車中の別の自己所有の普通乗用自動車内に連れ込み,その両手首を緊縛するなどして,反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫した。第5 同日ころ,同所に駐車中の前記普通乗用自動車内において,同女に対し,殺意をもって,その頚部をストッキング様のもので絞め付け,そのころ,同所において,同
女を頸部圧迫により窒息死させて殺害した。
第6 同日ころ,同所に駐車中の前記普通乗用自動車の後部座席間の足下床上に同女の死体を押し込んで,その上から緑色ビニールシートを被せ,同車内の窓のカーテンを閉めるなどして隠匿した上,同車両を,同月13日午前6時10分ころ,同所から同町大字b字kl番先路上まで,E運転の普通乗用自動車で牽引移動させ,さらに,同日午前8時45分ころ,同路上から,同所先の資材置場敷地内まで自ら運転して後退移動させて駐車させ,上記死体を搬送して放置し,もって死体を遺棄した。(事実認定の補足説明)
1 判示第1の傷害の事実について
(1) 検察官は,本件傷害の事実に関して,被告人がAを数回殴打したと主張する。裁判所は,関係証拠を検討すると,被告人がAを殴打した回数が複数回であることについては合理的な疑問を差し挟む余地があると判断して判示のとおり認定したのでその理由を補足して説明する。
(2) Aは公判廷及び捜査段階において,本件傷害の経緯について,被告人がAと言い合いをするうちに,徐々に怒りはじめ激高して扇風機を持ち上げてAに振り下ろしたと述べ,殴られた回数については,何度もとか,3回くらいと一貫して複数回殴られたと述べ,左目を殴られたのは1回目の暴行だったが,その後,何度も被告人に殴られて目や頭から血が噴き出し気が遠くなったので必死で網戸に体当たりして庭に落ちたと述べている。しかしながら,Aに体力等において勝る被告人が激高して扇風機でAの左目付近を1回殴れば,その殴打により診断書記載の傷害が生じても不自然ではないし,Aの供述どおり扇風機でさらに頭部,顔面等に暴行を受けたとすれば,左目の傷害の他に頭部,顔面等にも傷害があるべきところ,上記の診断書には,それが眼科医により作成されたものであるとはいえ,左目の傷害の他に頭部,顔面に傷害があったことについて全く記載がないことなど関係証拠から認められる客観的状況に照らすと,Aの供述する被告人の暴行態様や,Aの受けた上記傷害の程度によればAは激痛を感じていたものと推認すべきところ,そのような激痛の中で網戸に自ら体当たりするというAの供述した行動も不自然であり,またそのような激痛を受けた際の認識,記憶には疑問を入れる余地があることから,Aの被告人による暴行の回数に関する供述の信用性には合理的な疑問を入れる余地があると言うべきである。
(3) 他方,被告人は,捜査段階及び公判廷において,一貫して,被告人が,Aに対し,扇風機のプラスチックの首部分を持って,その顔面を1回殴打したこと,その際,扇風機の羽根を覆っているカバー部分が同人の左目付近に当たり,同人は,網戸につかまったため,網戸とともに庭に落ちたこと,同人の左目辺りから血が流れていたことを供述している。被告人の供述は,具体的かつ詳細で,被害者が庭に落ちたときの様子など迫真性に富む具体的な内容であって,実況見分調書等に記載された客観的状況に照らしても,自然な内容であるといえる。すると,本件犯行当時被告人が興奮状態であったことや,公判廷での被告人の供述態度は,全体的に自己弁護的で,些細なところで虚偽を述べるなど真摯なものとはいえないけれども,上記被告人の供述内容が,事実に反するものであるとまで言い切ることはできない。
(4) 以上によれば,被告人がAの顔面を数回殴打したとのAの供述には合理的な疑問を入れる余地があり,被告人の供述を排斥することもできないので,判示のとおり認定した次第である。
2 判示第3の強姦致傷の事実について
(1) 弁護人は,強姦致傷の事実について,被告人には強姦の犯意も実行行為もない旨主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をするので,以下,裁判所が判示のとおり認定した理由を補足して説明する。
(2) Bは,その検察官及び警察官に対する各供述調書において,平成11年ころ,被告人から,その陰部に手指を入れられるなどのわいせつな行為をされるようになったこと,その後,姦淫されるようになり,約40回にわたり姦淫されたこと,被告人から姦淫等について口止めされたことや,被告人の暴力が怖かったことから,姦淫の事実について母親にも話せなかったこと,平成13年ころ,思い悩んだ末に母親に話したこと,その後も,被告人の姦淫行為は続いていたこと,被告人から,本件犯行当日,届け物の用事を口実に車で連れ出されたこと,被告人が草原みたいなところに停車したので,何で車を止めたのか尋ねると,被告人が決まってるだろと言ったこと,そこで,被告人から姦淫されることがわかったので,やだやだと言ったこと,被告人が陰部を触るなどのわいせつな行為をして,後部座席に移動するよ
うに指示したので,やだやだと言ったこと,すると,被告人は右の平手でBの左耳から左頬のあたりをぶったこと,Bがやだやだと泣きながら言ったが,被告人は人が来るから黙ってろと言い,右の手の甲でBの右耳から右頬のあたりをぶち,さらに,げんこつで左頬をぶったこと,そこで,Bが被告人を恐れて抵抗できず,後部座席に移動すると,被告人はBに覆い被さってBを姦淫したこと,このとき被告人の陰茎が根元までではないがその先端だけではなくもっと奥まで挿入されたことなどを詳細に供述しており,Bがその当時13歳の中学2年生であることを考えると,その供述内容は,実際に経験していないと到底語り得ないような具体的かつ迫真性に富んだものであるし,医師Fの警察官調書や実況見分調書等から認められる客観的状況に照らしても自然で,Bが被告人から連れ出されて本件被害に至る経緯やBが被告人とともに帰宅した際の被害後の状況などに関するBの母親であるAの検察官及び警察官に対する各供述調書における供述とも内容的に符合していることから,その信用性に疑問を差し挟む余地はない。
(3) これに対し,被告人は,公判廷において,弁護人の主質問に対し,Bを強姦するつもりはなかったし,実際に姦淫していない旨供述した。しかしながら,被告人は,検察官の反対質問に対しては,Bを強姦するつもりはあったが,陰茎で膣を触ったりこすったりしただけで,陰茎を膣内に入れたことはないなどと供述を変遷させ,さらに,弁護人の再主質問に対しては,再び強姦するつもりはなかったかのように供述を変遷させているが,このように供述を変遷させたことにつき合理的な理由を述べていない。また,被告人は,公判廷において,Bが実の娘であり恥をかかせたくないから争わないなどと供述する一方で,これまでにBと合意の上で姦淫行為に及んだことは2回あり,Bは寝ているときや風呂に入っているときに自ら被告人の手を取って,自らの陰部を触らせるようにしたなどとBから性交渉を誘ってきたかのような供述をしたことがあるが,その供述態度自体矛盾している上,その供述内容は診断書,医師Fの警察官調書等から認められるBの発育状況等の客観的状況に照らし不自然かつ不合理であるし,被告人自身,その後,Bが自らの陰部を触らせたか否かについてあいまいな供述をするに至っている。加えて,被告人の供述態度は,あいまつかつ不合理な弁解をしながら,具体的な質問を受けると,争うつもりはないからとか何も弁解はできないからなどといって明確に答えようとしないなど,きわめて自己弁護的かつ質問回避的であって,真摯なものとは到底いえないことをも併せ考えると,被告人の公判供述は信用することができないと言うべきである。なお,被告人は,捜査段階において,Bを強姦したと述べたり,同女の膣内に自己の陰茎の先の方が数センチ入ったという趣旨の供述をしているが,その姦淫の態様や程度などは,上記のとおり信用できるBの供述と異なっており,公判供述と同様に信用できない。
(4) 以上のとおり信用できるBの供述により,判示第3事実のとおりの強姦致傷の事実を認めた。
(法令の適用)
該当罰条
第1の事実 刑法204条
第2の各事実
いずれも刑法235条
第3の事実
刑法181条,177条前段
第4の事実
刑法177条前段
第5の事実
刑法199条
第6の事実
刑法190条
刑種の選択 第1の罪につき懲役刑
第3の罪につき有期懲役刑
第5の罪につき無期懲役刑
累犯加重 判示第1ないし第4及び第6の各罪の刑につき,刑法56条1項,57条(判示第3及び第4の罪の刑については同法14条の
制限内)
併合罪加重 刑法45条前段,46条2項本文
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 本件は,被告人が,前妻を扇風機で殴打して傷害を負わせた事案(第1事実),2度にわたって木製置物合計4個を窃取した窃盗の各事案(第2各事実),実の娘を強姦してその際傷害を負わせた強姦致傷の事案(第3事実),近隣に住む女性を強姦した
後,殺害し,その死体を自己所有の自動車の中に隠匿放置した,強姦殺人死体遺棄の事案(第4,第5及び第6の事実)である。
2 傷害の事案について
被告人は,前妻が仕事を辞めたり,友達と酒を飲んで仕事を休んだりし,そのたびに被告人のところにお金を借りにきたり食料をもらったりしているのに,被告人の注意に対し口答えをしたなどとして,前妻に対し扇風機でその顔面を殴打するという強度の暴行を加え,全治8週間を要する左眼窩底吹き抜け骨折の傷害を負わせている。仮に前妻に被告人が供述するような事情があったにせよ,被告人が前妻に対してこのような強度の暴力を加えることが許されるはずもなく,本件の犯行動機は,短絡的で酌量の余地はないし,人体の枢要部である顔面に扇風機で暴行を加えたその態様は危険であり,傷害の結果も重大であることに加え,被告人が日常的に前妻に対し暴行を加え,本件傷害もその一環としての犯行と窺われることをも併せ考慮すると,本件犯行は悪質といえる。
3 窃盗の事案について
被告人は,生活費を得るためなどの目的で,日常的に窃盗を繰り返していたことが認められ,本件各窃盗もその一環としての犯行であることから,本件各窃盗の犯情も悪質である。
4 強姦致傷の事案について
被告人は,自己の性欲を充たすために本件強姦致傷の犯行に及んだものであるが,自己の性欲を満足させるためには13歳の実の娘を姦淫しても意に介しないというその犯行動機は,極めて身勝手かつ反規範的であって酌量の余地は全くない。被告人は,日常的に実の娘や前妻などの家族に暴力をふるったり,実の娘を姦淫することを繰り返しており,家族全員が被告人の暴力を恐れ,実の娘が家族の誰にも助けを求めることができない絶望的な状況に追い込まれている中で,本件においても,用事を手伝わせるという名目で同女を連れ出し,自己の車両内という密室で,同女が13歳の女児であり被告人に比して体格,体力等において劣るにもかかわらず,同女が抵抗すると何度も殴りつけるなど強度の暴力を加えて,強いて姦淫したものであり,本件の態様は,実の父親である被告人が,実の娘に対し,日常的に強姦を繰り返す一環として,強度の暴力を用いて姦淫したという極めて陰湿かつ卑劣で危険なものであって悪質である。その結果,被害者は,強姦による身体的苦痛やその際の暴力による全治1週間の左頬部打撲傷という肉体的被害を負ったばかりか,実の父親に強姦されるという精神的衝撃を受けたのであって,被害者が13歳という人格形成において重要な思春期にあることをも併せ考慮すると,将来にわたり,その成長に悪影響を及ぼすことも懸念される。関係証拠によれば,被害者は,髪をかきむしったり,何かに怯えて一人でいるのが怖いといった症状や,自分が日々経験している苦しい出来事を深刻に受けとめないよう自分自身でコントロールする虐待児特有の精神症状も見受けられる。以上によれば,本件強姦致傷の結果は重大である。それにも関わらず,被告人は,被害者に対し,謝罪の言葉を述べるどころか,前述のとおり,被害者から性交渉等を誘ってきたなどと公判廷において虚偽の弁解を述べ,被害者に対し,更なる侮辱をし強姦の2次的被害を生じさせたといえる。
5 強姦殺人及び死体遺棄の事案について
被告人は,被害者の人格,意思を全く顧みずに,自己の性欲を満足させるために,本件強姦を敢行した上,これが発覚することを恐れて,被害者の生命の尊厳をも全く顧みることなく,さらに本件殺人及び死体遺棄を敢行したものであり,これらの犯行動機は,真に身勝手で極めて短絡的としか言いようがないものであって,そこには酌量すべき事情を何一つとして見出すことができない。
被告人は,被害者が歩いているのを見かけて劣情を催し,運転していた軽トラックを同女にぶつけて転倒させ,病院に連れて行くなどと嘘を言って同女を同車助手席に乗せて移動し,その後,降車して逃げ出した同女に対し,その髪を思い切り引っ張り,その顔面を鈍器で殴打するなどして,再び同車の助手席に乗せて移動し,資材置場において,別の自己所有車両内に連れ込み,その両手首を緊縛するなどして,2度にわたって同女を姦淫しており,本件強姦の態様は,体力等において劣る被害者に対して一方的に極めて強度の暴行を用いた卑劣で危険かつ執拗なものであって悪質である。そして被告人は,顔見知りの被害者から本件強姦の被害について訴えられることを恐れ,ストッキング様のものでその首を絞めて殺害したというのであって,本件殺人は確定的殺意に基づいた悪質な犯行である。さらに,被告人は,自らのこれらの犯行が発覚しないように,被害者の死体にシートをかけるなどして外から見えないようにして車両内に死体を隠匿し,情を知らない知人に頼んで車両を移動させており,死体遺
棄の態様も周到であって悪質である。
被害者は,被害当時33歳とまだ若く,別居している夫の元にいる幼い子供と毎月何日か会うことと,その成長を楽しみにしていたもので,その将来に夢も希望もあったのに,何ら落ち度がないにも関わらず,突然,被告人の軽トラックではねられた上,更に髪を引っ張られたり,顔面などを石などで殴られるなどの暴行を受け,その痛みと恐怖の中で2度にわたって強姦されるという屈辱を受けたばかりか,その直後に首を絞められて殺され,その死体は隠匿・放置されたのであって,被害者は,その性的自由を徹底して侵害され,極めて大きな身体的・精神的苦痛を受け,何よりも尊い生命まで奪われ,死後にまで屈辱を受けたといえ,本件強姦殺人死体遺棄の犯行の結果は,真に重大である。
なお,被告人は,公判廷において,本件犯行前から被害者と交際しており情交関係もあったところ,本件犯行時に性交しようとしたら,被害者が,結婚するとかこっちもやくざもいっぱいいるなどと言われたので,かっとして被害者を殺害した旨供述する。しかしながら,近隣住民,被告人の長男らの供述等関係証拠を精査しても,被告人と被害者との間に情交関係があったことを窺わせる事情等を一片も見いだすことはできず,加えて,被告人は上記事情を捜査段階には全く述べておらず,弁護人に対しても述べていなかったこと,その供述内容は,公判廷での被害者の両親の証言後,そこで顕出した事実が新たに加わった形で変遷していること,検察官,弁護人,裁判官のそれぞれの質問に対する被告人の答えがいずれも異なり,その供述内容自体矛盾が多いことをも併せ考えると,被告人が本件犯行前に被害者と交際していたとの被告人の供述はその自己弁護のために創作した虚偽の供述であると認められ到底信用できない。
また,被告人は,これまで遺族に対し慰謝の措置を一切取っていないばかりか,上記のように,公判廷において,被害者を侮辱するかのような虚偽の弁解に終始しているのであって,遺族が,被告人に対し,極めて厳しい処罰感情を抱いているのも首肯できるところである。
6 以上のとおりの本件各犯行の動機,態様,結果等に加え,被告人は,強姦等同種前科3犯を含む実刑前科10犯を有しているのに,前刑の終了から約3年を経ずして前妻に対する傷害や本件各窃盗を敢行し,その後,1年も経たない期間内に,本件の実の娘に対する強姦致傷及び近隣に住む女性に対する強姦殺人等を連続して敢行したというのであって,被告人が,これまでに何度も矯正の機会を与えられながら,本件のような,極めて悪質な態様の強姦致傷,強姦殺人等を行い,しかもその犯罪傾向を深化させていること,直近前科の強姦致傷の事案は,被告人が運転する車を通行中の女性に対し2度にわたって衝突させた後,逃げようとする同女を姦淫したというものであって,本件強姦との手口の類似性が認められることを併せ考えると,被告人の刑事責任は極めて重いといわざるを得ない。
7 したがって,被告人が,本件各犯行の事実関係について概ね認め,一応反省の弁を述べていること,傷害事実において,犯行後すぐに被害者である前妻を病院に連れて行ったこと,窃盗の被害品は被害者のもとに返還されていること,被告人の生育歴・家庭環境等に不遇な面があったことが窺われることなど被告人のために酌むべき諸事情を十分に考慮しても,被告人に対しては,主文のとおり,無期懲役刑をもって臨むのが相当である。
(求刑 無期懲役)
(公判出席 検察官河原誉子 国選弁護人松岡登)
平成15年3月27日
前橋地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 長谷川憲一
裁判官 吉井隆平
裁判官 丹下将克

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