判例検索β > 平成12年(行ツ)第250号
児童扶養手当受給資格喪失処分取消請求事件
事件番号平成12(行ツ)250
事件名児童扶養手当受給資格喪失処分取消請求事件
裁判年月日平成14年2月22日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁集民 第205号505頁
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成10(行コ)49
原審裁判年月日平成12年5月16日
判示事項児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号の「(父から認知された児童を除く。)」とする部分の法適合性
裁判要旨児童扶養手当法4条1項5号の委任に基づき児童扶養手当の支給対象児童を定める児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号のうち,「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童」から「父から認知された児童」を除外している括弧書部分は,同法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効である。
参照法条児童扶養手当法4条1項,児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号
裁判日:西暦2002-02-22
情報公開日2017-10-18 06:39:36
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主 文
原判決を破棄する
被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人三重利典,同久米弘子,同村松いづみ,同吉田眞佐子,同小山千蔭の上告受理申立て理由について
1 児童扶養手当法(以下法という。)4条1項1号ないし4号は,児童扶養手当の支給対象となる児童として,父母が婚姻を解消した児童,父が死亡した児童,父が政令で定める程度の障害の状態にある児童及び父の生死が明らかでない児童を規定し,同項5号はその他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるものを規定している(ここに規定する場合を含め,法にいう婚姻には,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含むものとされている(法3条3項)。以下,本判決においても同じ。)。児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの。以下施行令という。)1条の2第3号は,法4条1項5号に規定する政令で定める児童の一つとして,

母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童(父から認知された児童を除く。)

を規定している。 2 原審の適法に確定したところによれば,上告人は,婚姻によらないで子を懐胎,出産して,これを監護しており,被上告人から,施行令1条の2第3号に該当する児童を監護する母として,平成3年2月分から児童扶養手当の支給を受けていたが,同6年1月26日,子がその父から認知されたため,児童扶養手当の受給資格が消滅したとして,被上告人から同7年4月5日付けで児童扶養手当受給資格喪失処分(以下本件処分という。)を受けたというのである。 本件は,上告人が,施行令1条の2第3号において

(父から認知された児童を除く。)

との括弧書(以下本件括弧書という。)を設けたことは違憲,違法であるとして,本件処分の取消しを求めている事案である。
3 上記事実関係の下で,原審は,概要,(1) 母が婚姻によらずに懐胎,出産した児童(以下婚姻外懐胎児童という。)は,認知によって法律上の父がいない状態から脱却し,父に扶養請求をすることができるようになり,生活環境の好転があったと評価することができるから,本件括弧書を設けて認知の有無によって支給対象児童を区別することが,憲法14条に違反しているとか,法の委任の範囲内で政令を制定する内閣の裁量の逸脱,濫用に当たるとすることはできない,(2) 本件括弧書は,市民的及び政治的権利に関する国際規約,児童の権利に関する条約並びに女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に違反するものではない,(3) 本件括弧書が認知請求権を侵害するものとはいえないと判断して,上告人の請求を認容した第1審判決を取り消して,上告人の請求を棄却した。 4 しかしながら,本件括弧書を設けたことが法の委任の範囲内にあるものとした原審の上記判断は,是認することができない。その理由は次のとおりである。 法4条1項5号による委任の範囲については,その文言はもとより,法の趣旨及び目的,同項が支給対象児童として一定の類型の児童を掲げた趣旨並びにそれら児童との均衡等をも考慮して解釈すべきところ,法4条1項各号は,類型的にみて世帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待することができないと考えられる児童,すなわち,児童の母と婚姻関係にあるような父が存在しない状態,あるいは児童の扶養の観点からこれと同視することができる状態にある児童を支給対象児童として定めているものと解される。
婚姻外懐胎児童は,世帯の生計維持者としての父がいない児童であって,父による現実の扶養を期待することができない類型の児童に当たり,施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において婚姻外懐胎児童を法4条1項1号ないし4号に準ずる児童として取り上げていることは,法の委任の趣旨に合致するところである。一方で,施行令1条の2第3号は,本件括弧書を設けて,父から認知された婚姻外懐胎児童を支給対象児童から除外することとしている。確かに,認知によって婚姻外懐胎児童は法律上の父が存在する状態になるのであるが,法4条1項1号ないし4号が法律上の父の存否のみによって支給対象児童の類型化をする趣旨でないことは明らかであるし,認知により,当然に母との婚姻関係が形成されるなどして,世帯の生計維持者としての父が存在する状態になるわけでもない。また,父から認知されれば,通常,父による現実の扶養を期待することができるともいえない。したがって,婚姻外懐胎児童が認知により法律上の父がいる状態になったとしても,類型的にみて,法4条1項1号ないし4号に準ずる状態が続いていることを否定することはできないというべきである。そうすると,施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において,法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある婚姻外懐胎児童を支給対象児童としながら,本件括弧書により,父から認知された婚姻外懐胎児童を除外することは,法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。 5 以上のとおりであるから,【要旨】父から認知された婚姻外懐胎児童を児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外した本件括弧書は,法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として,無効と解すべきものである。そうすると,その余の点についての検討を経るまでもなく,本件括弧書を根拠としてされた本件処分は違法といわざるを得ず,原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。したがって,上告理由について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そして,前記説示によれば,上告人の請求を認容した第1審判決は,是認することができるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫)
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