判例検索β > 平成13特年(わ)第3187号
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、わいせつ図画販売、名誉毀損被告事件
事件番号平成13特(わ)3187
事件名児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,名誉毀損被告事件
裁判年月日平成14年3月14日
裁判所名・部東京地方裁判所
裁判日:西暦2002-03-14
情報公開日2017-10-13 01:47:55
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平成14年3月14日宣告
平成13年特(わ)第3187号,同第3644号,同年刑(わ)第3947号判決
被告人に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,名誉毀損被告事件について,当裁判所は,検察官辻好隆,弁護人竹内文吉,同宮﨑良昭各出席の上審理し,次のとおり判決する。主文
被告人を懲役2年に処する
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 Aと共謀の上,平成12年1月下旬ころ,Bに対し,茨城県牛久市・・同人あてに郵送により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープa等6巻を代金合計2万6000円で販売し(平成13年7月24日付け起訴状公訴事実第1の1関係),
第2 上記Aと共謀の上,平成12年1月下旬ころ,Cに対し,岡山市・・同人あてに郵送により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープb等7巻を代金合計3万1000円で販売し(平成13年7月24日付け起訴状公訴事実第1の2関係),
第3 上記Aと共謀の上,平成12年2月24日ころ,Dに対し,兵庫県宝塚市・・同人あてに宅配便により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープc等4巻を代金合計2万1000円で販売し(平成13年8月27日付け追起訴状公訴事実第1関係),
第4 上記Aと共謀の上,平成12年3月1日ころ,Eに対し,静岡県田方郡・・同人あてに郵送又は宅配便により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープb等5巻を代金合計2万6000円で販売し(平成13年8月27日付け追起訴状公訴事実第2関係),
第5 上記Aと共謀の上,平成12年4月中旬ころ,Fに対し,東京都武蔵野市・・同人あてに郵送により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープd等6巻を代金合計2万1000円で販売し(平成13年7月24日付け起訴状公訴事実第1の3関係),
第6 上記Aと共謀の上,平成12年4月16日ころ,Gに対し,千葉県八千代市・・同人あてに郵送により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープb等2巻を代金合計1万1000円で販売し(平成13年8月27日付け追起訴状公訴事実第3関係),
第7 上記Aと共謀の上,平成12年6月8日ころ,上記Fに対し,上記同人あてに郵送により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープe1巻及び男女の性交性戯場面等を露骨に撮影録画したわいせつ図画であるビデオカセットテープf等11巻を代金合計2万1000円で販売し(平成13年7月24日付け起訴状公訴事実第1の4関係),
第8 上記Aと共謀の上,平成12年8月10日ころ,Hに対し,鳥取県倉吉市・・同人あてに郵送又は宅配便により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識
することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープb等2巻を代金合計1万1000円で販売し(平成13年8月27日付け追起訴状公訴事実第4関係),
第9 東京都豊島区所在の有限会社甲の実質経営者で,同社が発行するビデオカセットテープgの編集兼発行責任者であったところ,同社従業員I及び同Jと共謀の上,露天風呂で入浴中に盗撮されたK子(昭和48年5月生),L子(昭和48年4月生)及びM子(昭和48年8月生)の裸体の映像を用いて編集したビデオカセットテープg-3約3160巻を,平成12年8月25日ころから平成13年4月24日ころまでの間,東京都新宿区所在の乙書店等全国の多数の書店,ビデオ販売店等の店頭に陳列させて不特定かつ多数が閲覧できる状態に置き,もって公然と事実を摘示して上記K子ら3名の名誉を毀損し(平成13年12月11日付け追起訴状公訴事実関係),
第10 上記Aと共謀の上,平成12年9月上旬ころ,Nに対し,東京都青梅市・・同人あてに宅配便により送りつける方法で,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,わいせつ図画であるビデオカセットテープb1巻を代金6000円で販売した(平成13年7月24日付け起訴状公訴事実第1の5関係)。
(証拠の標目)

(法令の適用)

名誉毀損罪の成立に関する補足説明)
判示第9の事実について,被告人に名誉毀損罪(前記I及びJとの共謀によるもの)の成立を認めた理由に関し,補足して説明する。
判示第9のビデオカセットテープg-3(以下本件ビデオテープともいう。)は,被告人らが専ら見る者の性的関心にこたえることを意図して,入浴中の女性の裸体の映像を集め,販売目的で編集したビデオテープであるところ,被告人らは,前記K子,L子及びM子の入浴中の裸体を本件ビデオテープ中に収録して編集した上,アダルトビデオを扱う多数の書店やビデオ販売店等にこれを陳列させ,現に不特定多数の者が閲覧できる状態に置いたものである。なお,本件ビデオテープに収録されているK子ら3名の映像には,その顔面等も明瞭に写されており,そこに写されているのが同女らであることをその映像自体から明瞭に識別できることも明らかである。
名誉毀損罪の成立要件である事実の摘示についてみると,被告人らは,上記のような内容の本件ビデオテープに上記K子ら3名の全裸の姿態が録画されているという事実を摘示したものということができる。そして,本件ビデオテープのようないわば性的関心に向けられた商品に女性の全裸の姿態が録画された場合,撮影された女性がだれかが分かれば,その女性が周囲の人たちから好奇の目で見られたり,場合によっては嫌悪感を抱かれるなど,その女性について種々否定的な評価を生ずるおそれがあることは否定し難い。殊に,本件では,K子らは,実際には,入浴中にその裸体を盗撮され,自分たちの知らない間にその映像を本件ビデオテープに録画されるに至ったのであるが,本件ビデオテープは,それ自体鮮明な画像に仕上がっているなど,そ
の映像自体を見ても,実際に盗撮の方法で撮影されたものか,一見しただけでは明らかではなく,事情を知らない者が見れば,撮影されている女性が,不特定多数の者に販売されるビデオテープに録画されることを承知の上,自ら進んで裸体をさらしているのではないかという印象を与えかねないものになっている(ちなみに,被告人自身の供述を始めとする関係証拠によると,盗撮ビデオとされるものの中にも,実際にはいわゆるやらせによるものがあり,ビデオの映像を見ただけではその識別が困難であることが多いなどの事情もうかがうことができる。)。このような場合,上記のおそれにはとりわけ軽視し難いものがあるといわなければならない。そうすると,本件で被告人らが摘示した上記の事実は,まさにK子ら3名の名誉を害するに足りる事
実に当たるということができる。
そして,被告人らの上記行為が名誉毀損罪のその他の成立要件を満たすこともまた明らかであるから,結局,本件について名誉毀損罪が成立することを肯定することができる。

(量刑の理由)
本件は,前記のとおり,被告人が,いずれも他の共犯者らと共謀の上,児童ポルノ,わいせつ図画であるビデオテープを9回にわたって販売し(判示第1から第8まで及び第10),また,女性らの全裸の姿態を録画したビデオテープを全国のビデオ販売店等で陳列させてその女性らの名誉を毀損した(判示第9)という事案である。
児童ポルノ,わいせつ図画販売の各犯行についてみると,被告人らは,利欲目的で,女子児童の排せつの状況などを盗撮したとされるビデオテープの販売を相当期間にわたって営業的に継続し,本件各犯行はその一環として繰り返されたことが明らかである。被告人らが取り扱ったビデオテープは,前記のような内容のもので,排せつ中の女子児童の陰部の露骨な映像なども含まれていて,反社会性が高度である。被告人がこのようないわゆる裏ビデオを取り扱うようになったのは,共犯者のAにすすめられたことが契機となったようにはうかがえるが,被告人は,Aの提案に賛同して,自己の会社で保管していたビデオテープを提供したり,相当額を出資したりするなど,自らも積極的に関与し,この種の裏ビデオの販売により現に相当の利益を取得したな
どの事情も優に認めることができる。
次に,名誉毀損の犯行は,被告人らが,共謀の上,被害者らの裸体の映像を盗撮したビデオテープを買い取って編集し,こうして作成したビデオテープを大量に全国に販売するという方法で敢行したものであって,態様が大規模で,組織的である。被告人らは,利欲目的で,前記甲の営業としてこの種行為を継続的に反復し,本件はその一環であるという事情も十分認めることができる。入浴中に自己の裸体を盗撮されて,前記のような態様でその映像が全国の不特定,多数の者にさらされることになった被害者らが被った精神的衝撃には大きなものがあり,被害者らの被告人らに対する処罰感情には現在もなお厳しいもののあることがうかがえる。被告人らは,平成13年4月24日ころに至り,本件ビデオテープの回収を図ったが,相当数のビデオテープ
が回収されずに終わっているのであって,この点でも被害は回復されていない。なお,本件は,上記のとおり,甲の営業として行われたものであるが,被告人は,同会社の実質的な経営者であって,共犯者であるI,Jと比較しても,主導的な役割を果たしたことが明らかである。
以上に照らすと,本件各犯行の犯情はいずれも悪質で,被告人の刑責は到底軽視できないというほかはない。
しかし,他方,被告人には前科がないこと,反省の意を表し,今後はビデオテープの販売等とは関係のない仕事をしていきたいと述べていること,名誉毀損の被害者3名と示談等の措置は講じられていないが,被告人は,被害者らに対して慰謝料を支払うとともに,しょく罪寄附をするなどもしていることや,被告人の家庭事情等,被告人のため考慮すべき事情のあることも認められる。
そこで,以上の諸事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑を量定した上,その執行を猶予するのが相当であると判断した。
平成14年3月14日
東京地方裁判所刑事第11部
裁判官 木 口 信 之

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