判例検索β > 昭和38年(オ)第831号
損害賠償請求
事件番号昭和38(オ)831
事件名損害賠償請求
裁判年月日昭和41年4月14日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第20巻4号584頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号昭和36(ネ)2070
原審裁判年月日昭和38年5月16日
判示事項一 会社更生法第一五二条第一項にいう「執行力ある債務名義」の意義
二 更生担保権者表に無効な記載がある場合における訂正方法
裁判要旨一 会社更生法第一五二条第一項にいう「執行力ある債務名義」とは、執行力ある正本と同一の効力をもち、直ちに執行をなしうるものであることを要し、執行文を要するものはすでに執行文を受けているものであることを要する。
二 更生担保権者表の記載は、更生決定によるときを除き、訴をもつて当該記載事項の無効を主張し、確定判決を得た後でなければ、訂正することができない。
参照法条会社更生法152条,会社更生法145条,会社更生法144条
裁判日:西暦1966-04-14
情報公開日2017-10-18 07:18:11
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主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人天野亮一の上告理由について。
第一審判決を引用する原判決の確定するところによれば、昭和二八年一月三一日の更生債権・更生担保権の届出期日に上告人からその主張の各更生担保権の届出がなされたが、右届出に際しては公正証書謄本の添付がなされていたのみで、右更生担保権の被担保債権が有名義債権(執行力ある債務名義又は終局判決のある債権)である旨の届出記載はなく、右公正証書謄本に執行文の付記もなされていなかつたところ、管財人Dが同年二月一八日の更生債権・更生担保権の調査期日において右届出にかかる更生担保権の被担保債権に対し異議を述べたが、上告人において会社更生法一四七条による更生担保権確定の訴を提起しなかつたので、更生裁判所は、上告人の前記届出は有名義債権を被担保債権とする更生担保権の届出ではなく同法による更生担保権確定の手続もなされていないと判断し、原判示の更生担保権者表の確定額欄にいずれも0と記載したというのであり、その後右表の確定額欄の記載が訂正されて上告人の届出額のとおり四百二十五万円、百三十六万八千五百円、五十七万八千円とそれぞれ記入訂正されたが、右訂正は前記更生担保権者表の確定額欄0の記載に明白な誤謬が存するとして民訴法一九四条に基づきなされたものではなく、また右記載が無効であるとしてその旨の確定判決を得たうえこれに基づいて訂正されたものでもなく、同三〇年一二月二三日以降にいたり原判示の経緯によりなされたというのである。
ところで、更生債権・同担保権の届出に際し、更生債権又は更生担保権の被担保債権について、執行力ある債務名義又は終局判決の存否を明らかにしなければならない旨の明文の規定が存しないことは所論のとおりであるけれども、会社更生法一三五条、一四四条、一五〇条等が更生債権・更生担保権の確定手続の対象を更生債権者表・更生担保権者表に記載された事項に限定しており、同法一四七条、一五二条が執行力ある債務名義又は終局判決のある債権(更生担保権についてはかかる有名義債権を被担保債権とするもの)と然らざる債権とによつて更生債権・更生担保権の調査期日における異議の結果必要とされる更生債権・更生担保権確定のための手続に本質的な差異を規定していること等を考慮して考察すれば、有名義債権又はこれを被担保債権とする更生担保権として同法一五二条の適用をうけるためには、権利者は、その届出に際しその旨を明記しその証拠資料を提出するか、遅くとも更生債権・更生担保権の調査期日までにこれを追完すべきであつて、これを怠り更生債権者表・更生担保権者表にその旨記載されなかつた場合には、有名義債権又はこれを被担保債権とする更生担保権の届出としての取扱をうけることができず、異議を排除して更生債権・更生担保権の確定をはかるためには、債権者から同法一四七条による更生債権・更生担保権確定の訴を提起するを要すると解するのが相当である。そして、同法一五二条にいう執行力ある債務名義とは、執行力ある正本と同一の効力をもち直ちに執行をなしうるものであることを要し、執行文を要するものは既に執行文を受けているものであることを要すると解すべきところ、本件においては、更生担保権に公正証書謄本の添付がなされていたのみで、右公正証書謄本に執行文の付記もなされていなかつたことは、原審の認定するところである。したがつて、原審が、前記認定の事実に基づき、更生裁判所がその形式内容からみて有名義債権を被担保債権とする更生担保権の届出とみることはできないとし、右債権額を0と確定して前記更生担保権者表の債権確定額欄に0と記載したのは、なんら違法でないと判断したのは正当である。
もつとも、原審の確定するところによれば、右記載はその後前記のように上告人主張の届出額のとおり訂正記入されたというのであるが、更生担保権者表になされた前記0なる記載は確定判決と同一の効力を有し、右記載を訂正するためには、右記載に明白な誤謬が存する場合においては会社更生法八条により民訴法一九四条を準用して更正決定を得、これに基づいて訂正を加えるべく、また、前記更生担保権者表に無効な記載事項が存する場合においては(右記載は会社更生法一四五条の文言に拘らず確認的意味を有するにすぎないのであるから)、右無効を訴をもつて主張しその旨の確定判決を得た後これに基づいて訂正を加えることが許されると解するのが相当であるところ、前記訂正が右の手続により適法になされたことについては上告人から主張がなされていないだけでなく、原審の確定した本件における事実関係のもとにおいては、前記0なる記載に明白な誤謬の存しないことは明らかであつて、前記訂正が訴の提起に基づき確定判決を得てこれに基づきなされたものでないことも明らかであるから、原判示の経緯でなされた更生担保債権者表の前記訂正は効力を生じないと解するのが相当であり、右と同趣旨の見解のもとに上告人に本件更生担保権者としての資格がないとした原審の判断は正当である。所論の実質は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難し、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用できない。 なお、上告人主張の本件更生担保権が前記理由により確定したことを認めえない本件においては、論旨第一点指摘の事由が存するとしても、上告人が本件更生担保権者としての資格を有しない筋合にあることは明らかであるから、論旨第一点は採用のかぎりではない。また、論旨第二点末尾の訴外小名木からの譲受債権に関する原審の認定判断は正当であり、この点に関する所論も、原判決を正解せず独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 松 田 二 郎 裁判官 岩 田 誠
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