判例検索β > 昭和27年(オ)第909号
土地占有引渡並びに借地権譲渡手続請求
事件番号昭和27(オ)909
事件名土地占有引渡並びに借地権譲渡手続請求
裁判年月日昭和29年7月16日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第8巻7号1359頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審裁判年月日昭和27年9月3日
判示事項一 未成年の養子のため民法応急措置法施行前に開始した後見は同法施行当時右未成年者に実父母ある場合同法の施行により終了するか
二 未成年者の実父母が法定代理人親権者として未成年者のため共同してなした法律行為取消の意思表示は実父母が親権者でなかつた場合後見人たる実父が法定代理人としてなした意思表示と認め得るか
裁判要旨一 未成年者たる養子のため、民法応急措置法施行前に開始した後見は、戸主たる地位に基く後見人ある場合を除き、同法施行当時右未成年者に実父母がある場合においても、同法の施行により終了しない。
二 未成年者の実父母が法定代理人親権者として未成年者のため共同してなした法律行為取消の意思表示は、実父母が親権者でなかつた場合において、後見人たる実父が未成年者の法定代理人としてなした意思表示と認めることを妨げない。
参照法条日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律3条,日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律6条,民法120条
裁判日:西暦1954-07-16
情報公開日2017-10-18 09:26:50
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主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
原判決の確定した事実によれば、被上告人B1(旧姓B2)B1は昭和九年三月三〇日生れの未成年者で、同二〇年一月三一日亡Dの養子となり、養父Dが同年一二月三〇日死亡したので被上告人のために、後見が開始し、翌二一年三月五日被上告人の実父Eが親族会の選任によつて後見人となつたが翌二二年五月三日施行された日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律(以下民法応措法という)によつて右後見は終了し、実父E、実母Fが親権者となつた。然るに新民法八一八条二項で養子は養親の親権にのみ服することが規定され、養親の死亡により実父母が親権を行う旨の規定がないので結局被上告人の実父母が行つていた前記親権は新民法の施行により、昭和二三年一月一日以降消滅し、被上告人のために新に後見が開始するに至り、次で同二七年六月六日実父Eが後見人に選任され、一方被上告人B1は同二七年七月一六日附許可の裁判により養父亡Dとの養子縁組が離縁となり、同月二三日実父Eの戸籍に復帰した結果G姓となり、実父E、実母Fが親権者として被上告人の法定代理人となるに至つたのである。そうして、これよりさき被上告人の実父E実母Fは、被上告人の親権者である法定代理人として昭和二四年五月一〇日上告人に対し、原判示のごとき事由により本件借地権譲渡契約を取消す旨の意思表示をしたというのである。
しかして、原判決は、前段掲記の経緯からも明らかであるように右取消の意思表示のなされた当時においては、既に新民法の施行により被上告人のために後見が開始しており被上告人の実父E、実母Fは被上告人の親権者ではなかつたのであるから、右取消の意思表示は、被上告人の無権代理人によつて為されたものであるとの前提の下に、後になされた追認により、右取消が効力を生ずるに至つた旨の判断を示したのである。
よつて、先ず、右被上告人の実父E、実母Fが被上告人の親権者たる法定代理人としてした前記借地権譲渡契約取消の意思表示が、果して原判決のいうごとく、無権代理人によつて、なされたものであるかどうかについて判断する。 昭和二二年五月三日民法応措法が、施行せられた当時、被上告人は亡Dの養子であつて、養親の死亡により、後見が開始し被上告人の実父Eがその後見人(親族会の選定に因る)として就職していたことは、原判決の確定するところである。原判決は前述のごとく、かかる場合、民法応措法の施行により右後見は終了して、実父母が親権者となる旨判示するのであるが、同法はその第三条において戸主家族その他家に関する規定はこれを適用しないと規定し第六条において親権は父母が共同してこれを行うと規定しているけれども、後見に関する規定を以て家に関する規定と解すべきでなく(戸主が戸主として後見人たる場合は、戸主に関する規定が家に関する規定である結果として、当該戸主が後見人たる地位を失うことは勿論であるけれども)又第六条からしても養親死亡の場合に、当然実父母が親権者となるものとは解することはできないし、その他同法には右の場合に後見の終了を来たすと解すべき根拠となる法規は存在しないのであるから、同法施行の結果被上告人のための後見は終了し同人の後見人たるEが、その後見人たる地位を失うものとした原判決の判断はあやまりである。このことは新民法附則一九条が旧法九〇四条の規定によつて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のたあ、当然にはその地位を失うことはないと規定していることから推しても是認せられるところである。蓋し民法応措法において、これと結論を異にすべき特段の規定のないことは前述のとおりであり同法が、これらの点に関し新民法と別異の理念に基くものと解すべき何等の根拠もないからである。しかして、その後新民法が施行せられたのであるけれども、これがためにEが後見人たる地位を失うものでないことは前記のごとく新民法附則一九条の明定するところである。
とすれば、昭和二四年五月一〇日本件借地権譲渡契約取消の意思表示のなされた当時Eは被上告人の後見人たる地位にあつたものであつて、右取消の意思表示は、被上告人の後見人たるEが、被上告人の法定代理人としてその正当な権限に基いてなされたものといわなければならない(右取消の意思表示が被上告人の父たる親権者として、かつ、母たるFと共同に親権を行使するものとして為されたという事実は何ら右判断の支障となるものではない。けだし、Eの意思表示がその法定代理権に基くものとしてなされていることはいずれにしてもかわるところがないからである)されば、右取消の意思表示は、その後における原判示のごとき追認を待つまでもなく当初より有効なのであつて、追認によつて有効となつた旨判示した原判決はあやまりではあるけれども、これを有効とした点においては結局において正当なものといわなければならない。
上告代理人の上告理由は、いずれも右取消の意思表示は、無権代理人によつてなされた意思表示であることを前提とするものであつてその前提のあやまりであることは、既に前述するとおりである以上右各論旨の内容について判断するまでもなく、これを採るを得ないことは明らかである。
よつて本件上告は理由のないものとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従つて、全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 霜 山 精 一 裁判官 栗 山 茂 裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 藤 田 八 郎 裁判官 谷 村 唯 一 郎
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