判例検索β > 昭和23年(つ)第2号
正式裁判請求権回復の請求並に正式裁判の申立棄却決定に対する抗告棄却の決定に対する再抗告
事件番号昭和23(つ)2
事件名正式裁判請求権回復の請求並に正式裁判の申立棄却決定に対する抗告棄却の決定に対する再抗告
裁判年月日昭和23年7月29日
法廷名最高裁判所大法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集 第2巻9号1115頁
原審裁判所名奈良地方裁判所
原審裁判年月日昭和23年1月28日
判示事項一 略式命令の請求の合憲法
二 いわゆる待命付略式命令の請求の合憲法
三 謄本の交付による略式命令の送達の合憲法
裁判要旨一 略式命令の請求は憲法に違反するものではない。
二 検察官によるいわゆる待命付略式命令の請求は憲法に違反しない。
三 略式命令の送達方法として、裁判所において、裁判所書記が略式命令の謄本を直接被告人に交付することは、憲法に違反しない。
参照法条刑訴法523條1項,刑訴法523條4項,憲法32條,憲法37条2項,憲法82条2項,憲法37条1項
裁判日:西暦1948-07-29
情報公開日2017-10-17 15:16:30
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主 文
本件抗告を棄却する
理 由
憲法は、何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われないこと、すべて刑事事件においては被告人は公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有すること並びに裁判の対審及び判決は公開法廷で行はれることを規定している。されば、被告人は公開した公判廷で正常の公判手続によつて裁判される権利を憲法上保障されていることは言うまでもない。従つて、かゝる公判手続による裁判を阻止して被告人から右のような憲法上の保障を奪う手続乃至規定があるとすれば、それは、すべて憲法に違反するものとして無効であると云はなければならぬ。略式命令による処罰が憲法に違反するかしないかは議論の存する問題である。しかしながら、略式命令の請求は、区裁判所(簡易裁判所)の管轄に属する事件について公判前略式命令をもつて罰金又は科料を科することを裁判所に求める公訴の提起に附帯する請求である。かかる請求があつた場合において裁判所がその事件につき略式命令をなすことを得ず又はこれをなすことを相当でないと思料するときは通常の規定に従い審判すべきものであり、その然らざるときに限り公判を開くことなく略式命令をなしその裁判書の謄本を送達するのであつて、裁判所書記が本人に謄本を交付したときはその送達のあつたものと看做されるものである。そして、被告人が略式命令を受けたときは謄本の送達があつた日から七日内に正式裁判の請求をして通常の規定に従い審判を求めることができ、この場合においては裁判所は略式命令に拘束されるものではなく、又正式裁判の請求により判決をしたときは略式命令はその効力を失うものである。それ故、略式命令手続は罰金又は科料のごとき財産刑に限りこれを科する公判前の簡易訴訟手続であつて、生命又は自由に対する刑罰を科する場合の手続ではない。そして、通常の手続における罰金以下の刑に該る事件については被告人は特に裁判所の出頭命令がない限り自ら公判に出頭することを要するものではないから、右のごとぎ財産刑を科する公判前の手続についても被告人をして公判に出頭する労力、費用を省き且つ世間に対する被告人のおもわくをも考慮して特別手続を定めても通常の公判手続に比し訴訟法上必ずしも被告人の利益を害する不当のものと云うことはできない。しかのみならず略式命令の請求は前述のごとく裁判所を拘束するものではなく、又その命令は被告人の迅速な公開裁判を求める権利を何等阻止するものでもないから毫も憲法に違反するものではない。たゞ略式命令に対して正式裁判を請求するかしないかは、被告人の自由な意思決定によらなげればならないのであるから、それを阻止するような手続乃至規定を設けることは憲法に違反するものであること前述したとおりである。本件において抗告人は検察官によるいはゆる待命付略式命令の請求及び裁判所書記による謄本の交付が憲法に違反することを主張している。記録を調べて見ると、本件略式命令請求の書面に待命と記入されていることは明らかであるが、それが何を意味するかは記録上明確ではない。その意味するところが抗告人所論のような経路をたどつた略式命令の請求であるとすれば、勾留された被告人の釈放手続に穏当を欠く取扱があることを免れないが、これがために検察官からの本件略式命令の請求が憲法に違反するものと云うことはできない。又、裁判所書記による略式命令の謄本の交付が所論のような状況の下にされたとしても、書類の送達はその占有を移す事実行為にすぎず、被告人はその謄本を直接受領したことを寸毫も争はないからその受領の日から七日の期間内に自由意思によつて正式裁判を請求するかしないかを決定する余裕があるのである。それ故、前記謄本の交付による略式命令の送達は憲法に違反するところはない。されば、抗告人の本件抗告はその理由がないので主文のとおり決定する。
この決定は裁判官全員の一致した意見である。
昭和二十三年七月二十九日 最高裁判所大法廷 裁判長裁判官 塚 崎 直 義
裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 井 上 登
裁判官 栗 山 茂
裁判官 真 野 毅
裁判官 島 保
裁判官 齋 藤 悠 輔
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 岩 松 三 郎
裁判官 河 村 又 介 裁判官小谷勝重は差支のため署名捺印することが出来ない。
裁判長裁判官 塚 崎 直 義
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