判例検索β > 昭和22年(れ)第92号
強盗、窃盗、住居侵入
事件番号昭和22(れ)92
事件名強盗、窃盗、住居侵入
裁判年月日昭和22年12月4日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集 第1巻号48頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審裁判年月日昭和22年6月27日
判示事項一 連續犯の判示方法
二 犯罪の日時と證據
三 強盜罪の認定における採証方法
裁判要旨一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することは要しない。數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示するの外、その連續した行爲の始期終期回數等を明かにし、且つ財産上の犯罪で、被害者又は贓額に異同があるときは、被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員數を掲げ贓額の合算額を表示する等、これによつてその行爲の内容が同一罪質を有する複數のものたることを知り得べき程度に具體的なるを以て足る。
二 犯罪の日時は、犯罪の構成要件ではないから、逐一證據をあげてこれを認めた理由を説示する必要はなく、ただ犯行を具體的事實としてその同一性を認め得られる程度に判示すればよい。偶々、犯罪の日時に關する證據の説示中に瑕疵があつても、上告の理由とすることはできない。
三 強盜罪において、被告人が公判廷でなした一定の日時、場所において物件を強取した旨の供述とその日時、場所における強取被害物件の品目数量を明らかにした被害顛末書とを以て、被告人が当該被害物件を強取したことを認定しても、採証の方法を誤つたものとはいえない。
参照法条刑法55條,刑訴法336条,刑訴法360條2項
裁判日:西暦1947-12-04
情報公開日2017-10-17 15:17:59
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主 文
本件上告を棄却する
理 由
弁護人青山新太郎上告趣意第一点は原判決ハ採証ヲ誤リ且判決ニ理由ヲ附セズ又ハ理由不備ノ違法アルモノトス、即チ原判決ノ採証及理由ニ於テ被告ノ原審ニ於ケル供述即チ自白ヲ第一ノ証拠トス然レ共被告ハ昭和二十一年十二月二十七日ヨリ昭和二十二年六月二十七日原判決ニ至ル迄満六ケ月ノ長期ニ亘リ勾留セラレ心身共ニ衰弱シ居リ斯ル時期ニ於ケル自白ヲ第一ノ証拠ト為シタルハ失当ナリ且原判決摘示第一ノ(一)ノ事実ニ付「強取ノ物品カ判示ノ如クナリトノ点ヲ除キ判示同趣旨ノ各供述トアリテ強取ノ物品ガ原判決摘示ノ物品ナリトノ点ニ付テ自白ナキコトハ原判決自ラ認ムル処ナリ。而シテ其ノ他ノ証拠ニ付被害届ヲ挙グルト雖モ当該被害物件ト被告ノ強取トノ連絡サレタル証拠ヲ示サズ被害者ガ当該物品ヲ被告ガ強取シタリトノ証拠ヲ欠ク即チ一方ニ強奪行為アリ一方ニ被害アリタリトノ点ヲ指摘シタルニ止マリ当該被害物ヲ被告ガ強取シタリトノ証拠ナク理由ナキハ採証ノ方法ヲ誤リ理由不備ノ違法ナリトス。更ニ原判決ハ其摘示第三ノ事実ニ付被告人Aハ単独ニテ同年五月二十二日同年七月五日及同月二十五日ノ三回ニ亘リ千葉県君津郡a町bc番地農業B外二箇所ニ於テ同人外二名所有ノ衣類約十三点自転車二台ヲ窃取シ云々トアリ然レ共之ニ依リテハ其三回ノ内何時何者ノ家ヨリ何物ヲ窃取シタルヤ判明セズ、凡ソ有罪ノ判決ヲ為スニ当リ斯ル認定及理由ハ結局判決ニ理由ヲ附サザルカ尠クトモ理由不備ノ違法ヲ免レザルモノトス」というにある。 しかし、記録によつて取調の状況その他を精査したが、被告人に対する勾留は不当に長いものとは認められない。従つて、原審において被告人の自白を証拠としたことは所論のように採証を誤つたものということはできない。又原判決は、被害物件の品目数量等詳細の点が、被告人の供述だけでは不充分と認めて被害顛末書を証拠として採用した趣旨とみられる。なお公判廷において被告人に被害顛末書を読聞けているのに対して、被告人は相違なき旨を供述している。被告人が一定の場所と日時において強取をなし、他方においてその一定の場所と日時における強取被害の物件が、被害顛末書をもつて明かにされた以上、当該被害物件を被告人が強取したと認定しても、所論のように採証の方法を誤つた違法はない。又連続一罪を構成すべき数多の行為を判示するには、各個の行為の内容を一々具体的に判示することを要しない。数多の行為に共通した犯罪の手段方法その他の事実を具体的に判示するの外、その連続した行為の始期終期回数等を明かにし、且財産上の犯罪で被害者又は贓額に異同があるときは被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員数を掲げ贓額の合算額を表示する等、これによつてその行為の内容が同一罪質を有する複数のものたることを知り得べき程度に具体的なるを以て足るのである。従つて、原判決には所論のような理由不備の違法はない。
同第二点は原判決ハ虚無ノ事実ニ付有罪ノ法条ヲ適用シタル違法アルモノトス。原判決摘示第二ノ事実ニ付起訴状ヲ始メ其他ノ記録ニ徴スルモ犯行ハ昭和二十一年八月二十二日午後十時頃トアリ然ルニ原判決ハ昭和二十一年八月二十三日午後十時頃ト記載アリテ満一日ノ相違存ス、然レ共原判決摘示ノ日時ニ被告ガ斯クノ如キ犯行ヲ為シタルコトハ何等ノ証拠ナシ、然ルニ之ニ有罪ノ法条ヲ適用シタルハ結局虚無ノ事実ニ付有罪ノ法条ヲ適用シタル違法ニ帰スルモノトス、以上ノ如キ次第ナルヲ以テ原判決ヲ取消シ更ニ相当ノ御裁判ヲ求ムル次第ナリというにある。 記録を調べてみると、原判決において犯罪時を昭和二十一年八月二十三日午後十時頃と記載したのは、昭和二十一年八月二十二日午後十時頃の誤記であると認められる。犯罪の日時は、犯罪の構成要件ではないから、逐一証拠をあげてこれを認めた理由を説示する必要はなく、ただ犯行を具体的事実としてその同一性を認め得られる程度に判示すればよい。偶々、犯罪の日時に関する証拠の説示中に暇疵があつても、上告の理由とすることはできない。 従つて、原判決には、虚無の事実につき有罪の法条を適用した違法はない。 被告人上告趣意は自分は此の度の事件に対して一審、二審も警察で述べた通り間違有りませんと申し立てましたが、最初自分は此の事件を犯す迄のいきさつに付て現在の事実と全然違う事を述べましたので相当にCと言う係り刑事に撲られました事実は身体に聞く家の者とも面会をさせない許りか何十日何ケ月で呼出しも何にもやらないと夫れから何んの調べもせずに共犯のDを一日二、三回呼出してては煙草差入れものを食べさしたり自分は呼出しは一度も有りませんでした、不意に呼出しが有つたので刑事室に行くと姉が来て居りまして自分に面会して刑事さんが日に一度や二度必ず家に来てお前の事を色々と尋ねる子供が学校に行き泣て来る家としても刑事さんに店先で何かと聞かれると商売上非常に困る手数を掛けずに言つて家に来ない様にしなさい妻のEも事情を知らないのだからお互に身の為だと言われたのは刑事の一つの手段なのです。其の捕まつた当時は自分は米の買出しで秋田からよく戻るので家では夫れに引張られたと思つたらしいので成る可く其の儘にと思ひ此方から刑事さんを呼んで家には事件の真相は喋べらないで下さい其のかわり刑事さんの言う通りと調べが進み早く調書が出来送られて刑も決つてから詰らぬことを刑事が家内を呼出して自分に前科が五つ有る事から此ん度は買出しの事件ではなくdの事件を喋つたのです夫れに近所の金を使つた家まで行き泥棒であること迄話したとは警察側にまる切りだまされたのです。此の事実も家内が面会に来て非常に母親が恐つて居る其の翌日又姉上からお手紙が来ました夫れには家内中がお前の為にいい恥を近所でかいている何の意味で此の様な事をゆうたのか分らないです、自分は二審で下がる積りで居りましたが警察の顔をよくしてしまへば此方は何でもよいとの向勝手自分此の為に直ぐ召喚状を早野裁判長に出し此の間呼出しが有り此の話を裁判長殿にお話しをしたら最高裁判所に書類を廻してしまつたから上告趣意書に書いて出しなさいと教へられて帰つて来ました。最高裁判所において上告した理由を汲みとり御審理をお願ひ致します。一、dの事件は自分が全然知らなかつた事、調書に自分が「アイクチ持つて入つたとしてある事実は向うの人に尋ねれば分りますが品物を一つも手をつけない事と二階に上る時初めてFからアイクチ取つておばさんが、二階に金があると聞き上つて行き五百持つて来た其の時家人が品物を助けて呉れと泣かれて自分は皆と一部の品物を持つてゆく様にした事実此の時自分が皆に兄貴顔して居る様に書いてある事や品物を一人で取つて金を自分のふところに入れたことになつて居りますが此時品物分配にあづからなかつたのはG一人です此の事はC刑事部長で四人一緒に出て相談をして書いたので今になれば皆無駄でした。二、調書に今一つの千葉県ナラハの事件でも犯人は彼方らで上つているのに自分の事にしてしまつたのです此の二つの審理をお聞き下さつて再審理をお願ひ致します。警察側の態度の不思議なやり方に自分は二審で下る積りで居りましたが此の新しい日本建設の指導者となる者のやり方と思へませんが何としても此の真相をお調べ下さい。」というにある。
しかし、記録をよく調べてみても、所論のように暴行又は不当な待遇のために自白をしたとは認められない、論旨は結局、原審の専権に属する事実認定を非難するものであつて、上告の適法な理由とはならない。
右の理由により刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
検察官十蔵寺宗雄関与
昭和二十二年十二月四日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 真 野 毅 裁判官 沢 田 竹 治 郎 裁判官 斎 藤 悠 輔 裁判官 岩 松 三 郎
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