判例検索β > 昭和52年(行ツ)第12号
所得税更正決定処分取消
事件番号昭和52(行ツ)12
事件名所得税更正決定処分取消
裁判年月日昭和56年4月24日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果その他
判例集等巻・号・頁民集 第35巻3号672頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号昭和50(行コ)21
原審裁判年月日昭和51年10月18日
判示事項いわゆる減額再更正処分の取消を求める訴の利益の有無
裁判要旨いわゆる減額再更正処分につき、納税者は、その取消を求める訴の利益を有しない。
参照法条国税通則法26条,国税通則法29条2項,行政事件訴訟法9条
裁判日:西暦1981-04-24
情報公開日2017-10-18 06:50:56
戻る / PDF版
主 文
上告人の昭和四二年分所得税に関する部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取消す。
上告人の昭和四二年分所得税につき被上告人が昭和四六年六月九日付で上告人に対してした更正処分の取消を求める上告人の請求につき本件訴を却下し、上告人のその余の請求を棄却する
上告人のその余の上告を棄却する。
上告人の昭和四二年分所得税に関する訴訟の総費用及び前項に関する上告費用はいずれも上告人の負担とする。
理 由
上告代理人竹田章治の上告理由第一点について
申告に係る税額につき更正処分がされたのち、いわゆる減額再更正がされた場合、右再更正処分は、それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり(国税通則法二九条二項)、それ自体は、再更正処分の理由のいかんにかかわらず、当初の更正処分とは別個独立の課税処分ではなく、その実質は、当初の更正処分の変更であり、それによつて、税額の一部取消という納税者に有利な効果をもたらす処分と解するのを相当とする。そうすると、納税者は、右の再更正処分に対してその救済を求める訴の利益はなく、専ら減額された当初の更正処分の取消を訴求することをもつて足りるというべきである。それ故、これと異なる見解に立つて、上告人の昭和四二年分の所得税につき被上告人が昭和四五年一一月一六日付で上告人に対してした更正処分(以下昭和四二年分当初更正処分という。)の取消を求める上告人の請求につき本件訴を却下し、被上告人が昭和四六年六月九日付で上告人に対してした更正処分(以下昭和四二年分再更正処分という。)の取消を求める訴について本案の判断をした原審及び第一審の処置には、法律の解釈適用を誤つた違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである、論旨は、右の限度において理由があり、原判決及び第一審判決中上告人の昭和四二年分所得税に関する部分は破棄又は取消を免れない。
ところで、本件において、原審は昭和四二年分再更正処分を理論上別個独立の課税処分とし、昭和四二年分当初更正処分はこれに吸収されたものとして取扱い、昭和四二年分再更正処分の適否に関する本案の判断において、上告人の昭和四二年分の所得税につき課税標準である所得額及び税額を認定しているところ、これは減額された昭和四二年分当初更正処分の実体上の適否に関する認定判断にほかならないのであるから、昭和四二年分当初更正処分の固有の瑕疵と目すべきものについて何ら争われていない本件においては、減額された昭和四二年分当初更正処分につき更に原審において格別の審理判断を経なければならない実質上の必要性はなく、このような場合にはその取消請求にかかる訴を原審に差戻すことなく、当審において原審のした上記の認定判断に基づいて本案の裁判をすることができるものというべきであり、そのように解しても民訴法三九六条、三八八条の規定の法意に反するものではない。
そこで進んで、減額された昭和四二年分当初更正処分が違法であるとしてその取消を求める上告人の本訴請求の当否について判断するに、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて本件顧問料は事業所得にあたるとした原審の判断は正当として是認することができ、その理由は上告理由第二点ないし第五点についての後記判断において示すとおりである。よつて、上告人の右本訴請求中、昭和四二年分再更正処分の取消を求める部分については訴の利益がないから不適法な訴としてこれを却下することとしその余の請求については理由がないからこれを棄却すべきである。 (なお、附言するに、原判決は、右その余の請求の対象である昭和四二年分当初更正処分の取消を求める上告人の請求につき本件訴を却下し、昭和四二年分再更正処分の取消を求める請求につき本案の裁判をしたのに対し、本判決は、昭和四二年分当初更正処分につき本案の裁判をし、昭和四二年分再更正処分につき訴を却下するものであるところ、原判決の右却下の結論は、昭和四二年分当初更正処分が昭和四二年分再更正処分に吸収され、実体を欠くに至つたという判断を前提とするものにほかならず、ひいて、原判決はその本案の判断において減額された昭和四二年分当初更正処分の実体上の適否に関する認定判断を示したものといいうるから、昭和四二年分当初更正処分及び昭和四二年分再更正処分の双方に対する請求を総合すれば、前記その余の請求に対する本判決の結論は原判決より不利益というにあたらず、したがつて、民訴法三九六条、三八五条の規定の法意にも反しないものというべきである。)
同第二点ないし第五点について
所論は、要するに、上告人の顧問料収入を事業所得と認定し、上告人の請求を排斥した原判決は、法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。 およそ業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得(同法二七条一項、同法施行令六三条一二号)と給与所得(同法二八条一項)のいずれに該当するかを判断するにあたつては、租税負担の公平を図るため、所得を事業所得、給与所得等に分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならない。したがつて、弁護士の顧問料についても、これを一般的抽象的に事業所得又は給与所得のいずれかに分類すべきものではなく、その顧問業務の具体的態様に応じて、その法的性格を判断しなければならないが、その場合、判断の一応の基準として、両者を次のように区別するのが相当である。すなわち、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか重視されなければならない。
これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係は、おおむね次のとおりである。上告人は第一東京弁護士会所属の弁護士であり、昭和四二年ないし同四四年当時、自己の法律事務所を有し、使用人を四人ないし六人(うち家族使用人二人を含む)を使用して、特定の事件処理のみならず、法律相談、鑑定等の業務もその内容として、継続的に弁護士の業務を営んでおり、原判決の引用する本件第一審判決添付別表(二)(1)ないし(6)記載の各会社と上告人との間の本件各顧問契約はいずれも口頭によつてなされ、この契約において上告人は右各会社の法律相談等に応じて法律家としての意見をのべる業務をなすことが義務づけられているが、この業務は本来の弁護士の業務と別異のものではない。右各顧問契約には勤務時間、勤務場所についての定めがなく、この契約はその頃常時数社との間で締結されており、特定の会社の業務に定時専従する等格別の拘束を受けるものではなく、この契約の実施状況は、前記各社において多くの場合電話により、時には右各社の担当者が上告人の事務所を訪れて随時法律問題等につき意見を求め、上告人においてその都度その事務所において多くは電話により、時には同事務所を訪れた右担当者に対し専ら口頭で右の法律相談等に応じて意見をのべるというものであつて、上告人の方から右各社に出向くことは全くなく、右の相談回数は会社によつて異なり、月に二、三回というところや半年に一回、一年に一回というところもある。右各社はいずれも本件顧問料を弁護士の業務に関する報酬にあたるものとして毎月定時に定額をその一〇%の所得税を源泉徴収したうえ上告人に支払つており、右顧問料から、健康保険法、厚生年金保険法等による保険料を源泉控除しておらず、上告人に対し、夏期手当、年末手当、賞与の類のものを一切支給しておらず、したがつて、雇傭契約を前提とする給与として扱つていない。右の事実関係のもとにおいては、本件顧問契約に基づき上告人が行う業務の態様は、上告人が自己の計算と危険において独立して継続的に営む弁護士業務の一態様にすぎないものというべきであり、前記の判断基準に照らせば右業務に基づいて生じた本件顧問料収入は、所得税法上、給与所得ではなく事業所得にあたると認めるのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九五条、八九条の規定に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 塚 本 重 頼 裁判官 栗 本 一 夫 裁判官 木 下 忠 良 裁判官 鹽 野 宜 慶 裁判官 宮 崎 梧 一
トップに戻る

saiban.in