判例検索β > 平成13年(ワ)第17619号
損害賠償等請求
事件番号平成13(ワ)17619
事件名損害賠償等請求
裁判年月日平成15年12月26日
裁判所名・部東京地方裁判所  民事第34部
裁判日:西暦2003-12-26
情報公開日2017-10-18 04:43:03
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平成15年12月26日判決言渡
平成13年(ワ)第17619号損害賠償等請求事件




1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,被告の教職員をして,原告に加入する団体員(サークル員)に対し,原告からの脱退を慫慂してはならない。
2 被告は,別紙1記載の謝罪文を,
(1) 判決送達の日から3日以内に,縦84.1センチメートル,横59.4センチメートル以上の白紙に記載した上,被告本部構内の被告管理の掲示板に2週間以上掲示せよ。
(2) 直近に発行するAウィークリーに,紙面の4分の1の大きさで掲載せよ。 (3) 判決送達の日から3日以内に,縦29.7センチメートル,横21センチメートル以上の白紙に記載した上,原告に交付せよ。
3 原告と被告との間において,原告が別紙2物件目録記載の建物部分を常任委員会室として使用する権利を有することを確認する。
4 被告は,原告に対し,金3385万0500円及びこれに対する平成13年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,被告が設置運営するA大学(以下被告大学という。)内において被告大学学生の組織する文化団体をもって組織される原告が,被告に対し,①被告大学が,原告に対し,毎年補助金を支給してきたにもかかわらず,その支給が被告大学により一方的に停止されたことを理由として,補助金2285万0500円と慰謝料の支払(不法行為又は補助金支給義務の債務不履行に基づくもの),②被告大学による原告加盟団体への補助金支給を遅延したことによる慰謝料の支払(不法行為に基づくもの),③原告と被告大学との間で,原告に対する補助金支給額を決定するために毎年開催されてきた公開折衝を被告大学が一方的に取りやめたことに対する慰謝料の支払(不法行為に基づくもの),④被告大学が,原告に対する各種便宜供与を停止したことに対する慰謝料の支払(不法行為に基づくもの),⑤被告大学が建設した新学生会館において被告大学が原告に対し部室を割り当てなかったことについて,部室使用権の確認と割り当て不実施についての慰謝料の支払(不法行為又は部室提供義務の債務不履行に基づくもの),⑥被告大学が,新入生歓迎活動において原告の出店場所割り振り権を侵害したことに対する慰謝料の支払(不法行為に基づくもの),⑦被告大学の発行する学内広報紙Aウィークリーにおいて原告の名誉を毀損する記事を掲載されたことに対する慰謝料の支払と謝罪文の掲載(不法行為に基づくもの),⑧被告大学の教員が,原告加盟団体の幹事長に対し,原告から脱退するよう慫慂したことに対する慰謝料の支払,謝罪文の掲載及び脱退慫慂の差止め(いずれも結社の自由ないし団結権侵害の不法行為に基づくもの)(①ないし⑧の慰謝料の合計1000万円),⑨弁護士費用相当損害金100万円の支払を請求しているのに対し,被告は,原告代表者の適格及び訴訟遂行権限,本件の司法審査適合性,確認の利益を争うとともに,本案については,①原告には補助金受給権はなく,さらに,被告大学が原告への補助金支給を停止したことは合理的措置であった,②被告大学が原告加盟団体への補助金支給を遅延したことに違法性はない,③被告大学は原告との間において,公開折衝を開催する義務を負っていない,④原告はもともと被告大学から便宜供与を受ける権利を有しておらず,また,原告への便宜供与を停止していることには合理的理由がある,⑤原告には新学生会館における部室使用権は存在しない,⑥原告は新入生歓迎活動における出店場所割り振り権を有しているものではない,⑦Aウィークリーへ掲載した記事はいずれも真実であった,⑧被告大学の教員は,原告加盟団体の幹事長に対し,個人的意見において原告からの脱退を勧めたものであって被告大学は関与しておらず,また,同教員の発言自体,何ら違法とされるものではない,などと主張して全面的に争っている事案である。 1 争いのない事実等
(1) 被告は,大学,高等学校,専修学校,その他研究施設を設置し,真理の探究と学理の応用に努め,学芸を教授し,その普及を図り,有能な人材を育成することを目的として,被告大学,A大学高等学院等を設置する法人である(弁論の全趣旨,争いのない事実)。
(2) 被告大学内の学生団体としては,①被告大学の公認団体である学生の会,②届出団体である同好会,③届出団体である地方学生の会,④各学部が公認する各種学生団体ないし各学部に届出のある各種学生団体,⑤体育局に所属する体育各部,⑥その他の任意団体がある。このうち学生の会に関して,昭和26年5月24日に定められ,昭和28年12月18日に改正を経た学生の会に関する規程が存在していた(乙1,191)。その内容は,別紙3学生の会に関する規程のとおりである。
(3) 原告は,被告大学の学生が組織する文化団体をもって組織される連合体であり(以下,原告に加盟する団体を原告加盟団体といい,それ以外の団体を原告非加盟団体という。),各加盟団体の独立性と自主性を尊重し,相互の連絡と協力により被告大学学生の文化活動を促進し,もって学生生活の充実と向上に寄与することを目的として,昭和24年に設立された団体である。
また,原告には,原告加盟団体の代表委員から選出された常任委員によって構成される常任委員会が存在し,常任委員会の決議により会務の執行をしている(甲1,28,争いのない事実)。(4) 被告大学には,原告に関して,A大学B会規程(以下B会規程という。)が存在する。B会規程は,被告大学部科長会議の承認を経て昭和24年4月に制定されたものであるが,その内容は,別紙4A大学B会規程のとおりである(甲1,28,争いのない事実)。
(5) 被告大学は,従前,原告に対し,原告常任委員会に対する補助金(以下B会本部費とする。)を交付し,また原告加盟団体に対する補助金の配分を原告に委ねていた。なお,平成11年度におけるB会本部費は,1110万6600円であった。
被告大学は,平成11年度及び平成12年度の原告の会計に関し,疑義があるとして,原告に説明を求めた。被告大学と原告との間において,数度にわたって質問と回答とが書面でやり取りされた。そして,被告大学は,平成12年12月1日開催の学部長会において,原告の会計の疑義が解消されなかったとして,平成12年度のB会本部費の支給を停止し,平成13年4月16日開催の学部長会において,平成13年度のB会本部費の支給も行わないことを決定した。一方,学生の会に対する補助金については,平成11年度及び平成12年度は,原告加盟団体以外の学生の会に対して6月に支給した。原告加盟団体に対する支給は,7月末になったが,被告大学は,上記各年度分においては,原告が原告加盟団体に配分することを認めた。平成13年度については,原告非加盟団体に対して同年6月に支給したが,原告加盟団体に対しては原告に配分させることを認めず,同年10月に,被告大学から原告加盟団体に対し直接各加盟団体の銀行口座に振り込んで支払われた(甲3,18,乙72ないし84,88ないし103,105,106,108,109,139,争いのない事実,弁論の全趣旨)。(6) 被告大学は,従前,原告との間において,補助金の額等について,公開折衝と称する意見聴取を行ってきたが,原告の交渉態度に問題があるとして,平成10年度以降これを取りやめている(乙47,争いのない事実)
(7) 原告は,従前,被告大学の施設及び設備を利用していたが,被告大学は,平成10年2月6日の臨時学部長会において,原告が被告大学がその開催を認めなかったCフェスタというイベントの実施へ主導的に関与したことを理由として,原告への被告大学の施設及び設備の貸与及び利用許可(以下便宜供与とする。)を少なくとも同年7月31日まで停止することを決定した。
その後,同年6月5日の学部長会により,同年8月1日以降も原告に対して上記の便宜供与停止を継続することが決定され,現在に至るまで便宜供与は停止されている(乙61,67,争いのない事実)。(8) 原告は,被告大学の第一学生会館中2階に原告常任委員会室を有していた。第一学生会館は,昭和29年に建設されたものであり,老朽化も進んでいたことから,被告大学は,第一学生会館の建て替えを計画し,平成13年7月26日に新学生会館(別紙2物件目録記載)を竣工した。
同月6日,被告大学は,原告に対し,以後被告大学の一切の施設を原告の事務所又は部室として使用することを禁じることを通告するとともに,同月31日限り,上記の委員会室を明け渡すことを要求した。 その後,第一学生会館は取り壊され,新学生会館には,原告の部室は割り当てられていない(乙110,123,争いのない事実)。
(9) 被告大学は,その学内広報紙Aウィークリー紙上において,平成13年4月21日から同年7月19日に至るまで合計6回にわたってB会の存在意義を問う!と題する連載を行うなどし,①原告の会計報告には疑義がある,②原告は日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(以下革マル派という。)に長年にわたって支配されている,③原告は事実に反する情宣活動を行っている,④原告の活動はその本来の目的を逸脱しているなどの記事を掲載した(甲3ないし9,争いのない事実)。
(10) 被告大学の学生の会においては,前記(2)の学生の会に関する規程5条により,会長は被告大学の教職員でなければならないものとされていたところ,原告加盟団体である社会思想研究会の会長であった被告大学人間科学部のD教授は,平成13年6月6日及び同月7日,同会の幹事長であったEに対し,社会思想研究会について,原告から脱退するよう勧めた(甲2,争いのない事実)。
2 争点
(1) Fに原告の代表権限があるか(本案前の抗弁)。
(2) 本件訴えに司法審査適合性があるか(本案前の抗弁)。 (3) 本件訴えに確認の利益があるか(本案前の抗弁)。
(4) 被告は,原告に対し,補助金を支給すべき義務を負うか。被告の補助金支給停止の措置は違法か。 (5) 被告による原告加盟団体への補助金支給遅延が違法か。 (6) 被告は,原告に対し,補助金の割り振りにつき,公開折衝をすべき義務を負うか。 (7) 被告は,原告に対し,被告大学の施設,設備の貸与,利用について便宜供与をすべき義務を負うか。また,別紙2物件目録記載の建物部分を使用させる義務を負うか。
(8) 原告は,新入生歓迎活動において,出店場所を割り振る権利を有しているか。また,被告がその権利を侵害したか。
(9) 原告に対する名誉毀損の成否
ア 本件記事が,原告の名誉を毀損するか(判断の必要がなかった争点)。 イ 本件記事の掲載が,公共の利害に関する事実にかかり,専ら公益を図る目的に出た場合で,記事の内容が真実であるといえるか,また,真実であると信じるにつき相当の理由があるか。(10) 被告は,D教授を通じて,Eに対し,原告からの脱退を指示したか。また,それが違法であるか。(11) 損害(判断の必要がなかった争点)
3 争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)(Fに原告の代表権限があるか)について
(被告の主張)
ア Fは原告を代表する権限を有さないこと
(ア) 原告のように法人格を有しない社団であっても,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定している場合には,民事訴訟法29条により当事者能力を有することになるところ,原告において,代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定している根拠として,B会規程の存在を前提としている。
そして,B会規程14条によれば,原告を代表するのは原告常任委員会において互選により選出された委員長でなくてはならず,この常任委員会を構成する各常任委員は,原告加盟団体のうち,学術部門,芸術部門及び宗教部門の各部門(B会規程7条)ごとに,所属の5団体に対して1名の割合をもって選出されなければならない(B会規程13条)。
(イ) 平成13年2月1日当時の原告加盟団体は,合計61団体であり,学術部門所属が26団体,芸術部門所属が32団体,宗教部門所属が3団体であったから,上記規程によれば,それぞれ学術部門から5名,芸術部門から6名,宗教部門から0ないし1名の常任が選出されていなければならないところ,原告が被告に対して提出した同日開催の原告の総会に基づく常任委員等の名簿によれば,平成13年度の常任委員は,学術部門から5名,芸術部門から1名,宗教部門から0名という構成になっており,およそB会規程に従った選出が行われていないことは明らかである。 また,原告の提出する常任委員の名簿は,団体名が記載されているのみであり,代表委員たる学生の氏名が記載されておらず,その信用性は極めて乏しい。
さらに,原告が,慣行に従ってその代表が常任委員に選出されたと主張する団体の中には,実体がないなどの理由から被告大学が学生の会としての承認を取り消した団体が含まれており,これは原告の常任委員ひいては委員長の選出自体が適正に行われていなかったことを示す事実である。例えば,後記(4)(被告の主張)イ(カ)において述べるように,キリスト教共助会及び文章表現研究会は,その実体を欠くものとして被告大学が学部長会において学生の会としての承認を取り消したものであるし,東南アジア研究会,政治学会及び産業経済研究会も,平成8年までは,学生の手帖の学生の会紹介欄に会長,幹事長,人数,連絡場所,活動紹介文等を掲載せず,したがって,その実体を欠くものであることが容易に推認できる団体であった。さらに,A大学新聞会及び中国ロシア(ソ連)研究会についても,被告大学学部長会で学生の会としての承認を取り消されたのであるから,その代表者が常任委員に就任していたということであれば,原告は構成員たる資格のない団体の代表者を常任委員としていたことになる。 (ウ) 原告は,学生の会に関する規程について,昭和44年7月に原告と被告大学との間の合意により撤廃されたと主張する。
原告が被告大学の教員3名との間で取り交わした同月4日付け確認書第1項には,現行の『学生の会規約』を全面的に撤廃するとの文言が存する。しかしながら,昭和40年代の激化する学生運動の中,被告大学においても,暴力事件が相次いで起こるなどしていたが,そのような状況の下,原告らは,被告大学に対し,学生の会に関する規程の撤廃を要求して交渉を求め,昭和44年6月24日と同年7月4日の2回にわたり,被告大学のG学生部長,H学生会館問題委員会委員長,I文学部教授らとの間に交渉を行った。同月4日の交渉時には,60名を超える学生らが,持参した確認書を提示しながら,B会の責任において勝ち取るまで闘うなどと主張して,わずか4名の被告大学側出席者を取り囲み,ヘルメットでテーブルを叩きながら恫喝して署名を強く迫るといった状態で,被告大学側出席者は,
やむなく上記確認書に署名押印せざるを得なかったのである。加えて,確認書の柱書には,7月4日の団交にもとづき,下記の署名者は次の3項目をすみやかに実現することを誓約するとあり,かつ,被告大学側出席者の署名が,いずれもG,H,Iという個人名でされていることから明らかなように,この確認書は,上記3名が,原告に対し,個人としての立場から誓約したものにすぎない。そもそも,大学は,その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し,これによって在学する学生を規律する包括的権能を有しているのであり,被告大学においても,規則,規程,細則の3種類の規約を設け,規則については評議員会の,規程については理事会の議決をそれぞれ経てこれを定めることとしている(学校法人A大学校規57条)。したがって,学生の会に関する規程の改廃権限を有するのは被告の理事会であって,単に被告大学の学生部長等の肩書きのみを有する一教授が改廃権限を有するものではないし,ましてや被告大学学生に被告大学が制定した規則や規程についての改廃権限がないことはいうまでもない。
このように,上記の確認事項は,何ら学生の会に関する規程の有効性を左右するものではない。被告大学がその後も学生の会へ補助金を,原告に対しB会本部費を支給し続けてきたのは,学生の会に関する規程が有効に存続していることが当然の前提であった。現に,昭和44年以降も学生の会に関する規程に従って設立願を提出する団体は数多く存在し,その中で被告大学が同規程によりその設立を承認した団体も数多く存在しているのである。 その後,被告大学においては,会計報告の明瞭化を徹底させるため,B会本部費を含む補助金について明朗な会計報告の提出を徹底させることとし,ようやく平成10年度以降,継続願や会計報告の提出等学生の会に関する規程の徹底が図られるようになったのである。
以上のとおり,学生の会に関する規程は,一貫して有効に存続していたものであって,これが撤廃されたなどとする原告の主張は失当である。
(エ) 以上のとおり,B会規程に従った選出が行われていない常任委員によってFが互選により委員長に選出されたとしても,Fには原告を代表する権限がない。
原告は,被告大学が異議を唱えたことがないと主張するが,原告から常任委員の名簿も提出されず,被告大学が原告常任委員の選出及び構成の実体について把握できない状況であったのだから,異議を唱えることなど不可能であった。
イ Fは訴訟行為をするのに必要な授権(民事訴訟法28条)を欠いていること 原告においては,B会規程3条に規定された目的を達成するために同規程4条各号に列挙された事業を行うことが認められているところ,常任委員は,総会の決議やその他の会務の執行に当たる機関であって(B会規程15条),最高意思機関として原告の重要事項を議決するのは,原告の総会である(B会規程9条)。 そして,仮に本訴において判決が言い渡された場合には,原告に加盟する各学生の会に対してもその判決の効力が及ぶ(判決効の拡張ないし反射効)ことを考慮するならば,本訴提起が原告の重要事項に該当することは明らかである。
しかるに,本訴提起につき,原告の総会において,決議及び了承がされた事実はないから,Fは,本訴遂行に必要な授権を欠いている。
原告は,本訴提起後である平成13年10月10日開催の原告緊急総会において,本訴の提起及び遂行が承認されていると主張するが,それを証する文書は報告書のみであり,しかも,その報告書をみても,明確に訴訟提起及び遂行を議題として提案したとは考えられず,それによっても本件訴訟提起について原告緊急総会による追認があったということもできない。
なお,本訴提起は,B会規程4条5号所定のその他常任委員会において本会の目的達成のため必要と認める事項に該当すると解釈することも可能ではあるが,当該事業の執行については,その都度被告大学の承認を経なければならない旨規定されているところ,被告大学は,原告に対し,当該承認を与えていない。 ウ 以上のとおり,Fは,原告の代表権限を有さず,さらに,本件訴訟遂行に必要な授権も欠いているから,本訴は直ちに却下されるべきである。
(原告の主張)
ア Fは原告を代表する権限を有すること
(ア) 原告の総会は,平成13年2月1日に開催され,原告に加盟する現代文化研究会,政治学会,歴史学研究会,産業経済研究会,現代思想研究会及び漫画研究会の各代表者が常任委員に選出され,同日,Fが,常任委員の互選により委員長に選出された。
(イ) 原告の常任委員は,各部門ごとに候補を決め,総会で立候補して承認を得て選出しており,常任委員の人数は,原告加盟団体総数の1割前後の数であることは,長年の確立された慣行であり,被告大学から異議が出たこともなかった。
また,そもそも原告のような自治団体の運営は,必ずしも規程に厳密に従って運営されていることは必要ではなく,慣行により成立した一定のルールの枠内で運営されていれば足りるものである。 原告代表者は,上記のような慣行に従って選出された常任委員の互選によって選出されたものであり,このようにして選出された原告代表者である委員長の原告代表権限について被告大学から異議を述べられたこともなかったのである。
(ウ) 被告は,代表者が原告の常任委員に選出された団体の中には,実体のない団体があると主張するが,後記(4)(原告の主張)ウにおいて述べるとおり,実際にはいずれもそれぞれの活動を行っているし,被告が一方的に承認取消しをしたからといって,直ちに当該団体が原告の構成員たる資格を失うわけでもない。 (エ) 被告大学は,学生の会に関する規程を根拠に,会計報告や継続願の提出を強制したり,学生の会としての承認を一方的に取り消したりしているが,同規程中,学生側の権限を制約する条項は,過去適用されてこなかったし,そもそも,被告が主張する学生の会に関する規程は,昭和26年に被告大学により改正されたものであるが,原告は,当初からこの改正に強く反対しており,被告大学もこの規程は学生の会として認めるための準拠であって,運営細則ではないと説明していた。このような背景があるため,同規程は,適用されてこなかったのである。 さらに,学生の会に関する規程は,昭和44年7月4日に,原告と被告大学との間において,現行の『学生の会』規約を全面的に撤廃することを確約するとの合意がされ,確認書まで取り交わされているのであって,その時点で同規程が撤廃されたことは明らかである。
被告は,上記確認書は,被告大学側参加者が個人の資格で出席,署名したものであるから,効力を有しないというが,被告大学学生部長は,学生との折衝において,被告大学の責任者でもあったのであり,同人がした意思表示が被告大学の意思表示としての意味と効力を有することは自明である。また,被告大学は,学生との論議の後,休憩を要求し,協議をした結果確認書に合意したのであって,決してやむを得ず署名をしたものではない。 さらに,被告大学の理事は,上記確認書が取り交わされた後何らの異議も述べていないのであって,かかる事実は,上記確認書の追認とも評価できるものである。
その後も,平成10年2月に被告大学が学生の会に関する規程の学生側の権限を制約する条項の適用を迫ってくるまでは,長い間それらの条項が適用されたことは全くなかった。例えば,継続願や個別のサークルの会計報告について,これを求められるといったことはなかったのである。
したがって,学生の会に関する規程中,学生の権限を制約する条項が無効であることは明白である。イ Fは訴訟行為をするのに必要な授権を得ていること

(ア) 本件訴訟の提起は,B会規程4条5号所定のその他常任委員会において本会の目的達成のため必要と認める事項に該当するから,特別の授権を要しない。 また,原告は,結成以来長年にわたって講演会,研究発表会等を主催し,あるいはその他原告の目的達成のため必要と認める事業を数限りなく行ってきているが,原告が,被告大学に対し,これらの事業の執行に当たってその都度承認を求めたことはなく,また,被告大学がこれに異議を述べたこともなかった。 (イ) なお,平成13年10月10日に開催された原告緊急総会において,本訴の提起及び訴訟の遂行が承認されている。
(2) 争点(2)(本件訴えに司法審査適合性があるか)について (被告の主張)
ア 裁判所法3条は,裁判所は,日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判しと規定するが,ここにいう法律上の争訟とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいうとされている。 他方,司法権には,憲法上の限界,特に司法の本質から含意的に導かれる限界,事柄の性質上裁判所の審査に適しないと認められるもの,司法作用の特質からくる審判権の限界等があるとされ,ある係争が裁判所の司法権ないし審判権の対象外にある場合には,訴訟要件を欠くことが承認されている。 そして,上記司法権ないし審判権の限界に該当する係争には,団体の内部事項に関する行為があるとされており,最高裁も,自立的な法規範をもつ社会ないし団体に在っては,当該規範の実現を内部規律の問題として自治的判断に任せ,必ずしも裁判にまつを適当としないことを前提に(最判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁),大学は,国公立であると私立であるとを問わず,学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究施設であって,その設置目的を達成するために必要な諸事項については,法令に格別の規定が無い場合でも,学則等によりこれを規定し,実施することのできる自律的,包括的な権能を有し,一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているのであるから,このような特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが当然に裁判所の司法審査の対象となるものではなく,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題は右司法審査の対象から除かれるべきものであると判示するところである(最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁)。 イ 原告の主張する被侵害利益を善解するならば,結社の自由ないし団結権であると解されるが,原告への加盟資格を有する学生の会とは,①そもそも被告大学の承認をもって初めて設立が許可されるものであり(学生の会に関する規程2条),②会の活動を統括し,被告大学に対してその監督の責を負う被告大学の専任教員又は職員である会長を置かなければならず(同規程4条,5条),③被告大学に対する会計報告及び活動情況の報告を義務付けられ(同規程8条,11条,12条,3条),④設立の趣旨又は会長の指導に反したり,被告大学の諸規則に違反した場合には,その承認が取り消されるという団体であり,そもそも設立や存続そのものが被告大学の承認があって初めて認められる団体なのである。
すなわち,原告への加盟資格を有する学生の会は,被告大学の承認がある限りにおいて,結社の自由を認められているにすぎず,およそ被告大学が制定した学生の会に関する規程を離れて存続し得る団体ではない。 そして,学生の会に関する規程が今なお有効であることは前記(1)(被告の主張)において論じたとおりである。
また,原告の設立根拠であるB会規程は,被告大学の理事会が最終的に改廃権限を有し(B会規程25条),その解釈に疑義の生じた場合には,被告大学の学部長会にその決定権がある(同規程26条)。さらに,原告には,同規程3条に規定された目的を達成するために,同規程4条に列挙された事業を行うことが認められているにすぎず,その予算及び決算についても被告大学による承認が必要である(同規程24条)。 したがって,原告は,団体の結成,団体への加入及び団体員の資格の継続のみならず,その活動内容についても被告大学による一定の制約を前提にした団体であって,その限りで結社の自由を享受しているにすぎない。 ウ 以上のとおり,被告大学の規定するB会規程にその設立根拠を有する原告が,自らの結社の自由ないし学生の自治活動の侵害を主張する本件係争は,明らかに一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題である。
よって,本件訴訟は,司法審査の対象外にあり,訴訟要件を欠くから,直ちに却下されるべきである。 (原告の主張)
ア 原告は,被告大学の干渉を排し,学生によって自主的に組織され,運営されるものとして結成された学生自治組織である。したがって,原告は,その団体自身の運営,存続,活動等に関して,公権力によるもののみならず,被告大学による抑制,干渉等を受けない権利を有している。被告大学は,かかる原告の結社の自由ないし団結権を侵害したものである。本件は,自治団体の存在自体に影響する重要な権利侵害に関するものであって,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題ではないことは明らかである。
最高裁判所は,被告が引用する最高裁判決と同じ日に,大学の専攻科について,その不終了の認定は司法審査の対象となるとして(最判昭和52年3月15日民集31巻2号280頁),全く逆の判断を示している。被告引用の最高裁判決においては,大学における単位認定行為は,教育上の措置であり,その学術性,専門性のゆえに裁判所が審査,判定することができないと判示し,上記最高裁判決においては,格別教育上の見地からする専門的な判断を必要とするものではないから,司法審査になじむものであると判示している。 上記の判示に照らせば,本件訴訟は,格別教育上の見地からする専門的な判断を必要とするものではないから,司法審査になじむものというべきである。
イ 原告は,被告大学内の学術,芸術,宗教,各種同好団体等の学生団体が自主的に積極的な活動と総合文化活動を推進するために結成されたものであり,被告大学の干渉を排し,学生の自主的運営をすることを設立の基本としている。
B会規程は,原告を被告大学に公認させ,被告大学から補助金を支出させるため,原告が被告大学と2箇年にわたって交渉した結果,両者合意の上制定されたものであって,B会規程により原告が結成されたものではない。 なお,B会規程の改正は,常任委員会において起草し,総会及び学部長会の議を経て理事会が決定する(同規程25条)ものであり,改正の発議の権限は,原告常任委員会に存するものであって,被告大学理事会には,何ら改正を発議する権限は存しない。
(3) 争点(3)(本件訴えに確認の利益があるか)について (被告の主張)
原告は,新学生会館東棟内の合計9室のうち,いずれか1室について,原告常任委員会室として使用権限を有することの確認を求めているが,このように抽象的な請求は,訴訟物たる権利義務(対象物)の特定を欠くものであって,確認の利益を欠く請求であるといわざるを得ない。
(原告の主張)
争う。
(4) 争点(4)(被告は,原告に対し,補助金を支給すべき義務を負うか,被告の補助金支給停止の措置は違法か)について
(原告の主張)
ア 原告は被告大学から補助金を受給する権利を有すること
B会規程22条は,

本会の経費は,大学からの補助金…を以てこれにあてる。

と定めており,被告大学から原告への補助金の支払が当然の前提となっており,さらに,B会規程23条は,

大学は,…本会に毎年度補助金を交付する。

と定めて,原告の被告大学に対して補助金を請求する権利を明確に定めている。 現に,被告大学は,原告に対し,B会規程成立後50年間にわたって補助金の支払を行ってきたことに照らせば,少なくとも,原告がB会本部費の支給を被告大学に請求する権利が,慣行として50年間にわたって認められてきたということができる。
しかるに,被告大学は,原告に対し,平成12年度から補助金の支払を停止しているのであり,したがって,原告は,被告に対し,補助金請求権を有するものである。
イ 原告の会計報告に疑義は存在しないこと
(ア) 平成10年度会計報告について
原告は,平成11年6月12日,被告大学に対し,平成10年度の会計報告を行った。これに対し,被告大学は,平成11年7月17日,文書をもって原告の会計報告に多くの疑義があるとして説明を求めてきた。これについて,原告と被告大学との間で,数度の文書のやりとりが重ねられたが,被告大学の指摘は,基本的には些末な事項に関するものであり,補助金の交付を遷延させ,原告の活動を妨害する意図に基づくものといわざるを得ないものであった。以下,被告大学から疑義とされた点について詳述する。
a 会計年度の扱い方について
原告が,平成10年度決算報告を作成した際,その期間を平成9年度後期B会総会から平成10年度後期B会総会までとしたことにつき,被告大学は,B会規程によれば,会計期間は4月1日から翌年3月31日までとなっているとして説明を求めてきた。これについて,原告は,これは長年にわたる慣例であり,前年度も被告大学には同様の期間における会計報告をしていると回答したが,被告大学は,会計年度は本来4月1日から翌年3月31日までとなっているのであるから,平成11年度会計報告もそれに沿うべきであるとの見解を示し,原告に対して回答を求めた。原告は,被告大学の指摘は,補助金を交付しないための口実であると抗議をしつつ,被告大学の指導どおり,平成11年度会計報告は,同年4月1日から平成12年3月31日までの間の収支を計上するなどの回答を行った。 以上のとおり,原告は,会計年度の扱い方について,慣例に従って行ってきたものであり,これが疑義といえるものではなく,被告大学のこの点についての説明要求は,恣意的なものであり,補助金支給を停止する何らの事情とはならないものである。
b 株式会社J発行の領収書について
被告大学が,株式会社J発行の領収書につき具体的な使途が不明であるとして説明を要求したのに対し,原告は,その具体的使途は,文化運動やB会統一ポスターの版下代,印刷費,印刷製本代,増刷代等であり,さらに,B会統一ポスターの印刷代と文化運動新歓号の版下代に当たる領収書については,新歓の活動費であるとともに,サークル企画援助やA祭の実現のための宣伝の位置付けもあるため,100万円を50万円ずつ,新歓活動経費とサークル企画援助,A祭のための経費に分けて処理したという点を明らかにして回答した。 しかし,被告大学は,印刷物の現物を提出するとともに,印刷及び製本に係る内訳や単価等の見積りやサークル企画援助及びA祭のための支出の詳細について説明するよう求めてきた。原告は,このような質問が,漠然としており,必要性もなく不当である旨抗議をしつつも,要求された印刷物の現物を提出し,印刷費及び製本の単価,サークル企画援助,A祭のための支出についての具体的内容を回答した。 ところが,さらに被告大学は,見積りを出して契約をしたことを裏付ける資料として見積書や請求書の提出を要求するとともに,さらに具体的な金員の使途についても説明を求め,B会統一ポスターと文化運動の版下代としての金員の領収書を2つに分けて原告が支出した会計処理は不適切であると指摘して,回答を求めてきた。原告は,被告大学の提起した疑義には既に回答済みであり,更なる質問は,些末な点を殊更に問題視するものであって,適切なものではないと被告大学に対し強く抗議したが,なお,上記の各質問に回答し,領収書を2つに分けた点についてもやむを得なかった特殊事情を説明の上,今後は改める用意がある意思を表明した。 それにもかかわらず,被告大学は,再度の確認を求めるなどとして,次年度以降の会計報告の際に,①領収書は購入物品や使用した目的,内容等の使途が具体的に明記されているものを提出する,②各種印刷物を印刷する場合には,印刷及び製本にかかわる内訳が記載されている見積書,請求書及び印刷物の現物を提出する,③講演会,サークル企画援助等に支出する場合,それを裏付けるポスター,プログラム等を提出する,④同一使途の1枚の領収書を異なる支出科目に計上しないとの点につき遵守する旨を文書で提出するよう命じてきた。原告は,これらの指示が学生の自主的活動への介入であるとして強く抗議をしたが,同時に以上の被告大学からの要求については基本的にすべて応じる旨,文書で回答した。
しかしながら,被告大学は,原告からの回答について,さらに,善処したいと考える,必要である場合は,それらを提出してもよい,計上しないようにするなどの表現について,それぞれ被告大学の要求を遵守する趣旨が明確でなく,改めてこれらの要求を遵守する旨を確約する文書を提出するように要求した。 被告大学が要求する事項の中には,必ずしも自己の意向どおりにならないものもあり,完全に確約できるものではなかったため,原告は,被告大学に対し,抗議の意を表明したが,その上で,被告大学の要求する各事項について,要求された文言どおりに記載をした文書を提出した。
このように,株式会社J発行の領収書について疑義は存在せず,被告大学の数度にわたる説明要求は,正当な理由のないあら探しであり,これに対して,原告は,極めて誠実に応答したものであって,補助金の交付を遷延,停止する理由足り得ないのは明らかである。
c その他の領収書について
その他,被告大学は,原告が会計報告に添付した領収書のうち,①全日本学生自治会総連合の領収書に関して,他団体に対する拠出はその都度大学の承認を経なければならないとのB会規程との関係で疑義がある,②領収書のただし書きに,購入物品や使用した目的,内容が記入されていないものが多数あり,交通費で乗車区間,利用目的等が記入されていないものがある,としてそれぞれ説明を求めてきた。原告はこれに対し,①については,そもそも他団体に対する拠出には当たらないこと,②については,例えば交通費の領収書は,あて名,乗車区間,利用目的等を書いてもらえない場合が多いことを説明し,今後は善処すると回答した。 これに対し,被告大学は,更なる説明を求めるなどし,原告がこれに回答すると,さらに,原告の善処するとの回答が不明確であるので確約するようにと要求してきた。
しかしながら,交通費の購入に当たって,利用目的が記載された領収書を発行してもらうことが社会的に普遍性のある慣行であるとは考えられず,被告大学の質問の不当性は明らかであった。 (イ) 平成11年度会計報告について
原告の被告大学に対する平成11年度会計報告について,被告大学は,当初,①被告大学からの補助金以外の収入56万9814円の内容,②年度末3日間(3月29日から同月31日まで)に総支出の32パーセントを占める371万1322円が支出された理由,③現代文化研究会あて領収書が原告の会計に混入していた理由,④K株式会社及びL発行の領収書に事業所及び所在地が記載されていない理由並びにそれらの事業地及び所在地について,⑤原告名義の電話3回線について,3箇月分のみの支出計上の事情等の説明,⑥新入生歓迎特集号として発行された文化運動36号が同34号と比較して,支出が48パーセント多いことについての理由,⑦大量に購入している用紙,インク,切手,ベニヤ板,布等の用途等,の7点について疑義があるとして説明を求めていた。
これに対し,原告は,①については,文化運動の広告料収入及びカンパである旨資料提出をして説明し,②については,文化運動の新入生歓迎特集号の印刷代等及び新入生歓迎活動を十全に行うための必要資材の購入が年度末にやむを得ず集中するとの理由を述べ,③については,平成11年度の原告常任委員であり現代文化研究会の会員でもある学生が,原告の活動のために購入した書籍の領収書(2570円)発行の際にあて名を誤り,それを原告においても見落とした単純なミスであることを認め,今後の改善を確認し,④については,事業所名及び所在地が記載されていないのは領収書発行者の判断ないしミスであるが,これに気づかなかったという点で原告にも落ち度があり,今後は万全を期す旨表明し,⑤については,いずれもサークル員への連絡のため設置した臨時電話であり,その申請を被告大学に対し行わなかったのは,原告が被告大学に便宜供与を停止されているような状況で臨時電話を設置する許可が下りるものとは考えられなかったため申請しなかったものであると説明し,⑥については,原告加盟サークルの新入生歓迎活動への支援を強化するためにページ数を増やしたりカラーを入れたりしたため支出が増えたことを説明し,⑦については,用紙やインクは,原告の発行物やサークルの企画援助のために使用し,切手は文化運動等の郵送に使用し,ベニヤは立て看板やポスターを貼る台紙のために使用し,布は屋内企画での机の装飾やデモ等に参加する際の横断幕,ゼッケン等に使用していると説明した上で,現存しているものについては実物又は写しを提出した。このように原告は,被告大学から提起された疑義については,誠実に回答したのである。 被告大学は,原告の上記回答に対し,さらに疑義があると指摘してきたが,その内容は,原告の会計が他団体と一体化しているとか,領収書に事業所名及び所在地が記載されていないことの第一次的な責任を発行者にあるとしたことが責任転嫁であるとかの不当なものであったばかりか,当初の疑義とは関係のない論点を持ち出して原告を非難するなど,被告大学の態度は,真に原告の会計の誤りを是正することを目的としているとは考えられず,補助金支給を停止するための口実を作ろうとしているのではないかと疑わざるを得ないのである。 ウ 原告は実体のない加盟団体に補助金を支給していたわけではないこと 被告は,学生の手帖に紹介がなかったり,紹介事項に不備があったことをもって実体のない加盟団体であったと断定しているが,被告大学発行の学生の手帖に紹介がなかったり紹介事項に不備があったからといって必ずしもその団体の実体がないことにはならない。
現に,被告が実体のない団体として挙げるキリスト教共助会及び文章表現研究会は,いずれも平成8年度A祭に参加している。
また,被告大学が一方的に学生の会としての承認を取り消したからといって,直ちに当該団体が原告の構成員たる資格を失うものでもない。
エ まとめ
以上述べたように,被告大学は,本来,原告に対し,補助金を支給すべき義務があるにもかかわらず,原告の会計報告の些末な不備等を挙げつらい,殊更に補助金の支給を停止したのであり,かかる被告大学の態度は,教育的な観点からの指導によるものではなく,原告の活動の財政的基盤である補助金の支給を行わないで,原告の自治活動に介入し,これを破壊するための口実を策出する意図に出たものであり,強く非難されるべきであって,何ら補助金の支給を停止するべき合理的理由とはならないから速やかに補助金を原告に対して支給すべきものであるし,被告の補助金支給停止の措置は違法である。
(被告の主張)
ア 被告は,原告に対し補助金を支給すべき義務を負わないこと 原告は,B会規程22条,23条を根拠として被告大学に原告への補助金支給義務があると主張する。 しかしながら,まず,B会規程22条は,

本会の経費は,大学からの補助金,他からの寄附金,及び其の他の収入を以てこれにあてる。

と規定するのみであり,補助金の具体的金額や算定基準が規定されていない以上,当該条項が原告に対し補助金に関する具体的請求権を付与したものでないことは明らかである。また,B会規程23条は,単に

大学は,その予算の範囲内において,学生の文化活動を助成するために,本会に毎年度補助金を交付する。

と規定しているところ,その文言からも明らかなとおり,当該補助金交付の決定権限は,被告大学が有しており,被告大学がその交付金額を具体的に決定して初めて原告がB会本部費を受給する根拠が生じるものであるから,原告が,被告に対し,補助金の支給請求権を有するものではない。
そして,平成12年度及び平成13年度において,被告大学がB会本部費を支給しなかったのは,後記イにおいて述べるとおり,原告において,1000万円を超える極めて多額の補助金を受給しながら,その真実性に重大な疑義の存する会計報告を提出し,その後も疑義について合理的な説明を放棄する原告自身にその原因が存するものである。
被告大学の学校教育費の財源は,その多くを授業料,入学金等の学生生徒納付金の他,私立学校振興助成法に基づく国及び地方公共団体からの助成に負っている。そして,補助金の交付が被告大学の予算執行の一環である以上,被告大学自身がその予算執行について学校法人会計基準(昭和46年4月1日文部省令第18号)に従って,適正に行われなければならない義務を負っており,B会規程24条には,原告は,収支の予算及び決算について,被告大学の承認を得なければならないと定められているから,明らかに真実性に疑義のある会計報告を提出している原告に対し,1000万円を超えるような極めて多額の補助金を支給できないことは,いうまでもないことである。 イ 原告の会計報告が杜撰であったこと
原告が提出した平成10年度及び平成11年度の会計報告には,いずれも重大な疑義が存在し,これを看過することができなかったため,被告大学は,原告に対し,再三釈明を求めた。しかし,原告がこれに対し,合理的な説明を行わなかったため,被告大学は,平成12年度以降原告に対するB会本部費の支給を停止しているものである。 原告の会計報告に関する疑義は以下のとおりである。
(ア) 補助金及び繰越金の資金管理に関する重大な疑義 まず,第1の重大な疑義は,原告の会計報告によると,極めて多額のB会本部費や繰越金がすべて現金で管理されているという資金管理方法に関するものである。
被告大学が,平成11年11月8日,原告に対し振り込んだB会本部費1110万6600円は,同月17日に全額が引き出されており,また,平成11年度及び平成12年度と600万円を超える繰越費を計上しながら全く預金管理が行われている形跡がない。
このような多額の金員を現金で管理しているという極めて不自然な会計報告の真偽が問題となっているにもかかわらず,原告は,補助金の管理に関しては,原告常任委員会の責任において行っているものであり,被告大学が疑義を指摘すべき問題ではないなどとして,一切合理的な説明を拒んでいる。 (イ) 収入の虚偽申告
原告名義の銀行口座には,平成10年度において,合計150万円の振込入金があるにもかかわらず,平成10年度の会計報告では,広告収入として30万円を計上するのみであった。 これは明らかに意図的な虚偽申告であり,ここからも原告の会計報告の杜撰さが明らかとなるものである。 (ウ) 他団体の会計との混同一体化
原告の提出にかかる平成11年度会計報告に添付された領収書の中には,原告の加盟団体であり,独立の会計報告義務を負っている現代文化研究会あての領収書が混入しており,当該会計報告が極めて杜撰なものであることが明らかになった。
また,社会科学部自治会(いわゆる自治6団体として原告と共に情宣活動等を行ってきた団体である。)に
おいて,社会科学部自治会常任委員であり,B会加盟の社会科学研究会の幹事でもある学生がタクシー券を購入した際にあて名を勘違いしたとの回答をしたこともあり,このことは,原告の会計と社会科学部自治会の会計が明確に区別できていない事実を示唆するものである。
さらに,これとは別に,原告名義で購入された用紙が,A大学商学部自治会ないしA大学社会科学部理事会(「自治会の誤りだと思われる)」あてに配送されていたという事実もある。 これらの事実を考慮するならば,B会本部費の会計が,特定の団体や自治会(いわゆる自治6団体)の会計と混同一体化していたことは明らかである。
(エ) 購入物品の費消等に関する疑義
原告の平成11年度会計報告によれば,その総支出額の32パーセントが会計年度末のわずか3日間に費消されているが,これは不自然である。原告は,新入生歓迎活動のためと説明するが,上記3日間に購入されたリソグラフ消耗品は,インクが約60万枚相当の印刷が可能な量,マスター原紙は約2000枚の原稿分に相当する量と極めて膨大なものとなっており,真に新入生歓迎活動のためにこのような膨大な消耗品が消費されたとするのは,疑問である。 また,原告が平成11年度に購入したリソグラフ消耗品は,合計約100万円に上っているが,このうち,インクは約240万枚相当の印刷が可能な量,マスター原紙は約8000枚の原稿分に相当する量,用紙は約82万枚相当分と極めて膨大な量であるのに対し,原告から,同年度に作成された資料,ビラ等として提出されたもののうち,情宣用ビラと思料されるものは,わずか41種類にすぎない。
これらの事実を考慮するならば,果たして上記消耗品が原告のみの活動のために費消されたものであるかについて,疑問を持たざるを得ない。
さらに,原告は,会計報告において,サークルへの連絡のためとして,原告が事務所を有していた第一学生会館に隣接する被告大学構外の建物に設置された他人名義の臨時電話を3箇月間にわたって使用したと報告したが,当時,原告に加盟する学生の会は,そのほとんどが被告大学Mキャンパス構内に部室を有しており,その連絡にさほど困難を要するものではなかったはずであって,学外に設置した臨時電話の必要性にも疑問がある。 (オ) 会計処理における制度的欠陥
原告は,1000万円を大きく上回る多額のB会本部費を扱うにもかかわらず,その会計処理や内部監査に関する規則を有していないばかりか,会計報告が承認されたとするB会総会の議事録の提出さえ拒否しており,これらの制度的欠陥が杜撰な会計処理の原因となっているといわざるを得ない。 (カ) 実体のない原告加盟団体に対する補助金の配分
学生の会は,学生の会に関する規程によってその会計報告と継続願の提出を義務づけられているものであるが,大学紛争の全盛期である昭和44年7月に原告が一方的に学生の会に関する規程の撤廃を宣言して以来,上記学生の会の承認,継続手続は遵守されない状態に陥っていた。
そこで,被告大学は,平成10年以降,上記手続遵守の徹底を図ってきたが,その過程において,原告が全く実体のない一部の学生の会に対し,長年,補助金の配分を行っていたことが発覚した。 例えば,キリスト教共助会及び文章表現研究会は,昭和59年度以降10年以上にわたって,被告大学が発行する学生の手帖(被告大学が新入生向けに配布している冊子で,学生生活,大学組織等を紹介したもの)の学生の会紹介欄には,団体名のみが記載され,会長,幹事長,人数,連絡場所,活動紹介文等は一切掲載されておらず,また,再三の催促にもかかわらず,継続願を提出することもなかった。このため,被告大学は,これらの団体は既にその実体を失っていると判断し,キリスト教共助会について平成11年2月5日開催の学部長会で,文章表現研究会について平成12年5月10日開催の学部長会で,それぞれ学生の会としての承認を取り消した。 また,建設者同盟,コール・ムーゼ,珠算研究会,劇団自由舞台,人類学会,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,アジア・アフリカ問題研究会,中国・ロシア(ソ連)研究会,社会科学研究会,民主政治研究会,会計学会,農村問題研究会,部落問題研究会,文学研究会等についても,それぞれ昭和59年度以降10年以上にわたって学生の手帖の学生の会紹介欄に,会長,幹事長,人数,連絡場所,活動紹介文の全部あるいは一部が掲載されておらず,継続願を提出することもなかったため,平成11年2月5日開催の学部長会又は平成12年5月10日開催の学部長会で,それぞれ学生の会としての承認を取り消している。
しかるに,原告は,このように実体を失っていると判断される加盟団体に対し,自ら除名することをせず(B会規程27条参照),それどころか,多額の補助金を長年にわたって支給し続けてきたものであり,このような補助金の配分が妥当性を欠くことは明らかであって,もはや原告は,補助金を分配する資格を有さないものといわざるを得ない。 ウ まとめ
以上述べたとおり,そもそも被告大学が原告を始めとする学生団体に対して補助金を支給するか否かは,純粋に大学内部の自治の範囲に委ねられた問題であり,司法審査に適合する問題ではなく,支給しないことが違法となる余地もない。さらに,原告の会計には幾多の重大な疑義が存し,これに対して原告が合理的な説明をしなかった以上,原告へのB会本部費の支給を平成12年度以降停止している措置は正当なものである。 なお,平成11年度から平成13年度に至るまで,原告加盟団体は,実際に相当額の補助金を受給しているのであって,何ら原告加盟団体において財産的損害が生じた事実もない。 (5) 争点(5)(被告による原告加盟団体への補助金支給遅延が違法であるか)について (原告の主張)
被告大学は,平成11年度及び平成12年度の補助金について,原告非加盟団体に対する補助金は6月に支給したにもかかわらず,原告加盟団体に対する補助金の支給を7月末まで保留,遅延する差別的取扱いを行った。 また,平成13年度の補助金について,原告非加盟団体に対する補助金は同年6月に支給を決定したが,原告加盟団体への決定は同年10月であった。 これらの補助金について,原告及び原告加盟団体には受給権があり,被告大学には支給義務があるのであるから,被告大学においてこれらの権利義務を一方的に否定し,補助金支給を停止するには,相当の合理的な理由が存在しなければならないところ,既に,前記(4)(原告の主張)において論じたとおり,被告大学は,原告の会計報告におけるささいな瑕疵について,執拗に説明を求め,長期間にわたり補助金の支給を遷延させたものであって,以上の補助金支給遷延は,差別的取扱いとして違法と評価されるべきものである。 (被告の主張)
まず,平成11年度については,当時,原告加盟団体に対する補助金は,B会本部費を含めた形で被告大学がその総額を提示し,原告常任委員会がその配分案を作成し,被告大学がその配分案を承認して各加盟団体へ交付するという方法がとられていたが,原告加盟団体の中に,前年度の会計報告や継続願の提出を懈怠する学生の会があったため,被告大学の同年6月4日開催の学部長会において,当初の予定どおり原告加盟団体への補助金総額を決定することができなかったのであり,被告大学の加害行為といえるものは存在しない。 次に,平成12年度については,既に前記(4)(被告の主張)において論じたとおり,原告が提出した平成11年度会計報告に重大な疑義が存在したことから,被告大学は,当初予定された学部長会において,B会本部費の支給額,ひいては原告への補助金総額を決定することができなかったのであり,被告大学には何らの違法も存しない。 さらに,平成13年度についても同様に,B会本部費に係る会計報告の疑義が解消されなかったため,被告大学は,平成13年度補助金の配分手続に原告の関与を認めるか否かという点について慎重に検討を重ねざるを得なかったのであり,やはり被告大学には何らの違法も存しない。
以上のとおり,原告加盟団体に対する補助金の支給決定が遅れた点について,被告大学の違法は存在しな
い。
(6) 争点(6)(被告は,原告に対し,補助金の割り振りにつき,公開折衝をすべき義務を負うか)について (原告の主張)
ア 原告が主張する補助金公開折衝の権利とは,B会規程22条,23条に基づく大学に補助金を請求する権利や,同4条1項4号の大学からの補助金…の加盟団体に対する配分に関する事業を行う権利を前提とし,これを十全ならしめるため,遅くとも昭和45年からの長年の慣行から発生している,B会本部費及び各加盟団体への補助金総額の増額を中心とした諸要求の課題について,原告が,被告大学当局者に対して,公開の場で折衝を求め,一定の合意を求め得る慣行上の権利,ないしは少なくとも法的に保護された利益であり,B会規程に根拠を有する黙示の契約類似の権利(法的利益)である。 原告が被告に対し公開折衝権を有していることは,①遅くとも昭和45年から平成9年までの約30年間にわたり,②原告の要求により,③B会本部費及び各加盟団体への補助金総額の増額を中心とした諸要求(施設改善等)の課題について,④公開の場で,⑤原告常任委員会と被告大学の代表者(学生部長等)とが折衝を行い,⑥その交渉の場で,双方からの主張,応答,協議等の過程の後,一定の合意がされ,⑦その後,実際にそこで合意された内容が実現していたという実態からも裏付けられるものであった。現に,被告大学自身も,B会公開折衝が主として学生の会の補助金額を決定するために開催されることを認めている。
しかるに,被告大学は,平成9年6月27日に開催されたB会公開折衝の場を一方的に打ち切り,翌28日には次年度以降公開折衝を廃止すると告示し,これに応じていないのは違法というほかない。 イ 被告は,公開折衝は,被告大学が原告の希望ないし要望を聴取する機会以上の意味を有しないものであり,昭和40年代の激しい暴力的学生運動の存在といった背景の下,被告大学の自発的行為として実施されてきたにすぎないと主張する。
しかしながら,少なくとも昭和50年代以降は何ら激しい暴力的学生運動は存在していないこと,被告大学自身,昭和40年代後半ころより平成9年までの間,原告の申入れを受ける形で公開折衝が行われたことを認めていること,被告大学が平成8年度の公開折衝において,原告常任委員会と称する者たちが極めて不誠実な言動をとったとしているにもかかわらず,翌平成9年度の公開折衝に,主として『学生の会』の補助金額を決定するために開催されるものとの認識の下に応じていることなどの諸事実にかんがみれば,被告大学においても,原告の公開折衝を求める権利,すなわち被告大学の公開折衝に応じる義務を認めてきたといわざるを得ない。 被告は,原告が平成9年の公開折衝においてルールを破ったと非難するが,そもそも発言を求める学生の所属学部,学年,氏名等を明らかにするというのは被告大学が当日持ち出してきたものであり,原告としては学生の個人情報を守るため,これを拒絶せざるを得なかった。また,不規則発言や聞くに耐えない野次という点についても,公開折衝の被告大学の出席者も不規則発言をしたり,原告側参加者の名前を呼び捨てにしたりしていたのであるから,これに対して抗議の声を挙げることは不当ではない。
(被告の主張)
ア 被告大学の予算は,被告総長,各学部長,各研究科委員長等で構成される被告大学の評議員会がその決定権限を有しているところ,当該予算の範囲内で学生の会に対する補助金の交付金額が学部長会において決議され,これが理事会において承認され,執行されてきたものにすぎず,原告が,補助金について,被告大学に対し,公開折衝を求める権利など存在しない。
イ 原告は,B会規程4条1項4号により公開折衝の権利が認められていると主張するが,B会規程4条1項4号には,単に原告が行う事業の一つとして大学からの補助金又は寄附金の加盟団体に対する配分,及び他の団体に対する醵出があることが規定されているにすぎず(なお,原告は,自らの事業の一つである加盟団体に対する補助金の配分についてさえ,その都度被告大学の承認がなければ行うことができない。B会規程4条2項),何ら被告大学が補助金の総額を決定するに当たって,原告と交渉しなければならない義務など規定されてはいない。そればかりか,原告加盟団体に対する補助金の配分をどうするかという問題と,原告に対する補助金(B会本部費を含む)総額をいくらにするかという問題とは,別次元の問題として完全に区別されるのであって,B会規程4条1項4号の規定から,当然に補助金総額に関する公開折衝が導かれるものではない。このほかに,被告大学に,補助金について交渉義務を定めた規約も存在しない。
このように,被告大学が何ら公開折衝の義務を負うものではないことは,補助金の交付が,被告の評議員会が決定した予算の範囲内で学部長及び理事会の承認の下で行われる予算執行の一環にすぎないことの当然の帰結である。
ウ 確かに,昭和40年代後半ころより平成9年までの間,原告の申入れを受ける形で,被告大学と原告常任委員会との間で公開折衝が行われてきたことはあった。
しかし,補助金の具体的交付金額の決定権限は,被告大学にあるものであるから,この公開折衝は,被告大学と原告との合意を形成するための交渉の場ではなく,原告の希望ないし要望を聴取する機会以上の意味を有するものではなかった。
このように,被告大学には,公開折衝への出席義務がなかったにもかかわらず,平成9年度に至るまでこれが開催されてきた背景には,昭和40年代の激しい暴力的学生運動があったことはいうまでもない。上記の公開折衝は,このような背景の下,あくまでも被告大学の自発的行為として行われてきたものである。 エ ところで,被告大学は,平成8年度の公開折衝に出席するに際し,事前に,①公開折衝の場に被告大学の学生及び教職員以外の者の入場を禁止すること,②授業の妨害ないし近隣住民の迷惑となるので,校舎の外に向けスピーカーを流さないこと,③発言を妨害する野次を行わないことというルールを遵守することを条件としたが,当日これらのルールは守られず,およそ冷静な意見交換が行うことができなかったことから,被告大学担当者は公開折衝を打ち切った。
翌平成9年においても,原告から公開折衝の開催の要求があり,被告大学は,ルールが遵守されるのであれば学生の希望ないし要望を聴取する機会を設けることはやぶさかではないと考え,あらかじめ,上記①②に加えて,③不規則発言や他者の発言を威圧的に封殺する行為はしないこと,④意図的な遅延行為は慎み,開催時間を厳守することというルールを設けた上,同年度の公開折衝に出席した。しかし,これらのルールが遵守されなかったため,やはり公開折衝は打ち切りとした。
そして,2年度にわたって原告常任委員会と称する者たちが極めて不誠実な言動を行ったため,被告大学は,平成10年度以降,公開折衝には応じていない。
オ 以上のとおり,元来,被告大学は公開折衝に応じる義務など負っていないのであるから,平成10年以降これが開催されていないことは,何ら原告の権利を侵害するものではないし,原告が2年度にわたってルールを無視した極めて不誠実な態度をとり続けたことに原因があり,被告大学において違法性の生ずる余地はない。 なお,このような公開折衝開催の有無にかかわらず,被告大学は,平成10年度以降も原告に加盟する各学生の会に対して補助金を交付しており,原告加盟団体において何ら財産的損害,不利益は発生していない。また,被告大学は,単に公開折衝に応じていないというだけであって,他の方法によって各学生の会が補助金に関する要望,要請,陳情等を行うことは可能なのであるから,この意味でも,原告加盟団体において不利益は生じていないというべきである。
(7) 争点(7)(被告は,原告に対し,被告大学の施設,設備の貸与,利用について便宜供与をすべき義務を負うか,
また,別紙2物件目録記載の建物部分を使用させる義務を負うか)について (原告の主張)
ア 原告には便宜供与を受ける権利があること
被告大学は,昭和24年4月に制定したB会規程によって,原告に対し,①講演会,研究発表会等の開催,②加盟団体の主催する講演会,研究発表会その他の事業に対する支援,③他の大学の同種学生B会との連絡又は協力,④被告大学からの補助金又は寄付金の加盟団体に対する配分及び他の団体に対する拠出,⑤その他原告常任委員会において本会の目的達成のため必要と認める事項について,事業を行うことを認めた。 これらのB会規程は,原告と被告大学の合意に基づき,原告の運営に関する原告及び被告大学の権利義務関係を明文化したものであり,原告は,現在に至るまでの約50年間,長年の実績として多くの権限や権益を獲得してきた。
当然のことながら,上記の講演会や研究発表会を開催するためには,教室,講堂,机,椅子等の備品を被告が貸与し,原告及び原告加盟団体等学生側が利用することが不可欠となる。これらの便宜供与は,B会規程そのもの及びB会規程の趣旨に基づいた原告の長年の実績から,原告の権利,権益として認められてきたものなのであり,被告大学が,原告に対し,被告大学の施設,設備の貸与,利用についての便宜供与を停止したのは,原告の権利を侵害するものであって違法である。
被告は,施設管理権を有することを理由に原告に対する便宜供与は裁量の範囲内にあると主張するが,被告大学の裁量は,B会規程及びその趣旨並びに長年の運用実態に反しない限度で許されるにすぎず,原告に対する便宜供与の停止は,裁量の範囲を逸脱しており違法である。
イ 被告が主張する便宜供与中止の理由は不当であること
被告は,便宜供与を中止した理由として,①A祭実行委員会が得るはずであったA祭プログラムの広告収入をA大学新聞会へ横流ししたという不正行為のために第44回A祭を中止したこと,②被告が集会禁止の仮処分を得たにもかかわらず,A祭実行委員会がCフェスタを開催し,その開催に原告が主導的に関与したことを挙げ,原告の行為は,便宜供与を行うに値する信頼関係を破壊するものであり,それゆえに便宜供与を中止したと主張する。 しかしながら,まず,A祭実行委員会が得るはずであったA祭プログラムの広告収入をA大学新聞会へ横流ししたという事実は存在しない。すなわち,A大学新聞会は,平成7年7月ころ,担当者の発案により学生生活ガイドを発刊し,そこに企業から広く広告を募集することを決定した。そして,A大学新聞会は,学生生活ガイド がんばれ!A祭特別号を平成8年秋に出版したが,同号はA祭を応援するという趣旨であったことから,A祭実行委員会委員長から推薦文を得て,同年8月からの広告募集に際して利用した。
ところが,平成8年の第43回A祭終了後,同年11月26日のA祭委員会において,被告大学は,突如,A祭実行委員会がA大学新聞会という1サークルを利するために広告収入を意図的に横流ししたとの疑惑を主張し始めた。被告大学は,A大学新聞会が,A祭プログラムに掲載されるはずの,あるいはその可能性があった広告を上記学生生活ガイド がんばれ!A祭特別号に掲載させたと主張していたのであるが,A祭実行委員会のプログラムに一度広告を掲載したことがあるからといって,その広告主が再度翌年のプログラムに広告を掲載する保障はなく,学生生活ガイド がんばれ!A祭特別号に掲載の広告は,いずれもA大学新聞会の活動と努力によって獲得したものであって,A祭実行委員会からA大学新聞会へ広告の横流しがされたという事実は全く存在しない。したがって,この点が便宜供与中止を正当化する根拠とならないことは当然である。
また,Cフェスタ開催の点についても,いったんは開催が決定された第44回A祭について,原告加盟団体やその他の学生諸団体が,第44回A祭実行委員会を結成し,被告大学に諸施設の貸与を要求し,仮処分等による規制に対抗して,サークル活動の最大の発表の場である学園祭の開催を実現しようとした原告の活動は,ごく正当なことであり,被告大学から信頼関係を破壊したなどと非難されるいわれはない。 さらに,被告は,原告が,前学生部長と警視庁公安部の刑事との密会が公表された件について情宣活動を行ったことを非難し,これが便宜供与中止の継続の理由であるとする。しかし,前学生部長と警視庁公安部の刑事が密会したことは事実であり,このような学生自治活動にとって由々しき事態が公表されたことを受けて,原告が情宣活動を行うのは当然である。また,被告の責任者であるN総長や密会の当事者である前学生部長に釈明を要求したり討論会を呼びかけ出席を求めることも当然の行動であって,非難されるいわれはない。 加えて,被告は,いわゆる東大ポポロ事件最高裁判決を引用し,大学の自治の内容として施設及び学生の管理の自治が含まれるとするが,本件では,大学の自治などという憲法論を持ち出すまでもなく,便宜供与に関するB会規程の内容とその趣旨,そして長年の運用の実態を論ずれば足りるものであり,この観点からすれば,被告大学による便宜供与の中止は明らかに違法である。
なお,被告は,原告各加盟団体が個別に施設利用を申請する場合やB会総会の場合等,原告常任委員会の施設利用と区別される場合には施設利用を許可しており,原告又は原告各加盟団体において具体的損害は生じていないと主張するが,B会総会とは原告常任委員会が主催し開催する原告の総会であって,B会総会のために施設を利用させることは,原告の常任委員会の施設利用を認めることと同一であるのだから,被告大学は便宜供与を都合良く使い分け,被告大学からして便宜供与を認めるに不都合な場合はこれを拒否しているというのが実態である。 ウ 原告は,B会規程により,新学生会館内において部室を割り当てられる権利を有すること 原告は,被告大学の定めたB会規程に従って組織され運営されている被告大学公認の学生自治組織であり,

事務所をA大学内におく。

と定めるB会規程2条により,原告の事務所は,第1学生会館中2階に置かれていた。 ところが,被告大学は,東京都新宿区ab丁目c番d号に新学生会館を設置し,平成13年9月1日から被告大学の公認団体に対し,新学生会館の部室の割り当てをしたが,原告に対しては,部室の割り当てを拒否し,同年8月7日には第1学生会館を封鎖し,原告部室の使用を不可能にした。
B会規程2条が

事務所をA大学内におく。

と定めていることは,被告が原告に対し部室スペースを貸与(便宜供与)する義務を定めたものである。このことは,被告大学が,

A大学B会常任委員会に対し,以後,当大学の一切の施設を事務所または部室として使用することを禁じる。この限りにおいてA大学B会規程第2条は,その効力を失うものとする

と述べて,B会規程2条を,事務所または部室として使用する…限りにおいて失効させていることからも裏付けられるものである。なぜなら,同条に事務所又は部室としての使用(請求)権が含まれていないとすれば,同条を失効させる必要はないからである。
さらに,被告は,被告大学内における規則の制定権限は被告大学にあり,B会規程の最終的改廃権限が理事会にあることについても,被告大学校規57条,B会規程25条に規定されているとおりである旨主張するが,B会規程25条には明確に,本規則を改正するには,常任委員会において起草し,総会及び学部長会の議を経て理事会がこれを決定するとあり,原告の自主性が重んじられているのであって,被告大学が勝手にB会規程を改廃することはできない。
(被告の主張)
ア 原告には便宜供与を受ける権利が存在しないこと
およそ大学は,国公立であると私立であるとを問わず,学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究機関であって,その設置目的を達成するために必要な諸事項については,法令に格別の規定がない場合でも,学則等によりこれを規定し,実施することのできる自律的,包括的な権能を有しており(最判昭和52年3月15日民集31巻2号234頁),これによって在学する学生を規律する包括的権能を有している(最判昭和49年7月19日民集28巻5号790頁)。
さらに,いわゆる東大ポポロ事件最高裁判決(最判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁)は,大学における学問の自由を保障するために,伝統的に大学の自治が認められてきたとした上で,大学の自治について,特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ,大学の学長,教授その他の研究者が大学の自治的判断に基づいて選任される。また,大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ,これらについてある程度大学の自主的な秩序維持の権能が認められていると判示するとおり,大学の自治の内容としては,①学長,教授その他の研究者の人事の自治,②施設及び学生の管理の自治が含まれている。 以上のように,被告大学の施設,設備をいかなる者に貸与し利用させるかということは,正しく被告大学の施設管理権に基づく裁量の範囲内にある問題であり,当不当の問題は生じ得ても,違法性が問題となることはあり得ないのであって,原告の主張は明らかに失当である。
イ 被告が原告に対する便宜供与を中止したことには合理的な理由があること 被告大学が原告に対する施設利用等の便宜供与を中止したのは,下記のとおり,合理的な理由に基づくものであっておよそ違法性を帯びることはない。
平成8年11月に開催された第43回A祭に際し,A祭実行委員会が,A大学新聞会(当時は被告大学が公認する学生の会であった。)と共謀し,A祭実行委員会が得るはずであったA祭プログラムの広告収入をA大学新聞会に対して横流しするという不正行為に及んでいた事実が発覚した。そこで,被告大学は,平成9年8月1日開催の臨時学部長会において,平成9年度に開催予定であった第44回A祭の中止を決定した。 ところが,A祭実行委員会と称する者らは,同年10月31日及び翌11月1日の両日にわたって,単に被告大学のA祭中止決定に違背するのみならず,東京地方裁判所の発令にかかる,A祭実行委員会委員長ことOを債務者とする,平成9年10月30日から同年11月4日までの間,被告の所有の各土地上にステージ等の工作物を設置もしくは建築してはならず,または設置もしくは建築した右工作物を利用して,演奏会,講演会,発表会等の一切の集会を開いてはならないとの仮処分決定にも違反して,多数の学外者を動員して違法にもCフェスタなるイベントを強行した。そして,上記違法行為には,動員された多数の学外者と共に,原告常任委員会と称する者らが主導的に関与していた。 以上の経緯より,被告大学は,原告の上記行為は,施設利用等の便宜供与を行うに値する信頼関係を破壊するものであると判断し,平成10年2月6日開催の学部長会において,少なくとも同年7月31日までの間,原告に対し,施設,設備の貸与,利用の便宜供与を中止するとの決定を行った。 その後,同年5月20日,革マル派非公然活動家が被告大学の前学生部長宅の電話盗聴を行っていた電気通信事業法違反の容疑で指名手配され,これがマスコミに報道されたことがあったが,原告は,革マル派が発表した緊急声明と歩調を揃える形で,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたなどという虚偽の情宣活動を,被告大学の警告を無視して継続したばかりか,公開討論会と称して多数の学外者を構内に招き入れ,被告総長や当時の学生部長の講義を妨害するに及んだ。
これを受けて,被告大学は,原告の当該行為は施設利用等の便宜供与を行うに値する信頼関係を完全に破壊するものであると判断し,同年6月5日,原告に対する便宜供与の中止を同年8月1日以降も継続する旨決議したのである。
ウ なお,被告大学は,原告に対する施設利用等の便宜供与こそ中止しているものの,原告各加盟団体が個別に施設利用を申請する場合はもちろんのこと,B会総会等,原告の施設利用と区別される場合にも原告に対する施設利用を許可してきた。したがって,原告に対する便宜供与の停止により原告の各加盟団体又は原告において具体的損害は生じていない。
エ 原告は,新学生会館内において部室を割り当てられる権利を有さないこと 原告は,昭和40年代より第1学生会館が閉鎖されるまでの間,同会館中2階にB会常任委員会室という部室を置いていた。しかし,上記常任委員会室については,22時の閉館以後も一晩中電気が点灯したままであったり,明らかに被告大学籍を有しない者が頻繁に出入りしていたり,2度にわたって警察の家宅捜索を受けたりするなど,およそ被告大学の学生の文化及び厚生のために使用されていない疑義が存したため,被告大学は,原告に対し,これらの疑義に関する釈明を求めたが,原告からは,誠実な回答がなかった。これを受けて,被告大学は,既に原告に対して施設利用等の便宜供与を停止していること,原告がB会本部費にかかる会計報告に関する疑義を一向に解消しないことなども考慮し,平成13年7月6日,常任委員会室の使用を禁止し,その帰結として,新学生会館における原告への部室割り当ても行っていない。
被告大学の施設である学生会館に部室を割り当てるか否かは,被告大学に大学の自治として保障された施設管理権の裁量の範囲内にある問題であり,旧A大学学生会館規程3条によれば,学生部長において,学生会館の管理権限を有しており,原告に対する常任委員会室の使用禁止は学生部長の当該管理権限に基づくものであった(A大学学生会館等管理及び使用細則10条参照)。原告が部室割り当ての根拠として主張するB会規程2条は,単に

本会は,事務所をA大学内におく。

と定めるのみであって,何ら被告大学に対して,大学構内に原告部室を設置する義務を課すものではなく,新学生会館について具体的使用権限を定めるものでもない。原告において被告大学の施設,設備等の貸与及び利用が認められるとすれば,それは,被告大学がその許可ないし許諾を与えることの反射的効果にすぎない。
ところで,平成13年7月6日開催の被告大学理事会は,原告に対する常任委員会室の使用そのものを禁止することを決議し,併せて,その限りにおいてB会規程2条を失効させることをも決議した。被告大学における規則の制定権限は,被告にあるのであり,当該B会規程の最終的改廃権限が理事会に存することについても,被告大学校規57条,B会規程25条に定められているとおりである。
以上のとおり,原告は,新学生会館内において部室を割り当てられる権利を有していないし,被告大学は,原告に対して新学生会館内への部室割り当てを行ってないのは,施設管理権の裁量の範囲内にある問題であり,当不当の問題は生じ得ても,何ら違法性を帯びる問題ではない。
(8) 争点(8)(原告は,新入生歓迎活動において,出店場所を割り振る権利を有しているか,また,被告がその権利を侵害したか)について
(原告の主張)
前記(7)に述べたとおり,B会規程は,原告が加盟団体の主催する講演会,研究発表会その他の事業に対する支援を行うことを認め,また,その他常任委員会において本会の目的達成のため必要と認める事項について事業を行うことができる旨規定する。
原告加盟団体が,新入会員の獲得のため,新入生歓迎用の出店を行い,情宣活動をするのは,B会規程にいう加盟団体の事業にほかならない。そして,原告が被告から一括して机,椅子等を借り受け,出店場所を割り振るのは,原告が行う支援活動である。また,原告に加盟する各団体に,多くの新入会員を加入させることは,原告が目的とする被告大学における学生文化運動の発展のために原告自身にとっても重要な活動である。この意味で,原告が新入生歓迎活動に取り組むこと自体,上述した目的達成のため必要と認める事項に該当するものである。そして,これは被告大学も長年の間尊重してきた活動である。しかも,出店場所の割り振りは,原告加盟団体のそれぞれの活動状況を最もよく知り把握する原告が行うべき活動である。
以上のとおり,出店場所の割り振り権は,B会規程に根拠を持つものであり,かつ,長年の実績により被告大学によって権利性を認められてきた原告の権利であって,これを認めないとの被告大学の措置は,原告の権利を侵害する違法なものである。

ところで,被告は,原告加盟団体において新入生歓迎活動に支障及び不利益が生じている事実はないと主張するが,まず,原告加盟団体にとって,原告が被告大学より出店に必要な机,椅子等の備品を一括して借り受け出店場所に配置することは,利益であり,しかも,原告の長年の実績から,原告の加盟団体の出店場所は,他の原告非加盟団体等と比較して新入生の勧誘に格段に有利な場所が確保されていた。これに対し,被告大学が原告による机,椅子等の備品の一括借り受けを認めないため,原告加盟団体が自らそれらの貸与を受け,場所についても抽選手続により割り振られ,新入生歓迎活動にとって,不利益,不都合な場所が割り当てられる場合もあり得るのであるから,かかる被告の主張は誤りである。
(被告の主張)
平成9年度までの新入生歓迎活動における各種サークル団体の出店場所の割り振りは,従前の慣行により,原告加盟団体が出店するスペースと原告非加盟団体ないし各同好会が出店するスペースの大枠が定まっていたところ,毎年,原告加盟団体については,原告が一括して被告大学から机等を借り受け,その出店場所を割り振っていたのに対し,原告非加盟団体ないし各同好会については,直接個々に被告大学が机等を貸し出し,その出店場所を指定していたという経緯があった。ただし,原告による割り振りといっても,毎年同じ場所が指定されていたというのが実態である。
これに対し,平成10年度以降については,上記の原告加盟団体及び原告非加盟団体ごとの各スペースをおおむね踏襲し,かつ抽選手続を経る形で,被告大学が出店場所を指定している。なお,原告加盟団体及び原告非加盟団体の各スペースをおおむね踏襲することとしたのは,原告加盟団体及び原告非加盟団体双方の希望によるものである。
ところで,被告大学が原告に対する施設及び設備の貸与及び利用の便宜供与を中止した経緯は,前記(7)(被告の主張)のとおりであるが,この施設及び設備の貸与及び利用の中には,机,椅子等の貸与が含まれるのはもちろんのこと,出店場所の割り振りのように,キャンパス敷地の利用に直接的に関与することも当然に含まれるものである。
前記(7)(被告の主張)においても述べたとおり,被告大学が所有する土地,設備,備品等をいかなる者に貸与するかしないかは,大学の自治により被告大学に保障された裁量の範囲内にある問題である。したがって,そもそも原告において出店場所の割り振り権限などという法的保護利益は有しないし,平成10年度以降,被告大学が原告加盟団体の新入生歓迎活動に関する出店場所の割り振りを自ら行ってきたのは,原告に対して施設及び設備の貸与及び利用の便宜供与を中止していることの当然の帰結であって,何ら違法ではない。 なお,被告大学は,原告に加盟する各学生の会に対して新入生歓迎活動における出店を禁止したわけではなく,前年までの出店場所をおおむね踏襲する形で抽選手続を経て公平に割り振りを行っているのであって,何ら原告加盟団体において,新入生歓迎活動に支障,不利益が生じた事実もない。 (9)ア 争点(9)ア(本件記事が,原告の名誉を毀損するか)について (原告の主張)
被告は,学内広報誌Aウィークリー2001年4月12日号から,同年7月19日号までの紙上で,B会の存在意義を問う!とのメインタイトルの下,6回にわたって集中的に原告及び原告常任委員会を非難するキャンペーンを行うなどしてきた。
(ア) メインタイトル及びサブタイトルの名誉毀損性
上記キャンペーンのサブタイトルは,
第1回 B会本部費の支給停止について
第2回 B会常任委員会の理不尽な所業
第3回 B会はサークルを代表しているか
第4回 実態のないサークルにも補助金を配分
第5回 B会常任委員会室の使用状況について
第6回 B会常任委員会室の明け渡し要求
であった。
上記メインタイトル(B会の存在意義を問う!)及びサブタイトルを読んだ読者(学生)は,原告及びその執行部たる常任委員会に対し,大学当局からその存在意義を否定的に問われている団体であるとか,B会本部費が支給停止されるような団体である(第1回),原告常任委員会は理不尽な所業を行っている団体である(第2回),B会はサークルを代表していない団体である(第3回),B会は実体のないサークルにも補助金を配分しているような不正行為を行っている団体である(第4回),B会常任委員会室の使用状況に何か不正がある団体である(第5回),B会常任委員会室の明け渡しを要求されるような不当な団体である(第6回)などと否定的な印象を抱くことは明らかである。
(イ) 本文を含めた全体の名誉毀損性
a 本件第1回記事について
被告は,上記メインタイトル及びサブタイトルの下,B会常任委員会が行った1999年度会計報告に関する疑義が晴れなかった,(B会常任委員会から…)『再回答』があったが,全く見るべき内容の回答になっておらず,その後も,B会常任委員会からは何ら新たな回答はなかった,1.1999年度B会常任委員会の会計に関する疑義との項目の下,B会常任委員会はその都度,回答書を提出してきたが,回答が重なれば重なるほど,B会常任委員会が行ってきた会計に関する重大な疑義が存在することが明らかになった,2.B会常任委員会の会計上の責任という項目において…『B会本部費』と称して自らにも配分している,

B会の『加盟サークル』に対する補助金の配分についても疑問を呈せざるを得ない。それはこれまでB会常任委員会が,実体のないサークルに対しても補助金の配分を行ってきたという事実である

,補助金を実体のないサークルに垂れ流ししてきたB会常任委員会の責任は重い…,3.2001年度以降の『B会本部費』の支給停止に伴う問題点という項目において,B会常任委員会が昨年4月に行った1999年度『B会本部費』の会計に関する疑義が存在するなどと摘示した。 これは同紙の読者をして,原告は会計疑惑を抱えている団体であるなどの印象を抱かせるものである。 b 本件第2回記事について
被告は,上記メインタイトル及びサブタイトルの下,B会常任委員会に関わる1999年度の補助金…の会計報告に対する疑義が解消されなかった,B会常任委員会が学生の自治あるいは表現の自由を隠れ蓑に行ってきた理不尽な所業などと摘示し,末尾の資料の注釈においても1999年度B会本部費の会計報告に重大な疑義が指摘され,それが解消されないまま年度を越えたなどと摘示した。 これは,原告の会計に重大な疑惑があるだけではなく,原告が理不尽な所業を行っているとの印象を与えるものである。
また,被告は,1.B会常任委員会とはという項目において,ところでB会常任委員会を長年にわたって背後から支配してきた政治セクトがいる。それが革マル派(資料1参照)であることは,学内では周知の事実であったが,そのことを誰も公然と口に言い出せない状況が続いていた。それは『革マル』批判を口にした教職員ばかりか学生もが,彼らから陰湿な嫌がらせを受けたり,あるいは執拗に付きまとわれたり,さらには暴行を受けたりしたからである。大学はこうした暴力や嫌がらせに対し一貫して抗議してきたが,革マル派に操られた学生たちは,学生自治への介入とか思想・信条の自由を否定するものなどと見当違いの主張をするのが常である,3.A祭中止の原因を作った団体と同じ仲間のB会常任委員会との項目の下,A祭実行委員会を自称する学生たちは,臨時学部長会決定と,大学構内にステージを構築して演奏会などを行うことを禁じた東京地裁の仮処分命令を無視して,10月31日・11月1日の両日,学外の革マル派70~80人の助勢を恃んで『Cフェスタ』なるイベントを違法に強行した。そのイベントに主導的に参加したのがB会常任委員会である,大学は現在,革マル派に操られた学生たちの学内のルールを無視した行為を正し,学園の正常化に取り組んでいる。その過程で,B会常任委員会に対し,施設貸与の便宜供与を,また『B会本部費』の支給を中止した。B会常任委員会にはもはや自治団体としての機能を認められないと考えるからであるなどと摘示し,革マル派支配の構図なる図表により,革マル派が原告常任委員会を支配しているとの構図を掲載した。 これは,大衆的かつ民主的に選出されるべき原告常任委員会が,あたかも政治党派である革マル派の支配下にあるかのような否定的印象を与えるものである。
さらに,2.B会常任委員会によるB会加盟サークルの支配との項目の下,B会常任委員会がB会加盟サークルの支配に利用した一つに,大学からの補助金の配分がある。…B会常任委員会は,各サークルに対する配分額について合理的とはいい難い格差を設けている。が,その基準は明らかでない,

加盟サークルの支配のもう一つは,場所の割当である。…B会常任委員会は,サークルの出店の場所割を通じて加盟サークルを統制してきた

などと摘示した。
これは,原告常任委員会が,不正な手段で加盟サークルを支配しているかのような印象を与えるものである。
c 本件第3回記事及び本件第4回記事について
被告は,本件第3回記事において,上記メインタイトル及びサブタイトルの下,会計報告において,B会常任委員会の会計全体に関して多くの問題点が明らかになり…,1 実体のないB会加盟サークルにも補助金を配分との項目の下,大学からの補助金で問題があるのは,『B会本部費』だけではない,B会常任委員会はこれを行うことを怠って,実体がないサークルにも,数十年にわたって,大学からの補助金を配分してきたのである,2.B会はサークルを代表しているかとの項目を建て,さらに,3.警察によるB会常任委員会室の家宅捜索との項目の下,B会常任委員会は,本シリーズの第2回(本紙931号参照)でも説明したように,1997年10月31日と11月1日に,学外の革マル派70人ないし80人の助勢を恃んで強行された『Cフェスタ』なるイベントに主導的に参加している。さらに,1998年5月に,革マル派非公然活動家が本学前学生部長宅の電話盗聴容疑によって指名手配された際には,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたとする全く事実と反する情宣活動を行った。こうした不当な行為を繰り返し行った…,B会常任委員会はが革マル派の支配下にあることは疑いのないところであるB会常任委員会室は…異常な使われ方をしているなどと摘示した。 さらに,被告は,本件第4回記事において,やはり上記メインタイトル及びサブタイトルの下,1.実体のないB会加盟サークルを存続させるとの項目を建て,2項にもサブタイトルと同一の項目を建て,B会常任委員会は,1984,85年以降部室を使用しなくなった,すなわち実体が存在しなくなったキリスト教共助会,建設者同盟,コール・ムーゼ,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,民主政治学会,農村問題研究会,文章表現研究会,またB会常任委員会室気付となった劇団自由舞台,アジア・アフリカ問題研究会を含めて補助金を配分している。しかも,これら実体のないB会加盟サークルが,未受領の年度もあるが,B会常任委員会が発行した『B会サークル補助金配布書』を学生生活課に提出して補助金を受領しているなどと摘示した。 これは,原告常任委員会が実体のないサークルに不正に補助金を配分したかのような印象を与えるものである。
d 本件第5回記事について
被告は,上記メインタイトル及びサブタイトルの下,本シリーズで明らかにしてきたように,B会常任委員会の活動はこの目的から大きく逸脱してきており,とても『学生の文化活動を促進』する牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ないと摘示し,大学は,B会常任委員会に引き続き常任委員会室を使用させるべきか検討し直さなければならないと考えていると記載した上で,B会常任委員会室の使用状況についてと題する質問状を掲示し,その中で今日,B会,なかんずくその執行機関たるB会常任委員会の活動を見るに,上記目的を果たしているとは考えられない状況であると述べ,その理由と質問事項として,B会常任委員会は,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたなどとまったく事実に反する虚偽の情宣を行った,B会常任委員会の会計にまつわる疑義が解消されなかった,大学はB会の代表性についても疑問に思っている,上述のとおり,大学は,B会常任委員会の活動がB会規程に掲げられた目的から大きく逸脱し,もはや『A大学学生の文化活動』の牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない。大学はすでに,B会常任委員会に対し,いくつかの便宜供与を中止しているが,ここに至って引き続き常任委員会室を使用させることに懐疑的にならざるを得ないなどと摘示した。 これは,原告常任委員会が,その目的から大きく逸脱しており,また,あたかも常任委員会室等を不正に使用しているかのような印象を与えるものである。
なお,この末尾には上記質問に対する回答が,6月15日,B会常任委員会から学生部に届いたとしながら,その内容について一切紹介もしていないなど,その摘示方法も極めて不公正である。 e Aウィークリー2001年7月12日号について
被告は,連載第6回に先立つ上記Aウィークリー2001年7月12日号において,2001年度『学生の会』(B会加盟団体)に対する補助金についてと題する告示を掲載し,その中で,自らの会計処理すら満足にできないだけでなく,B会本来の目的から逸脱した活動をしているB会常任委員会などと摘示して,上記キャンペーンで指摘した事実を再度摘示した。
f 本件第6回記事について
被告は,上記メインタイトル及びサブタイトルの下,第1に,B会の執行機関である常任委員会の活動がB会規程の目的から大きく逸脱してきている,第2に,常任委員会が規程に則った活動をしていない,第3に,常任委員会室が警察の家宅捜索を受けるなど外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない,等々が明らかになったと摘示し,さらにB会常任委員会に対する同委員会室の明け渡し要求についてとの標題の下,B会常任委員会の活動を見るに,上記の目的を大きく逸脱してきていると認めざるを得ない,B会常任委員会は…B会に対する補助金の配分権(規程第4条第1項第4号)を濫用して実体がない加盟団体にまで配分していたことが明らかになった,B会常任委員会の会計は,大学からの補助金及び繰越金をどのように管理しているのか不明であり一千数百万円からの資金を扱っていた団体にも拘わらず会計処理規則や内部監査規則も存在しないばかりでなく,特定のサークルや自治会と会計が一体化している等々きわめて不明朗である。B会常任委員会室でこれら多額の資金を日常的に管理し出納しているとは到底考えられない。こうした事実を勘案した結果,もはやB会常任委員会が『A大学学生の文化活動を促進する担い手として,大学が積極的に支援するのに値する団体とは認められないと判断せざるを得ない」,B会常任委員会がA大学新聞会・自称A祭実行委員会と一体となっていることの証左であり,第一学生会館中2階のB会常任委員会室は,不法に占拠されている旧東洋美術陳列室と一体となった使われ方をしていると認めざるを得ない,

B会常任委員会室は…外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない。大学公認の団体としてあるまじきことである

などと摘示した。
これは,これまでのキャンペーンの総まとめとして,原告常任委員会がおよそ原告の執行機関として認められない存在と化しているかのような印象を与えるものである。
(ウ) 本件における特殊性

本件名誉毀損行為の特徴は,大学当局と学生(団体)という力の格差が著しい者の間の問題について,大学当局という圧倒的優位に立つ者が,その在籍する学生という読者に対して,一方的かつ連続的に非難キャンペーンを行ったところに存する。
したがって,単にAウィークリーの特定部分に名誉毀損の事実摘示が存し,それを被告大学と独立,対等,無関係な者が読んでどのような印象を受けるかという場合とは異なる特殊性を有するものである。 (エ) 謝罪の必要性
被告が,上記のとおりAウィークリー紙上において,虚偽の事実(上記(原告の主張)(イ)に述べたとおりである)を流布したため,原告は著しくその名誉を毀損された。これによる原告の損害を回復させるためには,被告に謝罪させる必要がある。
(被告の主張)
(ア) 本件各記事掲載以前に確立していた原告の客観的評価 被告がAウィークリー紙上に本件各記事を掲載する以前より,原告がいわゆる過激派の一つである革マル派と深い関係を有していること,すなわち,革マル派が原告をその支配下ないし指導下に置いていることは,革マル派の機関誌である解放の各記事に,革マル派の指導下にあるいわゆる自治6団体が被告大学と対立的闘争を継続していること,その自治6団体の中には原告が含まれることを掲載してきたことなどからも客観的に明らかであり,少なくとも被告大学の教職員及び学生には周知の事実であった。
また,原告が,いわゆる自治6団体の1つとして,被告等を攻撃する情宣活動を行い,被告大学教職員に対する不当な嫌がらせ行為に及ぶ団体であり,裁判所の仮処分命令に違背して違法にCフェスタを主導的に開催し,被告大学から便宜供与の停止を受けていたことは,被告大学学生にとって周知の事実であったし,B会本部費の使途が不明朗であること,原告加盟団体に対する補助金の配分基準が不明朗であることなども被告大学学生によって既に学内に広く指摘されていた。
さらに,原告は,2度にわたって常任委員会室の家宅捜索を受けたことがあるということも周知の事実であり,原告には,既にこれらの客観的評価が定着していた。
(イ) メインタイトル及びサブタイトルによる名誉毀損が成立しないこと 上記(ア)のような社会的評価が確立していた以上,本件各記事のメインタイトル及びサブタイトルは,何ら原告の社会的評価を低下させるものではない。
(ウ) 記事全体を含め,名誉毀損が成立しないこと
a 本件第1回及び第2記事について
前記(ア)の事実に照らすと,本件第1回及び第2回記事が原告の客観的社会的評価を殊更低下させるものではないことは明らかである。
b 本件第3回及び第4回記事について
原告常任委員会の補助金の配分については,既に平成9年当時から,被告大学学生らより,革マル派のダミーサークルに多くの補助金が流れ,それが革マル派の活動資金に転化しているとの指摘がされていたのであり,このような指摘によって確立されていた原告常任委員会の客観的社会的評価が,本件第3回及び第4回記事によって殊更に社会的評価が低下することはあり得ない。
d 本件第5回記事について
上記(ア)のとおり,原告常任委員会室は,ここ数年の間だけをとってみても2回にわたって警察の家宅捜索を受けており,その事実が革マル派によって自ら公表されていたことに照らせば,本件第5回記事は,何ら原告の客観的社会的評価を低下させるものではない。
e 本件第6回記事について
上記のような当時の原告に対する客観的社会的評価に照らせば,本件第6回記事が殊更にそれを低下させるものであるとはいえない。
イ 争点(9)イ(本件記事の掲載が,公共の利害に関する事実にかかり,専ら公益を図る目的に出た場合で,記事の内容が真実であるといえるか,また,真実であると信じるにつき相当の理由があるか)について (被告の主張)
(ア) 事実に公共性が存在すること
Aウィークリーは,被告大学に在籍する学生を対象にした学内広報紙であり,したがって,本件各記事に摘示された事実が公共性を有するか否かについては,被告大学学生の利害に関する事実か否かによって判断されるべきものである。
また,被告の学校教育費の財源は,授業料や入学金といった学生生徒納付金のほか,国や地方公共団体からの助成に負っており,予算の執行等に関しては各種の監督に服しているものであるから,原告らに対して交付される補助金は,いわば公金の性質を有するものである。
そうすると,本件各記事は,いずれもB会本部費及びそれを受給してきた原告の活動の問題点,原告による補助金の分配の問題点等を摘示したものであり,これらが被告大学学生の利害に関する事実であることは明らかである。
(イ) 目的に公益性が存在すること
被告大学は,本件各記事において,被告大学学生に対し,いわば公金の性質を有するB会本部費を受給してきた原告の活動実態を明らかにすることによって,正しくその存在意義を問いかけることを目的としていたものであり,その目的が公益性を有することは明らかである。
(ウ) 摘示事実が真実であること
a 本件第1回記事について
本件第1回記事のうち,メインタイトル及びサブタイトルは,そもそも原告の名誉を毀損するものではない。 また,本件第1回記事文中,B会常任委員会が行った1999年度会計報告に関する疑義が晴れなかったので,1.1999年B会常任委員会の会計に関する疑義,B会常任委員会はその都度,回答書を提出してきたが,回答が重なれば重なるほど,B会常任委員会が行ってきた会計に関する重大な疑義が存在することが明らかになった及びB会常任委員会が昨年4月に行った1999年度『B会本部費』の会計に関する疑義が存在するとの部分について,前記(6)(被告の主張)において既に述べたとおり,原告の提出にかかる平成11年度会計報告には重大な疑義が存したのであるから,上記記事は真実である。
さらに,

B会の『加盟サークル』に対する補助金の配分についても疑問を呈せざるを得ない。それはこれまでB会常任委員会が,実体のないサークルに対しても補助金の配分を行ってきたという事実である

及び補助金を実体のないサークルに垂れ流ししてきたB会常任委員会の責任との部分については,原告が実体のないサークルに対して補助金を配分してきたことは,後記dにおいて述べるとおりである。 b 本件第2回記事について
本件第2回記事のうち,メインタイトル及びサブタイトルは,そもそも原告の名誉を毀損せず,また,サブタイトルは,真実に基づく意見ないし論評である。
また,各記事についてみると,まず,B会常任委員会に関わる1999年度の補助金(以下「B会本部費という。)の会計報告に関する疑義が解消されなかった」との部分については,前記(4)(被告の主張)において述べたと
おり,原告の提出にかかる平成11年度会計報告に重大な疑義が存し,これが解消されなかったのであるから,真実である。
B会常任委員会が学生の自治あるいは表現の自由を隠れ蓑に行ってきた理不尽な所業との部分については,革マル派批判を口にした教職員が陰湿な嫌がらせを受けたり,執拗につきまとわれたりしてきたことが真実であることは,①A祭委員の教授を徹底追及するとの情宣ビラを配布し,同教授らに対するつきまとい行為に及んでいたこと,②実際に包囲行動と称するつるし上げ行為に及んでいたこと,③特定の教員の名誉を著しく毀損する情宣ビラを配布するとともに,特定の教員の名誉を毀損する週刊誌記事をわざわざ情宣ビラに掲載してこれを配布したこと,④被告大学総長を繰り返し多数の者で取り囲むなどの嫌がらせ行為に及んだこと,⑤被告大学教員に対するつきまといや取り囲み行為は,当該教員の講義の場まで及んでいたことなどの事実に照らすと明らかであり,原告は,被告大学教員に対するつきまといないし嫌がらせを煽動する情宣ビラにおいて,学生自治,思想信条の自由等を建前とする主張を行ってきたものである。さらに,原告が,被告大学の決定及び裁判所の仮処分命令にも違背して違法に開催されたCフェスタなるイベントに主導的に関与したことが真実であることも明らかであり,このことは,革マル派の機関誌解放にも掲載されているところである。このような事実関係に基づき,これをB会常任委員会が学生の自治あるいは表現の自由を隠れ蓑に行ってきた理不尽な所業と表現することは,その重要な部分が真実であることを前提に行われた意見ないし論評であるといえる。
ところでB会常任委員会を長年にわたって背後から支配してきた政治セクトがいる。それが革マル派(資料1参照)であることは学内では周知の事実であったが,そのことを誰も公然と口に言い出せない状況が続いていた。それは『革マル』批判を口にした教職員ばかりか学生もが,彼らから陰湿な嫌がらせを受けたり,あるいは執拗に付きまとわれたり,さらには暴行を受けたりしたからである。大学は,こうした暴力や嫌がらせに対し,一貫して抗議してきたが,革マル派に操られた学生たちは,学生自治への介入とか思想・信条の自由を否定するものなどと見当違いの主張をするのが常であるとの部分については,まず,原告が革マル派ないしその傘下組織であるマル学同若しくは全学連(なお,その詳しい定義は後記第3の9(1)ウのとおりである。)の傘下にあり,その組織下,支配下にあることは,革マル派の機関誌解放の各記事から明らかである。過去に,原告がこれら解放の記事に対して抗議,異議を唱えた事実がないことに照らせば,上記の事実が原告自身も認める真実であることは明らかである。また,革マル派批判を口にした教職員らが嫌がらせなどを受け,その際,原告らが学生自治思想・信条を持ち出してきたことも上記のとおりである。なお,このような嫌がらせは,現学生部長であるP教授に対しても行われてきたところである。さらに,革マル派批判を口にした一部の学生が様々な嫌がらせ被害に遭ってきたことは,A大学法学部学生自治会の発行にかかる冊子等に記載されているとおりである。
2.B会常任委員会によるB会加盟サークルの支配との部分については,支配という言葉の意味からして,原告の名誉を毀損するものとは考えられない。
B会常任委員会がB会加盟サークルの支配に利用した一つに,大学からの補助金の配分があるとの部分については,これは,原告が,加盟団体に対する補助金の分配手続を通じて,各加盟団体を統治ないし統制してきたことを端的に表現したものにすぎず,何ら原告の名誉を毀損する表現ではない。

B会常任委員会は,各サークルに対する配分額について合理的とはいい難い格差を設けている。が,その基準は明らかではない

との部分については,原告は,平成12年度まで加盟団体に対する補助金の配分手続に関与してきたものであるが,その配分額については,平成元年から平成8年までを検討すると,最大配分団体と最小配分団体との間に,2倍ないし3.6倍程度の支給額の格差が存在したと認められる。しかし,これらの差を合理的に基礎付ける客観的基準(たとえば,構成人数の比率等)はなく,特に,A祭の広告収入の横流しに関与し,いわゆる自治6団体と渾然一体となって活動してきたA大学新聞会に対する配分比率が継続して格段と高くされてきた事実に照らせば,本件第2回記事の上記表現は,その重要な部分について真実であることを前提に行われた意見ないし論評であるということができる。
加盟サークル支配のもう一つは,場所の割当であるとの部分については,平成9年度までの間,原告は,新入生歓迎活動における加盟団体の出店場所の割り振りを行っていたところ,これを支配と表現しても,原告の名誉を毀損するものではない。
B会常任委員会は,サークルの出店の場所割を通じて加盟サークルを統制してきたとの部分については,上記のとおり,これは真実であり,また,これを統制と表現しても,原告の名誉を毀損するものではない。 A祭実行委員会を自称する学生たちは,臨時学部長会決定と大学構内にステージを構築して演奏会を行うことを禁じた東京地裁の仮処分命令を無視して,10月31日・11月1日の両日,学外の革マル派70人~80人の助勢を恃んで『Cフェスタ』なるイベントを違法にも強行した。そのイベントに主導的に参加したのがB会常任委員会であるとの部分については,これが事実であることは前記(7)(被告の主張)のとおりであり,革マル派の機関誌解放にも掲載されている事実である。
大学は現在,革マル派に操られた学生たちの学内ルールを無視した行為を正し,学園の正常化に取り組んでいる。その過程でB会常任委員会に対し,施設貸与の便宜供与を,また『B会本部費』の支給を中止した。B会常任委員会はもはや自治団体としての機能を認められないと考えるからであるとの部分のうち,革マル派に操られたとの表現が真実に基づく意見ないし論評であることは上記のとおりであり,B会常任委員会にはもはや自治団体としての機能を認められないという表現も,これまで述べたような原告の活動実態に基づいてされたものであって,被告大学としての適正な意見ないし論評といえるものである。
革マル派支配の構図との表題に基づく図表部分及び1999年度B会本部費の会計報告に重大な疑義が指摘され,それが解消されないまま年度を超えたとの部分についても,これが真実であることは既に述べたとおりである。
c 本件第3回記事について
本件第3回記事のうち,メインタイトルは,そもそも原告の名誉を毀損せず,また,サブタイトルは,重要な部分が真実であることを前提に行われた意見ないし論評である。
1 実体のないB会加盟サークルにも補助金を配分,大学からの補助金で問題があるのは,『B会本部費』だけではない,B会常任委員会はこれを行うことを怠って,実体がないサークルにも数十年にわたって,大学からの補助金を配分してきたのであるとの部分については,これが真実であることは,後記dにおいて述べるとおりである。 2 B会はサークルを代表しているかとの部分については,これまで述べた事実に基づき,原告が真に加盟団体を代表し,B会規程所定の目的に沿った行動をしているかという問題を読者に問いかけるためにされた表現にすぎない。
B会常任委員会は,本シリーズの第2回(本紙931号参照)でも説明したように,1997年10月31日と11月1日に,学外の革マル派70人ないし80人の助勢を恃んで強行された『Cフェスタ』なるイベントに主導的に参加している,さらに,1998年5月に,革マル派非公然活動家が本学前学生部長宅の電話盗聴容疑によって指名手配された際には,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたとする全く事実に反する情宣活動を行った,こうして不当な行為を繰り返し行った,上述のことからもわかるとおり,B会常任委員会が革マル派の支配下にあることは疑いのないところであるとの各部分については,これが真実であることは前記(7)(被告の主張)において述べたところに加え,上記の内容の情宣ビラが存在していることからしても,明らかである。 B会常任委員会室は,…異常な使われ方をしているとの部分については,第一学生会館が午後10時に閉館した後も,一晩中こうこうと電気がついているとの事実を前提に行われた被告大学の意見ないし論評であり,第一学生会館閉館後も,毎日一晩中原告常任委員会室の電気がついていたこと自体は真実である。 d 本件第4回記事について
本件第4回記事のうち,メインタイトルは,そもそも原告の名誉を毀損せず,また,サブタイトルが真実であることは,後述のとおりである。
1.実体のないB会加盟サークルを存続させるとの部分については,まず,B会規程27条1項が本会の加盟団体は,常任委員会において毎年10月にこれを審査し,その結果会員の著しい減少,その活動の停止又は不活発のため,引き続いて本会に加入させることが適当でないと認められるときは,総会の決議によってこれを除名することができる。と規定し,同条2項は,

前項の審査の結果は,大学にこれを報告しなければならない。

と規定しているところ,平成11年から平成12年にかけて学生の会としての承認が取り消された団体のうち,昭和59年ないし昭和60年以降,学生の手帖に部室を掲載しなくなったか,これをB会気付と掲載するようになり,その活動実態がなくなった合計11団体に対し,原告が,B会規程27条に基づく上記除名手続を経なかったことは事実である。上記記事は,このような事実関係を踏まえてされた表現であって,その重要な部分につき真実であることは明らかである。 2.実体のないB会加盟サークルにも補助金を配分,B会常任委員会は,1984,85年以降部室を使用しなくなった,すなわち実体が存在しなくなったキリスト教互助会,建設者同盟,コール・ムーゼ,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,民主政治学会,農村問題研究会,文章表現研究会,またB会常任委員会室気付となった劇団自由舞台,アジア・アフリカ問題研究会を含めて補助金を配分している。しかもこれら実体のないB会加盟サークルが,未受領の年度もあるが,B会常任委員会が発行した『B会サークル補助金配布書』を学生生活課に提出して補助金を受領しているのであるとの各部分については,これらが真実であることは,学生の手帖の記載及び補助金の配分実績に照らして明らかである。なお,当該各団体の公認を取り消した際,被告大学が当該各団体から異議を唱えられた事実は一切ないが,これも当該各団体が実体を有していなかったことの証左である。 e 本件第5回記事について
本件第5回記事のうち,メインタイトル及びサブタイトルは,そもそも原告の名誉を毀損するものではない。 B会常任委員会は,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたなどとまったく事実に反する虚偽の情宣を行ったため及びB会常任委員会の会計にまつわる疑義が解消されなかったとの各部分については,これらが真実であることは前記(4),(7)(被告の主張)において述べたとおりであり,本シリーズで明らかにしてきたように,B会常任委員会の活動はこの目的から大きく逸脱してきており,とても『学生の文化活動を促進』する牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない,B会,なかんずくその執行機関たるB会常任委員会の活動を見るに,上記目的を果たしているとは考えられない状況である,大学はB会の代表性についても疑問に思っている,上述のとおり,大学は,B会常任委員会の活動がB会規程に掲げられた目的から大きく逸脱し,もはや『A大学学生の文化活動』の牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない及び大学はすでに,B会常任委員会に対しいくつかの便宜供与を中止しているが,ここに至って引き続き常任委員会室を使用させることに懐疑的にならざるを得ないの各部分については,これまで述べたような原告の活動実態を前提に,被告大学としての意見ないし論評を述べたものにすぎない。
f Aウィークリー2001年7月12日号について
上記記事における,自らの会計処理すら満足にできないだけでなく,B会本来の目的から逸脱した活動をしているB会常任委員会との表現については,これまで述べたような原告の活動実態を前提に,被告大学としての意見ないし論評を述べたものにすぎない。
g 本件第6回記事について
本件第6回記事のうち,メインタイトル,サブタイトル及び記事文中のB会常任委員会に対する同委員会室の明け渡し要求についてとの部分は,そもそも原告の名誉を毀損するものではない。 第3に,常任委員会室が警察の家宅捜索を受けるなど外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない,B会常任委員会は,…B会に対する補助金の配分権(規程第4条1項第4号)を濫用して実体がない加盟団体にまで配分していたことが明らかになったとの各部分について,これらが真実であることは既に述べたとおりである。 第1に,B会の執行機関である常任委員会の活動が,B会規程の目的から大きく逸脱してきている,第2に,常任委員会が規程に則った活動をしていない,B会常任委員会の活動を見るに,上記の目的を大きく逸脱してきていると認めざるを得ない,こうした事実を勘案した結果,もはやB会常任委員会が『A大学学生の文化活動を促進』する担い手として,大学が積極的に支援するのに値する団体とは認められないと判断せざるを得ないとの各部分については,これまで述べたような原告の活動実態を前提に,被告大学としての意見ないし論評を述べたものにすぎない。
B会常任委員会の会計は,大学からの補助金及び繰越金をどのように管理しているのか不明であり一千数百万円からの資金を扱っていた団体にも拘わらず会計処理規則や内部監査規則も存在しないばかりでなく,特定のサークルや自治会と会計が一体化している等々きわめて不明朗である。B会常任委員会でこれらの多額の資金を日常的に管理し出納しているとは到底考えられないとの部分については,これまで述べたところに照らし,重要な部分が真実であることを前提にされた,やはり被告大学の意見ないし論評である。 B会常任委員会がA大学新聞会・自称A祭実行委員会と一体となっていることの証左であり,第一学生会館中2階のB会常任委員会室は,不法に占拠されている旧東洋美術陳列室と一体となった使われ方をしていると認めざるを得ないとの部分については,第一学生会館の閉館後である午後10時を過ぎても,原告常任委員が,A大学新聞会ないし自称A祭実行委員会との活動と称して同会館内に滞留している事実に基づいて表明された被告大学の意見ないし論評である。

B会常任委員会室は,…外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない。大学公認の団体としてあるまじきことである

との部分については,革マル派の機関誌解放の記事や原告常任委員会室が2度にわたって警察の家宅捜索を受けている事実を前提にされた被告大学の意見ないし論評である。 (原告の主張)
(ア) 目的の公益性が存在しないこと
被告は,被告大学学生に対し,いわば公金の性質を有するB会本部費を受給してきた原告の活動実態を明らかにすることによって,その存在意義を問いかけることを目的としていたと主張するが,原告の存在意義を問いかけることを目的としていたのであれば,高等教育機関である被告大学においてはその前提として教育目的が必要であると考えられるところ,被告の指摘は,原告及び原告常任委員会のあら探し,揚げ足取りのようなものばかりであって,何ら教育的,指導的配慮はうかがえない。また,原告は,N前総長のA大改革に対する疑惑や問題性を追及するなどしていたところ,N前総長ら被告大学執行部は,このような強力なサークル自治団体の存在を嫌悪し,非をあげつらって求心力をそぎ,その存在を有名無実化するために今回のキャンペーンを行ったといわざるを得ないから,本件各記事に公益目的は認められない。
(イ) 摘示事実が真実ではないこと
a 原告は革マル派に支配されておらず,民主的に組織され運営されていること 原告は,毎年度,その前年度の後期総会で常任委員を学術部門,芸能部門及び宗教部門から民主的な選挙により選出して執行部(常任委員会)を構成し,また,予算の決議,決算の承認を行ってきている。また,前期,後
期の各総会では,向こう半年間の方針を活発な論議の上決定し,常任委員会を中心として,加盟団体の総意を結集した上で可決した方針に基づいて,毎年4月の新歓期,秋の発表会等の活動を行い,常に被告大学の自主的かつ創造的な文化サークル運動を守り発展させるために努力してきた。このように原告は,自主的かつ民主的に常任委員を選出し,予算の議決,決算の承認を行い,活動方針を決定して,被告大学の学生文化運動を守り,発展させるために活動してきたものであって,決して革マル派に支配されているという事実はない。 さらに,被告大学学生や教職員の中にも,原告に対し信頼感を抱き,あるいは原告を反社会的集団と決めつけて排除する被告大学の態度を批判する者が少なからず存在するのであって,被告が主張するように,原告とは,革マル派の支配下にある団体であるとの評価が確立していたとは到底いえない。 b 本件各記事について
まず,本件第2回記事において,被告は,教員に対する付きまといないし嫌がらせを扇動する情宣ビラにおいて,原告常任委員会が『学生自治』『思想信条の自由』などを建前とする主張を行ってきたこともまた,否定しようのない事実であると主張するが,原告が,被告大学当局による既得権剥奪に対して,自治破壊であるとして抗議することが学生自治を建前とする主張として否定されなければならないいわれはない。 また,被告は,P学生部長は,学生部長に就任した平成10年2月以降も,深夜早朝にわたって繰り返し自宅に無言電話がかかって来るという嫌がらせ被害にも遭ってきたのであるなどと,正体不明の電話までも,あたかも原告が関与しているかのように主張しており,妥当でない。
さらに,被告は,補助金の配分実績の差異について,構成人数の比率等,合理的に基礎付ける客観的基準がない旨主張する。しかし,原告加盟団体の必要経費は,決して構成人数に比例するものではない。新聞発行サークルは経費が多額に上ること,研究系サークルは人数が多いほど相対的に経費がかからなくなることは自明の理であり,このような諸条件を考慮して原告内の話し合いにより配分額を決定してきた結果が被告指摘の格差なのであって,その結果,常任委員を選出している原告加盟団体が基準額より少ない配分となっていることもあるのである。このような原告内の自治的な助け合いは,合理的な根拠を有するものである。 次に,本件第3回及び第4回記事において,被告は,B会常任委員会は,…実態がないサークルにも,数十年にわたって,大学からの補助金を配分してきたのであるなどと指摘しており,その根拠として,昭和59年ないし60年ころから学生の手帖に部室を掲載しなくなったこと,あるいはこれをB会気付と掲載するようになったことを挙げて,その活動実態がなくなったと断定しているが,そのような推認自体必ずしも成り立つものではなく,仮にそれを前提としても数十年にわたってとはいえない。
また,被告は,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたとする全く事実と反する情宣活動を行ったと指摘するが,公安警察と密会した事実はあるのであり,原告は,これを大学自治の観点から問題であると指摘したのである。
さらに,被告は,毎日,建物の閉館後も一晩中原告常任委員会室の電気がついていたのは事実であるなどと主張するが,実際は,当該部屋に電気スイッチ自体がなかったのである。 その他,本件各記事についての被告の主張は,いずれも理由がなく,本件各記事が真実ではないことは,前記(4),(7)(原告の主張)のとおりである。
(10) 争点(10)(被告は,D教授を通じて,Eに対し,原告からの脱退を指示したか,また,それが違法であるか)について
(原告の主張)
ア D教授による脱退慫慂の内容
平成13年6月6日,D教授は,新学生会館の部室を使用するための申請の件で電話をしたEに対し,Eが当時幹事長を務めていた社会思想研究会について,原告から脱退するようにそそのかし,その際,あたかも原告が加盟団体の補助金を横領しているかのように述べ,原告への不信感をあおり,また,原告に加入していると不利益を被るかのようにも示唆した。
さらに,翌7日,D教授は,研究室を訪れたEに対し,9学部の教務主任による教務主任会で原告からの脱退を指導するようになったこと,補助金は直接学生の会に支払われることになるから不利益はないこと,原告に加盟していると色眼鏡で見られることなどを述べ,執拗に原告から脱退するようにそそのかした上,実際には教務主任から指示されているが自分の責任で発言したことにしてほしいこと,任意に脱退した形にしてほしいことなども述べ,口止めまで行った。
なお,D教授の発言の録音については,Eは,何ら違法な手段及び態様で録音したものではないし,録音の過程で欺罔や脅迫といった違法性をうかがわせる態度もとっていない。したがって,本件の録音は違法ではない。 イ 上記脱退慫慂が被告の意思に基づくこと
D教授は,補助金が原告による配分を経ずに直接支給されることになること,被告大学人間科学部教務副主任Q助教授からの要請に基づき脱退を指導していること,被告大学の教務からも脱退指導を要請されたこと,9学部の教務主任による教務主任会で原告からの脱退を指導するようになったこと,自らも被告大学当局の立場に立って行動していることなどを言明した上,教務の名は出さず自分の責任で発言したことにしてほしい,任意に脱退した形にしてほしいなどと口止め行為に出たのであり,これらの言動からすれば,D教授が被告大学の意思に基づき脱退慫慂を行ったのは明らかである。Eの自治会活動等について,被告大学の教務等は例外なく知っているから,Eに対し,被告大学がD教授を通じて脱退を働きかけることは考えられないという被告の主張は,責任回避のためのごまかしにすぎない。
また,D教授の本件脱退慫慂は,社会思想研究会の会長としての立場から行われたものである以上,被告はその行為について責任を負うというべきである。
ウ 上記脱退慫慂の違法性
原告においては,被告との関係において結社の自由が保障されるべきものであるところ,被告大学が,原告加盟団体に対し補助金の支給を遅延させ,原告への新学生会館部室の割り当てを拒否し,学生の会に関する規程の一方的かつ厳格な適用を開始するなどの状況下において,D教授は,原告が革マル派に支配され,金員を横領しているなどと述べ,社会思想研究会も原告に加盟している以上は補助金等に関し不利益を受ける可能性がある一方,原告を脱退すれば有利な取扱いを受けられる旨示唆し,原告加盟団体の学生に大きな動揺を与えた。かかる脱退慫慂が,原告と原告加盟団体との間の離反を謀り,原告の弱体化を企図し,ひいては原告の結社の自由ないし団結権を侵害する違法なものであったことは明白である。
被告は,D教授の発言につき,①学生の会の会長としての立場から意見表明を行ったものであり違法ではない,②社会思想研究会の一構成員として意見を表明したものでありこのような意見表明の自由はD教授に対しても保障されているなどと主張するが,失当である。すなわち,①学生の会の会長は,単なる形式的な存在であって,学生の会運営等について介入することができるものではなく,②仮に加盟団体の会長職にある教職員が,原告について一定の考えを有していたとしても,その地位を利用して直接的言辞や利益誘導的言辞をもって原告からの脱退をそそのかすことは正当な言論活動や指導活動とはいえず,許されないものである。 エ 差止めの必要性
上記のとおり,D教授の脱退慫慂行為は,被告大学の意向を受けて,学生の会の会長であるという立場を利用して行われたものであり,これまでの被告大学における原告敵視の姿勢からしても,これは氷山の一角であり,このよう
な事態を放置すれば,今後も同様の違法な行為が繰り返される現実的なおそれがあるから,被告大学教職員による原告加盟団体のサークル員に対する原告からの脱退慫慂行為を禁止する必要がある。 オ 謝罪の必要性
上記のとおり,被告は原告の結社の自由を侵害したのであり,これによる原告の損害回復のためには,被告に謝罪させる必要がある。
(被告の主張)
ア D教授の発言はEに誘導されたものであること
平成13年6月6日におけるD教授の発言は,EからD教授へ電話がかけられた際に行われたものであり,かつ,Eは意図的にD教授の発言を誘導していた。
また,翌7日におけるD教授の発言も,EがD教授の研究室を訪問した際に行われた会話であり,しかも,Eは,社会思想研究会の会長であるD教授に対してあたかも相談を持ちかけるような態度をとる一方で,被告大学人間科学部学生担当教務主任ないし副主任を務める教授らとの接触を図ろうとしていた。 加えて,Eは,D教授の発言にその場で反論等をすることも当然可能であったはずであるのに,それをせず,あらかじめ周到に録音機材を準備した上で面会約束を取り付け,D教授の発言を誘導し,録音したものであって,かかる行為は違法というべきである。
さらに,上記2回の発言以降,D教授がEに接触した事実はない。 イ D教授の発言は被告の意思に基づくものではないこと
当時,D教授は,Eが,原告と連動して一体となり被告大学の方針を批判する情宣活動を行い,かつ,被告に対して民事訴訟を提起するなどしていたA大学商学部自治会と称する者らの委員長に就任していた事実を全く知らなかった。
これに対し,過去においてA大学商学部自治会と称する者らが提起した民事訴訟の被告という立場に置かれた(本件)被告は,学生部長はもとより,各学部の学生担当教務主任及び副主任を務める教授らも例外なく,A大学商学部自治会を称する者らの活動傾向及びEが同会の委員長に就任していることを知っていた。 したがって,そのようなEに対し,被告大学学生部又は各学部の教務主任ないし副主任を務める教授らが,D教授を通じて,原告からの脱退を働きかけることはあり得ない。なぜならば,そのようなことを行った場合,無用な紛争を招くことが明らかだからである。
確かに,D教授は,あたかも人間科学部の学生担当から一定の指導があったかのようにも受け取れる発言をしているが,そのような指導要請が存した事実はない。D教授の発言は,D教授が,個人的にも仲の良い被告大学人間科学部学生担当教務副主任のQ助教授らから,立ち話的な雑談の中で,被告大学学生部において原告の実態が問題となっていることや,そこで原告に加盟する学生の会に対する補助金の交付時期や交付方法が議論されていることを聞き,それをEに伝えたものにすぎず,その真意は,学生部や学生担当教務主任会においても原告常任委員会のゆゆしき実態が議論されているという事実を伝え,原告への加盟を継続するか脱退するかの判断の一助にしてもらおうというものであった。
ウ D教授の発言に違法性はないこと
D教授において,原告の実態につき,いかなる意見を持ち,いかなる発言をするかについては,その自由が保障されている。まして,D教授は,社会思想研究会の会長として,会の活動を統括し,大学に対してその監督の責を負っていた。
この点,被告大学は,原告が,大量の学外者を動員して不誠実な補助金折衝を行ったり,被告大学の決定及び裁判所の仮処分命令にも違反して違法に開催されたCフェスタなるイベントに主導的に関与したり,1000万円を大きく上回るB会本部費を受給しながら虚偽の会計報告を提出してきたことなどを問題として原告の存在意義を問題としてきたものであり,D教授は,このような原告の実態にかんがみ,その言動に疑問を抱いて,社会思想研究会の会長として立場から,原告からの脱退に関して意見あるいは希望の表明を行ったにすぎない。また,D教授は,社会思想研究会が原告から脱退しなければ会長を辞任するとか,申請書や登録書に押印しないとかと発言したこともなく,上記のような意見あるいは希望の表明が違法性を帯びるものであるとは到底考えられない。 エ 差止の必要性がないこと
そもそも差止請求を認容することが許されるのは,将来にわたって被害の発生が確実に予測され,事後的な救済では不十分な事案に限られるところ,本件では,既にD教授は,社会思想研究会の会長を辞任しており,同教授が今後社会思想研究会の学生に接することはあり得ないばかりか,他の被告大学の教職員が原告加盟団体に対して,原告からの脱退を慫慂した事実もないのであるから,将来にわたる被害の発生などという事態はあり得ない。 したがって,原告の差止請求は失当である。
オ 謝罪を求める法的根拠がないこと
民法723条は,名誉毀損があった場合に,名誉回復処分を命じることができると規定しているのみである。 したがって,結社の自由の侵害を根拠に名誉回復処分を請求する原告の請求は,それ自体失当である。 (11) 争点(11)(損害)について
(原告の主張)
ア 補助金支払の不履行
前記(4)(原告の主張)において述べたとおり,被告大学は,原告に対し,毎年度補助金を支給する義務を負っているにもかかわらず,平成12年度及び平成13年度の補助金の支給をしていない。 被告大学の原告に対する平成11年度のB会本部費の交付額は1110万6600円であり,被告大学が原告に対し交付すべき平成12年度のB会本部費の金額は,他団体への補助金支給の計算方法と同様の計算方法によって,平成11年度の補助金額に1.019を乗じた1131万7700円(100円未満切り上げ)である。 また,平成13年度のB会本部費は,上記同様に平成12年の補助金額に1.019を乗じた1153万2800円(100円未満切り上げ)である。
よって,被告大学が原告に対し交付すべきB会本部費は,平成12年度及び平成13年度の合計2285万0500円である。
イ 損害賠償
原告は,B会規程に従って組織され運営されているものであり,被告大学学生の文化活動を促進し,学生生活の充実と向上に寄与することを目的とし,その運営を自主的に行うこととなっている。被告大学の制定したB会規程も,被告大学側の干渉を排除し,あくまでも学生の自主的な運営を行うことを基本においている。そして,原告は,結成以来の長い実績の下に幾多の権利を獲得してきたのであり,被告大学も,原告の団結権を尊重し,その運営は原告(学生)の自主性に委ね,原告と連携し,学生の文化活動を助成し,学生の研究を推進してきたのであり,被告大学は,原告ら学生自治組織を育成強化し,被告大学の学生の文化活動を促進し,学生生活の充実と向上に寄与すべき責務が存する。
しかるに,被告大学は,このような責務を放擲し,前記(4)ないし(10)(原告の主張)に述べた各違法行為によって原告の活動を妨害し,原告の組織を破壊する行為を繰り返し,その結果,原告は,団結権を侵害され,名誉を毀損された。
被告のこれらの行為による原告の被害は甚大であり,この被害をあえて金銭に換算するならば,1000万円を
下らない。
ウ 差止め
被告大学に対し,被告大学教職員による原告に加入するサークル員に対する原告からの脱退慫慂行為を禁止する必要があることは,前記(10)(原告の主張)エにおいて述べたとおりである。 エ 謝罪
D教授の脱退慫慂行為に対して謝罪が必要であることは,前記(10)(原告の主張)オにおいて述べたとおりである。
また,被告大学は,前記(9)(原告の主張)において述べたとおり,Aウィークリー紙上において,あたかも原告が平成11年度の会計について不正行為を行ったり,原告常任委員会が革マル派に背後から支配され,加盟団体(サークル)を支配しているかのごとき,虚偽の事実を流布したため,原告は著しく名誉を毀損され,やはり謝罪が必要である。
そして,その謝罪は,別紙1記載の謝罪文を,①被告大学本部構内の被告大学管理の掲示板に掲示し,②Aウィークリーへ掲載し,③原告へ交付する方法によるのが相当である。 オ 弁護士費用
原告は,本訴請求をするに当たって,原告訴訟代理人弁護士らに訴訟行為を委任し,着手金及び報酬として100万円を支払うことを約した。
(被告の主張)
いずれも争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(Fに原告の代表権限があるか)について
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告は,B会規程上は毎年10月に常任委員,委員長等を選出することになっていた(B会規程20条)が,11月にA祭が開かれることとの兼ね合いで,現実には毎年7月ころに前期総会を,2月ころに後期総会をそれぞれ開催しており,後期総会において常任委員,委員長等を選出することが慣行となっていた(甲1,81,証人R)。 イ B会規程上は,各部門ごとに所属の5団体から1名の割合で常任委員を選出することになっていた(B会規程13条)が,加盟団体数の1割程度の数の常任委員を選出するということが長年にわたって行われ,これが慣行化しており,原告においてもB会規程上の定数には不足していることを認識していたが,そのような選出方法が問題とされたことはなく,さらに,少なくとも平成12年以前においては,常任委員がB会規程上の定数に足りず問題であるという指摘が被告大学より明示的にされたこともなかった(甲20,26,81,乙3,191,証人R,同S,原告代表者)。 ウ 平成13年2月1日に開催された平成12年度後期B会総会は,以下の手続,内容で行われた。 当時の委員長であったSが,平成13年1月15日,議題を記載した公示を各加盟団体へ配布するとともに,総会招集の葉書を各加盟団体の幹事長の自宅あてに発送した。
当時の加盟団体61団体(学術部門26団体,芸能部門32団体,宗教部門3団体)のうち,委任状による出席の9団体を含む合計48団体の代表者が上記総会に出席した。
上記総会においては,学術部門から現代文化研究会,政治学会,歴史学研究会,産業経済研究会,現代思想研究会の5団体,芸能部門から漫画研究会1団体,合計6団体の代表を常任委員に選出し,常任委員の互選により,委員長にF,副委員長にSを選出し,これを総会に報告し承認を得た(甲20,26,82,84,88,乙3,191,証人S,原告代表者)。
エ その後,Fが原告の委員長に在任中の平成13年8月21日,原告は,Fを代表者として,本件訴訟を提起した(弁論の全趣旨,争いのない事実)。
オ その他,平成12年2月3日には平成11年度後期B会総会が,平成12年7月3日には平成12年度前期B会総会が,平成13年6月5日には緊急B会総会が,同年7月9日には平成13年度前期B会総会が,同年10月10日には緊急B会総会が,平成14年2月4日には平成13年度後期B会総会が,平成14年7月9日には平成14年度前期B会総会が,平成15年2月には平成14年度後期B会総会がそれぞれ開催され,加盟団体の過半数の出席を得て,議題を賛成多数で可決した。
そのうち,平成13年10月10日に総加盟団体56団体中委任状による出席11団体を含む33団体の参加を得て開催された緊急B会総会において,賛成32,反対0,保留1で可決されたB会の今後の方針には,…B会がかちとってきた諸権利を大学当局が一方的に剥奪することは憲法上も違反であるとして,裁判を行うことにしました。この裁判では,大学当局が,①B会との団体交渉を行ってきたことを拒否した問題,②B会本部費支給を認めない問題,③サークル補助金の自主的配分権を認めない問題,④サークルの新歓場所割りを認めない問題,⑤B会に対する悪質な誹謗中傷を行ってきた問題などを争点にして争います。こうした裁判を,今後進めていきましょう。との記載がある。 また,平成15年2月に開催された平成14年度後期B会総会において,Fは再度委員長に選出された(甲15,23,65(枝番を含む。),80,84,原告代表者)。
カ 被告大学は,平成11年度まで,原告に対し,B会本部費を支給し,原告加盟団体分の補助金についても,原告において配分することを指示していた。平成12年度においては,被告大学は,B会本部費の支給を停止したものの,原告加盟団体分の補助金については,やはりその総額を提示し,原告において配分することを指示していた(乙44,47,103,139,161,164,191)。
(2) 以上の事実を前提として判断する。
ア 原告は,権利能力なき社団であるといえるか。
まず,原告の当事者能力について検討するのに,法人ではない社団(権利能力なき社団)が成立するためには,団体としての組織を備え,多数決の原理が行われ,構成員の変更にかかわらず団体が存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要すると解される。 これを原告についてみると,前記(1)カ,第2の1(3)(4)において認定したとおり,原告は,昭和24年に正式に設立され,被告大学部科長会議の承認を経て制定されたB会規程にその基礎を置くものであり,B会規程においては,各加盟団体から選出された代表者の中から委員長,副委員長及び一定数の常任委員を選出し,委員長が招集する総会をその最高意思決定機関として多数決制を採用し,被告大学からの補助金等を運営資金とした上でその予算及び決算は総会の議を経て被告大学の承認を得ることとされ,さらに,総務,渉外,事業及び経理の各部を設けて会務処理に当たることとされており,実際,平成11年度までは,被告大学からB会本部費の支給を受け,平成12年度までは,被告大学が原告に対して原告加盟団体分の補助金についてその配分を指示してきたという実績もあるのである。加えて,前記(1)アウオにおいて認定したとおり,原告においては,現実に年2回の定時B会総会を始めとする総会が開催され,加盟団体の過半数の参加を得て,議題を可決するなどしていたのであるから,上記の基準を満たしており,原告は権利能力なき社団として本件の当事者となることができるというべきである。 イ Fは原告の代表権限を有するか。
(ア) 前記(1)ウオにおいて認定したとおり,Fは,平成13年2月1日に開催された平成12年度後期B会総会において,常任委員の互選によって委員長に選出されて総会の承認も得ており,平成15年2月に開催された平成14年度後期B会総会において,再び委員長に選出されているから,Fは原告の代表者として,代表権限を有するものと認められる。

(イ) この点,被告は,上記平成12年度後期B会総会においては,B会規程に定める常任委員数に満たない常任委員が選出されたにとどまっており,およそB会規程に従った選出が行われていないから,Fが常任委員の互選により委員長に選出されたとしても,原告を代表する権限を有しないと主張する。 前記(1)イのとおり,B会規程13条によれば,常任委員は,学術,芸能及び宗教の各部門ごとに,5団体に対して1名の割合をもって選出することとされているから,前記(1)ウにおいて認定した学術部門26団体,芸能部門32団体,宗教部門3団体(平成13年2月1日当時)という加盟団体数を前提とすれば,常任委員は,B会規程上少なくとも学術部門から5名,芸能部門から6名を選出しなければならないこととなるのに対し,前記(1)ウのとおり,平成12年度後期B会総会において現実に選出された常任委員は,学術部門から5名,芸能部門から1名,宗教部門から0名であったから,B会規程の要求する常任委員数には相当数の不足が生じていたことが認められる。 しかしながら,一方で,前記(1)イにおいて認定したとおり,原告においては加盟団体数の1割程度の数の常任委員を選出するという方法が長年にわたって行われこれが慣行化していた(この認定を覆すに足りる証拠はない。)のであり,平成12年度後期B会総会において選出された常任委員数も,総加盟団体数61団体に対して6名と,この慣行の範囲内であったことが認められる。加えて,このような常任委員の選出方法について,原告の内部で異論が唱えられた形跡も認められないのであるから,かかる常任委員の選出及びそれに基づく委員長の選出について,その効力を否定する積極的理由までは見出し難い。
(ウ) 被告は,原告からは常任委員の名簿も提出されず,原告常任委員の選出及び構成の実体について把握できない状況であったから,異議を唱えることができなかったと主張する。そもそも誰が原告の代表者かという問題は基本的には原告の内部の問題であるから,被告の異議の有無はさして関連性のない問題であるが,証拠(乙3)によれば,被告大学学生部長名義の平成13年2月19日付け文書によって,被告大学は,原告に対し,常任委員等の名簿を提出するように要求し,原告はこれに対して回答している事実が認められるのであって,被告大学において原告常任委員等の選出及び構成についてある程度把握することは可能であったといわざるを得ない。そして,それ以前に被告大学が実態の把握をしていなかったとすれば,それは専ら被告大学における怠慢を意味するとも評し得るものである。 (エ) さらに,被告は,その代表委員が原告の常任委員として選出されたと する団体の中には,その実体がなく,被告大学が学生の会としての公認を取り消すなどした団体が含まれているから,常任委員の選出について疑義があると主張するので,この点について検討する。
(1)ウにおいて認定したとおり,Fが原告の委員長として選任された平成12年度後期B会総会においては,現代文化研究会,政治学会,歴史学研究会,産業経済研究会,現代思想研究会及び漫画研究会の代表を常任委員に選出したところ,被告は,上記の常任委員選出のうち,産業経済研究会について,その選出母体となった学生の会の活動実体がなく,これらの団体から常任委員が選出されたという原告の主張は信用できないと主張している。 産業経済研究会については,証拠(乙170ないし185)によれば,学生の手帖において,昭和55年から昭和58年まで活動紹介の記事が掲載されていたが,会長,幹事長の届出をしておらず,昭和59年から平成7年までと平成10年には,会長,幹事長の届出のみならず活動紹介の記事の掲載もなかったことが認められるが,一方,証拠(甲11ないし14,乙187,189,190)によれば,学生の手帖においては,平成9年になって,会長の掲載はないが,代表者,部室及び活動紹介が掲載され,平成11年及び平成12年には,会長の氏名,会員数及び部室の掲載がされるようになり,そして,原告が発行する文化運動においては,平成11年12月1日発行の秋季特別号(35号)に産業経済研究会会員の現場 武蔵村山工場という論文が掲載され,平成12年4月1日発行の新入生歓迎特集号(36号)には,サークル紹介の記事が掲載され,平成13年1月1日発行の(37号)には,会員による活動報告が掲載され,平成13年4月1日発行の新入生歓迎特集号(38号)には,サークル紹介の記事と共に,産業経済研究会の機関誌アウフヘーベンの表紙の写真が掲載されていることが認められる。 以上によれば,学生の手帖の平成7年ころまでの掲載内容からすると,産業経済研究会の活動実体に疑義を差し挟む余地がないとはいえないが,平成11年からは会長も置かれてその氏名も明らかにされ,文化運動において,その活動内容が報告されていたのであるから,産業経済研究会について,少なくとも平成13年2月1日当時において,学生の会としての活動実体がない団体であるとはいまだ認めることはできない。なお,被告が主張するように,仮に,産業経済研究会において,実体のない団体であったとしても,前記(1)ウに認定したとおり,Fは,産業経済研究会を除く学生の会としての実体を持つ5団体から選出された常任委員の互選によって選出され,しかも,原告の最高意思機関である総会の承認を得ているのであるから,Fの委員長としての選出を無効とするいわれはない。
したがって,Fの原告代表権限はこれを認めることができる。
ウ Fは本件訴訟遂行に関して授権を得ているか。
前記(1)オにおいて認定したとおり,本訴提起日である平成13年8月21日の後,同年10月10日に,原告の総加盟団体56団体中委任状による出席11団体を含む33団体の参加を得て開催された緊急B会総会において,被告大学が①B会との団体交渉を拒否した問題,②B会本部費支給を認めない問題,③サークル補助金の自主的配分権を認めない問題,④サークルの新歓場所割りを認めない問題,⑤B会に対する悪質な誹謗中傷を行ってきた問題などについて,裁判を行うことにしたとの事項を含む議題が賛成多数で可決されているから,本件訴訟遂行に関し,原告の総会で承認(追認)され,Fが,本件訴訟遂行に関して授権を得たものと認められる。 エ 以上によれば,原告は,権利能力なき社団として本件訴訟の当事者となり得るのであり,Fは,本訴を提起した平成13年8月21日当時,原告の代表者であって,本件訴訟遂行に関する授権も得ているのであるから,争点(1)にかかる被告の主張は採用しない。
2 争点(2)(本件訴えに司法審査適合性があるか)について (1) 被告は,本件訴訟は,被告大学の規定するB会規程にその設立根拠を有する原告が,自らの結社の自由ないし学生の自治活動の侵害を主張するものであって,明らかに一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題であるから,司法審査の対象外にあり,却下されるべきであると主張するのに対し,原告は,まず,B会規程によって原告が設立されたものではなく,加えて本件訴訟は,格別教育上の見地からする専門的な判断を必要としないから司法審査になじむものであると主張する。
(2) 一般に,大学は,国公立であると私立であるとを問わず,学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究機関であって,その設置目的を達成するために必要な諸事項については,法令に格別の規定がない場合でも,学則等によりこれを規定し,実施することのできる自律的,包括的な権能を有し,一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成しているのであるから,このような特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが当然に司法審査の対象となるものではなく,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題は司法審査の対象から除かれるべきものであると解されている。
(3) まず,本訴請求のうち,名誉毀損の不法行為に基づく請求及び原告からの脱退慫慂に関する不法行為に基づく請求については,一般市民法秩序と直接の関係を有する紛争であり,これが大学内部の問題として司法審査の対象から除くべきものではないことは明らかである。
(4) 次に,本訴請求のうち,補助金の請求の点について検討すると,確かに,被告大学がいかなる学内団体にいかなる金銭的給付をするか,あるいはしないかは,被告大学における予算配分の問題であって,その自由裁量に属するものであり,司法審査の対象となる余地はないとする考えも成り立ち得ないではない。 しかし,原告の補助金の請求は,必ずしも明確ではないものの,B会規程あるいは50年以上にわたる慣行を根
拠とする契約類似の法的利益を主張するものと解し得るところ,仮にそのような法的利益が認められるとすれば,単なる予算配分の問題を超えて,当該請求も一般市民法秩序と直接の関係を有する紛争であるという余地もあるから,当裁判所は,この点にかかる請求につき,純粋な大学内部の問題であるとして却下することが妥当であるとはいえないと考える。
これを敷衍すると,もし原告が純粋に被告大学の予算配分の当不当を問題としているのであれば,それは正しく一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題として却下を免れないが,一方,原告が,被告との間の契約に基づいて補助金を請求するのであれば,それは本案判断の対象となるものと考えられる。そして,本件においては,上記のように,原告は,被告大学においても承認を経たB会規程や50年以上にわたる被告大学からの補助金受給実績といった契約類似の法的利益を主張して補助金を請求していると解することができるのであるから,少なくとも原告の主張の上では単なる予算配分の当不当を問題としているのにとどまらないことは明らかである。 加えて,B会規程や50年以上にわたる被告大学からの補助金受給実績に基づき契約類似の法的利益を主張し得るか否かの判断は,たとえば試験の合否や単位の認定(授与)のごとく特段専門的な判断を必要とするものではないから司法審査になじむものということができるし,その経費を主に被告大学からの補助金でまかなっている原告にとって,補助金の支給を受けるか否かは,団体としての存立の基盤にかかわる問題であるから,裁判所の判断によってその当否を決するのが妥当であると考えられる。
したがって,原告の補助金の請求について,大学内部の問題として司法審査の対象から除くべきものではなく,司法審査の対象となると考えられる。
(5) 同様に,本訴請求のうち,建物使用の請求の点について検討すると,確かに,被告大学がいかなる学内団体にどのような施設使用を許すか,あるいは許さないかは,被告大学における施設管理の問題であって,その自由裁量に属するものであり,司法審査の対象となる余地はないと解せないわけではないが,原告の当該請求は,B会規程を根拠とする契約類似の法的利益を主張するものと解し得るところ,仮にそのような法的利益が認められるとすれば,単なる施設管理の問題を超えて,当該請求も一般市民法秩序と直接の関係を有する紛争であるといえることに加え,B会規程に基づく建物使用の法的利益を主張し得るか否かの判断は,司法審査になじむものということができ,さらに,原告にとって,建物使用の許否は,団体としての存立の基盤にかかわる問題であるから,この点にかかる請求についても,純粋な大学内部の問題であるとして却下することなく,裁判所の判断によってその当否を決するのが妥当であると考えられる。
(6) さらに,原告が,公開折衝を求める権利の侵害,便宜供与を受ける権利等の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償を請求している点についても,上記と同様の理由により,あるいは,上記補助金請求及び建物使用請求に関連する請求であるから,この点についても訴えを却下するべきではなく,司法審査の対象になるものと考える。 (7) 以上の次第であるから,当裁判所は,本件訴えについて本案判断をすることとし,したがって,司法審査適合性を欠くとしてこれらを却下するべきであるとする被告の主張は採用しない。 3 争点(3)(本件訴えに確認の利益があるか)について
被告は,原告の請求のうち建物使用を求める部分に関し,これは新学生会館東棟内の合計9室のうち,いずれか1室について原告常任委員会室として使用権限を有することの確認を求めているものであるところ,このような請求は,訴訟物たる権利義務(対象物)の特定を欠くものであって,確認の利益を欠く請求であると主張するが,原告の当該請求は,特定の建物内における一定の部屋の使用権限の確認を求めるものであるから,このような請求であっても訴訟物が不特定であるとはいえず,被告のかかる主張は失当である。
4 争点(4)(被告は,原告に対し,補助金を支給すべき義務を負うか,被告の補助金支給停止の措置は違法か)について
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告大学は,B会規程4条,23条に基づき,B会規程が制定された昭和24年度から平成11年度まで約50年にわたって,原告に対し,文化活動を助成するためB会本部費を支給し,さらに,原告による配分の下,原告加盟団体に対し補助金を支給してきた。これらの補助金は,被告の財源である授業料,入学金等の学生生徒納付金及び私立学校振興助成法に基づく国及び地方公共団体からの助成金から支給されている。 ところで,B会規程24条には,原告の収支の予算及び決算は,被告大学の承認を得なければならない旨が,学生の会に関する規程8条,11条には,学生の会は,被告大学に対し,3月末日までに活動情況を報告し,講演会等特別の会合を開催した直後に会計報告を提出しなければならない旨が,それぞれ定められていたが,昭和40年代から平成8年度まで,原告及び学生の会が,被告大学に対し,会計報告を行いその承認を得たことはなかった。 なお,被告大学から原告に支給されたB会本部費は,平成10年度において1224万6500円,平成11年度において1110万6600円であった(甲1,81,乙1,25,26,70,71,86(枝番を含む。),証人R,同P)。 イ 被告大学は,学部長会等において,平成7年度のA祭の決算に対する疑義や補助金に関する会計報告書の提出の必要性の指摘を受け,学生の会に対する補助金の使途の透明化を図るため,平成8年及び平成9年度においてそれぞれ2回,学生の会に対し,会計報告書の提出や補助金によって支出した額の領収書を保管し,必要に応じて開示できるように指示をしていた。また,平成8年度監査意見書においては,公認会計士より,①学生の会への補助金交付は現金交付ではなく,銀行振込にするべきである,②会長名等を確認の上支出するように改善するべきである,③補助金の運営適正化のためには収支内容のチェックが不可欠であり,年度単位ですべての会から会計報告を受ける必要があることが指摘された。
そこで,被告大学は,学部長会において,平成10年度においては,原告及び学生の会に対し,平成9年度の会計報告書の提出を求め,原告非加盟団体については,会計報告書を提出した学生の会に対し補助金を交付すること,さらに,学部長会の了承を得て,原告及び原告加盟団体については,B会本部費及び原告加盟団体の補助金の合計額から補助金の使途が不明な18団体に該当する補助金額を控除した額を内示し,原告において配分させることとし,補助金の交付方法については,現金での交付から銀行振込方式へと変更することを決定した(乙25,26,141,191,証人R,同P)。
ウ さらに,被告大学は,大学内における団体に関する運営の適正化等の一環として,平成11年2月5日に,原告加盟団体であるキリスト教共助会,建設者同盟,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,劇団自由舞台,コール・ムーゼについて,平成12年5月10日に,原告加盟団体である中国・ロシア(ソ連)研究会,アジア・アフリカ問題研究会,部落問題研究会,農村問題研究会,民主政治研究会,文章表現研究会,社会科学研究会,文学研究会について,いずれも学生の会に関する規程に従って継続願や会計報告を提出せず,また,補助金の振込口座の届出をも提出しなかったため,その実体がないものとみなし,学生の会としての公認を取り消した。また,被告大学は,このように実体がないと考えられる団体に多額の補助金を配分してきた原告の責任についても問題視していた(甲3,6,乙25,26,141,191,証人P)。
エ 被告大学は,後記オ,カに認定するとおり,原告との間で,原告が被告大学に提出した平成10年度及び平成11年度各原告会計報告書について,疑問点について質問を繰り返していたが,平成12年12月1日開催の学部長会において,原告の会計の疑義が解消されなかったとして,平成12年度のB会本部費の支給を停止し,平成13年4月6日開催の学部長会において,平成13年度のB会本部費の支給も行わないことを決定した。また,学生の会に対する補助金については,平成11年度及び平成12年度は,原告非加盟団体に対して6月に支給を決定し,同月30日から支給を始めたが,原告加盟団体に対しては,原告が原告加盟団体に配分することを認めたものの,支給の決定が7月に
なり,同月30日(平成11年度)ないし31日(平成12年度)から支給を始めた。平成13年度については,被告大学は,原告非加盟団体に対して同年6月に支給したが,原告加盟団体に対しては,同年7月6日,学部長会において,原告に配分させることを認めない決定を行い,同年10月になって,被告大学から原告加盟団体に対し直接各加盟団体の銀行口座に振り込んで支払われた。
現在,原告加盟団体には補助金が支給されているが,原告にはB会本部費は支給されていない(前記第2の1(5),甲3,18,31,36,乙84,101ないし106,108,109,191,原告代表者)。オ 原告と被告大学との間には,原告が被告大学に提出した平成10年度原告本部会計報告書について,以下のとおりのやりとりが繰り返された(甲65,82,85,乙89ないし100,証人S)。(ア) 被告大学学生部長は,平成11年7月17日,原告に対し,平成10年度原告会計報告書につき,①本来B会規程によれば,会計年度は4月から翌年の3月までであるべきであるのに,2月の後期B会総会から翌年2月の後期B会総会までになっているのは問題である,②株式会社Jの領収書の使途が不明である,③全日本学生自治会総連合の領収書の使途が不明である,④その他,領収書に不備があるなどとして,これに対する回答を求めた。 (イ) 原告委員長のS(当時)は,平成11年7月23日,①会計年度は長年の慣例である,②株式会社Jの領収書は文化運動印刷費等である,③全日本自治会総連合発行の領収書は,反戦の取組を行った際の派遣費(交通費,宿泊費等)を全日本自治会総連合にまとめて支払ってもらっていたものを,事後的に全日本自治会総連合に対し派遣した人数に相当する額を支払ったものである,④その他の領収書の指摘については,善処したいと回答した。 (ウ) これに対して,被告大学学生部長は,同年8月18日,原告に対し,①会計年度はB会規程どおりに是正すべきである,②全日本自治会総連合の領収書における分担金との記載の説明を求めるなどとして,これに対する回答を求めた。
(エ) 原告委員長のSは,同月25日,①平成11年度の会計年度は,平 成11年4月1日から平成12年3月31日までとする,②全日本学生自治会総連合発行の領収書は反戦の取組のための派遣に際しての費用であり,分担金という表現が不適切なら改めると回答した。 (オ) さらに,被告大学学生部長は,平成11年9月1日,同月22日及び同年10月15日に,文化運動の見積り,印刷物の現物提出,領収書のあて名や使途等の問題について,原告に対し回答を求め,これに対し,原告委員長のSは回答し,結局,被告大学の指導に原告が従うという形になった。 カ 原告と被告大学との間には,原告が被告大学に提出した平成11年度原告会計報告書について,以下のとおりのやりとりが繰り返された(甲82,85,乙70の1,72ないし83,86,121,122,証人S,同P,原告代表者)。 (ア) 被告大学学生部長は,平成12年6月14日,原告に対し,平成11 年度原告本部会計報告書につき,①平成11年度のその他の収入の明細が不明であるので,明細書の提出,②年度末3日間の支出が総支出の32パーセントを占めていることの説明,③原告の会計報告に現代文化研究会あての領収書が混入していることの説明,④K株式会社及びLが発行した領収書に,会社の事業所及び所在地が記載されていないことの説明と事業所及び所在地を明らかにすること,⑤原告名義の電話3回線について3箇月分の領収書がありその分のみ支出として計上されていることの説明,⑥文化運動34号と36号において,後者では支出が48パーセントも多いことの説明,⑦大量購入している用紙,インク,切手,ベニヤ,布等についての用途説明等を求めた。 (イ) 原告委員長のS(当時)は,平成12年6月21日,被告大学に対し,①その他の収入は文化運動33号の一部と34号の広告料収入,カンパ等である,②最終3日間の支出のうち,3分の1は文化運動36号の印刷・製本・紙代であり,納品が年度末ぎりぎりであってすぐ支払をしたためである。残る3分の2は新入生歓迎活動のための準備用品を年度末にまとめて購入したものであり,この時期に支出が集中することは何ら不自然ではない,③領収書の混入は,平成11年度において原告常任委員であり,現代文化研究会の会員でもある学生が領収書のあて名指示を誤り,それを原告において見落としたもので,単純なミスであり,以後気をつける,④事業地及び所在地の記載漏れは第一義的には領収書発行者のミスであるが,これを看過したのは原告の落ち度であり,今後は万全を期すようにしたい,⑤電話回線が3箇月の契約なのはサークル員への連絡のために設置した臨時電話だからである,⑥文化運動のコストアップは,カラー化,増頁によるものである,⑦用紙等は,ビラ,ステッカー,資料等に使用していると回答した。 (ウ) これに対し,被告大学学生部長は,平成12年6月27日,原告に対し,①明細がなお不明なOBからのカンパ4万円及びコピー代等雑収入9727円についての詳細な説明,②S委員長名義の口座開設が委員長就任から約7箇月後であることの説明,③新入生歓迎活動準備の具体的内容及び平成12年3月29日に購入したリソグラフ本体の型番についての明細,④年間の領収書処理数六百数十枚は,月平均50枚程度であり,決して膨大ではないと思えるのに混入が生じたことにつき,会計処理体制に関し,資料の提出と詳しい説明,⑤領収書の不備を発行者の責任にするのは責任転嫁であり,納得できず,また,K株式会社へのリース料支払が銀行口座からの自動引き落としと振込の交互になっており,不自然であるのでその説明,⑥臨時電話を被告大学構内に設置するための申請が被告大学に対して行われていない理由,設置場所等につき,資料に基づいた説明,⑦文化運動34号は同33号より増頁しているのに費用は減少していることについての合理的な説明,⑧使用した用紙は膨大であり,ビラ・ステッカー等の実物の提出と大量購入したベニヤの使途について具体的な説明を求める,といった質問書を発した。 (エ) 原告委員長のSは,同年7月4日,被告大学に対し,①雑収入の領 収書はない,②Rは委員長退任後も常任委員であり,口座を継続して使用した,平成11年度でRが常任委員も退任することとなったので,新たにS名義の口座を開設した,③新入生が大学を訪れるのは4月1日以降となったため,4月の新歓が重要となり,そのため直前に準備資料を購入することとなった,リソグラフの型番はFR391である,④原告の会計処理は月ごとであり,会計責任者は経理部長である,⑤K株式会社への支払に引き落としと振込が混在しているのは,口座の残高が不足してしまったりしたことが原因である,⑥臨時電話については,便宜供与が停止されている状況で申請しても許可されるとは到底考えられず,先輩が新宿区efgビルh階に設置していた臨時電話3回線を使用させてもらった,⑦文化運動34号は,版下を自前で作成するなどコスト削減に励んだ結果,経費が節減できた,⑧現存するビラ等については提出するなどと回答した。
(オ) さらに,被告大学学生部長は,平成12年7月24日,原告に対し,①銀行口座を変更しない合理的理由は見出し難い,②具体的新入生歓迎活動について説明をすること,③社会科学部自治会と原告の間でも領収書混入が発生していることを指摘し,月ごとの会計処理を行っている資料の提出,④K株式会社への振込手数料が計上されていないことの説明とリース契約書の提出,⑤平成9年度,平成10年度においても臨時電話の支払と思われる領収書の提出があったが,この時は便宜供与停止中ではなかったにもかかわらず,電話設置の申請を受けていないことの説明が必要であるなどの指摘を行い,回答を求めた。
(カ) 原告委員長のSは,平成12年8月25日,被告大学に対し,①口座の併存は問題ないと考えてきたが,通帳を提出する,②新歓活動はビラの手渡し,挟み込み等である,③会計の内部監査体制につき,規則として文書化したものはないが,会計責任者の作成した帳簿を常任委員1名がチェックしている,④振込手数料は,自己負担している,コピー機の契約書を提出する,⑤臨時電話についての契約書のコピーを提出する,被告大学に設置していない理由は,被告大学の自治軽視の風潮等によるものであるなどとの回答を行った。 (キ) その後,被告大学学生部長は,同年9月26日,原告に対し,①繰越金の記載がなく,また,B会本部費は支給後すぐ全額が引き出されているが,どのような理由に基づくものか説明をし,原告の資金を管理している銀行口座の通帳をすべて提出すること,②原告の銀行通帳において平成10年に企業から振り込まれた収入150万円があるのに,平成10年度の会計報告には収入として30万円しか申告がされていないこと,③会計処理規則は存在してしかる
べきであると考えられること,④繰越金が600万円もあるのに残高不足でリース料が引落不能とは不可解であることなどを指摘,指示し,回答を求めた。
(ク) これに対して,原告委員長のSは,同年10月3日,被告大学の質問が変遷し不当である,一旦承認されたはずの平成9年度及び平成10年度の会計の問題を持ち出すのは納得できないなどとして,回答を拒否したため,被告大学学生部長は,同年11月8日,原告に対し,①補助金,繰越金をどのように管理していたのか説明をすること,②会計処理規則の提出及び常任委員1名による内部監査の詳細について説明をすること,③Kの契約については,平成11年の契約切り替えにおいて,原告で2台の契約をしていたのが,原告1台,社会科学部自治会1台の契約となり,いずれもUなる人物が対応していたことが判明するなどし,会計の独立性に疑問があること,④収入,支出がすべて報告されていないことなどを指摘,指示し,回答を求めたが,やはり原告委員長のSは,被告大学側の質問が変遷し,不当であるなどとして,結局,最終的には回答を拒否した。
(ケ) 加えて,被告大学学生部長は,平成13年6月22日,原告に対し,原告常任委員会の銀行口座に振り込まれた1000万円以上の補助金について,これが銀行口座から直ちに引き出されていることについて,その引き出した現金の管理についても回答を求めたが,原告委員長のFは,補助金の管理については原告常任委員会の責任において行っており,学生部が問題にする性質のものではないとして,回答を拒否した。キ 上記エのとおり,被告大学は,原告に対する質問及び回答の結果,平成12年12月1日開催の学部長会において,原告に対し,平成12年度のB会本部費の支給を行わないことを決定し,さらに,平成13年2月14日,原告において,被告大学の質問に対し誠実に回答する意思がないものと認め,平成12年度のB会本部費の支給を行わないことを決定したとの通知を行った。
その後,被告大学は,平成13年4月6日開催の学部長会において,原告に対し,平成13年度のB会本部費についても支給を行わないことを決定した(甲3,乙84)。
(2) 原告は,B会規程又は長年の慣行に基づき,被告に対し,補助金の支給を求められるか。 ア B会規程22条は,

本会の経費は,大学からの補助金,他からの寄附金,及び其の他の収入を以てこれにあてる。

,同23条は,

大学は,その予算の範囲内において,学生の文化活動を助成するために,本会に毎年度補助金を交付する。

と規定しているが,これらの規程は,その文言からも,原告において被告大学に対する具体的な補助金請求権を認めたものとは到底解されない。すなわち,B会規程22条は,原告の運営経費に被告大学からの補助金が含まれることを述べているにすぎず,また,B会規程23条も,被告大学は,予算の範囲内において,原告に補助金を交付することを定めたものにすぎず,被告大学に具体的な補助金支給義務を課した趣旨と解することはできないし,少なくとも被告大学の予算において,原告に対する補助金の交付額が具体的に決定されていない段階で,原告が被告大学に対し補助金の支給を求め得るとは到底解されない。
さらに,B会規程の趣旨及び前記(1)アに認定した事実によれば,原告や学生の会に対する補助金は,被告の収入である授業料,入学金等の学生生徒納付金及び私立学校振興助成法に基づく国及び地方公共団体からの助成金から予算の範囲内において,被告大学学生の文化活動を促進し,学生生活の充実と向上に寄与することを目的として支給されることからすると,補助金の支給,支給額,支給時期,支給範囲等については,被告における,教育上及び財政上の観点からする総合判断の結果決定されるものであり,基本的に被告の裁量に基づくものと理解される。 したがって,B会規程を根拠として被告に対し補助金の支給を求める原告の主張は,認められない。 イ 上記(1)において認定したとおり,原告は,昭和24年度から平成11年度まで約50年にわたって,B会本部費として補助金を受給していたことが認められるが,そもそも原告のB会本部費の受給について,B会規程上被告に対する権利性を認めることができず,他にこれを認める根拠もないから,原告が被告大学からB会本部費を長年継続して受給していたからといって,それが補助金請求権という権利性を有するものになるとは解されない。したがって,長年の支給慣行を根拠として被告に対し補助金の支給を求める原告の主張も,認められない。 (3) 被告の補助金支給停止の措置は違法か。
ア 前記(1)エに認定したとおり,被告大学は,平成12年12月1日開催の学部長会において,原告の会計の疑義が解消されなかったとして,平成12年度のB会本部費の支給を停止し,平成13年4月6日,平成13年度のB会本部費の支給も行わないことを決定した結果,原告に対し,平成12年度及び平成13年度のB会本部費が支給されなかった。 上記(2)に判示したとおり,原告のB会本部費の受給について被告大学に対する権利性が認められず,補助金の支給,支給額,支給時期,支給範囲等については,被告の裁量に基づき決定されるべきものである以上,被告大学において,原告に対し,補助金であるB会本部費の支給停止の措置をとったとしても,この措置が社会通念上合理的と認められる範囲を著しく逸脱するなどの特段の事情がない限り,基本的に違法となることはないと解される。イ 前記(1)アイに認定したとおり,被告大学は,B会規程や学生の会に関する規程にかかわらず,長年にわたって,原告及び学生の会から会計報告を行わせることなく,補助金を交付していたが,平成8年度及び平成9年度において,学生の会に対し,会計報告書の提出と補助金による支出について領収書を保管し,開示できるように指示を行った後,平成10年度においては,原告及び学生の会に対し,平成9年度の会計報告書の提出を求め,原告非加盟団体に対しては,会計報告書を提出した学生の会に対しのみ補助金を交付することとし,補助金支給を銀行振込方式へと変更し,原告加盟団体に対しては,補助金の使途が不明な18団体に該当する補助金を控除して補助金を支給することにするなど,補助金の使途の透明化,運営の適正化を図る措置をとった。 そして,前記(1)アの事実及び証拠(乙5,191,証人P)によれば,補助金は,被告の収入である授業料,入学金等の学生生徒納付金や私立学校振興助成法に基づく国及び地方公共団体からの助成金を財源とするものであり,被告大学はその予算執行について学校法人会計基準(昭和46年4月1日文部省令第18号)に従って,適正に行われなければならない義務を負っており,補助金の交付についても被告大学の予算執行の一環であると認められるから,被告大学が,予算執行を適正に行うために,上記のとおり,補助金の使途の透明化,運営の適正化を図る意図を持って,B会規程や学生の会に関する規程に従い,原告及び学生の会に対し,会計報告書の提出を義務づけるなどの措置をとったのは,当然の措置であって,被告大学が,B会規程や学生の会に関する規程にかかわらず,長年にわたって,原告及び学生の会から会計報告を行わせることなく,補助金を交付していたという事情は,むしろ被告大学の怠慢として責められるべき事柄であり,被告大学において上記の是正措置をとることの妨げとなるものではない。ウ 前記(1)エオカに認定したとおり,原告と被告大学との間には,原告が被告大学に提出した平成10年度及び平成11年度各原告会計報告書について,質問と回答が繰り返された結果,被告大学は,原告の会計の疑義が解消されなかったとしてB会本部費の支給を停止したのであるが,被告大学が原告に対し会計報告書について質問を行ったのは,上記イに判示した補助金の使途の透明化,運営の適正化を図る意図の下にとられた被告大学の是正措置の一環として行われたものであって,正当な行為であると評価できるし,原告のB会本部費に関する会計処理及び原告加盟団体に対する補助金の配分については,少なくとも以下の問題点があると認められる。 (ア) 前記(1)カ(キ)ないし(ケ)に認定したとおり,被告大学は,原告に支給されたB会本部費が支給後すぐに全額が引き出されていることを取り上げ,原告においてB会管理費についてどのような管理を行っているかの説明を求めていた。
証拠(乙86(枝番を含む。),122,証人R,同S,原告代表者)によれば,原告は,被告大学から原告の銀行口座に平成10年9月30日に振込を受けたB会管理費1224万6500円を同年10月16日に引き出し,また,平成11年11月8日に振込を受けたB会管理費1110万6600円を同月17日に引き出していること,原告は,上記の金員につき,原告の責任において,都内に住居を持つ学生(ただし,原告の会計責任者ではない。)が現金で管理しており,それは
長年の管理方法でもあり,補助金の管理については原告の責任において行っている事柄であり,被告大学が問題にする性質のものではないとして,それ以上の回答を拒否したことが認められる。 原告は,B会本部費の管理は,学生自治の精神に則り,原告が責任を持って管理すればよいと主張するが,現金での管理方法は,銀行口座で管理することに比べ,事故等の危険を飛躍的に増大させ,使途についても透明性を損なう結果となり,会計報告に際しても支障を来すと考えられるのに,あえて1000万円を超える多額のB会管理費の全額を支給直後に引き出して一学生に現金で管理させるというのは,運営資金の管理能力や使途に疑問を抱かれてもやむを得ないものといわざるを得ず,学生生徒納付金や私立学校振興助成法に基づく助成金の中から支給された金員の管理として妥当性を欠くことはいうまでもない。
したがって,被告大学として,原告のそのような管理方法を問題とし,原告に対し説明を求め,その是正を促すのは当然の理というべきである。
(イ) 前記(1)カ(ア)(キ)に認定したとおり,被告大学は,原告の銀行通帳には平 成10年に企業から振り込まれた収入150万円があるのに,平成10年度の会計報告には収入として30万円しか申告がされていないことの説明を求め,また,原告の会計報告に現代文化研究会あての領収書が混入していることの説明を求めていた。 証拠(甲87,乙70の1,86,147(枝番を含む。))によれば,原告の出身者であるVは,同年1月29日,Wとの間で,×1×2×3×4-×5×6×2×7,×5×6×3×8,×5×6×2×8,×5×6×7×2,×5×6×10×8,×5×8×1×2,×5×8×1×7,×5×8×4×11及び×5×8×4×2の9回線の電話を設置場所を東京都新宿区efgビルh階として契約したが,その際,請求書の送付先を原告とし,保証金90万円の返還先も原告の銀行口座を指定したこと,その後,同年4月24日,W本社より原告の銀行口座に90万円の入金があったこと,原告の平成10年度会計報告書には収入として広告代収入30万円しか申告がされていないこと,原告が会計報告と共に提出した領収書の中に,×1×2×3×4-×5×6×10×8,×1×2×3×4-×5×6×3○(下一桁不明)及び×1×2×3×4-×5×8×1○(下一桁不明)の番号の電話回線の使用料金の領収書が含まれていたことが認められる。 証人Sは,W本社からの90万円の入金の点につき,Wからの電話契約の保証金の返還であり,その電話はA大学新聞会が使用するための臨時電話であったところ,それを申し込んだのが,かつて原告に所属していたVであり,Vが申込時に自分の口座番号及びA大学新聞会の口座番号を失念し,原告の口座番号しか記憶していなかったので,保証金の振込先を原告の銀行口座としたと証言する。しかし,Vが,電話の申込時に自分の口座番号及びA大学新聞会の口座番号を失念し,原告の口座番号しか記憶していなかったということ自体が不自然であり,90万円という金員を他人の銀行口座に振り込ませる理由としては説得力を欠くものである。また,上記のとおり,契約書(甲87)において,請求書の送付先が原告とされていることも,証人Sの証言と矛盾する。すなわち,当該電話回線につきA大学新聞会が使用するものであれば,その請求先は当然A大学新聞会になると思われるのに,それが原告とされているのは,不可解である。さらに,当該電話回線の番号と同じ番号や不明である下一桁以外共通しており同じ番号と推測される番号の電話回線の領収書が原告提出の会計報告の中に含まれていることからしても,この電話回線について,A大学新聞会が申し込み,使用していたという証人Sの証言は,信用できないといわなければならない。 また,証拠(乙87,191)によれば,原告提出の平成11年度会計報告書に添付された領収書の中に,原告加盟団体である現代文化研究会の領収書(2570円,書籍代)が含まれていたこと,被告大学社会科学部自治会が同学部に提出した会計報告書に原告あての領収書が含まれていたことが認められる。 これらの事実は,いずれも原告における会計管理の不透明さを推測させるものであり,被告大学において原告に対し説明を求めるのは当然の措置であり,また,原告の会計処理に疑義を抱かせるものである。 (ウ) 前記(1)カ(ア)(ウ)(オ)に認定したとおり,被告大学は,平成9年度ないし平 成11年度会計報告書における臨時電話に関する支出について説明を求めていた。
上記(イ)のとおり,原告が平成10年度会計報告と共に提出した領収書の中に,Vが設置場所を被告大学外として設置したと認められる×1×2×3×4-×5×10×6×8,×1×2×3×4-×5×6×3○(下一桁不明)及び×1×2×3×4-×5×8×1○(下一桁不明)の番号の電話回線の使用料金の領収書が含まれており,証拠(甲11ないし14,乙70,71(枝番を含む。),78,147(枝番を含む),148,191,証人R)によれば,原告は,平成10年度において約80万円,平成11年度において約25万円の臨時電話代を支出していたこと,原告は,自由に利用できる電話回線1本を被告大学内に有していたことが認められる。ところで,原告は,被告大学に対し,平成10年度の臨時電話の設置について,サークルの連絡のためであると説明しており(乙77),上記のように,Vが設置場所を被告大学外として設置したと認められる×1×2×3×4-×5×10×6×8,×1×2×3×4-×5×6×3○(下一桁不明)及び×1×2×3×4-×5×8×1○(下一桁不明)の番号の電話回線の使用料金の領収書を原告の平成10年度会計報告と共に提出していたが,一方,証人Sは,Vが設置した臨時電話について,A大学新聞会が発行していた学生生活ガイドの作業のために敷設したものであると証言している。
以上のとおり,原告の被告大学に対する説明と証人Sの証言は食い違っているし,上記(イ)に判示したとおり,Vが設置した電話回線の保証金の返還についても疑義があり,同様にVが設置した臨時電話3本の費用を原告が支出したことについても疑問が解消されない。また,それ以外の臨時電話についても,原告は被告大学内に電話回線1本を有しているにもかかわらず,学外に臨時電話を設置する必要性があったのかそもそも疑問があり,これらの支出が正当なものであったとの原告の説明は不十分であったといわなければならない。(エ) 進んで,前記(1)ウにおいて判示した実体のない団体への補助金の配分 の点についても検討する。 a 前記(1)アウに認定したとおり,被告大学は,平成12年度まで原告の配分の下,原告加盟団体に対し補助金を支給してきたが,被告大学は,平成11年2月5日に,原告加盟団体であるキリスト教共助会,建設者同盟,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,劇団自由舞台,コール・ムーゼについて,平成12年5月10日に,原告加盟団体である中国・ロシア(ソ連)研究会,アジア・アフリカ問題研究会,部落問題研究会,農村問題研究会,民主政治研究会,文章表現研究会,社会科学研究会,文学研究会について,学生の会の実体がないものとして学生の会としての承認を取り消した。
b 証拠(甲6)によれば,被告大学により学生の会の承認を取り消された上記団体について,原告による補助金の配分額は,別表1のとおりであり,平成元年から平成9年まで毎年1団体当たり11万3000円(最少額)から36万4300円(最多額)を支給をしており,これらの加盟団体への補助金支給総額は,最多の年(平成9年度)には400万7900円に達していたことが認められる。
c 証拠(乙1,170ないし186)によれば,学生の会には,被告大学の教職員である会長と会員の中から選出された幹事2名を置かなければならず,学生の会は被告大学に対し毎年名称,連絡場所,会長,幹事,事業内容等を記載した継続願を提出し,被告大学の承認を得なければならないこと,被告大学は,新入生に対し,学生生活や大学組織等の紹介するために配布する学生の手帖と題する冊子を配布していたが,同冊子には学生の会の紹介欄があり,そこでは学生の会から届け出られた会長,幹事長,活動内容及び連絡場所が記載されていたこと,上記aにおいて,被告大学から承認を取り消された団体についての昭和55年から平成8年までの届出事項は別表2のとおりであることが認められる。
d 上記cによると,キリスト教共助会,建設者同盟,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,劇団自由舞台,コール・ムーゼ,中国・ロシア(ソ連)研究会,アジア・アフリカ問題研究会,部落問題研究会,農村問題研究会,民主政治研究会,文章表現研究会及び社会科学研究会ついては,昭和55年から平成7年ないし平成8年に至るまで,学生の手帖に会長,幹事長,活動内容及び活動場所の届出が全くされていないか,あるいは少なくとも会長及び幹事長に
ついては届出がされておらず,文学研究会については,平成10年まで会長の届出がされていないという状況であり,さらに,被告大学の催促に対しても,継続願,会計報告及び補助金の振込先口座の届けも提出していなかったというのだから(甲6,191),これらの団体について,その活動実体が認められないとして,学生の会としての承認を取り消した被告大学の措置は,合理的であったというべきである。
原告は,キリスト教共助会及び文章表現研究会については,平成8年のA祭に参加しているから実体のない団体ではないと主張し,証拠(甲79)によれば,第43回A祭パンフレットにおいて上記2団体の展示概要が記載されていることが認められるが,一方,証拠(乙194,200の1ないし3)によれば,第40回ないし第42回A祭パンフレットにはいずれも両団体の記載がなく,平成9年4月に発行された文化運動32号にも幹事長名が記載されておらず,連絡先は原告常任委員会室に設置された電話としていることが認められ,第43回A祭パンフレットの記載をもって直ちにこれらの団体が恒常的に活動をしていたと認めることはできない。
上記2団体以外の団体については,そのような断片的な活動をうかがわせる資料もないから(原告作成の平成12年4月発行の文化運動36号(甲12)にはこれらの団体の活動内容についての記述は存在しているが,社会科学研究会を除いていずれの団体も代表者名の記載がなく,連絡先を原告常任委員会室に設置された電話としているのであり,このような記載からしてこれらの団体が平成12年以前において継続的かつ恒常的活動があったと認めるのは困難である。),これらの団体について,実体のある団体であったと認めることはできない。 加えて,別表2のとおり,平成8年度以降,幹事長,活動内容及び連絡場所の届出が増加しているが,前記(1)イにおいて認定したとおり,この時期は既に学生の会に対する補助金支給についての規律が厳格化しつつあった時期であり,これらの団体において,幹事長,活動内容,連絡場所といった届出がしやすい事項の届出が突如増加したとしても,それは,かえって不自然であると評すべきものであり,現に,これらの団体の中で,平成11年における文学研究会以外は,被告大学の教職員が就任することが求められている会長についての届出はされていないのであり,被告大学によって承認を取り消された原告加盟団体について,実体のない団体ではなかったとする原告の主張は認められない。
e そして,上記bのとおり,原告は,被告大学によって承認を取り消された原告加盟団体に対し,平成元年には286万2000円,平成2年には302万9000円,平成3年には302万6300円,平成4年には323万7200円,平成5年には339万1200円,平成6年には357万8400円,平成7年355万5800円,平成8年には386万2400円,平成9年には400万7900円,平成10年には232万円という多額の補助金を配分しており,しかも,被告大学が学生の会の会計について領収書や報告書の提出を要求し,銀行振込方式導入を明言するなど,会計に関する規律が相当厳格化した平成10年以降,これらの団体への補助金配分がほとんどなくなったことなどの事実に照らせば,原告における補助金の配分について,実体のない団体に対し,不正に補助金を支給していたのではないかと疑うに足りる十分な理由が存在したものといわなければならない。
証人Rは,平成10年以降,これらの団体への補助金配分が減少し,あるいは零になったことについてあんまり金いらないからじゃないですかと証言するが,到底合理的な説明といえるものではない。f 以上によれば,被告大学が,原告による補助金の配分に不適切な点が存在したと考えたのは,合理的であったと認められる。
g なお,原告は,学生の会に関する規程が,昭和44年に失効したと主張するので,この点を検討するのに,証拠(甲29,30(枝番を含む。),乙4,6ないし8,10ないし21,170ないし191)によれば,以下の事実が認められる。
被告は,学校法人A大学校規57条において,規則,規程及び細則という3種類の規約を設けることとしており,このうち,規則は,学部,大学院,学校,研究所等の組織,事務組織,会計,教職員の任免,年金及び退職金等に関する基本的な事項について評議員会の議決を経てこれを定め,規程は,被告の運営に関するその他の事項について理事会の議決を経てこれを定め,その他必要な細則は,各箇所において規則,規程の範囲内でこれを定めるとされている。
学生の会に関する規程については,既に昭和26年の制定時において,原告から反対の意見が表明されていたが,学生運動の激化した昭和44年ころ,再びその是非が学生と被告大学との団体交渉の俎上に乗ることとなり,同年6月24日,被告大学側4名と学生(原告)側約80名との団体交渉が行われ,さらに,同年7月4月にも被告大学側4名と学生(原告)側約60名との団体交渉が行われた。
同日の被告大学の議事録には,両者の意見は平行状態となった。学生側はここで確認書を提示し,B会の責任において勝ち取るまで斗うとして大学側委員を取り囲み,ヘルメットでテーブルをたたきながら(恫喝して)署名を強く迫った。大学側はしばらく休憩を要求し,協議した結果,次の3項目から成る確認書に3委員が署名捺印して…終了した確認事項 7月4日の団交にもとづき,下記の署名者は,次の3項目をすみやかに実現することを誓約する 第1項 現行の「学生の会規約を全面的に撤廃する」との記載があり,署名者として,原告側はX(当時原告常任委員会委員長),被告大学側はG(当時学生部長),H(当時学生会館問題委員会委員長),I(当時文学部教授)と記されている。
被告大学の新入生に対して学生生活や大学組織等の紹介するために配布する学生の手帖と題する冊子において,平成元年から,学生の会に関する規程が掲載されるようになった 以上の認定事実によれば,被告は,学校法人A大学校規57条において,規則,規程及び細則という3種類の規約を設けることとし,規程は,被告大学の運営に関するその他の事項について理事会の議決を経てこれを定めることとされているところ,昭和44年7月の団交において,被告大学のG(学生部長),H(学生会館問題委員会委員長)及びI(文学部教授)の3名が,現行の学生の会規約を全面的に撤廃することをすみやかに実現する旨を誓約した文書に署名をしているものの,上記文書によって,当然に学生の会に関する規程が失効したとみることができないのはもちろん,本件全証拠によるも,それ以降,正式に被告の理事会において学生の会に関する規程が撤廃されたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,上記に認定したとおり,少なくとも平成元年以降,被告大学は,学生の手帖に学生の会に関する規程を掲載するなどして,その有効性を前提とする態度を示しているのであるから,学生の会に関する規程につき,それが撤廃され,効力を失ったとすることはできず,学生の会に関する規程は,現在もなお有効であるというべきである。したがって,学生の会に関する規程が,昭和44年に失効したとの原告の主張は認められない。 さらに,長年にわたって会計報告を行うことなく,補助金を受給してきた事実が,被告大学の是正措置に対して会計報告書を提出しないことを正当化する事由とはならないことは上記のとおりである。 (オ) 原告は,平成10年度及び平成11年度会計報告につき,被告大学のいう疑義が変遷していったことを問題とし,会計報告に関する被告大学の質問を批判するが,回答に対し新たな疑問が生ずることもあるから,当初問題とされていなかった点が新たに問題とされても,それだけで不当であるということはできない。確かに,被告大学の質問の中には些末な点についてまで問題している点も皆無ではなかったが,上記のように,全体的にみれば,原告のB会本部費に関する会計処理及び原告加盟団体に対する補助金の配分については,被告大学としては看過できない問題があったものといわざるを得ない。
オ 以上の検討によれば,原告が50年以上にわたって被告大学よりB会本部費を受給し,原告加盟団体に対する補助金の配分を行ってきたとしても,被告大学が,原告に多額のB会本部費を支給し,あるいは加盟団体への多額の補助金の配分をさせることは妥当でないと判断し,その自主的な予算配分権に基づき,今後原告に対してB会本部費を支給しないこととしたのは,当然許される裁量の範囲内の行為であったというべきであり,被告大学のこの措置が
社会通念上合理的と認められる範囲を著しく逸脱しており,これを違法であるとすべき特段の事情があるとは認められないから,被告大学の原告に対する補助金支給停止の措置を違法と認めることはできない。 (4) したがって,争点(4)にかかる原告の主張は認められない。 5 争点(5)(被告による原告加盟団体への補助金支給遅延が違法か)について (1) 前記4(1)エにおいて認定したとおり,学生の会に対する補助金について,平成11年度から平成13年度は,原告非加盟団体に対して6月に支給決定され,同月30日から支給されたが,原告加盟団体に対しては,平成11年度及び平成12年度においては,支給の決定が7月になり,同月30日ないし31日から支給され,平成13年度においては,同年10月になって支給されたところ,原告は,原告加盟団体に対する補助金の支給遅延が違法であったと主張する。 (2) 前記4に判示したとおり,B会規程や長年の支給慣行を根拠として,被告大学に対し補助金の支給を求める権利があるとの原告の主張は認められず,また,補助金の支給,支給額,支給時期,支給範囲等については,被告大学の裁量に基づき決定されるべきものと解せられるから,原告加盟団体に対する補助金の支給が,上記(1)のとおり,原告非加盟団体に比べ,平成11年度及び平成12年度においては1箇月遅れ,平成13年度においては4箇月遅れたことを違法と評価することはできない。
(3) 加えて,前記4(1)イウエオカ認定の事実及び証拠(乙88,102ないし109,191,証人P)によれば,学生の会に対する補助金について,原告非加盟団体に対しては,被告大学が支給額を決定して,各加盟団体に直接支給していたが,原告加盟団体に対しては,被告大学は,原告に配分させることを認めていたため,B会本部費と原告加盟団体に対する補助金の総額を原告に提示し,原告が作成した配分額を被告大学において承認した後に支給する扱いとなっていたこと,平成11年度においては,B会加盟団体の中に前年度の会計報告書や継続願を提出しない団体があったため,原告に対し,平成11年6月までにB会本部費及び原告加盟団体に対する補助金の総額を提示できず,同年7月になって上記資料の提出をしなかった原告加盟団体を補助金の算出基礎から除外して原告らに対する総額を決定したために,補助金の支給が1箇月遅れたこと,平成12年度においては,原告のB会本部費の会計処理に疑義があったため,同年6月にB会本部費を含めた原告に提示する補助金の総額を決定することができず,同年7月にB会本部費を切り離すこととし原告加盟団体に対する補助金の総額を決定したために,補助金の支給が1箇月遅れたこと,さらに,平成13年度においては,原告のB会本部費に関する会計処理上の問題点から原告に対するB会本部費の支給を停止し,原告加盟団体に対する原告の配分をも認めないという措置をとり,被告大学において原告加盟団体に対する補助金交付額の実態を調査した上で,被告大学が原告加盟団体に対し補助金を直接交付することとしたため,補助金の交付が4箇月遅れたことが認められる。
以上によれば,被告大学による原告加盟団体に対する補助金の交付が遅れたのは,いずれも合理的な理由に基づくものであり,これを違法とすることは到底できない。
(4) したがって,争点(5)にかかる原告の主張も認められない。 6 争点(6)(被告は,原告に対し,補助金の割り振りにつき,公開折衝をすべき義務を負うか)について (1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告大学は,原告との間で,以前より,学生の会に対する補助金等の額を決定するに当たって,あらかじめ学生側の意見を聴くという機会を設けており,これは公開折衝と称されていた(甲81,乙191,証人R,証人P,弁論の全趣旨)。
イ 平成8年6月28日,被告大学と原告ら学生との間において,公開折衝が行われたが,被告大学からあらかじめ提示された①公開折衝の場に被告大学の学生及び教職員以外の者は入場させない,②授業の妨害及び近隣住人の迷惑とならないよう校舎の外に向けスピーカーを流さない,③発言を妨害する野次を止めるとの条件のうち,①②が守られなかったため,被告大学は,一旦折衝の場へ赴くことを拒否した。しかし,原告ら学生がルール遵守を約束したため折衝を開始したが,野次が飛び,被告大学の再三の注意にもかかわらずこれがやまなかったために,公開折衝を流会とした。
被告大学は,同月29日,①平成8年度の学生の会に対する補助金は,前年度3.2パーセントアップとする,②原告加盟団体に対しては,従前B会本部費と学生の会補助金を分けていたが,今回は総額4743万6500円を一括して交付するので,学生自治の精神に則り,原告において配分すること,③原告非加盟団体に対しては,1団体32万3800円を交付するという決定をして,通知した(乙44)。
ウ 原告は,平成9年6月7日,被告大学に対し,同月25日又は26日に公開折衝を行うこと及び議題は補助金の外,A祭問題,新学生会館問題,学費値上げ問題その他とすることを要請した。 これに対し,被告大学は,開催に当たっては,①公開折衝の場に被告大学の学生及び教職員以外の者を入場させない,②不規則発言や他者の発言を威圧的に封殺する行為はしない,③授業への妨害及び近隣住民に対する迷惑になるので,校舎の外へ向けスピーカーを流さない,④意図的な遅延行為は慎み,開催時間を厳守する,との事項を遵守することが条件であり,これが守られなかった場合には直ちに打ち切ること,開催日時は同月27日17時から19時までとすること,公開折衝は,主として学生の会の補助金額を決定するために開催されるものであるから,議題はこれに関連する事項に限定し,その他の事項は議題としないこと,との回答をした。 しかしながら,公開折衝当日において,上記4条件に基づき,被告大学学生部長が発言者に対して所属学部,学年及び氏名を表明することを求めたにもかかわらず,原告委員長のR(当時)はこれを拒否したため,被告大学は,公開折衝をいったん中断した。その後,Rが発言者に所属学部,学年及び氏名を名乗らせることを約束したため,折衝を再開したが,不規則発言や野次が繰り返されたため,被告大学学生部長は退席した。 その後,被告大学は,同月28日,①原告加盟団体に対してはB会本部費と併せて前年比3.2パーセント増の4895万4500円を一括交付するので,学生自治の精神に則り,B会において配分すること,②原告非加盟団体については,前年比3.2パーセント増の1団体当たり34万2100円(100円未満切り上げ)を交付することを決定し通知した(甲81,乙45ないし47,191,証人R,証人P)。
エ 被告大学は,公開折衝における学生側の態度を問題とし,同日,今後は原告との公開折衝は行わないと発表し,以降公開折衝は実施されていない(乙47,争いのない事実)。 (2) 上記(1)アにおいて認定したとおり,公開折衝というのは,学生の会に対する補助金等の額を決定するに当たって,あらかじめ原告を始めとする学生の意見を聴くために設けられた機会ではあるが,B会規程その他において明文で開催が定められたものではなく(甲1),被告大学が自発的に開催することによって初めて実施されるものと考えざるを得ないことに加え,証拠(証人P)によれば,学生の会に対する補助金の執行は,評議会で決まった被告大学の予算の中で,学部長会が補助金の額を決定して,理事会の承認を得た上で行われていたことが認められ,本件全証拠によるも,公開折衝による交渉の結果が補助金額に必ず反映されるという手続であったと認めるに足りる証拠もないから,原告において,被告大学に対し,公開折衝を求める権利なるものは,およそ認める余地がないものといわなければならない。
原告は,B会規程22条

本会の経費は,大学からの補助金,他からの寄附金,及び其の他の収入を以てこれにあてる。

,B会規程23条

大学は,その予算の範囲内において,学生の文化活動を助成するために,本会に毎年度補助金を交付する。

,B会規程4条1項4号(B会は…)大学からの補助金又は寄附金の加盟団体に対する配分,及び他の団体に対する醵出(を行う)などといった規程を根拠に,これらの活動を十分に行うため,公開折衝権が基礎付けられているとの主張をするが,そもそもB会規程22条及び23条に何らの具体的権利性も見出すことができないことは前記4(2)において判示したとおりであり,また,B会規程4条1項4号についても,原告内部における補助金配分の問題
と,被告大学からの補助金交付の問題は次元を異にするものであるから,これを根拠として公開折衝を請求するとの主張も成り立ち得ないものである。
さらに,原告は,長年の間原告と被告大学との間で公開折衝が実施されており,公開折衝を求める権利が法的に保護される利益になっていると主張するが,そのように解すべき根拠を見出すことができず,採用できない。 なお,上記(1)イないしエにおいて認定した事実に照らせば,被告大学が公開折衝を行わないこととしたのは,合理的な措置であって,何ら違法ではない。
(3) したがって,争点(6)にかかる原告の主張も認められない。 7 争点(7)(被告は,原告に対し,被告大学の施設,設備の貸与,利用について便宜供与をすべき義務を負うか,また,別紙2物件目録記載の建物部分を使用させる義務を負うか)について (1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 平成8年に開催された第43回A祭において,本来A祭実行委員会が得るべき広告収入がA大学新聞会へ横流しされたのではないかとの疑惑が持ち上がったことから,平成9年8月1日の被告大学臨時学部長会において,同年のA祭は中止と決定された。
しかしながら,原告に所属する学生を含む一部の学生等が,第44回A祭実行委員会なる組織を結成し,A祭の自主開催を強行する構えを見せたため,被告大学は,それを取りやめるよう働きかけていたものの,功を奏しなかったので,当庁に仮処分を申請した。その結果,同年10月29日,債権者を被告大学,債務者を第44回A祭実行委員会委員長ことOとし,その主文を債務者は,自ら又は第三者をして,平成9年10月30日から同年11月4日までの間,別紙物件目録記載の各土地上にステージ等の工作物を設置もしくは建築してはならず,または設置もしくは建築した右工作物を利用して,演奏会,講演会,発表会等の一切の集会を開いてはならない。とする仮処分決定が当庁より発令された。
上記仮処分決定にもかかわらず,第44回A祭実行委員会なる組織は,同年10月31日及び同年11月1日の2日間にわたり,Cフェスタと称するイベントの開催を強行した。同イベントにおいては,原告もまた,主導的に関与し参加したものであり,同イベント後,情宣ビラにおいて,その事実を積極的に喧伝していた(甲64,乙48,49,52,53,57,証人P)。
イ 被告大学は,平成10年2月6日の臨時学部長会において,原告がCフェスタに主導的に関与したことを理由として,同年7月31日まで原告に対する施設・設備の貸与及び利用の便宜供与を停止すると決定した(甲31,乙61)。
ウ ところで,同年1月20日,警視庁は,被告大学学生部長(当時)のY教授宅の電話を盗聴したという電気通信事業法違反の容疑で革マル派の非公然活動家10人について逮捕状を請求し,指名手配をした。日本マルクス主義学生同盟革命的マルクス主義派A大支部は,その機関誌である解放において,Y教授宅の電話を革マル派が盗聴した旨の報道を非難するとともに,警視庁公安部の警察官がY教授宅に出入りし,同教授が警察権力と親交を深めていた旨の記事を掲載し,原告は,Y教授がA祭破壊のため警察官と密会していたとの内容を記載した情宣ビラを配布したため,被告大学は,同年5月21日,原告に対し,事実を確認することなく,被告大学学生部長がA祭破壊のため警察と密会していたという虚偽の宣伝を行わないように警告をした。しかし,原告は,なおも上記趣旨を記載した情宣ビラを配布し,さらには,被告大学総長及びY教授の授業の妨害を行ったりしたことから,被告大学は,同年6月5日の学部長会において,原告が被告大学の警告にもかかわらず,不当な行為を続けていることを理由とし,同年8月1日以降も原告に対する便宜供与停止を継続することを決定した(乙35,62ないし67,119,証人P)。 エ 被告大学は,現在に至るまで,原告常任委員会に対する施設利用等の便宜供与は中止しているが,原告加盟団体が個別に施設利用を申請する場合はこれを許可しており,また,B会総会のように原告常任委員会独自の施設利用と区別される場合には原告による施設利用を許可している(乙191,証人P)。 オ 被告大学においては,昭和29年に第一学生会館が,昭和41年に第二学生会館がそれぞれ建設され,学内の団体等の用に供されていたが,老朽化が進んでいたため,新学生会館を建設することとし,平成9年12月24日に起工式を行い,平成13年7月26日に新学生会館が竣工した(乙110,191)。 カ 被告大学は,新学生会館における部室割り当てについて,従前,学部等がサークル部室の利用区域として指定した区域において,一定期間継続して平穏かつ公然とサークル活動を行っている団体の部室等の利用状態を尊重して行うこととし,平穏かつ公然ととは,①これまでのサークル活動が公序良俗に反するものでなく,大学の諸規則に従ってされていること,②大学に届出がされていることによって『コンパス(学生の手帖)』において公表されていること,の2条件を満たすことであるとされ,上記基準に従い,学生との意見交換を重ね,最終的な新学生会館の部屋の割り振りが決定された(乙110ないし116)。
キ被告大学は,原告に対し,同年6月8日,原告に対する常任委員会室の使用許可を検討するために,①原告常任委員会が他に使用している場所,②常任委員会室でどのような業務が行われているか,③原告が調達した物品の設置保管状況,④常任委員会室において,一晩中電気がついている理由,⑤原告とA大学新聞会及びA祭実行委員会との関係,⑥常任委員会室に出入りした学外者の氏名,⑦警察が2度にわたって常任委員会室に捜索を行った際の被疑事実と原告との関係及び押収された物などを明らかにするように求めた。 原告は,被告大学に対し,同月15日,①原告常任委員会が使用している場所は常任委員会室以外にはない,②常任委員会室は常任委員会の開催,総務,渉外,事業,経理等の業務のために使用している,③事務機器は常任委員会室に設置保管している,④常任委員会室には電灯のスイッチがない,⑤原告とA大学新聞会及びA祭実行委員会とが組織的に相互浸透しているとのデマ宣伝は止めるべきである,⑥開かれたAを標榜する被告大学がこのような質問をすることは自己矛盾である,⑦被疑事実とは全く関係ない警察権力による不当な家宅捜索であり,警察の学内導入を許した被告大学は謝罪すべきであるとの回答を行った。 被告大学と原告との間に,原告の回答に対する再質問と再回答が行われた後,被告大学は,原告に対し,同年7月6日,今後大学の一切の施設を事務所又は部室として使用することを禁じ,この限りにおいてB会規程2条はその効力を失うものとした上,同委員会が現に占有使用する第一学生会館中2階の常任委員会室につき,同月31日限り,A大学学生会館規程・A大学学生会館等管理及び使用細則に基づき明け渡すことを要求し,さらに,同月19日,同様の通告を行った。
なお,A大学学生会館規程3条には,

本会館は,学生部長がこれを管理し,且つ,運営する。

と定められており,A大学学生会館等管理及び使用細則10条には,

この細則に違反した場合はその室の使用を中止させることがある。

と定められている(乙117ないし124,証人P)。 ク その後,第一学生会館は取り壊され,新学生会館の部屋は原告に割り当てられていない(争いのない事実)。 (2) 上記(1)において認定した事実を前提として,原告が被告大学に対し便宜供与を求める権利があるか否かをまず判断する。
そもそも,大学は,その設置目的達成のため,施設及び学生を管理する権限を有するものであるところ,被告大学の教室,講堂,机,椅子等の施設,設備等に関しても,その管理権限は被告大学にあり,原告を始めとする学生は,これらの施設,設備等の使用について,被告大学の許可を得ることで初めてその使用が可能になるものと解される。したがって,原告において,被告大学に対し,便宜供与を求める一般的な権利を認めることは到底できないといわざるを得ない。
原告は,B会規程上,原告が様々な活動をすることが認められている以上,それに伴い施設等を使用することも
必要となるから,被告大学から便宜供与を受ける権利を有すると主張するが,B会規程からそのような趣旨をうかがうことはできない。また,前記4(2)イに判示したと同様の理由により,原告が被告大学から長年便宜供与を受けていた実績を根拠に,原告の被告大学に対する便宜供与を求める権利を導き出すことができない。(3) 次に,原告は,被告大学の原告に対する便宜供与の停止は裁量の範囲を逸脱しており違法であると主張するので,この点を判断する。
ア 上記(1)アイにおいて認定したとおり,原告は,度重なる被告大学からの警告に従わず,当庁の仮処分命令にも違背してCフェスタの強行実施に主導的に関与したのであって,その法秩序無視の態度は厳しく批判されるべきであり,もはや原告は,被告大学との信頼関係を自ら破壊する道を選んだものと解するほかはない。したがって,この点を理由として,被告大学が,原告に対し,平成10年2月6日,便宜供与を停止する措置をとったことは,相当な処分であるということができる。
原告は,第44回A祭開催中止の原因となった,A大学新聞会における広告収入の横流し疑惑について,この疑惑は事実ではないから,便宜供与停止の理由にはならないと主張する。そもそも,この点の真実がどのようなものであったにせよ,原告が,裁判所の仮処分命令に違背してCフェスタの強行に関与した事実は覆らないのであるから,上記の判断には影響を及ぼさないものであるが,この点についても,A大学新聞会が,被告大学においてA祭実行委員会が得るはずであった広告収入をA大学新聞会へ横流ししたとの告示を行ったことにつき,名誉毀損であるとして被告を訴えた別件訴訟において,当該告示は真実であると認められる旨の一審判決が出され,これが上訴審においても維持されている(乙158,証人P)のであり,少なくとも,被告大学が上記の広告収入の横流し疑惑を抱いてA祭の開催について消極の態度に出たことは非難できないものと考えられるから,この点にかかる原告の主張も失当である。イ また,上記(1)ウに認定したとおり,被告大学は,原告が,被告大学の警告にもかかわらず,事実を確認することなく,Y教授がA祭破壊のために警察官と密会していたという虚偽の事実を記載した情宣ビラを配布し,さらには,被告大学総長及びY教授の授業の妨害を行ったりしたことを理由に,同年6月5日,同年8月1日以降も原告に対する便宜供与停止を継続することを決定した。
本件全証拠によるも,Y教授がA祭破壊のために警察官と密会していたという事実を認めるに足りる証拠はなく,また,証拠(乙67,191,201(枝番を含む。),証人P)によれば,原告は,A大自治6団体の学生らと共に,同年6月3日,被告総長及びY教授の授業の妨害を行ったことが認められ,原告が被告大学の警告にもかかわらず,不当な行動をとり続けていたことを考えると,被告大学との信頼関係が回復されたとはいい難く,被告大学が,原告に対し,同年8月1日以降も原告に対する便宜供与停止を継続する措置をとったことはやむを得ない措置であって,被告大学の裁量を逸脱したものと認めることはできない。
ウ さらに,前記(1)キに認定したとおり,被告大学は,原告に対し,平成13年7月6日,今後大学の一切の施設を事務所又は部室として使用することを禁じ,第一学生会館中2階の常任委員会室を明け渡すことを求めたのであるが,証拠(乙123,124)によれば,被告大学は,原告に対し,今まで便宜供与を停止してきた理由に加えて,①原告が原告加盟団体に対する審査を行い,不適当な加盟団体を除名する措置を怠っていたばかりか,補助金の配分権を濫用して実体のない加盟団体に対して補助金の配分を行ってきたこと,②原告のB会本部費の会計処理に疑義があること,③原告常任委員会室が革マル派の拠点となっている疑いがあることなどからして,原告を被告大学学生の文化活動を促進する担い手と認められないという理由に基づき,上記の措置をとったことが認められる。ところで,証拠(乙119ないし124,153,191,証人P)によれば,原告の常任委員会室の使用に関して,原告は,学生会館の終了時刻である午後10時以降も常任委員会室の電気を点灯したままにして利用に供し,2度にわたって革マル派の集団暴行容疑,建造物侵入容疑等により警察の捜索を受けるなどしたことが認められ,原告の常任委員会室が革マル派の拠点となっているか否かはともかく,被告大学がそのような疑いを持ち,常任委員会室を原告に使用させることは相当でないと考えたことにも合理性があり,A大学学生会館規程,A大学学生会館等管理及び使用細則の趣旨にも合致するものと認められ,さらに,前記4(3)ウに判示したとおり,原告には,実体のない加盟団体に対して長年にわたって補助金の配分を行ってきたという不適切な点が存在したこと,原告のB会本部費に関する会計処理には疑義が存在したことが認められるのであり,これらの事情から被告大学が,原告について,被告大学学生の文化活動を促進する担い手と認められないとして,被告大学は,原告に対し,平成13年7月6日,今後大学の一切の施設を事務所又は部室として使用することを禁じ,第一学生会館中2階の常任委員会室を明け渡すことを求めた措置をとったことも不相当であったということはできない。
エ 以上によれば,被告大学が,もはや原告との間において信頼関係は失われたとして,原告に対する便宜供与を停止し,さらに,常任委員会室の明渡しを求めたことは何ら違法と認められない。 (4) 次に,原告が新学生会館内において部室の割り当てを受ける権利及び被告大学が部室を割り当てなかったことの違法性について判断する。
ア この点についても上記(2)に判示したとおり,原告において,被告大学新学生会館の部屋の使用を請求できる権利というものは,そもそも認め難いといわなければならない。
また,前記2(2)に判示したとおり,大学は,学生の教育と学術の研究とを目的とする教育研究機関であって,その設置目的を達成するために必要な諸事項については,法令に格別の規定がない場合でも,学則等によりこれを規定し,実施することのできる自律的,包括的権能を有しているのであるから,前記(1)カにおいて認定したように,被告大学が,新学生会館における部室割り当てについては,一定期間継続して平穏かつ公然とサークル活動を行っている団体の部室等の利用状態を尊重するという基準を設定し,平穏かつ公然ととは,①これまでのサークル活動が公序良俗に反するものでなく,大学の諸規則に従ってされていること,②大学に届出がされていることによって『コンパス(学生の手帖)』において公表されていること,の2条件を共に満たすことであるとしていたのは,新学生会館の管理方法として別段問題も認められないところである。そして,上記(3)において判示したように,原告は,新学生会館の部室割り振りの段階においては,既に,被告大学の指導に従わず,信頼関係も失われた状態となり,被告大学から便宜供与も停止され,常任委員会室の明渡しも求められていたものであるから,被告大学が原告のこのような状態を考慮して新学生会館に部室を割り振らないとした決定も,被告大学の裁量を逸脱したものであると認めることはできない。 イ 原告は,B会規程2条が

本会は,事務所をA大学内におく。

と規定していることを根拠に,被告は,原告に対し,部室を貸与する義務を負うと主張するが,同条は,その文理からも,被告に対し,原告の部室を提供すべき義務を定めたものと解することができない。同条は,いかなる意味においても原告の権利を定めたものではないというべきである。
この点,原告は,被告大学が原告に対し大学の施設を事務所又は部室として使用することを禁ずる際,

この限りにおいてA大学B会規程第2条は,その効力を失うものとする。

と述べて,B会規程2条を失効させていることを挙げて,同条が原告の部室使用権を定めたものであることを被告大学において自認するものであると主張する。そして,B会規程25条が本規則を改正するには,常任委員会において起草し,総会及び学部長会の議を経て理事会がこれを決定すると規定していることから,被告大学が一方的にB会規程を改廃することはできず,B会規程2条は今なお効力を有すると主張する
しかしながら,B会規程2条を原告の部室使用権を定めたものと解することができないことは,上記のとおりであり,また,上記の失効宣言は,原告に対する便宜供与の停止が継続され,常任委員会室の明渡しを求めるることとしたことから,元来権利性のない条項についても念のため確認的に失効を宣言したものと理解することができる。証人Pは,その証言において,上記の失効宣言に関して,原告に常任委員会室を使用させないという結論が先行していたもので
あることを認めており,被告大学としてB会規程の法的性質等について議論を尽くした上で失効を宣言したものとは考えられず,被告大学としては,B会規程失効に関する上記の一連の手続の法的側面における検討は,やや不十分であり,いささか強引あるいは粗雑のそしりを免れないものではあるが,上記に判示したとおり,B会規程2条について,原告に部室を使用させる義務を定めたものであると解することは困難であり,また,施設管理権限に基づいて原告に新学生会館の部室を割り当てないこととした被告大学の措置は,裁量を逸脱した違法なものとは認められないから,被告大学によりB会規程2条の失効が宣言されたという事実は,以上の判断を左右しないものというべきである。 (4) 以上のとおり,争点(7)にかかる原告の主張は,便宜供与停止を違法とする点及び建物の使用権確認を求める点のいずれにおいても認められない。
8 争点(8)(原告は,新入生歓迎活動において,出店場所を割り振る権利を有しているか。また,被告がその権利を侵害したか)について
(1) 証拠(乙68,69,191,証人P)によれば,以下の事実が認められる。 被告大学における新入生歓迎活動については,従前からの慣行により,原告加盟団体が出店するスペースと原告非加盟団体ないし同好会が出店するスペースの大枠が定まっており,毎年,原告加盟団体については原告が一括して被告大学から机等を借り受け,その出店場所を割り振っていたのに対し,原告非加盟団体等については,直接個々に被告大学が机等を貸し出し,その出店場所を指定していた。
これに対し,平成10年度以降については,原告非加盟団体については抽選手続によって,原告加盟団体については従前のスペースをおおむね踏襲した形で被告大学が出店場所を指定している。 (2) そもそも,新入生歓迎活動における学内団体の場所等の割り振りは,被告大学における施設管理の専権に属するものというべきであって,上記(1)のように従来事実上の慣行としてそれを原告が代行していたとしても,そのことによって,それが原告の権利になるわけではないし,また,前記7に認定した事情を考えると,被告大学が,平成10年度以降,原告に対し,原告加盟団体について出店場所を割り振ることを認めず,被告大学において指定するに至ったことは何ら違法とは認められない。
(3) したがって,争点(8)にかかる原告の主張は失当であるというほかはない。 9 争点(9)(原告に対する名誉毀損の成否)について
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア Aウィークリーは,被告大学に在籍する学生を対象にした学内広報紙であり,希望者が自由に取得できるように被告大学キャンパスの各箇所に備え置かれている(乙191,証人P)。 イ 被告大学は,Aウィークリー2001年(平成13年)4月12日号から同年7月19日号までの紙上において,B会の存在意義を問う!とのメインタイトルの下,6回にわたり,原告及び原告常任委員会を批判する記事を掲載した。 (ア) 2001年(平成13年)4月12日号においては,B会の存在意 義を問う!とのメインタイトル,第1回 『B会本部費』の支給停止についてとのサブタイトルの下,B会常任委員会が行った1999年度会計報告に関する疑義が晴れなかった,(B会常任委員会から…)『再回答』があったが,全く見るべき内容の回答になっておらず,その後も,B会常任委員会からは何ら新たな回答はなかった,1.1999年度B会常任委員会の会計に関する疑義との項目の下,B会常任委員会はその都度,回答書を提出してきたが,回答が重なれば重なるほど,B会常任委員会が行ってきた会計に関する重大な疑義が存在することが明らかになった,2.B会常任委員会の会計上の責任という項目において…『B会本部費』と称して自らにも配分している,

B会の『加盟サークル』に対する補助金の配分についても疑問を呈せざるを得ない。それはこれまでB会常任委員会が,実体のないサークルに対しても補助金の配分を行ってきたという事実である

,補助金を実体のないサークルに垂れ流ししてきたB会常任委員会の責任は重い…,3.2001年度以降の「B会本部費の支給停止に伴う問題点」という項目において,B会常任委員会が昨年4月に行った1999年度『B会本部費』の会計に関する疑義が存在するとの記事を掲載した(甲3)。 (イ) 2001年(平成13年)5月10日号においては,B会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第2回 『B会常任委員会』の理不尽な所業とのサブタイトルの下,B会常任委員会に関わる1999年度の補助金…の会計報告に対する疑義が解消されなかった,B会常任委員会が学生の自治あるいは表現の自由を隠れ蓑に行ってきた理不尽な所業などと摘示し,末尾の資料の注釈においても1999年度B会本部費の会計報告に重大な疑義が指摘され,それが解消されないまま年度を越えたとの記事を掲載し,さらに,1.B会常任委員会とはという項目において,ところでB会常任委員会を長年にわたって背後から支配してきた政治セクトがいる。それが革マル派(資料1参照)であることは学内では周知の事実であったが,そのことを誰も公然と口に出せない状況が続いていた。それは『革マル』批判を口にした教職員ばかりか学生もが,彼らから陰湿な嫌がらせを受けたり,あるいは執拗に付きまとわれたり,さらには暴行を受けたりしたからである。大学はこうした暴力や嫌がらせに対し一貫して抗議してきたが,革マル派に操られた学生たちは,学生自治への介入とか思想・信条の自由を否定するものなどと見当違いの主張をするのが常である,3.A祭中止の原因を作った団体と同じ仲間のB会常任委員会との項目の下,A祭実行委員会を自称する学生たちは,臨時学部長会決定と,大学構内にステージを構築して演奏会などを行うことを禁じた東京地裁の仮処分命令を無視して,10月31日・11月1日の両日,学外の革マル派70~80人の助勢を恃んで『Cフェスタ』なるイベントを違法に強行した。そのイベントに主導的に参加したのがB会常任委員会である,大学は現在,革マル派に操られた学生たちの学内のルールを無視した行為を正し,学園の正常化に取り組んでいる。その過程で,B会常任委員会に対し施設貸与の便宜供与を,また『B会本部費』の支給を中止した。B会常任委員会にはもはや自治団体としての機能を認められないと考えるからであるとの記事を掲載し,さらに,革マル派支配の構図という図表により,革マル派が原告常任委員会を支配しているとの構図を掲載し,加えて,2.B会常任委員会によるB会加盟サークルの支配との項目の下,B会常任委員会がB会加盟サークルの支配に利用した一つに,大学からの補助金の配分がある。…B会常任委員会は,各サークルに対する配分額について合理的とはいい難い格差を設けている。が,その基準は明らかでない,

加盟サークルの支配のもう一つは,場所の割当である。…B会常任委員会は,サークルの出店の場所割を通じて加盟サークルを統制してきた

との記事も掲載した(甲4)。 (ウ) 2001年(平成13年)5月24日号においては,B会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第3回 B会はサークルを代表しているかとのサブタイトルの下,会計報告において,B会常任委員会の会計全体に関して多くの問題点が明らかになり…,1.実体のないB会加盟サークルにも補助金を配分との項目の下,大学からの補助金で問題があるのは,『B会本部費』だけではない,B会常任委員会はこれを行うことを怠って,実体がないサークルにも,数十年にわたって,大学からの補助金を配分してきたのであるとの記事を掲載し,2.B会はサークルを代表しているかとの項目を建て,さらに,3.警察によるB会常任委員会室の家宅捜索との項目の下,B会常任委員会は,本シリーズの第2回(本紙931号参照)でも説明したように,1997年10月31日と11月1日に,学外の革マル派70人ないし80人の助勢を恃んで強行された『Cフェスタ』なるイベントに主導的に参加している。さらに,1998年5月に,革マル派非公然活動家が本学前学生部長宅の電話盗聴容疑によって指名手配された際には,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたとする全く事実に反する情宣活動を行った。こうした不当な行為を繰り返し行った…,B会常任委員会室は…異常な使われ方をしているとの記事を掲載した(甲5)。 (エ) 2001年(平成13年)6月7日号においては,B会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第4回 実体のないサークルにも補助金を配分とのサブタイトルの下,1.実体のないB会加盟サークルを存続させるとの項目を建て,さらに2項にもサブタイトルと同一の項目を建て,B会常任委員会は,1984,85年以降部室を使用しなくなった,すなわち実体が存在しなくなったキリスト教共助会,建設者同盟,コール・ムーゼ,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,民主政治学会,農村問題研究会,文章表現研究会,またB会常任委員会室気付となった劇団自由舞台,アジア・アフリカ問題研究会を含めて補助金を配分している。しかもこれら実体のないB会加盟サークルが,未受領の年度もあるが,B会常任委員会が発行した『B会サークル補助金配布書』を学生生活課に提出して補助金を受領しているとの記事を掲載した(甲6)。
(オ) 2001年(平成13年)6月28日号においては,B会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第5回 B会常任委員会室の使用状況についてとのサブタイトルの下,本シリーズで明らかにしてきたように,B会常任委員会の活動はこの目的から大きく逸脱してきており,とても『学生の文化活動を促進』する牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ないとの記事を掲載し,B会常任委員会室の使用状況についてと題する質問状を掲示し,その中で今日,B会,なかんずくその執行機関たるB会常任委員会の活動を見るに,上記目的を果たしているとは考えられない状況であると述べ,さらに理由と質問事項として,B会常任委員会は,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたなどとまったく事実に反する虚偽の情宣を行った,B会常任委員会の会計にまつわる疑義が解消されなかった,大学はB会の代表性についても疑問に思っている,上述のとおり,大学は,B会常任委員会の活動がB会規程に掲げられた目的から大きく逸脱し,もはや『A大学学生の文化活動』の牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない。大学はすでに,B会常任委員会に対しいくつかの便宜供与を中止しているが,ここに至って引き続き常任委員会室を使用させることに懐疑的にならざるを得ないとの記事を掲載した(甲7)。 (カ) 2001年(平成13年)7月12日号においては,2001年度『学生の会』(B会加盟団体)に対する補助金についてと題する告示を掲載し,その中で,自らの会計処理すら満足にできないだけでなく,B会本来の目的から逸脱した活動をしているB会常任委員会とする記事を掲載した(甲8)。 (キ) 2001年(平成13年)7月19日号においては,B会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第6回 B会常任委員会室の明け渡し要求とのサブタイトルの下,第1に,B会の執行機関である常任委員会の活動がB会規程の目的から大きく逸脱してきている。第2に,常任委員会が規程に則った活動をしていない。第3に,常任委員会室が警察の家宅捜索を受けるなど外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない,等々が明らかになったとの記事を掲載し,さらにB会常任委員会に対する同委員会室の明け渡し要求についてとの標題の下,B会常任委員会の活動を見るに,上記の目的を大きく逸脱してきていると認めざるを得ない,B会常任委員会は…B会に対する補助金の配分権(規程第4条第1項第4号)を濫用して実体がない加盟団体にまで配分していたことが明らかになった,B会常任委員会の会計は,大学からの補助金および繰越金をどのように管理しているのか不明であり一千数百万円からの資金を扱っていた団体にも拘らず会計処理規則や内部監査規則も存在しないばかりでなく,特定のサークルや自治会と会計が一体化している等々きわめて不明朗である。B会常任委員会室でこれら多額の資金を日常的に管理し出納しているとは到底考えられない。こうした事実を勘案した結果,もはやB会常任委員会が『A大学学生の文化活動を促進する担い手として,大学が積極的に支援するのに値する団体とは認められないと判断せざるを得ない」,B会常任委員会がA大学新聞会・自称A祭実行委員会と一体となっていることの証左であり,第一学生会館中2階のB会常任委員会室は,不法に占拠されている旧東洋美術陳列室と一体となった使われ方をしていると認めざるを得ない,

B会常任委員会室は…外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない。大学公認の団体としてあるまじきことである

との記事を掲載した。
ウ 革マル派とは日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派の略語であり,マル学同とは革マル派の学生組織である日本マルクス主義学生同盟・革命的マルクス主義派の略語である。また,マル学同と深い関係を有する団体として全日本学生自治会総連合(革マル派系全学連ともいわれる。)が存在している。 また,A大学生自治6団体とは,商学部自治会常任委員会,社会科学部自治会常任委員会,第一文学部自治会常任委員会,第二文学部自治会執行委員会,原告常任委員会,第44回A祭実行委員会を指し,このうち,被告大学に公認されているのは原告常任委員会のみであり,被告大学の学部によって公認されているのは社会科学部自治会常任委員会のみである。
革マル派の機関誌である解放には,マル学同革マル派A大支部を先頭とするA大のたたかう学生たちは…B会の前期総会を…成功的に実現した,要するに,A大当局は,わがマル学同A大支部の指導のもとに先進的学生たちが各学部自治会やB会・A祭実行委員会の最先頭に立ってA大の反動的再編に反対する闘いや反戦・反安保闘争そしてまたA祭を頂点とする文化運動を断固として創造していること…,

たたかうA大生は…本総会(B会総会を指す。)を…大成功させた。…たたかうA大生は,この反動攻撃を打ち砕き,98年度の革命的な方針と盤石の組織体制を断固として構築したのである

,たたかうA大生は,本B会総会の成功的実現をつうじて…N当局によるB会の破壊攻撃をはね返す拠点を確固として築きあげたのである,首都圏のたたかう学生たちは,A大第一文学部自治会常任委員会と第二文学部自治会執行委員会のよびかけのもと…起ち上がった,A大学のたたかう学生たちは…B会後期定例総会を成功裡に実現し,新学館闘争を中軸とする96年度のB会の運動方針と執行部体制を加盟サークルの圧倒的支持によって確立した。…文化サークル戦線においても革命的学生運動の前進の拠点をガッチリと打ち固めたのである,当局の12・7『新学館説明会』をB会を中心とする全学の闘いで頓挫に追い込んだ,当局の規制をうち砕いてあのA祭を実現した,わがたたかうA大生たちは…B会総会や各学部自治委員総会を大成功させ,新たな闘いの体制を確立したのである,A大学のたたかう学生は,わが全学連派執行部のもとにあるたたかう自治会に対する極反動・A大N当局による破壊攻撃に抗し,7月初旬に相次いで各学部自治会の自治委員総会を成功させた,A大のたたかう学生たちは,7月3日に今春期の『新学館』闘争の勝利的地平を確認し,今後の闘いの指針を確立するために,前期定例B会総会を…圧倒的に実現したとの各記事が存在する(甲41,53,乙28,32,34ないし36,62,152(枝番を含む。),155,156,191)。
エ Rは,平成7年2月から平成11年2月まで原告常任委員会の委員長をしていた者であるが,平成13年1月29日,革マル派系全学連の主導するデモに参加し,そのデモを先導している様子が解放の写真に掲載されており,また,そのデモには原告常任委員会も参加しており,写真には原告の旗が写っている。 Rが原告の委員長に就任していたときに,副委員長に就任していたZは,革マル派系全学連の委員長を務めていた。
また,平成11年2月から平成13年2月まで原告の委員長を務めたSも,革マル派系全学連の主導するデモに参加している。
さらに,Eは,平成12年7月22日,革マル派系全学連の主導する沖縄サミット粉砕のデモに参加し,その前面に立っている様子が解放の写真に掲載されている(乙29,195(枝番を含む。),197,証人R,同S,同E)。 オ 原告は,少なくとも,平成10年において,3回にわたり,全日本学生自治会総連合(革マル派系全学連)の活動に学生を派遣し,その費用30万円を負担した(乙144(枝番を含む。),191)。 カ 被告大学法学部学生自治会の作成した新入生向けパンフレットには,原告が他のA大学生自治6団体と共に革マル派系組織として挙げられており,革マル派の学生と学外者の活動家によって支配されているものであって,問題があるとの認識が示されているほか,革マル派から身を守る知識と方法についてという項目においては,革マル派が同派を批判する学生に対し暴力,監禁,脅迫行為に及んでいることに加え,原告非加盟団体に対する補助金は一律に約32万円であるのに対し,原告が配分をしている原告加盟団体に対する補助金の額がそれぞれ異なっており,不公平で恣意的なシステムになっていること,1000万円以上に上るB会本部費の使途が不明であり,これを学生に公開する必要があることを述べている(乙155,156)。
キ 平成10年6月1日付け解放は,Y教授宅の電話を革マル派が盗聴した旨の報道を非難するとともに,警視
庁公安部の警察官がY教授宅に出入りし,同教授が警察権力と親交を深めていた旨の記事を掲載したが,原告は,いわゆる自治6団体の連名で,情宣ビラにおいて,同様にY教授が,A祭破壊のために公安警察と密会し,A祭を始めとする自治活動を破壊するための謀議をしていたとの事実を摘示し,被告大学の対応について,学生自治破壊,思想弾圧を行うものであると批判していた(乙35,64ないし66)。 ク 平成8年6月27日,被告大学第一学生会館内の原告の常任委員会室は,同年4月25日のα大学β校舎内において生じた革マル派による集団的暴行及び建造物侵入の被疑事実により警察による捜索を受け,また,平成10年12月8日,同大学講堂において行われた某国要人の講演会を妨害した被疑事実により警察による捜索を受けた。 また,平成13年3月5日,被告大学第一学生会館内の旧東洋美術陳列室2階,3階及び屋上プレハブ施設は,革マル派非公然活動家による有印私文書偽造,同行使,電気通信事業法違反の被疑事実により警察による捜索を受けた(乙119,153,154)。
(2) 以上の事実を前提とし,名誉毀損の成否について判断する。 ア 名誉毀損行為が,公共の利害に関する事実にかかり,専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実が真実であることが証明されたときは,当該行為には違法性がなく,また,行為者において,摘示された事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるときは,当該行為には故意又は過失がなく,結局不法行為は成立しないのであり,かつ,上記の事実の真実性等については,主要な部分又は重要な部分についての証明で足りるものである。さらに,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損行為等にあっては,当該意見ないし論評の前提としている事実について上記各要件の証明があったときは,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限りは,違法性を欠き,あるいは故意又は過失を欠くものとして,結局不法行為は成立しないものというべきである。
イ 本件各記事は,原告が,B会本部費として多額の金員を被告大学から受給しているほか,これまで,被告大学内の学生団体の一定部分を取りまとめる役割を求められていたことなどを前提としつつ,原告の会計報告の疑義,特定のセクトとの関連性等を指摘して,原告が真に被告大学内の学生団体の代表として適格性を有するかを広く被告大学学生に問いかけ,原告の運営の適正化を図ろうとするものであったと認めることができるから,本件各記事の掲載が,公共の利害に関する事実にかかるものであったことは,疑いがない。 また,その摘示方法も,特段の問題を認めることができず,前記(1)アにおいて認定したとおり,本件各記事が,Aウィークリーという学内向けの無料広報紙に掲載されたものであることも併せ考えれば,本件各記事の掲載において,その目的が専ら公益を図ることにあったことを疑わせる事情も認めることはできない。 したがって,本件各記事の掲載について,いわゆる公共性及び公益目的は,これを優に認めることができる。 ウ 次に,本件各記事が真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があるかなどの点を検討する。
(ア) 2001年(平成13年)4月12日号について 前記4において認定説示したとおり,原告の平成10年度及び平成11年度会計報告については,被告大学から疑義が投げ掛けられ,数度の質問及び回答のやりとりによっても必ずしも解明されていない点が残り,さらに,原告が,実体のない加盟団体に補助金を配分していた疑いがあったことも事実であると認められる。したがって,本号におけるB会の存在意義を問う!とのメインタイトル,第1回 『B会本部費』の支給停止についてとのサブタイトル」との下に掲載した,前記(1)イ(ア)に認定した記事の内容については,いずれも真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があるものと認められる。
(イ) 2001年(平成13年)5月10日号について まず,B会常任委員会に関わる1999年度の補助金…の会計報告に対する疑義が解消されなかった,1999年度B会本部費の会計報告に重大な疑義が指摘され,それが解消されないまま年度を越えたとの各記事及び2.B会常任委員会によるB会加盟サークルの支配との項目の下のB会常任委員会がB会加盟サークルの支配に利用した一つに,大学からの補助金の配分がある。…B会常任委員会は,各サークルに対する配分額について合理的とはいい難い格差を設けている。が,その基準は明らかでないとの記事については,前記4において認定説示したとおり,原告の平成10年度及び平成11年度会計報告については,被告大学から疑義が投げ掛けられ,数度の質問及び回答のやりとりによっても必ずしも解明されていない点が残り,さらに,原告が,実体のない加盟団体に補助金を配分していた疑いがあったことも事実であると認められることに加え,証拠(乙159,160)によれば,原告加盟団体間において,その補助金支給額に相当程度の格差があることが認められることに照らせば,当該記事についてもその真実性ないし相当性は認められる。
次に,

加盟サークルの支配のもう一つは,場所の割当である。…B会常任委員会は,サークルの出店の場所割を通じて加盟サークルを統制してきた

との記事については,前記8(1)において認定したとおり,原告が,新入生歓迎活動において,原告加盟団体の出店場所等を割り振るなどして仕切っていたことは事実なのであるから,この点についても,基本的に,真実性ないし相当性が認られる。
さらに,B会常任委員会が学生の自治あるいは表現の自由を隠れ蓑に行ってきた理不尽な所業,ところでB会常任委員会を長年にわたって背後から支配してきた政治セクトがいる。それが革マル派(資料1参照)であることは,学内では周知の事実であったが,そのことを誰も公然と口に出せない状況が続いていた。それは『革マル』批判を口にした教職員ばかりか学生もが,彼らから陰湿な嫌がらせを受けたり,あるいは執拗に付きまとわれたり,さらには暴行を受けたりしたからである。大学はこうした暴力や嫌がらせに対し一貫して抗議してきたが,革マル派に操られた学生たちは,学生自治への介入とか思想・信条の自由を否定するものなどと見当違いの主張をするのが常であるとの各記事及び革マル派支配の構図という図表による,革マル派が原告常任委員会を支配しているとの構図の点について検討すると,前記(1)ウないしキにおいて認定したとおり,革マル派の機関紙解放が,わがたたかうA大生などとして原告のことを繰り返し言及し,革マル派系全学連執行部の下にある各学部の自治会において自治委員総会を成功させ,さらには,原告においてB会総会を始めとする諸活動を成功させたことを大々的に喧伝していること,原告の歴代の代表者等が革マル派系全学連の主導するデモに積極的に関与し,原告は革マル派系全学連の活動に学生を派遣しその費用を負担していること,原告は,解放の記事に同調し,いわゆる自治6団体の連名で,Y教授がA祭破壊のために公安警察と密会していた旨の情宣ビラを作成配付し,被告大学の対応を学生自治破壊,思想弾圧を行うものであると批判していたこと,被告大学法学部学生自治会作成のパンフレットには,革マル派が同派を批判する学生に対し暴力,監禁,脅迫行為に及んでいることの指摘があることなどが認められる。かかる事実に照らせば,原告が革マル派と深い関係を有し,その強い影響下にあると考えるのはむしろ当然のことであって,上記の記事の主として意味するところである原告が革マル派の支配下にあるとの事実及びこれを関連する記事内容については真実性ないし相当性の証明があると認められるから,この点についても真実性ないし相当性を認めることができる。 加えて,A祭実行委員会を自称する学生たちは,臨時学部長会決定と,大学構内にステージを構築して演奏会などを行うことを禁じた東京地裁の仮処分命令を無視して,10月31日・11月1日の両日,学外の革マル派70~80人の助勢を恃んで『Cフェスタ』なるイベントを違法に強行した。そのイベントに主導的に参加したのがB会常任委員会である,大学は現在,革マル派に操られた学生たちの学内のルールを無視した行為を正し,学園の正常化に取り組んでいる。その過程で,B会常任委員会に対し,施設貸与の便宜供与を,また『B会本部費』の支給を中止した。B会常任委員会にはもはや自治団体としての機能を認められないと考えるからであるとの各記事についても,上記に判示したところに加えて,前記7において認定説示したとおり,当庁の仮処分に違背して開催されたCフェスタに原告が主導
的に関与したこと,その結果原告に対しては被告大学からの各種便宜供与が停止されるに至ったことはいずれも事実であるのだから,これらの各記事は,いずれも真実であると認めることができる。 したがって,本号掲載の各記事等についても,真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があるものと認められる。
(ウ) 2001年(平成13年)5月24日号について まず,会計報告において,B会常任委員会の会計全体に関して多くの問題点が明らかになり…との記事及び1.実体のないB会加盟サークルにも補助金を配分との項目の下の大学からの補助金で問題があるのは,『B会本部費』だけではない,B会常任委員会はこれを行うことを怠って,実体がないサークルにも,数十年にわたって,大学からの補助金を配分してきたのであるとの各記事の点については,既に上記(ア)(イ)において判示したとおり,原告の会計に疑義がありこの疑問が解消されていなかったこと及び原告の加盟団体に対する補助金配分に疑問があったことは事実であるから,この点につき,真実性ないし相当性を認めることができる。 次に,B会常任委員会は,本シリーズの第2回(本紙931号参照)でも説明したように,1997年10月31日と11月1日に,学外の革マル派70人ないし80人の助勢を恃んで強行された『Cフェスタ』なるイベントに主導的に参加しているとの記事についても,これが真実であると認められることは,上記(イ)において判示したとおりである。 さらに,1998年5月に,革マル派非公然活動家が本学前学生部長宅の電話盗聴容疑によって指名手配された際には,前学生部長がA祭破壊のために警察官と密会していたとする全く事実と反する情宣活動を行った。こうした不当な行為を繰り返し行った…との記事については,前記(1)キにおいて認定したとおり,原告が情宣ビラにおいてY教授がA祭破壊のために公安警察と密会していたとの事実を摘示していたことは事実であり,本件全証拠によるも,Y教授が公安警察と密会していたとの事実を認めることができず,被告大学は,Y教授がA祭破壊のために警察官と会っていたとの点については強く否定する立場を取っていたものであるから,上記の記事は,事実を前提とする論評として,不相当なものとはいえない。
加えて,B会常任委員会室は…異常な使われ方をしているとの記事については,前記(1)クにおいて認定したとおり,原告常任委員会室が犯罪の被疑事実に基づいて2度にわたって警察の家宅捜索を受けたことは事実であり,そうすると,かかる事実から,上記のような評価をすることも不当であるとはいえない。 以上によれば,本号掲載の各記事についても,真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があり,あるいは論評として許容される範囲内のものであると認められる。 (エ) 2001年(平成13年)6月7日号について
前記4(3)エ(エ)において認定したとおり,キリスト教共助会,建設者同盟,コール・ムーゼ,婦人問題研究会,ユネスコ研究会,民主政治学会,農村問題研究会,文章表現研究会,劇団自由舞台及びアジア・アフリカ問題研究会が昭和59年ないし昭和60年以降,学生の手帖に会長,幹事長,活動内容,連絡先等を掲載しなくなり,実体が認められなくなったのに,原告は,これらの団体に対しも,補助金を支給していたのであるから,原告における補助金の配分について,実体のない団体に対し,不正に補助金を支給していたのではないかと疑うに足りる十分な理由が存在したものといわなければならない。本号掲載の各記事は,いずれも真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があるものと認められる。
(オ) 2001年(平成13年)6月28日号について まず,B会常任委員会の会計にまつわる疑義が解消されなかったとの記事については,既に上記(ア)(イ)において判示したとおり,原告の会計報告について疑義があり疑問点が解消されていなかったことは事実であるから,この点については真実性ないし相当性が認められる。
次に,B会常任委員会は,前学生部長がA際破壊のために警察官と密会していたなどとまったく事実に反する虚偽の情宣を行ったとの点についても,既に(ウ)において判示したとおり,相当な論評と認められる。 さらに,本シリーズで明らかにしてきたように,B会常任委員会の活動はこの目的から大きく逸脱してきており,とても『学生の文化活動を促進』する牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない,今日,B会,なかんずくその執行機関たるB会常任委員会の活動を見るに,上記目的を果たしているとは考えられない状況である,大学はB会の代表性についても疑問に思っている,上述のとおり,大学は,B会常任委員会の活動がB会規程に掲げられた目的から大きく逸脱し,もはや『A大学学生の文化活動』の牽引車としての役割を期待できなくなったと認めざるを得ない。大学はすでに,B会常任委員会に対し,いくつかの便宜供与を中止しているが,ここに至って引き続き常任委員会室を使用させることに懐疑的にならざるを得ないとの各記事についても,上記(ア)ないし(エ)において判示してきた事情に照らせば,原告に対する評価として相当な範囲内のものである。 したがって,本号掲載の各記事は,いずれも真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があり,あるいは論評として許容される範囲内のものであると認められる。 (カ) 2001年(平成13年)7月12日号について 本号における自らの会計処理すら満足にできないだけでなく,B会本来の目的から逸脱した活動をしているB会常任委員会との記事については,上記(ア)ないし(オ)において判示してきた, 原告の会計報告に疑義が存在したこと,原告加盟団体に対する補助金配分を適切に行ってこなかった疑いが持たれていたことなどの事情に照らせば,真実性ないし相当性の証明があり,あるいは原告に対する評価として相当な範囲にとどまるものと認められる。 したがって,本号掲載の記事は,いずれも真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があり,あるいは論評として許容される範囲内のものであると認められる。 (キ) 2001年(平成13年)7月19日号について まず,B会常任委員会は…B会に対する補助金の配分権(規程第4条第1項第4号)を濫用して実体がない加盟団体にまで配分していたことが明らかになった,B会常任委員会の会計は,大学からの補助金及び繰越金をどのように管理しているのか不明であり一千数百万円からの資金を扱っていた団体にも拘わらず会計処理規則や内部監査規則も存在しないばかりでなく,特定のサークルや自治会と会計が一体化している等々きわめて不明朗である。B会常任委員会室でこれら多額の資金を日常的に管理し出納しているとは到底考えられない。こうした事実を勘案した結果,もはやB会常任委員会が『A大学学生の文化活動を促進する担い手として,大学が積極的に支援するのに値する団体とは認められないと判断せざるを得ない」との各記事については,既に上記(ア) (イ)において判示したように,原告の会計報告に疑義が存在したこと,原告加盟団体に対する補助金配分を適切に行ってこなかった疑いが持たれていたことに加え,前記4(1)カにおいて認定したとおり,原告は,会計の内部監査について規則として文書化したものがないことを自認し,多額の補助金及び繰越金の管理については回答を拒絶しているのであるから,以上の事実に照らせば,上記各記事についてはいずれもその真実性ないし相当性を認めることができる。 次に,常任委員会室が警察の家宅捜索を受けるなど外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない,等々が明らかになった,B会常任委員会がA大学新聞会・自称A祭実行委員会と一体となっていることの証左であり,第一学生会館中2階のB会常任委員会室は,不法に占拠されている旧東洋美術陳列室と一体となった使われ方をしていると認めざるを得ない,

B会常任委員会室は…外部セクトの拠点と化していると認めざるを得ない。大学公認の団体としてあるまじきことである

との記事については,前記(1)クにおいて認定したとおり,原告常任委員会室及び旧東洋美術陳列室がいずれも革マル派による集団的暴行,建造物侵入の被疑事実等により警察による捜索を受けたことは事実であり,また,証拠(甲10)によれば,原告も,原告委員長及び副委員長が旧東洋美術陳列室にいたこと自体は認めているのである。そうすると,かかる事実から,上記のような評価を下すことも不当であるとはいえない。
さらに,B会の執行機関である常任委員会の活動がB会規程の目的から大きく逸脱してきている,常任委員会が規程に則った活動をしていないとの各記事については,上記に判示したところに照らし,原告に対する評価として相当な範囲にとどまるものと認められる。
したがって,本号掲載の記事は,いずれも真実であるか,又は真実であると信じるについて相当の理由があり,あるいは論評として許容される範囲内のものであると認められる。 (3) 以上によれば,本件各記事は,いずれも公共の利害に関する事実にかかり,専ら公益を図る目的に出た場合であって,かつ摘示された事実が,真実であるか,真実であると信ずるについて相当な理由があり,あるいは相当な論評として許容される範囲内のものであると認められるのであるから,本件各記事について個別の名誉毀損性(争点(9)ア)を判断するまでもなく,被告大学が本件各記事をAウィークリーに掲載したことは不法行為を構成しないものといわなければならない。
よって,争点(9)にかかる原告の主張も認められない。 10 争点(10)(被告は,D教授を通じて,Eに対し,原告からの脱退を指示したか,また,それが違法であるか)について
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 平成13年5月ころ,社会思想研究会のEからD教授に会長就任の依頼があった。D教授は,それまでEとは面識がなかったが,学生に充実した大学生活を送ってほしいとの考えを持っており,以前にも学生の会の会長を引き受けた経験があったため,Eの話を聞くこととした。
D教授は,Eから社会思想研究会の活動内容を聞き,さらに,社会思想研究会について革マル派と関係があるかを尋ねたところ,Eからは関係がないという回答を得たので,会長を引き受けることとした。 Eは,当時,社会思想研究会の幹事長であり,A大学生自治6団体の一つである商学部自治会の委員長に就任していたし,革マル派系全学連の主導する沖縄サミット粉砕のデモに参加し,その前面に立っている様子が解放の写真に掲載されていた(前記9(1)エ,乙192,証人D)。 イ Eは,同年6月5日,社会思想研究会が新学生会館の部室を申請する書類にD教授の署名捺印が必要であったことから,D教授に電話をかけた。その電話の中で,D教授から,社会思想研究会は原告を脱退した方がよい,その方が補助金の面でもメリットがあるのではないかとの話がされ,Eは,その場では返事を留保した(甲83,証人E)。 ウ Eは,社会思想研究会として原告から脱退はしないと決めていたが,D教授の脱退慫慂及びそれに対する被告大学の関与について証拠を残そうと考え,A大学新聞会から録音機能付きの電話を借りて,同月6日,D教授に電話をかけ,D教授との間で,以下のとおりの会話を行い,その内容を録音したが,その録音についてD教授の同意は得ていなかった。
Eは,D教授に対し,原告からの脱退の話を持ち出し,原告から脱退した後にどのようになるのか具体的に想定できないという話をしたところ,D教授は,Eに対し,原告から脱退すると,被告大学からサークルに活動費が直接支払われることを保証すること,原告を脱退してもサークルにとってマイナスになることはないこと,被告大学は,ある特定の集団に自治会が牛耳られていることを断ち切りたいと考えていること,学生の金である自治会費を特定のセクトのために使うのは許される話ではないことを述べた。さらに,D教授は,Eからの,上の方の先生からそう言われたんでしたっけとの質問に対し,人間科学部教務副主任であるQ助教授といつも連絡があって,上記のような指導をしてくれと言われていること,EをQ助教授に紹介し,3人で話す時間を設けることを述べたところ,Eが,同教授から新学生会館の部室使用を申請する書類に署名捺印をもらい,また,同教授に直接事情を聴くとともに,D教授からEをQ助教授ないし同助教授に代わる教員に引き合わせるという話があり,翌日昼休みにD教授の研究室を訪ねることになった。 なお,Q助教授は,被告大学人間科学部学生担当教務副主任であり,D教授と同じく心理学を専攻していたこともあって,両名は同僚として親しい関係にあった(甲2,甲83,乙192,証人D,同E)。 エ Eは,翌7日,前日と同様,原告から脱退する意思はなかったものの,会話内容の証拠化を企図し,録音機を携えて,被告大学所沢キャンパスの人間科学部D研究室へ赴き,D教授と面談をして,新学生会館の部室使用を申請する書類にD教授の署名捺印をもらうとともに,D教授との間で,以下のとおりの会話を行い,その内容を録音したが,録音についてD教授の同意は得ていなかった
D教授は,Eに対し,社会思想研究会が原告を脱退したとしても,補助金は絶対出るし,お金が下りることはもう決定しており,原告加盟団体をやめたとして損になることはない,被告大学が原告を抜け出したサークルをマイナスにすることはない,迷惑になることは絶対ないことを保証すること,原告加盟団体であっても現時点では補助金はもらえるが,原告にとどまっていると補助金がもらえなくなる可能性もあることなどを申し向けて,原告からの脱退を勧めた。その際,D教授は,原告等が公金横領し,被告大学から何千万円も入ってくる補助金を自分らの運動資金にしていること,被告大学の学生でないところに補助金が流れていること,被告大学の意図は,原告を実質上有名無実にすること,要するに革マルつぶしであること,これらの話は,被告大学の9学部の教務主任が集まる全体の教務主任会で話し合われており,教務副主任からあまり強くでなくていいから原告からの脱退を指導してくれと言われていること,人間科学部では原告に加盟している団体の顧問(会長)に就いている者が2名いたと言われたこと,D教授から原告脱退の話があったことを公にしてほしくないこと,クラブ員には,公的に圧力かけた形になるから教務主任ということは言わずに,D教授の責任で脱退を勧められたということにして,サークル会員が主体的にやめるという形を取ってほしいことを述べた。そして,D教授は,EをQ助教授及び教務主任であったγに引き合わせようとしたが,両名とも不在等の理由で引き合わすことができなかった。
オ EがD教授の署名押印を得た新学生会館の部室使用に関する申請書ないし誓約書は,同月8日,被告大学に提出された。それらの書類の中には,私は,会長として,本サークルが新学生会館に割り当てられた部室を使用するにあたり,A大学学生会館規程をはじめ大学の定める諸規則を遵守するよう指導に努めますとの記載が存在していた(乙125ないし127)。
カ 同月13日,原告は,大学当局による違法な脱退工作に抗議します!との標題の情宣ビラを発行し,その中で,D教授(ビラにおいてはB教授とされている。)とEとの間で交わされた上記ウエ記載の会話の一部を掲載し,D教授及び被告大学を非難した(乙198)。
キ D教授は,同年7月に入って,上記カの情宣ビラが配布されていることを知って,同月5日,社会思想研究会の会長を辞任し,現在では教育学部のδ助教授が同会の会長となっている(甲83,乙192,証人D,同E)。 (2) 被告は,EはD教授の同意を得ることなく,D教授との会話内容を録音したものであって,かかる行為は違法であるからD教授とEとの会話の秘密録音の反訳書である甲2号証の証拠能力はないと主張するが,本件において,D教授の同意を得ていなかったものの,証拠能力を否定することまではできない。 (3)ア 上記(1)において認定した事実等を前提に,まず,D教授の発言が被告大学の意思に基づくものであるか否かを判断する。
上記(1)ウエにおいて認定したとおり,D教授は,Eに対し,同年6月6日には,人間科学部教務副主任であるQ助教授といつも連絡があって,原告からの脱退の指導をしてくれと言われていることを述べ,同月7日には,9学部の教務主任が集まる全体の教務主任会で原告から脱退等について話し合われており,教務副主任からあまり強くでなくていいから原告からの脱退を指導してくれと言われていること,クラブ員には,公的に圧力かけた形になるから教務主任ということは言わずに,Dの責任で脱退を勧められたということにして,サークル会員が主体的にやめるという形を取ってほしいことを述べているのであり,そのようなD教授の発言内容に加えて,Eを教務主任及び教務副主任に引き合わそ
うとしていることからすると,D教授がQ助教授や被告大学人間科学部の教務等の被告大学側教職員から社会思想研究会について原告からの脱退を勧めること,その際,被告大学が組織として関与しているとの印象を与えることを避けるように配慮することなどの指示を受けていたことが推認できる。
イ 被告は,社会思想研究会の幹事長(当時)のEは,原告と連動して活動をしていたA大学商学部自治会の委員長に就任していたのであり,被告大学学生部長はもとより,各学部の学生担当教務主任及び副主任を務める教授らも例外なく,A大学商学部自治会の活動傾向及びEが同会の委員長に就任していることを知っていたものであるから,Eに対し,D教授を通じて原告からの脱退を働きかけることは,無用な紛争を招くことが明らかであって,そのようなことはあり得ないことであるとし,D教授は,仲の良い同僚である人間科学部学生担当教務副主任であるQ助教授らから立ち話的な雑談の中で,原告にまつわる問題等を聞き,それをEに伝えたにすぎないものであると主張する。 確かに,証拠(証人P)によれば,原告やA大学商学部自治会の状況,その構成員等について把握し,原告に対する措置等について議論をしていた被告大学の学生担当教務主任及び副主任において,EがA大学商学部自治会の委員長に就任していたことを知っていたことは推認されるが,社会思想研究会の幹事長がEであるという事実までを知っていたかという点に関しては明らかではない。他方で,証拠(甲2)によれば,D教授は,Eに対し,つまり人間科学部では,そのつまり,教務副主任から聞いたのは,人間科学部では2人いたんだってさ。その顧問やっててB会に入ってるのの顧問は2人いたので,あまり強くじゃなくていいからそういうことを指導してくれとぶっちゃけた話,言われたわけなどと発言していることが認められるから,被告大学の学生担当教務副主任等から,社会思想研究会を含む2団体について,団体を特定して原告からの脱退の働きかけの指導が行われていたと考えるのが自然である。以上を総合すると,被告大学からは,D教授に対し,原告の状況を説明するとともに,社会思想研究会について原告から脱退をするように指導をしてほしいこと,その際には,学生の会にとって重大な関心事である補助金の問題を始めとして脱退に当たっては不利益がないことを説明してほしいこと,一方で,この問題に被告大学側が積極的に関与していることの言及は避けてほしいというような働きかけがあり,これを聴いたD教授が,上記において判示したEの立場等を知らなかったため,特に警戒心を持つこともなく,被告大学の方針を忖度しつつ,自己の考えや推測を交えながら,原告からの脱退を勧めたと認めるのが相当である。
(4) そこで,次に,D教授がEに対し原告からの脱退を勧めたことの違法性及び被告大学の指導の違法性について検討する。
ア 学生の会に関する規程4条には,

会長は,会の活動を統括し,大学に対してその監督の責に任ずる。

と規定されており,加えて,前記(1)オにおいて認定したとおり,D教授は,学生の会の会長として,被告大学の定める諸規則を会員が遵守するよう指導することを被告大学に対して誓約していたことにも照らせば,D教授が,学生の会である社会思想研究会の会長として,社会思想研究会の幹事長であるEに対し,同会の運営等について指導,監督すべき立場にあったものと認めることができる(学生の会に関する規程が有効であることについては,前記4(3)ウにおいて判示したとおりである)。
そして,D教授の発言は,前記(1)ウエにおいて認定したとおり,社会思想研究会が原告加盟団体として残る場合と脱退する場合のメリット及びデメリットを説き,原告の活動の問題点を説明するなどして,Eに対し,脱退を促す内容に止まっており,原告加盟団体から脱退をしないことにより,社会思想研究会にとって必要な書類に署名しないとか,補助金を絶対支給しないというような不利益を課したり,特別の利益誘導をしているとは認められないこと,加えて,これまで判示したとおり,原告は,B会本部費の会計報告に多大な疑義があり,裁判所の仮処分に違背してCフェスタを強行するなどして被告大学と対立し,被告大学から各種の便宜供与の停止を受けていたこと,原告と革マル派は深いかかわりがあると一般に考えられていたところ,D教授は社会思想研究会の会長就任に際して,社会思想研究会と革マル派との関係の有無を気にかけていたことなどの事情も併せて考慮するならば,本件におけるD教授の発言及び脱退を勧めた行為は,学生の会の会長という立場からする監督指導として許される範囲のものであって,違法とは認められないといわなければならない。
イ また,前記4ないし9に認定説示したとおり,被告大学は,大学内における団体に関する運営の適正化を図るために種々の施策を行ってきており,また,原告には上記アに判示した諸事情があり,しかも,D教授の発言も不相当なものではなかったことにかんがみれば,被告大学が,D教授に対し,社会思想研究会について原告からの脱退を指導するように要請していた行為も違法であると認めることはできない。 ウ なお,前記(1)アないしカにおいて認定したように,D教授は,元々Eとは面識がなく,社会思想研究会のことも知らなかったものであるが,学生に充実した大学生活を送ってほしいという善意から会長を引き受けたものであり,また,本件において,Eは,当初より原告から脱退する意思は全くなかったにもかかわらず,D教授の発言を録音して証拠化することを専らの目的として2度にわたりD教授と会話をし,一方で原告からの脱退も考えないではないかのような態度も示しつつ,他方で脱退慫慂の発言を積極的に誘導し,ひとたびそのような発言をテープに録音するや,原告が早手回しに会話内容を情宣ビラにおいて公表して非難するなどしているのであり,その手法は,善意と信頼を悪用したいわばだまし討ちとも評すべきものであって,そもそもD教授の上記発言を理由に,原告において損害賠償を請求すること自体不相当である。
(6) 以上のとおり,D教授及び被告大学が,Eに対し,原告からの脱退を勧めた行為が違法であるとは認められないから,原告の被告大学に対する損害賠償,謝罪文の掲載及び脱退慫慂の禁止の請求も認められない。 11 よって,以上において検討した原告の主張は,すべて認められないから,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は,いずれも理由がなく,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官 前 田 順 司


裁判官 浅 井 憲
裁判官 熊 代 雅 音

注)別紙3,別紙4は省略

別紙1

謝 罪 文
1 当大学は,当大学発行のAウィークリー第928号(2001年4月12日付)から第941号(同年7月19日付)にかけて,6回にわたり,B会の存在意義を問うとの表題のもとに,
① 貴団体常任委員会の1999年度会計にあたかも疑義あるかのごとき ② 貴団体常任委員会があたかも革マル派に背後から支配され操られながら,加盟団体(サークル)を支配しているかのごとき,
虚偽の事実を掲載し,貴団体の名誉・信用を著しく毀損したことを認め,ここに謝罪致します。2 また,当大学人文科学部教授Dは,貴団体加盟の社会思想研究会の会長であった2001年6月6日から7日にかけて,社会思想研究会の幹事長E君に対し,貴団体を誹謗するなどして,同会が,貴団体から脱退するように慫慂し,当大学の公認の貴団体の結社の自由などを侵害したことを認め,ここに謝罪致します。 今後このようなことをしないよう誓約致します。
2001年 月 日
学校法人 A大学
総 長 N
B会
委員長 F 殿
別紙2
物件目録
東京都新宿区ab丁目c番d号所在のA大学新学生会館東棟のうち別紙図面表示のマーカーで塗りつぶしたいずれか1室
注)別紙図面省略

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