判例検索β > 昭和23年(オ)第130号
人身保護請求
事件番号昭和23(オ)130
事件名人身保護請求
裁判年月日昭和24年1月18日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第3巻1号10頁
原審裁判所名横浜地方裁判所
原審裁判年月日昭和23年10月15日
判示事項一 子の監護権と人身保護請求。
二 不法に始められた拘束と人身保護法の適用のない場合。
裁判要旨一 夫婦離婚等の場合において、不法に子を拘束する夫婦の一方に対して法律上子の監護権を有する他の一方は、人身保護法に基いて救済を請求することができる。
二 母が暴力をもつて満二歳に達しない幼児を連れ去つたとしても、その子が現在平穏に養育され幸福である場合には、現在の状態をもつて不法の拘束として、人身保護法を適用する必要はない。
参照法条人身保護法2条
裁判日:西暦1949-01-18
情報公開日2017-10-18 10:38:16
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告理由について。
一、夫婦離婚等の場合において、不法に子を拘束する夫婦の一方に対して、法律上子の監護権を有する他の一方から、人身保護法にもとづいて、これが救済を請求し得ることは、所論のとおりである。原判決もこれを否定しているものではない。 二、原判決は、請求者Aとその妻である拘束者B1間の離婚はまだできていない、従つて、B1は親権者母として被拘束者D及びEの二子に対して法律上、監護の権利、義務を有することを認めた。(請求者の主張するような、AとB1間に、二人の子供は、Aのみの親権監護の下におくという趣旨の合意が成立した事実は認められないとし、従つて、B1には二子に対する監護權はないのであるという請求者の主張を排斥した)しかしながら、原判決は、B1の右二子に対する拘束は同人か右二子に対して法律上監護權をもつているというだけの理由で正当であると判断したのではなく、拘束者B1、同B2の両名は被拘束者等に衣食も十分與えず、榮養失調状態に放置して顧みないという請求者主張の事実は認められない、B1は二子を養育する決意を有することが認められるし、未だ生後一年にも満たない乳児E、及び満二年にも足りない幼児Dは、これを母である拘束者B1に監護させるのが適当であつて、同人等を今直に父親である請求者の許に引渡すのは幼少な被拘束者等の幸福でないという判断の下に、本件B1等の拘束は親権者として法律上正当な監護權にもとづくのみならず、その実質的にも何ら、不当でないとして本件請求を棄却したものであることは、原判文上、きわめて明らかである。すなわち、原判決は論旨のいうように、たゞ人身保護法第二条の法律上正当な手續によらないでという意義を、B1にも子に対する監護權があるという論旨のいわゆる形式的にのみ判断して、本件はこれに当らぬとしたのではなく、論旨のいわゆる

その拘束が、その時の状態において、実質的に不当であるか否か

を考量した上で、本件の拘束は実質的にも不当にあらず、従つて、同法第二条の場合に該当しないものとして、本件請求を排斥したのである。この点に関する所論は原判決の趣旨を正解しないで、原判決を非難するものというの外なく、その理由がない。
三、離婚等の場合において、だれが子の監護養育の任にあたるか、その他これに必要な事項は、夫婦間の協議で定めるべきであり、若し、その協議の調わないときは、家庭裁判所において、これを定めるのであつて、本件においても、若し離婚の場合とならば、子供の監護養育についての恒久的の措置はそのときに決定せられるのであるが、今日、それらの未解決の状態において、人身保護請求事件の過程にあつては、一応、子の所在を原判決のごとて母B1の膝下におくことをもつて子の幸福を図る所以であると認めたことは適当の措置であるといわなければならない。請求者は、B1等は暴力をもつて、長男Dを奪ったものであるから不法であると主張する、暴力をもつて奪った事実かあるかどうかは原審の確定していないところであるが、かりに、暴力を以て子を奪つたとして、その暴力行為の社会悪として憎むべきは勿論であり、その暴力行為が刑罰法規にふれるかぎりは、処罰制裁を受けるべきは当然であつて、若し現在においてもその拘束が暴力をもつて行われているとか、或はその暴力奪取の結果が現在の拘束にも何らかの影響を與えているという場合ならば、もとより、速かにその暴力を排除して被拘束者を自由の天地に解放するということは人身保護法の使命とするところであるけれども、かりに暴力で奪つたという事実があつたとしても、今日母の膝下に平穏に養育せられている状態が原審の認定したごとく子供のために、むしろ、幸福であるとしたならば、その暴力行為に対する刑事上の問題はともあれ、人身保護法の適用の問題としてはことさらに、現在の状態をもつて、不法の拘束なりとし子供を母のもとから取上げて、強いて父のところへ返さなければならないということはない。いづれ恒久的にどちらに養育されるかはやがて当事者間の協議若しくは家庭裁判所の審判又は調停等によつて、決定されるのであるが、それ迄の措置としては、とにかく、まだ三才若しくは当才の乳幼児のことであるから、これを母のもとにおくことを相当と考えた原審の判断は、まことに情理をそなえたものといわなければならない。
四、所論甲疏第一、二号証、同第四、五号証、及び証人Fの証言についても、原判決は右疏明方法を以ては、請求者主張の事実を疏明するに足りないとする趣旨であることは、原判文上看取せられるところであるから、その点について、原判決に、判断の遺脱ありとする論旨は、また、採用することはできない。その余の論旨は、要するに、原審の専權に属る疏明方法の取捨、判断及び事実の認定を非難するものであつて、上告適法の理由とならない。
よつて、本件上告は理由のないものと認め、民事訴訟法第三九六条第三八四条第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
右は、全裁判官の一致した意見である。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 霜 山 精 一 裁判官 塚 崎 直 義 裁判官 栗 山 茂 裁判官 藤 田 八 郎
トップに戻る

saiban.in