判例検索β > 昭和42年(オ)第1455号
違法拘束救済人身保護請求
事件番号昭和42(オ)1455
事件名違法拘束救済人身保護請求
裁判年月日昭和43年7月4日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第22巻7号1441頁
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号昭和42(人)2
原審裁判年月日昭和42年11月30日
判示事項一、意思能力のない幼児の監護と人身保護法および同規則にいう拘束
二、夫婦の一方から他方に対する人身保護法に基づく幼児引渡請求許否の判断基準
裁判要旨一、意思能力のない幼児を監護することは、監護方法の当不当または愛情に基づく監護であるかどうかとはかかわりなく、人身保護法および同規則にいう拘束と解すべきである。
二、夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡を請求した場合には、夫婦のいずれに監護させるのが子の幸福に適するかを主眼として子に対する拘束状態の当不当を定め、その請求の許否を決すべきである。
参照法条人身保護法2条1項,人身保護規則3条,人身保護規則4条
裁判日:西暦1968-07-04
情報公開日2017-10-18 07:13:29
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主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人小林保夫、同鈴木康隆の上告理由第一点について。
意思能力のない幼児を監護するときには、当然幼児に対する身体の自由を制限する行為が伴なうものであるから、その監護自体を人身保護法および同規則にいわゆる拘束と解するに妨げないものであることは、当裁判所の判例(昭和三二年(オ)第二二七号同三三年五月二八日大法廷判決民集一二巻八号一二二四頁)の趣旨とするところである。このことは、右監護の方法の当、不当または愛情にもとづくかどうかとは、かかわりのないことである。原判決のこの点に関する判断は、右と同趣旨と解せられるから、正当であつて、所論の違法はない。論旨は、これと異なる見解のもとに原判決を非難するものであつて、採用することができない。 同第二点および第三点について。
夫婦関係が破綻に瀕しているときに、夫婦の一方が他方に対し、人身保護法にもとづきその共同親権に服する幼児の引渡を請求することができる場合のあること、および右の場合、裁判所は、子を拘束する夫婦の一方が法律上監護権を有することのみを理由としてその請求を排斥すべきものでなく、子に対する現在の拘束状態が実質的に不当であるか否かをも考慮して、その請求の許否を決すべきであることは、当裁判所の判例とするところであり(昭和二三年(オ)第一三〇号同二四年一月一八日第二小法廷判決民集三巻一号一〇頁参照)、右拘束状態の当、不当を決するについては、夫婦のいずれに監護せしめるのが子の幸福に適するかを主眼として定めるのを相当とする。そして、夫婦が別居し未だ離婚に至らない場合において、夫婦のいずれがその子を監護すべきかは、いずれ恒久的には、夫婦離婚の際、その協議により、協議がととのわないときは、家事審判法、人事訴訟手続法所定の手続により定められるものではあるが、それまでの間、暫定的に子を監護すべき親として夫婦のいずれを選ぶべきかを決するについても、主として子の幸福を基準としてこれを定めるのが適当といわなければならない。
原審が適法に確定した事実関係によれば、被拘束者(昭和四一年七月二六日生)は、上告人、被上告人夫婦間の嫡出子であつてその共同親権に服する者であるが、生後一カ月余で右夫婦が別居したため、以来約一年二カ月にわたり母である被上告人のもとで養育監護され、同人が外勤する間はその実母に事実上監護されていたこと、および上告人はこの間被拘束者のために金銭的支出をしなかつたばかりか、被上告人から金銭的要求がなければ、同人および被拘束者の籍を抜いてやつてもよいと述べるなど、父としては、いささか被拘束者に対する愛情が不足していることが窺われるばかりでなく、上告人が被拘束者を自己の許におくについては、原審認定のとおりいちぢるしく不穏当な手段を弄している点からすれば、上告人の被拘束者に対する監護養育に適切を欠くおそれなしとせず、また上告人が被拘束者の監護養育を委ねたDは、拘束者である上告人の止宿先の住人にすぎない第三者であるというのであつて、被拘束者が未だ二才に満たない幼女であることを併せ考慮するときは、同女を上告人のもとにおくよりも母である被上告人の膝下に監護せしめることが被拘束者の幸福を図るゆえんであること明白といわなければならない。 上告人が指摘するとおり、人身保護法による救済の請求については、人身保護規則四条本文に定める制約特に拘束の違法性が顕著であることの制約が存し、幼児引渡を求める人身保護請求についても右の制約が存するものではあるが(前記昭和三三年五月二八日大法廷判決参照)、前示本件の事実関係のもとにおいて、夫婦の一方が他方の意思に反し適法な手続によらないで、その共同親権に服する子を排他的に監護することは、それ自体適法な親権の行使といえないばかりでなく、その監護の下におかれるよりも、夫婦の他の一方に監護されることが子の幸福を図ること明白であれば、これをもつて、右幼児に対する拘束が権限なしになされていることが顕著であるものというを妨げないものである。
原審も右と同旨の見解にもとづくものといえないわけでないから、原判決には所論の違法はなく、論旨は、いずれも右と異なる見解のもとに原判決を非難するか、原判決を正解せずしてこれを攻撃するに帰し、採用することができない。また、所論引用の最高裁判例は、本件と事案を異にし、原判決が右判例に反するものということはできない。
よつて、人身保護規則四六条、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 松 田 二 郎 裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官入江俊郎は海外出張のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 長 部 謹 吾
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