判例検索β > 昭和61年(オ)第1476号
損害賠償
事件番号昭和61(オ)1476
事件名損害賠償
裁判年月日平成5年4月6日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第47巻6号4505頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号昭和61(ネ)1723
原審裁判年月日昭和61年9月29日
判示事項一 内縁の配偶者と自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」
二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合に既に死亡者の内縁の配偶者が同条項によりてん補を受けた扶養利益の喪失に相当する額を死亡者の逸失利益の額から控除することの要否
裁判要旨一 内縁の配偶者は、自動車損害賠償保障法七二条一項にいう「被害者」に当たる。
二 自動車損害賠償保障法七二条一項により死亡者の相続人に損害をてん補すべき場合において、既に死亡者の内縁の配偶者が同条項により扶養利益の喪失に相当する額のてん補を受けているときは、右てん補額は、相続人にてん補すべき死亡者の逸失利益の額からこれを控除すべきである。
参照法条自動車損害賠償保障法72条1項
裁判日:西暦1993-04-06
情報公開日2017-10-18 06:44:04
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主 文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人らの負担とする。
理 由
上告代理人大澤孝征、同近藤文子、同中松村夫、同福嶋弘榮の上告理由第一の一1について
自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)七二条一項に定める政府の行う自動車損害賠償保障事業は、自動車の運行によって生命又は身体を害された者がある場合において、その自動車の保有者が明らかでないため被害者が同法三条の規定による損害賠償の請求をすることができないときは、政府がその損害をてん補するものであるから、同法七二条一項にいう被害者とは、保有者に対して損害賠償の請求をすることができる者をいうと解すべきところ、内縁の配偶者が他方の配偶者の扶養を受けている場合において、その他方の配偶者が保有者の自動車の運行によって死亡したときは、内縁の配偶者は、自己が他方の配偶者から受けることができた将来の扶養利益の喪失を損害として、保有者に対してその賠償を請求することができるものというべきであるから、内縁の配偶者は、同項にいう被害者に当たると解するのが相当である。
そして、政府が、同項に基づき、保有者の自動車の運行によって死亡した被害者の相続人の請求により、右死亡による損害をてん補すべき場合において、政府が死亡被害者の内縁の配偶者にその扶養利益の喪失に相当する額を支払い、その損害をてん補したときは、右てん補額は相続人にてん補すべき死亡被害者の逸失利益の額からこれを控除すべきものと解するのが相当である。けだし、死亡被害者の内縁の配偶者もまた、自賠法七二条一項にいう被害者として、政府に対して死亡被害者の死亡による損害のてん補を請求することができるから、右配偶者に対してされた前記損害のてん補は正当であり、また、死亡被害者の逸失利益は同人が死亡しなかったとすれば得べかりし利益であるところ、死亡被害者の内縁の配偶者の扶養に要する費用は右利益から支出されるものであるから、死亡被害者の内縁の配偶者の将来の扶養利益の喪失に相当する額として既に支払われた前記てん補額は、死亡被害者の逸失利益からこれを控除するのが相当であるからである。
原審の確定した事実関係によれば、上告人らはいずれも本件交通事故によって死亡したD(当時満六二歳)の妹であるが、Dには内縁の配偶者Eがおり、同人の生計は専らDの収入によって維持されていたところ、被上告人は、自賠法七二条一項に基づき、Eに対して、同人がDの死亡によって喪失した将来の扶養利益に相当する額として既に七〇〇万九六三一円(原判決四枚目表に七〇〇万円とあるのは誤記)を支払った、というのであり、以上の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。したがって、被上告人がEに対して支払った右てん補額は、上告人らが請求するDの逸失利益の額からこれを控除すべきである。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、これと異なる見解に立って原判決の違法をいうものであって、採用することができない。
同第一の一2について
所論は、原審の判断を経ていない事項につき原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
同第一の二について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 可 部 恒 雄 裁判官 貞 家 克 己 裁判官 園 部 逸 夫 裁判官 佐 藤 庄 市 郎
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