判例検索β > 昭和59年(行ツ)第46号
行政処分取消
事件番号昭和59(行ツ)46
事件名行政処分取消
裁判年月日平成2年1月18日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁民集 第44巻1号1頁
原審裁判所名福岡高等裁判所
原審事件番号昭和53(行コ)27
原審裁判年月日昭和58年12月24日
判示事項教育関係法規に違反する授業をしたこと等を理由とする県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分が懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえないとされた事例
裁判要旨学校教育法五一条、二一条所定の教科書使用義務に違反する授業をしたこと、高等学校学習指導要領(昭和三五年文部省告示第九四号)から逸脱する授業及び考査の出題をしたこと等を理由とする県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分は、各違反行為が日常の教科(日本史、地理B)の授業、考査に関して行われたものであつて、教科書使用義務違反の行為は年間を通じて継続的に行われ、右授業等は学習指導要領所定の当該各科目の目標及び内容から著しく逸脱するものであるほか、当時当該高等学校の校内秩序が極端に乱れた状態にあり、当該教諭には直前に争議行為参加による懲戒処分歴があるなど判示の事実関係の下においては、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない。
参照法条地方公務員法29条1項32条,学校教育法21条,学校教育法51条,学校教育法施行規則57条の2,行政事件訴訟法30条
裁判日:西暦1990-01-18
情報公開日2017-10-18 06:45:29
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主文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
被上告人らの請求をいずれも棄却する。
訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
理由
上告代理人俵正市の上告理由第二、上告代理人秋山昭八の上告理由第二及び上告代理人植田夏樹、同堀家嘉郎の上告理由第一点について
論旨は、要するに、被上告人らに対する本件各懲戒免職処分は懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものであるとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤ったものである、というのである。

本件各懲戒免職処分に至るまでの経緯等について原審が適法に確定した
ところは、次のとおりである。

県立E高等学校(以下E高校という。
)は、

県でも古い歴史を

もつ高等学校の一つであり、名門校あるいは受験校として実績を有していた。被上告人B1(以下被上告人B1という。
)は、昭和四一年四月から同校教
諭として勤務し、社会科の日本史及び地理を担当しており、被上告人B2(以下被上告人B2という。
)は、昭和四四年四月から同校教諭として勤務し、
社会科の倫理社会及び政治経済を担当していた。

大部分の

県の県立高等学校においては、E高校を含めて、昭和四二

年ころまで、事実上職員会議を最高決定機関とする校務運営がなされ、また、新任の校長については、ほとんどが

県高等学校教職員組合(以下県高教組

という。
)の推薦又は承認する者を任命するということが行われていた。ところが、上告人が、昭和四三年四月、大部分の新任校長を県高教組の推薦のない者から任命したため、
県高教組はこれら新任校長の着任拒否闘争を行った。
更に、
同年一〇月及び昭和四四年一一月には県高教組は人事院勧告完全実施等を要求
する休暇闘争を行った。被上告人B1は、昭和四三年一二月一四日にストライキ参加により戒告、昭和四五年一月一四日にストライキ参加により減給一月の各懲戒処分を受け、また、被上告人B2も、昭和四五年一月一四日にストライキ参加により減給一月の懲戒処分を受けている。

昭和四三年四月、FがE高校校長に任命されたが、当時同校は、個々の
教諭との話合いも県高教組の役員を通じてしなければならないなど、校長としての十分な指導監督ができない状態にあった。

F校長は、昭和四四年一学期末ころ、被上告人ら教諭の一部が教科書を
離れた授業を行い、また、被上告人B2らが生徒の成績について一律評価をしていることを聞き、授業については、教科書を基本にして行うべきである旨職員会議の席上注意を促し、一律評価については、教務部長等に各本人に注意するよう依頼した。
また、
同年一一月中旬ころ及び二学期末ころの職員会議では、
自習が多いこと及び右一律評価について注意した。

上告人の事務局である

県教育庁(以下県教育庁という。
)は、同

年一一月ころ、被上告人らほかの教諭の授業に自習時間が多いこと等を訴える匿名の投書及び電話を受けたことから、同年一二月七日、E高校において同校教職員の服務の実態を調査した。

同月二四日の二学期の終業式の際、F校長は、生徒から県教育庁の右調
査についての所見等を求められ、来る一月八日の始業式の際に見解を表明することを約束した。昭和四五年一月七日の職員会議では、県教育庁の右調査は不当な介入であるとの決議がなされ、F校長は、翌日の始業式において全生徒に対し右決議の趣旨を述べた。また、その後開催された職員会議で、F校長は一月一六日に再度生徒に対する説明会等を行うことを約束した。右始業式におけるF校長の発言及び説明会の件を知った県教育庁は、F校長に対し始業式における発言の取消しと説明会の中止等を説得したが、説明会は予定どおり行われ
た。

その後同年二月中旬ころ、
E高校を守る会準備委員会在東京委員会

名義の二月アピールと題する文書が県教育庁関係者、E高校の教諭、父兄、同窓生らに対して多数郵送され、その中には、同校のG教諭(以下G教諭という。
)はいわゆる三派系造反教諭であり、同人を先頭に被上告人らほか二名の各教諭を中心に勢力を拡張しつつあるとして、同人らの学校内外での具体的言動なるものが列挙されていた。右二月アピールに対抗して、同窓会有志名義でEを支持する会なるものも結成され、右五教諭を擁護するビラを配布し、以後双方から数多くの文書が配布された。右二月アピールを契機として、E高校内は動揺した。

E高校は同年三月一日卒業式を迎えたが、A県教育委員会教育長(以下
県教育長という。
)代理が告辞の朗読を始めるや、一部の生徒が拒否と
書いた横幕を掲げ、やじを飛ばし、校歌斉唱の際労働歌を歌うなどして、式場は騒然となった。

同年三月の

県議会において、E高校の諸問題について質問があり、

同校の一部教師が生徒に対して偏向した政治的教育を行っているとの指摘がされ、県教育長は、前記二月アピールの真相、卒業式の混乱等については調査結果を待って必要な措置をとり、学校の管理運営及び生徒指導の適正化についても必要な措置をとる旨等を回答した。
一〇

H新聞の同年五月一八日付夕刊は、
引きさかれた教育と題して、

E高校における被上告人らの授業を変わった授業として報じた。
一一

その後県教育庁は、E高校の関係諸帳簿の分析、生徒及び卒業生から
の事情聴取等の調査を行い、その結果を県教育長に報告し、県教育長はこれらの調査結果等に基づいて上告人に対し、被上告人ら及びG教諭の懲戒免職処分の提案をし、上告人は、同年六月六日右三名を懲戒免職処分にした。同処分の
処分説明書記載の処分理由は、被上告人B1については、
被処分者は、昭和四四年度の担当科目の授業において、所定の教科書を使用せず、かつ高等学校学習指導要領に定められた当該科目の目標及び内容を逸脱した指導を行った。また、同年度における授業に際し、在校しながら出席しない生徒に対し何ら注意を与えないまま、しばしば生徒を放任するなど生徒に対する指導監督を怠った。これらの行為は職務上の義務に違反し、職務を怠ったものである。というのであり、また、被上告人B2については、
被処分者は、昭和四四年度の担当科目の授業において、所定の教科書を使用せず、かつ高等学校学習指導要領に定められた当該科目の目標及び内容を逸脱した指導を行った。また、同年度における生徒の成績評価に関して、所定の考査を実施せず、一律の評価を行った。これらの行為は、職務上の義務に違反し、職務を怠ったものである。というのであって、根拠法規として、右はいずれも地方公務員法(以下地公法という。)
二九条一項に当たるとしている。
なお、これより先の同月一日、上告人は、F校長を所属職員に対する指導監督を怠ったとして減給処分にし、同校長は翌二日退職した。

原審が適法に確定した被上告人らの行為は、次のとおりである。

1
被上告人B1について


昭和四四年度に三年生の四つの組で各組週四時間担当した日本史につ
いては、まず、株式会社I出版社発行の教科書詳説日本史及びその教師用指導参考書を通読し、その他の参考書等をも利用して講義用ノートを作成して授業の準備をしたうえ、その授業においては、右教科書、九州各県の高等学校教諭による研究会の編集になる日本史資料集及び自己作成のプリントを教材とすることとした。右資料集は、日本史の史料そのものを掲載し、これに関して解説するというもので、教科書のように通史的記述とはなっていない。また、右プリントは、被上告人B1が教科書、教師用指導参考書その他の参考書を利
用して作成したものである。そして、四月中旬ころまでに五、六時間かけて、特に教科書を用いることなく、歴史観及び時代区分について授業したが、その内容は、各種の時代区分論について話し、その中で唯物史観による時代区分についても話し、更に、唯物史観による時代区分論争の盛んなソヴィエト連邦、中国の成立以来の思想、政治、経済やいわゆる中ソ論争について話し、また、唯物史観上階級闘争がないとされている社会主義社会になお存する階級闘争の話に及んだ。次いで、四月下旬ころから六月中旬ころまでは、前記の教科書及び資料集を用いて原始、古代について授業したが、六月中旬ころから七月上旬ころまでは、七、八時間かけて日本奴隷経済史と題する自己作成のプリントを用いて授業した。その後は、二学期に週二時間生徒による日本史に関するグループ研究の発表をさせたほか、前記の教科書、資料集及びプリントを用いてその後の通史等について授業したが、教科書より資料集及びプリントを使うことのほうが多かった。以上の授業は、学年末において、通史的に江戸末期ころまでを終了したにとどまった。

右一のとおり昭和四四年度に三年生の四つの組で担当した日本史の
一学期の中間考査において、

社会主義社会における階級闘争について述べよ。、

次の二題(テーマ)のうち一題を選び論述せよ。A批判、Bスターリン思想とその毛沢東思想とその批判

の各問題を出題し、考査の前にこれに応ず
る授業を行った。

右一の日本史の授業において、前記のように時代区分について話した
際に、マルクス、毛沢東に関する授業を行った。

昭和四三年度に一年生の三つの組で各組週三時間又は四時間担当した
地理Bの三学期の期末考査において、選択的出題の一部として、
資本主義社会と社会主義社会における階級とその闘争についての問題を出題し、右考査の前にこれに応ずる授業を行った。


昭和四四年度に一年生の一つの組で週二時間担当した地理Bの一学期
の中間考査において、選択的出題の一部として、
社会主義社会における階級闘争スターリン思想とその批判毛沢東思想の各問題を出題し、右考査、

の前にこれに応ずる授業を行った。
2一
被上告人B2について
昭和四四年度に三年生の五つの組で各組週二時間又は三時間担当した
政治経済の授業において、最初にJ出版株式会社発行の教科書政治経済の目次によってその構成を説明したが、右教科書は内容が自分の考えと違うとして、その最初の数頁くらいを使用したのみで、その後は、九州各県の高等学校教諭による研究会の編集になる政治経済資料集を使用して主として政治、経済問題について授業し、時に国際関係等の時事問題について新聞の切抜を使用して授業した。

昭和四四年度の二年生の三つの組の倫理社会を各組週二時間、
三年生の

五つの組の政治経済を右一のとおり担当したが、右各科目について、一学期には期末考査を実施せず、これに代えて三問中から一問を選択させてレポートを提出させ、
提出した者は一律六〇点、
提出しなかった者は一律五〇点と評価し、
また、右二年生の倫理社会について三学期に考査を実施しなかった。三
以上の事実関係の下において、原審は、被上告人B1の前記二1一の日
本史の授業における教科書使用状況は、それを使っての通史的授業が相当簡略になったものと認められるところから、学校教育法五一条、二一条に違反し、同二の日本史の考査問題の出題及びこれに応ずる授業並びに同三の日本史の授業は、高等学校学習指導要領(昭和三五年文部省告示第九四号。以下本件学習指導要領という。)第一章第二節第六款並びに第二章第二節第二款第三
日本史目標及び内容に違反し、同四及び同五の各行為のうち地理Bの各考査問題の出題は、本件学習指導要領第一章第二節第六款並びに第二章第二節第二
款第七地理B目標及び内容に違反し、いずれも地公法三二条に違反して同法二九条一項一、二号の懲戒事由に該当し、また、被上告人B2の前記二2一の政治経済の授業はほとんどが教科書でない前記資料集を使用して行われたものであるところから、このような教科書使用状況は学校教育法五一条、二一条に違反し、同二の考査不実施及び成績の一律評価は、学校教育法施行規則六五条一項、二七条、

県立高等学校学則八条、E高校校内規定に違反し、いずれも地

公法三二条に違反して同法二九条一項一、二号の懲戒事由に該当するが、本件各懲戒免職処分は、特に次の点について考慮すると、社会観念上著しく妥当を欠き、上告人の裁量権の範囲を逸脱したものというべきであると判断した。一
懲戒事由に該当する被上告人らの各行為の多くは、
法規違反の程度が著

しいものとはいえない。もっとも、被上告人B2の考査不実施及び成績の一律評価の点は、違反の程度としては高いものといえるが、注意を受けたのちの二学期以降一律評価はやめている。

上告人が本件各懲戒免職処分の理由とした被上告人らの各行為のうち、
懲戒事由に該当すると認められるものはその一部にすぎず、その余のものは懲戒事由に該当しない。

当時の

県下の高等学校の生徒の政治活動及びE高校の生徒の異常な

行動を被上告人らが授業その他において助長したことを認めるに足る証拠はない。

しかしながら、原審の右判断のうち、被上告人らの右各行為が懲戒事由
に該当するとした判断は是認することができるが、本件各懲戒免職処分は社会観念上著しく妥当を欠き、上告人の裁量権の範囲を逸脱したものであるとした判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。地方公務員につき地公法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、平素から庁内の事情に
通暁し、職員の指揮監督の衝に当たる懲戒権者の裁量に任されているものというべきである。すなわち、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を総合的に考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを、その裁量的判断によって決定することができるものと解すべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱しこれを濫用したと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである(最高裁昭和四七年(行ツ)第五二号同五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁参照)
。右の見地から、原審の確定し
た事実関係の下において本件各懲戒免職処分が上告人の裁量権の範囲を逸脱したものというべきかどうかについて検討する。
思うに、高等学校の教育は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とするものではあるが、中学校の教育の基礎の上に立って、所定の修業年限の間にその目的を達成しなければならず(学校教育法四一条、四六条参照)、また、
高等学校においても、教師が依然生徒に対し相当な影響力、支配力を有しており、生徒の側には、いまだ教師の教育内容を批判する十分な能力は備わっておらず、
教師を選択する余地も大きくないのである。これらの点からして、国が、教育の一定水準を維持しつつ、高等学校教育の目的達成に資するために、高等学校教育の内容及び方法について遵守すべき基準を定立する必要があり、特に法規によってそのような基準が定立されている事柄については、教育の具体的
内容及び方法につき高等学校の教師に認められるべき裁量にもおのずから制約が存するのである。
本件における前記事実関係によれば、懲戒事由に該当する被上告人らの前記各行為は、高等学校における教育活動の中で枢要な部分を占める日常の教科の授業、考査ないし生徒の成績評価に関して行われたものであるところ、教育の具体的内容及び方法につき高等学校の教師に認められるべき裁量を前提としてもなお、明らかにその範囲を逸脱して、日常の教育のあり方を律する学校教育法の規定や学習指導要領の定め等に明白に違反するものである。しかも、被上告人らの右各行為のうち、各教科書使用義務違反の点は、いずれも年間を通じて継続的に行われたものであって、特に被上告人B2の教科書不使用は、所定の教科書は内容が自分の考えと違うとの立場から使用しなかったものであること、
被上告人B1の日本史の考査の出題及び授業、
地理Bの考査の出題の点は、
その内容自体からみて、当該各科目の目標及び内容からの逸脱が著しいとみられるものであること等をも考慮するときは、被上告人らの右各行為の法規違反の程度は決して軽いものではないというべきである。そして、懲戒事由に該当する被上告人らの各行為は、上告人が本件各懲戒免職処分の理由としたもののうちの主要なものである。
更に、当時のE高校の内外における前記のような背景の下で、同校の校内秩序が極端に乱れた状態にあったことは明らかであり、そのような状況の下において被上告人らが行った前記のような特異な教育活動が、同校の混乱した状態を助長するおそれの強いものであり、また、生徒の父兄に強い不安と不満を抱かせ、ひいては地域社会に衝撃を与えるようなものであったことは否定できないところであって、この意味における被上告人らの責任を軽視することはできない。そのほか、本件各懲戒免職処分の前約一年半の間に、被上告人B1は二回にわたってストライキ参加により戒告及び減給一月の各懲戒処分を受け、ま
た、被上告人B2はストライキ参加により減給一月の懲戒処分を受けていることも、被上告人らの法秩序軽視の態度を示す事情として考慮されなければならないのである。
以上によれば、上告人が、所管に属する

県下の県立高等学校等の教諭等職

員の任免その他の人事に関する事務を管理執行する立場において、懲戒事由に該当する被上告人らの前記各行為の性質、態様、結果、影響等のほか、右各行為の前後における被上告人らの態度、懲戒処分歴等の諸事情を考慮のうえ決定した本件各懲戒免職処分を、社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいい難く、その裁量権の範囲を逸脱したものと判断することはできない。これと異なる原審の判断は、ひっきょう、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤ったものといわざるをえず、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論旨について判断するまでもなく破棄を免れない。そこで、被上告人らの本訴請求について判断するに、被上告人らの右各行為は、地公法二九条一項一、二号の懲戒事由に該当するところ、原審の適法に確定した事実関係の下において、本件各懲戒免職処分に被上告人ら主張の手続的違法は認められず、また、それが懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものということができないことは右に述べたとおりであるから、その取消しを求める被上告人らの本訴請求は理由かない。したがって、これと判断を異にする第一審判決を取り消し、被上告人らの請求をいずれも棄却することとする。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官

大堀誠
裁判官

角田禮一次郎
裁判官

大内恒夫
裁判官

佐藤哲郎
裁判官

四ツ谷巖
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