判例検索β > 昭和43年(行ツ)第17号
汚物取扱業不許可処分取消請求
事件番号昭和43(行ツ)17
事件名汚物取扱業不許可処分取消請求
裁判年月日昭和47年10月12日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
判例集等巻・号・頁民集 第26巻8号1410頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号昭和40(行コ)37
原審裁判年月日昭和42年11月21日
判示事項清掃法一五条一項によるし尿浄化槽内汚物取扱業の不許可処分が裁量権の範囲を逸脱したものでないとされた事例
裁判要旨清掃法一五条一項によるし尿浄化槽内汚物取扱業についての不許可処分が、その申請者において申請地域外の汚物をも取り扱つているため、他地域の汚物が申請地域の汚物処理場に持ち込まれるおそれがあり、また、申請地域の汚物の処理にはすでに許可を得ている業者だけで十分であるなど判示のような事情を考慮してされたものであるときは、それにより、従来許可を要しないとの取扱いのもとでし尿浄化槽清掃に従事していた申請者の営業実績が無に帰することになつたとしても、それだけで右不許可処分が裁量権の範囲を逸脱したものということはできない。
参照法条清掃法3条,清掃法6条1項,清掃法15条1項
裁判日:西暦1972-10-12
情報公開日2017-10-18 06:58:35
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主 文
原判決を破棄する
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人堀家嘉郎の上告理由第一点および同外池簾治の上告理由第二点、第三点、第五点について。
清掃法一五条一項が、特別清掃地域内においては、その地域の市町村長の許可を受けなければ、汚物の収集、運搬または処分を業として行なつてはならないものと規定したのは、特別清掃地域内において汚物を一定の計画に従つて収集、処分することは市町村の責務であるが(同法六条、地方自治法二条三項七号、同法別表第二の一一参照)、これをすべて市町村がみずから処理することは実際上できないため、前記許可を与えた汚物取扱業者をして右市町村の事務を代行させることにより、みずから処理したのと同様の効果を確保しようとしたものであると解せられる。かかる趣旨にかんがみれば、市町村長が前記許可を与えるかどうかは、清掃法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし、市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から、これを決すべきものであり、その意味において、市町村長の自由裁量に委ねられているものと解するのが相当である。
これを本件についてみるのに、原判決の確定するところによれば、 (一) 平塚市においては、昭和三七年当時まで、し尿浄化槽内の汚物は清掃法三条の汚物に含まれないとの解釈に基づき、同法一五条の許可を受けていない清掃業者も自由に浄化槽汚物の収集、運搬等を行なつていたが、同年五月にいたり、浄化槽汚物の取扱業についても、他の汚物取扱業と同じく市町村長の許可を必要とすべき旨の厚生省通知が発せられ、昭和三八年一月一日からこれが実施されることとなつた。そこで、従来から同市内等において浄化槽清掃業に従事していたDは、昭和三七年一一月二日被上告会社を設立し、同会社において同三八年一月八日上告人市長に対し浄化槽汚物取扱業の許可を申請したところ、同月一二日付をもつてこれが不許可とされた。
(二) 上告人市長が右不許可処分をした理由は、平塚市では、当時、同市内において収集される汚物を処理するため、同市の人口とその増加の割合に応じうる程度の規模を有する汚物処理場を建設中であつたが、被上告会社は、同市以外においても汚物の収集を行なつていたので、他地域の汚物が右処理場に持ち込まれ、同市の処理作業に支障をきたすおそれがあつたこと、被上告会社は同市内に汚物処理場を有せず、右市営処理場が完成するまでの間同会社の汚物処理状況を十分に調査、監督することができないこと、同市内の浄化槽汚物を収集、運搬するには、すでに許可を得ている六人の清掃業者で十分であり、新規業者を加えると、かえつて無用の摩擦を生ずるおそれがあつたこと、被上告会社が浄化槽汚物以外の汚物を無許可で取り扱うのを防ぐための監督が困難であること、の四点にあつた、というのである。
以上の事実関係のもとにおいては、右(二)の不許可事由が真実と認められるかぎり、上告人市長がこれらの事由を考慮して被上告会社に浄化槽汚物取扱業の許可を与えなかつたことは、同市長の前記裁量権行使の正当な範囲内にとどまるものというべきであり、右不許可処分により、被上告会社ないしD個人の浄化槽清掃に関する過去の営業実績が無に帰することになつたとしても、その一事をもつてしては、いまだ同処分に裁量権の範囲を逸脱した違法があるものと断ずることはできない。 してみれば、本件不許可処分が被上告会社ないしD個人の営業上の地位、利益を不当に侵害するものであるとし、上告人市長の裁量権の濫用にあたるとした原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背があるものというべく、この点の論旨は理由がある。 よつて、その余の論旨につき判断するまでもなく、原判決を破棄し、さらに審理をつくさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 田 武 三 裁判官 岩 田 誠 裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官 藤 林 益 三 裁判官 岸 盛 一
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