判例検索β > 平成17年(許)第19号
債権差押命令申立て一部却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
事件番号平成17(許)19
事件名債権差押命令申立て一部却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
裁判年月日平成17年12月6日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別決定
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁民集 第59巻10号2629頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成17(ラ)512
原審裁判年月日平成17年4月26日
判示事項保険医療機関,指定医療機関等の指定を受けた病院又は診療所が社会保険診療報酬支払基金に対して取得する診療報酬債権と民事執行法151条の2第2項に規定する「継続的給付に係る債権」
裁判要旨健康保険法上の保険医療機関,生活保護法上の指定医療機関等の指定を受けた病院又は診療所が社会保険診療報酬支払基金に対して取得する診療報酬債権は,民事執行法151条の2第2項に規定する「継続的給付に係る債権」に当たる
参照法条民事執行法151条の2,民事執行法151条,社会保険診療報酬支払基金法1条,社会保険診療報酬支払基金法15条1項,2項,健康保険法63条3項1号,健康保険法76条,国民健康保険法36条3項,国民健康保険法45条,生活保護法49条,生活保護法53条,児童福祉法20条,児童福祉法21条の3
裁判日:西暦2005-12-06
情報公開日2017-10-18 06:37:28
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主 文
原決定を破棄し,原々決定のうち,抗告人の債権差押命令の申立てを却下した部分を取り消す。
同部分につき,本件を宇都宮地方裁判所に差し戻す。 理 由
抗告代理人中島章智及び同神原宏尚の抗告理由について
1 記録によれば,本件の経緯の概要は,次のとおりである。
(1) 東京高等裁判所は,平成17年2月21日,同裁判所平成16年(ラ)第1313号婚姻費用分担の審判に対する抗告事件において,相手方に対し次の額の金員を抗告人に支払うよう命ずる決定(以下本件決定という。)をし,その後,本件決定は確定した。
ア 平成15年3月から平成17年1月までの23か月分の婚姻費用分担額の未払分119万6000円
イ 平成17年2月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り5万2000円ずつの婚姻費用分担額
(2) 抗告人は,本件決定によって,民事執行法151条の2第1項2号に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権(以下本件債権という。)を取得したことになる。
(3) 抗告人は,平成17年3月8日,本件決定の正本に基づいて,① 次のアの債権及び執行費用(以下本件期限到来債権等という。)を請求債権として,相手方が第三債務者である社会保険診療報酬支払基金(以下支払基金という。)から支払を受ける平成17年3月4日から平成18年3月3日までの診療報酬に係る債権(ただし,65万8650円に満つるまで)の差押えを,② 本件期限到来債権等を請求債権として,相手方が第三債務者である栃木県国民健康保険団体連合会から支払を受ける上記期間の診療報酬に係る債権(ただし,60万円に満つるまで)の差押えを,③ 次のイの債権(以下本件期限未到来債権という。)を請求債権として,相手方が第三債務者である支払基金から支払を受ける上記期間の診療報酬に係る債権(ただし,本件期限未到来債権の確定期限の到来後に弁済期が到来するものに限る。)の差押えを,それぞれ申し立てた。相手方は,診療所を開設し,甲歯科クリニック Yの名義で支払基金から診療報酬の支払を受ける地位を有する。
ア 本件債権のうち確定期限が到来しているもの及び執行費用 125万8650円

(ア) 124万8000円 平成15年3月から平成17年2月まで1か月5万2000円の婚姻費用分担額の未払分
(イ) 1万0650円 執行費用
イ 本件債権のうち確定期限が到来していないもの
ただし,平成17年3月から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで,毎月末日限り5万2000円ずつの婚姻費用分担額
(4) 原々審は,抗告人の上記申立てのうち,本件期限到来債権等を請求債権とする上記(3)①及び②の申立て部分については,これを認容したが,本件期限未到来債権を請求債権とする同(3)③の申立て部分については,強制執行の開始の要件を満たさないとして,これを却下する旨の決定をした。原審も,次のとおりの理由により,上記却下部分に係る抗告人の執行抗告を棄却する旨の決定をした。 ア 民事執行法151条の2第1項に掲げる婚姻から生ずる費用の分担の義務等に係る定期金債権については,確定期限の到来していないものについても債権執行を開始することができるが,その場合,上記定期金債権について,その確定期限到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができるものとされている。
イ 上記給料その他継続的給付に係る債権とは,同法151条に規定する継続的給付に係る債権と同じく,給料債権や賃料債権のように同一の法律関係に基づいて継続的に発生する債権をいうものと解されるところ,社会保険診療報酬債権は,保険医が被保険者を診療することによってその対価として受ける個別的な債権の集合であって,同一の契約関係から継続的に発生するものではないから,継続的給付に係る債権には該当しないものというべきである。したがって,本件期限未到来債権を請求債権とする申立て部分について,強制執行の開始の要件を満たさないとしてこれを却下した原々審の決定は正当である。
2 しかしながら,原審の上記1(4)イの判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
法律の規定(健康保険法63条3項1号,国民健康保険法36条3項等)に基づき保険医療機関としての指定を受けた病院又は診療所は,被保険者に対して診察等の療養の給付をした場合,法律の規定(社会保険診療報酬支払基金法1条,15条1項,健康保険法76条,国民健康保険法45条等)に基づき,診療担当者として,保険者から委託を受けた支払基金に対して診療報酬を請求する権利を取得することになる。そして,上記の診療担当者として診療報酬を請求し得る地位は,法律の規定に基づき保険医療機関としての指定を受けることにより発生し,継続的に保持される性質のものであるため,上記指定を受けた病院又は診療所は,被保険者に対し診察等の療養の給付をすることにより,支払基金から定期的にその給付に応じた診療報酬の支払を受けることができる。また,診療報酬債権に係る上記の法律関係は,病院又は診療所が生活保護法に基づき指定医療機関として指定を受け同機関として療養の給付をした場合,児童福祉法に基づき指定育成医療機関として指定を受け同機関として育成医療の給付をした場合等,支払基金が法律の規定に基づき委託を受けて医療機関に対して診療報酬を支払うものとされている場合についても,基本的に同様である(社会保険診療報酬支払基金法15条2項,生活保護法49条,53条,児童福祉法20条,21条の3等)。
そうすると,【要旨】保険医療機関,指定医療機関等の指定を受けた病院又は診療所が支払基金に対して取得する診療報酬債権は,基本となる同一の法律関係に基づき継続的に発生するものであり,民事執行法151条の2第2項に規定する継続的給付に係る債権に当たるというべきである。 3 以上によれば,原審の前記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,上記説示をしたところによれば,本件期限未到来債権に基づき,その確定期限到来後に弁済期が到来する診療報酬債権の差押えを求める申立て部分を却下した原々決定は不当であるから,同部分について,原々決定を取り消した上,本件を宇都宮地方裁判所に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 堀籠幸男)
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