判例検索β > 昭和45年(オ)第934号
人身保護請求
事件番号昭和45(オ)934
事件名人身保護請求
裁判年月日昭和46年5月25日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
判例集等巻・号・頁民集 第25巻4号435頁
原審裁判所名釧路地方裁判所  網走支部
原審事件番号昭和45(人)1
原審裁判年月日昭和45年8月18日
判示事項精神衛生法三三条により精神病院に収容されている者が人身保護法に基づく救済を与えられるための要件
裁判要旨精神衛生法三三条により精神病院に収容されている者は、その入院について保護義務者の同意がないこと、または、被拘束者が精神障害者であり、かつ、その医療および保護のためには入院が必要である旨の診断に医学的常識を逸脱した一見明白な誤りがあることが疎明された場合にかぎり、人身保護規則四条にいわゆる拘束の違法性が顕著なものとして、人身保護法に基づく救済を与えられるものと解すべきである。
参照法条精神衛生法33条,人身保護法2条,人身保護規則4条
裁判日:西暦1971-05-25
情報公開日2017-10-18 06:59:59
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主 文
原判決を破棄し、本件を釧路地方裁判所網走支部に差し戻す。 理 由
上告代理人山根喬の上告理由について。
被上告人の本件救済の申立は、要するに、被上告人は精神病患者ではないにもかかわらず、北海道立D病院の院長である上告人が被上告人を精神病患者であるとして不法に拘禁しているので、その救済を求めるというにあり、上告人は、これに対し、被上告人は、その挙動からして精神分裂症患者と認められ、放置するときは、訂正不能の誤つた判断による異常行動から詐欺などの罪を犯し、社会に迷惑をかけるおそれがあるため治療を必要とするが、本人に病識がなく、治療を拒否するため、閉鎖病棟に入院させたものであり、その入院については保護義務者Eの同意もあると主張するものであるところ、原審は、上告人の主張する被上告人の異常行動について各個に検討を加えたうえ、いずれも被上告人の精神異常を示す徴候とは認められず、同人の行動には、同人の拘束を許容するに足りる異常性はないとして、被上告人の本件救済の申立を許容しているのである。
しかしながら、人身保護法に基づく救済の申立は、ある者が身体の自由を拘束されている場合において、その拘束または拘束に関する裁判もしくは処分がその権限なしにされ、または法令の定める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著であるときにはじめて許容される(人身保護規則四条参照)ものであつて、本件のように、被拘束者が精神衛生法三三条に基づき、精神病者として精神病院に収容されている場合においては、その入院について適法に選任された保護義務者の同意がない場合、あるいは、被拘束者が精神障害者でありその医療および保護のため入院の必要があるとの診断に、一見明白な誤りがあると認められる場合にかぎつて、この救済が与えられるべきものと解すべきであり、ことに、後者の診断の当否に関しては、これが医学的判断に関する事柄であることを考えるならば、担当医師がその資格を有しないとか、あるいは第三者と通謀して、他の目的のために被拘束者を拘束しようとした等、右診断が、医学的常識を逸脱した目的または方法によつてされたことが疎明され、その結果、右診断に基づいて被拘束者を拘束することが許されないような場合に、はじめて、拘束の違法性が顕著であるというべきものと解するのが相当である。
ところで、本件において、これをみるに、被上告人が精神病の専門医師の診察の結果、精神分裂症を患い、入院治療を要する旨診断され、拘束者のもとで入院治療を受けていることは、同人に関するカルテである乙一号証の記載、および担当医師である証人Fの証言、拘束者Aの供述 ならびに被上告人の兄であり保護義務者である証人Eの証言等から明らかであつて、右診断を医学的常識に反し不当とすべき特段の事情を認めうべき資料はない。そして、右入院にあたり、保護義務者の同意のあることは、原審の適法に確定するところであるから、他に特段の事情のないかぎり、本件において、被上告人の拘束の違法性が顕著であるということはできないのである。そうであれば、この点について充分な説示をすることなく、被上告人の本件申立を許容した原判決は、前記法令の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものというべく、論旨はこの点において理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件は、さらに、右の事情について、審理をする必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。
よつて、人身保護規則四六条、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 田 中 二 郎 裁判官 下 村 三 郎 裁判官 松 本 正 雄 裁判官 関 根 小 郷
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