判例検索β > 昭和48年(す)第244号
裁判官忌避申立
事件番号昭和48(す)244
事件名裁判官忌避申立
裁判年月日昭和48年9月20日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果却下
判例集等巻・号・頁刑集 第27巻8号1395頁
原審裁判所名最高裁判所
判示事項裁判官が任官前審理の対象となつている条例の立案過程において法務府法制意見第一局長として意見回答をしたことと刑訴法二一条一項の「不公平な裁判をする虞」
裁判要旨裁判官が、任官前、審理の対象となつている条例の立案過程において、当該条例案の合憲性に関する立案当事者の意見照会に対し、当時の法務府法制意見第一局長として純然たる法律解釈に関する意見回答をしたからといつて、事件につき裁判の公正を妨げるおそれがある予断または偏見があるものとすることはできない。
参照法条刑訴法21条1項
裁判日:西暦1973-09-20
情報公開日2017-10-17 14:08:20
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主 文
本件忌避の申立を却下する。
理 由
所論は、要するに、裁判官高辻正己は、昭和二五年六月二九日、当時の法務府法制意見第一局長として、昭和二五年東京都条例第四四号集会、集団行動及び集団示威運動に関する条例(以下、本件条例という)の立案に関する当時の警視総監Aの意見照会に対し、書面により、照会条例案の規制が合憲であり、同条例案中の規制措置に関する文言を一部改めるよう提言した内容の意見回答をしており、本件条例は右意見に依拠して制定されたことが明らかであるから、高辻裁判官は、本件の審理の対象となつている条例の制定過程に関与したものとして、実質的に当事者的立場にあつたものというべきであり、同裁判官が右条例の合憲性を論点とする本件の審理に関与することは、前審に関与した裁判官が審理に関与する場合よりももつと直接的に裁判の公正を害するものであるから、刑訴法二〇条七号に準じ、不公平な裁判をするおそれがある(同法二一条)ものとして忌避理由にあたる、というのである。
しかしながら、高辻裁判官が、本件条例の立法過程において、本件条例の立案当事者の意見照会に対し、当時の法務府法制意見第一局長として、照会にかかる条例案の合憲性に関し所論指摘の意見回答をしていたからといつて、所論のような当事者的立場にあつたものといえないことは論をまたないところであり、また、右回答は、道路その他の公共の場所における集会もしくは集団行進および集団示威運動と憲法二一条との関係についての憲法解釈の問題に関してされた質問に対し、行政府の所轄機関の立場でした純然たる法律解釈に関する照会回答であつて、それはひつきよう一般的に一定の法律問題について抽象的な法律上の見解を表明したものにすぎず、特定の具体的事件に関し当事者からの依頼に答えて法律問題に関する助言もしくは見解の表明をしたり、当該事件の訴訟手続内で一定の見解もしくは判断を示した場合とは全く趣きを異にするから、これをもつて当該問題を争点の一つとする具体的争訟につき裁判の公正を妨げるおそれある予断または偏見があるものとすることはできない。このことは、当該争訟における争点が、右の抽象的法律見解に依拠してされた立法の効力に関するものであるからといつて、なんら異なるところはないというべきである。
よつて、申立人らの本件忌避申立は理由がないので、刑訴法二三条により、裁判官会員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和四八年九月二〇日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官 藤 林 益 三 裁判官 下 田 武 三 裁判官 岸 盛 一 裁判官 岸 上 康 夫
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