判例検索β > 昭和46年(あ)第1422号
大麻取締法違反
事件番号昭和46(あ)1422
事件名大麻取締法違反
裁判年月日昭和47年7月28日
法廷名最高裁判所第二小法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集 第26巻6号397頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審裁判年月日昭和46年5月25日
判示事項一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達方法
二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達の瑕疵と公訴提起の効力
裁判要旨一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達をするには、刑訴法五四条によつて準用される民訴法一六九条その他によるほか、日米合同委員会の合意事項たる「日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件」八項Eによるべきである。
二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達につき、送達すべき場所の表示を誤つたほか、日本文の起訴状の謄本自体が被告人本人に交付されなかつた瑕疵があつたとしても、横須賀米海軍基地司令部法務部気付で被告人宛とされた右起訴状謄本が同法務部に送付され、米軍当局の慣行に従い、同法務部が職務上これを英文を翻訳したのち、同英訳にかかる起訴状が弁護人選任に関する通知とともに被告人本人に交付されたときは、右送達の瑕疵は、いまだ被告人に対する公訴提起の効力を失わせるものではない。
参照法条刑訴法54条,刑訴法271条,刑訴法272条,刑訴法339条1項1号,刑訴規則176条,刑訴規則177条,民訴法169条,民訴法削除前の167条,日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件8項E
裁判日:西暦1972-07-28
情報公開日2017-10-17 14:09:17
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主 文
本件上告を棄却する
理 由
弁護人中西金太郎の上告趣意第一、一のうち、憲法一一条、三一条ないし三四条違反をいう点は、刑訴法三三九条一項一号によりなした公訴棄却の決定が確定したとしても、同一事実について再度の公訴提起をし、それに伴ない被告人の身柄を勾引または勾留することが許されないとする法的根拠はないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張にすぎない。同第一、二は、憲法三八条一項違反をいうが、本件記録に徴しても被告人の自白調書には任意性を疑うに足りる証跡が窺われないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、同第二、一は、当裁判所の判例に違反するというが、判例を具体的に摘示しないから不適法であり、また、同第二、二は、原判決の採用する被告人の捜査官に対する自白調書が捜査官の偽計によるものであることを前提として、所論引用の判例に違反するとするが、記録に徴しても、かかる事実が認められないから、所論判例違反の主張は、前提を欠き、同第三および第四は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。もつとも、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、被告人たる米国軍人等に対する訴訟書類の送達については、刑訴法五四条によつて準用される民訴法一六九条その他によるほか、日米合同委員会の合意事項たる日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件第八項E(民事裁判資料二九号・刑事裁判資料七〇号一四〇頁参照)に準拠して行なわれるべきものである。ところが、記録編綴の被告人に対する起訴状謄本の送達報告書の記載によると、受送達者氏名横須賀米海軍基地司令部法務部気付A宛とした本件起訴状謄本は、昭和四三年九月一〇日横須賀市a町b丁目c番地米軍基地内事務員Bにより受領されている。そして当時被告人は、右横須賀米海軍基地司令部に所属せず、在日米海軍極東地区海上輸送司令部に所属する米海軍軍属であつたのであるから、本件起訴状の謄本は、その送達の場所を誤つたものであつて、適式なものとはいえない。しかしながら、原審の確定したところによると、被告人に対する本件起訴状の謄本は、米海軍当局の慣行に従い、前記横須賀基地司令部法務部を経由し、昭和四三年九月一八日ころ被告人の所属する前記輸送司令部に回送され、そのさい、管轄受訴裁判所の発した日本文の起訴状の謄本は右法務部において同部員により職務上英文に翻訳され、そのご同月三〇日ころ、そのうち右英訳にかかる起訴状と弁護人選任に関する通知だけが本人たる被告人に交付されたというのであるから、これにより、日本語を解しない被告人は、自己に対する公訴事実の内容と罪名を了知するとともに自ら弁護人選任に関する所要の手続をすることができたのである。そうすると、本件において、起訴状謄本の送達場所を誤つたことのほか、日本文の起訴状の謄本自体が被告人に交付されなかつた瑕疵があつたとしても、前記経過によりなされた本件送達の瑕疵は、いまだ被告人に対する公訴提起そのものの効力を失わしめるものとは認められない。のみならず、記録を精査しても、右のような送達の瑕疵のために、被告人において公判期日における防禦権の行使が害されたと認むべき何らの事跡がないのであるから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは解されない。また、その他記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和四七年七月二八日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 小 川 信 雄 裁判官 色 川 幸 太 郎 裁判官 村 上 朝 一 裁判官 岡 原 昌 男
トップに戻る

saiban.in