事件番号 | 昭和30(あ)2858 |
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事件名 | 公文書偽造、印紙犯罪処罰法違反等 |
裁判年月日 | 昭和33年3月25日 |
法廷名 | 最高裁判所第三小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 棄却 |
判例集等巻・号・頁 | 刑集 第12巻4号642頁 |
原審裁判所名 | 東京高等裁判所 |
原審裁判年月日 | 昭和30年6月27日 |
判示事項 | 一 取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう「印紙」にあたるか 二 印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいう偽造、変造等にかかる印紙の「使用」の意義 |
裁判要旨 | 一 取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう「印紙」にあたる。 二 印紙犯罪処罰法第二条第一項前段にいう偽造、変造等にかかる印紙の「使用」とは、必ずしも、納税の用に供するため印紙本来の用法に従つてこれを使用する場合に限らず、これを債務の担保に供し、または金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を知らない他人に引渡し、又は呈示する等の行為を指称するものと解すべきである。 |
参照法条 | 印紙犯罪処罰法2条,取引高税法11条 |
裁判日:西暦 | 1958-03-25 |
情報公開日 | 2017-10-17 14:24:44 |
本件各上告を棄却する。 当審における訴訟費用は各被告人の負担とする。 理 由 被告人Aの弁護人守屋勝男の上告趣意第一点について。 所論は、服役重病中かつ心神喪失中の被告人の第一審公判廷供述を罪証とした憲法違反、訴訟法違反を主張するけれども、そのうち、第一審公判廷で被告人が病状最悪で心神喪失の状態において供述したとの事実やこれがため被告人が防禦の措置を講ずることができなかつたとの事実はこれを認めることができないとした原審の判断は相当であつて、所論違憲の主張は前提を欠くものであり、そのほかに、所論被告人の自白が強制による自白若くは不当に長く抑留拘束された後の自白であるとの所論は、原審において主張判断を経ていない事項に関する主張であるから採用することができない。(また記録によつても所論のような自白であつたことの事跡は認められない。) 同第二点は、事実誤認の主張をいでず刑訴四〇五条の上告理由に当らない。 被告人Bの弁護人福場吉夫の上告趣意第一点は憲法三七条二項違反をいうが、憲法の右条項は、裁判所は、被告人又は弁護人から申請した証人は不必要と思われる者まで悉く尋問しなければならないという趣旨でないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)二三〇号同二三年七月二九日大法廷判決、集二巻九号一〇四五頁、昭和二三年(れ)八八号同年六月二三日大法廷判決、集二巻七号七三四頁)から、原審の所論証人申請の却下は何ら憲法同条項違反でなく、そして訴訟法上の権限に基くものであるかち違法もない。論旨は採用できない。 被告人両名の弁護人佐々木文平の上告趣意第一点は量刑不当の主張、同第二点は事実誤認、量刑不当の主張、同第三点は法令違反の主張に過ぎず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(判示日本政府発行名義の取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう印紙に含まれるものと解すべきであり、そして、原審Bの控訴趣意に対し、原判決が、同条一項前段にいわゆる偽造、変造等にかかる印紙の使用の意義について示した判断は相当である。) また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。 昭和三三年三月二五日 最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 垂 水 克 己 裁判官 河 村 又 介 裁判官 小 林 俊 三 |