判例検索β > 平成20年(わ)第385号
強制わいせつ、強姦未遂、強姦、児童福祉法違反
事件番号平成20(わ)385
事件名強制わいせつ,強姦未遂,強姦,児童福祉法違反
裁判年月日平成21年9月14日
裁判所名・部広島地方裁判所  刑事第2部
判示事項の要旨小学校教師であった被告人が,約4年8か月の間に,その勤務先の女子児童であった計10名の13歳未満の少女に対し,多数回にわたりわいせつ行為等を行ったという,強姦46件,強姦未遂11件,強制わいせつ25件,児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)13件からなる事案において,併合罪加重後の最高刑である懲役30年を言い渡した事例
裁判日:西暦2009-09-14
情報公開日2017-10-13 01:36:28
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平成21年9月14日宣告
平成20年(わ)第385号,第464号,第541号,第626号,第743号,第910号,平成21年(わ)第3号
判決
被告人
本籍略住居略職業


昭和○年○月○日生

被告事件名

強制わいせつ強姦未遂,強姦,児童福祉法違反

検察官

友添太
弁護人

新川
登茂宣(主任),大

郎主国和
江(いずれも私選)


被告人を懲役30年に処する
未決勾留日数中330日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,広島県三原市ab丁目c番d号のA小学校の教諭であったものであるが第1

同校の女子児童であるBが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,平成13年11月21日から平成15年3月1日までの間,前後6回にわたり,別表1記載のとおり,同校内ほか2か所において,同女を姦淫した

第2

同校の女子児童であるCが満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成14年2月14日から同年3月26日までの間,前後6回にわたり,同校内教室ほか数か所において,上記Cをして,別表2記載のとおり,自己の陰茎を
手淫または口淫させるなど,自己を相手方として性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした
第3

同校の女子児童であるDが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,平成14年5月7日から同年7月24日までの間,前後2回にわたり,別表3記載のとおり,同校内において,同女を姦淫した

第4

同校の女子児童であるEが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,平成14年6月2日から平成15年1月18日までの間,前後3回にわたり,別表4記載のとおり,同校内ほか1か所において,同女を姦淫した
第5

同校の女子児童であるFが満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成14年9月21日から同年12月26日までの間,前後6回にわたり,同校内において,上記Fをして,別表5記載のとおり,自己の陰茎を手淫または口淫させるなど,自己を相手方として性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした

第6

同校の女子児童であるGが満18歳に満たない児童であることを知りながら,平成15年2月1日午前11時44分ころから同日午前11時47分ころまでの間,同校内において,上記Gをして,別表6記載のとおり,自己の陰茎を口淫させるなど,自己を相手方として性交類似行為をさせ,もって,児童に淫行をさせる行為をした

第7

同校の女子児童であるHが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫し,または,同女に対しわいせつな行為をしようと企て

1
平成15年9月27日から平成18年3月21日までの間,前後6回にわたり,別表7-1記載のとおり,同校宿直室ほか数か所において,同女の着衣を脱がせてその乳房を舐めるなどし,もって13歳に満たない女子に対し,わいせつな行為をした

2
平成16年9月18日から平成18年7月15日までの間,前後19回にわ
たり,別表7-2記載のとおり,同校内ほか数か所において,同女を姦淫した第8

同校の女子児童であるIが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫し,または,同女に対しわいせつな行為をしようと企て

1
平成15年11月29日から平成16年7月17日までの間,前後4回にわたり,別表8-1記載のとおり,同校内において,同女の着衣を脱がせてその陰部を舐めるなどしたほか,その陰部等を所携のビデオカメラ等で撮影するなどし,もって13歳に満たない女子に対し,わいせつな行為をした
2
平成16年5月29日午後4時42分ころ,別表8-2記載のとおり,同校内において,同女を同所の床面に仰向けに寝かせてその上に覆い被さるなどし,同女を姦淫しようとしたが,同女の陰部に自己の陰茎を挿入できなかったため,その目的を遂げなかった

第9

同校の女子児童であるJが13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫し,または,同女に対しわいせつな行為をしようと企て

1
平成15年11月29日から平成18年4月8日までの間,前後13回にわたり,別表9-1記載のとおり,同校内ほか数か所において,同女の着衣を脱がせてその陰部を舐めるなどしたほか,その陰部等を所携のビデオカメラ等で撮影するなどし,もって13歳に満たない女子に対し,わいせつな行為をした
2
平成16年2月11日から平成17年10月19日までの間,前後10回にわたり,別表9-2記載のとおり,同校内ほか数か所において,自己の陰茎を同女の陰部付近に押し当てるなどして同女を姦淫しようとしたが,同女の陰部に自己の陰茎を挿入できなかったため,その目的を遂げなかった

3
平成16年5月7日から平成17年12月17日までの間,前後16回にわたり,別表9-3記載のとおり,同校内ほか数か所において,同女を姦淫した
第10

同校の女子児童であるKが13歳未満であることを知りながら,同女に対しわいせつな行為をしようと企て,平成16年10月2日から同年11月6日までの間,前後2回にわたり,別表10記載のとおり,同校内において,同女の着
衣を脱がせてその陰部を舐めるなどし,もって13歳に満たない女子に対し,わいせつな行為をした
ものである。
(証拠の標目)

(事実認定の補足説明)
被告人は,判示第1別表1番号5の事実につき,当公判廷において,姦淫には至っていない旨供述して犯行を一部否認するけれども,同事実については,犯行状況を撮影したビデオ画像を確認した結果,姦淫に至ったと認められる旨の捜査官による報告書があり,被告人も捜査段階においては同様に姦淫に至った事実を自認していたほか,上記ビデオ画像には被告人の今日は入りにくいわなどといった,姦淫に至っていることを前提とする発言が録られているのであって,これらを総合すれば,上記事実についても,被告人が姦淫したと優に認めることができ,これに反する被告人の公判供述は,捜査段階の供述を合理的な理由なく変遷させるもので,いやがる被害児童にはわいせつ行為を続けることはなかったとの根拠も,上記ビデオの映像に照らし,到底首肯できないのであって,捜査段階の供述と比して信用できず,上記認定に合理的な疑いを抱かせるには至らない。
(法令の適用)

(量刑の理由)
1
本件は,小学校教師であった被告人が,約4年8か月の間に,その勤務先の女子児童であった計10名の13歳未満の少女に対し,多数回にわたりわいせつ行為等を行ったという,強姦46件,強姦未遂11件,強制わいせつ25件,児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)13件からなる事案である。
2
被告人は,勤務先の小学校で,目に留まった女子児童に声をかけ,初めは指導上の必要などといった虚言を弄して女子児童の身体に触るようになり,その反応
を確かめながら徐々にわいせつ行為の度合いを高めていき,自らが教師という被害児童に対して絶対的に優位な立場にあることを利用し,意のままに被害児童の身体をもてあそび続けるために,あらゆる手段を用いて,わいせつ行為等を繰り返していたものである。
被告人による個々のわいせつ行為等の態様は,ビデオ映像等によって明らかになっているところであるが,被告人は,勤務先の小学校の校舎内で,まだ授業時間中であったり,室外から他の児童の声が聞こえるような状況下でわいせつ行為等に及ぶなどしており,犯行の大胆さは常軌を逸している。具体的な行為態様も,父と子ほど年の離れ,被害児童らよりもはるかに体格も大きい被告人が,肉体的にも精神的にも未成熟な女子児童らに対して,判示のように,あらかじめ用意しておいた性具を用いたわいせつ行為を行ったり,手淫・口淫を強いたりした挙げ句,姦淫行為にまで及んでいる。さらに,被告人は,自らこれらの行為をビデオカメラで撮影していたばかりか,あろうことか,被害児童らにも撮影させることすらしており,まさに陵辱の限りを尽くしているといっても過言ではない。そればかりでなく,犯行状況を撮影したビデオ映像等によれば,被告人は,被害児童らに行為に応じさせようとして,被告人のわいせつ行為等に応じる度合いが他の児童のそれと比較して少ないなどと言って自己否定を強い,被害児童が被告人の要求に応じれば他の児童は被告人にわいせつ行為等をされずに済むなどと,あたかも被害児童のせいで他の児童まで苦しまなければならないような言い方をして自責の念を抱かせ,被害児童が嫌がって抵抗するのに対し,やると決めたのだから応じ続けなければならないとか,当該行為ができないのならば他の行為を行わなければならないなどといった詭弁を弄するなどの言動が多々あったことが認められる。被告人は,このような言動を通じて被害児童らの心理に強い影響を与え,抵抗や反論ができないように仕向けたのであり,被害児童らが抵抗の意欲を削がれ,精神的に被告人の望むわいせつ行為等に応じざるをえない状況に追い込まれたことは明らかである。さらに狡猾なことに,被告人は,被害児童らに対
し,明示的に口止めをしたり,わいせつ行為等の状況を撮影した写真をばらまくなどと脅迫したりすることがあったほか,同時に複数の児童に対してわいせつ行為等に及ぶことで,被害児童らに同じ秘密を共有させて犯行の発覚を防ぐとともに羞恥心を緩めさせるなどし,自らの要求に応じない児童に対しては,部活動や勉強を教えないとか,授業等の際に無視すると言うなどしており,結局,被告人は,被害児童らの人格の尊厳や健やかな成長といったことにはおよそ関心がなく,自己の一時の快楽を追求するため,多くの悪辣かつ残酷なやり方で被害児童らの心を手玉にとり,被害児童らの抵抗など気にも留めず,一方的に容赦なく,鬼畜にも劣る浅ましい蛮行を繰り返したものにほかならず,被告人には,被害児童らの成長についての教師としての使命感どころか,幼い児童らを慈しみ育てたいと願う温かな人間性も,全く欠落しているというほかない。
なお,被告人は,当公判廷などにおいて,被害児童らが嫌だといえばそれ以上のことは行わなかったとか,行為に応じると約束したのだからそのまま続けてもいいと思ったなどと述べるが,もとよりわいせつ行為に応じるという約束自体およそ不条理かつ反倫理的なものであることは明白である上,上記ビデオ映像によれば,被害児童らが明確に拒否の態度を示しているのに,自らの欲望を満たすために様々な言辞を重ねて執拗に犯行を継続している状況が容易に見て取れ,それでもなお被害児童らが勇気を振り絞り被告人の要求に応じなかったときに限って,ようやくそれ以上の行為に及ぶことを渋々断念したことがわずかに認められる程度に過ぎず,要するに被告人の弁解は単なる詭弁以外のなにものでもないのであって,全面的に排斥すべきものであり,これを前提とした弁護人の主張も全く採用できない。そして,公判廷に至ってすら,同様の筋違いの言い訳を弄して刑責を軽減しようと見苦しくあがく被告人の態度からは,本件各犯行の重大性についての認識やそれに伴う慚愧の念など全く見出すことはできない。
以上要するに,被告人は,教師という立場を最大限に悪用し,幼い被害児童らの未成熟な心理に徹底的につけこんで,神聖たるべき学校教育の現場に,自らの
意のままに性的快楽を追求できる私的空間を作り上げ,常習的にわいせつ行為等を行っては悦に入っていたものであって,その卑劣さ,反社会性,残忍で冷酷な犯行態様など,いずれの面においても比類なきほどに悪質というべきである。3
また,いうまでもなく,本件犯行による結果はこの上なく甚大である。被告人は,上記のとおり,起訴されているだけでも10人もの被害児童らに対し,合計95件のわいせつ行為等の犯行に及んでいるところ,被害児童らはいずれも当時9歳ないし12歳の幼い少女たちばかりであり,被告人によって,未成熟な身体には不相応で過酷なわいせつ行為に応じさせられただけでなく,中には多数回の姦淫行為まで余儀なくされた者も複数いるのであって,その肉体的苦痛がいかばかりであったか,想像することすら困難である。
そして,被害児童らに与えた精神的打撃は,それ以上に重大である。被害児童らは,学校内における保護者として,本来であれば全幅の信頼を寄せ,指導を仰ぐことができるはずの教師である被告人から,上記のとおり,抵抗することもできず,長期間,多数回のわいせつ行為等の被害に遭い続けてきたもので,それ自体,被害児童らにとって耐え難い出来事であったことは想像に難くない。しかも,被害児童らは,当初は,行為の意味すら十分に理解することもなく,言われるがまま,求められるがままに,わいせつ行為等に応じてきたものであって,行為の意味を十分に理解するに至ったときに被害児童らが受けるであろう衝撃の大きさや,本件被害の経験が被害児童らの健やかな成長に多大なる悪影響を及ぼすであろうことに思いを致すと,被害児童らが誠に哀れでならない。実際に,被害児童らの中には,現在心療内科に通院している者もおり,同女らの心は今なお蝕まれ続けている。さらに,被害児童らは,被告人から口止めをされるなどしたことから,一様に,本件被害を親に告白することすらできず,わずかに他の被害児童との間でその経験を分かち合っていたにすぎなかったものであって,年端もいかない同女らが,その未成熟な心で受け止めるには余りにも大きな精神的打撃を,しかも,誰にも相談できぬまま,胸中ひそかに押しとどめるほかなかったことが,
どれほど辛く苦しいものであったか,その心痛や絶望感の大きさもまた,筆舌に尽くしがたいというべきである。その心中の苦悩は,例えば,被害児童の一人が,被告人による被害から解放された後も,親にもいえない秘密を持ってしまった良心の呵責に苛まれて悩み苦しみ続けた挙げ句,本件犯行に起因すると思われるトラウマ反応を示すに至って,ようやく本件被害を外部に打ち明けられたことにより本件一連の犯行が発覚するに至ったことなどにも如実に表れている。目を転じて被害児童らの親らについてみると,安心して学校に預けたはずの我が子が,あろうことか,教師である被告人から,繰り返し,理不尽で屈辱的なわいせつ行為等の標的にされていたことを知った衝撃やその心痛は察するに余りあり,慈しみ育ててきた我が子が被害を受けたことが,自らが被害を受けた以上の苦痛をもたらしたであろうことは容易に推察される。現に,被害児童の親の中には,愛娘の受けた被害に気づけなかったことを悔いて自らを責め続けている者もいるのである。
被害児童やその家族らが,本件の記憶を背負って,今後の人生を生きていかなければならないことを思うと,本件の被害は余りにも重く,残酷すぎるものといわなければならない。にもかかわらず,被告人からは,現時点において慰謝の措置は何ら講じられていないのであって,被害児童の母親らの意見陳述などからも明らかなように,被害児童やその親らの処罰感情が峻烈を極めているのも当然至極である。
さらに付言すれば,小学校教師であった被告人が,その勤務先の多数の女子児童に対し,長期間にわたり,極めて多数回のわいせつ行為等を繰り返してきたことは,周辺地域の教育界にとどまらず,全国的にも相当な衝撃をもって受けとめられ,本件に起因して多数の教育関係者らが処分を受けたほか,学校に子息を預ける親たちの教師に対する信用も根底から覆されたのであり,その回復は決して容易に成し遂げられるものではなく,本件犯行による社会的影響もまた極めて大きいものがある。

4
被告人は,その生育環境等に特段の問題なく成長して高等教育を受けていたところ,遅くとも大学生のころから少女を性の対象として見るようになり,小学校教師になって2年目に勤務先の女子児童に対するわいせつ行為に及んだのを皮切りに,婚姻し,一子をもうけた後もなお,女子児童らに対するわいせつ行為等を継続し,本件犯行時に至ったものである。
被告人は,要するに,勤務先の小学校の女子児童らを性の対象と見,自らの欲求を満たすため,上記のような種々の手段を講じて,同女らを自らの性的快楽の対象に仕立て上げる行為を繰り返してきたものであって,いうまでもないことであるが,犯行に至る経緯や動機において酌むべき事情など絶無である。かえって,被告人は,小学校教師になった後ですら,自らの性的欲求を適切に制御できず,あろうことか被害児童らを自らを慰める道具のように扱って,その将来に与える影響を一顧だにせず,その人格を蹂躙する,まさしく人道にもとる行為を常習的に継続してきたものというほかなく,倫理意識は欠落しており,その犯行態度は徹底的に非難されなければならない。
なお,弁護人は,被告人に対する犯罪心理鑑定の結果を踏まえ,その有するアスペルガー症候群的な性格傾向が犯行の一因であるなどと指摘するが,それが被告人の刑責を多少とも減じるものとはいえない。
以上によれば,被告人の刑事責任は,非常に重大である。

5
他方,被告人は,基本的には本件各犯行を認め,残りの生涯をかけて償いを続け,少しずつでも慰謝料の支払いに努力していきたいなどと反省と謝罪の弁を述べていること,被告人の更生に助力する親族らもいるようであることのほか,被告人が,事案の性質上当然のこととはいえ,本件審理のため長期間身柄を拘束されるとともに,小学校教職員を懲戒免職処分となって教員免許も剥奪されており,一定の事実上の制裁を受けているとも評価できること,被告人には前科前歴がないことなど,被告人にとって酌むべき事情も認められる。
しかしながら,被告人は,上記のとおり,長期間にわたって,極めて多数回に
わたる蛮行に及び,多数の被害児童らの人生の歯車を大きく狂わせているのであって,その責任は余りに重大であり,これらの事情をもって,被告人に対する刑責を大幅に軽減させるものと評価することなど到底できない。
以上のような本件事案全体の犯情及びその他の事情に徴すると,有期懲役刑を超える刑を選択する余地のない現行法の枠内では,被告人に対しては,その最高刑をもって臨むほかはない。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑)
懲役30年

平成21年9月14日
広島地方裁判所刑事第2部

裁判長裁判官

奥田哲也
裁判官

高松晃司
裁判官

三貫納


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