判例検索β > 平成20年(わ)第4375号
殺人被告事件
事件番号平成20(わ)4375
事件名殺人被告事件
裁判年月日平成21年1月16日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第1刑事部
判示事項の要旨交際相手の女性と一緒になるために,同女の内縁の夫である被害者を殺害しようと企て,同女と共謀の上,自ら自動車を運転して,道路を歩いている被害者を跳ねて殺害した被告人に,懲役18年が言い渡された事例
裁判日:西暦2009-01-16
情報公開日2017-10-13 01:36:58
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文
被告人を懲役18年に処する
未決勾留日数中130日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,Aと共謀の上,B(当時36歳)を殺害しようと企て,被告人において,平成20年4月13日午前8時27分ころ,大阪府東大阪市ab丁目c番d号付近路上で,普通乗用自動車を運転し,対向車線上を同方向に歩行していたBに後方から接近し,自車を時速約60キロメートルに加速して,自車前部を同人の背後から衝突させ,同人を跳ね上げて自車のフロントガラスに激突させた後,路上に転倒させ,よって,そのころ,同所において,同人を頭蓋骨骨折等による外傷性くも膜下出血により死亡させて殺害した。
(証拠の標目)
省略
(累犯前科)
被告人は,
(1)

平成14年3月26日大阪地方裁判所で有印私文書偽造,同行使の罪により
懲役1年(3年間執行猶予,平成16年4月21日その猶予取消し)に処せられ,平成17年9月4日その刑の執行を受け終わり,
(2)

(1)の裁判の確定前に犯した道路交通法違反,有印私文書偽造,同行使の罪に
より平成15年4月22日大阪地方裁判所で懲役1年(3年間執行猶予,平成16年4月21日その猶予取消し)に処せられ,平成18年9月4日その刑の執行を受け終わり,
(3)

(1)及び(2)の各執行猶予期間中に犯した道路交通法違反の罪により平成16
年3月5日大阪地方裁判所で懲役5月に処せられ,同年9月4日その刑の執行を受け終わった。

これらの事実は検察事務官作成の前科調書(乙8)
,(2)の前科に係る調書判決
謄本(乙10)及び(3)の前科に係る判決書謄本(乙11)によって認める。(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法60条,199条に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,判示の罪は前記(1)ないし(3)の各前科との関係で再犯であるから同法56条1項,57条により同法14条2項の制限内で再犯の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役18年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
1
(1)

本件における事実経過
被告人は,自動車販売店勤務などを経て,自動車販売修理業を営んでいた。
30歳のころ,前々妻と結婚したが離婚し,34歳のころ前妻と結婚して,e区のマンションに住んでいた。上記のとおり,平成16年4月から平成18年5月(仮釈放)まで服役している。
(2)

被告人は,自動車販売修理業が軌道に乗らないことから,雑誌広告で見付
けたコンビニ店のアルバイトに応募して採用され,平成18年9月から,大阪市e区のBの経営するコンビニ店で夜勤アルバイトとして働き始めた。当初はBと親しく付き合い,その内妻であるAとも知り合った。AからBについての愚痴を聞きその相談に乗ったことなどから親密な関係になり,平成19年3月には男女の関係になった。
平成19年4月末,Bはコンビニ店の経営をやめた。AはBと別れて被告人と一緒になろうと考え,A方からBを閉め出した。Bは実家に戻り,被告人がA方に入って,半同居生活をするようになった。ところが,AはBとやり直そうと考え始め,被告人は自分のマンションに戻ったが,Aとの関係は続けていた。BはA方に戻り,このころ,Aと被告人との関係を知るに至った。7月,Aが子供を出産した
(Bはその子供を認知した)

9月,AからBが呼んでいるとの連絡を受け,A方に行った際,Bから暴行を受けるということがあった。
被告人は,暴力団組員に依頼して,Bを拉致して脅迫し,Aと別れるようにし向ける話や,殺し屋にBを殺してもらう話を持ちかけたところ,Aはこれを拒むことはなかった。被告人は,Aに対し,殺し屋にBの殺害を依頼したように装ったりしたが,結局,被告人が先方にキャンセルしたということで,この話は終わった。(3)

平成20年1月,Aから,被告人との間の子を妊娠したと聞き,被告人は
出産することを望んだ。ところが,Aは,Bとの間の子であると考えており,また,Bとの生活を続けていくつもりになっていて4人の子を育てるのは大変だと考え,中絶することを決意した。3月初めに中絶手術を受けた。
Aは,中絶手術を受けた後,Bが自分の体を心配してくれないことで腹を立て,それまでの3人の関係を清算して被告人と一緒になろうと考えるに至った。3月上旬,Aから掃除屋さん(殺害を請け負う者のこと)を頼めないかという話を持ちかけられた。被告人はこれを聞いて,Bを殺害してAと一緒になろうと決意し,殺し屋に頼むことはできないとした上で,自らBを殺害することを伝え,Aの賛成を得た。
被告人は,Aとの間で,Bを殺害する具体的な方法について相談し,Bが使っている自動車に細工をして交通事故を起こさせる方法を提案した。
被告人は,3月下旬,Bの自動車のタイヤのねじを外すなどの工作をしたが,Bは事故を起こすには至らなかった。3月末には,Bは通勤に車を使わなくなった。(4)

被告人は,4月初め,道路を歩いているBを自動車で跳ねて殺害し,その
まま逃げるという方法を提案し,Aの同意を得た。
被告人は,4月5日及び6日,A方の近くでBを待ち伏せたが,Bが帰って来なかったり,待ち伏せている道を通らなかったりしたため,計画を実行することができなかった。

4月12日夜も,被告人は,Bを待ち伏せ,Bから帰るとの連絡があったことをAがメールしてきたが,Bが他の者に車で自宅まで送ってもらって帰ってきたため,計画を実行することができなかった。
Bが帰宅した後も,被告人は,Aと直接会ったり,メールで連絡を取り合うなどし,その晩は自動車内で寝て待機し,翌朝,Bが出掛けるのを待つことを連絡した。(5)

4月13日朝,Aとの間でメールを交換していたが,午前8時26分,A
から今いったわとのメールを受け,道路に出てきたBの姿を認めて,その後をつけ,速度を上げて近付き,Bに衝突させて跳ねた。
(6)

被告人はそのまま逃走し,Aに計画どおりBを跳ねたことを電話した。車
は一旦隠した後,その日の夜に大阪市f区の河川に沈めた。
Bの仮通夜の日に被告人はA方に入り,一緒に住むようになった。7月14日に逮捕され,当初は否認していたが,犯罪事実を認めるに至った。2
被告人に対する量刑

被告人は,Aと一緒になろうと考え,Aと共謀の上,被害者を殺害した。その動機に酌量の余地があるはずがない。自動車を加速させ,後方から衝突させるという態様は,非常に危険かつ悪質なものである。被告人らは,事前の打合せに基づき,被害者を待ち伏せた上で,本件犯行を実行したもので,計画的な犯行である。被害者は,Aが被告人との交際を続けることに苦しみ,ときにはけんかをしながらも,関係を修復しようと努力していたにもかかわらず,幼い娘を残して殺害されたのであって,その無念は察するに余りある。被害者の遺族らの悲嘆も深く大きい。母親は,被害者を失った悲しみや被告人らに対する憎しみを強く訴え,その厳重処罰を求めている。被告人は,遺族に対して謝罪の手紙を送付したが,それ以上は慰謝の措置は講じていない。被告人は,具体的な殺害方法を提案した上,本件において実行行為を行ったものである。被告人には,上記の各累犯前科により服役した前科もある。
以上によれば,被告人の刑事責任は重大である。

他方,被告人は事実を認め,一応の反省の弁を述べている。元妻が情状証人として出廷して被告人のために証言した。
そこで,これら諸般の事情を考慮した上,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役20年)

平成21年1月16日
大阪地方裁判所第1刑事部

裁判長裁判官

秋山敬
裁判官

栗原保
裁判官

荒井格
トップに戻る

saiban.in