判例検索β > 平成18年(ワ)第356号
損害賠償等請求事件
事件番号平成18(ワ)356
事件名損害賠償等請求事件
裁判年月日平成20年7月10日
裁判所名・部仙台地方裁判所  第2民事部
判示事項の要旨真珠の養殖,加工,商品化及び販売を一貫して行う事業に対する投資を勧誘して,金員を交付させ,又は,真珠売買のクレジット契約を締結させたことが,不法行為を構成するとされた事例
裁判日:西暦2008-07-10
情報公開日2017-10-17 20:41:32
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主1文
被告株式会社A,同B株式会社,同C,同有限会社J及び同Hは,原告に対し,連帯して,5487万5000円及びこれに対する平成18年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
原告のその余の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は,原告と被告株式会社A,同B株式会社,同C,同有限会社G及び同Hとの間に生じたものは,同被告らの負担とし,原告とその余の被告らとの間に生じたものは原告の負担とする。

4
この判決は,第1項につき,仮に執行することができる。

第1


請求の趣旨
被告らは,原告に対し,連帯して,5487万5000円及びこれに対する平
成18年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。第2
1
当事者の主張
請求原因
(1)

当事者
原告
原告は,農業を若干営む主婦である。


被告ら
(ア)

被告株式会社A(以下被告Aという。は,平成14年5月9日


に設立された①真珠の養殖業,②宝石・貴金属・装身具の加工業及び販売業,③産地直送の食料品の販売業等を目的とする株式会社であり,パンフレットには真珠の総販売元と記載されている。
(イ)

被告B株式会社(以下被告Bという。は,平成13年12月2


0日に設立された①魚介類の養殖及び販売業,②飲食店業,③不動産の売買,賃貸及びその仲介並びに所有・管理及び利用,④真珠・宝石等を利用した指輪・ネックレス等のアクセサリーの販売業等を目的とする株式会社であり,パンフレットには真珠養殖と記載され,被告Aと同一住所地に本店を置いている。
(ウ)

被告C(以下被告Cという。は,被告A及び同Bの代表取締役


であり,被告D(以下被告Dという。は,被告A及び同Bの取締役)
であり,被告E(以下被告Eという。は,被告A及び同Bの取締役)
であり,被告F(以下被告Fという。は,被告Bの監査役である。)
(エ)

被告有限会社G(以下被告Gという。は,平成16年1月15


日に設立された健康機器,健康食品,絵画,貴金属,消防設備機器(スプレー式消化器)の販売等を目的とする有限会社である。
(オ)

被告H(以下被告Hという。は,被告Gの取締役であり,被告


I(以下被告Iという。
)は被告Hの夫である。
(2)

主位的請求原因
不法行為1(平成15年12月から平成17年1月までの現金詐欺)(ア)

被告らは,共謀して,東北地方等の不特定多数の中高年女性から投
資金名下に金員を詐取することを企て,原告ほか多数の者に対し,配当金を支払ったり配当として100万円相当の真珠セットを交付する意思も能力もなく,また受領した投資金について全額までもは返還する意思も能力もないにもかかわらず,これがあるかのように装い,被告らの真珠の養殖,加工,商品化及び販売を一貫して行う事業(以下本件真珠事業という。は投資金の5倍もの利益を生む事業であるので,105)
万円を投資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手できるほか,1年半後までに投資金全額が返還され,22万円の配当金も受領できるとの虚偽の事実を申し向け,あたかも,本件真珠事業に1口105万円を投資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手でき,かつ,1年半後までに投資金全額の返還を受け22万円の配当金も受領できるものと信じさせた。すなわち,a
被告ら(被告Gを除く。は,平成15年ころ,東北地方等の多数の)
者から真珠生産等の事業への投資名目に資金を集めることを謀議し,被告Bを真珠養殖会社,被告Aを総販売元,被告Gの前身で屋号をJと称する個人を販売店の一つとすることの役割を決め,行く行くはギャラリー(宝石販売店)も出店すると触れ込むこととした。


被告ら被告Gを除く。は,

)被告Gを平成16年1月15日設立し,
被告Hが代表者に就任し,被告Gが真珠セットの販売の中心であるような外形を整えた。


個人である被告らの中心は,被告Cであり,法人である被告らの中心は,被告Aであり,被告Hが,その総括本部長,分離前相被告K(以下K」

という。がその北海道・東北地区本部長,)分離前相被告L以(下「L

という。)がその北海道・東北地区部長であった。


被告らは,資金を集める方法として,投資者をA会に入会させ,被告Aをその主催者として表示したり,M株式会社をその主催者として表示したりした。また,被告らは,資金を集める方法として,投資者を真珠の会N(以下真珠の会という。に入会させ,真珠の会総代

表との肩書を付した被告Cをその主催者として表示したりした。


このように,被告らは,多数の者から本件真珠事業への投資金名下に金員を詐取することとし,形式的には,被告A又は同Gとの間に真珠売買契約書を作成させたが,被告らも,原告を含む多数の者も,この取引は,真珠の売買ではなく,あくまでも投資であって,真珠はいわば投資に対する配当の意味を有すると理解していた。


被告らは,原告を含む多数の者に対し,平成15年11月初めころから平成17年1月末ころまでの間に,
Lを通じて個別に,
あるいは,
食事会等の集まりの際に,本件真珠事業は投資金の5倍もの利益を生む事業であるから,投資者が105万円を投資すれば,直ちに100万円相当の真珠セットを送付し,1年半後までに毎月分割払の方法で投資金を全額返還し,22万円の配当金も支払う旨虚偽の事実を告知して,投資を勧誘した。
(イ)

被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の①の番号1ないし17,原告の母O名義の①の番号1ないし6及び原告の長女P名義の①の番号1ないし10に記載のとおり,原告をして,原告名義で17回,原告の母O名義で6回,原告の長女P名義で10回の合計33回にわたり,L宅において,合計3465万円の現金をLに直接手渡す方法で投資させ,これによって原告から同額を詐取した。

不法行為2平成16年2月から同年12月までのクレジット契約詐欺)(
(ア)

被告らは,共謀して,原告ほか多数の者に真珠の売買に関するクレ
ジット契約を締結させ,これらの者にクレジット会社に対する分割金支払債務を負担させた上,クレジット会社から真珠売買代金名下に金員を詐取することを企て,原告ほか多数の者に対し,クレジット代金相当額の全額までもは送金する意思も能力もないにもかかわらず,これがあるかのように装い,Lを通じて個別に,あるいは,食事会等の集まりの際に,以下のように虚偽の事実を告知して,投資を勧誘した。

投資者が販売店を被告Gとする真珠(1セット100万円,消費税別途5万円)の売買契約を締結し,その売買代金及び消費税の全額についてクレジット会社とクレジット契約を締結すれば,クレジット会社から被告Gに売買代金相当額が支払われる。


他方,上記契約を締結した投資者はクレジット会社に対して,5年間,
毎月の分割金支払債務を負担することになるが,
被告らにおいて,
あらかじめ上記契約を締結した者の銀行等の口座に,毎月の分割金相当額を振り込み,自動引き落としでクレジット会社に対する分割金を支払うので,
上記契約を締結した者には何らの金銭的負担も生じない。

上記契約をした投資者は被告らから真珠セットを受け取るので,上記のとおり契約書に署名するだけで,何らの経済的負担もなく,100万円相当の真珠セットを手に入れることができる。


上記契約をした投資者は,被告らから契約後19か月目にクレジット会社に対する残りの分割金全額の支払を受けるので,5年間も債務を負担することにはならない。


上記の形態で投資をすれば,本件真珠事業はさらに拡大して,投資者により多くの配当ができるようになる。

(イ)

被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の③の番号1ないし3並びに原告の長女P名義の③の番号1及び2に記載のとおり,原告をして,原告名義で3回,原告の長女P名義で2回の合計5回にわたり,売買契約及びクレジット契約を締結させ,これによってクレジット会社から売買代金名下に525万円を詐取し,原告に同額の債務を負担させた。

不法行為3平成17年3月16日から同年6月27日までの現金詐欺)(
(ア)

被告らは,それまでの形態では,投資者に詐取した金員から投資金
及び配当金の一部を返還する必要があり,投資者に交付する真珠セットの費用も嵩んでいた上,新たな会員を加入させるごとに礼金を支払う必要があり,当初から予定された事態ではあるものの,いずれ投資者に対する毎月の分割金の支払ができなくなり,投資者がだまされていることに気付いて社会問題化することが必至の状況にあったので,平成17年2月ころ,さらに,共謀して,被告らを信じている投資者から,大掛かり,かつ,短期に金員を詐取することを企て,平成17年2月10日ころから同年6月末ころまでの間に,原告ほかの投資者に対し,全額を一時に返還する意思も能力もないにもかかわらず,これがあるかのように装い,Lを通じて個別に,あるいは,食事会等の集まりの際に,以下のように虚偽の事実を告知して,投資を勧誘した。

多くの者に投資をしてもらい,本件真珠事業が順調に推移し,予想外の利益を生んでいるので,19か月後までに投資金全額を返還し配当金を支払うとの約定を前倒しで実行することができるようになったから,平成17年6月末ころまでには,投資金及び配当金を一時に支払うことができるようになった。


現時点において,
新たに1口105万円の投資をした者に対しては,
100万円相当の真珠セットを交付することはもちろん,平成17年6月末ころまでに,投資金を全額返還し,かつ,配当金22万円も前倒しで支払う。


本件真珠事業の第2ステージが平成17年8月から始まるが,それまでには,前倒しで,投資金を全額返還し,配当金も支払う。

(イ)

被告らは,上記の勧誘によって原告に上記虚偽の事実を信じさせ,
その結果,別紙1一覧表の原告名義の②の番号1ないし7,原告の母O名義の②の番号1ないし21及び原告の長女P名義の②の番号1ないし15に記載のとおり,原告をして,原告名義で7回,原告の母O名義で21回,原告の長女P名義で15回の合計43回にわたり,合計4515万円を被告Gの金融機関の口座に振り込む方法で投資させ,これによって原告から同額を詐取した。

損益相殺等
(ア)

以上のとおり,原告は,被告らの不法行為により,合計8505万
円を詐取あるいは債務負担させられ,同額の損害を被った。
(イ)

他方,原告は,本件真珠事業に1口投資するごとに,配当として商
品化された真珠セットを受領したが,これらは一流の宝石店等による事実上の鑑定によれば,正確な価格は不明であるものの,高々1セット5万円であり,81セット合計で高々405万円である。
また,原告は,別紙1一覧表1ないし3に記載のとおり,毎月,各投資につき2万5000円ないし3万円ずつの配当を受け,これらの合計は1403万5000円となる。
さらに,原告は,平成15年12月26日から平成17年1月31日までの間,別紙2一覧表に記載のとおり,被告Aらから,お手間代として,合計508万円の支払を受けたほか,平成19年2月13日,Lから,訴訟上の和解に基づき,700万円の支払を受けた。
(ウ)

そこで,上記(イ)を損益相殺等として上記(ア)の損害金から控除す
ると,原告の損害金残金は5487万5000円となる(なお,(ア)から(イ)を控除すると,正確には5488万5000円になるが,原告の違算に基づく上記主張を摘示した。。

(3)

予備的請求原因1
本件真珠事業は,無限連鎖講の防止に関する法律2条に規定する無限連鎖
講に該当するものであり,主位的請求原因記載の原告と被告A,同B及び同Gとの間の各契約は,公序良俗違反として無効であり,同被告らは,原告に対し,原状回復義務があるところ,原状回復すべき額は,主位的請求原因における損害額と同額である5487万5000円となる。
(4)

予備的請求原因2
法人たる被告らは,
主位的請求原因に記載のとおり,
本件真珠事業につき,

原告に法人たる被告らに対し8505万円を投資させたが,同被告らが原告に交付した真珠セットの価格は高々合計405万円であるし,遅くとも平成17年7月末ころまでには配当金残額を一括して支払い,投資金の全額も一括して完済する旨の合意したのに,同年8月に18万円を支払ったのみで残額を支払わないから,同被告らは,債務不履行責任として,主位的請求原因における損害額と同額である5487万5000円の損害賠償をすべき義務があり,
個人たる被告ら被告Iを除く。は,


法人たる被告らの役員として,
職務を行うにつき悪意又は重大な過失があるので,原告に対し,同額の損害賠償をすべき義務がある。
(5)

結論
よって,原告は,被告らに対し,主位的に,不法行為による損害賠償責任
に基づき,予備的に,①法人たる被告らにつき公序良俗違反による原状回復責任に基づき,②法人たる被告らにつき債務不履行責任又は個人たる被告らにつき役員の損害賠償責任に基づき,連帯して5487万5000円及びこれに対する不法行為後で,かつ,訴状送達の日よりも後である平成18年6月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
2
請求原因に対する認否
(1)ア

請求原因(1)アの事実は知らない。
請求原因(1)イの事実は認める。ただし,被告E及び同Fは,被告C及び
同Dとの間の子であり,当時の商法による役員定数の関係で名目上登記されていたにすぎない。
(2)

請求原因(2)の事実は否認し,原告の主張は争う。
被告Aは,被告Bが製産した真珠を仕入れ,総発売元として,全国に販売
していたが,その方法としては,顧客に対し直接販売する方法と被告G等の販売代理店に卸して販売する方法があった。
被告Aないしその代表者被告Cが,投資等の勧誘をしたことはない。被告Aは,原告に直接販売したものではなく,代理店システムを通じて,真珠を1セット65万円の卸値で販売したにすぎず,また,商品を購入した顧客へのお礼の気持ちで真珠の会を運営し,利益還元と称する毎月の謝礼金を支払っていたが,利益に応じた一定の金員を約したものでも文書化して合意したものでもなく,また,義務として1年半後に真珠の買戻しを約したものでもない。
被告Gないしその代表者被告Hが,投資等の勧誘をしたことはない。被告Gは,被告Bが製産した真珠を被告Aが総発売元として全国的に販売したものを地域代理店として販売したが,互いに資本関係等はない。そもそも,被告Gは,真珠売買を目的として設立された会社ではなく,当初,健康機器売買等をしていたが,たまたま人の紹介で被告Aから1セット65万円で卸された真珠を1セット105万円(消費税込み)で売買したにすぎず,被告Aが主宰していたとされる真珠の会には関与しておらず,原告とは純然たる売買契約の当事者の関係である。
とりわけ,被告D,同E及び同Fも,当時の商法の役員定数の関係で商業登記簿上の役員に名義を貸しただけで,被告Aないし同Bの経営に関与しておらず,また,被告Iは,被告Hの夫であるが,被告Gの役員でなく,その経営に関与しておらず,現在,等級1級の身体障害者である満80歳を超える高齢者であるから,原告の請求は乱訴の極みである。
(3)
(4)
3
請求原因(3)の事実は否認し,原告の主張は争う。
請求原因(4)の事実は否認し,原告の主張は争う。

抗弁
原告は,本件真珠事業につき,親族名義を含め自ら多額の取引をして利益還元金を取得するとともに,相当数の第三者に対し取引の勧誘をして紹介手数料を得るなど深く関与しており,儲け損なった者であっても,被害者ではないから,原告の請求はクリーンハンドの原則に反して許されない。

4
抗弁に対する認否
抗弁の主張は争う。
理1由
請求原因(1)について証拠(甲83)によれば,請求原因(1)アの事実が認められ,同(1)イの事実は,被告E及び同Fに関する部分を除き,当事者間に争いがなく,証拠(甲1,3,乙11)及び弁論の全趣旨によれば,被告E及び同Fも,役員定数の関係があったとしても,本人の意思に基づき,商業登記簿上,役員として登記されたと認められるから,原告主張の役員の地位にあったというべきである。2
請求原因(2)アないしウについて
(1)

証拠(甲8,10,12,13,15∼71,73∼75,79∼83,
87∼183,191,192(以上,枝番を含む。,乙9の2及び3,原告)
本人(第2回)
)及び弁論の全趣旨によれば,被告A,同B,同C,同G及び
同Hにつき,請求原因(2)アないしウの各事実(ただし,被告D,同E,同F及び同Iとの共謀に関する部分を除き,1年半」とある部分を19か月と読み替える。また,Lにおいて,自ら関与した本件真珠事業の不法行為性につきどの程度の認識があったかについては,確定し難い。が認められる。)ところで,被告らは,上記共謀による投資金詐取の事実を争い,本件真珠事業につき,独立した事業主間の単純な真珠の卸しと販売であって,真珠の会における金員の支払は顧客への感謝としての被告Aのサービスにすぎないかのように主張し,被告C及び同Hは,被告らの主張に沿う陳述をする(順次,乙6,5)。しかしながら,原告は,上記認定事実に沿う,あるいは,これを推認させる事実を供述ないし陳述(甲83,91,乙9の1及び2,原告本人(第2回))するところ,被告H自身も,平成19年9月1日付け検面調書において,本件真珠事業が単純な売買ではなく,元本保証と高利を約した投資であって,被告Cの依頼に応じて会員を集めたが,被告Cから法律すれすれである旨聞かされ危険なことと認識した旨供述し(甲175)平成19年8月2,9日付け員面調書において,本件真珠事業の最高責任者は被告Cであり,自分は,A総括本部あるいは真珠の会副総代の肩書をもらったナンバー2として,被告Cの指示の各リーダー(地区責任者)への伝達,リーダーの取りまとめ,真珠セットの発注,会員に対する真珠セットの発送,食事会等での会員の勧誘等を担当していた旨供述し(甲176)被告C,同H,K等を被告,人とする本件真珠事業に関する出資の受入れ,預り金及び金利等の取り締まりに関する法律違反被告事件の第1回公判期日(平成19年11月14日)においても,公訴事実自体は認める旨供述する(なお,被告Cは公訴事実を否認し,Kは公訴事実を認めた。甲177の1及び2)など原告の供述等と符合する供述をしており,さらに,原告の供述等は,原告本人尋問(第2回)の結果のほかその様式及び体裁によって,原告が当時本件真珠事業に係る取引の経過等を記録したものと認められるノート3冊及びメモ(甲88の1∼3,89)の記載に裏付けられており,十分に信用できる。また,被告Hの上記各供述のうち,被告A,同B,同C,同G,同H,K及びLが意思を通じて本件真珠事業を投資目的のものとして展開していた点については,被告Cが同A及び同Bの代表者であり,被告Hが同Gの代表者であることのほか,被告Cも本件真珠事業に関する食事会等に出席したことがあること(食事会等への出席自体は被告Cも自認する。,被告H,K及びLが被告Aの肩書の)ある名刺(甲8,10,12)を所持していたこと,真珠セットの売主に被告Aと同Gとが混在しており(甲46,47,114∼141)中には,売,買契約書が被告A名義で作成されているにもかかわらず,クレジット契約書が被告H名義ないし被告G名義で作成されたり(甲54∼58,115,116,119,121,131)売買契約書が被告A名義で作成されている,にもかかわらず,納品書が被告G名義で発行されたり(甲123∼132,142∼156),売買契約書が被告G名義で作成されているにもかかわらず,領収証が被告A名義で発行されたり(甲34の2,36の2,47,95,96,133∼135)したものがあることにも裏付けられている。しかも,そもそも,被告Aは,平成17年10月に被告Aが支払停止に至った際,本訴被告ら訴訟代理人により,顧客各位に状況を説明する通知を発したが,その中で「顧客各位により事業に対する投資を受けと述べており(甲48)何よりも,原告が,本件真珠事業が単純な売買でなく,それにより高,
額の配当が得られるとの説明を受け,それを信じなかったのであれば,一介の主婦である原告がこれほど多数の真珠セットを購入することは到底説明がつかないといわなければならないのであって,被告らの主張は到底採用できない。
また,原告が,本件真珠事業に係る真珠セットにつき,所属不明の鑑別人による宝石鑑別書(甲65)が添付されており,事実上の鑑定をしても,その価値は高々5万円であった旨主張し,その旨陳述する(甲83)にもかかわらず,被告らは,被告G,同H及び同Iにおいて,宝石が仕入価格の2,3割といった利幅でなく販売されることは公知の事実であって,65万円で仕入れたものを105万円で販売するのはむしろ良心的である旨主張し,被告Cにおいて,宝石類は売買代金が原価の4,5倍程度はごく普通の価格設定である旨陳述する(乙6)のみで,その価値につき客観的な立証をしていないのであるから,原告が本件真珠事業への投資により受領した真珠セットの価値は,その時価とされた100万円にはるかに満たなかったと認めるべきである。
そして,本件真珠事業が,原告が説明を受けたように1口105万円を投資すれば,直ちに100万円相当の真珠を入手でき,かつ,19か月後までに投資金全額の返還を受け22万円の配当金も受領できるものであるとすれば,本件事業は,新たな顧客の勧誘が成功しているうちはともかく,それが尽きたころには経済的に破綻することが見込まれるというべきところ,被告らは,本件真珠事業が顧客に対し説明どおりの利益をもたらし得る合理性につき何ら主張立証しないから,被告A,同B,同C,同G及び同Hにおいては,原告ほかの顧客を勧誘する際の上記説明が虚偽であることを認識していたと認めるべきである。以上のとおり,被告A,同B,同C,同G及び同Hにつき,原告から,本件真珠事業につき,投資金(債務負担を含む。を詐取した事実を認めること)
ができる。
(2)

他方,本件全証拠によっても,被告D,同E,同F及び同Iについては,
本件真珠事業につき,被告A,同B,同C,同G及び同Hと共謀したことを認めるに足りる証拠はない。
すなわち,被告D,同E及び同Fが被告A及び同Bの取締役又は監査役であった事実は前記1のとおりであるが,被告D,同E及び同Fについて,それ以上に本件真珠事業との関与をうかがわせる証拠はなく,かえって,証拠(乙9の1,11)及び弁論の全趣旨によれば,①被告Dは,被告Cの妻であったが,約20年前に被告Cと離婚し,その後,別居し,被告E及び同Fは,被告Cと同Dとの間の子であるが,同被告らの離婚後は,被告Cと別居していたこと,②被告D,同E及び同Fは,被告Cが被告A及び同Bを設立する際,被告Cから名義貸しを頼まれて被告A及び同Bの役員に就任することを了承したこと,③被告D,同E及び同Fは,被告A及び同Bの役員会に出席したことはなかったこと,④被告D,同E及び同Fは,本件真珠事業に関して,被疑者又は参考人として警察の取調べの対象とはされなかったことの各事実が認められるから,被告D,同E及び同Fについて,被告A,同B,同C,同G及び同Hと共謀したことを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
また,被告Iについても,被告Iが被告Hの夫である事実は当事者間に争いがなく,証拠(甲73,74,87,185,186,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,①被告Iは,被告Gの前身としてのJこと被告H又は被告Gが株式会社Qと加盟店契約を締結する際,被告Gの連帯保証人となり,自己所有の不動産を担保に供したこと,②被告Hが,投資者を勧誘する食事会等において,被告Iに被告Cは信用できると言われた,あるいは,被告Iの了解を得て事業をしている旨発言したことの各事実が認められるが,①については,以前から事業を手掛けていた妻被告Hに頼まれるまま,被告Hが新たに本件真珠事業に乗り出したことを知らずに,連帯保証等の協力をした可能性を否定できず,②についても,被告Hの発言は,勧誘のための方便である可能性があるなど,その趣旨を一義的に確定し難いから,これら事実をもって,直ちに被告Iが本件真珠事業の内容を知った上でこれに参画していたとまではいい難く,かえって,証拠(甲4,9,乙4,9の1,10)によれば,①被告I(大正15年生)は,長年,楽器,レコード等の販売業を営んでいたが,糖尿病が悪化し,身体が不自由になったこともあり,約6年前に廃業し,年金暮らしをしているが,その間,被告Gの役員に就任したり,その営業に携わったことはなかったこと,②被告Iは,本件真珠事業に関して,被疑者又は参考人として警察の取調べの対象とはされなかったことの各事実が認められるから,被告Iについて,被告A,同B,同C,同G及び同Hと共謀した事実を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。3
請求原因(2)エについて
原告は,Lから支払を受けた和解金のほかに,配当等として受領した金品につき,損益相殺等を自認するところ,前記2(1)に認定した事実によれば,被告A,同B,同C,同G及び同Hによる本件真珠事業に託けた投資金(債務負担を含む。詐取が反倫理的行為に該当することは明らかであって,

上記配当金等
の交付は,専ら,原告その他の顧客をして本件真珠事業への投資が真に利益をもたらすものと誤信させることにより,投資金の詐取を実行し,その発覚を防ぐための手段にほかならないというべきであるから,上記配当金等の交付によって原告が得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,損益相殺等の対象とはならない最高裁平成20年6月24日第三小法廷判決)(
が,原告の請求自体が上記配当金等に相当する額を控除したものであるから,この点が本訴の結論を左右するものではない(なお,被告A,同B及び同Cの主張には,原告主張の各出資につき原告が自認するよりも若干多額の利益還元名目の支払をしたとするかの部分もあるが,上記のとおり,その主張はそれ自体失当であるばかりか,これを認めるべき証拠もない。。

4
請求原因(4)について
原告の被告D,
同E及び同Fに対する予備的請求原因2について判断するに,
同被告らが被告A及び同Bの役員であった事実は前記1のとおりであるが,原告は,抽象的に,被告D,同E及び同Fに職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったと主張するのみで,
これに該当する具体的な行為を主張しないから,
結局,原告の予備的請求原因2は主張自体として失当といわざるを得ない。
5
抗弁について
証拠(甲91,乙9の2,原告本人(第2回)
)及び弁論の全趣旨によれば,
原告は,自認するだけでも,別紙1一覧表1ないし3に記載のとおり,母又は長女名義のものを含め,多数回にわたり,投資に対する配当金を取得していたほか,別紙2一覧表に記載のとおり,第三者の紹介につきお手間代名目で利得を得るなど本件真珠事業に一定の関与をしていた事実が認められるけれども,原告において,いわば欲に目がくらみ,結果として,紹介に係る投資者に損害を与えた面があるとしても,本件全証拠をもっても,原告が,本件真珠事業がいずれ破綻し,紹介に係る投資者が損害を被ることを予見していた事実を認めるに足りないから,原告が,被告A,同B,同C,同G及び同Hに対し,損害賠償請求をすることが許されないとはいい難い。

6
結論
よって,原告の請求は,被告A,同B,同C,同G及び同Hに対する主位的請求原因に基づくものは,
すべて理由があり,
その余の被告らに対するものは,
主位的請求原因に基づく請求,予備的請求原因に基づく請求とも,いずれも理由がないから,主文のとおり判決する。仙台地方裁判所第2民事部
裁判官
畑一郎
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