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固定資産税賦課処分取消請求事件
事件番号平成18(行ウ)108等
事件名固定資産税賦課処分取消請求事件
裁判年月日平成19年10月11日
法廷名東京地方裁判所
判示事項博物館を設置し有形文化財を公衆の観覧に供する事業等を行うことを目的とする独立行政法人の所有不動産のうち,レストラン営業や物品販売に使用する目的で契約により他の会社等に貸し付けられた部分が固定資産税の課税対象であるとしてされた固定資産税の賦課処分が,適法とされた事例
裁判要旨博物館を設置し有形文化財を公衆の観覧に供する事業等を行うことを目的とする独立行政法人の所有不動産のうち,レストラン営業や物品販売に使用する目的で契約により他の会社等に貸し付けられた部分が固定資産税の課税対象であるとしてされた固定資産税の賦課処分につき,地方税法348条6項は,非課税独立行政法人の所有する固定資産であっても,当該法人以外の者が使用するものについては固定資産税の課税対象となる旨定めているところ,当該法人以外の者が契約等による独立した権限に基づいて使用しているものと認められるならば,法律的性質からみても,また,外形的にみても,その使用の実態において,私人の通常の固定資産の使用との間に差異はなく,固定資産税の課税対象になるものというべきであるとした上,前記各契約の借主は,各契約の内容に従って,自動販売機の設置,物品販売又はレストラン営業を行うことにより,前記各貸付部分を使用していると認められ,前記各貸付部分は,前記法人以外の者によって独立した権限に基づいて使用されているものといえるから,地方税法348条6項にいう「当該固定資産を所有する非課税独立行政法人以外の者が使用しているもの」に該当し,前記部分は固定資産税の課税対象になるとして,前記賦課処分を適法とした事例
裁判日:西暦2007-10-11
情報公開日2017-10-19 19:12:01
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主文1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

実及び理由
請求

1(A事件)
(1)

処分行政庁が原告に対し,平成17年2月10日付けでした別紙物件目
録記載の各不動産に係る平成14年度分の固定資産税賦課処分(ただし,平成17年9月9日付け減額賦課決定処分(17台税固賦第134号)及び平成19年3月9日付け減額賦課決定処分(18台税固賦第1341号)により減額された後のもの)のうち,税額32万6400円を超える部分を取り消す。
(2)

処分行政庁が原告に対し,平成17年2月10日付けでした別紙物件目
録記載の各不動産に係る平成15年度分の固定資産税賦課処分(ただし,平成17年9月9日付け減額賦課決定処分(17台税固賦第135号)及び平成19年3月9日付け減額賦課決定処分(18台税固賦第1342号)により減額された後のもの)のうち,税額31万3500円を超える部分を取り消す。
(3)

処分行政庁が原告に対し,平成17年2月10日付けでした別紙物件目
録記載の各不動産に係る平成16年度分の固定資産税賦課処分(ただし,平成17年9月9日付け減額賦課決定処分(17台税固賦第136号)及び平成19年3月9日付け減額賦課決定処分(18台税固賦第1343号)により減額された後のもの)のうち,税額31万3300円を超える部分を取り消す。
2(B事件)
処分行政庁が原告に対し,平成18年6月1日付けでした別紙物件目録記載の各不動産に係る平成18年度分の固定資産税賦課処分(ただし,平成18年9月8日付け減額賦課決定処分(18台税固賦第00269号)及び平成19年3月9日付け減額賦課決定処分(18台税固賦第01345号)により減額された後のもの)のうち,税額100万6100円を超える部分を取り消す。第2

事案の概要
本件は,博物館を設置し有形文化財を公衆の観覧に供する事業等を行うことを目的とする独立行政法人である原告の所有不動産のうち,レストラン営業や物品販売に使用する目的で契約により他の会社等に貸し付けられた部分が固定資産税の課税対象であるとして,処分行政庁が固定資産税の賦課処分を行ったことから,同部分は課税対象ではないと主張する原告が,当該処分(ただし,減額賦課決定処分により一部取り消された後のもので,原告が課税対象であることを争わない部分に係る税額を超える部分に限る。
)の取消しを求めている
事案である。

1
関係法令の定め
(1)

独立行政法人・原告の設立根拠の関係規定
独立行政法人とは,国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって,国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが,民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるか,又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものについて,これを効率的かつ効果的に行わせることを目的として,独立行政法人通則法等の定めるところにより設立される法人である(独立行政法人通則法2条1項)



原告は,博物館を設置して有形文化財を収集し,保管して公衆の観覧に供するとともに,文化財に関する調査及び研究等を行うことにより,貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ることを目的として設立された独立行政法人である(独立行政法人国立文化財機構法3条)

(2)

独立行政法人所有の固定資産に係る固定資産税の関係規定
市町村は,非課税独立行政法人(その資本金の額若しくは出資金の額の全部が国により出資されることが法律において定められているもの又はこれに類するものであつて,その実施している業務のすべてが国から引き継がれたものとして総務大臣が指定したものをいう。
)が所有する固定資産
(当該固定資産を所有する非課税独立行政法人以外の者が使用しているものその他の政令で定めるものを除く。
)に対しては,固定資産税を課する
ことができない(地方税法348条6項,25条1項,地方税法施行令51条の16の2第1項)



固定資産税の標準税率は,100分の1.4とする(地方税法350条1項)


(3)

国所有の固定資産に係る固定資産税及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の関係規定ア
市町村は,国並びに都道府県,市町村,特別区,これらの組合,財産区,地方開発事業団及び合併特例区に対しては,固定資産税を課することができない(地方税法348条1項)



国又は地方公共団体は,毎年度,当該年度の初日の属する年の前年の3月31日現在において所有する固定資産で,当該固定資産を所有する国又は地方公共団体以外の者が使用しているものにつき,当該固定資産所在の市町村に対して,国有資産等所在市町村交付金(以下市町村交付金という。
)を交付する(国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(以下交納付金法という。
)2条1項1号)



市町村交付金として交付すべき金額は,固定資産の価格にそれぞれ100分の1.4を乗じて得た額とする(交納付金法3条1項,2項)。

2
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者及び本件各不動産の所有関係


原告は,平成13年4月1日,独立行政法人国立博物館法に基づいて設立された独立行政法人であって,総務大臣が指定した非課税独立行政法人である。なお,原告は,平成19年4月1日,独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法律(平成19年法律第7号)の施行に伴い,独立行政法人文化財研究所の権利・義務の一部を承継するとともに,その名称を独立行政法人国立博物館から独立行政法人国立文化財機構に改めたものである(同時に独立行政法人国立博物館法であった法律の題名も独立行政法人国立文化財機構法と改められている。。)


別紙物件目録1記載の土地(以下本件土地という。
)及び同土地上

に存する同目録2から5まで記載の各建物(以下,それぞれ同目録の各番号に付記してある名称で特定することがあり,本件土地と併せて本件各不動産という。)は,国がもと所有していたところ,平成13年4月1
日に原告(当時の名称・独立行政法人国立博物館)が設立されたことに伴い,原告が出資を原因としてその所有権を取得したものである(乙2の1∼5,25の1∼5)

(2)

本件課税の経緯
平成14年度分から平成16年度分までに係る課税処分関係
(ア)

当初の賦課処分
東京都知事は,平成17年1月31日付けで,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格(平成14年度分から平成16年度分まで)を決定した。処分行政庁は,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録するとともに,そのころ,原告に対し同価格等の決定を通知した。

処分行政庁は,原告に対し,平成17年2月10日付けで,本件各不動産に係る平成14年度分から平成16年度分までの各固定資産税の賦課処分を行い,その旨通知した。
各年度分の税額は以下のとおりである。
平成14年度分
平成15年度分

253万2800円

平成16年度分

258万2200円

253万2800円

上記の価格の決定及び税額の決定は,①建物については,賃付契約に基づいて原告以外の者が使用しているものと認定した部分を課税対象とし,②土地のうち,上記①の建物の敷地相当部分については,当該建物の建築面積を0.7(建ぺい率等を考慮して設定した割合)で除して得られた敷地相当地積に,当該建物の総床面積に対して上記①の課税対象となる部分の床面積が占める割合を乗じて得られた地積を課税対象地積とし,③土地のうち,屋外を原告以外の者が使用しているものと認定した部分については,賃付契約における貸付地積をそのまま課税対象地積とすることにより,算定されたものである。

(イ)

第1次減額処分
処分行政庁は,平成17年8月31日,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格(平成14年度分から平成16年度分まで)を修正することを決定し,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録するとともに,そのころ,原告に対し同価格等修正の決定を通知した。


処分行政庁は,原告に対し,平成17年9月9日付けで,本件各不動産に係る平成14年度分から平成16年度分までの固定資産税の減額賦課処分(この項アにおいて,以下第1次減額処分という。

を行い,その旨通知した。
減額後の各年度分の税額は以下のとおりである。
平成14年度分

242万3800円

平成15年度分

236万1800円

平成16年度分

240万3800円

これらの価格の修正及び税額の減額は,①資料館(建物)のうち,P1株式会社が自動販売機を設置して使用したとされていた部分を非課税対象に変更し(ただし,平成14年度分に限る。,②平成館(建)
物)のうち,東京都国立博物館運営協力会(以下協力会という。

が刊行物等の販売のために使用した部分及び特別展ショップのために使用した部分として,当初の賦課処分では37.25平方メートルを課税対象としていたところ,平成14年度分では課税対象なし,平成15年度分では課税対象21.65平方メートル,平成16年度分では課税対象34.76平方メートルに変更するなど,課税対象としていた建物の部分の一部を非課税対象に改めたことによるものである。なお,これに伴い,本件土地のうち,非課税対象に改められた建物の部分に対応する敷地対象地積から得られた課税対象地積(前記(ア)c②)についても,非課税対象に改められている。

(ウ)

第2次減額処分
処分行政庁は,平成19年2月28日,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格(平成14年度分から平成16年度分まで)の修正を決定し,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録するとともに,原告に対し同価格等修正の決定を通知した。


処分行政庁は,原告に対し,平成19年3月9日付けで,本件各不動産に係る平成14年度分から平成16年度分までの固定資産税の減額賦課処分(この項アにおいて,以下第2次減額処分という。

を行い,その旨通知した。
減額後の各年度分の税額は以下のとおりである。
平成14年度分

231万5200円

平成15年度分

218万4000円

平成16年度分

217万9700円

これらの価格の修正及び税額の減額は,①平成館(建物)のうち協力会が特別展ショップのため使用した部分,並びに②東洋館(建物)厨房棟のうち株式会社P2(以下P2という。
)が賃付契約に基
づいて使用している部分と一体として利用している,ファンルーム部分及び便所部分について,課税対象としていたものを非課税対象に改めたことによるものである。なお,これに伴い,本件土地のうち,非課税対象に改められた建物の部分に対応する敷地対象地積から得られた課税対象地積(前記(ア)c②)も非課税対象に改められている。
(エ)

不服申立て及び訴訟提起
原告は,平成17年4月13日,東京都知事に対し,本件各不動産に
係る平成14年度分から平成16年度分までの各固定資産税の賦課処分の取消しを求めて審査請求をしたが,東京都知事は,平成17年9月12日付けで,当該審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲3,6)

原告は,平成18年3月13日,本件各不動産に係る平成14年度分から平成16年度分までの各固定資産税の賦課処分(ただし,第1次減額処分により減額された後のもの。
)の取消しを求めて,訴えを提起し
た(A事件)
。なお,原告は,第2次減額処分がされたこと等に伴い,
訴えの変更をした。

平成18年度分に係る課税処分
(ア)

当初の賦課処分
東京都知事は,平成18年3月31日,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格(平成18年度分)を決定した。処分行政庁は,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録し,同年4月3日,同価格等を固定資産課税台帳に登録した旨の公示を行った。


処分行政庁は,原告に対し,平成18年6月1日付けで,本件各不動産に係る平成18年度の固定資産税の賦課処分(以下平成18年度分に係る本件賦課処分という。)を行い,その旨通知した。
その税額は次のとおりである。
平成18年度分

297万5800円

上記の価格の決定及び税額の決定は,前記ア(ア)cと同様の根拠に基づいて,算定されたものである。

(イ)

第1次減額処分
処分行政庁は,平成18年8月31日,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格の修正を決定し,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録するとともに,原告に対し固定資産税価格等修正通知書を送付した。


処分行政庁は,原告に対し,平成18年9月8日付けで,本件各不動産に係る平成18年度の固定資産税の減額賦課処分(この項イにおいて,以下第1次減額処分という。
)を行い,その旨通知した。
減額後の税額は次のとおりである。
平成18年度分


297万1800円

これらの価格の修正及び税額の減額は,①平成館(建物)のうち協力会が特別展ショップのため使用した部分の一部,及び②東洋館(建物)本館のうち協力会が商品見本ケース設置のため使用した部分について,課税対象としていたものを非課税対象に改めたことによるものである。なお,これに伴い,本件土地のうち,非課税対象に改められた建物の部分に対応する敷地対象地積から得られた課税対象地積(前記ア(ア)c②)も非課税対象に改められている。
(ウ)

第2次減額処分
処分行政庁は,平成19年2月28日,本件各不動産のうち課税対象部分に係る価格の修正を決定し,同日,当該価格を固定資産課税台帳に登録するとともに,原告に対し固定資産税価格等修正通知書を送付した。

処分行政庁は,原告に対し,平成19年3月9日付けで,本件各不動産に係る平成18年度の固定資産税の減額賦課処分(この項イにおいて,以下第2次減額処分という。
)を行い,その旨通知を送付
した。
減額後の税額は次のとおりである。
平成18年度分


276万1800円

これらの価格の修正及び税額の減額は,前記ア(ウ)cと同様の理由によるものである。

(エ)

不服申立て及び訴訟提起
原告は,平成18年7月31日,東京都知事に対し,平成18年度分
に係る本件賦課処分の取消しを求めて審査請求をしたが,
東京都知事は,
平成18年10月19日付けで,当該審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲43,46)

原告は,平成19年4月16日,平成18年度分に係る本件賦課処分(ただし,第1次減額処分及び第2次減額処分により減額された後のもの。
)の取消しを求めて,訴えを提起した(B事件)

3
被告の主張する本件課税処分の税額等の計算根拠
(1)

本件各不動産のうち,被告の主張する固定資産税の課税対象となる部分
及びその床面積・地積は,別紙独立行政法人国立博物館課税対象部分一覧表の平成19年3月9日賦課決定後欄記載のとおりであり,その評価額,課税標準額及びこれに対応する税額は,別紙独立行政法人国立博物館税額一覧表の平成19年3月9日賦課決定後欄記載のとおりである。また,本件土地のうち,被告の主張する課税対象となる建物部分の敷地相当部分として課税対象地積としたものの算定方法は,別紙課税対象家屋の敷地相当地積算定一覧表記載のとおりである。(2)

原告は,被告の主張する上記課税対象となる部分のうち,①社団法人P
3に対して貸し付けた平成館(建物)の1階の一部(P3事務室)44.77平方メートル及びこれに対応する敷地相当部分,②P4株式会社に対して貸し付けた本件土地の一部(駅舎用地)144.84平方メートル,並びに③株式会社P5に対して貸し付けた本件土地の一部287.94平方メートル(ただし,平成18年度分に限る。
)が固定資産税の課税対象となること
については,いずれも争っていない。
そして,本件各不動産について,原告が課税対象であることを争っている部分を,課税対象に含めた場合の固定資産税の課税標準及び税額が上記(1)のとおりとなることは,弁論の全趣旨により認められる。
4
争点(争点に対する摘示すべき当事者の主張は,後記第3争点に対する判断において記載するとおりである。)
原告から貸付契約に基づいて他の会社等に貸し付けられレストラン営業,物品販売(自動販売機の設置の方法によるものを含む。
)に使用されている本件
各不動産の部分(ただし,原告が課税対象であることを争わない部分(上記3(2))を除く。以下本件各貸付部分という。
)は,地方税法348条6項に
いう当該固定資産を所有する非課税独立行政法人以外の者が使用しているものに当たり,固定資産税を課することができるか。
第3
1
争点に対する判断
地方税法348条6項は,非課税独立行政法人の所有する固定資産については,原則として,固定資産税を課さないものとしている。これは,独立行政法人が公共性の高い業務を行うことを予定されており,特に,資本金の額等が全額国の出資によっており,その実施している業務のすべてが国から引き継がれたもの(非課税独立行政法人)にあっては,その業務の円滑・確実な実施という観点から,課税関係においても可能な限りこれを国と同視することの必要性・相当性が認められることによるものと考えられる。
他方,非課税独立行政法人の所有する固定資産であっても,当該法人以外の使用するものにあっては,固定資産税の課税対象になるものとしている。これは,私人の通常の固定資産と同様の状態で使用されているものについてまで非課税とするのは,その使用の実態に照らして均衡を欠き相当でないことによるものと考えられる。そうすると,非課税独立行政法人の所有する固定資産であって,当該法人以外の者が契約等による独立した権限に基づいて使用しているものと認められるならば,法律的性質からみても,また,外形的にみても,その使用の実態において,私人の通常の固定資産の使用との間に差異はなく,固定資産税の課税対象になるものというべきである。
2
本件各貸付部分に係る契約内容は以下のとおりである。
(1)

原告とP1株式会社とは,平成16年4月1日付けで,資料館(建物)
1階の一部0.67平方メートルにつき,
自動販売機設置の用に供する
ものとし,貸付期間を平成16年4月1日から平成18年3月31日までの2年間,貸付料を1年1万0229円(消費税及び地方消費税を含む。)と
定めて貸付契約を締結した(乙8)

(2)

原告と協力会とは,平成16年4月1日付けで,法隆寺宝物館(建物)
2階の一部1.28平方メートル,平成館(建物)中2階の一部0.87平方メートル,東洋館(建物)本館1階70.67平方メートル等につき,刊行物等の販売並びにこれに伴う経理事務のための用に供するものとし,貸付期間を平成16年4月1日から平成17年3月31日まで,同期間の貸付料を430万1614円(消費税及び地方消費税を含む。
)などと定めて貸
付契約を締結した(乙10)

(3)

原告とP6株式会社とは,平成16年4月1日付けで,平成館(建物)
1階及び3階並びに本館建物地下1階の一部合計7.02平方メートル並びに本件土地4.05平方メートルにつき,
自動販売機設置の用に供する
ものとし,貸付期間を平成16年4月1日から平成18年3月31日までの2年間,貸付料を平成16年度38万9588円,平成17年度38万9933円(いずれも消費税及び地方消費税を含む。
)などと定めて貸付契約を
締結した(乙12)

なお,被告は,上記本館建物については重要文化財に指定されており,地方税法348条2項8号により非課税とされていることから,上記の建物の貸付部分の床面積合計を,平成館と本館それぞれに設置されている自動販売機の台数の割合で案分して得られた平成館の床面積相当分5.60平方メートルを課税対象と認定したものである。
(4)

原告とP2とは,平成16年4月1日付けで,東洋館(建物)厨房棟1
階の一部94.80平方メートル及び同付属棟1階の一部408.26平方メートルにつき,
一般観覧者および職員向け軽飲食の調理提供の用に供
するものとし,貸付期間を平成16年4月1日から平成18年3月31日までの2年間,貸付料を1年につき372万7725円(消費税及び地方消費税を含む。
)と定めて(ただし,上記付属棟に関しては無償貸付)貸付契約
を締結した(乙13)

なお,被告は,上記東洋館付属棟に係る貸付面積のうち,屋内部分である307.00平方メートルのみを建物の貸付部分とみて課税対象と認定し,その余の101.26平方メートルについては,屋外のテラス部分であることから,本件土地のうち当該地積を別途課税対象と認定したものである。(5)

原告と株式会社P7とは,平成16年4月1日付けで,法隆寺宝物館(建
物)1階の一部173.16平方メートルにつき,
一般観覧者および職員向け軽飲食の調理提供の用に供するものとし,貸付期間を平成16年4月1日から平成18年3月31日までの2年間,貸付料を1年につき219万2520円(消費税及び地方消費税を含む。
)と定めて(ただし,賃貸部分
のうち147.24平方メートルに関しては無償貸付)貸付契約を締結した(乙14)

なお,被告は,上記法隆寺宝物館にかかる貸付面積のうち,屋内部分である88.68平方メートルのみを建物の貸付部分とみて課税対象と認定し,その余の84.48平方メートルについては,屋外のテラス部分であることから,本件土地のうち当該地積を別途課税対象と認定したものである。(6)

原告と株式会社P8とは,平成16年4月1日付けで,本件土地の一部
3.00平方メートルにつき,
自動販売機設置の用に供するものとし,
貸付期間を平成16年4月1日から平成18年3月31日までの2年間,貸付料を1年につき3万2262円(消費税及び地方消費税を含む。)と定め
て貸付契約を締結した(乙15)

そして,弁論の全趣旨によれば,上記(1)から(6)までの各契約の借主は,当該契約内容に従って,自動販売機の設置,物品販売又はレストラン営業を行うことにより,本件各貸付部分を使用しているものと認めることができる。そうすると,本件各貸付部分は,原告以外の者によって独立した権限に基づいて使用されているものといえ,地方税法348条6項にいう当該固定資産を所有する非課税独立行政法人以外の者が使用しているものに該当し,固定資産税の課税対象になるものというべきである。
3
これに対して,原告は,本件各貸付部分が課税対象にはならないとし,その根拠について,次のように主張している。
(1)ア

国所有の固定資産のうち,国以外の者が使用している固定資産につい
ては,交納付金法2条1項1号に基づき,国から当該固定資産の所在市町村に対して固定資産税相当額を市町村交付金として交付するものとされている。

ここでいう国以外の者が使用している固定資産の意義については,国が専ら公用又は公共の用に供している固定資産の一部をその設置目的に違背しない範囲において,かつ,当該固定資産の公用又は公共用としての効用を高めるような用途において他の者に使用させている場合を含まない(こうした場合には市町村交付金の交付対象とならない。
)との確定し
た解釈が存在する。

地方税法348条6項が非課税独立行政法人が所有する固定資産を原則として非課税としつつ,
非課税独立行政法人以外の者が使用している固定資産を課税対象としたのは,非課税独立行政法人の高度の公共性にかんがみ,固定資産税に関して国と同等の取扱いをするのが妥当であって,国に対する非課税措置を受け継いだことによるのであるから,ここでいう課税対象である非課税独立行政法人以外の者が使用している固定資産は,
市町村交付金の交付対象である国以外の者が使用している固定資産」

と同義に解すべきものである。エしたがって,「非課税独立行政法人以外の者が使用している固定資産


とは,その使用が何ら公用又は公共用資産として機能していないようなものに限定されることを予定しており,その使用により公用又は公共用資産として利用している固定資産の設置目的が阻害されず,かつ,全体として公用又は公共用資産としての効用を高めている場合には,非課税独立行政法人が当該固定資産を公用又は公共用資産として一体として包括的に使用しているものであって,
非課税独立行政法人以外の者が使用している固定資産には当たらないというべきである。(2)

本件各貸付部分は,原告の設立以前に,国の機関である国立博物館
が管理・運営をしていた当時から,同様の形態で貸し付けられていたが,こうした貸付けは,有形文化財の収集,保管,公衆の閲覧といった博物館の設置目的に違背せず,かつ,入館者を満足させることにより公衆の閲覧に供するという博物館としての効用を高めることから,交納付金法2条1項1号にいう国以外の者が使用している固定資産に当たらないものとして,市町村交付金の交付の対象とされていなかった。
原告の設立に伴いその所有主体に形式的な変動が生じたものの,その実態に従前と変更はなく,
その利用により博物館としての設置目的が阻害されず,
かつ,博物館としての効用を高めている場合に当たることから,上記(1)エのとおり,原告が本件各貸付部分を含め,本件各不動産を一体として包括的に使用しているものであって,
非課税独立行政法人以外の者が使用している固定資産には当たらないとみるべきである。(3)

さらに,原告の業務の範囲については,①博物館を設置すること,②有
形文化財を収集し,保管して公衆の観覧に供すること,③②に関連する講演会の開催,出版物の刊行その他の教育及び普及の事業を行うこと,④これらの業務に附帯する業務を行うことなどとされており(独立行政法人国立文化財機構法12条1項1号,2号,3号,10号)
,文部科学大臣の認可を受
けた原告の業務方法書においても,同旨が定められるとともに,その業務の一部を外部の者に委託して行うことができるものとされている。
また,文部科学大臣の定めた原告の中期目標,これを実施するために原告が作成して文部科学大臣の認可を受けた中期計画,さらには,原告が作成して文部科学大臣に届け出るものとされている各年度計画においても,ミュージアムショップやレストラン等の館内施設を充実させることが明記されている。
これらのことからすれば,ミュージアムショップやレストラン,自動販売機の設置は,原告自身の業務とみるべきものである。
4
原告の上記3の主張について,以下に検討を加える。
(1)

確かに,国所有の固定資産のうち,交納付金法2条1項1号にいう国以外の者が使用している固定資産を市町村交付金の交付対象とし,固定資産税相当額を国から当該固定資産所在の市町村に交付することにしたのは,国所有の固定資産に関しては国自体の公的性格から原則として固定資産税を非課税としつつ,私人の通常の固定資産と同様の状態で使用されているものについてまで非課税とするのは均衡を欠き相当でないことから,これを課税対象にした場合と同様の経済的・財政的結果となることを企図したものとみることができる。そして,独立行政法人制度が創設されるに当たっては,一定の要件を満たし,課税関係において国と同視し得る非課税独立行政法人に対しては,従前から国に対して認められている非課税措置と同様の措置を講ずるものとされ,このうち固定資産税に関しては,非課税独立行政法人所有の固定資産を原則非課税としつつ,交納付金法2条1項1号にいう国以外の者が使用している固定資産に相当するものとして,地方税法348条6項において非課税独立行政法人以外のものが使用しているものを課税対象とするものとしたという立法に関する経緯を認めることができる(甲8から10まで)

また,旧自治庁税務部長通知(国有資産等所在市町村交付金制度の運用について
・昭和31年6月20日自丙市発第44号)では,
地方公共団体が専ら公用又は公共の用に供するものとして設置し,現に自らこれらの用に供している次の各号に掲げる固定資産の一部を食堂,売店,理髪店等の用途に供するものとして,他の者に貸し付け,又は使用させている場合においては,それが当該固定資産の公用又は公共用資産としての効用を高めるものであり,従つて,当該固定資産は全体として公用又は公共の用に供するものとして観念さるべきものは,市町村交付金の対象から除外することが適当であるとし,当該各号には,庁舎の用に供する家屋や公会堂,博物館,図書館等の用に供する家屋を掲げている(甲11)
。そして,原告の主張するよう
に,原告が設立される以前,本件各貸付部分に相当するものが,市町村交付金の交付の対象とされていなかった(弁論の全趣旨)のは,博物館の用に供する家屋の一部を食堂,
売店の用途に供するものとして,
他の者に貸し付け,
又は使用させている場合であって,上記通知の掲げる場合に該当することから,その内容に倣った措置をとったものと推認することができる。しかしながら,地方税法348条6項は固定資産税の課税対象(非課税措置の例外となるもの)について,単に非課税独立行政法人以外の者が使用しているものと規定するのみであって,
それ以上の限定は付されていない。
国有財産等に関する市町村交納付金の運用が上記のようなものであったとしても,上記通達のいう当該固定資産の公用又は公共用資産としての効用を高めるものであり,従つて,当該固定資産は全体として公用又は公共の用に供するものとして観念さるべきものの範囲は,非課税の根拠とするには,広範かつあいまいなものといわざるを得ないのであって,交納付金法2条1項1号に規定する国以外の者が使用している固定資産という文言から,上記通達のような限定を当然に導くことはできない。ひいては,そうした運用を地方税法348条6項の規定の解釈に反映させ,その文言から離れた解釈の根拠とすべきものでもないというべきである。
これを本件各貸付部分との関係で実質的に考えてみても,本件各不動産は博物館として使用されており,そこにある展示物等を広く一般の観覧に供することをもって,本来の設置目的とみることができるところ,観覧者の便益につながるものであれば,展示物に関連する物品の販売や飲食物の提供に限らず,それ以外の様々な物品を販売しサービスを提供する施設を設置した場合にも,
博物館としての効用を高めるものとみることが可能である。
しかし,
こうした施設全般について,他人が独立した権限に基づいて使用し営業している場合についても,広く非課税の扱いとすることを認めるならば,非課税独立行政法人所有の固定資産について,非課税財産と課税財産との区分の基準について定めた地方税法348条6項の存在意義を否定するにも等しいものになるというべきである。
(2)

さらに,法令上並びに業務方法書上及び原告の運営に関する目標・計画
上,ミュージアムショップにおける物品販売やレストラン営業等を原告自身の業務として行い得ることは,原告主張のとおりであるとしても,そのことと,実際に営業を行っている主体が誰であるか,ましてや,その営業を行っている建物や土地を使用している主体が誰であるかとは別の問題というべきである。
この点に関連して,原告は,博物館本来の機能を発揮させるために,各借主は貸付契約上の目的にそった使用を義務付けられており,その営業内容等についても原告から意見を述べてこれを反映させていること,博物館の開館時間内において,入場料を支払った入場者のみが利用できる区画における営業であること,レストラン営業の軽飲食提供部分については無償貸付けとされていることを根拠に挙げて,本件各貸付部分は原告の包括的使用の下に置かれており,原告の自己使用に当たるものとみるべきであるとも主張している。
しかし,建物所有者・賃貸人とテナント・賃借人との間で,その営業内容・営業時間等に関する取決めを行い,不動産管理等の観点から,賃借人に対して相応の義務を課すことは,商業ビルその他の賃貸借においても特段不自然なことではない。すなわち,たとえ,ミュージアムショップやレストランの運営,メニュー・価格の設定等について,原告から借主に対して意見を述べることがあり,また,その営業時間が博物館の開館時間内に限定され,利用者が入場者に限定されているとしても,そうした形態をもって,賃貸借契約において貸主が有する一般的な管理権以上の特別な権限を有することにはならず,これを原告の自己使用とみることはできない。また,レストラン営業の軽飲食提供部分が無償貸付けとされていることについても,そこでの営業者に独立使用を認める趣旨ではなく,飽くまでも原告自身を占有主体とする趣旨であるならば,貸付契約の対象から除外すれば足りるところ,前記2(4)及び(5)の各貸付契約(乙13,14)にあっては,有償部分と無償部分の区別はあるものの,それ以外の利用形態等の契約内容に差異を設けることなく一体として貸し付けられていたものと認められる。いずれにしても,本件各貸付部分が原告の自己使用に置かれているとみる根拠にはなり得ず,借主の独立した権限に基づく使用に供されている事実を否定することはできないというべきである。
(3)

なお,このように考えると,従前,非課税措置がとられていた国所有の
固定資産が,非課税独立行政法人所有となったことを契機として新たに課税の対象とされる結果となり,課税関係において国と同視し得る非課税独立行政法人に対しては,
国に対する非課税措置と同様の措置を講ずるものとした,
独立行政法人制度創設時にとられた基本的方針(前記(1))に反する結果になるのではないかという疑問がある。
しかし,既にみたように,市町村交納付金の交付対象の範囲に関する取扱いが運用によるものと解される一方,固定資産税の課税対象・非課税対象の区分の第一義的な基準となる地方税法348条6項の規定がそうした運用を直接反映しない形で整備された以上,それに従って課税対象の範囲を確定するほかないといわざるを得ない。見方を変えれば,他人使用の財産であるかどうかを課税対象・非課税対象の区分の基準にしている点においては,国に対する非課税措置の基本的内容を踏襲したものと評価することも可能であるから,運用面を含めた非課税対象の範囲が国所有の固定資産と厳密な一致をみないことをもって,直ちに独立行政法人制度創設時の基本的方針に反する結果とみるのは相当ではないというべきである。
(4)

以上のとおり,
本件各貸付部分が非課税であると原告が主張する根拠は,

いずれも採用できない。
5
以上判断したところによれば,本件各貸付部分は,地方税法348条6項にいう当該固定資産を所有する非課税独立行政法人以外の者が使用しているものとみることができ,固定資産税の課税対象に該当するものというべきである。その場合の本件各不動産の固定資産税の課税標準及び税額の計算根拠は,前記第2の3(1)記載のとおりであって,これと同額を賦課した本件各課税処分はいずれも適法であるというべきである。
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部


裁判長裁判官

裁判官


裁判官

倉門匡田徹澤守春
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