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再生計画認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
事件番号平成19(許)24
事件名再生計画認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
裁判年月日平成20年3月13日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁民集 第62巻3号860頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成19(ラ)297
原審裁判年月日平成19年4月11日
判示事項1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合が含まれるか
2 民事再生法172条の3第1項1号の趣旨を潜脱し信義則に反する再生債務者らの行為に基づいて再生計画案が可決されたとして,再生計画に同法174条2項3号所定の不認可事由があるとされた事例
裁判要旨1 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれる。
2 次の(1)及び(2)の事情の下では,再生債務者Xについての再生計画の決議は,民事再生法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し信義則に反するXらの行為によって成立したものというべきであり,上記再生計画には同法174条2項3号所定の不認可事由がある。
(1) 民事再生手続による方が破産手続によるよりも債権の回収に不利な債権者がいて,再生計画案が可決されないことが見込まれていた状況の下で,
Xが再生手続開始の申立てをする直前に,Xの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったAが,回収可能性のないXに対する債権を譲り受け,その一部を同じくXの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったBに譲渡した。
(2) AとBが再生計画案に同意するものとして議決権を行使したことにより民事再生法172条の3第1項1号の要件を充足し,再生計画案が可決された。
参照法条(1,2につき)民事再生法38条2項,民事再生法174条2項3号 (2につき)民事再生法172条の3第1項1号
裁判日:西暦2008-03-13
情報公開日2017-10-18 06:35:21
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主文
本件抗告を棄却する
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告代理人稲生隆浩,同井上愛朗,同藤原総一郎の抗告理由について1
本件は,抗告人を再生債務者とする民事再生手続における再生計画につい
て,民事再生法(以下法という。)174条2項3号等の不認可事由の有無が争われた事案である。
2
(1)

記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。
抗告人は,不動産賃貸業を営む株式会社であり,Aはその代表取締役であ
る。抗告人は,実質的に唯一の資産である横浜市中区所在の鉄骨造陸屋根地下1階付4階建ての建物(以下本件建物という。)を相手方Y1,Bほか1社に賃貸していた。
(2)

抗告人は,平成元年2月,Hから4億円を借り入れて本件建物に極度額を
4億円とする順位1番の根抵当権を設定し,さらに,Iから4億円を借り入れて本件建物に極度額を4億円とする上記根抵当権と同順位の根抵当権を設定した(以下,これらの根抵当権を本件各根抵当権という。)。
抗告人は,平成4年7月までに,Aが代表取締役を務めるCの合計7億円の借入債務を連帯保証した。
(3)

抗告人は,平成11年7月ころ,株式投資の失敗等により経営が破たんし
た。
抗告人は,本件各根抵当権及びその被担保債権を譲り受けた相手方Y2と債務の弁済方法について協議を重ねたが,平成17年12月末以降は交渉が途絶え,相手方Y2による本件各根抵当権の実行が避けられない状況に至った。(4)

D及びEは,いずれも,Aの子で抗告人の取締役であるが,抗告人に対す
る債権を有していなかった。
Fは,Cに対して貸金債権を有しており,抗告人は,Cの債務を連帯保証していたところ,Dは,平成18年1月31日,回収可能性がないことを知りながらFの上記貸金債権を譲り受け,抗告人に対する保証債務履行請求権を取得した。Dは,同年2月10日,上記の貸金債権及び保証債務履行請求権の一部をEに譲渡した。(5)

抗告人は,同年3月9日,東京地方裁判所に再生手続開始の申立てをし,
同月14日,再生手続を開始する決定を受けた。
(6)

抗告人の届出再生債権者は,A,D,E,C,相手方Y2,相手方Y1及び
Bの7名である。
(7)

抗告人は,同月31日,事業の継続のために本件建物が不可欠であるとし
て,本件建物につき存する担保権を消滅させることについての許可を申し立て,同年4月14日,再生裁判所の許可を受けた。
(8)

抗告人は,同年9月,再生裁判所に,①Gから融資を受けて,再生債権額
の1%を早期に一括弁済すること,②再生債権者のうちA,D,E及びCに対しては,個別の同意を得ることを条件として弁済をしないことを骨子とする再生計画案(以下本件再生計画案という。)を提出した。
(9)

抗告人は,同年11月30日,Gから約2億円を借り入れ,その一部を前
記担保権消滅に係る本件建物の価額に相当する金銭として再生裁判所に納付した。これにより,相手方Y2は,本件各根抵当権を失い,被担保債権の一部の弁済を受けた。抗告人は,Gに対する借入債務等を担保するため,本件建物を譲渡担保に供した。
(10)

同年12月5日に抗告人の届出再生債権者7名全員の出席の下に開かれた
債権者集会において,本件再生計画案は,上記届出再生債権者の過半数であり,議決権者の議決権の総額の63.69%を有するA,D,E及びCの4名の同意を得て可決された。
(11)

抗告人が破産した場合には,債権者への配当は見込まれなかったが,別除
権者である相手方Y2にとっては,本件建物の担保権消滅を前提とした本件再生計画案によるよりも,抗告人の破産手続において,本件建物を他の担保物件と合わせて任意売却する方が債権の回収に有利であった。また,本件建物の賃借人であって抗告人に対して保証金返還請求権等を有する相手方Y1及びBにとっても,抗告人につき破産手続が進められた方が,民事再生手続よりも本件建物の賃料債務と抗告人に対する債権とを相殺できる範囲が広く,債権回収には実質的に有利であった。3
原々審は,上記のとおり本件再生計画案が可決された再生計画(以下本件再生計画という。)につき認可の決定をしたが,原審は,法174条2項3号及び4号に該当する事由があるとして,原々決定を取り消し,本件再生計画の不認可の決定をした。
4
法174条が,再生計画案が可決された場合においてなお,再生裁判所の認
可の決定を要するものとし,再生裁判所は一定の場合に不認可の決定をすることとした趣旨は,再生計画が,再生債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図るという法の目的(法1条)を達成するに適しているかどうかを,再生裁判所に改めて審査させ,その際,後見的な見地から少数債権者の保護を図り,ひいては再生債権者の一般の利益を保護しようとするものであると解される。そうすると,法174条2項3号所定の再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったときには,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれるものと解するのが相当である(法38条2項参照)。
前記事実関係によれば,①抗告人の債権者のうち相手方Y2,相手方Y1及びBにとっては,抗告人が民事再生手続を利用する方が抗告人につき破産手続が進められるよりも抗告人に対する債権の回収に不利であり,抗告人が再生手続開始の申立てをして本件再生計画案を提出しても,届出再生債権者のうち抗告人の代表取締役であるA及び同人が代表取締役を務めるCの同意しか得られず,本件再生計画案は可決されないことが見込まれていたこと,②抗告人が再生手続開始の申立てをする直前に,抗告人の取締役であってそれまで抗告人に対する債権を有していなかったDが,回収可能性のないFのCに対する債権及び抗告人に対する保証債務履行請求権を譲り受け,その一部を同じく抗告人の取締役であってそれまで抗告人に対する債権を有していなかったEに譲渡したこと,③DとEは,それぞれ,債権譲渡を受けた抗告人に対する債権を再生債権として届け出て,本件再生計画の決議において,その有する議決権を本件再生計画案に同意するものとして行使したこと,④DとEによる上記議決権の行使がなければ議決権者の過半数の同意を求める法172条の3第1項1号の要件が充足することはなかったが,上記議決権の行使により同要件が充足し,本件再生計画案が可決されたことが明らかである。そうすると,本件再生計画案は,議決権者の過半数の同意が見込まれない状況にあったにもかかわらず,抗告人の取締役であるDから同じく抗告人の取締役であるEへ回収可能性のない債権の一部が譲渡され,抗告人の関係者4名が抗告人に対する債権者となり議決権者の過半数を占めることによって可決されたものであって,本件再生計画の決議は,法172条の3第1項1号の少額債権者保護の趣旨を潜脱し,再生債務者である抗告人らの信義則に反する行為によって成立するに至ったものといわざるを得ない。本件再生計画の決議は不正の方法によって成立したものというべきであり,これと同旨をいう原審の判断は是認することができる。したがって,本件再生計画を認可しないとした原決定は正当であるというべきであり,その余の論旨について判断するまでもなく,本件抗告は棄却すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官
才口千晴


裁判官

徳治

裁判官

横尾和子

涌井紀夫)
裁判官

甲斐中辰夫

裁判官

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