判例検索β > 平成19年(ネ)第110号
立替金、債務不存在確認等請求控訴事件
事件番号平成19(ネ)110
事件名立替金,債務不存在確認等請求控訴事件
裁判年月日平成20年1月29日
裁判所名・部高松高等裁判所  第4部
裁判日:西暦2008-01-29
情報公開日2017-10-17 20:45:17
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判主1決文
原判決を次のとおり変更する。
(1)

被控訴人Aの請求をいずれも棄却する。

(2)

被控訴人らは各自,控訴人らに対し,それぞれ原判決別紙請求債権
目録の番号8ないし17の請求金額欄記載の各金員(合計各383万5133円)及びこれに対する同目録の対応する年月日欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)

被控訴人Bは,控訴人らに対し,それぞれ269万5988円及び
これに対する平成14年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)
2
控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その1を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。

3
この判決は,第1項(2)及び(3)に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
控訴の趣旨
原判決を次のとおり変更する。
(1)

被控訴人Aの請求をいずれも棄却する。

(2)

被控訴人らは,連帯して,控訴人らに対し,それぞれ原判決別紙請求
債権目録の請求金額欄記載の各金員(合計各716万7156円)及びこれに対する同目録の対応する年月日欄記載の各日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)

被控訴人Bは,控訴人らに対し,それぞれ271万1633円及びこ
れに対する平成14年2月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(4)

被控訴人Aは,控訴人らに対し,それぞれ75万円及びこれに対する
平成14年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

3
仮執行宣言

第2

事案の概要

1
本件は,亡C(以下Cという。
)が,販売店との間で1年数か月の間
に多数回にわたって着物等を購入する売買契約を締結するとともに,これらの売買契約の一部につき被控訴人Aとの間で立替払契約を締結していたところ,①被控訴人Aにおいて,Cの相続人である控訴人らに対し,上記立替払契約に基づき,未払分の立替金残額の支払を求めており(甲事件),これに
対し,控訴人らにおいて,②上記売買契約及び立替払契約が不成立ないし無効であり,上記販売店及び被控訴人Aが上記売買契約及び立替払契約に基づいてCから代金等名下に金員を受領した行為は取引的不法行為に当たるなどとして,上記立替金残額の支払義務を争う一方,不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づき,上記販売店から営業譲渡を受けた被控訴人B及び被控訴人Aに対し,既払金相当額の支払(上記立替払契約に基づく既払金相当額については被控訴人らの連帯支払)を求めるとともに(乙事件・丙事件)
,③被控訴人AによるCに対する甲事件の訴訟提起及び所有不動産への仮差押えが違法であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料及び弁護士費用相当額の支払を求めている(乙事件)事案である。
原審が,①につき,被控訴人Aの請求を一部認容し,②につき,控訴人らの被控訴人Bに対する請求を一部認容したものの,被控訴人Aに対する請求を棄却し,③につき,控訴人らの請求を棄却したため,控訴人らが敗訴部分を不服として控訴した。2

本件における前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)は,次のとおりである。(1)

当事者
この点に関する当審の事実認定は,原判決事実及び理由第2の1

(1)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決4頁12行目から13行目の相続によりの次に各2分の1の割合でを加
える。
(2)

Cの取引状況等
Cは,原判決別紙取引目録1ないし23(同全取引一覧表)記載のとお
り,平成12年8月から平成13年12月にかけて,旧Bを含む12の販売店から合計123回にわたって着物やアクセサリー等を購入しており,その売買代金は合計5978万7728円に達している。このうち,旧Bとの取引回数は63回であり,その売買代金は合計2747万0823円である(原判決別紙販売店別一覧表,同取引目録1ないし5,23(同全取引一覧表のうち赤色表示分)。

旧Bとの上記取引のうち,Cにおいてその売買代金を現金で支払ったものは,原判決別紙取引目録1記載のとおり,37件,代金合計426万8577円であり,Dカードにより決済したものは,同取引目録2記載のとおり,3件,代金合計108万4000円である。このほか,被控訴人Aを含む3社のクレジット会社との間で立替払契約を締結していたものは,同取引目録3ないし5,23記載のとおり,23件,代金合計2211万8246円であるところ,そのうち,株式会社Eとのものは,同取引目録3記載のとおり,1件,代金21万0689円であり,F株式会社とのものは,同取引目録23記載のとおり,2件,代金合計139万5975円であり,被控訴人Aとのものは,同取引目録4及び5記載のとおり,20件,代金合計2051万1582円である。被控訴人Aを含むクレジット会社3社は,上記立替払契約に基づき,旧Bに対して売買代金相当額を立替払いした。そして,Cは,被控訴人Aに対し,原判決取引目録4記載の各立替払契約に基づく立替金全額及び同取引目録5記載1の立替払契約に基づく立替金の一部29万4400円の合計1433万4315円を支払った。
なお,上記取引のほかに,旧Bは,次のとおり,Cとの間で6件の着物等の売買契約を締結しており,その売買代金額は合計883万0217円であるところ(甲14ないし19の各1・2)
,これらの契約については,
その後,商品未納のまま解約された。
申込日(契約書記載の日付)

代金額



平成13年

120万5400円



平成13年9月28日

158万円



平成13年10月17日

65万円



平成13年10月28日

81万6900円



不明

33万3900円



平成13年10月4日

(3)

424万4017円

被控訴人Aによる不動産仮差押え及び甲事件の訴訟提起
被控訴人Aは,平成14年4月4日,高松地方裁判所に対し,原判決別
紙取引目録5記載の各立替払契約に基づく立替金残債権を請求債権としてC所有の不動産につき仮差押命令の申立てをし,同月9日にその旨の仮差押決定を得て(甲8)
,そのころ上記不動産に対する仮差押えの登記がさ
れた(以下本件仮差押えという。。そして,同被控訴人は,同月16)
日,同裁判所に対し,Cを相手方として上記立替金残金の支払を求める訴え(甲事件)を提起した(なお,同事件は同年6月に徳島地方裁判所に移送された。。

3
被控訴人A及び控訴人らの各請求の概要は次のとおりである。(1)
被控訴人Aの請求(前記1①)は,控訴人らに対して原判決別紙取引
目録5記載の各立替払契約(以下本件立替払契約ということがあ
る。
)に基づく立替金(ただし,同記載1の立替払契約については既払金を除く立替金残金)及びこれに対する各弁済期の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるものであり(原判決事実及び理由第1の1)
,その請求の原因となる事実については,
原判決事実及び理由第2の1(2)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)

控訴人らは,前記2(2)のCと旧Bとの間の売買契約(ただし,原判決
別紙取引目録23(同全取引一覧表の通し番号12・15)記載の2件を除く。
)及び被控訴人Aとの間の立替払契約につき,被控訴人らが精神神経障害により正常な判断能力を欠いていたCに対して着物等の高額商品を過量販売したものであって,公序良俗違反,割賦販売法及び特定商取引に関する法律(以下特定商取引法という。
)に基づくクーリングオフ,
詐欺による取消し及び錯誤,消費者契約法4条に基づく意思表示の取消し,意思表示の不合致による契約不成立等により,いずれも契約としての効力を有しないものであり,旧B及び被控訴人AがCとの間で上記各契約を締結して代金相当額を受領する行為は取引的不法行為を構成すると主張して,前記(1)の被控訴人Aの請求には理由がないとして争うとともに,不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づき,次のとおり,既払金相当額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている(前記1②)
。上記売買契約及び立替払契約の効力等に関する当事者の主張は,後記4のとおりである。

被控訴人らに対し,旧Bとの売買契約に関して被控訴人Aとの間で立替払契約が締結されたもののうち,Cにおいて被控訴人Aに対する支払を完了したもの(原判決別紙取引目録4)に係る既払金合計1403万9915円及び一部の支払を行ったもの(同取引目録5記載1)に係る既払金29万4400円の合計1433万4315円(控訴人らにつき各716万7156円)につき,同請求債権目録の請求金額欄記載の各金額及びこれに対する対応する年月日欄記載の各日(Cの被控訴人Aに対する最終支払日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の連帯支払

被控訴人Bに対し,旧Bとの売買契約のうち,その代金につきCにおいて現金で支払い(原判決別紙取引目録1)
,Dカード(同取引目録
2)あるいは株式会社Fとの間の立替払契約(同取引目録3)を利用したものに係る既払金合計542万3266円(控訴人らにつき各271万1633円)及びこれに対する平成14年2月23日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払

(3)

控訴人らは,前記(2)のとおり被控訴人AのCに対する本件立替払契約
に基づく立替金請求には理由がないにもかかわらず,同被控訴人が上記立替金債権を被保全権利として本件仮差押えを行うとともに,Cに対して上記立替金の支払を求める訴訟(甲事件)を提起したのは正当な権利行使を逸脱したものであるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,これによりCが被った精神的苦痛に対する慰謝料100万円及びその支払を求める訴訟の提起・追行のために要した弁護士費用相当額50万円の合計150万円(控訴人らにつき各75万円)並びにこれに対する不法行為の後である平成14年4月16日(被控訴人Aの甲事件の訴え提起の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている(前記1③)
。この点に関する当事者の主張は,後記5のとおりであ
る。
4
Cと旧Bとの間の売買契約及び被控訴人Aとの間の立替払契約の効力等に関する当事者の主張は,次のとおり補正ないし付加するほか,原判決事実及び理由第2の2(1)(ただし,(控訴人らの主張)ウを除く。
)に記載の
とおりであるから,これを引用する。なお,上記引用部分中の被告Bを旧Bと読み替え(ただし,原判決15頁3行目,7行目,18頁1行目のものを除く。,
)被告らを旧B及び被控訴人Aと読み替える(ただ
し,原判決14頁20行目,21行目,16頁16行目から17行目にかけてのものを除く。。

(1)

原判決の補正
原判決8頁24行目の及んでいるの次に以下,Cと旧Bとの(間で締結された売買契約及びこれにつきCと被控訴人Aとの間で締結された立替払契約を併せて「本件取引ということがある。」を加え,8)
頁26行目から9頁2行目にかけての括弧書き部分を削り,9頁23行目,12頁5行目及び13頁16行目の本件取引をいずれも本件全取引と改める。

原判決13頁21行目の

禁止される。

から同22行目の本件取引は,までを削り,同24行目の本件取引がから25行目の勘案しまでを次のとおり改め,同26行目の本件取引はを削り,14頁15行目及び17行目の特定販売法をいずれも特定商取引法と改める。
また,特定商取引法は,老人その他の者の判断力の不足に乗じた取引(同法7条3号,同法施行規則7条2号)や顧客の知識,経験及び財産の状況(適合性)に反する勧誘(同法7条3号,同法施行規則7条3号)を訪問販売における禁止行為としており,割賦販売法は,販売業者に対し,信用情報機関の利用等により得た正確な信用情報に基づき,購入者の支払能力を超える割賦販売を行わないように努めなければならないと定めている(同法38条)ところ,本件取引は消費者保護を目的としたこれらの法令の趣旨に実質的に反するものである。以上述べたところからすれば,本件取引はウ
原判決14頁6行目の特定商取引法の前に平成12年法律第120号による改正前の訪問販売等に関する法律(以下「訪問販売法という。
)ないし」を,同行目の受けるの次に

ただし,特定商取引(法の適用は,本件取引のうち平成13年6月1日以降に契約が締結されたものに限る。

をそれぞれ加える。)


原判決16頁19行目から21行目までを次のとおり改め,22頁16行目の原告を控訴人らに改める。

前記(イ)のとおり,本件取引は,特定商取引法,割賦販売法,徳島県消費者基本条例が消費者保護のために規制対象としている取引に当たるから,仮にこれらの法令の直接の適用はなくとも,本件取引の効力等につき判断する際には,これらの法令の趣旨を十分斟酌すべきである。そして,販売業者等が,顧客の判断力,知識,経験や財産状況等に反して,明らかに過量な取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した勧誘をして取引を行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となると解されるところ,前述したような本件取引の実態に照らせば,本件取引における旧B及び被控訴人Aの行為は取引的不法行為ないし契約締結上の過失を構成するから,被控訴人らは本件取引におけるCの既払分につき不法行為による損害賠償の責任を負うべきものである。
(2)

当審における新たな主張
過失相殺

(被控訴人B)
控訴人ら主張のように,Cが平成12年夏ころから躁うつ病,PBC及び肝性脳症による精神神経障害を発症して正常な判断能力を欠いており,日常生活にも支障を来していたのであれば,Cが旧B等の販売店を訪れて商品を購入したり販売店の旅行会に参加したりすることは困難なはずであるし,控訴人らがCに家計の管理を任せていたというのも理解し難いところであるから,実際には,本件取引期間中,Cはさほどの支障を来すことなく日常生活を送っていたものと考えられる。また,控訴人らを含む周囲の者において,Cが本件全取引を通じて購入した相当な量に及ぶ商品の存在,ひいてはその元になった旧Bを含む販売店との取引にも気付かないはずはないから,控訴人らは本件取引の存在についてある程度認識していたものとしか考えられないし,旧Bとの取引を中止した際の状況等からすれば,控訴人らも当初は本件取引全体の無効を主張するつもりではなかったことがうかがわれる。こうした事情を考慮すれば,仮に控訴人らの求めている不法行為に基づく損害賠償請求に理由があるとされる場合であっても,C自身及びその周囲の者には本件取引に関して落ち度があるから,相応の過失相殺がされるべきである。(控訴人ら)
争う。控訴人らは,平成12年夏以降Cの異常な言動及びそれが精神神経障害に起因するものであることは認識していたものの,本件取引については全く知らなかったものである。旧Bは,Cの精神神経障害を認識しながら,本件取引が控訴人ら家族に発覚することのないよう隠蔽しつつ,高額な着物等の過量販売を継続していたのであって,かかる行為は故意又は重大な過失による不法行為を構成するものであり,他方で,精神神経障害に罹患していたC自身及びその家族である控訴人らには格別非難されるべき点はない。

取り消し得べき行為についての法定追認及び権利濫用

(被控訴人B)
控訴人らと被控訴人Bの担当者が,原審における期日間に控訴人ら方において,Cが旧Bから購入した商品の保管状況を確認した際,一部の商品についてはその所在が不明となっていたところ,これらについてはCにおいて第三者に譲渡するなどして処分したものと推認されるから,これらに係る売買契約については,もはや取り消すことができず(民法125条5号)
,その無効を主張することは信義に反するものというべ
きであるから,その取消しないし無効を前提として不当利得の返還又は損害賠償を請求することは権利の濫用に当たる。
(控訴人ら)
争う。被控訴人Bとの契約書における商品の特定が不十分であるために,購入対象となった商品と控訴人ら方で保管されている現物との対応関係を明らかにすることができないのであって,その責めを控訴人らに帰せしめることはできない。
5
被控訴人Aによる不動産仮差押え及び訴訟提起の不法行為性に関する当事者の主張は,原判決事実及び理由第2の2(2)(ただし,原判決23頁4行目から7行目までを除く。
)に記載のとおりであるから,これを引用す
る。ただし,原判決22頁17行目の仮差押え及びを本件仮差押え及び甲事件のと,同21行目の仮差押えを本件仮差押えとそれぞれ改める。

第3
1
当裁判所の判断
本件取引の状況等について
この点に関する当裁判所の事実認定は,次のとおり補正するほか,原判決事実及び理由第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。なお,上記引用部分中の被告Bを旧Bと読み替え,
被告らを旧B及び被控訴人Aと読み替える。
(1)

原判決23頁16行目の当事者間に争いがない事実及びを前提事実並びにと改め,同17行目の53の次に,78ないし109を加える。(2)
原判決25頁9行目のCはから26頁4行目末尾までを次のとお

り改める。
Cの取引状況については,前記第2の2(2)のとおりであるところ,本件全取引期間中の月別の取引回数並びに月別と累計の取引回数及び取引金額(旧B及び被控訴人Aに係るものは個別に計上)をまとめると,本判決別紙取引金額等一覧表記載のとおり(ただし,「取引時期欄のその他欄は,平成13年中の取引であるが,日付までは特定できないもの)である。
Cと旧Bとの取引は,商品未納のまま解約された分も含めると,合計71件,代金額合計3630万1040円に達しており,その中には1件当たりの代金額が100万円を超えるものが14件含まれていた。なお,上記解約分に係る売買代金についても,被控訴人Aとの立替払契約の利用(同被控訴人に対する支払開始時期は平成14年4月ないし7月)が予定されていた。


(3)

原判決27頁17行目末尾に

被控訴人Aは,同月16日,高松地方裁判所に対し,Cを相手方として本件各立替払契約に基づく立替金の支払を求める訴え(甲事件)を提起した(なお,同事件は同年6月に徳島地方裁判所に移送された。。)

を加える。2
Cと旧Bとの間の売買契約の成否について
控訴人らは,原判決別紙不成立契約一覧表1・2記載の各契約につき,Cからの契約の申込みに対して旧Bが直ちに承諾をしていない以上,Cの申込みはその効力を失っており(商法507条)
,旧Bの承諾をもって新たな契
約の申込みと見るとしても,これに対するCの承諾がないから,上記各契約は成立していない旨主張する。
しかしながら,上記各契約の申込みは平成13年3月から6月にかけてのものであるところ,前記認定のとおり,Cは平成12年8月以降多数回にわたって旧Bから着物等を購入してきており,上記申込みの時点において,Cは旧Bと平常取引をする者に当たるというべきであるから,Cからその営業の部類に属する契約の申込みを受けた旧Bにおいて遅滞なく諾否の通知をしなかったときは,その申込みを承諾したものとみなされることになる上(商法509条2項)
,上記各契約に基づき商品も納入済みであること,上記各
契約につき被控訴人Aとの間で立替払契約が締結され,その一部については支払が完了していることにもかんがみれば,上記各契約がいずれも成立していることは明らかであり,控訴人らの上記主張は理由がない。
3
本件取引の効力等について
(1)

本件取引の状況,Cの病状,旧Bらの対応等
前記1で認定したとおり,本件全取引は,平成12年8月から平成13年12月までの1年5か月間における旧Bを含む12の販売店から合計123回にわたる着物やアクセサリー等の売買で,その代金は合計5978万7728円に達するものであり,このうち,旧Bとの取引は,63回,代金合計2747万0823円で,旧Bとの売買契約につき被控訴人Aとの間で立替払契約が締結されたものは,20件,代金合計2051万1582円である(上記期間中の月別及び累計の取引回数・取引金額は本判決別紙取引金額等一覧表のとおりである。。旧Bとの売買)
契約は,これに契約締結後に解約されたものも含めると,71件,代金合計3600万円余に上り,これらの中には,1件当たりの代金額が100万円を超えるものが14件含まれている。そして,Cが購入した着物等の大半は着用されることなく,自宅に保管されていた(甲10,78ないし109)

また,本件全取引の経過をみると,本判決別紙取引金額等一覧表記載のとおり,平成12年8月から同年12月までの間は,Cの取引のほとんどは旧Bを相手方とするものであり,同年10月までの累計取引金額は720万円余(そのうち,旧B分670万円弱,被控訴人A分666万円余)
,同年12月までの累計取引金額は960万円余(そのうち,
旧B分910万円弱,被控訴人A分は前同)であった。平成13年に入ると他の販売店との取引も頻繁となり,同年1月,4月,6月には,月別の取引回数が10回近く,取引金額が500万円を超えており,同年7月,8月には,取引回数がそれぞれ13回,22回と急増し,取引金額もそれぞれ400万円ないし500万円を超え,その後同年12月まで基本的には同様の傾向にあったものということができる。
他方,Cは,同人名義の土地及び建物(共有持分)を有していたほか,昭和60年まで銀行に勤務しており,相応の蓄えを有していたと推認されるものの,本件全取引の当時は家庭の主婦であり障害者年金以外に収入がなく,夫である控訴人Gも,老後の資金に充てられるべき退職金を原資とする預金を有しているものの,収入としては厚生年金以外になかった。また,前記認定によれば,Cは若年のころから躁うつ病を発症していたことが認められるものの,これまでCが本件全取引のような多額の浪費行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。
こうしたCの収入や保有資産,それまでの生活状況等に照らし,Cにとって着用機会の乏しい高額な着物等を短期間に多数かつ重複した形で購入することは,それ自体として異常な購買行動というほかない。イ
前記1で認定したとおり,Cは,ウイルス性肝炎,原発性胆汁性肝硬変(PBC)に罹患しており,その病勢の悪化に伴い,平成12年夏以降は日常生活において様々な奇矯な立ち居振る舞いが見られるようになっていたところ,Cの主治医は,遅くとも平成12年7月ころまでに肝性脳症による精神神経障害を発症していた可能性があると指摘していることに加えて,Cにつき肉眼によってもはっきりとした黄疸の症状が認められるようになっていた平成13年7月以降,前記アのとおりCの購買行動の異常性にますます拍車が掛かっており,病状の増悪との間に関連性がうかがわれることにもかんがみれば,本件全取引に見られるようなCの異常な購買行動は,上記の日常生活における奇矯な立ち居振る舞いと同じく,肝臓疾患ないしこれによる肝不全期における肝性脳症に伴う精神神経障害に起因するものと推認するのが相当であり,上記精神神経障害が高額な着物等の購買行動の異常性という形でいわば特異的に発現していたものと考えられるところである。そうすると,Cが自己の行動を適切にコントロールすることができないまま,本件全取引という異常な購買行動に及んだものであって,その意味では,通常の消費者が備えているべき判断力,自己制御力等の精神的能力の面で正常でなかったというべきである(なお,Cには前記認定のとおり日常生活における奇矯な立ち居振る舞いが見られていたとはいえ,控訴人らにおいて,これを理由としてCを医療機関に受診させたり,Cの行動を監視したりはしておらず,従前同様Cに家計の管理を任せていたこと,Cが単独で外出し本件全取引に及んでおり,その代金支払やそのために必要な資金繰りを行っていたことなどからすれば,Cが,その当時日常生活上事理を弁識してこれに従って自己の行動を制御する能力を全く欠くような常況にあったとはいえないし,取引に係る契約締結の各時点において意思能力を欠いていたとも認め難い。。


本件取引当時,旧Bにおいては,Cが昭和17年生まれの主婦であること,本件取引が夫に内緒でされていることを認識していたものの,支払原資となる資産の内容について全く把握していなかったこと,被控訴人Aは,Cが主婦であることのほか,C名義の不動産として自宅土地及び建物(共有持分)を有していることを把握していたものの,支払原資については,有価証券及び預金等であると聞いていただけでその内容を裏付ける資料を徴するなどして把握していたわけではないことが認められる(証人H,同I,同J及び弁論の全趣旨)。そして,C自身及び控
訴人Gの財産として控訴人Gの退職金を原資とする金員や前記不動産のほかに,本件取引代金の支払をしてなお余りある金員ないし有価証券等があったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
前記アのようなCの購買行動の異常性については,本件全取引の内容や金額ないしその経過自体からして明らかであるのみならず,前記1で認定したとおり,Cが平成13年1月ころ以降少なくとも3日に1回の割合で,時には毎日のように旧Bの店舗を訪れて,長時間過ごすようになっていたこと,当初の取引を除いて,被控訴人Aとの立替払契約を締結する際には,同被控訴人の担当者が旧Bの店舗を訪れるなどしてCと会って契約意思を確認していたこと,平成13年10月から12月にかけてCが3回合計123万円の買物をしたK商店の代表者は,Cの上記取引の状況やその言動に異常性が見受けられるとして,控訴人らにその旨連絡していることにもかんがみれば,旧Bの担当者や旧Bとの売買契約に関して多数の立替払契約を締結している被控訴人Aの担当者においても,本件取引の開始後ある程度の期間が経過し,その間にCとの取引が重ねられていくに従って,Cの購買行動の異常性に関して,その原因である疾患についてまではともかく,Cが消費者としての判断力,自己制御力等の精神的能力の面で到底正常とはいえない状態にあることを認識することができたし,当然これを認識すべきものであったと推認するのが相当であり,これに反する証拠(乙C8,乙F12,13,証人H,同I,同Jの各証言)はたやすく採用することができず,他に上記認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
しかるに,旧B及び被控訴人Aにおいては,上記のようなCの購買行動の異常性にもかかわらず,これを何ら顧慮することなく,本件取引を継続していたものである。なお,平成12年11月と12月,平成13年2月と7月ないし10月にはCと被控訴人Aとの立替払契約が締結されていないけれども,証拠(乙C8,証人J)及び弁論の全趣旨によれば,同被控訴人におけるCに対する与信枠に余裕がなくなったためであったにすぎず,Cに対する配慮によるものではないことが認められる。また,旧Bも,被控訴人Aとの立替払契約を利用することができなかった平成12年11月,12月には,DカードやF株式会社との立替払契約を利用してCとの取引を継続していたほか,平成13年7月,8月とCの取引回数が急増した際にも,旧Bとの取引がその過半を占めているほどである。
(2)

本件取引の効力に関する検討
本件取引に係る商品の多くは高額な着物等であるところ,顧客の年齢や
職業,収入や資産状況,これらからうかがわれる顧客の生活状況及び顧客とのこれまでの取引状況並びにこれらから看取される顧客の取引についての知識経験や取引対象商品の必要性等の諸事情にかんがみて,このような高額の商品を販売する販売店においては顧客に対する不当な過量販売その他適合性の原則から著しく逸脱した取引をしてはならず,これと提携するクレジット会社においても,これに応じて不当に過大な与信をしてはならない信義則上の義務を負っているものと解すべきである(なお,徳島県消費者基本条例13条及び同規則3条は,不当な過量販売を規制の対象となる不適正な取引行為と規定しているところ,同条例は,本件取引の後に公布,施行されたものではあるが,取引上の信義則に照らし当然に認められるべき義務を確認的に規定したものとみるのが相当である。。そして,不)
当な過量取引であるかどうかについては,個別具体的に判断されるべきものであるところ,その不当性が著しい場合には,販売契約及びこれに関連するクレジット契約が公序良俗に反し無効とされる場合もあるというべきである。しかるところ,本件取引の状況等は前記(1)のとおりであり,Cと旧Bとの取引の中には1件当たりの代金額が100万円を超えるものが14件も含まれているのみならず,Cの収入,資産状況やこれまでの生活状況等に照らし,これらは短期間に多数購入する必要性の乏しい商品であったといわざるを得ず,現に購入した着物等の大半は未着用のままとなっている。しかも,本件取引を含む本件全取引はCの肝臓疾患ないしこれによる肝不全期における肝性脳症に伴う精神神経障害に起因するものであって,いわばCの購買行動の異常性の発露ともいうべきものであるにもかかわらず,旧B及び被控訴人Aにおいて,Cの上記状態を何ら顧慮することなく本件取引を継続してきているのである。こうした本件取引の期間,回数及び取引金額等の状況,Cの購買行動の異常性の原因,旧B及び被控訴人Aの担当者による上記異常性の認識可能性及び本件取引への対応等の諸事情にかんがみれば,本件取引においては,旧Bとの関係では平成12年11月以降の取引につき,被控訴人Aとの関係では平成13年1月以降の取引につき,いずれも過量販売ないし過剰与信に該当するものとして,Cに対する販売ないし与信取引を差し控えるべき信義則上の義務があったというべきであり,この時期以降の取引は公序良俗に反するものとして無効となるとともに,これらの取引に係る旧B及び被控訴人Aの行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である。
(3)

被控訴人Bの当審における新たな主張について
被控訴人Bは,仮に控訴人らの取引的不法行為に基づく損害賠償請求に理由があるとされる場合であっても,控訴人らにおいて,Cの精神神経障害を知りながらこれを放置していた上,本件取引に係る商品の存在,ひいては本件取引についてもある程度の認識を有していたなどとして,相応の過失相殺がされるべきであると主張する。
しかしながら,前記のとおり,Cの購買行動の異常性は肝性脳症に伴う精神神経障害に起因して特異的に発現したものであり,本件全証拠によっても,控訴人らが本件取引の期間中において既にCの購買行動の異常性ないし本件取引につき具体的な認識を有していたとは認められないし,前記のようなCの上記異常性の原因,旧Bの担当者の上記異常性の認識可能性及び本件取引への対応等に照らせば,本件取引に係るCの損害の発生ないしその拡大につきCないし控訴人らに過失相殺をすべきほどの落ち度があったとまではいえないから,被控訴人Bの上記主張は採用することができない。

また,被控訴人Bは,本件取引に係る商品の一部が処分されており,これに係る売買契約についてはもはや取り消すことができず,その無効を主張することも信義に反するものというべきであるから,その取消しないし無効を前提として損害賠償を請求することは権利の濫用に当たると主張するけれども,処分されたとする商品ないしこれに係る売買契約すら特定されていない上,仮に上記商品の一部が所在不明となっていたとしても,前記(1)(2)の認定説示に照らし,そのことから直ちにこれに係る売買契約に関する無効を主張し,これを前提として損害賠償を請求することが権利濫用に当たるとはいえないから,被控訴人Bの上記主張も採用することができない。

(4)

控訴人らのその余の主張について
控訴人らは,本件取引に係る売買契約及び立替払契約のうち平成12年8月から10月までの間に締結されたもの(原判決別紙取引目録4の番号1ないし7,同目録1の番号1・2(同全取引一覧表の通し番号1ないし3,5,6,8ないし11)記載の取引に係るもの)につき,旧Bの担当者らがこれらの契約の販売対象の高額な着物等がCの日常生活において必要不可欠なものであるかのように欺いてCをその旨誤信させたとして,詐欺による取消し及び錯誤無効を主張するけれども,本件全証拠によっても,上記各契約の締結に際し,旧Bの担当者らが控訴人ら主張のような勧誘発言をし,Cがその旨誤信したことを認めるに足りない。

また,控訴人らは,前記(1)の売買契約及び立替払契約のうち原判決別紙取引目録4の番号1ないし7(同全取引一覧表の通し番号1ないし3,5,6,9,10)記載の取引に係るものにつき,訪問販売法及び割賦販売法の適用を受けるものであり,同契約書記載漏れ一覧表記載のとおり法定契約事項の記載漏れがあるとして,クーリング・オフによる契約の解除ないし失効を主張する。
しかしながら,証拠(乙F2,6ないし8,証人H,同I)及び弁論の全趣旨によれば,これらの取引については,L店内の旧Bのa店若しくは大催事会場又は前記第2の4で引用した被控訴人Bの主張ウ(イ)①ないし③記載の展示会ないし旅行会におけるものであるところ,後者の展示会等での販売についても,少なくとも2,3日程度ないしそれ以上の期間にわたって固定的設備を備えたホテルの会場等におけるものであり,営業所若しくは店舗に準ずる場所におけるものであったと認められる上,これらの取引に係る売買契約及び立替払契約については,いずれも既にその代金の支払が完了しているものであるから,控訴人らのクーリング・オフの主張は採用することができない。


なお,控訴人らは,本件取引のうち平成13年4月1日以降に締結されたものにつき消費者契約法4条による取消しを,同年6月1日以降に締結されたものにつき特定商取引法に基づくクーリング・オフによる契約の解除ないし失効を主張するけれども,これらの契約については,公序良俗に反し無効であって,既払分につき不法行為に基づく損害賠償を請求することができることは,前記3で認定説示したとおりであるから,控訴人らの上記主張については判断する必要がない。(5)

まとめ
以上認定説示したところによれば,本件取引のうち,平成12年8月か
ら10月末までの分(原判決別紙取引目録1の番号1・2,同取引目録4の番号1ないし7(同全取引一覧表の通し番号1ないし3,5,6,8ないし11)
)は有効であり,その後の期間の分は無効であって,これにつ
き不法行為が成立するから,被控訴人Aの控訴人らに対する本件各立替払契約に基づく立替金請求はいずれも理由がなく,控訴人らの被控訴人らに対する本件取引におけるCの既払金に係る不法行為による損害賠償請求については,被控訴人ら各自に控訴人らに対する原判決別紙請求債権目録の番号8ないし17の請求金額欄記載の各金員(合計各383万5133円)及びこれに対する不法行為の日以後である同目録の対応する年月日欄記載の各日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに被控訴人Bに控訴人らに対する各269万5988円(Cと旧Bとの間の平成12年11月以降の売買契約代金のうちCにおいて現金で支払済みのもの(原判決別紙取引目録1の番号3ないし37の代金額欄の合計423万7287円)
,Dカードにより支払済みのも
の(同目録2の番号1ないし3の代金額欄の合計108万4000円)及び株式会社Eとの間の立替払契約を利用したもののうち支払済みのもの(同目録3の既払い額7万0689円)の総計539万1976円の2分の1相当)及びこれに対する不法行為の後である平成14年2月23日から支払済みまで同じく年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余はいずれも失当である。
4
被控訴人Aによる本件仮差押え及びCに対する訴訟提起の違法を理由とする控訴人らの損害賠償請求について
(1)

控訴人らは,被控訴人Aが,Cに対して代金請求をするのが許されな
いのを熟知しており,控訴人ら訴訟代理人の受任通知を受けたにもかかわらず,これを無視してC所有の不動産につき本件仮差押えをしたり,Cに対して本件立替払契約に基づく立替金の支払を求める訴え(甲事件)を提起したものであり,これらの行為が正当な権利行使の範囲を逸脱した不法行為に当たると主張する。
(2)

前記のとおり,被控訴人Aの本件各立替払契約に基づく立替金請求は
いずれも理由がなく棄却を免れないものであるけれども,民事訴訟の提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,提訴者の主張に係る権利等が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者においてこれを知りながら又は通常人であればこれを容易に知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるところ,前記認定のとおり,本件各立替払契約はCと旧Bとの間の売買契約に係るものであって,売買契約及び立替払契約のいずれについても契約書が作成され,これに基づいて購入された商品が納入されるとともに,被控訴人Aにおいて旧Bに対して売買代金の立替払いを行っていること,旧Bとの売買契約につき被控訴人Aとの間で締結された立替払契約は,本件各立替払契約以外にも原判決別紙取引目録4記載のとおり16件あり,これらについてはいずれもCから立替金の支払がされていることなどにかんがみれば,被控訴人Aによる甲事件の訴えの提起については,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまでは認められない。なお,前記認定のとおり,控訴人ら代理人は,被控訴人Aに対する受任通知において,Cが心神喪失又は心神耗弱であると主張していたものであるけれども,被控訴人Aから,Cの意思能力についての主張が不明であるのでもう少し具体的に主張してほしい旨の通知を受けたのに対し,何の返答もしなかったことにもかんがみれば,上記受任通知後にされた被控訴人Aによる甲事件の訴えの提起が当然に違法となるものではないというべきである。(3)

前記のとおり,被控訴人Aの本件各立替払契約に基づく請求はいずれ
も理由がなく棄却を免れないものであるから,上記請求債権を被保全権利としてされた本件仮差押えは違法であり,他に特段の事情のない限り,被控訴人Aにおいて過失があったものと推認される。しかしながら,控訴人ら主張に係る損害は,本件仮差押えによりCが被った精神的苦痛に対する慰謝料及びその支払を求める訴訟の提起・追行のために要した弁護士費用相当額であるところ,単に所有不動産に対して仮差押えがされたとの一事をもって直ちに損害賠償を要するほどの精神的苦痛を被ったものということはできず,本件においては,本件仮差押えによりCの名誉又は信用が毀損されたなど,Cが慰謝料をもって償うことを要するほどの精神的苦痛を被ったことについて格別の主張立証はないから,控訴人らの慰謝料請求は理由がないものといわざるを得ない。そうすると,慰謝料請求訴訟の提起・追行のために要した弁護士費用についても本件仮差押えと相当因果関係のある損害とはいえない。
(4)

したがって,控訴人らの被控訴人Aによる本件仮差押え及び甲事件の
訴えの提起の違法を理由とする損害賠償請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がない。
5
結論
以上の次第で,被控訴人Aの控訴人らに対する立替金請求には理由がなく,控訴人らの被控訴人らに対する本件取引におけるCの既払金に係る不法行為による損害賠償請求については,前記3(5)の限度で理由があり(なお,控訴人らの上記既払金に係る不当利得返還請求は,上記認容額を超えるものではないと認められる。,控訴人らの被控訴人Aに対する本件仮差押え及び博)
美に対する訴訟提起の違法を理由とする損害賠償請求には理由がないところ,これと一部異なる原判決は不当であるから,本件控訴に基づき,上記の趣旨に従って原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。高松高等裁判所第4部
裁判長裁判官

矢延正平
裁判官

豊澤佳弘
裁判官

山口格

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