判例検索β > 平成14年(行ウ)第231号
損害賠償(住民訴訟)請求事件
事件番号平成14(行ウ)231
事件名損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判年月日平成19年7月26日
法廷名東京地方裁判所
判示事項市が工事の施工等を委託した建設公社により発注された公共下水道に係る複数の工事について,指名競争入札において談合して特定の建設業者を受注予定者とする受注調整が行われた結果,入札参加者間で公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札価格と比較して不当に高い価格で当該建設業者が落札し,市にその差額相当額の損害を与えたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位してした前記各工事を受注した各建設業者らに対する各損害賠償請求が,いずれも一部認容された事例
裁判要旨市が工事の施工等を委託した建設公社により発注された公共下水道に係る複数の工事について,指名競争入札において談合して特定の建設業者を受注予定者とする受注調整が行われた結果,入札参加者間で公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札価格と比較して不当に高い価格で当該建設業者が落札し,市にその差額相当額の損害を与えたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位してした前記各工事を受注した各建設業者らに対する各損害賠償請求につき,当該地区における約80社の広域総合建設業者間において前記公社発注の工事について受注調整を行う事実上の慣行が存在したところ,前記各工事においては,前記慣行を背景として,前記各建設業者らのうち,当該工事に入札した業者らの各担当者により個別に談合があったと認められるとした上,損害額につき,民事訴訟法248条を適用して,前記各工事の請負契約における各契約金額の5パーセントに相当する金額を損害額と考えるのが相当であるとし,さらに,仮に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条に基づく損害賠償請求の訴えを将来提起し得る可能性があるとしても,それにより既に発生している不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことを正当化する理由とはならないから当該請求権を行使していないことは違法であるとして,前記各請求をいずれも一部認容した事例
裁判日:西暦2007-07-26
情報公開日2017-10-19 19:15:22
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主1文
被告株式会社P1及び同P2株式会社は,東京都町田市に対し,各自1716万7000円及びこれに対する被告P2株式会社については平成14年6月8日から,同株式会社P1については同月11日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告株式会社P3は,東京都町田市に対し,1622万2000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告P4株式会社,同P5株式会社及び同P6株式会社は,東京都町田市に対し,各自5958万7000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被告P6株式会社及び同P2株式会社は,東京都町田市に対し,各自1748万2000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
被告P7株式会社及び同P8株式会社は,東京都町田市に対し,各自2572万5000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6
被告P9株式会社は,東京都町田市に対し,5666万4000円及びこれに対する平成14年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

7
被告P8株式会社,同P2株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に対し,各自1538万2000円及びこれに対する被告株式会社P1については平成14年6月11日から,その余の被告らについては同月8日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

8
被告P10株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に対し,各自236万2000円及びこれに対する被告P10株式会社については平成14年6月8日から,同株式会社P1については同月11日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9
被告P2株式会社,同P6株式会社及び同株式会社P1は,東京都町田市に対し,各自1349万2000円及びこれに対する被告株式会社P1については平成14年6月11日から,その余の被告らについては同月8日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は,これを4分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告らの負担とする。

第1

実及び理由
請求
被告らは,東京都町田市に対し,各自8億6700万3900円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2

事案の概要
本件は,東京都町田市の住民である原告らが,同市が工事の施工等について委託した財団法人P11公社により発注された公共下水道に係る各工事(別紙工事目録記載の各工事)につき,同各工事の入札参加資格を有する建設業者である被告らが,入札手続等において談合して特定の建設業者を受注予定者とする受注調整を行った結果,当該建設業者が入札参加者間で公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札価格と比較して不当に高い価格で落札し,同市に損害を与えたとして,被告らに対し,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下,単に「地方自治法」という。)242条の2第1項4号に基づき,同市に代位して,上記損害の賠償(民法719条,715条,709条に基づくもの)を求めるとともに,同損害賠償金に係る民法所定の年5分の割合による遅延損害金(不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで)の支払(不真正連帯)を求めた住民訴訟である。
1
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

当事者等


原告らは,いずれも東京都町田市(以下,単に「町田市」という。)の住民
である。

被告P5株式会社(以下被告P5という。,同株式会社P1(以下)

「被告P1」という。),同株式会社P3(以下「被告P3」という。),同P4株式会社(なお,平成15年4月1日にP12株式会社に吸収合併される前の商号はP13株式会社であるが,同合併の前後を問わず,以下被告P13という。,同P6株式会社(以下被告P6という。,同P)

7株式会社(以下被告P7という。,同P9株式会社(以下被告)P9という。,同P8株式会社(なお,平成14年10月1日及び平)
成16年4月1日の各商号変更前の商号は,それぞれP14株式会社,
P15株式会社であるが,各商号変更の前後を問わず,以下被告P8という。,同P10株式会社(以下被告P10という。)
)及び同
P2株式会社(以下被告P2という。
)は,いずれも建設業法の規定
に基づき国土交通大臣の許可を受け,国内の広い地域において総合的に建設業を営む者広域総合建設業者。

いわゆるゼネコンGeneralConstructor)


以下ゼネコンという。
)であり,多摩地区において営業所を置くなど
して事業活動を行っていたものである。

財団法人P11公社(以下「公社」という。)は,昭和36年7月20日,
首都圏整備構想に基づき,新都市の総合的建設と地域開発を促進し,首都の秩序ある発展を図ることを目的として,
東京都並びに八王子市,
町田市,
青梅市,日野町(当時)
,福生町(当時)及び羽村町(当時)の6市町の
出えんにより設立された財団法人であり,多摩地区所在の市町村から委託を受けるなどして,公共下水道の建設等の都市基盤整備事業を行っていた(甲サ60)

(2)

公社による下水道等の土木工事の発注(甲サ64,436,439)公社は,原則として,土木工事を指名競争入札の方法により発注していたが,工事予定価格が500万円以上である工事の発注に当たっては,公社が,あらかじめ工事件名,工事概要,工事の格付等級及び申込期限を公示して,発注対象となる格付等級の入札参加有資格者に入札参加指名についての希望を申し立てさせ,その希望者の中から入札参加者を公社が指名し,その指名された者により入札を執行する方式(公示希望型指名競争入札)を採用していた(甲サ436)



公社による工事の格付けは,各工事ごとに工事予定価格及び技術的な難易度からAからEのランクに分けて行われ,各ランクの工事に応じて,それぞれに適合する格付けを有する建設業者にのみ指名の適格があることとし,さらに,工事予定価格が2億6000万円以上の工事については,建設共同企業体(いわゆるジョイント・ベンチャー(JointVenture)。以下「JV」という。)の共同施工方式による工事として,Aランクの建設業者とCランクの建設業者とのJV(工事予定価格2億6000万円以上3億円未満)
,Aランクの建設業者とBランクの建設業者とのJV(工事予定価格3億円以上5億6000万円未満)
,Aランクの建設業者同士のJV(5
億6000万円以上)
にのみ指名が与えられる適格があることとしていた。
そして,公社は,指名を希望する者の経営状況や技術力を基に建設業者としての適格性の判断を行い,その結果,適格性があると判断された建設業者の中から,工事の規模,施工技術の難易度,地域性,経営状況,工事施工実績,既発注工事の進捗状況等の諸事情を実質的,総合的に考慮して指名する建設業者を判断していたほか,原則として,指名業者選定委員会を開催し,その審議を経た上で決していた。公社は,本件請求に係る各入札の当時,Aランクの工事については必ず10社を指名業者として選定しており,仮に指名を希望する者が10社に満たない場合には,公社から入札参加希望有資格者である建設業者を逆指名することとなっていたが,談合があったと本訴において原告らが主張する各工事に係る入札当時,逆指名がされたことはない。
(以上につき,甲サ64,436,439)

入札参加者が指名されると,事業者を指名する工事の場合には,公社により指名された建設業者に対する現場説明会が実施され,入札,落札者との契約という手続がなされ,他方,JVを指名する工事の場合には,JV結成についての説明会,入札参加者によるJV結成の届出,JVに対する現場説明会,入札,落札者との契約の順で手続が進められることになる。

公社による入札は,入札日に最低価格を入札した建設業者が落札するのが原則であったが,平成11年9月までは,公社が入札に当たり設定した工事予定価格及び最低制限価格(工事予定価格の80パーセントに相当する金額)を事前に公表しておらず,入札価格の全部が工事予定価格より高額となった場合には,その場で2回目の入札を行うこととし,また,最低制限価格よりも下回る金額で入札した場合には,その者は当該入札から失格となり,最低制限価格以上の最も低い価格を入札した者が落札者となることとしていた。
(甲サ64)


平成9年10月1日から平成12年9月27日までの期間における公社発注の特定土木工事72件の工事件名,落札者及び落札率(工事予定価格に対する落札価格の割合を百分率で表したもの)等は,別紙P11公社発注の特定土木工事一覧表記載のとおりであり,同年10月1日から平成17年11月1日までの期間における公社発注の特定土木工事139件の工事名,落札者及び落札率等は,別紙特定土木工事一覧表記載のとおりである(甲サ190,乙A2)

(3)

町田市と公社との契約関係等
町田市は,公社との間で,平成9年7月1日付けで町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託契約書,平成10年4月1日付け
で町田市公共下水道事業事業の一部)
(に関する業務委託その2契約書

平成11年6月8日付けで町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託その3契約書により,町田市の基本計画に基づく公共下水道事業の建設工事,設計及び監督業務並びに調査業務を公社に委託する旨の業務委託契約を各締結した(甲11の1∼3)

町田市は,上記業務委託契約において,公社に対して委託費(工事費,支障物件処理費及び公社の事務費)を支払う旨定められており,同工事費とは,公社と工事請負人との間の契約額(契約変更があった場合は変更後の金額とする。
)とされている(甲11の1∼3,12,甲サ60)



町田市は,上記アの契約を受けて,平成9年7月1日付け町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成9年度・10年度事業実施協定書,平成10年4月1日付け町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成10年度事業実施協定書,同年5月21
日付け町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成10年度・11年度事業実施協定書,平成11年4月1日付け町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託の平成11年度事業実施協定書,平成12年4月1日付け町田市公共下水道事業(事業の一部)に関する業務委託契約の平成12年度事業実施協定書により,平成9年度から平成12年度に公社が施工する業務の内容に係る協定を締結した(甲13の1∼5)


(4)

本件請求に係る各工事
別紙工事目録1から9記載の各工事(以下,当該各工事をその見出しにあるとおり本件工事1本件工事2というようにいい,本件工事

1から本件工事9までを併せて本件各工事という。
)は,いずれも,
前記(3)イにおける公社と町田市との間で締結された協定で,平成12年度に公社が施工する業務に含まれている(甲13の1∼5)


公社は,本件各工事につき,別紙工事目録記載のとおり,本件各工事に係る指名業者の選定を行い,入札参加業者の指名委員会を開催した上で,入札参加業者を指名した(以上につき,甲5の1∼5,甲サ369,370,376,385,390,401,405,413,421)。


公社は,本件各工事につき,別紙工事目録記載のとおり入札を行い,その結果,次のとおりのJVが各入札価格で落札した(甲サ328)。
(ア)

本件工事1については,被告P1と株式会社P16とが結成したJ
Vが3億2700万円(消費税相当額込み)で
(イ)

本件工事2については,被告P3とP17株式会社とが結成したJ
Vが3億0900万円(消費税相当額込み)で
(ウ)

本件工事3については,被告P13とP18株式会社とが結成した
JVが11億3500万円(消費税相当額込み)で
(エ)

本件工事4については,被告P6とP19株式会社とが結成したJ
Vが3億3300万円(消費税相当額込み)で
(オ)

本件工事5については,被告P7と株式会社P20とが結成したJ
Vが4億9000万円(消費税相当額込み)で
(カ)

本件工事6については,被告P9とP21株式会社とが結成したJ
Vが10億8000万円(消費税相当額込み)で
(キ)

本件工事7については,被告P8とP22株式会社とが結成したJ
V(P14・P22JV)が2億9300万円(消費税相当額込み)で(ク)

本件工事8については,被告P10とP23株式会社とが結成した
JVが4500万円(消費税相当額込み)で
(ケ)

本件工事9については,被告P2と株式会社P24とが結成したJVが2億5700万円(消費税相当額込み)で
エ(ア)

被告P1と株式会社P16とが組んだJVは,平成10年5月25
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事1を,契約金額3億4335万円で請け負った(甲5の3,14の1・2)

(イ)

被告P3とP17株式会社とが組んだJVは,平成10年5月25
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事2を,契約金額3億2445万円で請け負った(甲5の3,14の3・4)

(ウ)

被告P13とP18株式会社とが組んだJVは,平成10年6月2
2日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事3を,契約金額11億9175万円で請け負った(甲5の3,14の5・6)

(エ)

被告P6とP19株式会社とが組んだJVは,平成10年9月14
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事4を,契約金額3億4965万円で請け負った(甲5の3.14の7・8)

(オ)

被告P7と株式会社P20とが組んだJVは,平成11年3月23
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事5を,契約金額5億1450万円で請け負った(甲5の3,14の9・10)

(カ)

被告P9とP21株式会社とが組んだJVは,平成11年6月21
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事6を,契約金額11億3400万円で請け負ったが,平成12年3月6日,11億3329万5450円(消費税相当額込み)に減額された(甲5の4,14の11・12)

(キ)

被告P8とP22株式会社とが組んだJVは,平成11年7月19
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事7を,契約金額3億0765万円で請け負った(甲5の4,14の13・14)

(ク)

被告P10とP23株式会社とが組んだJVは,平成11年12月
20日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事8を,契約金額4725万円で請け負った(甲5の4,14の15・16)

(ケ)

被告P2と株式会社P24とが組んだJVは,平成12年5月15
日,別紙工事目録のとおり,公社から,本件工事9を契約金額2億6985万円で請け負った(甲5の5,14の17・18)


本件各工事は,別紙工事目録の所定工期を経たころに完成し,公社は,上記エの各請負人(JV)に対し,別紙工事目録記載の変更後の各契約金額を支払い,町田市は,公社に対し,本件各工事に係る各委託料を支払った(甲1)


(5)

公正取引委員会による課徴金の納付命令等
公正取引委員会は,平成12年9月27日,公社発注の土木工事の入札に係る事件の審査を開始した(甲2)


公正取引委員会は,平成13年12月14日,公社発注の土木工事の入札参加業者のうち,多摩地区において事業活動を行っている別紙課徴金納付命令対象事業者一覧記載の広域総合建設業者(ゼネコン)34社に対し,平成17年法律第35号による改正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)48条の2第1項に基づき,課徴金の納付命令(納期限平成14年2月15日)をした。課徴金額の合計は6億9021万円であり,上記34社それぞれの課徴金額は上記別紙記載のとおりであり,
対象物件には本件各工事も含まれている。以

上につき,甲1,2,4の2)


上記イの課徴金の納付命令を受けた34社のゼネコンは,上記課徴金納付命令に対し,いずれも審判開始の請求をし,公正取引委員会は,平成14年1月28日,上記34社のゼネコンに対し,独占禁止法49条2項に基づき,審判開始決定をした(甲1,15)
。なお,本件口頭弁論終結時
点では審決はされていない。

(6)

住民監査請求等

原告らは,平成14年2月21日付けで,本件各工事につき,1)(市が1998(平成10)年度から2000(平成12)年度にかけて公社に委託した公共下水道建設工事の中で,公社が本件工事を発注したゼネコン34社に,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(中略)第3条(不当な取引制限の禁止)に該当する行為(談合行為)があったか否か。(2)(1)の談合行為により,市が損害を被ったか否か。(3)談合行為により市が被った損害を補填するために,町田市長が損害賠償請求権を行使しないのは,法第242条第1項に規定する,違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実に当たるか否か。を対象として,住民監査請求を行った(甲1)


町田市監査委員は,平成14年4月17日,上記アの住民監査請求に対し,
談合行為については,
原告らの提出した資料からは談合を認定できず,
町田市における損害の発生についても認定できないとしたほか,町田市としては談合があったことを立証する資料を有しておらず,公正取引委員会の審決又は裁判所の判決を待たなければ,立証できないとして,現段階では損害賠償請求権を行使し得ず,その不行使の事実がないとして,地方自治法242条1項の違法も認められないから,上記住民監査請求を棄却する旨の監査結果を出した(甲1)


ウ2
原告らは,平成14年5月17日,本件訴えを提起した。

争点
本件の主要な争点は,次のとおりであり,これに関して摘示すべき当事者の主張は,後記第3争点に対する判断において掲げたとおりである。(1)

談合の存否
被告ら全員に対する共同不法行為に基づく請求は,次のアのみが問題とな
り,本件各工事ごとの入札に参加した被告に対する請求は,次のアないしウのいずれもが問題となる。ア

談合に関する基本合意の存否


監査請求の対象行為と本件各工事に関する個別談合との同一性


本件各工事に関する個別談合の存否

(2)
(3)
第3
1
談合による損害の有無及び程度
違法な怠る事実の有無

争点に対する判断
争点(1)ア(談合に関する基本合意の存否)について
(1)

当事者の主張
原告らの主張
被告らを含む別紙業者一覧記載の建設業者80社の間において,公社発注の特定土木工事について,受注価格の低落防止を図り,予定価格近似の金額で落札することができるようにするため,遅くとも平成9年10月1日までに,同日から平成12年9月27日までの間に発注された72件の特定土木工事につき,①公社から指名を受けた場合には,当該工事や当該工事の施工場所との関連性が強い者又はJV)

又は受注を希望する者又

はJV)が1社の場合にはその建設業者(又はJV)が,複数の場合には受注希望者間の話合いにより決定する者(又はJV)が受注予定者(本命又はチャンピオンと呼ばれることもある。
)となり,②受注すべき価格を
受注予定者が決定し,受注予定者以外の指名された建設業者は,受注予定者が定めた価格により受注することを協力する旨合意(談合に関する基本合意)していた。


被告らの主張
(ア)

被告ら共通の主張
原告らは,基本合意の成立過程については全く主張しておらず,参加した時期,経緯・態様についても主張されていない。原告らにおいては,抽象的な基本合意の存在のみならず,不法行為の成立要件に該当する具体的事実を主張すべきである。原告らは,当初,基本合意の参加者が34社であると主張していながら,審理の終盤になり基本合意の参加者が80社であると主張しており,このような主張の変遷の経緯からすれば,原告ら自身基本合意の存在について十分な証拠を持ち合わせていないことを裏付けるものである。

甲サ30号証は,単なる名簿であり,基本合意の存否やその参加者とは関係のないものであり,同号証記載の80社が基本合意に存在していたなどという証拠は全く存在しない。


公社発注の特定土木工事においては,建設業者をその施工能力に応じてランク分けをしており,Aランクの事業者は154社も存在していた。したがって,たとえ80社のみが受注調整行為を行ったとしても,同じAランクの事業者が存在する以上,その一部の事業者の間における受注調整者の決定は全く無意味であり,受注調整の効果を生じない。競争事業者間の一部において行われる基本合意などは,受注調整者を決定するための行為としては全く功を奏しないものであり,80社がそのような無意味な基本合意を行うはずがない。


仮に,原告らの主張する基本合意が存在していたとしても,基本合意に参加した被告らが受注調整が成立したすべての工事について損害賠償責任を負う根拠はない。すなわち,基本合意は,個別工事が発注された場合に受注予定者を決定する旨の予備的な段階における合意にすぎないものであり,予備的合意にすぎない基本合意から損害が発生することはあり得ないのであって,また,基本合意が存在していたとしても,個別工事の受注調整が必ずしも基本合意に基づいて行われるとは限らないのであるから,個別工事の落札と基本合意との間の因果関係はない。さらに,基本合意の段階においては,いまだ具体的な個別工事が存在しない以上,具体的な個別工事に関して不法行為を行うという故意が存在しない。基本合意に参加していたとしても,個別工事が発注される以前においては,いまだ,どのような業者が入札に参加するか不明であるから,個別工事の発注前には,当該個別工事に関する受注調整行為について,入札参加者間で意思の連絡が生じるということはあり得ず,個別工事に関する受注調整についてまで意思の連絡があったものとすることはできない。
(イ)

被告P5,同P2,同P6の主張
原告らの主張する基本合意の主張が不明確であることは,基本合意が
存在しないことを示すものであるということができ,また,本件の証拠に照らしても,原告らが主張するような基本合意は到底認められない。さらに,原告らの基本合意に係る主張を前提としても,当該基本合意と損害との間には相当因果関係を認めることはできない。すなわち,基本合意はなくても,個別合意は成立し得るのであり,基本合意と個別入札の結果との間には条件関係が存在しない。原告らの主張する基本合意を前提としても,本命業者を決定するのは指名を受けた受注希望者であって,指名を受けていない業者は本命業者の決定には関与しない。指名を受けていない業者は,個別工事に入札している業者名すら認識していないのであるから,そのような業者が個別工事の入札結果に影響を与えるような関与をしたと評価することはできない。
営業関係者名簿(甲サ30)は,平成10年5月以降に作成されたものであり,原告らが基本合意が存在していたと主張する年月日より後の作成されたものであるから,無関係である。
(ウ)

被告P1の主張
原告らの主張は否認する。

(エ)

被告P3,同P10の主張
原告らの主張は否認する。仮に百歩譲って原告らが主張する基本合意があったとしても,それのみでは不法行為は成立し得ない。独占禁止法上の入札談合は,受注予定者及び受注予定価格の決定カルテルを指すものであって,談合参加者において,受注予定者の選定方法等の基本ルールを明示又は黙示に合意し(基本合意)
,続いて基本合意を実行するに当たり,具体的な入札案件
ごとに指名業者間で個別に受注予定者を決め,他の指名業者の入札価格を調整し(個別合意)
,受注予定者が落札して,発注者と契約を締結す
るという本来的に二段階をとるものである。独占禁止法上の違法行為の認定においては,公正かつ自由な競争状態を回復するという競争政策的な観点からなされるものであるから,基本合意のみで足りるとされているが,不法行為の認定においては,独占禁止法上の違法行為の認定と同様に解することはできない。不法行為としての談合の請求原因事実は,基本合意ではなく,個別の入札に対応した個別の合意とその実行なのである。
(オ)

被告P7の主張
原告らの主張はいずれも否認する。
被告P7は,受注調整の存在について否認する。仮に,基本合意が存
在していたとしても,入札に参加していない個別工事に関し,当該工事に関する受注調整によって発生する損害についてまで賠償責任を負担する理由はない。基本合意が存在していたとしても,個別工事の受注調整が必ずしも基本合意に基づいて行われるとは限らない。したがって,基本合意と個別工事の落札との間には因果関係は存在しない。また,基本合意の段階においては,将来発生するかもしれない個別工事に関する抽象的な故意しかなく,そのような抽象的な故意に基づいて不法行為責任を負う理由はない。さらに,談合を行うためには,入札参加者間で意思の連絡をする必要があるが,基本合意に参加していただけの者と入札参加者との間で,意思の連絡が生じることはあり得ない。(カ)

被告P9の主張
原告らの主張する基本合意は存在しない。
営業関係者名簿(甲サ30)は,単なる名簿であり,基本合意とは関
係なく作成されたものであり,基本合意を立証するものではない。(キ)

被告P8の主張
原告らが基本合意の当事者に被告P8が含まれると主張する根拠は,
営業関係者名簿(甲サ30)に記載されているという事実のみである。しかしながら,営業担当者名簿は,単なる名簿であり,基本合意とは関係なく作成されたものであって,基本合意の存在や合意参加者を立証するものではない。
(ク)

被告P13の主張
公社発注の工事について受注予定者の決定ないし談合が行われていた
などという事実は存在しない。
談合を理由に不法行為に基づく損害賠償請求をするためには,談合の基本合意が成立したというだけでは足りず,個々の工事について個別的に入札参加業者による話合いが行われ,受注予定者が決定した事実を主張立証しなければならない。
(2)

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
被告P5のP25(以下P25という。
)の供述
証拠(甲サ98,99,110)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
(ア)

P25は,昭和58年9月,被告P5のP26営業所に赴任し,平
成3年8月,同営業所の所長に就任し,平成12年2月29日に退社するまでの間,同営業所長として稼働していた者である。
(イ)

P25は,平成12年11月7日,同月8日及び平成13年6月29日に公正取引委員会で行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。

P25は,昭和58年9月にP26営業所に赴任後,当時の上司であったP27の下で,土木工事に関する営業活動を行い,その中で多摩地区において,受注予定者をあらかじめ話合いなどによって決めるという調整行為を行っていることを知った。
多摩地区において施工される官公庁及び公社発注の土木工事に係るゼネコン間における受注調整行為は,昭和58年9月以前より行われており,被告P5は,受注調整行為に同月以前から参加していた。ただし,上記ゼネコン間における受注調整行為の開始時期及びそれ以前の経緯等についてはP25は知らなかった。


P25がP26営業所に赴任した当時,多摩地区には,同地区に営業所等の出先事務所を置くゼネコンの土木工事関係営業の担当責任者等が出席する親睦会として,P28があった。
P28は,多摩地区における官公庁及び公社発注の土木工事に係る受注調整行為を行うことを目的とした団体ではなく,同地区に営業所等を置くゼネコンの親睦を図る団体であった。しかし,P28の会員であるゼネコン60社において,多摩地区で施工される官公庁発注の土木工事につき受注調整行為を行っており,また,P28の会長は,定められた役割ではないものの,会員間において,受注予定者となるゼネコンが話合いで決まらず,当事者から相談を受けた場合には,会長としての立場から受注調整の上で参考になる助言や意見を述べる慣習があった。


P28は,平成4年に廃止されたが,廃止後も会員企業間における受注調整行為が継続して行われ,受注調整行為の作業は慣行化しており,一般的になっていた。P25は,P28廃止時の会長という立場にあったこともあり,同会が廃止した平成4年以降もP25が被告P5を退職した平成12年2月まで,多摩地区における官公庁及び公社発注の土木工事に係る受注調整行為を担当するゼネコン各社の営業担当者から,受注調整に関する相談を受ける立場にあり,受注調整行為が円滑に進行するよう,各担当者に助言などをしていた。

P29株式会社P30営業所の当時の所長であったP31は,上記受注調整行為において,P25と同様,受注調整行為において各ゼネコンの担当者から相談を受けたり,助言等をする立場にあったが,P31のそのような立場は,P25の依頼によるものではなく,P31の個人的な資質により,そのような立場になったものであった。


上記受注調整行為の対象となる土木工事は,多摩地区31市町村と公社からゼネコン向けに発注される土木工事であり,建設省(当時)等国の機関の出先機関,東京都の出先機関及びその他の各種公社や公団関係から発注される土木工事は,受注調整行為の対象とはなっていなかった。
公社が発注する土木工事については,P25が受注調整行為にかかわる以前から受注調整行為の対象となっており,P25が受注調整にかかわった期間において,
上記受注調整行為の対象となる工事の種類,
区分に変化はなかった。


上記受注調整行為においては,まず,特定のゼネコンが受注を希望する土木工事の発注情報を得た場合,
ピーアール紙と称される資料当

該土木工事の施工場所を示す地図の写しに,施行場所,発注者名,工事名又はその仮称,入札予定時期,資料作成日などを記載したもの)を作成し,これをP25に提出するとともに,当該土木工事について自社が受注意欲を有することや当該土木工事がどのような条件(受注予定者となる上で優位とされる事情)を有するのかを説明していた。上記ピーアール紙は,当該土木工事に対する自社の受注意欲を示すための説明資料にとどまるため,その作成が受注調整行為における必要な手続にはなっておらず,上記方法により受注調整行為をするゼネコンは全体の3分の2程度であり,すべてのゼネコンにおいてピーアール紙が作成され,P25に提出されるという手順でなされているものではなかった。ピーアール紙の提示,提出がなければ,受注予定者となる資格を得られないとか,最も早くピーアール紙を提出した者が受注における優先権を持つといったこともなく,ピーアール紙は,P25に対する説明のほか,ライバルとなるゼネコンの担当者に対しても提示するなどして,自社の当該土木工事に対する受注意欲をアピールするためにも用いられているものであった。
P25が受注調整行為に参加するゼネコン間において,相談又は助言をする立場にあったことから,受注を希望するゼネコン担当者が,P25に対して自社の受注意欲があることをピーアール紙で一定程度具体的に説明することにより,助言を得られるほか,P25に対するピーアール紙の提出は,ライバルとなるゼネコンとの間の話合い自体が自社に有利に進行することを企図して行っていたものであった。P25は,ピーアール紙等により受注意欲があることを知ると,担当者に対し,持っている関連情報を伝えたり,助言をしていた。

上記受注調整行為において,いかにして受注予定者となるゼネコンを決するかは,基本的には受注意欲を持つゼネコン同士の話合いにより決まるものであった。すなわち,当該土木工事に受注意欲を有するゼネコンが一社しかいない場合には,その受注意欲を持つゼネコンが受注予定者となり,他方,受注意欲を強く持つゼネコンが複数いる場合には,当該ゼネコン同士でそれぞれ自社が有する条件を提示し合いながら話合いをし,いずれかのゼネコンが降りたり,譲ったりすることにより受注予定者となるゼネコンが決まることとなっていた。
受注意欲を持つゼネコン間の話合いにおいて判断要素となる条件とは,例えば元施工と呼ばれる,当該土木工事が以前にそのゼネコ
ンが施工した工事の延長工事であるとか,当該土木工事が改修工事や道路の拡幅工事であるときに,基礎となる工事を手掛けたこと,当該土木工事に係る敷地等の買収において,代替土地を斡旋提供していたなど,発注者に対して既に一定の協力をしていることなどがあり,これらの条件は,受注調整行為に参加するゼネコンにおいて非常に強い条件であるとされ,そのような条件を有するゼネコンが受注を希望する場合には,ほとんど例外なくそのゼネコンが受注予定者になっていた。ただし,いずれの条件を有するゼネコンが優先されるかについては,一定の基準によって決せられるものではなく,例えば,上記のような極めて強い条件を有するゼネコン間で受注調整行為が行われる事案では,譲るところは譲るという仕方で,時々において話し合い,決着をつけるということが一般的であった。
上記受注調整行為において強いとされる条件には,当該土木工事について事前の調査や設計業務に,自社のみならず自社の息の掛かったダミーコンサルタント業者(以下ダミコンという。
)も含めて協
力している場合があり,
その他の条件として挙げられるものとしては,
自社の事業場に近いこと,自社の施工中の現場に近いこと,資材置場等の管理地に近いこと,施工場所の地元である町内会長をよく知っていることが挙げられるほか,その時々の当事者の話合いにおいて持ち出される主張条件があるが,いずれの条件を有する者が強いか弱いかについて,定まった基準があるものではなかった。

受注意欲を強く持つゼネコン同士の話合いが難航し,決着が図れない事案においては,対立するゼネコンの担当者同士が,P25に相談に来ることもあった。P25は,当該担当者に対し,
仲良くやってはどうですかとかもっとよく話し合ってはどうですかというように,喧嘩別れとならないように配慮し,一方に有利となるような言い方は控えるような助言をしていた。
しかし,
その助言の結果として,
受注意欲を持つゼネコンの一方が,譲るところは譲ろうといった考えから,受注をあきらめたという事案もあった。

被告P5が他の建設業者に入札価格の連絡をする場合,1回目から3回目の入札につき,それぞれ入札して欲しい金額を電話で伝える方法により行っていた。大手のゼネコンにおいては,見積価格を本社や東京支社において算出しており,また,入札金額を本社等に報告する必要があったことから,依頼した金額では入札されない場合もあったが,協力依頼がある場合には,その受注予定者の落札を邪魔しない金額で入札していた。


建設業者同士がJVを結成して入札参加する土木工事における受注調整行為においても,上記受注調整行為の方法と同様の方法が用いられていた。
ただし,地元の建設業者が指名業者として入った入札の事案における受注調整行為は,地元の建設業者側との接触が必要になり,ゼネコン側において,あらかじめゼネコン側の受注予定者として調整したゼネコンを定め,そのゼネコン(又は当該地元の建設業者に対して仕事上付き合いのあったゼネコン)が,地元の建設業者と何らかの方法で折衝し,
当該入札における受注予定者を決めるという方法でなされた。
このゼネコンと地元の建設業者との間の折衝も,話合いで行われるのが一般的であり,ゼネコンと地元の建設業者とが当該物件についての関連性など種々の条件をお互いに提示し合って,最終的には,受注予定者として一本化が図られていた。なお,ゼネコンは,地元の建設業者側が受注意欲を強く有している場合には,地元の建設業者より経費面等の負担が多く,
入札で有利な金額にすることができないことから,
何らかの条件で地元の建設業者に譲ったり,あるいは,受注をあきらめるのが通常であった。

ゼネコンが地元の建設業者とJVを結成して入札に参加する場合,JVの結成が必要となる大規模な土木工事においては,ゼネコン側が主導的な立場にないと施工できないことが多く,受注予定者と定まったゼネコンが,付き合いのある建設業者とJVを結成するというように,ゼネコン側がそのJVにおいて,主導権を有している場合がほとんどであった。


P25は,平成12年2月末に,被告P5を退社したが,上記受注調整行為は,被告P5のP26営業所でのP25の部下であったP32(以下「P32」という。)が引き継いで担うこととなった。


被告P5のP32の供述
証拠(甲サ201,231,322,323)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

P32は,平成6年3月に被告P5P26営業所に副課長として赴
任し,土木工事関係の営業業務を担当していた者である。
(イ)

P32は,平成12年11月29日,平成13年5月30日,同月
31日及び同年6月22日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。

P25は,平成12年2月末,被告P5を退職した。被告P5においては,
多摩地区の建設業者間における受注調整行為への応対につき,
P26営業所の土木営業担当所長であるP33や同営業所次長のP32が引き継ぐことになった。P32は,平成6年3月に被告P5P26営業所に副課長として赴任し,土木工事関係の営業業務を担当し,平成10年4月に同営業所次長(同営業所の土木担当所長の次席の意味)に就き,P25の下で土木工事関係の営業業務を行っていた。

多摩地区のゼネコン各社は,土木工事の情報を得た場合,すべての土木工事についてではないものの,資料(現地を含む地図の写しに,土木工事の位置や立地条件(延長工事における関連工事の施工実績,近隣での施工実績,施工場所と自社事業場や資材置場との近接性,当該土木工事に係る調査・設計業務へダミコンが協力しているか等他のゼネコンに比べ自社が当該工事を受注するのに優位とされる事情)などを記載したもの)を作成し,被告P5のP26営業所を訪れて,資料を提示するなどして,立地条件を説明するなどしていた。
上記資料を被告P5のP26営業所に提出する行為は,必ずしも受注するために必要となる手続ではなく,それ自体が,当該工事を受注するための有利な事情となるものでもなかったが,他の受注意欲を有するゼネコンに比べて提出が遅れた場合,消極要素として取り扱われることがあった。


受注を希望するゼネコンが,他のゼネコンに対して,入札に参加するよう依頼する趣旨は,入札に参加する建設業者の多くが自社の落札に協力してくれるゼネコンであれば,落札に対する期待が高まるからである。受注意欲を有する建設業者は,他の協力関係にある建設業者に自社の入札金額より高めの金額を入札してもらうため,入札価格の連絡を行うという方法を用いる。入札価格の連絡は,入札より1日か2日前に電話により行う。連絡する金額は,公社における入札は3回行われる場合があることから,1回目から3回目までの具体的な金額を伝える場合,2回目と3回目はその前回の入札の最低札価格から引き下げる価格を伝える方法のほか,他の建設業者が積算した価格を伝えてもらう方法もある。
また,

お宅の積算価格で入札してくれ。単に

と伝え,通常の積算価格による入札を依頼し,自社は,利幅を抑えた通常の積算価格よりも低い金額で入札するという方法もある。

P32は,平成12年2月末にP25が退職することになったことから,P25の有していた多摩地区のゼネコンから提供された施工実績等の資料の整理にとりかかり,平成12年2月から3月にかけて,P25に挨拶をしに訪れた多摩地区のゼネコンの営業担当者などに,機会を見て,各社の施工実績に係る資料の提出を依頼した。
P32は,約20社から30社に対して資料の提出を依頼し,その依頼を受けた各ゼネコンのほとんどから,施工実績を示した資料の提出を受けた。


P32は,平成12年3月の公正取引委員会の立入検査後,本社からの指示もあり,P26営業所に資料を持参したゼネコンの担当者に対し,今後資料を受け取れなくなった旨回答するようになった。同年4月ころになると,P32の下に資料を持参するゼネコンの担当者はいなくなった。P32は,提供された資料を整理する手間が掛かることなどから,当該資料を整理・使用することができなかったが,その間に公正取引委員会による立入検査が実施されたことなどから,同年4月ころ,同資料を各社に返還せず,廃棄した。


被告P5のP34(以下「P34」という。)の供述
証拠(甲サ289)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

P34は,昭和42年4月に被告P5に入社し,昭和57年5月以
降営業業務に従事し,平成7年9月以降本社勤務となり,平成10年4月からは営業部の営業担当部長となったが,平成12年1月20日から同年3月24日までの間,P26営業所において非常勤的に勤務をしていた者である。
(イ)

P34は,平成12年12月1日に公正取引委員会において行われ
た同委員会審査官からの事情聴取に対して,
要旨,
次のとおり供述した。

P34は,被告P5土木営業部の管理部長であったP35から,P25の平成12年2月の退職までに同人の営業業務を引き継がせるため,同年1月にP33をP26営業所の勤務にしたが,同人が多摩地区における勤務が初めてであったため,うまく行かず,現場で混乱が生じていたとして,P26営業所に行くよう依頼され,これを引き受けた。


P26営業所においては,多摩地区のゼネコンが,ピーアールと称する地図の写しの中に自社の施工実績を書き表した資料を作成し,P26営業所において,P25やP32らに見せに来ていた。また,P32は,同資料を整理してとじ込んだファイルを管理していた。


P26営業所においては,P25が退職後,P32及びP33が上記ピーアールに対する応対をするようになったが,同応対には,多摩地区における経験等が必要であったことから,多摩地区における営業経験のないP33や,そのような器量を持たないP32では務まるものではなく,P32から求められて,ピーアールの応対にP34が同席することもあった。


被告P3のP36(以下「P36」という。)の供述
証拠(甲サ85,173)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

P36は,
平成10年4月,
被告P3P37営業所の所長に赴任し,

同営業所が廃止された平成13年4月末までの間,同所長として勤務していた者である。(イ)

P36は,平成13年5月22日及び同年9月4日に公正取引委員
会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した

多摩地区30市町村及び公社の発注する土木工事ではゼネコン間で受注予定者を決め,受注予定者による落札に協力するという入札談合が日常的に繰り返されており,被告P3も,当該談合のメンバーであった。


受注予定者は,受注を希望するゼネコンが1社であれば,その業者がなり,受注を希望するゼネコンが複数ある場合には,各社がどのような受注に有利な条件を有しているかを比較して,
条件が一
番強いとされた者がなるものとされていた。
条件には,当該工事
の関連工事の施工実績,近隣での施工実績,近隣に資材置場や職員住宅があること,ダミコン設計入札において指名されていることなどがある。


ゼネコンにおいては,P25が裁定役であった。P25は,人柄が良く,多摩地区の施工実績を把握していたことから,公平であると信頼されていた。
P36は,
P25に対して受注意欲があることを示し,
P25が頑張ってみたらと言えば,自社が受注予定者になれたと
考え,P25が他に熱心に勉強をしているよと言えば,その土木
工事の受注をあきらめていた。


公社が発注する土木工事においては,受注予定者は,入札において談合のルールが適用されるゼネコンが指名されるよう,他のゼネコンに工事希望票の提出を依頼していた。


受注予定者となったゼネコンは,入札前に相指名業者に入札金額の連絡をしていた。ほとんどの場合は電話で行っていた。入札金額は,1回目から3回目までの入札金額を伝える場合や,1回目の具体的金額を伝え,2回目以降は最低札の金額より幾ら減ずるかという金額を伝える方法があり,受注予定者が落札できるよう協力し合っていた。オ
被告P13のP38(以下「P38」という。)の供述
証拠(甲サ135,136)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

P38は,昭和37年4月1日に被告P13の前身であるP39株
式会社に入社し,平成6年7月にP40営業所の副所長になり,平成9年7月に同営業所の所長となり,上記事情聴取当時まで同職を務めていた者である。ただし,土木工事の営業は,平成10年6月末ころまで部下のP41が担当していた。
(イ)

P38は,平成13年3月21日及び同月22日に公正取引委員会
において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した(甲サ135,136)


多摩地区の市町村及び公社が発注する工事については,P38がP40営業所に赴任した平成6年7月よりもかなり以前から,受注予定者をあらかじめ話合いなどによって決めるという調整を行ってきたと聞いていた。被告P13としても,上記受注調整行為が多摩地区の建築業界において慣行的に行われていたこと,3年に1度工事を受注できること,入札においてまともに競争をしていると低価格での受注により赤字になってしまうことから,
上記受注調整行為に参加していた。


受注予定者がどのように決まるのかについては,図面等によるピーアール活動の過程又は話合いにおいて,当該土木工事につき受注希望する者が一人の場合には,そのものが受注予定者となり,その土木工事について希望者が複数ある場合には,当事者間の話合いで決めていた。受注希望者間の話合いが難航した場合,当事者により調整後,被告P5のP26営業所長であったP25に相談し,冷静な判断を得て解決を図るというように聞いていた。カ
被告P10のP42(以下「P42」という。)の供述
証拠(甲サ101,102)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア)

P42は,昭和36年4月,被告P10に入社し,昭和59年4月
にP43営業所に赴任して以降,同営業所で営業に従事し,平成4年4月に同営業所の副所長に,平成6年4月に同営業所の所長に就任した者である。
(イ)

P42は,平成12年11月9日及び平成13年6月11日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した(甲サ101,102)


P28は,昭和54年に,被告P5,P44株式会社,株式会社P45,P46株式会社,P47株式会社,株式会社P48,被告P10のゼネコン7社により発会した。昭和62年から平成元年ころ,P28の会員は48社に増えていた。平成2年から平成4年までP28の会長がP25であった。平成4年に,公正取引委員会がP49を摘発したことから,
同年,
P28を解散することになった。
P49では,
会自体が受注調整のためにあると認識されていたが,P28では懇親が主目的であり,受注調整をする場合,当事者間において,まず,話合いがされ,話合いがつかない場合に,P28の会長と副会長,場合によっては同会の役員を交えて受注調整を行っていた。


P28解散後は,受注を希望するゼネコン営業担当者は,P28の最後の会長であったP25にピーアール紙を持って行くということが自然発生的に行われるようになった。
P28の時と同様,
基本的には,
受注を希望する当事者の話合いによって受注予定者が決まるようになっていたが,当事者同士の話合いがつかない場合には,最終的には被告P5の指示により受注予定者が定まることがあった。ただし,まれではあるが,当事者同士で競争となる叩き合いになったこともあ
った。

上記ゼネコン間における受注調整は,多摩地区の市町村や公社が発注する土木工事について行われていたものであり,国や東京都の出先機関又は公団等が発注する工事の営業については,各ゼネコンの東京支店や本社が担当しているため,受注調整の対象とされておらず,また,建築工事関係については,別の集まりがあったことから,土木工事とは別の方法による調整がなされていた。


その他の被告及び被告ら以外のゼネコンの営業担当者による供述調書証拠(甲サ3から8まで,54,56,58,59,62,63,66から84まで,86から89まで,92,93,103,105,106,113,137から146まで,149から156まで,158から172まで,174から185まで,187から189まで,191,192,194から196まで,202から211まで,233,237,241,244,248,251,292,295,325,349,350,354,358,365,366)及び弁論の前趣旨によると,株式会社P48,P50株式会社,株式会社P51,P52株式会社,P53株式会社,株式会社P54,P46株式会社,株式会社P55,P56株式会社,P57株式会社,P58株式会社,株式会社P59,P60株式会社,P61株式会社,P62株式会社,P63株式会社,P64株式会社,P65株式会社,株式会社P66,株式会社P67,被告P7,P68株式会社,被告P1,P47株式会社,P69株式会社,株式会社P45,P70株式会社,P21株式会社,株式会社P71,被告P3,P72株式会社,株式会社P73,P74株式会社,株式会社P75,P76株式会社,被告P2,P77株式会社,P78株式会社,P79株式会社,P12株式会社,P18株式会社,P80株式会社,株式会社P81,株式会社P82,P83株式会社,株式会社P84,P85株式会社,株式会社P86,被告P8,P29株式会社,株式会社P87,P88株式会社,P89株式会社,P90株式会社,P91株式会社,P92株式会社,P93株式会社及びP94株式会社(以上,いずれもゼネコン)における多摩地区の営業業務に関与していた者が,公正取引委員会において同委員会審査官からの事情聴取に対し,おおむね,多摩地区において公社が発注した公共下水道工事に係る入札につき,特定のゼネコン間において,受注費用の低落を防ぐため,あらかじめ一定の方法により受注調整行為が行われており,その受注調整行為に参加,協力していたことを認める旨供述をしていることが認められる。
また,その受注調整の方法に関する供述についても,供述者により若干差はあるものの,公社が発注する特定土木工事につき,受注を希望するゼネコン担当者がピーアール紙(ピーアール図又は単にピーアール)と称される資料を作成し,被告P5P26営業所のP25やP29株式会社P30営業所のP31に対して同資料を提示し,自社が当該土木工事を受注する上で有利な事情(過去に関連する工事や近隣地において施工実績を有していること等)を有することを説明し,他に受注を希望するゼネコンがある場合には,当該ゼネコンの担当者との話合いにより,あらかじめ受注予定者を決め,受注予定者となったゼネコンは,ゼネコン各社に対して,自社の受注をしやすくするため,当該土木工事の工事希望票の提出を依頼して指名を受けることを求め,入札前には,当該土木工事について指名された入札参加業者に対して自社が受注できるよう,入札価格の連絡や入札予定価格の聴取を行っていた(このような受注調整が適用されるゼネコンについては,おおむね,P95が発行する営業担当者名簿に掲載されたゼネコンであった。
)とする点でほぼ一致している。ク

前記アないしキの供述調書の記載の信用性
前記アないしオの供述調書の記載は,いずれも相応に具体性を有し(特にア及びイ)
,相互に特段の矛盾はなく,自然な経過の供述とみることが
でき,
これらを上記キの他の供述調書の記載が裏付けるものとなっており,以上の記載の信用性を左右するに足りる証拠も存在しないことから,前記アないしキの供述調書の記載はいずれも信用性があるとみることができる。

(3)

検討


前記前提事実及び前記(2)アないしクを総合すると,次の各事実が認め
られる。
(ア)

昭和58年4月当時,多摩地区の31市町村及び公社から発注され
る公共下水道工事等の土木工事につき,同地区のゼネコンの親睦会であったP28の会員であった約60社のゼネコン間において,受注価格の低落防止のため,あらかじめ1社を受注予定者と決め,その他のゼネコンが受注予定者の受注に協力するという受注調整行為が行われ,P28の会長が,当該受注調整行為において各会員に対して助言し,場合によっては,いずれのゼネコンが受注予定者となるのかについて事実上裁定をする役割を担っていた。
(イ)

平成4年にP28が廃止された後も,受注価格の低落防止のため,
多摩地区におけるP28の会員間で行われていたのと同様の受注調整行為が行われ,その廃止時にP28の会長であった被告P5のP25が,ゼネコン間の受注調整行為における助言を行い,場合によっては事実上裁定を行う役割を担っていた。
(ウ)

本件各工事の入札が行われた当時,多摩地区において行われていた
受注調整においては,おおむね,次のルールが定められていた。

多摩地区の市町村及び公社の発注する土木工事を対象とする。b

受注を希望するゼネコンは,ピーアール紙(ピーアール図)と称される資料を作成し,これを,被告P5のP26営業所又はP29P30営業所に提示する。
同資料には,
当該土木工事の地図上に工事場所,
過去の関連工事の施工実績や近隣地における施工実績,事業所,自社の施設の位置等,当該土木工事の工事場所と自社との関連性を示す事情を記載する。
さらに,必要に応じて,P25(平成12年3月以降はP32。以下同じ。
)又はP31に対し,同土木工事の受注意欲を有しているこ
と,その程度のほか,同工事の設計に自社のダミコンが関与していたこと,当該土地の買収手続に関与していたこと等,当該土木工事の受注において,他のゼネコンに比べて自社が当該土木工事と強い関連性を有しており,受注予定者となるべき事情があることを説明する。

受注を希望するゼネコンは,他のゼネコンに対して,その担当者を介して,直接又は電話等の機会において,当該土木工事について自社が受注意欲を有していること,当該土木工事について自社が場所的関連性や施工実績等受注予定者となるべき事情があることを説明し,各ゼネコンが当該土木工事に受注意思を有しているか,また,同じ土木工事に他に受注意欲を有するゼネコンが存在する場合には,話合いをし,あらかじめ受注予定者を決める。
受注意欲を有するゼネコン同士における話合いが難航した場合に
は,各ゼネコンの担当者においてP25又はP31に相談をし,その助言や意見を求める。ただし,P25は,あくまで助言を行うにとどめ,最終的な解決は,各ゼネコンの判断にゆだねる。


受注予定者となったゼネコンは,受注調整がなされたゼネコンのみが入札が行われるようにするため,他のゼネコンに公社への工事希望票の提出を依頼し,他のゼネコンは,同依頼に応じて工事希望票を提出し,当該土木工事について入札参加業者として指名されるよう協力する。

受注予定者は,公社に指名され,入札に参加する資格を有するゼネコンに対し,自社の入札予定金額を伝えたり,又は他の入札に参加するゼネコンの入札価格を聞くなどし,自社が落札できるよう協力を求め,他の入札に参加するゼネコンは,受注予定者の入札予定金額より高い金額で入札したり,自社の入札予定金額を伝えるなどして,受注予定者の落札を妨げないよう協力する。
また,
受注予定者は,
当該工事がJVのみが入札に参加できる場合,
各JVのうち,入札金額の決定等において主導的な立場にある建設業者(以下,このような立場の建設業者又はゼネコンを「JVの主となる建設業者」又はJVの主となるゼネコンという。)に対し,上記と同様の方法によって,自社が結成したJVが落札できるよう協力を求め,他の入札に参加するJVの主となる建設業者は,受注予定者の結成したJVの入札金額より高い金額で入札したり,自社の入札予定金額を伝えるなどして,受注予定者の落札を妨げないよう協力する。
(エ)

上記(ウ)の受注調整に係る方法は,平成10年4月当時,別紙業者
一覧表記載のとおり,
約80社平成10年4月版の営業報告者名簿甲


サ11から13まで,19から23まで,25,28,30,34から41まで,45,46,48)
)のゼネコンにおいて適用されていた。
(オ)

上記受注調整行為は,平成12年3月ころ,多摩地区のゼネコンに
対して,公正取引委員会による立入検査が行われたため,自粛する傾向となり,その後も続けられたが,明確な形をとらなくなっていった。イ
談合に関する基本合意を巡る事実関係
上記アの認定によると,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社のゼネコン間における公社発注の土木工事に係る受注調整は,昭和58年4月以前から存在していたものであるが,そのような調整が,いかなるゼネコン間で,どのようにして定まったものであるのかまでは確定することができないが,上記受注調整方法は,P28の会員間によって行われたものであって,同会解散後もゼネコン間の現実的要請から同様の方法により途切れることなく受注調整行為が継続していたといえる。
また,受注意欲を有するゼネコンが,どのようにして他のゼネコンと連絡をとり,ゼネコンの間で,受注予定者としての地位を築くかといった方法のほか,他に受注意欲を有するゼネコンが存在する場合に,当該ゼネコンとの間の調整において,どのようにその希望を調整するか,どのような事情を有するゼネコンが優先することとするかなどといった具体的な調整時の基準も定型的であったとはいえず,これらは各ゼネコンの担当者の判断にゆだねられていたということができ,例えば,定期的に会合が開催され,その場において,特定の土木工事の受注予定者が定まる方式でなされる受注調整行為や,調整役となる者をあらかじめ定め,その者が一定の基準により受注調整を行い受注予定者を定めるという方法により受注調整がなされる場合に比べ,受注調整の方法として不定型であったものといわざるを得ない。
そうすると,結局のところ,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社のゼネコンにおいては,前記アで認定した上記受注調整に参加,協力していたとしても,そのような事実のみでは,いかなる土木工事につき,どのゼネコンが受注予定者となるかといった,受注調整の重要な要素については,何一つ定まっていないものといえる。
なお,P25やP31が,上記調整行為において,参考になる助言や意見を述べる立場にあったことは認められるものの,その地位は,各ゼネコンの担当者間における受注調整が難航した場合にあくまでも助言や意見を述べる役割を担っていたにすぎず,
特に,
P25やP31の助言や意見が,各ゼネコンに対して相応の影響力を有していたと考えられるものの,その助言や意見に従うか否かは,当該ゼネコンの自由意思にゆだねられていたものといわざるを得ないことからすれば,P25やP31の役割は,受注調整行為が円滑に進むように各ゼネコンの担当者により行われる調整行為を補助するものにすぎなかったといわざるを得ない。
したがって,上記アにおいて認定した被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社のゼネコン間における受注調整に関する定めは,同地区における事実上の慣行にとどまるものといわざるを得ず(以下,この慣行のことを「本件慣行」という。),これを超えて,上記ゼネコン間において,明確に一定の受注調整に関する方法やその拘束力に係る合意がなされていたものとまでは認めることはできない。
このように,本件慣行は,被告らを含む別紙業者一覧表記載の約80社のゼネコン間における受注調整に関する合意であるとはいえない以上,本件慣行の対象となる土木工事に係る入札がなされたとしても,別紙業者一覧表記載の約80社のゼネコン間の本件慣行の存在から,直ちに当該入札において談合(原告らのいう談合に関する基本合意)がなされたと認めることはできない。
よって,上記基本合意に基づく被告ら全員に対する共同不法行為による請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。

とはいえ,前記前提事実(2)オのとおり,公社発注の特定土木工事につ
いて平成9年10月1日から平成12年9月27日(公正取引委員会が公社発注の土木工事入札に係る事件の審査を開始した日)までの72件(別紙P11公社発注の特定土木工事一覧表
(甲サ190)
)と,同年1
0月1日から平成17年11月1日までの139件(別紙特定土木工事一覧表(乙A2)
)が各落札されたところ,その平均落札率及び落札率
の分布を比較すると,下記平均落札率及び落札率の分布のとおり,前者と後者との間には,平均落札率において有意的な違いを認めることができる。
特に前者における落札率分布が99%以上の群に含まれる土木工事が42件と,全体の土木工事の56パーセントを超えていたことが認められ,分布の傾向としても99%以上95%以上99%未満及び

80%以上81%未満の各群に集中していたことが認められるのに対し,後者における落札率分布が99%以上の群に含まれる土木工事が6件と,全体の土木工事の4パーセント程度にまで大きく減少したことが認められるほか,分布の傾向としても95%以上99%未満90,%以上95%未満及び80%以上81%未満の各群に集中しており,
本件慣行の存在により公社発注の土木工事の落札率に明らかに有意な影響を与えているといえる。

平均落札率及び落札率の分布
甲サ190

乙A2
89.85%

平落札率
94.54%

落札率分布
(全72件中)

(全139件中)

99%以上

41件

6件

95%以上99%未満

11件

51件

90%以上95%未満

2件

30件

85%以上90%未満

2件

1件

81%以上85%未満

1件

0件

80%以上81%未満
エ均
15件

50件

上記アないしウからすれば,本件慣行が適用されるゼネコン間においては,
平成12年3月ころ以降は明確な形をとらなくなっていったとはいえ,少なくとも平成12年9月27日までの間(本件各工事の入札はいずれもこの時期に行われている。,本件慣行が存在しており,本件慣行のみか)
ら特定の土木工事について談合が成立したとまではいえないものの,本件慣行の対象となる土木工事については,本件慣行における一定の定めに従えば容易に談合を成立させることができ,その結果,公社が定める工事予定価格に極めて近い金額による受注が可能になったものと認められる。そして,上記平均落札率及び落札率の分布に照らせば,おおむね落札率95パーセント以上の場合,その落札率の高さに応じて,当該工事については,本件慣行を背景とした個別談合によるものとの疑いが強まるものということができる。
2
争点(1)イ(監査請求の対象行為と本件各工事に関する個別談合との同一性)について
(1)

被告P3,同P10及び同P8は,原告らの監査請求においては,34
社のゼネコンの基本合意による談合に基づき不法行為が成立するとして,町田市長が34社のゼネコンに対する損害賠償請求権を適正に行うことを求めていたのであり,本件各工事ごとに個別談合を行ったことが不法行為に当たることを理由とした損害賠償請求権の行使を求めているものではないことが明らかであるから,上記監査請求と同一性はないとして,住民監査請求を経ていない不適法な訴えであるから却下されるべきであると主張する。(2)

そこで,本件各工事に関する個別談合の成否の判断をする前に検討する
に,前記前提事実(6)によれば,原告らは,本件各工事において,被告らを含む34社の談合行為があったのか否かを監査の対象として監査請求したことが認められるところ,談合は,さまざまな形態があり得るとしても,いずれも特定の入札行為に向けた合意による競争制限としてみれば,同一性があるとみることができることからすれば,上記原告らの監査請求の対象となった談合行為と本件訴訟において原告らが主張する本件各工事に関する個別談合とは,対象とする行為の同一性に欠けるところはないということができ,上記被告ら3社の主張を採用することはできない。3
争点(1)ウ(本件各工事に関する個別談合の存否)について
(1)

本件工事1
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P1は,本件工事1につき,施工実績があることから受注を希望
し,基本合意の適用のあるゼネコン間において,受注予定者となる了承が得られると,被告P2,P57株式会社,P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社の各担当者に対し,工事希望票の提出を依頼した。被告P1は,公社から指名を受けた後,株式会社P16とJVを組むこととし,同JVが落札できるよう,基本合意がなされていたゼネコン6社(株式会社P45,P57株式会社,被告P2,P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社)及び基本合意に含まれていない指名業者である,P96株式会社,P97株式会社及びP98株式会社の各担当者に対して協力依頼をし,上記9社に対して,各建設業者が入札する金額を伝える,又は入札予定金額を確認することにより,被告P1によるJVが予定価格に近似する金額で落札した。
なお,基本合意が証拠上認定できなくとも,上記個別談合の事実が認められるならば,不法行為に基づき,被告P1及び同P2に対する損害賠償請求は認められるというべきである(この点は,以下の本件各工事のいずれにおいても同様の主張の構造である。。

(イ)

被告P1の主張
原告らの主張事実はすべて否認する(証拠評価の主張については後述
のとおり)

本件工事1の入札に参加したゼネコン間において,被告P1を受注予定者として決定した事実はなく,また,同入札には,ゼネコン以外の3社が存在していたことからすれば,被告P1が落札するという必然性や蓋然性を認めることはできない。
(ウ)

被告P2の主張
被告P2が,被告P1から工事希望票の提出を依頼されたこと,被告
P1が受注を希望していることを認識した上で工事希望票を提出したこと,被告P1から入札前に入札してもらう価格の連絡又は入札価格の確認を受けたこと,入札において自社の入札価格が被告P1の結成したJVの入札価格よりも高い価格になることを認識した上で入札に参加したことは否認する。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P1のP99(以下「P99」という。)の供述
証拠(甲サ72)
及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。


P99は,昭和45年に被告P1に入社し,昭和46年以降営業業務に従事し,平成10年4月以降平成12年3月末まで,同社P100営業所所長として勤務をしていた者である。


P99は,平成13年9月27日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
(a)

P99が赴任した平成10年4月ころ,被告P1が本件工事1

の受注予定者になることがほとんど決まっていた。被告P1が受注予定者となるための活動は,P99の前任者(P101)が長期間行っており,P99は,本件工事1の受注予定者となるための活動を特別には行わなかった。
(b)

P99は,数社のゼネコンに対し,公社に工事希望票の提出を

依頼したほか,相指名業者に対して入札金額の連絡を行った。
(c)

P99が数社のゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼したのは,指名業者から地元の建設業者を排除し,ゼネコンの受注を容易にするという,本件慣行によるものであった。P99は,工事希望票を依頼するゼネコンの選定を部下であるP102(以下「P102」という。)と相談して行い,また,株式会社P45のP103から,依頼先等を教示してもらった。
P99は,
このような経緯から,
P103に対しては工事希望票の提出を依頼しなかったが,株式会社P45において自主的に工事希望票を提出した。P99は,P57株式会社のP104(以下「P104」という。),P78株式会社のP105(以下「P105」という。)に工事希望票の提出を依頼したほか,P96株式会社,被告P2,P77株式会社及びP92株式会社の各担当者に対して工事希望票の提出を依頼した。
(d)

P99は,指名業者が公表された後,相指名業者のうち,地元

業者等のP97,P98に対し,被告P1が受注意欲を有していることを伝えるとともに,上記2社に被告P1が受注予定者であることを納得してもらい,同社が組んだJVが受注できるよう協力を得られる旨の同意を得た。
(e)

P99及びP102は,本件工事1の入札に参加するJVの主

となる建設業者である,株式会社P45,P96株式会社,P57株式会社,P106株式会社,P98株式会社,P92株式会社の各担当者に対し,電話で,積算を行っていた会社については,その積算金額が被告P1の積算金額よりも高い金額であることを確認した上,当該金額による入札を依頼し,積算をしていない会社については,具体的な金額を示してその金額による入札を依頼した。
(イ)

被告P1のP102の供述
証拠(甲サ162)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。a

P102は,本件工事1の落札について,P99の部下として同人と行動を共にしていた者である。なお,
町田市公共下水道α汚水枝線その3工事とは,本件工事1のことである。

P102は,平成13年6月1日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。平成10年5月25日入札の財団法人P11公社発注の「町田市公共下水道α汚水枝線その3工事について申します。当社は,平成10年5月25日入札の財団法人P11公社発注の
町田市公共下水道α汚水枝線その3工事について落札していま
す。この時の入札は私と当社P100営業所の前所長のP99さんと2人で行っています。

この工事物件については,平成元年8月に当社はこの近隣の町田市の「βの付近でP11公社発注の工事を行っていた施工実績がありましたので,立地条件が他社に比べて有利であり,是非とも受注したいと営業努力をしていた物件でした。
この物件については,
P99前P100営業所長のときに受注した物件であり,私がP99さんから聞いた話しでは,同クラスのゼネコンさんに対しては,自社が勉強していることをピーアールして受注の協力をお願いした物件だということは記憶しているが,いつごろ,どこのゼネコンに対してピーアールしたかまでは思い出せないということでした。同業他社のゼネコンからは当社の施工実績などを理解していただいたということは,他社のゼネコンは当社の入札価格より高めの概算で見積りを行い,
この価格で入札して当社に協力してくれています。


(ウ)

P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。a

P104は,平成9年4月15日にP57株式会社のP107営業所が新設されたことに伴い,同営業所長として赴任し,本件工事1の落札当時,同営業所長として勤務していた者である。


P104は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。15番の平成10年5月25日入札の「町田市公共下水道α汚水枝線その3工事は,当社はP108とのJVで入札に参加し,ゼネコンのP1とP16JVが落札しております。これも,P1から受注意欲をピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲のない工事であり,受注意欲がないということは分かったことと思いますが,概算で積算し,入札に臨み,結果的にはP1のJVが受注できるように協力したことになります。


(エ)

被告P2のP109(以下「P109」という。)の供述
証拠(甲サ116,145,176,355,357)及び弁論の全
趣旨によれば,次の事実が認められる。

P109は,昭和45年4月1日に被告P2に入社し,平成9年6月27日,同社P110支店営業第一部P111営業所に赴任し,同所長として勤務し,平成10年の組織変更後も,引き続き同営業所長の職につき,本件各工事の入札当時も同社P111営業所長として勤務していた者である。


P109は,平成13年6月8日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。番号23のβの物件は,AランクとBランクのジェイブイ物件で,P1・P16ジェイブイが落札した物件です。この物件の入札が平成10年5月25日で,当社としては,先ほど説明した当社が受注したγ第5工事を受注したいと思っていた時期で,この番号23の物件を受注してしまうとγ駅第5号工事の入札に参加できなくなる可能性がありますから,受注意欲のなかった物件で,指名稼ぎに入札参加希望を出した物件でした。この物件について,P1から当社に対して,入札参加の希望票を出して欲しいとか,自社が受注できるように協力して欲しいという話があったかどうか,記憶がはっきりしませんが,受注しようとするゼネコンが他のゼネコンに協力を求めるということはありましたから,協力して欲しいという話があれば,断る理由もありませんので,分かりましたといって協力していると思います。仮に,当社で積算して入札したとしても,取れない価格で入札していると思います。γ駅第5号工事の入札に参加できなくなる可能性があるというのは,P11公社では,工事を受注して,出来高が50パーセントを超えないと次の指名には入れないということがあるからです。(オ)

P78株式会社のP105の供述
証拠(甲サ150)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P105は,本件工事1の入札当時,P78株式会社営業本部部長として勤務していた者であり,同社の多摩地区の官公庁発注の土木工事の営業担当者から報告を受けていた者である。


P105は,平成12年12月4日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。お示しの入札結果報告書のうち,「町田市公共下水道α汚水枝線その3工事は,平成10年5月25日に入札が行われたP11公社発注の物件で,当社は調布市に本社のある地元業者のP112とJVを組んで入札に参加しております。この物件は,当社には何の条件もなく,関連性もありませんので,確か,P1がβの施工場所の近くで,P113等の工事をやっており,その関連性でP1とP16のJVが本命となり,入札金額の連絡を受け,同JVが受注できるよう協力しております。


検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,以下検討することとする。
(ア)

被告P1のP99は,本件工事1について,平成10年4月ころに
は,既に被告P1が受注予定者とほぼ決まっており,その後に,被告P1の受注を容易にするためにゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼し,更に公社による指名後には受注調整関係にあるゼネコンではない建設業者2社を含む相指名の建設業者に対し,自社が落札できるよう協力の依頼をし,各社から協力を得られることになり,入札前に,自社が組んだJVが落札できるよう,他のJVの入札予定金額を確認したり,そのJVに入札してもらいたい金額を伝える方法により受注調整をした旨供述している。そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事1は,被告P1と株式会社P16が組んだJVにおいて,工事予定価格3億3205万円の98.47パーセントに当たる3億2700万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事1につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事1の入札に参加したJVの主となる建設業者であったゼネコンの担当者であるP105は,被告P1が受注予定者とされ,同社から入札金額の連絡を受けた旨供述しており,本件工事1の入札に参加したゼネコンの担当者であるP104及びP109においても,被告P1との間で何らかの受注調整が行われたことを肯定する供述をしている。
以上を総合すれば,本件工事1については,被告P1の担当者が,平成10年4月ころまでに,本件慣行に基づいて受注予定者となるべき活動を行い,同社が受注予定者となることに理解を示したゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼したほか,公社による指名がなされた後遅くとも入札の前までに,本件慣行が適用され,かつ,入札に参加するJVの主となるゼネコン6社(株式会社P45,P57株式会社,被告P2,P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社)に対し,各ゼネコンが結成したJVの入札予定金額を確認したり,入札して欲しい金額を伝えたりするなどの方法により,被告P1が結成したJVが,工事予定価格に近似する入札金額により本件工事1を落札できるよう協力する旨依頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P1が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者3社(P96株式会社,P97株式会社,P98株式会社)の担当者に対し,被告P1が結成したJVが,工事予定価格に近似した金額により落札できるよう協力を依頼し,上記合意及び協力に基づいて,被告P1が結成したJVが,予定どおり本件工事1を落札したと認められる。(イ)a

この点に関して,被告P1は,上記P99の供述につき,公社に

よる指名がなされるより以前に受注予定者が決まっていること自体あり得ないことであるとか,P99の供述において述べられているP102の関与について,P102が何ら供述していないことや,P99が平成12年7月に懲戒解雇された者であり,P99の供述が被告P1に対する反感,悪感情を背景に同被告を陥れようとして虚偽の供述をしているなどと主張する。
しかしながら,本件慣行においては,前記1(3)のとおり,公社による指名がなされる前に受注予定者となるべくピーアール紙を作成する等の活動を行い,その結果受注予定者となった者が,当該入札を受注調整がなされているゼネコンに参加させることにより,受注予定者による落札を容易にするため,他のゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼していたことが認められるのであり,被告P1が公社による指名がされる以前に受注予定者としてほとんど決まっていた旨のP99の供述が不自然とはいえない。また,前記イ(イ)bのとおり,被告P1のP102の供述は,P102自身が受注調整行為に関与したことについては触れられていないものの,本件工事1において何らかの受注調整行為がなされたことを自体を否定するものではなく,P102の供述がP99の供述の信用性を減殺させる関係にあるとはいえず,むしろ,P102は,P99から受注調整行為がなされた旨の話を聞いた旨供述していることからすれば,P99の上記供述が公正取引委員会における審査において全く虚偽の事実を被告P1を殊更に陥らせる目的で作出した内容ではなかったことを裏付けるものといえる。
さらに,P99の供述は,
本件工事1に係る受注調整行為につき,
自らが直接関与した部分と直接関与していない部分とを明確に分けて供述しているほか,工事提出票を依頼する建設業者の選定,入札金額の連絡方法などについても具体的に供述しており,この面からも信用性を肯定できる。

また,被告P1は,相指名されたゼネコンの担当者のうち,P104及びP109は,明確に被告P1から受注調整行為がされたことを供述しておらず,被告P1による受注調整行為があったとするP105の供述が,同供述において繰り返し同様の表現が用いられたりするなど信用できない旨主張する。
しかしながら,P104及びP109は,いずれも,多摩地区においては受注調整行為があった旨の供述をし(甲サ144,145),
また,両社において,もともと本件工事1を受注する意欲がなく,自社において受注調整行為に関与していた工事が複数存在していたことを認める旨供述していることからすれば,そのうちの一つの工事である本件工事1において,被告P1から工事希望票の提出や調整行為があったか否かについて,明確にその存在を認める供述していなかったとしても,これを受注調整行為がなされていなかったことを意味するものとみることはできず,また,受注調整行為があったとする他の者の供述を裏付けこそすれ,
その信用性を左右するとはいえない。
なお,
P105もゼネコン間における受注調整行為を行う慣行があったことを認め,そのような慣行に基づいて複数の公社が発注する土木工事において,受注調整行為を行っていたことを供述しているのであって,本件工事1もその中の一つであったとして供述しているとみることができ,その供述において,他の工事と同様の表現が用いられていることが,受注調整行為に参加していた旨の同人の供述の信用性を減殺するものとはいえない。
(2)

本件工事2
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P3は,本件工事2につき,調査設計段階に同社のダミコンが入
札参加者として指名されていたことから受注を希望し,本件工事2の公示日にP25を訪問し,受注意欲がある旨伝え,P25から

分かりました。

との返答を受け,基本合意における受注予定者となり,公社が入札予定を公表した後に合計約15社のゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼し,公社が建設業者を指名した後に,相指名業者のうち,P17株式会社とJVを組んだ。被告P3は,入札前までに入札に参加するJVの主となる建設業者に対し,自社が受注を希望していることを伝え,入札予定金額を伝え,又は入札予定金額を確認するなどした。被告P3は,入札に参加するJVの主となる建設業者のうち,基本合意の適用のある6社(株式会社P48,株式会社P114,株式会社P84,P91株式会社,P18株式会社,P76株式会社)以外の3社(P115株式会社,P116株式会社,P117株式会社)に対し,被告P3が組んだJVが落札できるよう協力を求め,上記各社において,被告P3の受注希望に異議を唱えず,入札において,被告P3が組んだJVの入札金額よりも高い金額となることを認識した上で入札し,同JVによる落札ができるよう協力した。
(イ)

被告P3の主張
原告らの主張は,何ら具体的な根拠のない憶測を述べているにすぎな
いものである。
被告P3が,P115株式会社,株式会社P116及びP117株式会社の3社との間で個別に受注調整をしたことを示す証拠はない。イ
公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P3のP36の供述
証拠(甲サ85,173)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
P36は,平成13年5月22日及び同年9月4日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。

被告P3は,P17株式会社とJVを組み,同JVが,平成10年5月25日入札の本件工事2を3億0900万円で落札した。本件工事2は,第1グループがAランクの建設業者,第2グループがBランクの建設業者によるJVによる土木工事であった。本件工事2の入札は,被告P3とP17株式会社とのJVのほか,株式会社P48と株式会社P118とのJV,株式会社P114とP23株式会社とのJV,株式会社P84とP119株式会社とのJV,P91株式会社とP120株式会社とのJV,P18株式会社とP121株式会社とのJV,P76株式会社とP122株式会社とのJV,P115株式会社とP123株式会社とのJV,株式会社P116株式会社とP124株式会社とのJVの10JVで行われた。
被告P3は,本件工事2につき,施工現場の近隣で過去に水道工事を施工した実績を有していたほか,自社のダミコンが本調査設計入札の指名を受けており,会社自体も施工現場に近く,河川工事や造成工事をその付近で多く施工していたため,強い受注意欲を有していた。本件工事2は,新設工事であったことから,被告P3以外のゼネコンにおいては,受注を有利にするための事情を有しておらず,特に受注を希望していないようであった。

P36は,本件工事2の公示日にP25を訪問し,P25に対し,被告P3が,近隣において施工実績を有しており,受注意欲を有していることを説明すると,P25から

分かりました。と回答された。

P36は,経験上,P25が検討する場合や受注予定者となれない場合であればその旨を回答することから,上記P25の回答により,被告P3が受注予定者としての地位を得られたと考えた。


P36は,平成10年4月23日,24日ころ,株式会社P48P125営業所長のP126(以下「P126」という。)又はP127(以下「P127」という。),株式会社P114P128営業所長のP129,株式会社P84P130営業所長のP131(以下「P131」という。),P91株式会社P132営業所のP133,P18株式会社P134営業所長のP135(以下「P135」という。),P76株式会社P136営業所長のP137(以下P137という。
)のほ
か,合計約15社のゼネコンの担当者に電話で工事希望票の提出を依頼した。具体的には,
平成10年4月23日公表の公表番号何番の申込みをお願いしますとの旨を各ゼネコンに連絡し,各ゼネコンから提出する旨の返事をもらったと記憶している。

P36は,本件工事2の入札前に,相指名に入ったゼネコンの担当者である,
株式会社P48P125営業所長のP126又はP127,
株式会社P114P128営業所長のP129,株式会社P84P130営業所長のP131,
P91株式会社P132営業所のP133,
P18株式会社P134営業所長のP135,P76株式会社P136営業所長のP137に対し,電話で,1回目から3回目までの入札にしてほしい金額を伝え,各ゼネコンの担当者から分かった旨の返答を得た。


P36は,上記(c)及び(d)の工事希望票の提出依頼や入札金額の連絡において,
P3ですがと自己の氏名を名乗らずに,会社名を
告げて連絡していた。


P36は,本件工事2の相指名業者であったP115株式会社,株式会社P116,P117株式会社に対し,入札に参加した理由につき尋ねるとともに,予想される額より上回る価格で入れてくださ
い。」と伝えることにより,被告P3が組むJVが落札することができるよう協力を依頼した。P36は,上記3社の担当者から明確な返事をもらえなかったが,雰囲気から,被告P3の組むJVが落札できると感じた。

(イ)

株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P126は,株式会社P48に昭和53年1月に入社し,平成8年6月から同社P138支社P125営業所長になり,本件各工事の入札当時,同所長として勤務していた者である。b

P126は,平成13年9月18日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
(a)

本件工事2については,受注予定者であった被告P3の落札に

結果として協力した。公社から本件工事2の公示された後,被告P3のP37営業所から,P126又はP126の部下のP127に対し,工事希望票を提出して入札に参加し,被告P3の落札に協力するよう依頼された。そこで,株式会社P48が,工事希望票を提出し,本件工事2の入札に参加することとなった。
(b)

株式会社P48では,受注予定者となったゼネコンに協力する

場合であっても,入札に参加する場合には自社の見積りを行うこととなっていた。P126は,上記協力依頼があったことから,被告P3が本件工事2の受注予定者となったものと考え,被告P3に迷惑の掛からない当社の見積金額を,遅くとも入札前までに,被告P3のP37営業所の担当者に電話で連絡した。
なお,P126は,電話で見積りを伝えた被告P3のP37営業
所の担当者がP139であったと記憶しているが,当時被告P3のP37営業所長の交代があったことから,P36に対して伝えたのかもしれないと考えている。
(ウ)

P76株式会社のP137の供述
証拠(甲サ103)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P137は,昭和56年10月にP76株式会社に入社し,そのころから同社P136営業所に勤務し,昭和62年以降同営業所長となり,本件各工事の入札当時,同所長として勤務していた者である。

P137は,平成13年3月28日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
(a)

公正取引委員会がP76株式会社から留置したノート(甲サ1

03添付のノート。以下「P76ノート」という。)は,P76株式会社の女性事務員がつけていた電話連絡メモである。
(b)

P76ノートの

4.23(木)16:30P3P139P11の申込みよろしくお願いします。

との記載については,本件工事2につき,被告P3が受注予定者となっており,被告P3から,本件工事2の工事の入札を受注調整関係にあるゼネコンで占めるため,入札に参加するよう依頼を受けたことを示す記載である。(c)

P76ノートの5.22(金)16:001.3億1800万2.3億600万P3札の連絡3.3億230万と
の記載については,被告P3から,P76株式会社に対し,本件工事2の入札において,P76株式会社に入札してもらいたい金額を連絡してきたものである。
P76株式会社は,被告P3が受注できるようにするため,被告
P3から連絡を受けたとおりの金額で入札し,
その受注に協力した。
(エ)

P63株式会社のP140(以下P140という。
)の供述
証拠(甲サ56,151)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

P140は,昭和41年4月,P63株式会社に入社し,平成6年2月から同社P141営業所に営業課長として赴任し,平成8年4月に同営業所長になり,平成12年5月に同社P142支店営業部次長に異動するまでの間,同営業所長として勤務していた者である。


P140は,平成13年9月30日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。(a)

公正取引委員会がP63株式会社から留置したノート(甲サ1

51添付のノート。
以下「P63ノート」という。)の書き出しは,1
2月11日(木)となっており,平成9年12月11日は木曜日
であることから,P63ノートは,P63株式会社の女性事務員が平成9年12月11日木曜日から使用していたものであるといえ
る。
(b)

P63ノートに4月23日(木)とある,平成10年4月

23日木曜日のページには,
P140に対する報告事項が記載され,
午後5時のところのP3P139様よりP11の申込おねがいしたい町田市δ幹線その4という記載は,被告P3P37営業所のP139所長から本件工事2の工事希望票の提出依頼があったことを指している。
P63ノートの翌日,平成10年4月24日のP11申込書作成との記載は,P140の指示により女性事務員が本件工事2の工事希望票を作成し,公社に提出していることを指している。
(c)

しかしながら,
P63株式会社は,
本件工事2の入札において,

公社から指名されなかった。
(オ)

株式会社P84のP131の供述
証拠(甲サ184)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P131は,平成10年4月に株式会社P84P130営業所長になり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。なお,
町田市公共下水道δ幹線その4工事とは,本件工事2
のことである。


P131は,平成13年4月25日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。一覧表の5番にある平成10年5月25日入札の「町田市公共下水道δ幹線その4工事について申し上げます。P11公社の場合,発注方法が工事希望型指名競争入札ですので,工事希望表をP11公社に提出し,指名を受けるというシステムをとっています。私は,落札業者であるP3からこの物件について工事希望表を提出して欲しいと依頼の電話連絡を受け依頼されたとおりにP11公社に工事希望表を提出し,
入札に参加しました。
P11公社は10社を指名しますが,
指名メンバーをある程度ゼネコンで固めたいので,P3さんは,十数社に工事希望表を提出して欲しいことを他のゼネコンに伝えられたと思います。指名メンバーがゼネコンで固まれば,受注調整しやすくなるからです。P3さんにこの物件を受注するための強い条件があったかどうかは,私は存じ上げませんが,入札日の5月25日の前日が休日でなければ,
24日にP3さんからの札の連絡があったはずです。

(カ)

P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ235,349)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。

P135は,平成10年4月から平成11年9月までの間,P18株式会社のP134営業所長と本社営業本部とを兼任していた者であり,当時の同社の土木営業の責任者であった者である。


P135は,平成13年5月15日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。18ページに記載があるP11公社発注の平成10年5月25日入札,「町田市公共下水道δ幹線その4工事に当社はP121とのJVで入札に参加しております。P3とP17JVが落札しております。当社には特に条件はなかったものと記憶しています。条件がないときは簡易な積算をするのが常です。P3のどなたから電話があったのかちょっと思い出せませんが,私に電話でどのくらいの見積をやってらっしゃいますかといったお話があったように記憶しております。P3さんは当社の見積価格を聞いて,当社が狙ってきているのではないということがわかったものと思います。


検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,以下検討することとする。
被告P3のP36は,本件工事2について,被告P3が受注をする意欲を強く有しており,他のゼネコンにおいては受注を希望していなかったことから,平成10年4月23日に本件工事2が公示された後,P25を訪問したときの様子から,被告P3が受注できる旨の心証を抱くと,積極的に合計約15社のゼネコンに電話で,被告P3が本件工事2の受注をするための有利な事情を有しており,受注調整のために工事希望票の提出をするよう依頼したほか,公社により本件工事2の入札に参加する建設業者が指名されると,入札前である同年5月22日ころ,相指名のゼネコンある株式会社P48,株式会社P114,株式会社P84,P91株式会社,P18株式会社,P76株式会社の各担当者に入札して欲しい金額を具体的に連絡し,各社から協力を得られることになったほか,P115株式会社,株式会社P116,P117株式会社の各担当者に対しても

予想される額より上回る価格で入れてください。

と協力を求めた旨供述している。
そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事2は,被告P3株式会社とP17株式会社とが組んだJVにおいて,工事予定価格3億1071万4000円の99.44パーセントに当たる3億0900万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事2につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事2の入札に参加したJVの主となる建設業者の担当者であったP137,
P126,
P131及びP135は,依頼をした被告P3の担当者の名前,入札金額の連絡等において具体的に入札してほしい金額を依頼されたのか,自社の見積りを聞かれたのかという点については供述が一致しないものの,P36の本件工事2についての受注調整行為に関する供述とおおむね一致する供述をしている。さらに,本件工事2の入札に参加した本件慣行が適用されない建設業者であるP115株式会社,株式会社P116及びP117株式会社は,本件工事2の入札において,各社が組むJVに3億2000万円,3億3000万円,3億4000万円といういずれも工事予定価格を上回る金額で入札をしており,P36の協力要請を了承し,いずれも高い金額で入札をしたものと認められる。
以上を総合すれば,本件工事2については,被告P3の担当者が,自社のダミコンが調査設計に関与していたことや施行現場の近隣において施工実績を有していたことから,受注を強く希望し,平成10年4月23日ころ,本件慣行に従い,P25に対して受注意欲があることをピーアールしたほか,被告P3が受注予定者であり,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名後遅くとも入札までの間に,相指名業者のうち,工事希望票の提出を依頼した本件慣行の適用があるゼネコン6社(株式会社P48,株式会社P114,株式会社P84,P91株式会社,P18株式会社,P76株式会社)との間で,各ゼネコンが結成したJVに対し,被告P3の結成したJVが落札できるよう協力を依頼し,
上記ゼネコン6社との間で,
同ゼネコンが結成したJVに入札をしてほしい金額を伝え,又は各ゼネコンが結成したJVの見積金額を確認することにより,被告P3の結成したJVの入札金額による落札を妨げないこととする合意(個別談合)が成立し,さらに,被告P3の担当者において,本件慣行の適用がない3社の建設業者(P115株式会社,株式会社P116,P117株式会社)に対しても,同3社の建設業者が結成したJVに工事予定価格を上回る金額で入札するよう依頼し,上記3社から同意を得て,上記談合に基づいて,予定どおり本件工事2を落札したと認められる。
(3)

本件工事3
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P13は,本件工事3につき,工事現場の近隣に施工実績を有し
ていたこと,にもかかわらず,過去に発注された本件工事3の関連工事を受注したことがなく,本件工事3が当該関連工事の最後の工事であったこと,本件工事3において使用される工法が被告P13の得意な工法であったことなどから,同工事の受注を強く希望していた。被告P13は,基本合意により,本件工事3の受注予定者となると,ゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼し,各ゼネコンにおいても,同依頼に応じて工事希望票を提出した。
さらに,
公社が指名した建設業者はいずれも,
基本合意が成立しているゼネコン(被告P13,P18株式会社,被告P5,P21株式会社,P143株式会社,株式会社P73,P47株式会社,P53株式会社,P12株式会社,株式会社P54,P52株式会社,被告P6,株式会社P66,株式会社P144,株式会社P145,P68株式会社,P91株式会社,P61株式会社,P69株式会社,P88株式会社)であったことから,各ゼネコンに対し,入札をしてもらう金額を連絡するなどして協力を求め,上記各ゼネコンにおいて,自社が組むJVに被告P13とP18株式会社が組むJVよりも高い金額になることを認識した上で入札し,被告P13とP18株式会社が組んだJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。(イ)

被告P13の主張原告らが主張する基本合意という事実はなく,原告らが主張する基本合意を基礎とする個別合意なども認められる余地はない。
(ウ)

被告P5の主張
被告P13が被告P5に対し本件工事3の受注を希望している旨伝え
たこと,被告P5が被告P13が結成したJVの入札価格よりも高い価格となることを認識した上で入札に参加したことは否認する。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P13のP38の供述
証拠(甲サ135,136)によれば,P38は,平成13年3月2
1日及び同月22日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
要旨,
次のとおり供述したことが認められる。

P38の部下であったP41が作成した本件工事3の受注報告書によると,本件工事3は,平成10年6月22日に入札が行われ,被告P13とP18株式会社とのJVが1回目の入札で11億3500万円で落札した。


本件工事3は,被告P13が,本件工事3の工事現場の付近の4箇所で工事実績を有していたこと,
γ幹線その3工事・その4工事
を受注することができなかったこと,本件工事3で使用される工法の特許を有しており,得意な工法であったことからも,町田市や公社に対して営業活動を行うなど,
何としても受注したい土木工事であった。


P38は,P41と二人で,P25を訪れ,

当社が勉強していますので,よろしくお願いします。

と,被告P13が受注する意思を有していることを伝えるとともに,被告P13がγ幹線に係る土木工事において,近隣の施工実績を有するのにもかかわらず,1回も受注したことがないことを説明した。

P38は,入札までの間に,他のゼネコンに対し,被告P13が受注に積極的であることを説明し,入札に参加するJVの主となるゼネコンに対しては被告P13が受注のための活動をしており,同社が結成したJVが落札できるよう本件工事3の見積金額を知らせるよう協力を依頼し,
各ゼネコンに,
一定の高めの金額で入札をしてもらった。

被告P13は,平成12年4月,本件工事3に伴う保守管理作業,同年5月に本件工事3の二次履行工事について,随意契約を行った。
(イ)

株式会社P66のP146(以下「P146」という。)の供述
証拠(甲サ62,204)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

P146は,昭和56年4月に株式会社P66に入社し,平成6年12月に同社P147支店P148営業所長になり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。なお,
町田市公共下水道γ幹線その8工事とは,本件工事3のことである。

P146は,平成13年10月3日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。表の番号15番「町田市公共下水道γ幹線その8工事について
は,ゼネコン同士で叩き合いになった物件ではありません。そして,最初にも話しましたがこの物件も当社として受注意欲がなく,当該物件について勉強する気はまったくありませんでしたから,通常ゼネコン同士で行われてきたように,本命,この物件の場合はP13とP18のJVですが,このJVのスポンサー業者であるP13から工事希望票の提出依頼があり工事希望票を提出して指名された物件といえます。当社はP71とJVを組んでJVのスポンサーとして入札に参加していますので,やはりゼネコン業界で行われてきたとおりP13から札の連絡もあり,その価格で応札してP13の落札に協力した物件であると言えます。工事希望票の提出依頼や札の連絡を当社にしてきたのが誰であったか分かりませんが,通常,多摩地区の土木物件では東京支店サイドからこのような連絡があることはなく,もっぱら多摩営業所の所長とか営業マンからありましたので,このときもP13のP40営業所のかたからであると言えます。

(ウ)

株式会社P73のP149(以下「P149」という。)の供述
証拠(甲サ92,249)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

P149は,昭和52年4月に株式会社P73に入社し,平成6年4月から,同社P150営業所長に配属になり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。なお,
町田市公共下水道γ幹線工事とは本件工事3のことである。


P149は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。次に,15番の平成10年6月22日に入札が行われました町田市公共下水道γ幹線工事についてご説明いたします。この物件は,P13とP18のJVが落札しておりますが,この物件に関して当初はゼネコンであるP90さんが勉強しておられ,同社関西地区で不祥事があったとのことから,この物件を辞退したことにより,本命がP90さんからP13さんに代わったという記憶がありますことから,この物件の申込み依頼は,P90P151営業所長のP152さんかP13P40営業所長のP38さんのどちらか一方でした。私は,この依頼を受けまして,お付き合いの物件でありましたから,その協力依頼に応じて入札に参加致しました。当社はP143とJVを組み,そのJVのサブでありましたことから,その後の手続は,P143にお任せしております。(エ)
株式会社P71のP153(以下「P153」という。)の供述
証拠(甲サ84,170,294)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。

P153は,昭和45年4月に株式会社P71に入社し,平成9年4月からP154出張所における官公庁・民間営業に関与し,同年10月からは同社P154出張所長,平成10年4月に同出張所が営業所に格上げになった後は同営業所長となり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。


P153は,平成13年6月12日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。21番の平成10年6月22日入札の「町田市公共下水道γ幹線その8工事は,P66と当社とのJVで入札に参加し,P13とP18,現在のP155のJVが落札しております。この工事も,P13から工事希望票を出すように頼まれて申し込んだのではないかと思います。


(オ)

P52株式会社のP156(以下「P156」という。)の供述
証拠(甲サ163,164,237)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。

P156は,昭和53年にP52株式会社に入社し,平成10年4月に同社P157営業所の所長に異動となり,
本件各工事の入札当時,
同営業所長として勤務していた者である。


P156は,平成13年6月5日に公正取引委員会において同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。
35番の平成10年6月22日入札の「町田市公共下水道γ幹線その8工事は,当社とP6とのJVで入札に参加し,P13とP18,現在のP155のJVが参加しております。この工事は,JVのスポンサーとなったP13P40営業所の営業担当者であったP41さんからであったと思いますが,受注意欲があるということと工事希望票を出して欲しいということをお願いされ,当社はそれを理解し,工事希望票を出しました。そして,入札の前日までにはP13から入札価格の連絡を受け,その価格で入札に臨み,P13のJVが落札できるよう協力しました。

(カ)

P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ159,349)によれば,P135は,平成13年5月
15日に公正取引委員会において行われた2回の同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述したことが認められる。a
本件工事3は,被告P13とP18株式会社とで組んだJVが落札している。本件工事3について,P18株式会社には,受注に有利な条件を有していなかった。


P18株式会社は,上記JVの主となる建設業者,すなわちAグループで入札に参加した被告P13のP41又はP38からJVを組むように依頼を受け,これに応じてJVを結成して入札に参加することとなった。被告P13株式会社から,P18株式会社が依頼を受けた理由は,被告P13株式会社のP41とP135の部下とが親しかったことにある。

(キ)

P53株式会社のP158(以下「P158」という。)の供述
証拠(甲サ3,81,140)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
が認められる。

P158は,昭和43年4月にP53株式会社に入社し,平成6年4月に同社P159営業所の副所長となり,同営業所における営業業務に従事し,平成7年4月にP159営業所長の昇格し,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。b

P158は,平成13年9月26日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。表の番号15番「町田市公共下水道γ幹線その8工事は,Aラ
ンクとAランクのJV工事でして,当社はランク的に最初からJVの子になることが分かっていました。しかし,本命の親,つまり,業界内で本命になっているJVメイン業者に拾ってもらえればもうけものくらいの気持ちで申し込んだ物件でした。結局,当社は業界内で本命になったP13とJVを組むことができず受注には結びつきませんでした。



検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて以下検討することとする。
(ア)

被告P13のP38は,本件工事3について,近隣で施工実績を有
するのにもかかわらず,これまでに関連工事を受注したことがなく,また使用される工法が,特許を有しているなど得意としている工法であることなどから,被告P13が受注を強く希望し,P25に対して上記各事情を説明したほか,本件慣行の適用がある他のゼネコンに対しても被告P13が受注を強く希望していることを説明したこと,さらに,入札に参加するJVの主となるゼネコン各社に対して被告P13が工事予定価格に近似する金額で落札できるような金額を見積もるよう依頼し,当該各ゼネコンから協力を得られ,相当な金額で入札してもらった旨供述している。
そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事3は,被告P13とP18株式会社が組んだJVにおいて,工事予定価格11億4811万2000円の98.85パーセントに当たる11億3500万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事3につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事3の入札に参加したJVの主となる建設業者の担当者であったP146,P149及びP156は,本件工事3において,被告P13が受注予定者になった旨供述しており,そのうち,P146及びP156は,被告P13から入札してほしい金額の連絡があった旨供述している。また,P153も,被告P13から工事希望票の提出依頼があったと思われる旨供述している。さらに,本件工事3の入札に参加したJVの主となる建設業者の担当者であったP135及びP158は,公社から本件工事3の入札参加者として指名された後,入札前の時点で,被告P13が受注予定者であったことを前提とする供述をしている。加えて,本件工事3の入札に参加したJVの入札金額は,第1回目の入札において,10JVの入札金額がいずれも工事予定価格を上回ったため,2回目の入札が行われることになり,その結果,10JVのうち,最低の金額を入札した被告P13が結成したJVが落札する結果となったが,1回目の入札も,被告P13が結成したJVが最低の金額であり,各JVの入札金額の差が極めて少ないことが認められる。
以上を総合すれば,本件工事3については,被告P13の担当者が,工事現場の近隣において施工実績があることや,関連工事を受注していないこと,工法の特許を有しており,得意な工法であったことから受注を希望し,被告P13が本件工事3の受注予定者となるのに有利な事情があるとして,本件慣行に基づき,P25に対して受注を希望している旨説明するとともに,他のゼネコンの担当者に対し,被告P13が強く受注を希望しており,受注予定者となるための活動をしている旨伝え,併せて,入札に参加するよう工事希望票の提出を依頼したほか,公社による指名がなされた後遅くとも入札前までに,入札に参加するJVの主となる本件慣行が適用されるゼネコン9社(被告P5,P143株式会社,P47株式会社,P12株式会社,P61株式会社,P52株式会社,株式会社P66,株式会社P145,P91株式会社)の担当者に対して,具体的な入札金額を伝えたり,又は見積金額を尋ねて協力を依頼し,上記ゼネコン9社との間で,被告P13が組むJVが落札できるよう,各ゼネコンが結成したJVに伝えられた入札金額で入札したり,見積金額を被告P13に確認することにより,被告P13が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意個別談合)(
がなされ,この談合に基づいて,被告P13が結成したJVが,予定どおり本件工事3を落札したものと認められる。
(イ)

この点に関して,被告P13は,P38の供述が,自らが体験して
ない内容を供述しているとして信用できない旨主張するが,P38は,自らP25に対して被告P13が受注希望者となるべく活動をした旨供述しているのであって,P38が,本件工事3の入札がされた平成10年6月22日当時,被告P13P40営業所の所長であった者であり,被告P13が実際に本件工事3の入札業務を行っていたとするP41もP38の部下であった者であることからすれば,P38の供述は,自ら体験した事実又はP41から聞いていた業務内容などを,自らの記憶に従って供述しているものであるということができ,少なくともその供述された範囲における内容の信用性はあるというべきである。
また,被告P13は,他のゼネコンの担当者の供述が公正取引委員会審査官の作文にすぎず,信用性がない旨主張するが,いずれの調書においても,読み聞かせて間違いない旨確認した後に署名,押印させた旨の記載及び各供述者の署名,押印があること,上記各供述は,例えば,P149の供述は,受注予定者の決定に至る経緯や工事希望票の提出依頼を受けた経緯についてはある程度具体的であり,また,P156においては,明確にP41から工事希望票の提出依頼があったなど,各供述者によって,供述の具体性やその経緯において,本件工事3の入札を巡っての関与や関心の度合いに応じた相応の違いがあることからすれば,上記担当者らの各供述が,いずれも公正取引委員会の審査官による作文であるとはいい難い。
(4)

本件工事4
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P6は,本件工事4につき,工事現場が自社の営業所に近く,周
辺の状況を把握していたことから,受注を希望しており,基本合意により,受注予定者となった。被告P6は,公社が入札予定を公表する前,P88株式会社に対し,自社が本件工事4の受注を希望していることを伝え,少なくともP53株式会社,P74株式会社及び株式会社P66に対し,工事希望票の提出を依頼し,上記各ゼネコンは,被告P6が本件工事4の受注予定者であると認識した上で工事希望票を提出した。公社が本件工事4の入札参加業者の指名を行った後,被告P6はP19株式会社とJVを組み,入札前までに,公社から指名を受けた被告P2,株式会社P66及びP88に対し,入札してもらいたい金額を連絡し,入札予定金額を確認したり,
又は自社の入札予定金額を伝えるなどして,
被告P6とP19株式会社のJVが落札できるよう,同JVの入札金額より高い金額による入札をするよう依頼した。上記各ゼネコンは,自社が組むJVに被告P6が組むJVの入札金額よりも高い価格であることを認識した上で,入札に参加し,被告P6が組むJVに工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)

被告P6の主張
本件工事4における談合の合意は否認する。

(ウ)

被告P2の主張被告P6が被告P2に入札してもらう価格を連絡し,又は被告P2の入札価格を確認し,若しくは被告P6の入札価格について確認を受けたこと,被告P2が被告P6の結成したJVの入札価格よりも高い価格となることを認識して入札に参加したことは否認する。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P6のP160(以下P160という。
)の供述
証拠(甲サ100,352,353)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。

P160は,昭和57年4月に被告P6に入社し,平成2年に同社P161支店P162営業所に配属され,平成7年に同営業所課長,平成10年に同営業所次長となり,本件各工事の入札当時,同営業所次長として勤務していた者であり,平成13年4月20日に同営業所長となった者である。なお,
町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事とは,本件工事4のことである。

P160は,平成13年6月19日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事のことなどについて
申します。当社とP19のジェイブイが落札したεの物件については,この物件についても,δの物件ですから,当社の営業所に近い,工事場所の状況も把握している,近隣状況も分かっているという物件でしたから,前々から熱心に営業活動をしていた物件でした。当社が是非取りたいと思っていた物件でしたから,他のゼネコンに対しても折りに触れ当社が一所懸命営業しているという話はしていると思いますし,当社営業所の直ぐ側の物件でしたから,他のゼネコンからこの物件について当社が熱心に営業しているのかを聞いてきたことがあったと記憶しています。これらの話が,具体的にどこにしたのか,どこからあったのかは覚えていないのですが,この物件の公表が平成▲年▲月▲日で,前のP163所長が亡くなった日と同じでして,ばたばたとした時期でしたから,そういう話は物件公表の前だったと思います。前のP163所長がなくなった後は,大変だったという記憶しかなく,仕事の話になるとほとんど覚えていないような状況です。ただ,この物件についても,是非取りたいということで,実行予算ベースで積算し入札には臨んでおります。c
P160は,平成13年10月4日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したた

だし,
問答形式の部分については,
質問の要旨を括弧書きにして示し,
回答部分のみを引用する。。

平成10年9月14日に入札執行の町田市興業下水道ε汚水枝線その2工事を,町田市所在のP19株式会社とのジョイントベンチャーによって落札受注しております。

お示しのシステム手帳については…(中略)…提示のページの9月14日の欄に書かれています「P11入札町田市δ10:00-入札等の記載につきましては,P11公社が,1998年,すなわち平成10年の9月14日に入札を執行した町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事略してε工事に関する記載であることが分かります。ε工事に関する入札へは,ジョイントベンチャーとしての参加でしたが,その親として参加したゼネコンは,当社の他,P7
4株式会社,株式会社P66,P56株式会社,P88株式会社,P89株式会社,P53株式会社,P2株式会社と,さらに私がゼネコンであると理解していますP164株式会社及びP165株式会社でした。
入札結果は,
当社とP19が結成したジョイントベンチャーが,確か1回目の入札で落札したと思います。お示しの手帳の9月14日の欄に書かれています①―338,000,000-②―331,500,000-③100万円以内切につきましては,ε工事の入札に関して書かれたもので,その入札価格に関するものであることは理解できます。
また,
入札3回目分について書いたもので,
③100万円以内切との表し方でもありますから,入札の結果価格を書いたものではなく,入札の予定価格を書いたものであることが理解できます。

(記載を誰かが頼んだものか,それとも決めたものか分かるかとの質問に対して)

できません。他の会社の予定した価格ですし,他の会社の人が書かれたものですから,私には分かりません。

(被告P6における本件工事4の担当者が誰かとの質問に対して)

私でした。時期的に前々任の営業所長が死亡し,前任所長のP166が赴任する前に営業活動をした物件でしたから,営業所長は営業活動にタッチしませんでした。

(被告P6が本件工事4に対して受注を希望していたかという質問に対して)

強く受注意欲を持ちました。その事情などは,当社のP162営業所から工事現場がすぐ近くですし,「山がよい

といわれますけれど,土質がよい所で工事進捗がよさそうでしたから,工事費用が安上がりになるとみれましたし,地元での工事ならば,工事施工の件で地元の方達からスムーズに了解が得られるとの見方もありました。

(他のゼネコンの担当者に対する働き掛けの内容についての質問に対して)

機会があってお会いしたり,話をする機会がありましたときに,私は,工事に関連する当社としての条件を話したり,熱心に営業活動をしてきていて,強く受注意欲を持っている旨話したと思います。

(上記働き掛けをした目的につき質問されて)

世間話的なものであったと思います。その相手方は不特定多数であり,誰かに具体的に頼んだといったものではなかったと思います。

(他のゼネコンが多数であったのかという質問に対して)

不特定の方との意味です。人数については,3人位だったかも知れませんし,もっと多かったかもしれませんが,よく覚えておりません。

(工事希望票の提出依頼をしたかの質問に対して)

覚えがありません。


(公社発注の土木工事の入札において,指名希望票を提出する慣行の有無の質問に対して)

慣行とまで言えるかどうかまで分かりませんが,個別的にはあるかも知れません。

(何らかの言辞をして,工事希望票の提出を依頼したというケースがあったのではないかとの質問に対して)

具体的に当社から頼んだことでないなら断定はできませんが,何らかの言辞が依頼したものと取られて,結果的に入札に参加してもられたとのことはあり得ます。

(上記供述が,
本件工事4には当てはまらないのかとの質問に対して)

分かりません。


(本件工事4について,複数のゼネコンの担当者が協力依頼を受けたと供述しているが,本当に分からないのかという質問に対して)

受注意欲を強く持っている旨の話しをゼネコン他社の方にした記憶はあります。しかし,結果的に,その社が指名を受けられたかどうか分かりません。

(被告P6において,公社の入札において,2回目,3回目の入札金額について,確定的な金額を決めて入札に参加するかとの質問に対して)

通常2回目まで,ある程度,この位という価格を定めることはあります。確定的な価格までは無理です。

(被告P2から被告P6に入札価格を尋ねられたことがあったかという質問に対して)

ありません。


(ゼネコン数社の担当者が被告P6の担当者から協力依頼されたという供述があるが,そのような依頼をした記憶があるかとの質問に対して)

その覚えはありません。


(工事予定価格の99.7パーセントの価格を競争して落札したものと考えているのかとの質問に対して)

競争した結果だと思います。


(イ)

被告P2のP167(以下「P167」という。)の供述
証拠(甲サ356)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P167は,昭和54年4月に被告P2に入社し,平成7年6月から同社P110支店営業第一部P111営業所に係長として赴任し,平成9年4月に同営業所の課長補佐となり,本件各工事の入札当時,同営業所の課長補佐として土木及び建築工事に関する営業業務を担当していた者である。


P167は,平成13年9月26日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。(a)

P167は,被告P2が出席した公社が発注する工事に関する

入札,説明会のほとんどについて,実際に出席していた。
(b)

P167は,出席した入札においては,同営業所の所長である

P109から指示に基づき入札をしていた。P167は,P109から入札する金額を指示されると,その金額をシステム手帳にメモするようにしていた。
(c)

上記システム手帳の平成10年9月14日の欄には,①―338,000,000②―331,500,000③100万円切との記載があり,同じ欄内にP11入札町田市δ10:00との記載がある。これ
は,公社が発注した本件工事4の入札に関する当社が組んだJVの入札予定金額である。P167は,本件工事4の入札には,一人で参加し,上記入札予定金額は,入札日の前週の金曜日ころに,P109に指示され,その金額を記載したものである。
指示された金額のうち,
③100万円切りとは,3回目の入
札分の金額であり,2回目最低札の価格から100万円を限度として引き下げた価格をもって入札するとの意味である。
(d)

上記システム手帳の平成11年7月19日の欄には,
10:00P11町田,公共下水入札(P2・P16JV),①―305,000,000-②293,500,000-③292,000,000-との記載がある。これらの記載は,平成11年7月19日に入札のあった本件工事7について,当社と株式会社P16とのJVの3回目の入札までの各入札予定金額である。同入札にもP167のみが出席し,上記システム手帳に記載した入札予定金額は,入札日の前週の金曜日ころ,P109から指示を受けて記載したものである。この件についても,なぜ事前に3回目の入札分まで入札予定金額を所長が定めたのか,その経緯などは知らない。(ウ)

被告P2のP109の供述
証拠(甲サ145)によれば,P109は,平成13年6月8日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市δその2工事とは本件工事4のことである。。

次に,番号29の町田市δその2工事ですが,この物件はAとBのジェイブイ物件で,P6・P19ジェイブイが落札した物件です。この物件の入札日は平成10年9月14日で,まだγ駅第5号工事の入札が行われていない時期でしたので,前の2件と同様,当社としては受注意欲のない物件でした。P6のP160さんは,前からP168営業所にいて,今年の4月ころに所長になられたようですが,当社と同じく町田市を中心に活動している会社の人で,私も親しくしております。また,P160さんの前任の所長だったP166さんも知っております。この物件について,P6から当社に受注したいので協力して欲しいという話があるとすれば,P166さんかP160さんからで,P6はこのδの辺りで工事をしていたという記憶がありますから,何らかの立地条件があって,受注意欲を持っていたのだろうとは思いますが,実際に協力して欲しいという話があったかどうかは記憶がはっきりしません。この物件について,協力して欲しいという話があれば,当社としては受注意欲のない物件でしたから,分かりましたといって協力していると思います。

証拠(甲サ357)によれば,P109は,平成13年10月2日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(ただし,問答形式の部分については,質問の要旨を括弧書きにして示し,回答部分のみを引用する。。)
平成10年9月14日の欄に記載があります「①―338,000,000-②―331,500,000-③100万円以内切との記載につきましては,私の指示に基づき入札会で入札するP167が,私が指示した当社として予定する予定価格を書いたものとみられます。この入札工事物件につきましては,
同じ欄内にP11入札町田市δ
と書いておりますが,

先程提示の当社の入札参加物件一覧表によれば,P11公社が平成10年9月14日に入札執行の町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事とみられます。この略してε工事は,当社は町田市所在のP169株式会社とジョイントベンチャーを結成して入札参加しており,入札結果は,ゼネコンであるP6さんとP19が結成したジョイントベンチャーが落札しております。3回目の入札予定価格として書かれています100万円以内切りとは,2回目最低札の価格から
引き下げられている価格です。

(被告P2における入札金額の決定権者が誰かとの質問に対して)私が定め,P167に指示した金額です。
(本件工事4の入札金額について他社と調整したかとの質問に対して)当社として私独自の考えで定めたと記憶しており,他の入札参加者の担当者と連絡を取って相談するといったことを行った記憶はありません。
(2回目の入札金額は,
②―331,500,000-という金額が入札金額なのかとの質問に対して)
違います。これは,2回目においての引き下げ限度価格です。
(2回目の入札において,1回目の最低札価格が引き下げ限度価格以下であった場合どうするのかとの質問に対して)
③として書かれていますが,1回目最低札価格から100万円の限度で引き下げた価格をもって入札するものです。その趣旨が私からの指示です。
(③100万円切」の意味に関する供述を変遷するのかとの質問に対して)そうです。2回目の入札についての価格基準です。ですから,このケースで札が2回目に進んだ場合には,1回目の最低札の価格いかんによって,予定した3億3150万円を上回る最低札価格であったときには,最低札価格より低い3億3150万円以上の価格をもって入札し,3億3150万円を下回る最低価格だったときには,予定した価格をもっては入札できませんから,1回目最低札の価格から100万円を限度として引き下げた価格をもって入札するとのことになります。(3回目の入札金額はどうするのかとの質問に対して)2回目最低札価格から,2回目入札の場合と同様に,やはり100万円を限度として引き下げた価格をもって入札することになります。入札辞退は発注者に対する手前行う訳には参りません。(被告P2には,受注意欲はないのかとの質問に対して)是非とも取りたいとの物件ではありませんでした。なお,一般的には,積算を行ってみた上での採算ベースがありますし,落札を目指す姿勢は,必ずしも引き下げる幅で表わせるとのものではありません。(P109の供述によると,P109が2回目の入札のために指示した金額について,本件工事4のように,最低限度価格であったり,本件工事7のように,2回目の入札において具体的な入札金額であったりという違いあるが,そのような区別をする理由についての質問に対して)特にありませんが,町田市公共下水道ζ等汚水枝線工事のケースは,P14のP170所長と打合せ済みの価格だったからです。(P167の供述との入札金額に関する説明の違いについての質問に対して)私の説明が正しいものです。定めて指示したのは私ですから。(エ)P88株式会社のP171(以下「P171」という。)の供述証拠(甲サ203,241)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。aP171は,昭和54年5月にP88株式会社に入社し,昭和60年6月に同社P172支店P173営業所長となり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。bP171は,平成13年3月15日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した甲(サ241)。「平成10年度の物件で当社が入札に参加した物件について申しますと平成10年9月14日に入札が行われましたP11公社の町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事をP6・P19JVが参加しておりますが,この物件もP6P162営業所のP160さんからP6が本命となるよう協力依頼を受け,P6側からの連絡のあったと思いますが,その入札金額で入札に臨み,P6が受注できるよう協力いたしております。
(オ)

株式会社P66のP146の供述
証拠(甲サ62)によれば,P146は,平成13年10月3日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
表の番号19番「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事は,落
札したP6が本命でした。この物件では,P6P162営業所のかたから工事希望票の提出依頼を受け申し込んだところ指名され,当社は地元業者P120とJVを組んで当社がJVのスポンサーとして入札に参加した物件です。そして,入札日前にP6P162営業所のかたから当社に札の連絡があって,当社は連絡があった札価格で応札してP6の落札に協力した物件です。工事希望票の提出依頼や札の連絡を当社にしてきたのは,P6のだれであったかまでは思い出せませんが,いずれにしてもP6P162営業所のかたからだったのは確かです。

(カ)

P74株式会社のP174(以下「P174」という。)の供述
証拠(甲サ93,106,189)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。

P174は,昭和42年4月にP175株式会社に入社し,昭和47年8月に同社がP74株式会社に吸収合併された後も勤務を継続し,平成6年4月に同社P176支店第一営業部長兼P177営業所長になり,平成9年4月からは,営業部長の兼任がなくなり,本件各工事の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。


P174は,平成13年4月12日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したな

お,
24番の物件とは本件工事4のことである。。

24番の物件はP11公社発注「下水道工事の物件です。工事
の公表直前,P6P162営業所のP160さんから希望して参加してほしいと頼まれた物件で,当社はP119とJVを組んで申し込みました。P6とP19にどのような本命となり得る条件があったかまでは思い出せませんが,お付き合いで参加した物件ですから,当然,私は本命のP6とP19JVが落札できるように協力して札入れをしています。


(キ)

P53株式会社のP158の供述証拠(甲サ81)によれば,P158は,平成13年9月26日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
表の番号18番「町田市公共下水道ε汚水枝線その2工事は,落
札したP6P168営業所のP160さんかP178さんから工事希望票の提出依頼を受け申し込んだところ,当社が指名された物件だと思います。この物件も当社が受注しようと思って申し込んだ物件ではありませんから,高めの積算で応札して,P6JVの落札に協力しております。

(ク)

P56株式会社のP179(以下「P179」という。)の供述
証拠(甲サ69,142,143)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。

P179は,昭和44年にP56株式会社に入社し,平成4年に同社営業所長になり,平成11年11月にP180株式会社に出向するまでの間,同職を務めていたものであり,本件工事4の入札当時は,上記営業所長として勤務していた者である。


P179は,平成13年5月24日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したな

お,24番」は本件工事4,26番」は本件工事5のことである。。「)「…24番,26番,27番は,私がP56P181営業所に在籍していたときの財団法人P11公社発注の土木物件となります。いまとなっては,記憶もあいまいで,この中のどの物件が本命から受注協力を依頼され,本命からの連絡のあった入札価格で札入れして,本命の落札に協力した物件であるのか,具体的にお話しすることはできません。しかし,先程も話しましたようにこの大半は,本命に協力して本命が落札していると思います。また,ゼネコン以外が落札している物件であっても,ゼネコン以外の業者から入札価格の連絡が来たといったことはありませんし,この場合でもゼネコンの本命から入札価格等の連絡があったものと思います。そして,JVのサブになった場合は,本命業者から希望票を出すように依頼されますが,入札価格などの連絡はJVのメイン会社にすべてを任せることになります。ウ
被告P2のP167のシステム手帳(甲サ342)関係
証拠(甲サ342,356,357)及び弁論の全趣旨によれば,被告P2のP111営業所課長補佐であったP167は,本件工事4の入札日の3日前ころに,同営業所の所長であったP109から,本件工事4において被告P2とP169株式会社とが組んだJVの入札予定金額を指示され,P167において,所持していたシステム手帳に①―338,000,000②―331,500,000③100万円切と記載したことが認められる。そして,上記①②③という記載は,いずれも1回目,2回目,3回目,

の各入札における入札予定金額を示すものであり,
③100万円切と
は2回目の入札における最低入札金額から100万円を減じた金額をもって入札することを意味するものとして,記載されたものと認められる。そうであるとすると,P167が,本件工事4の入札日の3日前ころ,P109から,被告P2が組むJVの同入札における1回目,2回目の具体的な入札予定金額を指示されるとともに,3回目の入札に至った場合には2回目の最低入札金額から100万円の限度で減じた金額をP167において記載することを指示したという事実が認められる。


検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イ及びウの認定事実を踏まえて,以下検討することとする。
被告P6のP160は,本件工事4を被告P6とP19株式会社とが組んだJVが落札し,受注したことにつき,他の入札参加業者として指名されたゼネコン等との間で受注調整行為をしておらず,上記落札は適正な競争の結果である旨供述する。
しかしながら,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事4は,被告P6が組んだJVにおいて,工事予定価格3億3394万1000円の99.71パーセントに当たる3億3300万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事4につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事4の入札に参加したJVの主となる建設業者のうち,
P74株式会社,株式会社P66,P56株式会社,
P88株式会社,P89株式会社,P53株式会社及び被告P2は,本件慣行が適用されるゼネコンであり,各社で営業を担当していたP171,P146,P174,P158は,本件工事4においても,被告P6が本件慣行に基づいて受注予定者となり,何らかの受注調整行為がなされ,各ゼネコンにおいて,被告P6が組むJVが落札できるよう協力したことを認める供述をし,P179においても,受注調整行為があったことまでも否定する供述はしていない。さらに,前記ウのとおりの認定事実からすれば,被告P2も,本件工事4を受注しようとする積極的な意図がなく,入札前には1回目の入札予定金額のみならず,3回目の入札予定金額に至るまで決められていたのであって,他方,被告P2の上記各入札予定金額がどのように積算等されたのかを明らかにしていないことからすれば,上記入札予定金額は,受注予定者となるべきゼネコンから依頼された入札金額であったと認めるのが相当である。
また,本件工事4の入札においては,本件慣行が適用されないP164株式会社及びP165株式会社がJVの主となる建設業者として入札に参加しているところ,P164株式会社とP182株式会社が結成したJVが3億4900万円,P165株式会社とP123株式会社とが結成したJVが3億6000万円と,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札していることからすれば,上記各建設業者が,入札に当たり,あえて高めの金額で入札をしたものと推認することができる。
以上を総合すれば,本件工事4については,被告P6の担当者は,施工場所が自社の営業所から近いことから,受注を希望し,本件慣行が適用されるゼネコンに対し被告P6が受注を強く希望していること等を説明するとともに,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名がなされた後,遅くとも入札前までに,入札に参加するJVの主となる本件慣行が適用されるゼネコン7社(P74株式会社,株式会社P66,P56株式会社,P88株式会社,P89株式会社,P53株式会社及び被告P2)の担当者に対し,被告P6が結成したJVが落札できるよう協力を要請し,上記ゼネコン7社との間で,各ゼネコンが結成したJVに入札してもらいたい金額を伝えたり,又は見積金額を尋ねて確認したりするなどし,本件工事4に係る入札に参加するゼネコンの間において,被告P6が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととする合意個別談合)

がなされ,
また,本件慣行が適用されない建設業者2社(P164株式会社及びP165株式会社)の担当者に対し,上記ゼネコン7社と同様の方法により,被告P6が結成したJVが落札できるよう協力を要請し,上記2社の同意を得,上記談合に基づいて,被告P6が結成したJVが,予定どおり本件工事4を落札したと認められる。
(5)

本件工事5
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P7は,本件工事5につき,過去に関連する工事の施工実績を有
していたことから,受注を希望し,P25に受注意欲があることを伝えて基本合意により受注予定者となった。被告P7は,公社が本件工事5の入札予定を公示した後,10社程度のゼネコンに対して,被告P7が受注意欲を有しており,受注予定者となる有利な事情を備えていることを説明し,工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けた各ゼネコンは,工事希望票を提出した。公社が指名を行った後,被告P7は,株式会社P20とJVを組み,入札までの間に,被告P7の担当者が,改めて,公社から指名を受けたゼネコン(P74株式会社,P52株式会社,P56株式会社,株式会社P71,P61株式会社,P57株式会社,被告P8)に対し,被告P7が受注できるよう協力を依頼し,受注予定者であることを認めてもらった。また,被告P7は,基本合意に含まれていないP183株式会社及びP117株式会社に対しても,本件工事5のJV説明会後に被告P7が受注を希望しており,その受注に協力する旨依頼し,その了承を得た。被告P7は,入札日までの間に本件工事5の入札に参加する各建設業者うち,数社の担当者から各社の見積価格の連絡を受けたほか,
残りの建設業者の担当者に対しては,
入札直前までに,
被告P7の入札予定金額を伝えるなどして,被告P7と株式会社P20とが組むJVに本件工事5を工事予定価格近似の金額で落札させた。(イ)

被告P7の主張
被告P7は,本件工事5につき,公社から指名を受けた他の建設業者
又はそれらが結成したJVの協力を得て落札したものではない。
(ウ)

被告P8の主張
被告P8に関する部分は否認する。


公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P7のP184(以下「P184」という。)の供述
証拠(66,139)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。

P184は,昭和53年1月,被告P7に入社し,平成8年6月から同社P185営業所長を命ぜられ,本件各工事の入札当時,同営業所長として,P185営業所の営業統括責任者の地位にあったものである。

P184は,平成13年5月10日及び同月11日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
(a)

本件工事5は,平成7年ころに被告P7と株式会社P20とが

組んだJVが施工した下水道工事に係る下水管に下水管を繋げる工事であり,被告P7が受注予定者となるのに有利な事情を有していた工事であったことから,受注を強く希望していた。
そこで,P184は,平成11年2月ころ,平成7年ころに被告
P7が本件工事5の関連工事を施工した実績が記載された資料を持参して,P25を訪れ,本件工事5の受注予定者になりたいとの相談をした。P25は,

他にも他社が持ってきているけど,この立地があれば良いんじゃない。

というような回答をしたことから,P184は,被告P7が受注予定者になれるとの心証を得た。
その後,P184は,本件工事5の受注を希望していた他の建設
業者の担当者から

P184さん,よかったね。

と言われたことから,この担当者が,P25のもとに相談をしに行った際,P25から被告P7が受注予定者になるために有利な事情を有していることを言われ,当該建設業者が受注をあきらめたと考えた。
また,P184は,P25に相談に行った後,念のため,P29
株式会社のP31のもとを訪れ,被告P7が受注予定者となるための有利な事情を有していることやP25への相談をした経緯,相談結果を伝え,P31のもとに本件工事5の受注を希望する他の建設業者が相談をしに来た場合には,
上記内容を伝えるよう依頼をした。(b)

P184は,本件工事5の公示前後,本件工事5の入札に参加

すると考えられるゼネコン約10社に対し,被告P7が受注予定者となる有利な事情を有していることを説明し,受注予定者となることを理解してもらい,可能であれば,工事希望票の提出を依頼していた。
(c)

P184は,公社による指名後,指名されたゼネコンのうち,

工事希望票の提出を依頼していない業者に改めて,被告P7が受注予定者であり,受注に協力するよう依頼した。
具体的には,P74株式会社については,公社による指名後,同
社P177営業所長のP174に直接会い,協力を依頼し,了承してもらった。また,P52については,公社の指名後,P156に会い,協力を依頼し,了承してもらった。P56株式会社については,本件工事5の公示前,P179に対し,電話で協力を求め,工事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。株式会社P71については,本件工事5の公示後,同社P154営業所長のP153に会い,協力及び工事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。P61株式会社については,本件工事5の告示後,同社P186支店のP187(以下「P187」という。)に会い,本件工事5の協力を求めるとともに,工事希望票の提出を依頼し,了承してもらった。P57株式会社については,同社P107営業所長のP104又はP188どちらかに対し,
訪問し又は電話で,
理解と協力を依頼し,
了承してもらった。
(d)

P183株式会社及びP117株式会社は,いずれも横浜に本

社を構えている建設会社であり,被告P7も本社が横浜にあったことから,付き合いがあった。P184は,本件工事5のJV説明会後,P183株式会社についてはP189支店長に,P117株式会社についてはP190営業所長に,各協力を依頼し,了承してもらった。
(e)

P184は,本件工事5の入札に参加するJVの主となる建設

業者においては,各社で積算を行い,見積りをすると考え,入札会場において,各社の入札金額を確認すれば足りると考えていたことから,各建設業者に対して入札金額の連絡等はしなかった。P184は,入札日の前,数社の建設業者の担当者から,電話で,各社の見積金額が示され,その金額で入札してよいかと確認されたことから,

それでお願いします。

と回答した。P184は,入札の約1時間前,入札会場のロビーにおいて,見
積金額の確認をしていない建設業者の担当者に会ったところ,各担当者から自社の見積りを行っていないことから,被告P7の入札予定金額を伝えるよう求められたため,各担当者に被告P7の入札金額を伝えたほか,
自社で見積りをしていた建設業者の担当者からは,
当該見積金額による入札の確認を求められたため,その場で同金額による入札をしてよいことを確認した。
以上の経緯により,被告P7と株式会社P20とが組んだJVが
本件工事5を落札し,受注することができた。
(イ)

株式会社P71のP153の供述
証拠(甲サ84)によれば,P153は,平成13年6月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道η汚水枝線その14工事とは本件工事5のことである。。)
31番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝線その14工事は,当社とP191とのJVで入札に参加し,P7とP20のJVが落札しております。P7のP184所長は,当営業所のP192前所長と年齢が近いということもあり,その関係で,今でも何回かは当営業所に出入りされておりまして,そのときにでも,工事希望票を出すように頼まれて申し込んだのではないかと思います。P7から入札価格の連絡があったかどうかまでは覚えておりませんが,結果的には,P7JVが受注しております。

(ウ)

P61株式会社のP187の供述
証拠(甲サ8,91)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。

P187は,昭和41年3月15日,P61株式会社に入社し,平成6年1月1日付けで同社P193本社P186支店営業部長を命ぜられ,平成13年1月31日に退職するまで,同支店において営業業務に従事していた者である。なお,
27番の物件とは,本件工事
5のことである。


P187は,平成13年6月18日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。27番の物件は,当社としては条件はありませんでしたので社内的に受注目標物件として掲げている物件ではありませんでした。この物件は,叩き合いになった記憶もありませんので,受注したP7から希望票を出してほしいと依頼された物件かも知れません。といいますのも,この物件については,指名実績を作る目的や社内的に受注目標物件として掲げていない物件でして,私や支店長の判断で希望票を提出した記憶はないからです。したがって,この物件は落札したP7から希望票を出してほしいと依頼されていると思います。P7から依頼があったとすれば,P7P185営業所のP184所長からではなかったかと思います。そして,この物件は当社がP194とJVを組んで当社がJVのメイン業者となっています。入札日の前日までにP7P185営業所のP184所長から札の連絡をもらって,当社はその価格で応札してP7が落札できるよう協力していると思います。(エ)

P74株式会社のP174の供述
証拠(甲サ93)によれば,P174は,平成13年4月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
28番の物件と
は,本件工事5のことである。。

28番の物件は,P11公社発注「下水道工事の土木物件です。
この物件は,P7とP20がJVを組んで落札した物件ですが,工事の公表直前,P7のP184P185営業所長から近隣で前もやっているとの条件を提示され,希望して参加してほしいと頼まれた物件で,当初はP195とJVを組んで申し込みました。当社はお付き合いで参加した物件ですから,当然,私は本命のP7とP20JVが落札できるように協力して札入れしています。

(オ)

P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)によれば,P104は,平成13年5月24日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
21番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝線その14工事は,当社はP108とのJVで入札に参加し,ゼネコンのP7とP20JVが落札しております。これもP7から受注意欲をピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲のない工事であり,受注意欲がないということは分かったことと思いますが,概算で積算し,入札に臨み,結果的にはP7のJVが入札できるように協力したことになります。

(カ)

P52株式会社のP156の供述証拠(甲サ164)によれば,P156は,平成13年6月5日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
18番の平成11年3月23日入札の「町田市公共下水道η汚水枝線その14工事は,当社とP196とのJVで入札に参加し,P7とP20のJVが落札しております。この工事は,JVのスポンサーとなったP7P185営業所のP184所長からであったと思いますが,受注意欲があるということをお願いされ,当社は,それを理解し,工事希望票を出しました。そして,入札の前日までにはP7から入札価格の連絡を受け,その価格で入札に臨み,P7のJVが落札できるよう協力しました。

(キ)

被告P8のP170(以下「P170」という。)の供述
証拠(甲サ240,295)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。

P170は,平成13年当時,被告P8P197営業所所長として勤務していた者であり,本件工事5の入札当時,同営業所において土木工事の営業に従事していた者である。なお,町田市公共下水道汚水枝線その14工事とは,本件工事5のことである。


P170は,平成13年5月10日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。

入札一覧表の方で説明しますと,27番の町田市公共下水道汚水枝線その14工事については,P7のP184P185営業所長から工事希望票の提出をお願いされたような記憶があります。


(ク)

P56株式会社のP179の供述
証拠(甲サ69)によれば,P179は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,前記(4)イ(ク)のとおり供述し,記憶があいまいではあるが,本件工事5についても,受注予定者に協力し,受注予定者となった業者が受注したと思う旨供述したことが認められる。

検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,以下検討することとする。
被告P7のP184は,本件工事5について,関連工事の施工実績を有していることから,受注を強く希望し,P25やP31に対して受注予定者となるべく,本件慣行に従った方法により相談をし,さらに,ゼネコン約10社に対して受注への協力を依頼したほか,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名後には,改めて指名された建設業者に対して被告P7の組むJVが落札できるよう協力を依頼し,入札前までに,入札に参加する各JVの入札予定金額を確認したり,被告P7の入札予定金額を伝えるなどの方法により,受注調整を行った旨供述している。そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事5は,被告P7株式会社と株式会社P20とが組むJVにおいて,工事予定価格4億9460万円の99.06パーセントに当たる4億9000万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事5につき個別談合が行われたことが強く疑われる。さらに,本件工事5の入札に参加したJVの主となるゼネコンの担当者であったP153,P187,P174,P104,P156及びP170は,本件工事5において,各社においては,本件工事5を受注する意欲がなかったが,被告P7が受注意欲を有するということを説明された旨供述し,P153,P187,P174,P156及びP170は,工事希望票の提出を依頼された旨供述し,P187及びP156は入札金額を伝えられた旨供述している。加えて,本件工事5における入札金額は,被告P7と株式会社P20とが組んだJV以外の各JVは,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札していた。以上を総合すれば,本件工事5については,被告P7の担当者が,関連工事の施工実績を有することから本件慣行における受注予定者となることを強く希望し,P25やP31に対して説明しその理解を求め,本件慣行の適用があるゼネコン10社に対して被告P7が受注予定者となることの理解を求めた上で工事希望票の提出を依頼し,公社による指名後,遅くとも入札前までに,
被告P7が工事予定価格に近似の金額で落札できるよう,
改めて指名された建設業者のうち,本件慣行が適用されるJVの主となるゼネコン7社(P74株式会社,P52株式会社,P56株式会社,株式会社P71,P61株式会社,P57株式会社,被告P8)に対し,各ゼネコンが結成したJVの入札予定金額を確認したり,入札して欲しい金額を伝えるなどの方法により,被告P7が結成したJVが工事予定価格に近似する入札金額により本件工事5を落札できるよう協力する旨依頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P7が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者2社(P183株式会社,P117株式会社)各担当者に対し,被告P7が結成したJVが落札できるよう協力を依頼し,
上記2社の同意を得,
上記談合に基づいて,
被告P7が結成したJVが,予定どおり本件工事5を落札したものと認められる。
(6)

本件工事6
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P9は,P21株式会社と組んだJVが本件工事6の前年度の下
水管工事と一体とされる立坑工事を落札していたという,受注予定者となる有利な事情があり,基本合意が成立しているゼネコンは,本件工事6について被告P9が受注予定者であると認識していた。被告P9及びP21株式会社は,公社が本件工事6を公示した後,ゼネコンに対し,工事希望票の提出を依頼し,依頼を受けた各社は,基本合意に基づき,被告P9及びP21が受注予定者であるとの認識の下,工事希望票を提出した。公社は,Aランクの格付けの建設業者20社を指名したが,JVで主となる建設業者は,いずれも受注調整の仲間であるゼネコンであった。被告P9及びP21株式会社は,入札前までに指名を受けた各ゼネコンに対し,被告P9が受注を希望していることを伝え,入札してもらう金額を連絡し,又は入札予定金額を確認し,若しくは被告P9とP21株式会社とが組むJVの入札予定金額の確認を受けることにより,被告P9以外の上記各ゼネコンにおいて,入札において,被告P9が組むJVよりも高い金額であることを認識した上で同金額で入札し,被告P9が組むJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。(イ)

被告P9の主張
被告P9が受注した本件工事6については,原告らが主張するような
個別談合が行われた事実はなく,その証拠も存しない。また,原告らの主張を前提としても,P64株式会社,P74株式会社,株式会社P73,P143株式会社,株式会社P45,P198株式会社,P90株式会社は,
本件工事6において,
競争関係にあったことは明らかである。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P9のP199(以下「P199」という。)の供述
証拠(甲サ111)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P199は,昭和48年4月,被告P9に入社し,平成8年2月に同社P200土木営業所当時の名称は土木本部)

の営業部長となり,
平成11年7月に上記土木本部が土木P201支店に組織変更すると,同支店P200土木営業所の副所長に昇任し,本件各工事の入札当時,
被告P9の多摩地区における営業業務に従事していた者である。

P199は,平成13年6月12日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,本件工事6は,被告P9のダミコンが設計段階で参加しており,近隣での施工実績も有していたことから,受注を希望して,営業活動を行っていた土木工事であった旨供述した。

(イ)

P21株式会社のP202(以下「P202」という。)の供述
証拠(甲サ78,234)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

P202は,平成10年4月から,P21株式会社P203土木支店P204土木営業所において,多摩地区に所在する自治体などが発注する土木工事に関する営業に従事していた者で,同年9月1日から営業所長の役職にあった者である。


P202は,平成13年6月14日に公正取引委員会において行わ
れた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述した。
(a)

本件工事6は,被告P9とP21株式会社とがJVを組んで施

工した立坑工事から発進したシールド工事であり,被告P9との間で,本件工事6が発注され,両社が公社に指名された場合には,再度JVを組むという合意ができていた工事であった。
(b)

財)P11公社平成11年5月13日とのファックス


(甲サ78)は,P21株式会社P204土木営業所から株式会社P73のP150営業所にファックスしたものである。
P202は,株式会社P73,P69株式会社,P91株式会社
が本件工事6に関心を持っていると感じていたことから,本件工事6が公表された際に,電話で連絡をするとともに,各社にファックスで工事の件名等について連絡したものである。
P202は,上記ファックスにより,P21株式会社が本件工事
6の受注を強く希望しており,営業活動を行っていることを理解してもらい,
できれば工事希望票を提出してもらいたいと考えていた。
P202は,土木工事の公表を伝えることにより,明確に工事希望票の提出を依頼しなくても,各社において,P21株式会社が工事希望票の提出を希望しているとの願望を,各社において理解してくれると思っていた。
(c)

本件工事6は,被告P9がJVの主となる建設業者としてJV

を結成し,入札に参加していることから,入札金額の積算については被告P9に一任していた。
P202は,
本件工事6の入札に行き,
被告P9からはP205が来ていた。
(d)

公社が発注する土木工事については,ゼネコン間において,以

前行った工事の関連工事であったり,近隣に施工実績があったり,提携コンサルタントが指名に入ったりしている会社が受注予定者となり,受注予定者となった会社が受注できるよう協力するという慣行があった。
(ウ)

株式会社P73のP149の供述
証拠(甲サ92)によれば,P149は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道θ幹線その2工事とは本件工事6のことである。。)
次に,23番の平成11年6月14日に入札が行われました町田市公共下水道θ幹線その2工事についてご説明いたします。この物件は,先ほど21番の物件についてお話しましたが,この物件は21番の継続工事でありまして,当然,21番の工事を施工した実績のあるP9とP21に本命となるための強い条件がありましたことから,両者が本命となって受注いたしております。この物件に関する申込みと協力の依頼は,公示後に,P21P204土木営業所長のP202さんから私に対してありまして,私はその依頼に応じて申込みをした物件であります。この物件も,21番の物件同様,JVのサブ業者として参加したため,当社は札価格等の折衝は行っておりません。(エ)

P64株式会社のP206(以下「P206」という。)の供述
証拠(甲サ186,187)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。

P206は,昭和46年4月に,P64株式会社に入社し,平成7年4月に同社P207支店P208営業所に営業課長として赴任し,平成13年4月に同営業所長に就任し,本件各工事当時,上記営業所において,多摩地区の土木工事の営業業務に従事していた者である。

P206は,平成13年6月15日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。お示しの文書は,この書面にも入札日の記載がございますが,平成11年6月14日に入札が行われました町田市公共下水道θ幹線その2工事に関する書面でありまして,この物件は,当社も入札に参加した物件でありまして,入札の結果,P9とP21のJVが落札した物件でありました。この文書の左上に黒くマジックで塗りつぶして消してある箇所がございますが,この文書を透かして見ますと,「99年5月14日18時36分,P9㈱P200営業所と印字がありますので,この物件発注の公表の翌日である平成11年5月14日に,この物件を落札したP9P200営業所から当社P208営業所宛てにファックス送信されたものであることが分かります。
このファックス文書の意味としましては,今まで私がお話してきましたように,この物件に関し,P9P200営業所の方から当社に対して,この物件に関して工事希望票を提出して入札に協力してほしい旨の連絡がなされ,当社はそれに応じて入札に参加し,P9とP21JVの落札に協力したものであると考えます。
この工事は,先ほどP9と当社のJVが落札した物件でご説明致しましたように,下水道の立坑工事の後に発注される下水管シールド工事であり,この工事の前年度に立坑工事が発注されており,今回の落札業者と同じP9とP21JVが落札しております。ご説明いたしましたとおり,立坑工事と下水管本体工事は一体のものと考えておりますので,P9とP21に強い立地条件が備わり,平成11年に発注された下水道本体工事は,P9とP21が本命業者と認められ,落札したものでありました。

(オ)

P64株式会社のP209(以下「P209」という。)の供述
証拠(甲サ188)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ
る。

P209は,昭和43年3月にP64株式会社に入社し,平成11年4月1日から同社P207支店P210営業支店P208営業所長に異動になり,本件工事6の入札当時,同営業所長として勤務していた者である。


P209は,平成13年6月20日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述した(甲
サ188)

40番に記載のございます平成11年6月14日に入札が行われました町田市公共下水道θ幹線その2工事に関しては,私がP208営業所長になりまして間がない入札だったものですから,正直申しまして,ほとんど記憶がないのが現状であります。お示しの文書は,この物件の入札の日程等を記載したものであります。この左上に黒マジックで塗りつぶしている個所がございますが,私は目が悪くてちょっと見にくいのですが,ここに審査官がおっしゃるには,この物件の公表の翌日の平成11年5月14日にP9P200営業所から送信された旨印字があるとのことですので,物件の日程については,発注者から掲示されますし,建通新聞等でも情報を入手できますので,あえてこの様な文書をファックス送信して来るということは,入札に参加して協力して欲しいという意味であると考えますが,実際は,申しましたとおり記憶がないのが現状でございます。(カ)

株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)によれば,P126は,平成13年9月18日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
次に,29番のP9・P21JVが落札した平成11年6月入札の「町田市θ幹線その2工事につきましては,20番の物件でご説明しましたが,20番の立坑物件と一体の工事であり,この29番の下水道本体工事の物件は,20番で落札したP9・P21JVが本命となったものでした。この物件も20番の物件で当社が指名に入ったことから,お付き合いするという私の判断で入札に参加いたしました。そして,入札日前にP21P204土木営業所のP202さんからだったと記憶しておりますが,入札価格に関する電話が私にありまして,当社の見積り価格をお伝えいたしました。入札には,お伝えした迷惑のかからない価格で応札し,P9・P21JVの落札に結果的に協力いたしました。」(キ)

株式会社P48のP127の供述
証拠(甲サ86,112,233)及び弁論の全趣旨によれば

次の

事実が認められる。

P127は,昭和42年3月に株式会社P48に入社し,平成元年9月に同社P125営業所に配属になり,本件各工事の入札当時,公社が発注する土木工事の営業業務に従事していた者である。


P127は,平成13年6月29日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,次のとおり供述した。次に29番のP9とP21のJVが落札した「町田市公共下水道θ幹線その2工事についてご説明した,前に同JVがこの物件の立坑工事を施工しており,この工事は下水管の本体工事でありました。通常,私の経験では立坑物件を落札したゼネコンが,次に発注される下水管本体の工事を受注するのが当然であると考えられており,
また,
採算面においても立坑物件が落札したゼネコンが有利でありますことから,当社としては,当社の札入れ価格を高めに設定して入札に参加しておりました。なお,当社が高めに設定した見積もり上がりをP9の方にお伝えしたかも知れません。


(ク)

株式会社P71のP153の供述
証拠(甲サ84)によれば,P153は,平成13年6月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
33番の平成11年6月14日入札の「町田市公共下水道θ幹線その2工事は,P48と当社のJVが入札に参加し,P9とP21のJVが落札しております。この工事は,当社としては勉強しておりませんでしたが,あわよくば受注意欲のある業者とひっつければという気持ちで工事希望票を出したと思います。この工事は,シールド工法の工事であり,P9や他の2社くらいは希望している業者,勉強している業者がいるという話は聞いておりました。P48も勉強しているという話を聞いておりましたので,当社は指名の後,P48に対してJVを組んでもらえるようお願いしております。

(ケ)

P74株式会社のP174の供述
証拠(甲サ93)によれば,P174は,平成13年4月12日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
37番の物件は,P11公社発注「下水道工事の土木物件です。
この物件は,P9とP21がJVを組んで落札した物件ですが,工事の公表直前,P9のP199P211営業所長から希望して参加してほしいと頼まれた物件で,当社はP212とJVを組んで申し込みました。当社は,お付き合いで参加した物件ですから,当然,私は本命のP9とP21JVが落札できるよう協力して札入れしています。

(コ)

P50株式会社のP213(以下「P213」という。)の供述
証拠(甲サ138,290,325)及び弁論の全趣旨によれば,次
の事実が認められる。

P213は,昭和44年4月にP50株式会社に入社し,昭和55年7月に同社P214支店P215営業所に異動になり,平成5年に同営業所営業課長に,平成8年に同営業所次長に昇格し,本件各工事の入札当時,同営業所次長として勤務していた者である。


P213は,平成13年8月30日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。その他には,当社はP9とP21のジョイントベンチャーが落札した平成11年6月14日に入札執行の町田市公共下水道θ幹線その2工事略して「θ幹線工事の入札にもP69とのジョイントベンチャーを組み参加しております。θ幹線工事は,その立坑工事のいわゆる続きの工事であり,その立坑工事を手掛けたP9が最も強い立地を持つ者でありましたが,当社の場合,その工事現地の近くで平成7年ころ終えた東京都水道局発注のシールド工法による上水道工事を手掛けた経過がありまして,これがP9さんに次ぐ立地になると考えられました。工事希望票の提出方をP9さん等ゼネコンの担当者から依頼はなかったと記憶しており,当社は,P9さんが事故を起こすなどしたなら,受注を期待できるとの思いでP11公社へ工事希望票を提出したと記憶しております。そして,指名を受けられ,そのジェイブイ説明会の折りであったか,その説明会後ジェイブイ申請を行うまでの間であったか,いずれか記憶がはっきりいたしませんが,P199さんかP205さんのいずれから,私は

立坑を行っておりますので,よろしくお願いします。

というような,θ幹線工事につき挨拶を受けたことを覚えております。これに対して私は,同社が立坑工事を手掛けたことを承知しておりましたし異存なかったですから,分かりましたと答えております。その後,私はP9さんからのその依頼についてP216所長に報告しておりますが,P216所長も異存なかったと記憶しております。
P9さんらジョイントベンチャーからの入札価格に関する依頼につきましては,私は依頼を受けた覚えがありませんから,あったかどうか分かりません。私はP216所長から指示された価格をもって当社らジョイントベンチャーとして入札しております。

このθ幹線工事についての開札結果表に記載されていますとおり,当社らジョイントベンチャーとして10億9500万円で1回目を入札したと思います。これがP9さんらジョイントベンチャー側から依頼されたものかどうかははっきり申せません。P216から指示された価格は1回目分のみであったと記憶しております。ちなみに入札が2回目に移ったケースでは,1回目分のみ用意してあったときでも,担当者は大体,前回最低札の価格からどの位まで下げればほぼ落札とならないかの見当を金額規模により持っています。このケースならば500万円くらいかと思います。各ジョイントベンチャーの入札価格を見ますと,かなり接近しており,P9さんらジョイントベンチャーが相指名のジョイントベンチャー側に頼んだものとの可能性はありますものの,そうとは断言できません。当社はP69さんとのジョイントベンチャーにより入札参加しておりましたが,同社のこの件を担当された方はP217さんでした。同社もこの件はP9さんが強いとの事情は承知しており,同じゼネコン仲間でもありますから,当社らジョイントベンチャーとして,この物件についてP9さんらジョイントベンチャーの落札に協力したとしても異存ないはずで,そのあたりはジョイントベンチャーの親会社である当社に任せていたと記憶しております。ウ
検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,以下検討することとする。
被告P9のP199は,被告P9が,本件工事6について,過去に関連工事の施工実績があり,施行場所の近くに自社の施設を有していたことから,受注を強く希望し,そのための営業活動を行っていたことは供述するものの,本件工事6の入札に当たり,何らかの受注調整行為が行われていたか否かについては具体的な供述をしていない。他方,P21株式会社のP202は,本件工事6が発注される以前から本件工事6が発注される可能性を考慮し,被告P9とJVを組むことについて同意を得ていたほか,本件工事6が発注されると,受注意欲を有すると考えられるゼネコン3社(株式会社P73,P69株式会社,P91株式会社)に対し,個別にP21株式会社と被告P9とが受注を希望していることを示し,かつ,できるのであれば工事希望票を提出してもらう意図で,本件工事6に係るファックスを送信した旨供述する。そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事6は,被告P9とP21株式会社が組むJVにおいて,工事予定価格10億8681万4000円の99.37パーセントに当たる10億8000万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事6につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,
本件工事6の入札に参加したJVを組む各ゼネコンの担当者らによると,本件工事6については,被告P9とP21株式会社が受注予定者となるための極めて有利な事情を有していたことを認識していた旨供述している。また,同担当者であるP149は,上記P202の供述と一致する供述をしており,入札に参加したゼネコンである株式会社P48のP126は,P202から工事希望票の提出を依頼された旨供述し,P127も,被告P9に対して自社の見積金額を伝えた可能性があることを供述する。さらに,相指名ゼネコンの担当者であるP174も,入札時に,被告P9とP21株式会社とが組んだJVの落札に協力した旨供述している。加えて,本件工事6の入札においては,被告P9とP21株式会社とが結成したJVと株式会社P48と株式会社P71とが結成したJV以外の8JVの入札金額は工事予定価格を上回る金額であり,各入札金額も接近しているといえる。
以上を総合すれば,本件工事6については,被告P9とP21株式会社が,本件工事6が公表される以前から,両社が結成するJVに受注させるよう協力することに同意し,本件工事6が公表された後,上記両社の担当者において,本件慣行に従って,他の本件慣行の適用のあるゼネコンに対し,被告P9とP21株式会社が本件工事6の受注を希望していることを伝え,両者が結成するJVが落札できるよう協力を求めるとともに,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名後入札までの間に,本件工事6に参加するJVの主となるゼネコン9社(P143株式会社,株式会社P45,株式会社P48,P64株式会社,株式会社P114,P50株式会社,P90株式会社,P74株式会社,P91株式会社)の担当者に対し,被告P9とP21株式会社が組んだJVが落札できるよう協力を要請し,上記ゼネコン9社との間で,入札金額を伝えたり,又は見積金額を確認するなどし,被告P9が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,この同意に基づいて,予定どおり本件工事6を落札したものと認められる。
(7)

本件工事7
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P8は,本件工事7につき,同工事が特定の工法(アイアンモー
ル工法)を使用していた関係で,設計の手伝いや工法の検討書の作成に関与していたことから,受注を強く希望し,基本合意により受注予定者となった。被告P8は,
各ゼネコンに対し,工事希望票の提出を依頼し,
上記ゼネコンもこれに応じて工事希望票の提出をした。公社により本件工事7に係る入札に指名された建設業者のうち,少なくともJVの主となる建設業者になる8社は,基本合意が成立したゼネコンであった。公社による指名がされた後,
被告P8は,
P22株式会社とJVを組んだ。
被告P8は,入札前までに,指名を受けた各ゼネコンに対し,自社が受注予定者であることを伝えるとともに,
入札を希望する金額を伝えるか,
又は各ゼネコンがJVの主となるゼネコンとなるJVの入札予定金額を確認し,上記各ゼネコンにおいても,被告P8とP22株式会社が組むJVの入札金額よりも高額になることを認識した上で,入札に参加し,上記JVが工事予定価格近似の金額により落札できるよう協力した。また,基本合意関係がない建設業者であるP218株式会社とP219株式会社のJV,P115株式会社とP220株式会社とのJVは,被告P8が受注を希望していることを認識し,入札において,自社の組むJVが被告P8の組むJVの入札金額よりも高額になることを認識した上で,入札に参加し,同JVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)

被告P8の主張
被告P8が結成したJVが落札した本件工事7につき,原告が主張す
るような談合行為が行われた事実はなく,
そのような証拠も存在しない。
また,原告の主張によっても,他の相指名業者であるP85株式会社,P77株式会社,P92株式会社,P218株式会社,P115株式会社を主たる建設業者とするJVが被告P8又はP22株式会社から協力を求められたという主張,立証はなく,上記5JVとの間では競争行為が行われていた。
(ウ)

被告P2の主張
被告P8が被告P2に入札してもらう価格を連絡し,又は被告P2の
入札価格を確認したこと,被告P2が自社の入札価格が被告P8が結成したJVの入札価格よりも高い価格となることを認識して入札したことについては否認する。
(エ)

被告P1の主張
被告P1がP121株式会社と結成したJVが入札に参加したことは
認め,その余は否認する。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P8のP170の供述証拠(甲サ240)によれば,P170は,平成13年4月20日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述したことが認められる。

本件工事7については,P22株式会社の社長から,設計が発注される前に公社からJVで発注されそうな土木工事があるという情報を得たのが,その営業活動を始めたきっかけであった。


P22株式会社は,被告P8の下請会社が加入している会の会員会社であり,社長が地元で顔も広く,本件工事の実施設計が発注されたという情報を得られた。被告P8は,設計会社から本件工事4においてアイアンモール工法を使用すると聞いたことから,設計の手伝いや工法の検討書の作成に関与した。このような経緯から落札することができた。

(イ)

被告P2のP109の供述
証拠(甲サ145,176,357)によれば,P109は,平成1
2年12月21日,平成13年6月8日及び同年10月2日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,
次のとおり供述したことが認められる。

本件工事7は,被告P8とP22株式会社とが組んだJVにより落札された工事である。
P109は,本件工事7が被告P8のグループ会社が製造している特殊な機械を使用する工事であることから,被告P8が受注を希望しているかどうかを確認するため,親しかったP170に対し,
お宅でやるの,やらないなら,機械を貸してもらってうちがやるよというような質問をして,その応答振りから,被告P8が熱心に営業活動をしており,受注する意思を有していることを知った。
また,
P170から被告P8が受注を希望している旨の連絡があり,その協力を依頼された。b
P109は,
P170から,
1回目から3回目までの入札において,
被告P2が組むJVの入札金額を伝えられ,その金額で入札する旨P167に指示した。P167のシステム手帳の平成11年7月19日の頁(甲サ176,343)には,
10:00P11,町田,公共下水,入札(P2・P16JV)とあり,さらに,①②③」
,,として金額が記載されている。同記載は,本件工事7の入札における被告P2の結成したJVの入札予定金額であり,P167に対して入札を指示した際にP167が記載したものであると思われる。P109は,P170との間で,本件工事7の入札前に被告P2が結成したJVの入札金額について連絡をとっていた。ただし,その方法について,P170から被告P2の入札金額が伝えられたものであったか,被告P2が見積りをしてP170に確認してもらった金額であったかは,覚えていない。cP109は,本件工事7の入札後,P170から,電話で被告P8が受注できたことについて礼を述べられた。電話連絡帳甲サ176)(の「7月19日,16時30分P14P170

P11の件で,落札させていただき,ありがとうございました。

との記載は,そのことが記されているものである。

(ウ)

被告P2のP167の供述
証拠(甲サ356)によれば,P167は,平成13年9月26日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述したことが認められる。

P167のシステム手帳の平成11年7月19日の欄の10:00P11町田,公共下水入札(P2・P16JV),①―305,000,000②293,500,000-③292,000,000-との記載は,本件工事7について,平成11年7月19日に入札の執行があったこと,同入札における被告P2と株式会社P16とが組んだJVの1回目から3回目まで各入札における入札予定金額である。

P167は,一人で本件工事7の入札に出席しており,上記システム手帳へは,入札執行日の前週の金曜日ころ,P109から指示を受けた金額を記載したものであり,同入札会においては,P109の指示に従い被告P2が結成したJVに入札させた。

(エ)

P18株式会社のP135の供述
証拠(甲サ349)によれば,P135は,平成13年5月15日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事とは,本件工事7のことである。。)
19ページの平成11年7月19日入札のP11公社発注の「町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事に当社はP169とのJVで入札に参加しております。この物件は,P14・P22がJVで落札しています。この物件につきましては落札業者であるJVの親のP14P221営業所P170さんからピーアールの電話を受けました。この物件でP14に条件があることを聞き,受注意欲があることを知りました。P14のP170所長以外に他のゼネコンさんからピーアールの連絡を受けた記憶はありません。その後,積算の問い合わせがあり,
当社はこのくらいの額で積算しているとお答えしています。この物件につきましても簡易な積算をしておりますので当社に受注意欲がないことはP170さんには伝わっていることと思います。
当社は狙っていない物件については簡易な積算をおこなっておりまして,
お話しました2つの物件については簡易な積算を行っておりました。私は札の連絡を1回目から3回目まで詳細に受けたわけではなく,当社の簡易積算を本命であるゼネコンに電話で答えておりました。」
(オ)

被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
私が平成10年4月から平成12年7月まで,P100営業所長として赴任していた時代に本命の受注に協力した物件について挙げますと,お示しの「別添入札参加物件一覧表(株式会社P1)と表題のある一覧表のうち,…(中略)…33番のP14・P22JVが落札した町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事
,…(中略)…37番のP1
0・P23JVが落札した町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事,39番のP2・P24JVが落札した町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事の以上4件です。全てP1はお付き合いで入札に参加した,つまり,受注意欲のない,希望票の提出を依頼されたことにより依頼されるままに提出したら指名に入ったという無気力の物件であり,積算もしていないと思います。ですから,本命から連絡を受けた札で入札に参加し落札に協力しました。
ただし,37番のP10・P23JV落札の物件については,P10のP42さんから希望票の依頼の連絡が来たのではなく,P42さんより営業経験の浅い後輩のP48のP127さんから希望票の提出依頼があったような気がします。P42さんは,希望票を依頼する方というよりも,後輩に頼んで依頼をお願いさせるという立場の方でした。
なお,4件の物件で相指名として名前が記載されているゼネコンは全て談合の仲間です。…(中略)…33番のP14・P22JVが落札した町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事については,相指名業者として記載されているP2,現在のP155である旧P18,P85,P78,現在のP106である旧P77,P92の6社,37番のP10・P23JVが落札した町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事については,相指名業者として記載されている,P48,P45,P12,P87,
P222の5社,
39番のP2・P24JVが落札した町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事については,相指名業者として記載されているP56,P88,P73,P53,P6,P57,P93,P2の8社,以上相指名業者として申し上げたゼネコンは全て入札談合の仲間であり,自社が受注したい時には,協力に応じてくれる持ちつ持たれつの関係,ギブ・アンド・テイクの関係を保ち,受注
価格の低落防止を図っていました。

(カ)

P78のP105の供述
証拠(甲サ150)によれば,P105は,平成12年12月4日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
次にお示しの「町田市公共下水道ζ,ι汚水枝線工事は,平成1
1年7月19日に入札が行われたP11公社発注の物件で当社はP223という町田の地元業者とJVを組んで入札に参加しております。この物件は,町田市のζには都営住宅とか公団住宅が多く建ち,その中の一部をP14が施工していると思い,同社は,町田での営業が強い業者でありますし,また,同社とJVを組んでいるP22も,本社の施工場所の近くの業者ではなかったと思いますが,同JVが条件を持っているということで本命となり,入札金額の連絡を受け,同JVが落札できるよう協力しました。


被告P2のP167のシステム手帳(甲サ343)の記載
証拠(甲サ343,356,357)及び弁論の全趣旨によれば,本件工事7の入札当時,被告P2のP111営業所課長補佐であったP167が所持していたシステム手帳には,平成11年7月19日(月曜日)の前週の金曜日ころ,同営業所の所長であったP109から,本件工事7において被告P2と株式会社P16とが組むJVの入札予定金額を指示され,P167において,同システム手帳に①―305,000,000-②293,500,000-③292,000,000-と記載したことが認められる。エ
検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述及び上記ウの文書の内容を踏まえて,以下検討することとする。
(ア)

被告P8のP170は,公社が発注する土木工事について,多摩地
区におけるゼネコン間で受注調整を行い,被告P8においても,その協力を行ったことがあったと供述するものの,本件工事7について,具体的に受注調整が行われたか否かについては明確な供述をしていない。しかしながら,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事7は,被告P8とP22工業が組んだJVが,工事予定価格2億9318万6000円の99.93パーセントに当たる2億9300万円の金額で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事7につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。さらに,本件工事7の入札に参加したJVの主となる建設業者のうち,被告P2,被告P1,P18株式会社,P85株式会社,P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社の7社は,
いずれも本件慣行が適用されるゼネコンであり,
各ゼネコンで営業を担当していたP109,P99,P105,P135はいずれも,本件工事7につき,被告P8が受注予定者となり,その受注の協力を求められ,入札前までに入札を希望する金額を伝えられたり,自社の見積金額を確認するなどの方法により,被告P8が結成したJVが落札できるよう協力した旨供述している。さらに,上記ウにおけるP167のシステム手帳の記載等からすれば,P167が,本件工事7の入札日の3日前ころ,P109から,被告P2が組むJVの同入札における1回目,2回目及び3回目の具体的な入札予定金額を指示されていたことが認められ,2回目,3回目の入札価格は,入札が行われ,その入札における最低入札価格が判明しなければ確定できない性質のものであることからすれば,本件工事7の入札においては,入札に参加するJVの中で最低入札価格があらかじめ確定していたことを推認することができる。
また,本件工事7の入札においては,本件慣行が適用されないP218株式会社及びP115株式会社が主となり結成したJVが参加しているところ,P218株式会社と株式会社P219とが結成したJVが1回目3億円,2回目2億9380万円で入札し,P115株式会社とP220株式会社とが結成したJVが1回目が2億9700万円,2回目が2億9500万円という,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札しており,特に2回目の入札においては,被告P8が1回目に提示した金額(2億9600万円)から2回目に入札した金額(2億9300万円)の間の極めて狭い金額の範囲に,他のJVの入札金額が集中していることからすると,P218株式会社とP115株式会社においても,あえて,被告P8が結成したJVの落札に協力すべく入札を行ったものと認められる。
以上を総合すれば,本件工事7については,被告P8の担当者が,使用される工法が自社のグループ会社が製造した機械を使用することなどから,受注を強く希望し,公社による指名後遅くとも入札までの間に,指名されたJVの主となる建設業者のうち,本件慣行が適用されるゼネコン7社(被告P2,被告P1,P18株式会社,P85株式会社,P78株式会社,P77株式会社,P92株式会社)に対し,各ゼネコンが結成したJVに希望した金額で入札させたり,入札予定金額を確認するなどの方法により,被告P8が結成したJVが工事予定価格に近似する入札金額により本件工事7を落札できるよう協力する旨依頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P8が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者2社(P218株式会社及びP115株式会社)の各担当者に対し,被告P8が結成したJVが落札できるよう協力を依頼し,上記2社の同意を得,上記暗号に基づいて,被告P8が結成したJVが,予定どおり本件工事7を落札したものと認められる。
(イ)

この点に関し,被告P8は,本件慣行の適用外であるP218株式
会社やP115株式会社については,①P218株式会社の結成したJVの2回目の入札金額(2億9380万円)が被告P8の2回目の入札金額(2億9300万円)に近く,被告P8に落札に協力するのであれば,不合理な行動であること,②P218株式会社やP115株式会社のような,多摩地区におけるゼネコン間の受注調整行為に参加していない建設業者にとっては,ゼネコンの受注調整に協力する利益はなく,そのような受注調整に協力することは営利活動を目的とする企業の性質上あり得ないとして,受注調整が行われておらず,本件工事7の入札においては競争が行われた旨主張する。
しかしながら,前記イ及びウからすれば,本件工事7においては,被告P8と被告P2との間で,入札日の3日前ころまでには,被告P2が被告P8が結成したJVが落札できるよう協力する旨の合意ができており,その合意に従って,入札金額の連絡がなされ,被告P2の1回目から3回目までの入札予定金額が定まり,その金額も1回目が3億0500万円,2回目が2億9350万円であったと認められるところ,むしろ,P218株式会社が結成したJVの入札金額(1回目3億0200万円,2回目2億9380万円)は,1回目と2回目の入札金額の設定において上記被告P2の入札金額に近いといえ,被告P8とP218株式会社との間においても,被告P2との間と同様に受注調整に係る合意がなされ,入札金額の連絡がなされていたと推定することができるものであり,
同金額から受注調整に係る合意がなされていないとはいえない。
また,本件慣行が適用されるゼネコンの受注予定者と地元の建設業者のような本件慣行が適用されない建設業者との間で個別協議がされ,受注調整がなされていたことは,P25がゼネコン側と地元側の折衝は,簡単に申せば,話し合いということですが,やはり,双方は当該物件についての関連性など種々条件を提示し合って,結局,例えば,一方が下請に入るとの条件で決着を図るといった仕方も採られ,最終的には,本命業者として一本化が図られるパターンです。と供述するとおり(甲サ98)
,多摩地区において一般的に行われていたことと認められ,本
件慣行が適用されるゼネコンではない建設業者であるとしても,それだけで直ちに受注調整行為に応じないなどともいえない。
(8)

本件工事8
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P10は,本件工事8につき,その用地を借りるP224学園と
20年近く付き合いがあるという事情があることから,受注を希望し,基本合意により受注予定者となった。被告P10は,基本合意がされたゼネコンに対し,工事希望票の提出を依頼し,依頼されたゼネコンは,基本合意に基づき,被告P10が受注予定者であると認識した上で,工事希望票の提出をした。
公社が指名したJVの主となる建設業者のうち,
被告P10,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P69株式会社及び被告P1の7社は,基本合意関係のある仲間であった。被告P10は,本件工事8の指名がされた平成11年11月30日以降,
P23株式会社とJVを組んだ。被告P10は,入札前までに,本件工事8の入札に参加するJVの主となる建設業者の入札金額を確認し,又は自社の結成したJVの入札予定金額の確認を受けるなどした。指名を受けた基本合意関係にあるゼネコンは,被告P10の結成したJVが本件工事8の受注を希望していることを認識し,入札において,自社の結成したJVが入札金額が被告P10の結成したJVの入札金額よりも高いことを認識した上で,入札に参加し,同JVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力した。
(イ)

被告P10の主張
被告P10は,本件工事8について,指名を受けた相指名業者に対し
入札価格を連絡し,
又は相指名業者の結成したJVの入札価格を確認し,
若しくは自社の入札価格の確認を受けた事実は一切ない。
(ウ)

被告P1の主張
被告P1が株式会社P225と結成したJVが入札に参加したことは
認め,その余は否認する。

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P10のP42の供述
証拠(甲サ177)によれば,P42は,平成13年6月11日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,要旨,次のとおり供述したことが認められる。

本件工事8は,
P224学園の用地を借りて行う工事であり,
また,
付近の道路が狭いことから,立坑工事を行うには極めて困難であるという事情があった。被告P10は,P224学園と20年来の付き合いがあったことから,本件工事8につき,多摩地区のゼネコン業界において受注予定者となる可能性が強い事情があった。b

P42は,P25から,電話で,
町田市のP224学園近くで工事が出るらしいけど,P42ちゃんのところがやってるんでしょと確認されたことから,
勉強しているよと回答した。多摩地区にお
ける営業担当者においては,被告P10がβの工事に詳しいことやβの立坑工事が難しい工事であることは周知の事実であった。
このため,本件工事8の入札において,相指名となったゼネコンのうち,株式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P69株式会社,被告P1は,被告P10が本件工事8の土木工事に詳しいことを知っており,相指名になったゼネコン6社の担当者は,被告P10が受注予定者であったことをあうんの呼吸で
分かっていた。

P42は,人脈を活用して,本件工事8の工事予定価格を調べており,他の相指名となったゼネコンよりは入札における金額で負けないという自信を有していた。
P42は,相指名された建設業者の中にゼネコンでない建設業者が入っていたことから,
株式会社P48のP127からどうするの?」
と入札金額について相談を受けた際,「自社の見積でお願いしますと回答した。P42は,P127が多摩地区で古くから営業活動をしていたので,P127に上記のように回答しておけば,他の相指名のゼネコンの担当者にも伝わると考えていた。
P42は,

自社の見積でお願いします。

ということにより,P127らが,P42が本件工事8の工事予定価格を把握しており,被告P10が落札できる金額で入札してくれたのだろうと思っていた。

P42は,本件工事8が,積算すると,約6000万円になることから,ゼネコンでない指名された建設業者が,6000万円から1000万円を引いた約5000万円で入札してくるだろうと予想していた。e
本件工事8は,
被告P10が結成したJVが4500万円で落札し,
契約したが,設計変更があったことから,最終的には7835万7300円で竣工した。

(イ)

株式会社P48のP126の供述
証拠(甲サ137)によれば,P126は,平成13年9月18日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事とは,本件工事8のことである。。)
次に,39番のP10・P23JVが落札した平成11年12月入札の「町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事につきましては,この物件の公表後,P10P43営業所のP42さんからP127に対して,工事希望表を提出して協力して欲しい旨の連絡があり,私はP127からこの報告を受けてP10の依頼に応じることとし,入札に参加した物件でありました。
そして,私からP10のP42さんに対し,遅くとも入札日の前日までに,本命であるP10に迷惑のかからない当社の見積り価格をお伝えし,入札においてP42さんにお伝えした当社の入札金額で応札し,P10の落札に結果的に協力いたしました。

(ウ)

株式会社P48のP127の供述
証拠(甲サ86)によればP127は,平成13年6月29日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
次に39番のP10とP23のJVが落札した「町田市公共下水道κ雨水幹線立坑築造工事について説明したいと思いますが,この物件に関しては,落札したP10のP42さんから何らかの依頼があったという程度の記憶だけですので,詳細には説明することができません。」
(エ)

被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,前記(7)イ(オ)のとおり,被告P1は,本件工事8に受注意欲を有しておらず,株式会社P48のP127を介して,工事希望票の提出依頼があったことから,入札に参加し,自社で積算もせずに,連絡を受けた金額で入札に参加したものであった旨供述したことが認められる。
(オ)

株式会社P87のP226(以下「P226」という。)の供述
証拠(甲サ80,196)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。

P226は,平成10年3月末から平成13年2月までの間,株式会社P87のP227営業所長として勤務していた者である。


P226は,平成13年6月19日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,
次のとおり供述したな

お,
39番とは,本件工事8のことである。。

当社が入札に参加した一覧表中21番,39番,49番,52番,56番の物件については,落札業者として記載されている業者から工事希望票を提出して欲しいとの依頼を受けた物件もあると記憶しております。また,本命からの札の価格の連絡につきましても,当社に対し当社が入れる具体的な入札価格を連絡してきた業者もあったように記憶しています。本命から具体的な札の価格連絡を受けた場合は,その価格を入れる場合もありますし,価格の連絡を受けたうえで当社の簡易な積算金額で札を入れる時もありました。

検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述の内容を踏まえて,以下検討することとする。(ア)

被告P10のP42は,被告P10が,本件工事8の受注予定者と
なるための事情を有しており,その関係からP25に対してを被告P10が受注を希望することを伝えたほか,
相指名となったゼネコン6社株

式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P69株式会社,被告P1)が本件工事8が被告P10が受注予定者となるのには有利であったことを認識しており,株式会社P48のP127に対して被告P10が落札できるような金額で入札するよう依頼し,P127を通じて各ゼネコンにもその旨が通じることとなると考えた旨供述している。そして,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事8は,被告P10とP23株式会社が組んだJVにおいて,工事予定価格4546万1000円の98.98パーセントに当たる4500万円で落札していることからすれば,本件慣行を背景として本件工事8につき個別談合が行われたことが強く疑われる。さらに,本件工事8の入札に参加したJVの主となるゼネコンの担当者であったP126は,P127を通じて被告P10から落札に協力する旨の依頼があり,入札日の前日までに,P42に対して自社の見積金額を伝え,同金額で入札した旨供述し,ゼネコンの担当者であったP99も,P127を介して工事希望票の提出依頼があったほか,入札においても,指示された金額で入札した旨供述し,ゼネコンの担当者であったP226も,被告P10から協力依頼があり,それに応じて入札に参加し,入札金額の連絡がなされた旨供述する。加えて,本件工事8の入札においては,被告P10とP23株式会社とが組んだJV以外のJVは,いずれも工事予定価格を上回る金額で入札していた。
以上を総合すれば,本件工事8については,被告P10の担当者が,P224学園と親交のあることから,同社が本件慣行における受注予定者となることを希望し,P25に対して被告P10が受注予定者になることを希望している旨述べたほか,株式会社P48のP127に対し,被告P10が本件工事8の受注を希望しており,落札に協力するよう依頼することにより,株式会社P48に対し,協力を求めるとともに,P127を通じて,
本件慣行が適用される各ゼネコンに対して協力を求め,
公社による指名がされた後入札前までの間に,本件工事8の入札に参加するJVの主となる建設業者のうち,本件慣行が適用されるゼネコン7社(株式会社P48,株式会社P45,P12株式会社,株式会社P87,P69株式会社,被告P1,P228株式会社)に対し,P127を通じて,各ゼネコンが結成したJVの入札を被告P10が結成したJVが落札できるような高めの金額にするよう依頼したり,入札予定金額を確認したりする方法により,被告P10が結成したJVが工事予定価格に近似する入札金額により本件工事8を落札できるよう協力する旨依頼し,上記ゼネコンとの間で,被告P10が結成したJVの上記入札金額による落札を妨げないこととするとの合意(個別談合)がなされ,さらに,本件慣行が適用されない入札に参加するJVの主となる建設業者2社(P229株式会社及び株式会社P118)の各担当者に対し,被告P10が結成したJVが落札できるよう協力を依頼し,上記2社の同意を得,上記談合に基づいて,被告P10が結成したJVが,予定どおり本件工事8を落札したものと認められる。
(イ)

この点に関して,被告P10は,P42が

この物件はまともに積算すれば6,000万円くらいになり,ゼネコンでない相指名業者は,6,000万円から1,000万円引いた5000万円で入札してくるだろうということは予想できました。

と供述していることから,被告P10が,上記ゼネコンではない相指名された建設業者との間で価格競争を行っていたことが明白であると主張する。しかしながら,前記前提事実並びに上記P42,P126及びP127の供述によれば,株式会社P48が結成したJVの4600万円という入札金額は,株式会社P48において,被告P10が結成したJVが本件工事8の工事予定価格に近似の金額で入札を検討していることを把握したことから,あえて工事予定価格よりも高い金額になるよう積算した結果であると認められ,本件工事8の実際の工事予定価格(4546万1000円)を併せ考慮すれば,上記P42の供述は,あくまでも受注する意思がない建設業者において行う見積りを指しているものということができ,競争関係にある建設業者の見積金額を意図している供述とみることはできない。
むしろ,
本件工事8の入札に参加したJVのうち,
被告P10の結成したJVと株式会社P48が結成したJV以外のJVが,いずれも4600万円以上の金額で入札していることからすれば,被告P10が結成したJV以外のJVは,いずれも,あえて高い金額を積算して本件入札に臨んだと推定できる。また,P42がゼネコンでない相指名業者と供述する株式会社P118が結成したJVが5500万円,P229株式会社が結成したJVが5250万円と,いずれも株式会社P48が結成したJVの入札金額や工事予定価格を大きく上回る金額で入札していることからすれば,上記認定のとおり,上記2社の建設業者においても,被告P10が結成したJVに落札させるため,あえて高い金額で入札に臨んだと認めるのが相当である。したがって,本件工事8の入札において価格競争が行われたとする被告P10の主張は理由がない。
(9)

本件工事9
当事者の主張の骨子
(ア)

原告らの主張
被告P6は,本件工事9の施工場所が自社の営業所に近く,また,近隣に施工実績を有することから,本件工事9の受注を希望し,基本合意により,受注予定者となった。被告P6は,公社が本件工事9の公表をした後,基本合意関係にあるゼネコンに対して工事希望票の提出を依頼し,依頼された各ゼネコンは,被告P6が受注予定者であることを認識した上で工事希望票を提出した。公社により指名されたJVの主となる建設業者のうち,P165株式会社以外の9社は基本合意関係にあるゼネコンであった。公社により指名がされた後,被告P6は,P19株式会社とJVを組み,
入札前までに,
各ゼネコンに対し入札金額を連絡し,
又は自社の入札金額を確認するなどし,被告P2を含む各建設業者は,被告P6とP19株式会社が工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力したが,被告P2が見込み違いにより同社が組んだJVが,被告P6が結成したJVの入札金額よりも低い金額で入札した。
(イ)

被告P2の主張
被告P2は,本件工事9を落札しているが,入札では他の入札参加者
と意思の疎通を図るなどの不正行為は一切行っておらず,原告らが主張する個別談合には関与していない。原告らは,被告P2が他の入札参加業者との間で,
意思の疎通を図っていたという証拠は全く示せていない。
(ウ)

被告P6の主張
本件工事9は,被告P2が落札したものであって,被告P6が本命と
して入札に参加していたとしても,結果として他社が落札しているのである。被告P6と相指名業者との間に個別談合が成立していれば,本命である被告P6が落札するはずであり,本件では入札において自由競争が行われた結果,被告P2が落札したのである。
(エ)

被告P1の主張
被告P1が有限会社P230と結成したJVで入札に参加したことは
認め,その余は否認する。イ

公正取引委員会における事情聴取での関係者の供述
(ア)

被告P2のP109の供述
証拠(甲サ145)によれば,P109は,平成13年6月8日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市δその2工事とは,本件工事9のことである。。

次に,町田市δその2工事ですが,この物件は,当社とP24のジョイントベンチャーで受注した物件です。この物件については,当社としては,特に受注を希望する立地条件はなかった物件で,どうしても取りたいという物件ではありませんでした。この町田市δの辺りではP14とP6がよく工事していた記憶がありますから,立地条件としてはその2社の方があったのではないかと思います。この物件については,当社の本社積算部土木積算課のP231という者が積算しており,その積算価格で入札には望んでおります。昨日,当社P111営業所のP167に頼んで公取にファックスさせたこの物件の積算関係の資料がありますから,提出します。

証拠(甲サ355)によれば,P109は,平成13年6月28日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
報告者の上から5番目が当社とP24のジェイブイが落札した町「田市公共下水道λ汚水枝線その2工事についての記載です。入札が平成12年5月15日で,指名通知が4月25日ですから,4月の初めにP11公社から物件の公表があり,工事希望票の提出期限が指名通知日の1∼2週間前だったと思います。
この物件は,当社としては,特に受注を希望する立地条件もなく,また,この時期ですと,近々P11公社から町田市μの下水道工事が出る予定で,そちらの物件に受注意欲を持っていた時期で,この物件については年度初めの町田の物件であり,指名に入れてもらえばいいということで工事希望票を出した物件でした。町田市μの物件は,以前,当社で,ν駅から2キロほど鉄道工事をやっており,鉄道工事をやった下を通る下水道工事でしたから,今後の立地条件としても続いていくということで,是非取りたいと思っていた物件でした。ですから,このλの物件については,これを取ってしまうと工事高が50パーセントに達せず,
μの物件の指名に入れなくなってしまいますので,
当社としては受注意欲のない物件でした。
この物件については,P6が,営業所も近く,近辺での工事をやっていることも承知しておりましたので,P6が強い場所であるということは分かっておりました。
また,この時期は,公取が3月に町田の件で立入検査に入ったすぐ後で,
当社にも立入検査がありましたから,
多摩地区の業界としても,
何があったのだろうということで,シラーとした時期で,立入検査があった当社に対して他社からも声をかけづらい,当社としても他社と話をしづらいという時期でした。当社とP6とは,担当者同士で親しく付き合っておりましたので,それまでの付き合いからすれば,λの物件について当社からP6に一生懸命営業している物件かとか,
また,
P6の方から自社が営業しているという話があってもおかしくない物件でしたが,そういう時期でしたから,当社にP6から自社で一所懸命営業している物件だというような話はなかったと思います。
この物件については,積算はスポンサーである当社が行って入札に臨んでおります。受注意欲のない物件であれば,積算担当に無駄な作業をさせるのも悪いですから,概算で積算してもらうように言いますが,この物件については,受注意欲のない物件でしたが,特殊な推進工事が入った工事でしたので,ある程度詳細な積算を行うよう頼んでおります。しかし,利益を削ってまで安く受注しようと思っていた物件ではありませんので,通常より管理費を削った入札金額にしたというつもりもありませんでした。
この物件については,受注意欲がなかったとはいえ,当社とP24のジェイブイが落札しておりまして,積算を間違えたとはいえませんが,積算に見込み違いがあったということは考えられます。
当社で一所懸命営業活動もやり,受注意欲のある物件でしたら,事前に下請の手当てなどもしておくのですが,この物件については,そういう手当てもしておりませんでした。
入札が終わって,当社が落札した後に,P6のP160さんから私に対して,この物件は自社で一所懸命営業してきた物件であり,P232を下請で使おうと思っていたので,下請としてP232を使って欲しいという話がありました。当社としては,すぐに返事をするという訳にもいきませんし,下請については工事部の担当業務になりますから,私が当社の工事部と話をして,当社で下請を手当てしていなかったということもありますし,P6で自社が落札した場合にP232を下請に使おうと思って手当てしていたということで,P232を下請に使って欲しいと言ってきた事情も理解できますから,P232を下請として使うことを了承しております。
私としては,P6が一所懸命営業していた物件を取ってしまい,悪いなという気持ちはありましたし,P6の方でもなんでP2が取ってしまうんだという気持ちがあったかも知れませんが,お互いにそういうことは口には出しません。そういうことを言ってしまうと,今後,気安くお茶を飲みにいこうというような話もできなくなってしまいます。この工事については,現場の監理技術者,これは現場の所長のことですが,監理技術者を当社から出しておりまして,それ以外に当社から何人出しているかは確認しないと分かりませんが,もう一人位出しているかもしれません。
それ以外は,
P232にお任せしております。
本日,
当社がP232に対してこの工事を下請に出した際の注文書,
注文請書,P232の見積書の写しを持参して参りましたので,提出します。

(イ)

被告P6のP160の供述
証拠(甲サ352)によれば,P160は,平成13年6月19日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
番号41のλの物件とは本件工事9のことである。。

番号41のλの物件は,P2とP24のジェイブイが落札した物件です。この物件も,δの物件ですから,当社として一所懸命営業していた物件で,先ほど説明した番号31の物件と同じように工事場所が当社の営業所に近い,工事場所の状況も把握している,近隣の状況も分かっているという物件でした。ですから,当社で是非取りたい物件でしたし,入札価格の積算も実行予算レベルで行った物件でした。当社は,この時のジェイブイは,P19とは以前にもジェイブイを組んで受注したこともあり,気心の知れた相手で,積算について文句をつけてくるようなところでもありませんから,P19と組んでいます。P19は,当社と組んだことで,受注できると思っていたかもしれません。当社はこの物件についても,熱心に営業活動をしているということを他のゼネコンに話していると思いますが,具体的にどこの会社に話しをしたかは覚えておりません。普段親しく付き合いのあるP88とかP2,P1には話をしているかもしれません。しかし,P2については,話をしたとすれば,所長のP109さんですが,P109さんにそのような話をしたという記憶がありません。ただ,P2は,普段親しく付き合っている会社ですし,P109さんの営業の仕方を見ても,当社が一所懸命営業をしていることは知っているはずだとは思います。また,この物件について,P2が熱心に営業をしているという話は聞いておりませんでした。この物件について,当社から一所懸命営業をしているという話を聞いて,工事の申込みをして欲しいと理解した業者もあるかも知れませんし,また,この物件の相指名業者も,当社が一所懸命営業をしていることを知れば,指名稼ぎの物件として考え,当社が落札するだろうと考えて入札に参加したところもあっただろうと思います。入札価格については,当社では,実行予算ベースでの積算をしておりますが,相指名業者から概算の金額を聞いてきたということもあったかも知れません。この物件については,ジェイブイ発注になるのかAランクの単独発注になるのかぎりぎりの金額ではなかったかと思いますが,A単独になると地元業者が優先的に指名されるケースが多く,地元業者と価格競争をしても取れないこともありますので,あきらめようかと思ったこともありました。この物件は,結果的にはP2のジェイブイが落札しておりまして,当社が是非取りたいと思っていた物件でしたし,人や協力会社の準備をしていた物件で,手が空いてしまうということがあり,私からP2のP109さんに下請として当社の子会社であるP232株式会社を使って欲しいという話をしております。P2とは,これまでの情報交換していたという付き合いもあり,これからも付き合っていかなければなりませんし,私の気持ちの中には,当社が熱心に営業していた物件で,P2が熱心に営業していたという話も聞いていませんでしたから,下請でも当社に仕事をやらせてくれてもいいのではないかということもありました。しかし,相指名業者の当社が直接下請をするわけにもいきませんし,当社がP2の下請になるというのはプライドが許さないということもあり,P232がP11公社の工事に不慣れだということもあり,技術者を当社から派遣する形で,一部を再下請で請け負っております。ですから,この工事については,P2・P24ジェイブイからP232が工事を請け負い,さらに当社がその一部をP232から請け負ったということです。この物件について,P232に下請に出したということが建設業法上の問題になるかどうかについては,P2の方で判断して,問題がないということで下請に出したものだと思います。(ウ)

P53株式会社のP158の供述
証拠(甲サ81)によれば,P158は,平成13年9月26日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事とは本件工事9のことである。。)
表の番号36番「町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事は,P
6P168営業所のP160さんかP178さんから工事希望票の提出依頼票を受け申し込んだところ,当社が指名された物件です。この物件も当社が受注しようと思って申し込んだ物件ではありませんから,高めの積算で応札して,P6JVの落札に協力しようとした物件でした。しかし,開札結果は,P2JVが落札して,P6は2番札であったと記憶しています。業界内では,工事希望票の提出依頼をした業者が本命となって落札するのが慣例となっていましたので,この開札結果を聞いてどうしてP6が落札しなかったのだろうとびっくりした記憶があります。後になって考えてみると,公正取引委員会が町田市の事件で立入調査に入った後でしたから,P2がP6の代替,つまり,本命替えで受注したのだと思いました。

(エ)

株式会社P73のP149の供述
証拠(甲サ92)によれば,P149は,平成13年5月24日に公
正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる(なお,
町田市公共下水道λ汚水枝線工事は本件工事9のことである。。

次に28番の平成12年5月15日に入札が行われました町田市公共下水道λ汚水枝線工事に関してご説明いたします。この物件は,P2とP24のJVが落札いたしておりますが,なぜだか分かりませんが,私が申込み依頼と札価格の連絡を受けましたのは,この物件の相指名ゼネコンであるP6のP162営業所のP160さんからでありました。通常であれば,本命ゼネコンから協力依頼があるのですが,この物件に関しては,P6から協力依頼の連絡を受けましたことから,てっきりP6が本命であり,当然,P6が落札すると思いこんで,本命ゼネコンであるP6に協力したつもりでおりましたところ,蓋を開けてみれば,ゼネコンのP2さんらJVが落札いたしておりましたので,びっくりしてしまいました。後々,考えてみますと,この物件の入札日より少し前に,公取委さんの町田市の建設業者等に対する立ち入り検査が行われておりまして,その頃,多摩地区ゼネコン業界ではばたばたしておりまして,個々の物件について本命替えが行われたということは私は全く知りませんが,今,私が考えられることとして挙げますと,この理由以外には思い浮かびません。この物件に関しては,落札したのはP2さんらのJVでしたが,お付き合いの物件でしたので,P6に協力するつもりで入札を行っており,結局,落札業者がP2さんであれ,当社が協力した物件には間違いありません。(オ)

P57株式会社のP104の供述
証拠(甲サ144)によれば,P104は,平成13年5月24日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
26番の平成12年5月15日入札の「町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事は,当社はP233とのJVで入札に参加し,ゼネコンのP2とP24JVが落札しております。これも,P2から受注意欲をピーアールされたものと思いますが,当社としては受注意欲のない工事であり,受注意欲がないということは分かったことと思いますが,概算で積算し,入札に臨み,結果的にはP2のJVが受注できるように協力したことになります。

(カ)

P56株式会社のP234(以下「P234」という。)の供述
証拠(甲サ83,168,169)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。

P234は,昭和47年2月,P235株式会社に入社し,昭和48年に同社がP56株式会社に吸収合併された後も,同社での勤務を続け,平成11年10月1日に同社P181営業所に赴任し,同年11月1日付けで同営業所長となり,同年10月1日以降P181営業所で営業業務に従事していた者である。


P234は,平成13年4月10日に公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述した。33番のP11公社発注「町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事の物件,…中略…についても指名実績を稼ぐために申し込んだというもので,どうしても受注したいと思って申し込んだ物件ではなく,
それぞれ関連性とか地域性といった本命になるための条件がなかったので,本命になった業者から価格等の連絡があればそれに協力しようと思っていました。当然,この2件の工事についても本命となる業者がいたと思いますが,本命から連絡がなくても本命の受注を邪魔しようとは考えておりませんでした。

(キ)

P88株式会社のP171の供述
証拠(甲サ241)によれば,P171は,平成13年3月15日に
公正取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対して,次のとおり供述したことが認められる。
平成12年度に行われた当社の入札に参加した物件から申しますと平成12年5月15日に入札が行われたP11公社発注の町田市公共下水道λ汚水枝線その2工事をP2とP24JVが落札しておりますが,指名申込の段階で話があったと思いますが,P2さんのよく覚えておりませんが,可能性が高いのは同社P111営業所長のP109さんですが,P2が本命になることの協力をしてほしいと電話であったと思いますが,その旨のお話があり,私は了承いたしました。入札金額の連絡は,P2さんからありまして,P2さんから連絡のあった金額を当社の入札金額として入れ,P2・P24の受注に協力いたしました。(ク)

被告P1のP99の供述
証拠(甲サ72)によれば,P99は,平成13年9月27日に公正
取引委員会において行われた同委員会審査官からの事情聴取に対し,前記(7)イ(オ)のとおり,被告P1は,本件工事9に受注意欲を有しておらず,
希望票の提出依頼を受けて,入札に参加し,
自社で積算もせずに,
連絡を受けた金額で入札に参加したものであった旨供述したことが認められる。ウ

被告P2の見積資料
(ア)

FAX送信のご案内と題する書面(甲サ145。以下「審査時

積算資料」という。)
証拠(甲サ145)によると,次の事実が認められる。

P167は,平成13年6月7日,公正取引委員会審査官に対し,本件工事9における被告P2の入札金額に係る積算の資料として,審査時積算資料をファックス送信した。


審査時積算資料は,合計6頁の文書であり,1枚目がファックス送信書となり,2枚目から6枚目にかけて工事設計書と題する文書
になっており,2枚目には工事番号工事件名工事場所


が記載され,3枚目には設計の概要が記載され,空欄となってい
るが本工事費を記載する欄があり,その欄は更に内訳として
公示価格と消費税等相当額が記載する欄がある。4枚目から
6枚目が本工事費内訳書として,
費目工種種別細,,,則単位数量金額概評の各欄に分けられた欄があ,



り,当該欄には,本件工事9に必要な工事や費用が記載されていたといえるが,各費用の細目については墨消しされているため判読できないが,手書きで金額の記載がされていた。なお,管理施設工」の種「別欄は,円形管布設工」人孔設置工桝設置及び取付管工,,,「付帯工に分けられている。

(イ)

平成12年5月11日付け土木工事見積概要書
(乙A3)
被告P2は,平成18年11月17日の第23回口頭弁論期日におい
て,同社土木本部土木積算部が平成12年5月11日に作成した本件工事9の見積書として,土木工事見積概要書(乙A3。以下裁判時見積書という。)を提出したことは記録上明らかであり,この裁判時見積
書は,次のような体裁の文書である。すなわち,裁判時見積書は,合計48頁の文書であって,1枚目には,見積金額を算定するための概要書であり,
直接工事費共通仮設費現場経費工事原価一,,,,般管理費合計金額落札金額を記載する欄があり,いずれも,

手書きで金額が記載されているほか,
工事概要欄には,
管布設工
として内径200mm管布設工孔設置工2,118m〃,推進工170.4〃人,66箇所桝設置及び取付管工140〃付帯工,,1式の
記載がある。2枚目,3枚目は,
本工事内訳書として,工事の内訳
とその金額が記載されている。
本工事内訳書においては,
直接工事費共通仮設工事費現場経費一般管理費に分けられ,



その合計である工事価格欄には,257,000,000」が印字されている。「直接工事費は,
塗装版切断工管布設工人孔設置工汚,,,水桝・取付管工副管取付工低耐荷推進工残土・ガラ処分,,,工付帯工付帯工事の費目に分けられており,各費目ごとに,

金額が記載されている。4枚目から48枚目までは,
工事内訳共,通仮設費現場経費ごとに,費用の費目と金額が記載されている。,

検討
前記前提事実及び前記1(3)エ並びに上記イの供述及び上記ウの文書の内容を踏まえて,以下検討することとする。
(ア)

被告P2のP109は,本件工事9につき,他の公社が発注する土
木工事を受注する希望をしていたことから,受注を希望していない工事であり,被告P2は本件工事9を落札した場合の施工業者の手配等の手続を行っておらず,また,被告P6が受注を強く希望し,受注予定者となる有利な事情を有していたことを認識していたが,本社土木工事部にある程度詳細な積算を依頼し,同金額で入札したところ,
積算に見込み違いがあった
ことなどから,
被告P2が結成したJVが落札し,
落札後に,被告P6から依頼され,本件工事9を被告P6の指定した建設業者に下請けに出した旨供述する。しかしながら,前記1(3)エで述べたことに照らし,本件工事9は,被告P2とP24株式会社とが組んだJVにおいて,工事予定価格2億5922万7000円の99.14パーセントに当たる2億5700万円で落札していることからすれば,時期的には明確な形がとられなくなってきたとはいえ,本件慣行を背景として,本件工事9につき個別談合が行われたことが極めて強く疑われる。また,本件工事9の入札に参加したJVの主となるゼネコンであるP53株式会社の担当者であったP158は,本件工事9において,被告P6から協力を依頼され,工事希望票を提出したことや,被告P6の結成したJVに落札させるために高めの金額で積算し,同金額で入札したと供述し,ゼネコンの担当者であったP149も,同様に,被告P6から協力依頼の電話のほか,工事希望票の提出依頼や入札金額の連絡を受けた旨供述している。また,その他のゼネコンの担当者であるP104,P171は,被告P2の担当者から,受注協力の依頼を受けたかのようにも供述するものの,記憶はあいまいで,あくまでも本件工事9の入札において,実際に被告P2が落札したことから推察した供述である点においては共通している。
さらに,
P109及びP160の上記供述及び証拠(甲サ352,355)によると,被告P2は,P160からの依頼に応じて,平成12年7月13日,被告P6の子会社であるP232株式会社との間で,本件工事9を2億3530万円(消費税を除く。
)で下請けする旨の契約を締結し,
P232株式会社は,被告P6との間で,本件工事9の一部を1億円で孫請けにする旨の契約を締結したことが各認められる。そして,本件工事9の入札においては,被告P2の結成したJVが2億5700万円,被告P6が決したJVが2億5750万円と双方のJVの入札金額は50万円しか離れておらず,その他の8JVの入札金額が,2億6600万円から2億7800万円までの範囲内であり,工事予定価格(2億5922万7000円)を上回る金額であった。
以上を総合すれば,本件工事9については,被告P6の担当者が,施工場所の近くに自社営業所があることから,受注を希望し,本件慣行が適用されるゼネコンに対し,被告P6が本件工事9を受注予定者となる有利な事情を有し,受注を希望していることを伝えるとともに,工事希望票の提出を依頼し,公社による指名がされた後入札までの間に,公社に指名されたJVの主となる建設業者(被告P2を含む。
)に対し,被
告P6の入札予定金額の概算を伝えたりするなどの方法により,被告P6が結成したJVが工事予定価格近似の金額で落札できるよう協力する旨の合意(個別談合)がなされたが,たまたま被告P2における見積金額が,被告P6の結成したJVの入札金額よりも50万円低額であったことから,被告P2が結成したJVが,工事予定価格の99.14パーセントの金額で落札したことが認められる。そして,本件工事9の入札においては,被告P6の担当者によって,他の入札に参加したJVの主となるゼネコンに対して受注調整の合意がなされ,同合意に基づいて,被告P2が結成したJV以外のJVが工事予定価格を上回る金額で入札を行ったものであり,被告P2が結成したJVにおいて,少なくとも予期しないで,その結成したJVに被告P6が結成したJVよりも全体からみればわずかに低い金額で入札したことにより,被告P6と被告P2を含む本件工事9の入札に参加したJVの主となる建設業者との間の談合に基づいて発生した状況を利用し,被告P2が結成したJVが工事予定価格の近似の金額で落札したものと認められるのであるから,上記個別談合に基づいて,結果として入札における公正な競争を妨げて,不当に高い価格による落札を実現した点において,上記個別談合上の受注予定者であった被告P6が結成したJVが落札したことと変わりはないというべきである。(イ)

この点に関し,被告P2は,本件工事9の入札当時,同社において
は,
受注を希望しない工事であれば,
P109が自ら概算で見積りをし,
受注をしていたとし,本件工事9の入札金額は,本社土木本部の積算を担当する部署において詳細な見積りを行ったのであり,利益を削ってまで積極的に受注を希望した工事ではないが,上記見積の範囲内では受注する意思を有して入札に参加したものであり,入札前において,入札に参加するJVを組む建設業者等から入札金額等の連絡を受けておらず,入札の結果,本件工事9を落札したのは,正当な競争の結果である旨主張し,P109もこれにそう供述をし(甲サ116,355)
,裁判時
見積書(乙A3)及びその作成者の陳述書(乙A4)を各提出する。しかしながら,被告P2が裁判時見積書を提出した時期は,本件工事9に係る公正取引委員会の調査や本件訴訟が開始されてから相当期間経過した平成18年11月であるところ,被告P2が結成したJVの入札金額の算定根拠等が,同時期になって初めて詳細な見積書が提出されたという点において不自然であり,同文書の作成時期については疑問を持たざるを得ない。さらに,裁判時積算書(乙A3)は,1枚目の土木工事見積概要書が,工事名や工事概要及び金額等がすべて手書きで記載されていることからすれば,作成者において,定型様式の書面に手書きで必要事項を記載して作成した決裁文書であるとみえ,他方,2枚目以降の内訳書が工事費目や金額等がすべて印字して作成されたものであり,異なる様式,方法を用いて作成されたと認められるところ,P109が公正取引委員会における事情聴取時に提出した審査時積算資料にける工事費の内訳と裁判時見積書の2枚目以降の文書に記載された工事費の内訳との間において,費目に違いがあることからすれば,裁判時積算書の2枚目以降の詳細な内訳が実際に本件工事9の入札前に作成されていたかという疑問をより一層増幅するものであるといわざるを得ない。また,P109自身,前記イ(ア)のとおり,公社が発注する別の工事を受注するために,本件工事9を受注する意思がなかった旨供述しているのであって,落札後,被告P6の子会社に対して,本件工事9の施工を落札金額の9割以上の金額で下請けに出したことからすれば,被告P2において,入札前までに,当該金額によって受注する意思があったと認めることもできない。
したがって,上記各証拠によって,被告P2の上記主張を裏付けるに足りず,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。
(10)

まとめ
以上述べたところからすると,本件各工事においては,それぞれの工事に
対応して,
被告らの各担当者(従業員)による個別談合があったと認められ,次に述べるとおり,被告らが民法719条,715条,709条に基づく不法行為責任を負う。

本件工事1については,被告P1の従業員と同P2の従業員を含む本件工事1の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で,個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P1と同P2が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。


本件工事2については,被告P3の従業員と入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P3が上記談合行為による不法行為責任を負う。


本件工事3については,被告P13の従業員と同P5の従業員及び同P6の従業員を含む本件工事3の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で,個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P13,同P5及び同P6が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。

本件工事4については,被告P6の従業員と同P2の従業員を含む本件工事4の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P6及び同P2が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。


本件工事5については,被告P7の従業員と同P8の従業員を含む本件工事5の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P7及び同P8が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。


本件工事6については,被告P9の従業員と本件工事6の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P9が上記談合行為による不法行為責任を負う。


本件工事7については,被告P8の従業員と同P2の従業員及び同P1の従業員を含む本件工事7の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P8,同P2及び同P1が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。


本件工事8については,被告P10の従業員と同P1の従業員を含む本件工事8の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P10及び同P1が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。ケ

本件工事9については,被告P6の従業員と同P2の従業員及び同P1の従業員を含む本件工事9の入札に参加したJVの主となる建設業者9社の従業員との間で個別談合があったと認められるから,これによって生じた損害につき,本訴においては,被告P6,同P2及び同P1が上記談合行為による共同不法行為責任を負う。

4
争点(2)(談合による損害の有無及び程度)
(1)

町田市における損害の発生
被告P6は,本件各工事に係る談合によっても,公社が被った損害が町田
市に転嫁されるものではないと主張する。
しかしながら,前記前提事実(3)及び上記3における事実関係によれば,被告らによる談合によって,本件各工事における被告らが結成したJVと公社との間の請負契約額が不当に高額になったものということができ,談合がなく公正な競争が確保されていた場合の契約額との差額が,町田市に損害として発生すると認められる。
(2)

町田市の損害額
原告らの主張
原告らは,町田市が本件各工事における談合により被った損害につき,入札参加者に談合がなく競争が成立すれば,入札予定価格レベルにとどまった蓋然性があり,独占禁止法に基づく課徴金の割合が原則10パーセントに引き上げられた背景事情にかんがみれば,本件各工事の落札価格と対応する公社の定めた各最低制限価格の差額に消費税相当額5パーセントを加えた金額であると主張する。


そこで,勘案するに,被告らは,本件各工事における談合により,本来他の入札参加者との健全な競争関係を前提として決定されるべき入札金額につき,当該競争関係を意識することなく,自社の利益を最大限得られるようにするため,工事予定価格に近接する金額をもって落札しようとしたものであり,その結果,本件各工事に係る落札率がいずれも98パーセントを超える高額なものになっている。そして,本件各工事に係る談合がなければ,入札参加者間での健全な競争によって落札業者が決定されていたであろうから,当該競争が行われた場合に形成されたであろう想定落札価格に基づいて得られる契約金額と,本件各工事における実際の契約金額との差額をもって損害とするのが相当である。
しかしながら,上記想定落札価格は実在していない価格であり,入札の性質上,仮定的な条件を含んでそのような落札価格を確定することは極めて困難であるばかりか,本件各工事の落札価格であることから,本件各工事の具体的な種類・規模・場所・内容,入札当時の経済情勢及び公社又はゼネコンの財政状況,さらに地域性など,多種多様な要因が複雑に絡み合って形成されるものであるといえ,そのような入札価格を算定して差額を確定することは困難であるといわざるを得ない。
したがって,本件においては,町田市が被った損害については,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるから,民事訴訟法248条に基づき,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定すべきである。

以上のような観点から,町田市が被った損害額について判断するに,別紙特定土木工事一覧表のとおり,落札率は個別の工事ごとに相当程度の差異がある上,損害額の算定が困難な中において被告らに対し損害賠償義務を負わせる以上,当該賠償額の算定に当たっては一定程度控え目な金額に認定することもやむを得ないと考えられ,前記前提事実並びに前記1及び2で認定したとおり,本件各工事の規模,難易度,本件各工事の予定価格,本件慣行の存在,その経緯,前記1(3)ウのとおり平成9年10月1日から同12年9月27日までの期間における公社発注の特定土木工事72件における平均落札率が94.54パーセントとなっている一方で,同年10月1日から同17年11月1日までの期間における同工事139件における平均落札率が89.85パーセントとなっていることなどに照らすと,町田市が本件各工事に係る談合によって被った損害は,少なくとも本件各工事の実際の請負契約における各契約金額(消費税相当額を含む。
)の5パーセントに相当する金額(1000円未満切り捨て)と考えるが相当である。ただし,契約金額が変更されている場合,増額のときは明らかに追加工事によるものではないと認められない限り当初契約金額によるべきであり,減額のときはその金額によるべきである。
これに対し,原告らは,前記アのとおり,談合がなければ,最低制限価格が落札価格となったはずであるなどと主張するが,公正取引委員会による立入検査が行われた後の平成12年10月1日から同17年11月1日までの期間における公社発注の特定土木工事139件(別紙特定土木工事一覧表参照)を見ても,そのすべてが最低制限価格で落札されているわけではなく,また,上記5パーセントを超える損害が確実に発生していることを示していない。また,関係者の審査官からの事情聴取に対する供述には,
入札でまともに競争していると低価格での受注で赤字になってしまう(甲サ71,85,113,135,138,155,171)

受注調整が行われないと赤字になるケースが多くなる
(甲サ184)
などといった供述も散見されるところであり,
もちろん個別の工事の種類,
規模等によるものの,公社発注の特定土木工事が常に最低制限価格で落札されるべきものとすれば,落札業者において適正な利益が確保できない可能性もあるのであって,これらの事情を考慮すると,原告らの上記主張を直ちに採用することはできない。
なお,被告らは,民事訴訟法248条の適用が肯定される事案においては,損害賠償を求める者が,その基礎となる事情の主張,立証する責任があるところ,原告らが,実際の落札価格のみならず,想定落札価格までも主張,立証をする責任を負担するとか,少なくとも,民事訴訟法248条の認定に際して考慮されるべき事情について具体的に主張すべきであるにもかかわらず,これをしておらず被告らに反論の機会が与えられていないなどと主張する。しかしながら,民事訴訟法248条により相当な損害額を算定するに際しては,工事の内容,指名された業者の数,各業者の受注意欲の多寡及び入札当時の経済状況といった事情が認定の基礎となることについては,被告らも自認しているところ,上記事情については,前記3において個別談合の存否に係る主張において現れている事情であり,かつ各事情に係る立証もなされてるといえ,他方,被告らが同事情に係る反論の機会を奪われていたなどということもできない。

そこで,本件各工事における町田市の損害を算出すると,次のとおりとなる。なお,5パーセントの基礎となる契約金額は,上記ウに従い,本件工事6を除く本件各工事は当初契約金額によるべきであり,本件工事6は減額された変更後契約金額によるべきである(前記前提事実(4)エ参照)。
(ア)

1716万7000円

(イ)

本件工事2

1622万2000円

(ウ)

本件工事3

5958万7000円

(エ)

本件工事4

1748万2000円

(オ)

本件工事5

2572万5000円

(カ)

本件工事6

5666万4000円

(キ)

本件工事7

1538万2000円

(ク)

本件工事8

236万2000円

(ケ)
(3)

本件工事1

本件工事9

1349万2000円

よって,被告らは,町田市に対し,次のとおり支払義務(複数の支払義
務者がある場合,それぞれの工事につき不真正連帯)があるというべきである。なお,訴状送達の日については,いずれも記録上明らかである。ア
本件工事1につき,被告P1及び同P2は,各自1716万7000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(被告P2については平成14年6月8日,被告P1については同月11日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事2につき,被告P3は,1622万2000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成14年6月8日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合の遅延損害金


本件工事3につき,被告P13,同P5及び同P6は,各自5958万7000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(平成14年6月8日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事4につき,被告P6及び同P2は,各自1748万2000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日平成14年6月8日)(
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事5につき,被告P7及び同P8は,各自2572万5000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日平成14年6月8日)(
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事6につき,被告P9は,5666万4000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日(平成14年6月8日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事7につき,被告P8,同P2及び同P1は,各自1538万2000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の日の翌日(被告P1については平成14年6月11日,
その余の被告らについては同月8日)
から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金


本件工事8につき,被告P10及び同P1は,各自236万2000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日(被告P10については平成14年6月8日,同P1については同月11日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金

本件工事9につき,被告P2,同P6及び同P1は,各自1349万2000円及びこれに対する不法行為後である訴状送達の翌日(被告P1については平成14年6月11日,その余の被告らについては同月8日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金

5
争点(3)(違法な怠る事実の有無)について
(1)

被告らは,町田市の執行機関等の財務会計職員が,現時点において,被
告らに損害賠償請求権を行使等しないことが直ちに法令に違反するものではなく,また,その裁量権を逸脱又は濫用するものでもない,町田市は,談合行為があったことを立証する資料を有しておらず,また,公正取引委員会の審決若しくは裁判所の判決を待たなければ被告となる業者の違法行為を立証できないことから,損害賠償請求権の行使等に至っていないのであり,同請求権をどのように行使するかは,町田市の財務会計職員の裁量にゆだねられているところ,同職員が直ちに行使しなければ違法となるような特段の事情は認められないとして,地方自治法242条1項に規定する違法な怠る事実は認められないと主張する。
(2)

しかしながら,前記2及び3のとおり,本件工事における談合によって,
町田市に対して損害を与えており,当該行為は民法709条,719条の不法行為を構成するものであるところ,町田市長は,現時点まで当該損害賠償請求権を行使していないことは明らかである。
そして,
地方公共団体の長は,債権について,政令の定めるところにより,その督促,強制執行その他その保全及び取立てに関し必要な措置をとらなければならない(地方自治法240条2項)のであって,債権を行使するか否かについての裁量の余地はほとんどなく(最高裁平成16年4月23日第二小法廷判決・民集58巻4号892頁参照)
,同法施行令(昭和22年政令第16号)171条ないし同条の7に係る徴収停止事由等がないにもかかわらず相当期間その債権を行使しない場合には,それを正当かする特段の事情がない限り財産の管理を怠るものとして違法であるというべきである。しかるところ,町田市は,少なくとも,上記認定に係る各証拠を入手し得る状況になって相当期間が経過しているにもかかわらず,上記損害賠償請求権を行使してはいない。
この点,被告らは,公正取引委員会での判断が出ることを待つ合理性を主張するが,敗訴の可能性については,本件工事における談合に関して,客観的に不法行為による損害賠償請求権の立証が可能な状況になっているのは,既に説示してきたとおりであり,仮に独占禁止法25条に基づく損害賠償請求権を将来提起し得る可能性があるとしても,それにより,既に発生している民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことを正当化する理由とはならないから,上記特段の事情は認め難い。
(3)

以上によれば,町田市長が民法709条の不法行為に基づく上記損害賠
償請求権を行使していないことは違法であるというべきであるから,本件訴訟における原告らの損害賠償代位請求は前記4(3)の限度で理由があるというべきである。
第4

結論
よって,原告らの本件各請求のうち,前記第3の4で示した限度で理由があるから,これを一部認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとして,
訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,
民事訴訟法61条,
64条本文,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

大門匡
裁判官

吉田
裁判官

小島徹清二
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