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強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、詐欺、死体遺棄、窃盗、有印私文書偽造、同行使、強盗被告事件
事件番号平成18(わ)1929
事件名強盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,詐欺,死体遺棄,窃盗,有印私文書偽造,同行使,強盗被告事件
裁判年月日平成19年10月31日
裁判所名・部千葉地方裁判所  刑事第1部
判示事項の要旨知人を包丁で刺殺してキャッシュカード等を奪い,借入金の返済を免れた強盗殺人等に及んだ被告人2名につき,各犯行を首謀し,被害者の刺殺行為に及ぶなど,圧倒的に主導的な立場にあった被告人を無期懲役に処するとともに,共犯者の誘いに応じて加担し,従たる役割しか果たさなかった被告人についても,能動的に相応の役割を果たし,相応の報酬を得たことなどを理由に無期懲役を言い渡した事例
裁判日:西暦2007-10-31
情報公開日2017-10-13 01:38:10
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平成19年10月31日判決
平成18年(わ)第1929号,第2027号,第2195号,第2410号

盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,詐欺,死体遺棄,窃盗,有印私文書偽造,同行使,強盗被告事件

主文
被告人両名をそれぞれ無期懲役に処する
未決勾留日数中,被告人Aに対しては340日を,被告人Bに対しては310日を,それぞれその刑に算入する。
被告人両名から,押収してある請求書2枚(平成19年押第42号の2,3)の各偽造部分を没収する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人Aは,茨城県取手市内に事務所を設け,
Cの屋号で個人宅への訪問営
業による住宅リフォーム業を営んでいたものであり,被告人Bは,平成16年4月ころ,被告人Aの求人に応じてCの営業担当者として稼働し,いったんは退職したものの平成17年に再びCに就職して本件に至るまで稼働していたものであるが,被告人Aは,平成17年ころにDと知り合い,平成18年3月ころ,同被告人がDにCが株式会社であると偽って300万円を出資させたことを契機に,Dと親しく交際するようになり,他方,被告人Bも,Cの仕事を通じてDのことを知り,被告人Aから同被告人とDが酒飲み友達であることなどを聞いていた。被告人Aは,Cの業績が悪化したことや,バカラ賭博等のギャンブルにのめり込んで浪費したことなどにより多額の借金を抱え,その借金を返すため,知人等からCの株式譲渡名下に金銭を騙取したり,工事代金の立替え名下に借入れをすることなどを繰り返していたところ,Dからも,同年4月7日に300万円,同月10日に200万円,同月11日に50万円の合計550万円を借り入れ,これを同月2
5日ころに返済する旨約していた。ところが,同月13日ころ,Dから,アパートの購入資金を準備するためとして,上記借入金の返済を早めてくれるように依頼されながら,その返済資金を工面する目処が立たなかったことから,被告人Aは,同月15日ないし同月16日ころには,Dを殺害して同人に対する借金をなくしてしまいたいと思うようになり,さらに,Dを殺害する以上は,同人の金品も奪おう,などとも考えるに至った。
被告人Aは,上記計画について,1人では実行できないと考え,同月17日午前10時ころ,C事務所の駐車場において被告人Bと会った際,同被告人に対し,

Dさんのところ,お金取りに行こうと思うんだけど。押し込みみたいな形なんだけど。

などと持ち掛けたところ,被告人Bも金に困っていたことなどからこれに応じたので,被告人Aは上記計画を実行する決意をした。
(罪となるべき事実)
第1

前記の経緯で,Dからの借入金の返済を免れるために,同人を殺害するとともに,併せて同人から金品を強取しようと考えていた被告人Aと,同被告人からDの金品を強取することを持ち掛けられてこれに応じた被告人Bは,共謀の上,同日午後7時30分ころ,千葉県松戸市ab丁目c番地d所在のD方において,D(当時47歳)の上半身をロープで,同人の両手首をガムテープでそれぞれ緊縛するなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,同人所有又は管理に係る現金数万円,キャッシュカード3枚及びクレジットカード1枚等在中の財布1個を強取した上,同人を普通乗用自動車に乗車させて連行した。そして,犯跡を隠ぺいするためD殺害に被告人Bが同調したことから,被告人両名は,さらに共謀の上,Dを殺害することを企て,茨城県取手市ef番g地先hまで赴き,同月18日午前4時ころ,同所において,被告人Aが,Dの左胸部に所携の包丁(刃体の長さ約16.7センチメートル。平成19年押第42号の1)を突き刺し,よって,そのころ,同所において,同人を下大静脈損傷による失血又は出血性ショックにより死亡させて殺害するとともに,被告人Aにおいて,
Dに対する550万円の貸金債務の返済を免れて,同額の財産上不法の利益を得た。
第2
1
被告人両名は,共謀の上,
業務その他正当な理由による場合でないのに,同日午前4時ころ,前記hにおいて,前記包丁1本を携帯した。

2
同日未明ころ,前記hにおいて,Dの死体を普通乗用自動車に積載し,同県神栖市内等を経て同県鉾田市i字jk番地先山林内まで運搬した上,同日夕方ころ,これを上記山林内に掘った穴に埋めて遺棄した。

3
別表記載のとおり,同年4月17日午後9時26分ころから同月19日午後零時2分ころまでの間,前後6回にわたり,埼玉県川口市lm丁目n番o号所在のEほか1か所において,情を知らないFほか1名をして,同所に設置された現金自動預払機のカード挿入口に,前記強取に係るD名義のキャッシュカード3枚を順次挿入させて同機を作動させ,同機から株式会社G銀行Hほか1名管理に係る現金合計255万円を引き出して窃取した。

4
前記第1において強取したキャッシュカードを使用して,人を欺いて預金払戻し名下に金員を詐取しようと企て,同日午後零時23分ころ,同市lp丁目q番r号所在の株式会社I銀行J支店において,情を知らないKをして,行使
の目的をもって,ほしいままに,黒色ボールペンを使用して,同支店備付けの払戻請求書用紙2通の氏名欄にいずれもDと冒書させ,金額欄にそれぞれ1990000700000と記入させ,もってD作成名義の払戻,
請求書2通(それぞれ2枚綴りで複写式のもの。前同押号の2,3はその各2枚目)を偽造した上,そのころ,同所において,上記Kをして,同支店係員Lに対し,上記偽造に係る払戻請求書2通を真正に成立したもののように装わせて上記キャッシュカードと共に提出・行使させて,現金合計269万円の払戻しを請求させ,上記Lをして,正当な権限に基づく預金払戻し請求である旨誤信させ,よって,即時,同所において,上記Lから現金合計269万円の交付
を受けさせ,もって人を欺いて財物を交付させた。
第3

被告人両名は,共謀の上,郵便局職員から金員を強取しようと企て,同年6月27日午後4時50分ころ,茨城県鉾田市st番地所在のM郵便局(当時)において,同郵便局長N(当時50歳)らに対し,火炎びんに見せかけたペットボトルや所携の包丁を示すなどしつつ,

金を出せ。早くしろ。血を見たくない。

などと申し向けて脅迫し,同人らの反抗を抑圧した上,上記Nに係る現金111万5000円を強取した。

第4
1
被告人Aは,
株式申込金名下に人を欺いて金員を詐取しようと企て,同年3月9日ころ,同県取手市uv丁目w番x号所在のC事務所において,O(当時46歳)に対し,真実は,C株式会社を設立する準備をした事実がなく,同会社の株式を発行する意思もないのに,これがあるように装い,

Cを株式会社として設立する準備をしたので,後は登記をするだけだ。株の割当てを削ってマスターに回すよ。全部で120株用意できるから買ってほしい。

などと申し向け,同人をしてその旨誤信させ,よって,同日,同市uv丁目w番y号所在の飲食店P店内において,同人から現金500万円の交付を受け,さらに同月10日,同人をして,同市uz丁目a①番b①号所在の株式会社Q銀行R支店から,同支店C代表A名義の口座に100万円を振込送金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。

2
株式譲渡名下に人を欺いて金員を詐取しようと企て,同年5月16日ころ,千葉県松戸市c①d①丁目e①番地f①所在のS方において,T(当時66歳)に対し,真実は,被告人Aが代表取締役を務めるC株式会社なる会社は存在せず,同社が発行した株式も存在しないのに,これがあるように装い,同社の代表取締役等を装い,

Cの業績が上がっており,株式を上場する予定です。確実に株価が上がりますから,60株買いませんか。

などと申し向け,上記Tをしてその旨誤信させ,よって同月18日,上記S方において,上記Tから
現金300万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。(争点に対する判断)
第1

争点の概要
本件の争点の概要は,被告人Bに関し,①判示第1の事実中,Dの殺害について,被告人Aとの共謀の有無及び強盗の機会性の有無,②判示第2の1の刃物携帯につき,被告人Aとの共謀の有無,③判示第3の事実について,共同正犯の成否,また,被告人Aに関し,④判示第1,第2の1ないし4及び第3の各事実について,自首の成否である。
そこで,以下において,争点①ないし③について判示のとおり認定した理由を補足して説明するとともに,争点④の自首の成否について,併せて検討する。なお,以下において,日付はいずれも平成18年のものである。

第2

強盗殺人の共謀の有無及びD殺害の際の強盗の機会性の有無(被告人Bについて,争点①)

1
被告人Bの弁護人は,判示第1の強盗殺人に関し,被告人BにはD殺害の認識はなく,同人殺害について被告人Aとの共謀はなかったから,被告人Bは強盗殺人の罪責を負わず,また,被告人AによるD殺害は,強盗の機会になされたものでもないから,被告人Bは,強盗致死についても責任を負うものではなく,結局,被告人Bには強盗罪が成立するにとどまる旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をするとともに,公判廷において,Dに対する強盗の犯意の発生時期は,D方に入った後である旨供述するので,判示のとおり認定した理由につき,以下補足して説明する。

2
前掲関係各証拠によれば,Dに対する強盗殺人等事件の前後の経緯について,以下の事実を認めることができ,これについては被告人Bの弁護人も特に争ってはいない。
(1)

被告人Aは,前記犯行に至る経緯のとおりDに対する強盗殺人を企図
したが,自分1人では実行できないなどと考えていたところ,4月17日午
前10時ころ,C事務所の駐車場において被告人Bと会った際,被告人Bが一緒にやってくれれば実行できるかもしれないなどと考えて,同被告人に対し,

Dさんのところ,お金取りに行こうと思うんだけど。

などと持ち掛けた。これに対し,被告人Bは,Dに危害を加えることはないか確認し,被告人Aがこれを否定すると,被告人Bは特に反対することもなく同調し,分け前について一,二割で良いなどと話していた。
そこで,被告人Aは,被告人Bに指示してCの事務所脇から,Dを緊縛するためのロープを持ってこさせた上,被告人Aの自動車U車に乗車して,D方に向けて出発した。被告人Aは,U車内にタオルにくるんだ包丁(以下本件包丁という。
)を用意し,そのことを被告人Bに告げていた。
移動途中の車内において,被告人Bは,被告人Aに対し,Dを縛るならガムテープも買っておいた方がいいなどと提案し,被告人Aもこれに賛成したため,コンビニエンスストアに立ち寄って,ガムテープを購入するとともに,自らの判断で軍手1双も購入した。
(2)

被告人両名は,同日午前11時30分ころD方に到着したが,同人は
外出して不在であったことから,D方近くの公園横にU車を駐車して待機しつつ,Dから同人名義のキャッシュカードの暗証番号を聞き出すことを考え,その際,タオル等で猿ぐつわをして同人が口がきけない場合に備えて,0から9までの数字を書いた紙を準備し,その数字をDに示しながら暗証番号を確認するという方法を考えついた。この時,被告人Aが,被告人Bに対し,暗証番号を聞き出した後の現金引出役を依頼したところ,被告人Bは,防犯カメラに写るのを嫌がって,これを断った。
(3)

その後,Dが帰宅したことが分かると,被告人両名は,D方を訪れて
同人と会い,被告人AがDに被告人Bを紹介するなどした上,上記3名でU車に乗車してD方を出発した。そして,被告人Aは,被告人Bを1人で待機させた上,Dと共に昼食をとったが,その際,同人に借入金を支払う都合が
ついたので夜にまた来るなどと言って,同日夜にDが在宅しているようにし向けた。
被告人Aは,昼食を終えてDと別れると,被告人Bと合流してU車で茨城県取手市に戻り,同日午後2時過ぎころにいったん別れた後,同日午後6時過ぎころに再び合流してD方に向かった。
(4)

D方に到着後,同日午後7時30分ころに被告人Aが,その約1分後
に被告人Bが,それぞれD方に入り,被告人Aが,D方玄関先で,同人に対し得意先に支払う金も用意できなくて。そこに言い訳する必要があるんだけど,Dさんのところに俺が立ち寄ったときに物取りに入られて,2人ともキャッシュカードを抜かれて結わかれたって形で,狂言強盗になるけど,協力してくれないか。などと言って,狂言強盗への協力を求めたところ,Dは

何で協力するのかな。

などと協力を渋っていた。その後,被告人Aは,本件包丁を取り出してこれをDに見せた上,持参してきたロープで無抵抗のDの上半身を両腕ごと縛り,被告人BがDの両手首をガムテープでぐるぐる巻きにした上,被告人Aが,持参したタオルでDの口に猿ぐつわをした。
被告人両名は,Dを応接間の1人用ソファに座らせた上,被告人AがD方居間のテーブル脇にあった同人の財布を奪い,Dに対し,上記狂言強盗への協力を求めつつ,財布中にあったキャッシュカード3枚の暗証番号を教えるよう何度も求めたが,Dはなかなか暗証番号を教えようとしなかった。すると,本件包丁を手にして弄んでいた被告人Bが,本件包丁を振り下げてDが座っていたソファの肘掛けにぶつけ,怒った口調で

早く言えよ。

と脅迫した。被告人Aは,被告人Bに

打合せやってるのに,そんなにむきになるなよ。

と言った上,Dに対してさらに説得を続けたところ,Dは,暗証番号を告げた。
(5)

その後,被告人Aは,キャッシュカード3枚を持って,Dの自動車V
車に乗って,現金を引き出すために埼玉県川口市に向かい,同市所在のカジノクラブWにおいて,同所の従業員に対し,上記キャッシュカード3枚及びDから聞き出した暗証番号をメモした紙片を渡して現金の引出しを依頼し,別表番号1ないし3記載のとおり,合計150万円を引き出させ,自らはバカラ賭博をするなどした上,翌18日午前零時過ぎころD方に戻った。被告人Aがキャッシュカードを用いて現金を引き出しに行っている間,被告人Bは,Dの逃亡を防止するため,Dをソファごとガムテープで二,三重に巻き付けるなどしていた。
(6)

その後,被告人Aは,緊縛し,猿ぐつわをしたままのDをU車の後部
座席に乗せ,被告人BをDの隣に座らせた上,U車を運転してD方を出発した。その際,本件包丁を被告人AがU車のドアポケットに入れるなど,犯行に使用した道具を全てU車に積み込み,最後に被告人BがD方に忘れ物がないことを確認した。
そして,被告人両名は,U車にDを乗せたまま,茨城県取手市所在のX病院隣のY駐車場や同市内のhに行くなどして,Dを連れ回し続けた。(7)

同日午前4時ころ,被告人Aらは,同市内の前記hに到着し,被告人
Bが下車し,その後ろをDが緊縛されたまま歩いていたところ,被告人Aが,Dの背後から本件包丁でその背部を突き刺し,これに驚いたDが振り返り,後ずさりをしながらバランスを崩して仰向けに倒れると,被告人AはDに馬乗りになった上,本件包丁をDの心臓付近に突き刺して殺害した。この時,被告人Bは,手でDの口を押さえ付けた。
(8)

その後,被告人AがDの死体の上半身部分を持ち,被告人Bが足の部
分を持って同死体を運び,U車のハッチに積載した上,同所を出発し,車中において,被告人Aが

埋めなくちゃ。

などと言って,Dの死体を土中に埋めるつもりであることを伝えると,被告人Bは特にこれに反対することもなかった。被告人Aと同Bは,同日午前7時ころいったん別れた後,同日午
前10時ころ,再びCの事務所において合流してU車で出発し,途中被告人Bがスコップやはさみを購入した上,同県鉾田市内の山林に赴き,同所にDの死体を埋めて遺棄した。
3
被告人Aの供述について
(1)

被告人Aは,Dに対する強盗殺人の共謀等に関し,被告人Bに対する
公判期日において,証人として,概ね以下のとおり供述している。ア
同月17日午前10時ころ,C事務所の駐車場において,被告人Bに対し,

知り合いのDさんのところにお金を取りに行こうと思うんだけど,押し込みみたいな形なんだけど。

と持ち掛けたところ,被告人Bから

それって殺したりすることじゃないよね。

と言われたので,

もちろん違うよ。

と話した。この時,被告人Bに強盗に入るということを明言しなかったのは,被告人Bがちゅうちょするかもしれないと思ったからだった。
Dからお金を取る方法として,まずはDに対し

借金の支払資金がないので,D方に来ている際に強盗に遭い,2人とも緊縛された上でお金を引き落とされた。

という内容の狂言強盗に協力してほしいと言って,お金を騙し取ることを考えていた。このような詐欺的な言動にDが乗ってくることを少しだけ期待はしたが,最後まで騙しきれるものではないと思っており,Dが協力してくれない場合には,手荒なことをしようと考えていた。

同日夜にD方に向かって出発した際,D方に上がったときの最初の行動について被告人Bと役割分担を決め,私が先に行って話をするから,被告人Bはちょっとだけ遅れて後から来るように話すとともに,もし私が包丁等を見せたときは,持ってきたロープでDを結わくようにと言い,これに被告人Bも同調していた。
D方において,Dは,狂言強盗の話について何度懇願しても承諾してくれなかったので,私はDに包丁を示した上,被告人Bに対し,Dを縛るよ
うに言ったが,被告人Bが結わき方が分からないと言ったため,結局私がDを縛ることになった。そして,私が被告人Bに対し,手首も結わくよう指示したところ,被告人BがDの両手首をガムテープでぐるぐる巻きにし,さらに私がDに対してタオルを使って猿ぐつわをした。
Dを縛った後,私はDのキャッシュカードを奪い,その暗証番号をDから聞き出そうとしたが,当初Dは暗証番号を教えるのを拒んでいた。すると,その様子を見て,被告人Bは,私とDのやり取りにじれたらしく,手にずっと持っていた包丁でソファの肘掛けを叩き,

早く言いなよ。


恫喝した。

Dから暗証番号を聞き出し,カジノクラブに行ってキャッシュカードを用いて現金を引き出させてきた後,D方に戻ると,被告人BがDをソファごとガムテープで留めていた。私は,Dを屋外に連れ出すことにし,縛ったままのDを被告人Bと共にU車の後部座席に乗せ,D方を出発して取手市方面に向かった。なお,Dを連れ出す際,被告人Bが,Dのいない場で私の方に近づいてきて,どうするのと聞いてきたが,私はよく分からないなどと返答していた。
Dを殺害することについては,Dを連れ出してから2度目にY駐車場に立ち寄り,Dを車内に残して被告人Bと共に車外に出た際に話した。この時,私は,被告人Bに対し,

このままではもうしようがないし,自分が後ろから刺すんで,B,悪いけど,Dさんに外の空気吸おうという形で表に連れ出してくれないか。

と言ったところ,被告人Bは拒否するわけでもなく,その話の後すぐに車に乗り込んだので,私は被告人Bが分かってくれたのだと思った。
そして,私は,その前からDを殺害しようと考えていたhに赴き,到着すると,被告人Bが,Dに対しちょっと休むからと言った上,先に下車してDが乗車している後部座席のドアを開け,Dに外に出るように促した。
(2)

そこで,被告人Aの上記供述の信用性について検討する。

上記被告人Aの供述のうち,狂言強盗を装いつつも,うまく行かなければ手荒なこともしようと思って,被告人Bを誘い,同被告人とDに対する強盗の謀議を遂げたという点については,前記2において認定したロープやガムテープの準備状況,D方に入った直後,Dを緊縛する際に,被告人BにおいてもDの両手首をガムテープで巻いている事実,その後,被告人両名間において特に新たな謀議がなされたわけではないにもかかわらず,被告人Bが暗証番号を聞き出すために本件包丁をソファに叩きつけている事実とよく整合するものである。Y駐車場で殺害の共謀を遂げたという点についても,被告人AがDを殺害する際に,被告人BがDの口を押さえるという協力的な行動に出ている事実,その後,特にトラブルになることもなく,被告人Bが被告人Aと共にDの死体をU車まで運搬するとともに,同人の死体を遺棄する際にも行動を共にしている事実等とよく整合するものである。
また,強盗の準備状況,計画の内容,D方に赴くまでの行動,同人方内における被告人両名及びDの言動,その後の行動,D殺害の共謀状況並びに同人殺害の状況等に関する被告人Aの供述は極めて具体的かつ詳細で,迫真性を備えたものである。
供述経過についてみるに,たしかに,被告人Aは,Dの殺害を決意した時機について,捜査段階においては,借入金の返済を免れるために当初から殺害を意図していた旨供述していたところ,公判廷においては,最終的に殺害を決意したのは,曖昧ではあるもののDを緊縛した後である旨供述しており,やや供述を後退させているともいえる。しかし,被告人Aの公判供述は,最終的な決断自体は強取行為に着手した後であったというものであるとはいえ,一方で,犯行を発案した当初からDを殺すことは念頭にあったというものであって,他方,捜査段階の供述も,直ちにDを殺害するという強い決意を有していたという内容ではないことからすると,両供述は当初からDを殺害す
ることを想定しつつ行動していたという限度ではよく一貫しているのであって,上記の供述経過をもって供述に不合理な変遷があるということはできないし,そのほかの点においても被告人Aの供述はよく一貫しているものと認められる。
そして,被告人Aは,被告人Bの共犯者の立場にあって,自己の刑責を軽減するために被告人Bに不利益な虚偽の供述をする動機があるといえるが,自己が主導的な役割を果たし,実行行為も自ら行ったことを全て自認しているのみならず,殺害の共謀に関しても,自分からDを刺すと言ったのに対して,被告人Bが何も反対していなかったと供述するにとどまるなど,その供述態度はことさら自己の刑責の軽減を図って虚偽の供述をしているとは考えられないことも併せ考慮すると,被告人Aの供述は十分に信用できるというべきである。
4
被告人Bの供述について
(1)

これに対して,被告人Bは,公判廷において,概ね以下のとおり供述
している。

4月17日,被告人Aから行動費を渡すから来るようにと言われ,Cの事務所に行ったところ,被告人Aから

B,儲かる話があるけどどうする。

と言われ,少し荒っぽい方法であるというふうにも言われた。それを聞いて,私は,人を傷つける話じゃないかと思い確認したところ,被告人Aは

問題ない。百パーセント大丈夫だよ。

と言っていた。ロープや包丁を使うことや,口を塞いで0から9までの数字を示して暗証番号を聞き出すという話を聞いて,私は,何かおかしな話だとは思ったが,被告人Aが「問題ない。」と言ったので,何か特別な事情があるのだろうと思い,狂言強盗という言葉自体は被告人Aから出なかったが,Dの女性問題か何かにつけ込んで,強盗にならないような強盗のようなものをするのだと思っていた。詳しい計画については,被告人Aは何も話してくれなかったし,
自分も聞かなかったので,人を傷つけないでお金になると思って,うかつに行動を共にしてしまった。
D方に行く途中で,ガムテープを購入したのは,犯罪にはならないという話だったので,軽い気持ちで提案したものであり,また,ロープを使うのであれば軍手も要ると考え,軍手も購入した。軍手を購入したのはDの家に指紋を残さないためという気持ちもあったかもしれないが,そのときの気持ちは覚えていない。

被告人AがD方で包丁を出すのを合図に私がDを縛るという計画はなかったと記憶しているが,もう忘れてしまったのかもしれない。D方に入る直前か,入ってからかは分からないが,被告人AからDを縛るように言われて,できないと断った記憶がある。被告人AがDを縛る際も,Dは抵抗していなかったので,私は,何か話がついているのかというふうに考えていた。
被告人AがDからキャッシュカードの暗証番号を聞き出そうとしていたが,Dがなかなか教えてくれなかったので,私はおかしいと思いながらも,とにかくキャッシュカードの暗証番号を聞き出さないことにはしようがないと考え,まずいと思いながらも,自分も力を貸してあげようと思って包丁をソファの横のところに叩きつけた。


被告人Aがキャッシュカードで現金を引き出してきてD方に戻って来た後,3人で出発する際,私は,包丁のことは意識しておらず,被告人Aが包丁をしまったことには気が付かなかった。


D方を出発した後も,私は,Dに飲み物や食べ物をあげたりしていたし,ラーメン屋に寄ることを提案して,被告人Aに断られたりしていた。また,Dにお腹空いてないかと聞いたこともあった。
私は,よく分からないが被告人AとDとの間には何か事情があると思っており,Dが強盗の被害にあったことを警察に申告することはないと思っ
ていたので,それをどうやって防ごうかといったことは全く考えなかった。D殺害の直前にY駐車場に行き,被告人Aから,車の外で話があると呼ばれ,車外で

Dさん,どうしようか。

と持ち掛けられた。そこで,私が社長に任せますよと言ったところ,被告人Aは,

分かった,とりあえずもう一度土手の方に行こう。

と言っていた。それで,私は,また時間つぶしに土手に行くのだろうと思っていた。
土手に着くと,被告人Aが,Dに対し,外に出てもらうと声を掛け,私がまずU車から降り,その次にDが降りた。そして,私のすぐ後ろをDが歩いていたところ,振り向くと,Dの背中に包丁が刺さっているのが見え,Dが異常を感じたような顔をしていた。その後,Dは後ずさりして倒れ,被告人Aが馬乗りになってDを刺し殺そうとし,Dが叫び声を上げたため,私は気が動転してしまい,Dの声を聞きたくないと思って,Dの口を手で押さえた。
(2)

そこで,被告人Bの上記供述の信用性について検討するに,被告人B
が,本件について,
強盗にならないような強盗として,犯罪にはならな
いと思っていたと供述する点は,Dを緊縛するための道具等として,ガムテープと軍手を自らの発案により購入している事実,他方で,防犯カメラに自らが写るのを嫌がってDのキャッシュカードを用いた現金の引出役についてはこれを拒否している事実,D方において,Dからキャッシュカードの暗証番号を聞き出すために本件包丁をソファに叩きつけている事実,被告人Aが現金を引き出しに行っている間,Dの逃走を防ぐため,自らの判断で同人をソファにガムテープで巻き付けている事実等と整合しないのみならず,上記認識の根拠は,被告人Aが問題ないと言っていたからであるなどというものであって,到底合理的な認識とはいえず,被告人B自身,ロープや包丁を用いたり,猿ぐつわをすること等について

何かおかしい。

などと思っていたことを自認していることからしても,極めて不自然であるといわざるを得
ない。また,Dを長時間にわたって連れ回した後,Y駐車場において,被告人Aがわざわざ同Bを呼び出して車外で話したというにもかかわらず,その内容が被告人Bにこれからどうするかを尋ね,同被告人が被告人Aに任せると言って終わったという点もやや不自然である。その上,被告人Bが,被告人AがDを殺そうと思っているとは全く知らなかったというにもかかわらず,被告人AがDを殺害する際に自発的にDの口を押さえて協力し,その直後からDの死体の運搬や遺棄に関して被告人Aとトラブルになることもなく協力し続けているのは,到底説明し難い行動である。
供述経過についてみるに,被告人Bは,捜査段階においては,狂言強盗ないし強盗にならないような強盗という認識については何ら供述しておらず,D方に入る前に既に強盗の話になっていたことを自認していたにもかかわらず,公判廷に至って,
強盗にならないような強盗であり,何か特別
な事情があって犯罪にはならないものと思っていたなどと供述を変遷させている。また,Y駐車場に立ち寄った際の被告人Aとの会話内容についても,捜査段階においては,被告人Aから

後は俺がするから。

と言われた旨供述していたのが,公判廷においては,被告人Aから

Dさん,どうしようか。

と持ち掛けられ,

社長に任せますよ。

と言ったのみである旨供述を変遷させている。その上,被告人Bは,捜査段階においては,D殺害現場であるhにおいて,自らがDをU車から降ろしたことを自認していたところ,公判廷に至り,DをU車から降ろしたのは被告人Aであるとして供述を変遷させている。これらの変遷について,被告人Bは何ら納得のゆく説明をしていない。
そして,被告人Bの供述は,D方に入る際に自分と被告人Aのどちらがロープを持って入ったか覚えていないという点,Dを縛る際に包丁を示す合図があったかどうかは分からないといった点など,曖昧な点が多い上,Dの死体遺棄に用いたスコップの投棄場所や,被告人Aから受け取った報酬の額等
に関して捜査段階の初期においてことさらに虚偽の供述をしたこともあったこと(被告人Bの供述調書(乙44,49)
,証人Zの供述)など,その供
述態度も必ずしも真摯なものとはいい難いことも併せ考慮すると,被告人Bの供述は信用できないというべきである。
5
検討
そこで,上記3のとおり信用できる被告人Aの供述等の関係証拠に基づき,本件殺害の共謀及び強盗の機会性が認められるかについて検討する。(1)

この点につき,検察官は,Y駐車場に至る前の本件犯行の当初から,
Dの殺害について黙示の共謀が成立していた旨主張する。
たしかに,被告人Aが本件犯行を思い立ったのは,Dを殺害して同人からの借金の支払を免れたいとの思いからであり,同被告人自身がD方侵入前からDの殺害を念頭に置いていたことは認められる。また,被告人Bにおいても,被告人Aの酒飲み友達であり,かつ,自らの知り合いでもあったDに対して,包丁を示し,ロープ等で緊縛した上猿ぐつわもするなど,粗暴な態様で強盗を遂行することについてはD方に赴く前から十分に認識し,現金の引出役については犯行の発覚を恐れてこれを拒絶していたにもかかわらず,D本人に犯人が何人であるかを分からせないための覆面等の措置を何ら講じていないこと,Dのキャッシュカードを強取して暗証番号を聞き出した後も,被告人Aが同カードを用いて現金を引き出している間,D方で緊縛したままのDをさらにソファごとガムテープでぐるぐる巻きにするなどして監禁し続けていたこと,D方を出発する際に,被告人Aに対してこれからどうするつもりか,といった確認の言動をとっていることなどに徴すると,犯行当初の段階から,被告人AがDに対して何らかの働きかけをすることによって犯跡を隠ぺいすることを十分に予期していたというべきであるし,Dをロープで緊縛し,猿ぐつわをしたままU車に乗せて連れ回した段階においては,犯跡隠ぺいの手段として,最終的にDを殺害するに至るかもしれないということ
について,少なくとも認識はしていたというべきである。
しかしながら,上記のような状況においても,なお,犯跡隠ぺいの方法はDを殺害することに限定されるものではない上,被告人B自身には被告人Aの債務免脱目的のようにDを殺害しなければならないような積極的動機はなく,むしろ,被告人Aから犯行を持ち掛けられた当初の段階においては,Dに危害を加えることを嫌がる態度をとっていたことも認められることからすると,被告人Bにおいて,この段階で,Dの殺害を未必的にせよ認容していたと考えることには疑問が残るというべきである。
そうすると,Y駐車場に至る前の段階で,被告人Aとの間にD殺害についての黙示の共謀が成立したと認めることはできない。
(2)

しかしながら,前記のとおり信用できる被告人Aの供述によれば,被
告人Aが,Y駐車場において,被告人Bに対し,

このままではもうしようがないし,自分が後ろから刺すんで,B,悪いけど,Dさんに外の空気吸おうという形で表に連れ出してくれないか。

と持ち掛けたのに対し,被告人Bは,拒否するわけでもなくそのまま自動車に乗り込んだ事実が認められる。この事実に加え,被告人Bが,前記2で認定したとおり,現金の引出役等については明確に拒絶の意思を表しているにもかかわらず,被告人Aから上記の申し出を受けた際には何ら拒絶の態度をとっていない事実,その後,hに到着した際,現に,被告人Bが,被告人Aからの依頼どおり,DをU車から降ろさせている事実,被告人AがDを突き刺した際に被告人BがDの口を押さえた事実,被告人BがDの死体の運搬や遺棄に協力した事実等が認められるのであるから,これらの事実によれば,被告人両名は,Y駐車場において,D殺害についての共謀を遂げたものと認められる。
被告人Bは,Y駐車場に至る前の時点において,上記のとおり,既にDを殺害する可能性について認識していたというべきであるから,Y駐車場において被告人Aから明示的にD殺害を言い出されることにより,殺害行為を認
容して共謀を遂げたとしても何ら不思議はない。
6
結論
以上検討したところによれば,被告人Bは,D殺害について,被告人Aと共謀を遂げたものと認められる。
また,強盗の機会の点については,たしかに,被告人両名は,D方でキャッシュカードを強取してから,約8時間30分後,強取の現場である千葉県松戸市内のD方から茨城県取手市内のhまで移動してDを殺害しており,強取行為と殺害行為との間には相当の時間的・場所的な間隔がある。
しかし,被告人両名は強取の際にDの身体をロープで緊縛するなどして拘束し,被告人Aが強取したキャッシュカードを用いて現金を引き出すため埼玉県川口市に行っている間には,被告人Bが緊縛したままのDをソファごとガムテープでぐるぐる巻きにするなどして同人を見張り,被告人AがD方に戻ると,引き続き緊縛したままのDをU車に乗せて連れ回し,上記hまで赴いてDを殺害したものである。そして,前記2及び4において認定したとおり,犯行の当初から,被告人Aは,最終的にDを殺すことも意図しており,被告人Bも,被告人AがDに対して何らかの犯跡隠ぺいの手段を講じることを十分に認識していたのであり,Dを連れ出した段階では,未必的な殺害の可能性についても認識し,最終的には犯跡を隠ぺいするため殺害に同調したことが認められる。このような継続的な認識のもと,上記のとおり強盗に着手した際に行ったDの身体の拘束を殺害に至るまで継続しているのであるから,最終的にDを殺害するということの謀議自体は,Dを連れ回した後,Y駐車場において成立したものとしても,それによって,新たな意思に基づき強盗とは別個独立の機会に殺害が行われたとみることはできない。
したがって,Dの殺害は強盗の機会の継続中に行われたものと認めるべきであるから,被告人Bは強盗殺人罪の罪責を免れない。

第3

刃物携帯についての共謀の成否(被告人Bについて,争点②)
1
被告人Bの弁護人は,判示第2の1の刃物携帯の事実に関し,被告人Bにおいて,被告人AがDを殺害した際,同被告人がその場所で包丁を携帯していることは知らなかったので,刃物携帯についての共謀はなかった旨主張し,被告人Bもこれに沿う供述をしている。

2
そこで検討するに,被告人Bは公判廷において,D方を出発する際に犯跡を残さないために同人方に忘れ物がないかを確認した旨自認しているのであって,かかる事実からしても,被告人Aが,D方を出発した後も本件包丁を携帯し続けていたことを認識していたことは明らかである。そして,前記第2において認定したとおり,Y駐車場において,被告人Aが,被告人Bに対して

自分が後ろから刺す。

などと発言することにより,被告人両名の間でD殺害の共謀が成立したことに徴すると,D殺害現場であるhにおいて本件包丁を携帯することについても共謀を認めることができるというべきである。

第4
1
M郵便局の強盗についての共同正犯の成否(被告人Bについて,争点③)被告人Bの弁護人は,判示第3の事実に関し,被告人Bと被告人Aとの間に強盗の共謀はないので,被告人Bは自らの犯罪を実現した正犯ではなく,被告人Aの強盗を容易にした従犯にとどまる旨主張する。

2
前掲関係各証拠によれば,M郵便局の強盗の犯行前後の被告人両名の言動等に関しては,以下の事実を認めることができ,これについては被告人Bの弁護人も争わない。
(1)

被告人Aは,Dから強取したキャッシュカードで引き出した現金を借
金の返済やバカラ賭博に費消し,その後もCの顧客等からの借入れや野球賭博等によりさらに借金を重ねていたことなどから,小規模で警備の薄い特定郵便局から現金を強取し,上記借金の返済に充てようと考えるようになった。(2)

6月27日,被告人Aは,Dの死体遺棄現場を確認するとの口実で被
告人Bを呼び出し,その際,被告人Bに対し特定郵便局への強盗を持ち掛けた。当初,被告人Bは,やりたくないと言って断っており,その後,被告人
Aが,U車でDの死体遺棄現場の確認に赴く道すがら,茨城県鉾田市所在のM郵便局の前を通り,同郵便局に強盗に入ろうと思う旨述べた際にも,被告人Bは,交番が近いなどと述べていた。
(3)

被告人Aは,郵便局において強盗を遂行することを決意して,予め包
丁,ガムテープ,サングラス及び帽子等を準備するとともに,車中でミネラルウォーター入りのペットボトルにバーボンを垂らして着色し,キャップの先に綿棒を刺すなどして火炎びんようのものを作製した。
(4)

被告人Bは,同日午後3時55分ころ,被告人Aから依頼されて1人
でM郵便局に切手を買いに行き,被告人Aの自動車に戻ると,同被告人に同郵便局内の局員及び客の数を報告し,同郵便局の間取りを紙に書くなどした。(5)

被告人Aは,同日午後4時50分ころ,被告人Bに対し,M郵便局か
ら約100メートル離れた神社脇の空き地で待機しているよう依頼した上,U車から降りて1人で歩いて同郵便局に強盗に入り,被告人Bは,被告人Aに言われたとおり,上記空き地にU車を移動し,同所で待機していた。(6)

被告人Aは,判示第3のとおり,M郵便局において現金111万50
00円を強取したが,入り口付近でいったんこれらを落とし,結局拾い直した21万円を持って同郵便局から逃走した。被告人Aが前記(5)の空き地付近まで走ってくると,これに気付いた被告人Bは,被告人Aが乗車しやすいようにU車を移動させ,被告人Aを乗せて逃走した。
(7)

犯行前に,被告人Aから被告人Bに対し強取金の中から分け前等を渡
す旨の約束はなく,犯行後も被告人Bが被告人Aに分け前を要求することはなかったが,犯行後,被告人Aは,M郵便局から持ち出した21万円のうちから3万円を報酬として被告人Bに渡した。
3(1)

そして,被告人Aは,被告人Bに対する第2回公判期日において,証
人として,次のとおり供述している。
Dの死体遺棄現場の確認が終わった後,自分は必ず郵便局の強盗をしなけ
ればならないから,被告人Bがもし帰るのであれば駅まで送っていくと提案したが,被告人Bは無言であり,送ってくれとも言わなかったので,協力してくれるものと思ってできる範ちゅうで手伝ってくれるよう依頼したところ,拒まなかったので,同被告人は手伝ってくれるものと思っていた。その後,被告人Bに,切手を買うふりをして,中の局員の数やレイアウトを見てきてくれるよう依頼したところ,被告人Bは,それぐらいならいいよと言ってこれに応じてくれ,局員が3人で,局長に来客があり,客は一,二人であったこと,職員の出入口と客の出入口が別にあり,カウンターに仕切り扉が1か所あることを報告した上,郵便局内の間取りを紙に書いてくれた。(2)

そこで,被告人Aの上記供述の信用性について検討するに,その供述
内容は,当初強盗に関与することを拒んでいた被告人Bが,最終的には郵便局内の様子を下見したり,被告人Aの犯行後の逃走を助けているという上記2の経緯を合理的に説明しており,その内容は具体的かつ詳細であって,不自然,不合理な点は見当たらない。そして,被告人Aが,郵便局の強盗について,自ら発案し,準備を整えた上,1人で実行したものであることを自認しており,ことさら自らの刑責の軽減を図って被告人Bに不利益な虚偽の供述をしているとは考え難いことも併せると,被告人Aの上記供述の信用性は十分に認められる。
(3)

これに対し,被告人Bは,公判廷において,被告人Aから駅まで送る
と言われたことはないし,M郵便局に入ったのは被告人Aから大家に手紙を出すために切手を買ってくるように頼まれたからであり,郵便局に入る前に被告人Aから郵便局内の様子を意識的に見てくるよう言われたことはない,などと供述するが,上記(2)のとおり信用できる被告人Aの供述に反する上,下見の経緯については捜査段階の供述と一貫せず,強盗の計画をしていることは十分に承知していたにもかかわらず,切手を購入するのが主たる目的だったと思っていたなど内容自体極めて不自然なもので,到底信用できな
い。
4
そこで,信用できる上記3(1)の被告人Aの供述を前提に,被告人Bが本件の共同正犯といえるか,すなわち,被告人Aと共同で強盗行為を行ったものと認められるかについて,検討する。
たしかに,被告人Bは,被告人Aから郵便局の強盗を持ち掛けられた際,当初は,これを拒絶する態度を示し,M郵便局が交番に近いことなどを指摘して同郵便局への強盗を思い止まらせようとしていたと認められ,M郵便局に対する強盗に関して消極的な態度を示していたものといえる。しかしながら,他方で,被告人Bは,被告人Aから,帰るのであれば駅まで送っていくとの申し出を受けていたにもかかわらず,これに応じることなく被告人Aと行動を共にし続け,被告人Aの依頼に応じて,M郵便局内の様子を下見して,被告人Aに同郵便局内の局員及び客の数及び位置を報告するとともに,同郵便局内部の間取りを紙に書いて説明するなどしており,この段階においては必ずしも消極的な態度をとってはいなかったものと認められる。
そして,被告人Bの果たした役割についてみるに,下見をした点は相当重要な役割を果たしたものというべきである。すなわち,被告人Aは,被告人Bから報告を受け,予め郵便局内の様子を詳細に把握した上で強盗を行うことができることとなり,これに関しての心の準備ができたものである上,自ら下見を行って再び強盗に入るという不審な行動をとることを避けることができたのであるから,被告人Bによる下見行為は,被告人Aの実行行為を物理的,精神的に支えたものと認められる。
かかる役割に加えて,被告人Bが被告人Aと行動を共にし続け,犯行時には指示された場所でU車に乗車して待機し,犯行後は同被告人の逃走を助け,被告人Aが実際に手中に収めた21万円の中から3万円の報酬を受け取っている事実等を併せ考慮すると,被告人Bは,被告人Aとともに,郵便局強盗を遂行,成功させるために,受動的ながらも重要な役割を担ったものであり,その内容
からは同被告人と共同で犯罪を実現したものというべきであるから,M郵便局の強盗について共同正犯としての罪責を免れない。
第5

自首の成否(被告人Aについて,争点④)

1
被告人Aの弁護人は,判示第1,第2の1ないし4及び第3の各事件について,被告人Aには自首が成立する旨主張する。

2
証人Zの公判供述,上申書(弁1)
,被告人Aの警察官調書(弁3)
,鑑定

書(弁5)によれば,被告人Aは,8月10日,Tに対する詐欺の被疑事実で逮捕され,同被疑事実で勾留中の同月23日午前,被告人Aに対し,Dの現状や殺害方法等を質問事項としたポリグラフ検査が実施されたこと,被告人Aは,同日午後に行われた取調べにおいて,判示第1及び第2の1ないし4の各事実を認める上申書を作成して提出したこと,被告人Aは,別件で勾留中の10月初めころに至り,判示第3のM郵便局の強盗について自供したことが認められる。
3(1)

そこで検討するに,前記1の各事実についての捜査経緯について,そ
の実質的な捜査指揮官であった証人Zは,公判廷において以下のとおり供述している。

千葉県警察は,4月28日ころ,Dの弟であるA①から,Dについての家出人捜索願を受理していたところ,D以外の人物がDの銀行預金口座から多額の現金を引き出していたことが判明したことなどから,Dの失踪が営利目的の略取等によるものであると疑っていた。


その後の捜査で,8月初めころまでに,Dの失踪前の最後の携帯電話の発信歴が被告人A宛てであったこと,D方から,被告人Aに対する貸付けの事実が記載された紙片が発見されたこと,被告人Aの平素通っていた埼玉県川口市内のカジノクラブ付近の駐車場において,DのV車が発見されたこと,被告人Aが,4月18日から同月20日にかけて,複数人に合計250万円以上の現金を振込送金したが,その原資が不明であったこと,
同月19日にDの銀行預金口座から現金を引き出した者の1人が,被告人Aの平素通っていた埼玉県川口市内のカジノクラブの従業員であったことなどが判明したことから,千葉県警察は,被告人Aが強盗目的でDを殺害した蓋然性が極めて高いものと疑っていた。

千葉県警察は,5月ころ,被告人AからDの失踪について任意で事情聴取をしたものの,8月10日,前記2のとおり被告人Aを逮捕した後は,違法な別件逮捕とのそしりを免れるため,Dの失踪について被告人Aを取り調べることはしていなかった。
同月23日午前,前記2のとおりポリグラフ検査を実施したところ,被告人Aは,Dが屋外で刃物で刺されて殺害されて既に死んでおり,霞ヶ浦北部の山林に埋められている,などの項目に反応を示したことから,千葉県警察は,被告人AがDから金品を強取して殺害し,その死体を遺棄したと確信した。
被告人Aは,同日午後に行われた取調べにおいて,前記2のとおり,判示第1及び第2の1ないし4の各事実を認める旨の上申書を作成して提出した。


その後,被告人Bに対する取調べにおいて,同被告人が,被告人Aに頼まれて見張りをやったことがあるなどと供述し,被告人Aに余罪があることをほのめかしたことなどから,千葉県警察は,被告人Aがほかにも犯罪を犯しているという疑いを強く持ち,被告人Aに対し,ほかに事件を犯していないか何度も追及したところ,10月初めころに至り,前記2のとおり,被告人Aは判示第3のM郵便局の強盗を自供した。

(2)

そこで,Zの上記供述の信用性を検討するに,Zは千葉県警察本部警
察官として,Dに対する強盗殺人事件等の捜査指揮に従事していたものであり,その捜査状況等に関してことさらに虚偽の供述をする理由はない。そして,同人の供述は,ポリグラフ検査の鑑定書等の客観的証拠や被告人Aの取
調べ状況等とも符合する上,その内容は具体的かつ詳細であって,十分に信用できる。
4
上記Zの供述に基づき,自首の成否について検討する。
(1)

まず,判示第1及び第2の1ないし4のDの強盗殺人等についてみる
と,Zの供述によれば,千葉県警察は,多くの情報や証拠資料を収集し,それらに基づいて被告人Aが上記事件の犯行を行った可能性が高いと判断していたことが認められ,かかる嫌疑に基づいて,8月23日午前,被告人Aのポリグラフ検査を実施した結果,被告人Aが,Dが屋外で刃物で刺されて殺害されて既に死んでおり,霞ヶ浦北部の山林に埋められている,などの項目に反応を示したことから,被告人Aに対する嫌疑をいっそう強めていたもので,同被告人が上記事件の犯行を行ったと千葉県警察が判断したのには十分合理的な根拠があったと認められるから,遅くともポリグラフ検査の時点において,被告人Aが上記事件の犯行を行ったことは捜査機関に発覚するところとなったものというべきである。
また,千葉県警察は,5月ころから被告人Aに対し本件に関し任意で事情聴取をしていたものである上,被告人Aは8月23日午前中にポリグラフ検査を受検し,同日午後の取調べにおいて犯行を自白したものであることからすると,ポリグラフ検査の質問項目等から自己に強い嫌疑が及んでいることを十分承知していたものと認められ,かかるポリグラフ検査の受検と被告人の自白との間には密接かつ強度の因果関係が存在することが認められるから,被告人Aの自白は自発的になされたものともいえないというべきである。(2)

次に,判示第3のM郵便局における強盗事件については,犯罪事実自
体は捜査機関に発覚していたものであるが,犯人が誰であるかは発覚しておらず,千葉県警察においても,被告人Aに何らかの余罪があるとは疑っていたものと認められるものの,同被告人が上記強盗事件の犯人であると疑っていたとは認められない。

しかしながら,被告人Aは,Dに対する強盗殺人事件等で取調べ中に余罪を追及され,その結果,上記強盗事件を自ら供述したものであって,このような状況のもとでの供述は自発的な申告とは認められないから,法律上の自首の要件を欠くものである。
(3)

以上によれば,いずれの事件についても,被告人Aについて自首は成
立しないというべきであって,被告人Aの弁護人の主張は理由がない。(法令の適用)
被告人Aの判示第1の所為は包括して刑法60条,240条後段(236条1項,2項)に,被告人Bの判示第1の所為は同法60条,240条後段に,被告人両名の判示第2の1の所為は行為時においては同法60条,平成18年法律第41号による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,銃砲刀剣類所持等取締法22条に,裁判時においては刑法60条,上記改正後の銃砲刀剣類所持等取締法32条5号,銃砲刀剣類所持等取締法22条に,判示第2の2の所為は刑法60条,190条に,判示第2の3の別表番号1ないし3及び同4ないし6の各所為はそれぞれ包括して行為時においては同法60条,平成18年法律第36号による改正前の刑法235条に,裁判時においては刑法60条,上記改正後の刑法235条に,判示第2の4の所為のうち,有印私文書の各偽造の点はいずれも同法60条,159条1項に,その各行使の点はいずれも同法60条,161条1項,159条1項に,詐欺の点は同法60条,246条1項に,判示第3の所為は同法60条,236条1項に,被告人Aの判示第4の1及び2の各所為はいずれも同法246条1項にそれぞれ該当するところ,判示第2の1の罪については経過規定が存しないので前記改正後の銃砲刀剣類所持等取締法32条5号,銃砲刀剣類所持等取締法22条を適用し,判示第2の3の各罪については,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるからいずれも刑法6条,10条により軽い裁判時法の刑によることとし,判示第2の4の偽造有印私文書の一括行使は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,有印私文書の各偽造とその各行使と詐欺との間にはそれぞれ順次手段結
果の関係があるので,同法54条1項前段,後段,10条により結局以上を1罪として最も重い詐欺罪の刑(ただし,短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。
)で処断し,判示第1の罪について所定刑中無期懲役刑を,判示第2の1及び3の各罪について各所定刑中いずれも懲役刑をそれぞれ選択し,被告人Aの判示第1,第2の1ないし4,第3及び第4の1,2の各罪,被告人Bの判示第1,第2の1ないし4及び第3の各罪はそれぞれ同法45条前段の併合罪であるが,判示第1の罪につき被告人両名をそれぞれ無期懲役に処し,同法46条2項により,被告人両名に対し,他の刑を科さず,同法21条を適用して,未決勾留日数中,被告人Aに対しては340日を,被告人Bに対しては310日を,それぞれその刑に算入し,押収してある請求書2枚(平成19年押第42号の2,3)の各偽造部分は,いずれも判示第2の4の偽造有印私文書行使の犯罪行為を組成した物で,何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用して被告人両名からこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させないこととする。
(量刑の理由)
第1

事案の概要
本件は,被告人両名が,共謀の上,被害者Dに対し暴行を加えてキャッシュカード等を強取した上,その強盗の機会に同人を包丁で突き刺して殺害し,それによって,被告人Aにおいてはさらに同被害者に対する債務を免れた強盗殺人(判示第1)
,上記殺害の際,業務その他正当な理由による場合でないのに,
本件包丁を携帯した銃砲刀剣類所持等取締法違反(判示第2の1),その後,
被害者Dの死体を山林内に埋めて遺棄した死体遺棄(判示第2の2),上記強
取にかかるキャッシュカードを使用して,現金自動預払機から前後6回にわたり現金を窃取し,あるいは払戻請求書を偽造・行使して現金を詐取した窃盗,有印私文書偽造,同行使及び詐欺(判示第2の3,4)
,郵便局において,局
長らを脅迫して現金を強取した強盗(判示第3)
,被告人Aが,知人及び取引

先の顧客から,株式申込金ないし株式譲渡名下に現金を詐取した各詐欺(判示第4の1,2)の各事案である。
第2

被告人両名に共通の情状

1(1)

まず,判示第1,第2の1,2の強盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法
違反,死体遺棄についてみるに,被告人両名は,事前に包丁や緊縛用のロープ,ガムテープ等を用意し,キャッシュカードの強取手順や,その暗証番号を聞き出す方法等についても予め画策した上で被害者D方に赴き,同被害者に対し,狂言強盗に協力してくれなどと申し向けながら包丁を示し,渋る同被害者をロープで緊縛するとともに,その両手首をガムテープでぐるぐる巻きにするなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,キャッシュカード等の入った財布を強取したものであり,強取の点については極めて周到な計画に基づく大胆かつ粗暴な犯行であって,悪質である。
そして,被告人両名は,キャッシュカード等を強取すると,被害者Dを緊縛したままキャッシュカードの暗証番号を教えるように,包丁で脅迫するなどしながら執拗に迫り,暗証番号を聞き出した後も,同被害者を緊縛したまま,ソファごとガムテープで巻き付けて監視した後,自動車に乗せて長時間にわたり連れ回すなどして同被害者を恐怖に晒し続けた上,河川敷に赴き,同被害者が必死に叫び声を上げるのもかまわず刃体の長さ16センチメートル余りの鋭利で殺傷力の高い危険な刃物である本件包丁をその胸部目がけて力を込めて突き刺して一気に殺害したものであり,殺害の点についても,極めて冷酷非情かつ残忍で凶悪な犯行である。
被告人両名は,被害者Dを殺害すると,同被害者の死体を自動車に積載して運搬し,容易に発覚しないような場所を探した末,本件遺棄場所である山林内に穴を掘って同死体を埋めて遺棄した上,野犬などに掘り返されないように同所に猫よけ剤を撒くなどしたものであり,かかる行為についても,死者に対する尊厳を著しく欠く行為として強い非難を免れない。

(2)

被害者Dを殺害した本件結果が極めて重大であることはいうまでもな
いところ,同被害者は,被告人Aの依頼に応じて多額の金銭を貸し付けるなどその便宜を図っていたもので,被告人両名に殺害されるような理由は何らなかったにもかかわらず,突然緊縛されてキャッシュカード等在中の財布を奪われ,さらに自動車で連れ回された上,包丁で突き刺されて殺害されたものであり,その間に被った精神的苦痛や恐怖心も甚大であるし,実家の後継ぎとして事業や結婚にも意欲的であったというのにもかかわらず無惨に命を絶たれた無念の程は察するに余りある。
財産的損害についても,現金数万円等のほかに暗証番号を聞いて現金を引き出す目的でキャッシュカード3枚も強取されているが,これらの損害に対する弁償等の措置は何ら講じられていない。
(3)

被害者Dの弟は,被告人両名の行為は人間のすることではないなどと
述懐し,被告人両名に対する処罰感情は峻烈を極めている。また,被害者Dの妹は,急性骨髄性白血病に罹患し,同被害者からの骨髄移植を受ける予定であったが,本件により被害者Dの骨髄を移植することができなくなって,最善の治療を受けられなくなり,結果として死亡したことが認められるところ,被害者Dの弟及び妹の夫が,この点で,妹も被告人両名に殺されたも同然であると訴え,被告人両名に対する厳罰を求めるその心情は十分に理解できるものである。これらの点にかんがみると,本件が被害者Dの遺族に与えた影響にも極めて大きいものがある。
2
次に,判示第2の3,4の窃盗,有印私文書偽造,同行使及び詐欺については,いずれもDから強取したキャッシュカードを使用して同人の銀行口座から現金を引き出したというものであるところ,被告人両名は,犯行が容易に発覚しないように,自ら引き出すことは避けつつ,情を知らないカジノクラブの従業員に引き出させるなどしたものであって,その態様は周到かつ狡猾なものであって,悪質である。

財産的損害額も,窃盗と詐欺の各事実を併せると524万円にも及んでおり,極めて多額であるが,これらについても被害弁償等の措置はとられていない。3
さらに,判示第3のM郵便局に対する強盗についてみるに,本件は,包丁等を用意し,ペットボトルを火炎びんに見せかけるなどの工作をし,下見を行って郵便局内の様子を予め把握した上で,閉店間際の客足の途絶えた時間を見計らって敢行したものであり,十分な計画性が認められる。その態様は,火炎びんに見せかけたペットボトルを示しつつ,包丁を見せつけて郵便局長らを脅迫して現金を奪ったものであり,卑劣かつ危険な犯行であって悪質である。強取に係る現金は合計111万5000円と多額であり,このうち,90万5000円については,直後に被告人Aが落としたため実害が生じていないものの,残額の21万円については,被告人らが手中に収めているのであって,これらについて被害弁償等の措置は何ら講じられていない。
被害者である郵便局長は,包丁を示されるなどして脅迫されて,殺されるかもしれないという不安に晒されるとともに,事件後も模倣犯が現れるのではないかという強い不安を訴えており,被告人らに対して厳しい処罰を望んでいる。
第3
1
各被告人個別の情状
被告人Aについて
(1)

被告人Aは,前記のとおり,Cの業績が悪化したことや,バカラ賭博
等のギャンブルにのめり込んで浪費したことなどにより借金を重ね,被害者Dからも,多額の借入れをして,その返済の目処が立たなかったことなどから同被害者の殺害を決意し,併せて同被害者から金品を強取することを思い立ったというのであって,その動機は,利欲的で身勝手極まりない上,自己中心的かつ短絡的なもので酌量の余地は全くない。
そして,被告人Aは,前記のとおりキャッシュカード等を強取したのみならず,併せて被害者Dに対する債務550万円を免れており,かかる財産的損害の額も極めて多額である。

被告人Aは,被告人Bを犯行に誘い込んだ上,強取の方法や,強取したキャッシュカードの暗証番号を聞き出す方法等に関して自ら首謀者として積極的に計画を立て,犯行の際にも,自ら被害者Dを緊縛するなどした上,最終的に同被害者を殺害するについても,自分から被告人Bに持ち掛けた上,刺突行為も自ら行い,死体遺棄についても自らの主導により行っているのであるから,これらの役割にかんがみると,被告人Aは圧倒的に主導的な立場にあったものと認められる。
(2)

そして,強取に係るキャッシュカードを用いてDの口座から現金を引
き出した行為についても,カジノクラブの従業員に対して直接引出しを指示するなどし,引き出した合計524万円のうち,474万円を自らの手中に収めているのであるから,その得た分け前も被告人Bに比しても極めて多額である。
(3)

また,判示第3の強盗の点についても,被告人Aは,Dのキャッシュ
カードを用いて窃取し,あるいは詐取した金銭を借金の返済やバカラ賭博によってまたたく間に費消し,再び金銭に窮して敢行したものであって,極めて安易で短絡的な動機によるもので酌量の余地はなく,被告人Bを犯行に誘い込みつつ,この事件においても自ら首謀者として積極的かつ主体的に行動し続け,犯行計画についてはほとんど自らのみで立てた上,実行行為も1人で行い,手中に収めた21万円のうち8割以上に及ぶ16万円を自ら利得している。
(4)

さらに,判示第4の1,2の各犯行は,いずれも被告人Aが単独で敢
行した詐欺事件であるところ,被告人Aは,前記同様の身勝手な動機により,印刷業者に依頼して予め内容虚偽の株券を用意した上,株式申込金ないし株式譲渡名下に,確実に儲かるなどと言葉巧みに資金を引き出させつつ,犯行後は,配当と称して一定額の金銭を支払うなど,詐欺が容易に発覚しないような手段を講じるなどしており,犯行態様は極めて巧妙で手慣れた悪質なも
のである。
被告人Aは投資者を募っては同様の方法による詐欺を繰り返していたことも窺われるのであって,本件は常習的に敢行された詐欺の一環であるといえるところ,本件2件の詐欺の被害額は合計900万円に及んでおり,財産的損害は多額である。これらの被害について被害弁償等の措置は何ら講じられていないのであって,各被害者が,大切な事業資金や老後の蓄えを奪われたと述べて,一様に被告人Aに対して厳しい処罰感情を有しているのも当然である。
(5)

他方で,被告人Aについては,法律上の自首には当たらないとはいえ,
当初から事実を素直に認めて反省の態度を示していること,被害者Dの遺族に対して謝罪の手紙を送付していること,前科前歴がないことなど,同被告人のために酌むべき事情も認められる。
2
被告人Bについて
(1)

被告人Bは,分け前等の報酬欲しさから,安易に被告人Aの誘いに応
じて本件各犯行に加担したものであって,利欲目的の極めて短絡的な動機に酌量の余地はない。
(2)

D殺害等の点についての被告人Bの役割についてみるに,同被告人は,
被告人Aと比べると,従たる役割しか果たしていないといえる。しかしながら,被害者D方に赴く際にはガムテープを購入することを自ら発案し,これを実際に同被害者を緊縛する際に用いるなどしており,また,同被害者から暗証番号を聞き出す際には,自らの判断により,本件包丁を同被害者の座っていたソファに叩きつけて脅迫するなどしたのみならず,同被害者の殺害時にも,被告人Aとの打合せどおりに同被害者を自動車から降ろさせ,被告人Aによる刺突行為の準備行為を行うとともに,同被告人が同被害者の胸部を突き刺している際には,叫び声を上げた同被害者の口を塞いで周囲に聞こえないようにするなど,被告人Aによる殺害行為に密着して行動を共にしてい
る。そして,その後も被害者Dの死体を自動車に積載し,遺棄するに際しても被告人Aと終始一緒に行動し続けている。これらのことからすれば,被告人Bは,従属的な立場にあったとはいえ,能動的に相応の役割を果たしていたものと認められる。そして,そのような被告人Bの行動が,被告人Aの犯行の遂行を精神的に後押しした側面も否定できないのであって,この点での被告人Bの役割も軽視できない。
(3)

また,被告人Bは,強取行為自体による利得を手中に収めたとは認め
られないが,それに引き続き,キャッシュカードで現金を引き出した中から合計50万円を受け取るとともに,従前Cから行動費等の名目で被告人Aから支給され,リフォーム等の契約獲得時に清算すべきであった30万円余りの借入金について被告人Aから免除を得ているのであるから,自らの役割に応じて相応の報酬を得たというべきである(被告人Bは,公判廷において,受け取った報酬は24万円にとどまり,また,被告人Aから受け取っていた行動費等については返済する必要のない金銭であったなどと供述する。しかし,被告人Aは,被告人Bに対し,Dのキャッシュカードを用いて引き出した金銭のうち,4月17日に引き出した150万円の中から翌18日未明に20万円を,同月19日に引き出した374万円の中から同日30万円をそれぞれ渡した旨具体的かつ詳細に供述しており,その供述は信用できる反面,被告人Bは,同月19日に引き出した374万円の中からは一切報酬をもらっていないというのであって,当初報酬について一,二割という約束があったことに照らし不自然である上,被告人Bは,捜査段階においては,報酬は10万円であったなどとことさら虚偽の供述をしていることからしても,その供述は信用できない。また,行動費等については,被告人Bの給与の計算表にも計上されているものであるから,被告人Bが供述するように,過去にCの退職者が清算していなかったという事実があるからといって,清算の必要のない金銭であったとは認められず,かかる行動費等の清算を免れた点も,
被告人Bの利得と考えるべきである。。

(4)

郵便局の強盗についても,被告人Bの役割は,下見行為をした上,現
場近くで待機して,実行役である被告人Aの逃走を援助するというものであって,従属的な役割にとどまるものではあるが,下見行為をして,郵便局内の局員の数や来客の数,局内の様子等を報告することにより,被告人Aによる犯行を物理的,精神的に容易にしたといえる。その上,被告人Bは,被告人Aが逃走してきた際には,同被告人が少しでも早くU車に乗り込めるように自らの判断でU車を移動させるなどしているのであるから,被告人Bは,ある程度積極的な立場で相応の役割を果たしたというべきである。(5)

被告人Bは,捜査段階においても故意に虚偽の供述をするなどした上,
Dに対する強盗殺人等の事実について,被告人Aとの殺害の共謀を否認し,公判廷に至ると,強盗の意思でD方に赴いたのではないなどと供述して強盗の犯意の発生時期についても供述を変遷させて争っており,真摯な反省の態度は見受けられない。
(6)

他方で,被告人Bについては,被告人Aに比べれば,その果たした役
割は従属的なものにとどまり,Dの殺害行為や郵便局の強取行為自体は行っておらず,また,取得した分け前等についても比較的少額であったこと,D殺害の共謀以外の点については事実を概ね認めて被告人Bなりの反省の言葉を述べていること,前科前歴がないことなど,被告人Bのために酌むべき事情も認められる。
第4

結論
以上に検討したところに基づき,被告人両名の量刑について検討するに,被告人Aについては,前記の情状,殊に,本件のいずれの犯行についても首謀者として主体的かつ積極的立場にあって極めて重大な役割を果たしたことなどにかんがみると,前記のとおり被告人Aのために酌むべき事情を総合考慮しても,終生被害者Dのめい福を祈らせてその犯した重大な犯罪の償いをさせるのが相
当である。
次に,被告人Bについても,その果たした役割が被告人Aに比して従たる役割にとどまるとはいえ,前記のとおり,いずれの事件においてもある程度積極的な立場で行動し,被害者Dの殺害についても,刺突行為時にその口を押さえ付けるなど,被告人Aによる刺突行為に密着して行動を共にしており,その後も被告人Aと一緒に罪証隠滅行為に及んでいることなど,相応に重要な役割を果たしていること,それにもかかわらず,被害者Dの殺害の点に関して反省の態度が見受けられないことなどに照らすと,前記のとおり被告人Bのために酌むべき事情を総合考慮しても,いまだ酌量減軽までするのが相当な事案とはいえず,被告人Aとともに,生涯被害者Dのめい福を祈らせてしょく罪に当たらせるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

被告人両名に対し無期懲役及び偽造文書の偽造部分の没収)

平成19年10月31日
千葉地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

彦坂孝孔
裁判官

作田寛之
裁判官

山岸秀彬
(別表省略)

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