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懲戒処分取消し請求事件(通称 町立小学校教諭停職)
事件番号平成17(行ウ)5
事件名懲戒処分取消し請求事件(通称 町立小学校教諭停職)
裁判年月日平成19年9月14日
裁判所名・部佐賀地方裁判所  民事部
結果棄却
判示事項の要旨他の職員に対する職務命令の発出の妨害したことや職員会議に欠席したこと等を理由とする町立小学校教諭2名に対する県教育委員会による懲戒処分が,各行為はいずれも適法な県教育委員会による学校訪問に反対する目的の下に行われたものであって,各行為の態様等からして,いずれも社会通念上著しく妥当を欠くものではなく,懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず,適法であるとされた事例
裁判日:西暦2007-09-14
情報公開日2017-10-17 20:47:01
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佐賀地方裁判所民事部平成19年9月14日判決
平成17年(行ウ)第5号

懲戒処分取消し請求事件

主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。


第1
1実及び理由
請求の趣旨
佐賀県教育委員会(以下県教育委員会という。が原告Aに対して平成3)
年3月23日付けでした停職4月の処分(以下本件停職処分という。は,)
これを取り消す。

2
県教育委員会が原告Bに対して平成3年3月23日付けでした戒告処分(以下本件戒告処分といい,本件停職処分と併せて本件各処分という。は,)
これを取り消す。

第2

事案の概要

1
事案の要旨
本件は,a町立b小学校(以下本件小学校という。に勤務する教諭であ)
った原告らが,県教育委員会が同委員会学校教育課指導主事による平成2年度学校訪問に関連する原告らの職務命令違反等を理由に,平成3年3月23日付けでした,原告Aに対する本件停職処分及び原告Bに対する本件戒告処分が違法であるとして,被告に対し,本件各処分の取消しを求めた事案である。
2
争いのない事実等(争いのある事実については,文末掲記の証拠により認定した。

(1)

原告らの地位
原告A(昭和13年1月1日生)は,昭和36年4月に長崎県の小学校
-1-

教諭として採用された後,昭和39年4月に佐賀県の小学校教諭として採用され,平成10年3月に定年退職した地方公務員である。原告Aは,その間,昭和58年4月から平成4年3月まで,本件小学校に勤務していた(甲E9,乙A5)


原告B(昭和31年12月15日生)は,昭和54年4月に佐賀県の小学校教諭として採用され,現在もその職にある地方公務員である。原告Bは,その間,平成2年4月から平成8年3月まで,本件小学校に勤務していた(甲B42,乙A5)


(2)

学校訪問の実施
県教育委員会学校教育課は,本件小学校に対し,平成2年10月24日に
平成2年度学校訪問を予定していたが,これを延期して,同年11月20日に実施した(以下10月24日予定のものを第1回学校訪問11月20,
日に実施されたものを第2回学校訪問といい,併せて本件学校訪問という。(争いがない。。


(3)

原告らの職員会議への不出席
原告ら及びC教諭,D教諭,E教諭,F教諭,G教諭は,平成2年11月
9日午後4時から開催された職員会議(以下本件職員会議という。に出)
席しなかった(争いがない。。

(4)

県教育委員会による本件各処分
県教育委員会は,平成3年3月23日,原告Aに対し,地方公務員法(以
下地公法という。29条1項に基づき停職4月の懲戒処分(本件停職処)
分)を,原告B,C教諭,D教諭,E教諭,F教諭及びG教諭に対して,同法29条1項1号及び2号に基づき戒告処分(原告Bに対するものが本件戒告処分である。
)をそれぞれ行った(争いがない。。

(5)

本件停職処分の処分理由
本件停職処分の処分理由は,次のとおりである(乙A1)


-2-


職務命令書発出の妨害
原告Aは,平成2年10月22日職員朝会終了後本件小学校職員室で,H校長が,
学習指導案を提出していない7名の教諭以下原告B外6名」

ともいう。に職務命令書を手渡すため席を離れて同教諭らのところへ行こ)うとしたところ,校長の前に立ちはだかり,これを妨害した。更に,校長が事務室から出てくるC教諭に職務命令書を手渡そうとしたところ,再び校長と同教諭の間に割り込み,これを妨害した。また,同日1校時終了後に,校長が学習指導案を提出していない原告B外6名に対し発出した職務命令書を,職員室の同人らの机上から不当にも収集した。このことは,校長の適正な職務執行を阻害する行為である。イ職員会議の不出席原告Aは,校長から同年11月9日午後4時から職員会議(本件職員会議)を開催することをあらかじめ指示されており,更に同時刻に至り2回にわたり出席の指示が繰り返されたにもかかわらず,これに出席しなかった。ウ原告Aは,同年10月24日及び同年11月20日の学校訪問の実施に関し,次のような教職員としてあるまじき言動を再三行った。(ア)H校長の指示への不服従本件小学校の教務主任として校長の監督の下教育計画の立案その他教務に関する事項を分掌しており,学校訪問当日の日程の決定や学習指導案の提出について,校長に協力して職務を遂行すべきところ,かえって校長の指示にことごとく従わなかった。(イ)他の教諭に対する恫喝的発言同年10月15日他の教諭に対し校長からの学校訪問当日の日程等の相談には絶対乗らないよう,恫喝ともいえる発言を行った。-3-(ウ)H校長に対する恫喝的発言更に,校長に対しても,たびたび恫喝的言動を行った。中でも同月16日には,校長に対して学校訪問が実施されれば学校訪問当日混乱が起きる旨の恫喝的発言を行った。(エ)H校長に対する侮辱的発言また,校長に対する侮辱的発言も,たびたび行った。中でも同月20日には,教育長は校時等に職務命令が出せるのか。「そんなことが分からんお前は,それでも校長か。などと校長を侮辱した。エ
上記ウの(ウ)及び(エ)の言動は,校内の児童がこれを感知するか否かに一切配慮することなく行われたため,児童の感知するところとなった。このため,これを知った保護者や校区内住民の動揺と学校に対する不信を生じさせるところとなった。


これらの原告Aの行為は,地公法32条及び33条並びに地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下地教行法という。43条2項に違)
反し,教職員としての自覚と責任に欠ける極めて遺憾な行為である。
(6)

本件戒告処分の処分理由
本件戒告処分の処分理由は,次のとおり,本件職員会議への不出席」である(乙A2)なお,C教諭,D教諭,E教諭,F教諭及びG教諭に対する処。分理由も同旨である(乙A5)。すなわち,原告Bは,H校長から平成2年11月9日午後4時から職員会議(本件職員会議)を開催することをあらかじめ指示されており,更に同時刻に至り2回にわたり出席の指示が繰り返されたにもかかわらず,これに出席しなかった。そもそも職員会議は,学校運営上不可欠のものであり,これに出席しないという原告Bの行為は,地公法32条,地教行法43条2項に違反し,教職員としての自覚と責任に欠ける極めて遺憾な行為である。-4-(7)原告らの審査請求と人事委員会の裁決原告ら,C教諭,D教諭,E教諭,F教諭及びG教諭は,平成3年5月16日,佐賀県人事委員会に対し,本件各処分及び上記(4)の戒告処分の取消しを求める審査請求をしたところ,同委員会は,平成17年3月24日,本件各処分及び上記(4)の戒告処分をいずれも承認する旨の裁決をした(甲D1,乙A5)。(8)原告らの本訴提起原告らは,平成17年9月22日,本訴を提起した(顕著な事実)。3争点(1)原告らの本件各処分事由の有無ア原告らの本件職員会議不出席イ原告Aの職務命令発出の妨害ウ原告Aの教師としてあるまじき行為(2)本件各処分の違法性の有無アイ学習指導案提出に関する職務命令の違法性ウ4本件学校訪問の違法性懲戒処分の裁量権の逸脱・濫用争点に関する当事者の主張(1)ア原告らの本件各処分事由の有無について原告らの本件職員会議不出席〔被告〕(ア)職員会議の招集権は,下記のa町立小,中学校の管理に関する規則17条に基づき校長に属する。記a町立小,中学校の管理に関する規則(職員会議)-5-第17条校長は,校務運営上必要と認めるときは,職員の意見を聞くために職員会議を開くことができる。23(イ)職員会議は,校長,教員及び事務職員をもって構成する。職員会議は,校長が招集し,及び主宰する。H校長は,別紙時系列主張対比表(以下単に「時系列主張対比表
という。11・11月8日欄記載のとおり,

翌9日の本件職員会議を招
集した。
(ウ)

H校長の本件職員会議の招集は,同職員会議への出席の職務命令に
当たり,職員室の黒板への板書及び2回の校内放送で告知されていた。(エ)

原告らは,
本件職員会議の招集を知りながら,
本件小学校の佐賀県教

職員組合以下県教職員組合という。の組合員(以下単に組合員


という。間でのいかなる状況であろうと本件職員会議には出席しないと)
いう事前決定に従って意図的に同職員会議に出席しなかった。
原告Aが,指導案を出さないという実行行為をしていないのにかかわらずそれを県教育委員会が処分するとしたことに,本件職員会議に出なかった理由はあるという趣旨の供述をしているとおり,同職員会議への出席拒否は,原告らの処分撤回の要求が受け入れられなかったために行ったものであり,正当性はない。
(オ)

原告らは,本件職員会議は,学校運営上不可欠なものではなく,1
1月14日に開催されたとしてもさしたる支障はなかったことを主張するが,同職員会議が重要ではないことは,職務命令への不服従の正当な理由にはなり得ない。
〔原告ら〕
(ア)

H校長は,時系列主張対比表11・11月8日欄記載のとおり,同
日の職員朝会時には,翌9日の本件職員会議を招集していない。
(イ)

被告は,
H校長による行事黒板への板書や校内放送による本件職員会

-6-

議の招集が職務命令に当たるという主張をするが,
職務命令としての手続
上不備があり,また,極めて謀略的に行われてたものであり,不当・不法である。

手続上の不備
懲戒処分は,職員の身分や給与にかかわり,大きな不利益が生じる。そのため,職務命令を発する場合は,明確さが要求される。当時問題になっていた学習指導案提出の職務命令は,慎重を期して,いつ・誰に・何を出すのかをはっきりと文書にして出されており,
違反すれば処分が
伴うとの警告もされていた。また,ストライキの場合は,ストライキに先立って,組合も通告し,校長も職員集合をかけ県教育委員会教育長の警告文書を読み上げて指導し,
突入時刻をお互いに確認しあって臨んで
いた。
しかし,H校長は,原告らに対して,本件職員会議開催が職務命令であることについて説明しておらず,職務命令書も渡していないし,指導や警告もしていない。
黒板への板書と校内放送で告知が足りるというこ
とはできない。
また,
I教諭は,
9日の給食の初めか終わりにJ教頭の許可を得て同
日午後3時から年休を取得しているところ,そもそも,本件職員会議が職務命令を行う必要があるほどに重要であったとはいえない。
更に,8日の職員朝会時に年休を取っていたK養護教諭に

9日に職員会議があることになった。とも「これは職務命令である。とも一切


告げていない。


謀略的であること
L教諭(非組合員),
は第1回学校訪問についての話合いのための職
員会議について10月20日(土)に職員室の行事黒板への板書及び校内放送で招集を受けたにもかかわらず,出席しなかったが,県教育委員
-7-

会はこの不出席について懲戒処分をしていない。
また,J教頭は,本件職員会議の開始時刻に出席していなかったK養護教諭(非組合員)のみを呼びに行き,組合員7名は呼びに行かなかった。
H校長は,
前日8日午後6時に事務所長から板書の写真撮影の指示を
受けて,これは大変だというふうに私も判断しておりました。と考え
ていたにもかかわらず,そのことを知らせて指導したり,不出席への処分もあり得る等警告を発することなく,その上,不出席の事実が発生した後に,原告らの様子を見て回っている。
当時の県教職員組合の方針は処分を出さない闘いであった。原告
らが,本件職員会議の招集が職務命令だと認識しているならば,当然,出席していたであろうことは容易に予想されるものである。

原告Aの職務命令発出の妨害
(ア)

原告B外6名に対する職務命令書手交の妨害

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,10月22日,
H校長の原告B外6名に対する職務命令書の手交を妨害した。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,職務命令書の手交を妨害した事実はない。
また,H校長の職務命令書の手交は,参観日の朝で,しかも授業が始まっているにもかかわらず,教職員に職務命令書を渡そうとする非常識な行動であって,原告Aが校長に抗議をし,教職員に対して教室に行くよう促すのは正当な行為である。
(イ)

C教諭に対する職務命令書手交の妨害

〔被告〕

-8-

原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,10月22日,C教諭に対する職務命令書の手交を妨害した。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,10月22日,C教諭に対する職務命令書の手交を妨害した事実はない。原告Aが,H校長の授業が始まり教室へ急ぐC教諭に職務命令書を渡そうとすることやH校長の授業より職務命令書を渡すことの方が大事という発言に対して抗議するのは,正当な行為である。
(ウ)

職務命令書の回収

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,10月22日,
H校長が原告B外6名の机上に置いた職務命令書を回収した。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,職務命令書を回収したのは事実である。
しかし,校長報告書には,原告Aが県教職員組合c支部本件小学校分会以下本件小分会」

という。の代議員でもあるし,)内容を確認して,同分会所属の組合員(以下「本件分会員

という。の命令書を保管して)
やっているものと思い,
そのままにさせていたという趣旨の記載があり,
H校長自身は発出を妨害されたと認識していない。
また,
同じ校長報告書によれば,
本件分会員は,
口頭で指示された後,
自分の書類の下に挟んだ(G教諭)「もっておいてください』と言っ『たら,自分の机上に再び置いた(原告B)など,職務命令書を受け取っ」
ている。一度受け取られたものを,その後回収したからといって,校長から職務命令発出の妨害とか,不当違法と言われる筋合いはない。もともと組合として回収することもあったし,回収された本人にとっても何
-9-

ら問題はない。

原告Aの教師としてあるまじき行為
(ア)

原告Aの職務上の義務

〔被告〕
原告Aは,a町立小,中学校の管理に関する規則8条の2第2項に基づき,本件小学校教務主任として校長の監督の下教育計画の立案その他教務に関する事項を分掌し,同校の行事計画の立案等を行っており,学校訪問に関しても当日の日程の決定や指導案の提出について,H校長に協力して職務を遂行すべき義務を負っていた。
〔原告A〕
本件学校訪問は,
後述のとおり違憲・違法であるから,
これに関して,
原告AはH校長に協力して職務を遂行すべき義務を負わない。
(イ)

10月8日におけるH校長の指示への不服従

〔被告の主張〕

原告Aは,時系列主張対比表1・10月8日欄記載のとおり,24日の日程と25日の日程を入れ替えて学校訪問当日に6校時まで授業を行うという日程案を提案した。


上記日程案の提案は,以下の点から,学校訪問を妨害する意図をもって行われた。
(a)

上記日程案に従うと,通常の時間割で6校時までの授業を行う

と午後3時55分までかかり,また,計画訪問実施要項では原則として学校訪問の終了時間は勤務時間終了前30分となっていたか
ら,訪問便覧では1時間20分程度とされている十分な研究協議の時間を確保することはできないものであった。
(b)

10月25日(木曜日)の午後の授業を24日(水曜日)の午

後に行うということについては推進委員会等で話し合われておら

-10-

ず,原告Aは独断で日程案の提案を行った。
(c)

原告Aは,9月19日及び10月3日の校内研の際,10月の

行事を決めた9月の職員会議の際には日程案の提示を行っていないが,学校訪問の実施日の2週間前になって上記日程案を提案した。(d)

H校長が

それは困りますね。午後は研究協議の時間をとることになっているんですが。

と発言したとき,原告Bが

私たちは基本的に県と事務所の訪問には反対です。物理的に阻止まではしないつもりですが,今のままでは協力できません。と発言し,原告A

が,これに呼応して

校長は職務命令だけは文書で出すくせに,我々が要求している法的根拠とか,dで要求したコメントとかは文書で一つも回答していない。やり方がきたない。と大声で怒鳴るなど,

学校訪問に強硬に反対する発言をした。
(e)

県教職員組合の中央委員会での確認事項の中で,学校訪問の際

に,指導・講評の時間はつくらない』

ということも目標の一つに挙
げられていて,この方針に基づき,原告Aは,研究協議を阻止したいと考え,阻止できないまでもできるだけその時間を取れないようにして午後の日程を入れ替えるという提案をしたものである。
〔原告A〕

原告Aは,時系列主張対比表1・10月8日欄記載のとおり,日程案を提案した。


原告Aの日程案の提案は,教務主任の職務として行われたことであり,殊更問題視されることではない。
(a)

上記日程案は,10月24日午後は2時間(五,六校時)授業

をして,その後に1時間30分の研究協議の時間を設けるものであり,特別校時にすれば,研究協議の時間が設けられないものではない。

-11-

(b)

日程案自体は,校内研究推進委員会で必ず話し合って決定すべ

き事柄ではなく,研究推進委員会で,4月段階に決まっていた24日の校内研を25日に変更することについては話し合った。
(c)

日程は校内研に直接関係することなので,推進委員会で話し合

ったのであって,運動会の練習などで,勉強の進み具合が遅れてそれを取り返すために時間を確保する問題は,本件小学校を含めたいずれの学校でも,教務部又は教務主任の職務であるとされてきたのが実情である。
なお,9月30日が運動会だったので保体部で話し合われ,体育
主任から運動会に向けての特別時間割案が提案され全職員で論議された。本件小学校の場合,分校が二つあるので,確かに運動会の練習時間が多くなることがあったのは事実であった。
9月26日の職員会議で提案するのが原則だが,9月30日に運
動会があり,その後にならざるを得なかったという事情もあった。原告Aは,2週間後であっても受けてもらえるというように判断
して,日程案の提案を行った。
(d)

H校長は6校時については,とにかく研究協議の時間を確保してほしいと発言したが,校長として6校時は絶対反対だとの意思表示はなく,また,職員からの反対意見はなかった。
原告Bは,本件小分会長,原告Aは同分会代議員であり,学習指
導案提出で,職務命令を出して学校訪問を実施すること,学校の訪問の目的・内容など基本的なことの提案,論議をせず,事務的に質問事項,学習指導案の形式などを優先するやり方をするH校長に対して,意見を述べるのは正当な行為である。やり方が前年度までと違い,高圧的で誠意がなく,堂々と論議することをしない,姑息で汚いやり方こそが問題である。

-12-

(ウ)

10月11日におけるH校長の指示への不服従及びH校長に対する
侮辱的発言
〔被告〕

不服従について
(a)

原告Aは,
時系列主張対比表2・10月11日欄記載のとおり,

同日の職員朝会で,H校長が校時について話合いを呼び掛けたにもかかわらず,話合い自体を拒否する発言を行った。
(b)

原告Aは,上記発言について,校長としては,こう考える」と
いうものを示してほしい旨要望し,またそうした提案があった上で,日程について話し合うのがいいのではないかとの意見を述べたと主張しているが,そのような発言はなく,そのような状況や雰囲気ではなかったことは明らかである。(c)また,原告Aは,反対した理由として,三,四校時と合わせて3時間も訪問授業になること及び事前に教務主任である同原告に相談しなかったことなどを挙げている。しかし,原告Aの反対は,学校訪問自体に強硬に反対していたことが根底にあるものであり,校長の責任であるとの主張は責任の転嫁である。これは,同月16日付けで本件小分会からH校長へ提出された要請書で「当日は,平常通りの勤務をするので,授業をみてまわることも,午後の研究協議もとりやめてほしい。などと記載されていることからも明らかである。

侮辱的発言について
原告Aは,
時系列主張対比表2・10月11日欄記載のとおり,校
長は全くのロボットになっていると述べており,仮に発言が声高にされたものでなくとも,
内容自体でH校長に対する侮辱的発言である。

〔原告A〕

-13-


不服従について
H校長は,学校訪問の計画に関して,10月4日に質問事項についてを,同月8日に質問事項,指導案形式配布を,同月11日に学校訪問日の日程を,それぞれ提案した。
H校長は,
時系列主張対比表2・10月11日欄記載のとおり,学
校訪問の目的,趣旨や研究協議の内容,柱などの学校訪問の基
本的なことについて,職員らに対して提案したり,協議をすることなく,指導案や質問事項,そして日程などを一方的に提案していたものである。
そして,H校長のこのようなやり方については,職員から批判が出たし,
原告Aは,
教務主任としても,
きちんと基本的なことを含めて,
校長の見識とリーダーシップを発揮して,校長としては,
こう考える
というものを示してほしい旨要望した。
被告がH校長への不服従に当たるとする原告Aの発言は,そうした提案があった上で,日程についても話し合うのがいいのではないかという意見を述べたものである。


侮辱的発言について
原告Aの発言は,時系列主張対比表2・10月11日欄記載のとおり,
H校長が,
職場の意見に耳を貸さずに上司の言うがままになって,
ロボット化していることを批判したものである。

(エ)

10月15日におけるH校長の指示への不服従及び他の教諭に対す
る恫喝的発言
〔被告〕

不服従について
原告Aは,時系列主張対比表3・10月15日欄記載のとおり,H校長が日程案を提案したにもかかわらず,これを議題とすること自体
-14-

に反対し,また,H校長からの教務主任としての協力の求めに対してもこれを拒否した。

恫喝的発言について
原告Aは,時系列主張対比表3・10月15日欄記載のとおり,学校訪問についてH校長との相談を行わせないために,他の教諭に対する恫喝的発言をした。
原告Aは,L教諭及びI教諭が個人的に校長室に呼ばれて相談に乗っていたことを知って,そのことを快く思っていなかったものと推測され,自分の席を立って職員室の中央付近のM教諭及びL教諭の座席近くに行って発言していること,原告A自身も普通の声よりも少しは高かったと思うと言っていること,この発言を受けた教諭のうちで指導案を提出していた教諭はそのことを内緒にするように,また,まだ提出していなかった教諭は提出を躊躇する発言を,この後校長に対して行っていることなどから,原告Aの発言は,威圧的で恫喝的なものであったと評価できる。

〔原告A〕

不服従について
(a)

H校長の日程案は,以下のとおり原告Aを含めて全職員が反対

せざるをえないような内容のものだった。
上記日程案は,授業を5校時までとするものであったが,5校時
目も訪問授業となっており,三,四校時と合わせて,本校は9学級しかないのにもかかわらず,
3時間も訪問授業とするものであった。
また,上記日程案は,水曜日と木曜日の午前中の授業の入替えも
含んでいたが,これは,原告Aが教務主任として提案し了承されていた水曜日と木曜日の午後の授業の入替えを変更するものであっ
た。

-15-

上記日程案は,出張授業の関係で,結果としては授業は原則として全員公開するという県教育委員会の方針を貫くことになり,当然,H校長は,事前に教務主任である原告Aにも相談すべきだったのに,何の相談もせず,一方的に提案してきたのである。
その上,
H校長は,なぜ,
5校時を訪問授業にするのか水及び曜と木曜の校時の入替えを,午前中からとしたのはなぜなのか等の疑問について,職員に納得いく説明を十分にすることができなかった。
こうした経過から明らかなように,H校長にこそ責任があるので
あって,原告Aが校長の再提案の内容に反対したことをもってその責任を問うのは不当である。
(b)

上記のような状況で,H校長から原告Aに対し,職員会議終了

後知恵を貸してもらえないだろうか旨の話があった。しかし,
教務主任の訪問授業にもかかわる新たな提案をして,事前に何の相談も教務主任にはせず,先に述べたように,職員の疑問にも納得いく説明がない中では協力できず,そんな知恵はありません」
と断った。b恫喝的発言について原告Aは,時系列主張対比表3・10月15日欄記載のとおり,言葉遣いは丁寧に言った。(オ)10月16日におけるH校長に対する恫喝的発言〔被告〕原告Aは,時系列主張対比表4・10月16日欄記載のとおり,H校長に対し,恫喝的発言を行った。なお,原告Aは,上記発言を,新たな不信と混乱を持ち込んだH校長に対する要請であると主張している。-16-しかし,同原告が認める発言の内容自体からも校長に対する要請であるとはいえないし,また,原告Aは学校訪問当日には県教職員組合c支部以下c支部(
という。の組合員を呼んで一緒に抗議することにし,)更に,第1回学校訪問の実施予定日であった10月24日には原告らは事前に協議して移動式黒板に「本日の学校訪問については多くの先生方は反対しています。無断で教室に入らないで下さい。b小職員有志と記載して準備していたことに照らしても,校長に対する単なる要請の発言であるとはいえず,指導案提出に関し職務命令を出さないこと及び職員の合意に基づく校時決定をすることを求めての恫喝的発言であるといえる。
〔原告A〕
原告Aの発言は,恫喝的発言ではなく,新たな不信と混乱を持ち込んだ校長への要請の言葉であった。
(カ)

10月19日におけるH校長に対する恫喝的発言

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表5・10月19日欄記載のとおり,H校長に対して恫喝的発言を行った。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表5・10月19日欄記載のとおり,H校長に対して恫喝的発言を行った事実はない。
(キ)

10月20日におけるH校長の指示への不服従及びH校長に対する
侮辱的発言
〔被告〕

不服従について
原告Aは,時系列主張対比表6・10月20日欄記載のとおり,H校長に対し,執拗に抗議を行い,校長が準備していた職務命令書を関
-17-

係教諭に渡すことができない結果を招来した。
原告Aは,急遽招集された職員会議の目的が同日を期限とする指導案の提出を求めることであり,期限までに指導案が出されていない以上職務命令が発出されることになることを察知していたし,原告AもH校長が職務命令書の発出を準備していることを知っていたものであり,上記抗議は職務命令の発出を妨害すべく行われたものである。b
侮辱的発言について
原告Aは,時系列主張対比表6・10月20日欄記載のとおり,H校長に対して,校長は校時等に職務命令が出せるのか。
そんなことがわからんお前は,それでも校長かという趣旨の発言をして,赤チョークで教育長―校長,職務命令と黒板に書いた。このような言動
はそれ自体H校長を侮辱するものである。
なお,
原告Aは,
校時に関してa町教育委員会教育長N教育長がH校
長に職務命令を出すことはできないという見解に立って校長の理不尽さについて説明したものであるというが,
学校教育法以下学教法」

という。5条及び地公法32条によれば,教育委員会は,公立学校の)管理機関として,学校の物的管理・人的管理・運営管理に関する包括的・最終的な権限を有しており,教育委員会は,校長に対し,指揮監督を行い得るものであり,教育委員会教育長が校時に関して校長に職務命令を出すことは可能であるから,独自の誤った見解に立って同校長を非難し侮辱した同原告の責任は一層重い。〔原告A〕a不服従について時系列主張対比表6・10月20日欄記載のとおり,H校長の全く理不尽な非民主的な学校運営が問題であった。b侮辱的発言-18-時系列主張対比表6・10月20日欄記載のとおり,原告Aは執拗に抗議したり激高していない。また,赤チョークでの黒板への記載は理不尽な内容について説明したものである。(ク)10月22日におけるH校長の指示への不服従〔被告〕原告Aは,時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,H校長の5校時までの授業の指示に対して,自ら6校時までの授業を児童に放送で告知する旨述べて抗議した。〔原告A〕時系列主張対比表7・10月22日欄記載のとおり,H校長の指示は職務命令であり,原告Aは,上記指示が職務命令として内容的にも手続的にも合意への努力を投げ捨てたものであることを主張したものである。(ケ)10月31日におけるH校長の指示への不服従〔被告〕原告Aは,時系列主張対比表8・10月31日欄記載のとおり,11月の行事の提案を拒否し,職員室の週行事黒板と月行事黒板の記載を消した。原告Aは,11月の行事の提案を拒否しH校長の校務運営に抗議したことはなく意見を述べたものであると主張しているが,原告Aも認める行事黒板の記載を消すという行動と整合せず,意見を述べたものとはいえない。〔原告A〕a原告Aは,時系列主張対比表8・10月31日欄記載のとおり,教務主任としての意見を述べた。bまた,原告Aが黒板の文字を全部消したことは事実であるが,以下-19-のような理由による行動であった。(a)第1回学校訪問が一方的に延期された後,H校長の非民主的な学校運営が目立ち,原告Aらの要請にも誠意のない態度に終始した。例えば,原告Aは,同月24日の本件学校訪問の延期以降,その日程について,H校長から何らかの相談が教務主任である自身にあるものと考えて,11月の月行事の予定表及び12月のそれをプリントして,本校の全職員に配布した。しかし,H校長からは,原告Aに対し,10月25日及び翌26日にも職員朝会があったにもかかわらず,私的にも,公的にも,何らの相談もなかった。そして,H校長は,同月29日の職員朝会で第2回学校訪問を「11月20日にすると通告すると教育委員会から話があった旨言った。H校長が学校訪問の日程を,校務分掌で月行事を担当している教務主任であり,既にプリントを準備して,配布していた原告Aに一言の相談もなく,全く一方的に10月29日に全職員の前で提案するのは,
余りにも誠意のないやり方である。
(b)

10月26日の県教育委員会c教育事務所長交渉で,H校長の

一方的で事実と異なる報告により,教務主任である原告Aや本件分会員が悪者にされ,その誤った報告を元に,職務命令違反として,県教育委員会が処分を考えていることが判明した。
原告Aは,H校長に対して,同日以降,県教育委員会に対する報
告の内容を再三に問うたが,H校長は,回答を拒否して,何ら誠意ある態度を見せなかった。
(c)

10月31日の職員会議では,学校訪問の計画,日程などを職

員の合意をえて,有意義な学校訪問を実施するためには,校長の虚偽の報告に基づく不当な処分を出さないことは,管理職を除く全職員の切実な願いであった。だから,職員は,同職員会議の中で,処
-20-

分のことについてもH校長から何らかの回答があるものと考えていたが,そのことについては,H校長は一言も発言しなかった。
H校長は,職員の切なる願いには答えないで,上司の指示指導に
のみ従う誠意のない態度を一貫してとり続けた。
(コ)

11月2日におけるH校長に対する恫喝的発言

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表9・11月2日欄記載のとおり,H校長に対し恫喝的な発言を行った。
なお,原告Aは,このときのやり取りは本件小分会と同校長との団体交渉であってその中で幾らか語気が鋭くなったのも当たり前であるという趣旨の供述をしており,恫喝的言動があったことは明らかである。〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表9・11月2日欄記載のとおり,H校長に対し被告が主張する発言をした事実はない。
(サ)

11月5日におけるH校長に対する恫喝的発言

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表10・11月5日欄記載のとおり,H校長に対し恫喝的な発言を行った。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表10・11月5日欄記載のとおり,H校長に対し被告が主張する発言をした事実はない。
(シ)

11月8日におけるH校長の指示への不服従

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表11・11月8日欄記載のとおり,H校長の同日開催予定の職員会議の変更の提案に対して,話合いを拒否したが,これはH校長の指示に対する不服従に当たる。

-21-

原告Aは,話合いを拒否したものではないと主張するが,その発言内容や第1回学校訪問に関する処分等に関する回答が得られない場合には,学校訪問が実施されなくてもよいと考えていたのであって,学校訪問の実施に反対する意図の下に職員会議の開催を拒否する発言を行ったものである。
〔原告A〕
時系列主張対比表11・11月8日欄記載のとおり,H校長の学校訪問に関する職員会議の開催の提案については話合いが行われたが,職員朝会の結論としてはこれを行わないこととなったものである。
(ス)

11月10日におけるH校長の指示への不服従及びH校長に対する
侮辱的発言
〔被告〕

不服従について
原告Aは,時系列主張対比表13・11月10日欄記載のとおり,H校長から訪問授業を要請されて,これを拒否しており,これはH校長の指示に対する不服従に当たる。


侮辱的発言について
原告Aは,時系列主張対比表13・11月10日欄記載のとおり,H校長から訪問授業を要請された際,校長と教頭はヒラメのように上

の方ばかり見ている。と言っており,語気のいかんにかかわらず,H

校長に対する侮辱的発言である。

〔原告A〕
時系列主張対比表13・11月10日欄記載のとおり,H校長と原告Aの個人的な話合いにおけるやり取りであった。
(セ)

11月14日におけるH校長の指示への不服従

〔被告〕

-22-

原告Aは,
時系列主張対比表15・11月14日欄記載のとおり,
H校
長の訪問授業の要請を拒否しており,これはH校長の指示に対する不服従に当たる。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表15・11月14日欄記載のとおり,意見を述べただけであって,H校長の指示に従わなかったものではない。(ソ)

11月15日におけるH校長の指示への不服従

〔被告〕
原告Aは,時系列主張対比表16・11月15日欄記載のとおり,H校長の訪問授業の要請を拒否をしており,これはH校長の指示に対する不服従に当たる。
〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表16・11月15日欄記載のとおり,意見を述べただけであって,H校長の指示に従わなかったものではない。(タ)

11月17日におけるH校長の指示への不服従及びH校長に対する
恫喝的発言
〔被告〕

不服従について
原告Aは,時系列主張対比表18・11月17日欄記載のとおり,H校長が指導案を提出していない原告B外6名を校長室に招集した際に,招集されていないにもかかわらず,校長室に入ってきて抗議をしており,これはH校長の指示に対する不服従に当たる。
原告Aは,招集を受けていないにもかかわらず,原告B外6名と一緒に校長室に入ってきたことからして,原告Aは,校長が職務命令を出すのを阻止するために校長室に入ったものといえる。
原告AのH校長に対する発言は抗議であると評価され,また,同原
-23-

告は同校長に対して抗議した上で,原告B外6名に対し時間が来たから授業に行こうと声をかけて一斉に退出しており,職務命令書を渡すために原告B外6名の担任クラスの教室に行こうとする同校長に対し,原告Aは同様の抗議を繰り返しているのであって,同校長が文書による職務命令の発出を断念した最大の原因は同原告の執拗な抗議によるものであるといえる。

恫喝的発言について
原告Aは,時系列主張対比表18・11月17日欄記載のとおり,H校長に対し,当日混乱が起きるよ」教育長・所長は行政職だから,「授業を見る権限がないと述べており,仮に,つきまとって抗議するからそのつもりでいなさいと述べていないとしても,恫喝的発言に当たる。

〔原告A〕

不服従について
原告Aは,時系列主張対比表18・11月17日欄記載のとおり,H校長と本件小分会との話合いとなったので,校長室での話合いに参加したが,抗議はしていない。
また,H校長が職務命令の発出を断念したのは,時系列主張対比表18・11月17日欄(2)のとおり,
H校長と本件小分会との話合いの
結果によるものであった。


恫喝的発言について
原告Aは,時系列主張対比表18・11月17日欄記載のとおり,教育長・所長は行政職だから授業を見る権限がないと述べたが,
その他の発言はしていない。

(チ)

11月19日におけるH校長に対する恫喝的発言

〔被告〕

-24-

原告Aは,時系列主張対比表19・11月19日欄記載のとおり,大声を出したり,机を叩くなどしており,これは,恫喝的発言に当たる。〔原告A〕
原告Aは,時系列主張対比表19・11月19日欄記のとおり,大声を出したり,机を叩くなどした事実はない。
(ツ)

保護者・校区内住民の動揺及び学校に対する不信

〔被告〕
原告Aは,上記各言動を校内の児童がこれを感知するか否かに一切配慮することなく行ったため,時系列主張対比表20記載のとおり,児童の感知するところとなった。このため,これを知った保護者や校区内住民に動揺と学校に対する不信を生じさせるところとなった。
〔原告A〕
保護者や校区内住民の動揺と学校に対する不信は,時系列主張対比表20記載のとおり,H校長自身が話したことによるものである。
(2)

本件各処分の違法性の有無について
本件学校訪問の違法性
(ア)

本件学校訪問の違法性と本件各処分の関係

〔原告ら〕
後記のとおり,本件学校訪問は,原告らの教育権及び教育の自由を侵害するから憲法23条及び26条に違反しており,また,教育基本法10条1項及び学教法28条6項に違反しているところ,原告らの本件各処分における懲戒事由はいずれも違憲・違法な本件学校訪問に関連して行われたものであるから,本件各処分は違法である。
〔被告〕
後記のとおり,本件学校訪問は,原告らの教育権等を侵害するものではなく,地教行法等に根拠を有する適法なものであるから,本件各処分
-25-

が違法であるということはできない。
(イ)

本件学校訪問の内容

〔原告ら〕
県教育委員会学校教育課が作成した計画訪問実施要項等によれば,学校訪問とは以下のようなものであった。なお,計画訪問実施要項では教職員の研修ということは一切触れられておらず,訪問校の選定や研究協議の主題等は教育委員会側が一方的に決定することになっている。a
主催者は県教育委員会学校教育課であり,
a町教育委員会ではない。


趣旨は,学校教育の実態を把握し指導行政の参考にし,学校が当面している教育指導上の諸問題について研究協議して必要な指導助言を行うことである。なお,研究協議の主題は訪問の観点に関するものに限定されていた。


訪問者は県教育委員会学校教育課の担当者(指導主事)を中心に,県教育委員会教育事務所及び市町村教育委員会の関係者である。


訪問の観点は,
一つは学校が当面している教育課題,
研究主題とし,
市町村教育委員会の報告で定める。他の一つは県教育委員会学校教育課が定める(本件では社会科と定められた)



授業は原則として全員公開する。


学校は授業参観のための学習指導案等を含む便覧を作成し,事前に県教育委員会学校教育課等に提出する。

〔被告〕
学校訪問とは,指導主事が学校を訪れ,教育課程,学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導を行うものである。
本件学校訪問は,
県教育委員会が作成した計画訪問実施要項に基づき,
県教育委員会の指導主事がその学校が当面している教育指導上の諸問題について研究協議し,必要な助言指導を行って学校教育の充実を図ると
-26-

いう趣旨の下,本件小学校を訪問し,同校の教諭が行う公開授業に立会い,個々の教諭の教材研究及び指導法について及び本件小学校が当面している教育指導上の諸問題について研究協議し,必要な指導助言を行うことを内容としており,本件学校訪問は本件小学校の教諭の資質向上を目的としてされる研究と修要(教育公務員特例法〔以下教特法という。19条1項〔平成15年法律第117号による改正前のもの,以下〕
同じ。現21条1項〕の場,つまり研修と位置付けられるものである。)
(ウ)

初等教育における教育権及び教育の自由

〔原告ら〕

教育の本質に関し,教育を受ける権利は,憲法26条1項により国民の基本的人権として保障され,
教育基本法は,
教育の目的について,
教育は,人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたつとび,勤労と責任を重んじ,自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。(平成18年法律第120号による廃止前のもの,以下同じ。,教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社)

会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。とされている。また,憲法26条に

関しては,国民各自が,一個の人間として,また,一市民として,成長,発達し,自己の人格を完成,実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること,特に,みずから学習することのできない子どもは,その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在していると考えられる。換言すれば,子どもの教育は,教育を施す者の支配的権能ではなく,何よりもまず,子どもの学習をする権利に対応し,その充足をはかり得る立場にある者の責務に属するものとしてとらえられているの-27-である。(最高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁)

つまり,教育の主人公はあくまでも子ども,つまり生徒であって,国家でも,文部科学省でも,地方自治体でも,教育委員会でも,また,親でさえもない。

子どもを主人公として,その人格の完成を目指す学校教育とはどのようなものでなければならないか。
この点について,学校教育の主人公は子どもであるとする上記最高裁昭和51年判決と共通の認識に立った上で,公教育としての学校において直接に教育を担当する者は教師であるから,子どもを教育する親ないし国民の責務は,主として教師を通じて遂行されることになる。この関係は,教師はそれぞれの親の信託を受けて児童,生徒の教育に当たるものと考えられる。したがつて,教師は,一方で児童,生徒に対し,児童,生徒の学習する権利を十分に育成する職責をになうとともに,他方で親ないし国民全体の教育意思を受けて教育に当たるべき責務を負うものである。しかも,教育はすでに述べたとおり人間が人間に働きかけ,児童,生徒の可能性を引き出すための高度の精神的活動であつて,教育に当たつて教師は学問,研究の成果を児童,生徒に理解させ,それにより児童,生徒に事物を知りかつ考える力と創造力を得させるべきものであるから,教師にとつて学問の自由が保障されることが不可欠であり,児童,生徒の心身の発達とこれに対する教育効果とを科学的にみきわめ,何よりも児童,生徒に対する深い愛情と豊富な経験をもつことが要請される。してみれば,教師に対し教育ないし教授の自由が尊重されなければならないというべきである。(東京地方裁判所昭和45年7月17日判決・判時604号29頁参照)。


学校が,教育の主人公である児童・生徒の人格の完成を目的とする
-28-

教育を行う機関である以上,学校の組織・運営はこれに適合的でなければならない。換言すると,学校の組織・運営は,直接に児童・生徒の教育を担う教師が,人間が人間に働きかけ,児童,生徒の可能性を引き出すための高度の精神活動が保障され,児童,生徒の心身の発達とこれに対する教育効果とを科学的に見極め,何よりも児童,生徒に対する深い愛情と豊富な経験を持つことを可能にするものでなければならない。
そのような学校の組織・運営とは,まず何よりも教師が上司などの目を気にすることなく児童,生徒に自由に働きかけることができることが保障される組織・運営であり,教師が自由に児童生徒に働きかけることを積極的に援助するような組織・運営である。
学校は,教育委員会や校長などの意向を教師らに伝達し,その意向を実現することを目的とするものではない。あくまでも学校教育の主人公である児童,生徒の人格の完成が目的とされなければならず,そのためには,先に述べた教育の在り方からして,児童,生徒に直接働きかけ,その可能性を遺憾なく引き出すために高度の精神的活動をしている教師たちの教育活動を保障し,援助するものでなければならない。
したがって,その組織運営においてまず尊重されなければならないのは,教師たちの意見・意向である。このことは,学校教育の主人公が児童,生徒であることから導かれる当然の帰結である。
学校運営は教師らの意見・意向が十分に聞き届けられ尊重されなければならない。学校組織は,学校運営がそのようになされることが保障されるような組織である必要がある。
そうして初めて学校は,
児童,
生徒に直接働きかけ,その可能性を引き出す営み,すなわち,教育の場というにふさわしいものになる。

-29-

つまり,学校運営は校長が教育委員会の意向だけを気にして,教師らの意見・希望を無視するようなことがあってはならない。職員会議その他の場で生徒たちに直接接触している教師たちの意向を十分に聞いてこれを汲む必要があるということは教育の本質が要請するところである。校長以下の,教頭,主任等の職制の本来の役割は,生徒に直接接触する教師らの教育活動を援助し,その意見・希望を学校運営に反映させるところにこそあるはずである。このことを無視して,校長の意向を教師に伝達し,強制するということでは,それは教育の本質が要請することとはいえない。
また,学校の職制の選出に教師の意見を取り入れる仕組み,職員会議での自由な発言・討議の保障等も,教育の本質が要請するところである。
このような教育の本質が要請する学校の組織・運営の在り方は,教育活動そのものについてはもちろん,学校運営等についても,教師の意見・希望を無視して,校長が職務命令で有無を言わさず教師を支配しようとすることとは相容れない。そして,このような教育の本質が要請する学校の組織・運営の在り方は,例え,法令によって職制任命制にされ,職員会議が校長の諮問機関とされ,校長が教師に職務命令を発することができるとされていても変わることはなく,教育に関する法令は,あくまでも,教育の本質に沿って解釈・適用されるべきである。
〔被告〕

教諭の教育権ないし教育の自由については,
憲法26条の解釈として

すなわち,同条が,子どもに与えるべき教育の内容は,国の一般的な政治的意思決定手続によつて決定されるべきか,それともこのような政治的意思の支配,介入から全く自由な社会的,文化的領域内の問題-30-として決定,処理されるべきかを,直接一義的に決定していると解すべき根拠は,どこにもみあたらないのである。前記最高裁昭和51年(
判決)とされている。
よって,
憲法26条は原告らが主張する教育権あるいは教育の自由の
根拠となるものではない。
更に,憲法23条について学問の自由を保障した憲法23条により,学校において現実に子どもの教育の任にあたる教師は,教授の自由を有し,公権力による支配,介入を受けないで自由に子どもの教育内容を決定することができるとする見解も,採用することができない。大学教育の場合には,「学生が一応教授内容を批判する能力を備え
ていると考えられるのに対し,普通教育においては,児童生徒にこのような能力がなく,教師が児童生徒に対して強い影響力,支配力を有することを考え,また,普通教育においては,子どもの側に学校や教師を選択する余地が乏しく,教育の機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは,普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは,とうてい許されないところといわなければならない。(前記最高裁判所昭」
和51年判決)とされており,初等教育においては,教諭の教授の自由は認められていない。

以上によれば,憲法23条及び同26条に基づき,原告らが主張するような学校の組織,運営の在り方が要請されるものではない。

(エ)

学校訪問による教育権及び教育の自由の侵害

〔原告ら〕

学校訪問の目的
(a)

学校訪問の目的は,教諭が指導要領のとおり授業をしているこ

とを確認し,教諭が教育委員会や校長に従順かどうかを調査するこ
-31-

とにある。
これは,佐賀県内のk市教育委員会が平成7年の県教職員組合k
市教職員組合との交渉の際明らかにしているし,
本件学校訪問では,
研修が目的であれば指導主事だけが来校すれば十分であるにもかかわらず,県教育委員会の指導主事2名に加えて,県教育委員会教育事務所長,同指導主事並びにN教育長及びa町教育委員会課長も来校しており,町によっては,町の教育委員が来校することもある。校長等は,教諭に対し,学校訪問において詳細な指導案の提出を
求めるが,これは,詳細なものでなければ学習指導要領に沿ったものか判断できないし,この要求に対する教諭の対応から教育委員会や校長に従順かどうかを調査しているものである。
(b)

なお,学校訪問の目的を研修であるとする被告の主張は,以下

のとおり虚偽である。


平成2年度佐賀県学校教育課計画訪問実施要項の訪問趣旨に
は,『平成2年度佐賀県教育の基本方針』に基づいて,県下の小

学校および中学校を計画的に訪問して,学校教育の実態を把握し,指導行政の参考にするとともに,必要な指導助言を行って学校教育の充実を図る。とされており,学校訪問の主旨に「研修

とい」
う言葉は全くなく,計画段階でも研修と位置付けられていない。
また,H校長は,原告らに対し,本件学校訪問に関して,学校
訪問は研修である旨を説明したり,本件学校訪問における指導案
提出に関して,あなたの研修になるからとか,研修だから指導案
を出してほしい旨の説明をしていない。



本件学校訪問の研究協議会は事前に提出されていた下記の協議
内容に対する回答であり,公開授業に関する意見交換の場ではな
いし,また,公開授業を他の同僚の教諭は参観していないから,

-32-

意見交換をすることもできなかったし,また,90分で8クラス
を参観する日程となっており,移動時間を考えると数分しか参観
しないものであって,このような参観で個々の教諭の教材研究及
び指導法についての指導助言をすることはできないし,実際にも
指導助言はなかった。

研究協議1は校務・学校運営・教育条件,及び学校訪問等の問題点についておたずねします,研究協議2は本校では,『係活動をとおして,一人一人がいきいきと取り組む仲間づくり』を研究主題に,自ら学ぶ力をつけることをねらっていますが,他の学習にもさらに意欲的になるような子どもにするには,どんな点に留意して指導すればよいでしょうか。,研究協議3(1)は,

生活科の指導計画について,特に留意すべき点についてご教示下さい。,同(2)は「社会科の新指導要領では,与謝野晶子を削り,東

郷平八郎をとりあげるなど,このような軍国主義的人物を教える
ことは,平和憲法や教育基本法に反すると思いますが,どうでし
ょうか。,
」研究協議4(1)はa町では県内で給食を実施していな
い数少ない町の1つです。アンケートの結果も8割以上が賛成です。体育・保健面,生活指導面からも1日も早い給食が望まれます。県教育委員会でも関係各方面に働きかけ,その実現のためにご尽力いただけないでしょうか。,同(2)は初任研は憲法と教育基本法に基づく民主教育をすすめる教師づくりに逆行する多くの問題点があります。本人にとっても,真に教育力量をつけるものとならず,また教職員の協力体制をこわします。教育現場の声をきいて,一日も早くこの制度を取りやめていただけないでしょうか。である。
-33-

(c)

学校訪問は,以上の目的に照らして,教育に対する県教育委員

会の介入であり,教育権及び教育の自由を侵害し,教育基本法10条1項及び学教法28条6項に違反するものである。

学校訪問における指導案の提出
(a)授業入門斉藤喜博著)

の中で指導案は教師の創作である。
一時間一時間の授業を創造的なものにするためには,創造的な指導案を書く修練をつまなくてはならないとされ,子供たちがわかった楽しい」といえるような授業を展開するためには十分に教材を研究し,創造的な学習指導案によってこそ達成される。そして,学習指導案は,担任教師が子供を豊かに育てるため,子供の実態に即して指導計画をたて,どのような教材・教具を使い,どのような発問をし,子供の反応がどう返ってくるか等理解が深まる工夫をこらしながら,その先生でなければならない内容が盛られるものである。どのような学習指導計画をたて,どのように指導していくかは教員に与えられた基本的な任務でありかつ固有の権限に属する事柄であるし,子どもの教育が教師と子どもとの間の直接の「人格的接触を通じ,その個性に応じて,行われなければならない本質的要請に照らし,教授の具体的内容及び方法につき,ある程度自由な裁量が認められなければならないという意味においては,一定の範囲に於いて教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではない(前記最高裁昭和51年判決)とされている。
また,学校訪問との関係では,ILO/UNESCO教員の地位
に関する勧告63項が一切の視学,あるいは監督制度は,教員がその専門職としての任務を果たすのを励まし,援助するように計画されるものでなければならず,教員の自由,創造性,責任感をそこなうようなものであってはならない。と明記しており,教育行政が

-34-

教師に特定の教育課程を押しつけたり,それに基づく教育活動を強制したり,教師の教材選択権を奪って校長の選んだ教材で指導を押しつけるなど権力的手法で教師の教育活動に介入することは画一的な教育になり,子供に対して責任ある教育はできないし,教育そのものが成り立たなくなってしまう。
ましていわんや子供の実態を十分知らない校長が権力的に学習指
導計画を変更させたり学習指導案を職務命令まで出して提出させたりして何の意味があるか。教育現場の教師の指導計画を尊重せず,命令で教育活動をすすめていくことは,現場教師の指導意欲をなくすばかりか教育そのものを死滅させることになる。
以上のとおり,校長等が,教諭に対して学校訪問における公開授
業について指導案の提出を職務命令等で強要することは,教育権及び教育の自由を侵害し,教育基本法10条に規定する不当な支配に当たるものである。
(b)

また,教諭が学校訪問における指導を受忍すべきかは,教諭の

教育権と当該学校訪問における指導の目的,必要性により決せられる。
県教育委員会の指導主事の指導権は,あくまでもその専門性(地
教行法19条)ゆえに認められるものであるから,当該被訪問校の教諭をして県教育委員会の指導主事の指導をその専門性ゆえに貴重なものとして受け止め,指導を求めたいという意識を持たせる必要がある。
そして,当該被訪問校の校長が県教育委員会指導主事の学校訪問
に際して学習指導案作成・提出という教諭の教育権にかかわる領域にまで踏み込んで職務命令を発令して,当該教諭と校長及び県教育委員会の間の対立を極度に悪化させれば,教諭は指導を求めたいと
-35-

いう意識を持ち得ないものであり,いずれにしても,このように職務命令を発令すること自体,指導の実効性を損なうものであり,いかなる場合であっても学校訪問において職務命令を発することは違法である。
〔被告〕

本件学校訪問の目的
本件学校訪問は,前記のとおり,本件小学校の教諭の資質向上を目的としてなされる研究と修要(教特法19条1項)の場,つまり研修と位置付けられ,研修を目的とするものであった。

b(a)

前記のとおり,
初等教育においては,
教諭の教授の自由は認められ

ていない。
また,
教育基本法10条については,教基法10条は,
国の教育統制権能を前提としつつ,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,その整備確立のための措置を講ずるにあたつては,教育の自主性尊重の見地から,これに対する『不当な支配』となることのないようにすべき旨の限定を付したところにその意味があり,したがつて,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められるそれは,たとえ教育の内容及び方法に関するものであつても,必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが,相当である前記最高裁(
昭和51年判決)

本件学校訪問が研修と位置付けられることは前記のとおりであり,本
件小学校の教諭を含む教育公務員に対して任命権者である県教育委員会は研修の実施に努めなければならないとされており(教特法19条2項)a町教育委員会は本件小学校の校長,

教頭,
教諭その他の教育関係
職員の研修に関することを管理,執行する(地教行法23条8号)もの
-36-

とし,
県費負担教職員地教行法37条1項に規定する職員をいう。で


ある本件小学校の教諭に対する研修はa町教育委員会も行うことができるものである地教行法45条1項)本件学校訪問は,


これら諸規定に
基づくものであり,
県教育委員会及びa町教育委員会の所掌に属する事
務として実施され,
教諭の資質向上という教育行政の目的のため必要か
つ合理的な行為である。そして,本件学校訪問において県教育委員会の指導主事は本件小学校の教諭の資質向上のため指導,
助言を行うもので
あることから,本件学校訪問は教育基本法10条に規定する不当な支配に該当するとは認められない。(b)

なお,原告らは,
被訪問校の教諭が県教育委員会の学校訪問とその

際における指導を受忍すべきかは教諭の教育権と当該学校訪問における指導の目的・必要性との兼ね合いで決まるはずであるとの独自の見解に基づいて,
指導を受ける方に指導を受けたいという気持ちがあることが
条件として不可欠である旨主張している。
しかし,
研修は受講者が研修を受講する意識を持つことがその研修の
効果を高めることに寄与すると思われるが,原告らが主張するように,研修の受講者が研修を受ける意識を持つことが研修を行うための条件となるとは認められず,研修は,研修としての内容を有していれば受講者の意識いかんに関係なく有効に成立するものであるから,
原告らの主張
は理由がない。
(オ)

本件学校訪問の法的根拠

〔原告ら〕

本件学校訪問は,県教育委員会の指導主事が町立の小学校の教諭を直接に指導するものであるが,以下のとおり,地教行法上不適法である。
(a)

地教行法48条

-37-

地教行法48条1項及び2項8号は,市町村教育委員会が何らか
の事情で事務局に指導主事を置けない場合に,援助の一貫として県教育委員会が市町村教育委員会に対し県の指導主事を派遣することを許容するものであって,派遣先はあくまでも市町村教育委員会であり,派遣された指導主事は市町村教育委員会の監督の下市町村教育委員会の職務に就くのである。
本件のように県教育委員会が自分の事務局に所属する指導主事を
自分の主催する学校訪問にその監督の下に参加させることを派遣」ということはできず,地教行法48条により本件学校訪問を根拠づけることはできない。(b)同法19条同条3項は,指導主事の指導内容を明定するものであり,指導主事が選任された教育委員会の管轄外の学校での職務の遂行を許容するものではない。むしろ,同法19条1項及び2項の規定は,指導主事を県教育委員会の事務局と市町村教育委員会事務局のそれぞれに置くこととしていることからすれば,地教行法は指導主事が選任された教育委員会の管轄外の学校で職務を遂行することを禁じていると解すべきである。(c)同法47条の2平成3年法律第79号による改正前のもの。(現47条の4)同条は初任者研修に係る非常勤講師の派遣制度を規定するが,同条2項及び3項では,非常勤講師が市町村の職員の身分を併せ有するとし,かつ,派遣を受ける市町村教育委員会の非常勤講師に対する服務監督権を保障し,市町村教育委員会の独自性を尊重している。また,同法49条(平成11年法律第87号による削除前のもの。-38-以下同じ。及び51条では県教育委員会の権限を,基本的事項の基)準規則の制定及び市町村教育委員会相互の間の連絡調整機能に限定していることから,本件のような県教育委員会の学校訪問は同法47条の2の予定している権限を大きく逸脱しているというべきである。(d)県教育委員会の市町村立学校に対する指導権地教行法の文言上も県教育委員会の市町村に対する指導権を認めているだけであり,市町村の行政機関の一員でもない市町村立学校の個々の教諭に対する指導権までも導き出すことはできない。更に,文言上,県教育委員会は「市町村の教育に関する事務の適正な処理をはかるために指導権を有するのであり,指導の対象はあくまでも市町村の教育行政事務に限定されていると解することができる
し,そう解釈しなければならない。このことは,市町村教育委員会の指導主事の教諭に対する直接的な指導権が,市町村教育委員会自体が学習指導に関すること(地教行法23条5号)及び教員に対する研修に関すること(同条8号)に対して管理・執行する権限を有していることから根拠づけられることと比較対照して解されるべきである。
したがって,県教育委員会指導主事の市町村立学校の教諭に対す
る直接的な指導権までは導き出せないのである。
そうであるならば,
この指導権行使の便宜のため発令された職務命令は違法とならざるを得ない。また,その指導権行使を目的とする学校訪問自体も違法とならざるを得ない。
(e)

研修に関する規定
研修の規定であるが,本件学校訪問は,計画段階でも研修と位置

付けられてはおらず,実際も事前に原告らを含めた本件小学校の教
-39-

諭に対して研修である旨の説明もなかったし,実施段階でも研修に値する内容の実践もなかったから,学校訪問の適法性を基礎づけるものとは成り得ない。

本件学校訪問は教育に関する地方自治の原則に違反する。
憲法の保障する地方自治は,教育行政でも妥当し,現行法制上,学校等の教育に関する施設の設置,管理及びその他教育に関する事務は,普通地方公共団体の事務とされ地方自治法2条3項5号)公立学校(,における教育に関する権限は,当該地方公共団体の教育委員会に属するとされる(地教行法23条,32条,43条等)等,教育に関する地方自治の原則が採用されているが,これは,戦前におけるような国の強い統制の下における全国的な画一的教育を排して,それぞれの地方の住民に直結した形で,各地方の実情に適応した教育を行わせるのが教育の目的及び本質に適合するとの観念に基づくものであって,このような地方自治の原則が現行教育法制における重要な基本原理の一つをなすものであることは,疑いをいれない前記最高裁昭和51年(
判決参照)とされている。
以上の教育に関する地方自治の原則によれば,県教育委員会が市町村立の小学校を直接訪問してみずからその服務を監督する指導主事をして直接に当該小学校の教諭を指導することは,当該市町村教育委員会の受諾を取ったにしても許されるものではない。
本件学校訪問は,a町教育委員会ではなく,県教育委員会が,a町立の本件小学校を直接訪問し,その指導主事をして同小の教諭の指導に当たらせており,この教育に関する地方自治の原則に違反する。
〔被告〕

県教育委員会の指導主事が本件学校訪問において本件小学校の教諭に対し,直接,指導助言を行っている点については,次のとおり違法
-40-

ではない。
(a)

地教行法48条
地教行法48条1項により都道府県教育委員会は市町村の教育に関
する事務の適正な処理を図るため,学校の組織編成,教育課程,学習指導,生徒指導,職業指導,教科書その他の教材の取扱その他学校運営に関すること,校長,教頭,教諭その他の教育関係職員(以下,校長等教育関係職員
という。の研究集会,

講演会その他研修に関する
ことなど,同条2項各号で例示することについて必要な指導,助言又は援助を行うものとされている。
(b)

県教育委員会の市町村立学校に対する指導権
市町村の教育に関する事務は地教行法23条により市町村教育委員
会が管理し,執行する。市町村教育委員会が管理,執行するものとして地教行法23条各号に掲げられた事項を見るに,
教育委員会の所管
に属する学校の設置,
管理及び廃止に関すること1号)学校の組織


編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること(5号)教科書その他の教材の取扱に関すること(6号)校長,教員そ,

の他の教育関係職員の研修に関すること(8号)などであり,同条の管理及び執行の対象に当該市町村教育委員会の所管に属する学校及び当該学校に所属する校長等教育関係職員が含まれることは明らかである。
地教行法48条1項では,都道府県教育委員会の指導,助言又は援助の対象は市町村となっているが,
地教行法23条で当該市町村の教
育に関する事務は当該市町村の教育委員会が管理,執行し,そしてこの管理,
執行の対象に市町村教育委員会が所管する学校及び当該学校
に所属する校長等教育関係職員が含まれることを踏まえると,
都道府
県教育委員会の指導,
助言又は援助の対象に当該市町村教育委員会の

-41-

所管に属する学校及び当該学校に所属する校長等教育関係職員が含まれると解するのが相当である。
以上のことから,
本件学校訪問は地教行法48条1項の県教育委員
会のa町教育委員会に対する指導,助言の一形態として,平成2年3月19日付けで本件小学校教諭の服務監督権限を有するa町教育委員会の本件学校訪問に対する受諾を得た上で,
県教育委員会の指導主事
が本件小学校の教諭に対し直接,指導,助言を行ったものであって,適法である。
(c)

地教行法47条の2
原告らは,地教行法47条の2第2項の初任者研修での非常勤講師
の任命形態を例として,本件学校訪問での指導主事による指導,助言の違法性を主張するが,
県教育委員会の指導主事は県教育委員会の所
管に属する学校のみならず,
市町村教育委員会の所管に属する学校を
も指導等の対象としているものである。
このように両者は職務内容と
勤務形態とを異にするものであって,地教行法47条の2の非常勤講師の例をもって本件学校訪問がa町教育委員会の独自性を侵害し,
地教
行法の予定している権限を大きく逸脱していることにはならない。ま
た,
本件学校訪問は地教行法48条1項に照らして適法に行われてお
り,
地教行法49条及び51条との比較においても本件学校訪問が地
教行法の予定している権限を逸脱しているものではない。

本件学校訪問は教育に関する地方自治の原則に違反しない。
地方自治法(昭和22年法律第67号)245条(平成11年法律第87号による改正前のもの。
)では自治大臣又は都道府県知事が普通地方
公共団体に対して技術的な助言又は勧告を行うことができるとされており,また,地教行法においても都道府県教育委員会が市町村教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の組織編成,教育課程,教材の取
-42-

扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について都道府県教育委員会の規則でもって基準を設けること同法49条)教職員の(

適正な配置と円滑な交流及び
教職員の勤務能率の増進を図るため教育委員会は相互の間の連絡調整を密にし,
及び文部大臣又は他の教育委員会と協力すること51条)文


部大臣が地方公共団体が管理し,
及び執行する教育に関する事務につい
て必要な調査を行うこと(53条〔平成11年法律第87号による改正前のもの。)文部大臣又は都道府県教育委員会が,
〕,
地方公共団体の区域
内の教育に関する事務について必要な調査,
統計その他の資料又は報告
を求めること(54条〔平成11年法律第160号による改正前のもの。)が定められている。地教行法48条1項の都道府県教育委員会の〕
市町村教育委員会に対する指導,助言又は援助は,以上述べた様々な協力関係の一つとして行われるのであって,
地方公共団体における教育に
関する事務を適正に行うという観点から地方自治の原則に適合するものである。

学習指導案提出に関する職務命令の違法性

〔原告ら〕
(ア)

職務命令により学習指導案の文書化及びその提出を命じるのは,教
諭の教育権を侵害するのみならず,教諭の教育に関する思想の表白を強制するものであるから,憲法19条が保障する思想・良心の自由を侵害するものである。
よって,本件学校訪問に関し,H校長が学習指導案の文書化及びその提出を命じたことは違憲である。
(イ)

学教法28条3項は,単に校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督するとしか規定しておらず,ここでいう校務には,各教諭の教育活動は含まれないと解すべきであるから,文言からみても具体的
-43-

に学習指導案の作成を命じ得ることまでも規定したものとはいえないし,
学習指導案を文書化しなければならないように命じ得るとか,
更に,
それを県教育委員会に提供するために提出を命じ得るといったことは,同条項の文言からは全く導き出せない。
したがって,教諭には,学習指導案を書面化するまでの職務上の義務はないし,校長が,教諭に対し学習指導案を書面化しかつ提出を命じ得る法的権限もない。
(ウ)

戦後教育において教育内容にかかわる行政権行使の在り方は指導助
言行政が原則となっており,また,県教育委員会平成3年3月23日付け学校訪問における学習指導案の提出について(通知)(以下,O通知という。は,学習指導案の作成・提出について職務命令を発令する)
ことが許容されるとするがその前提要件として校長の十分な指導を求めている。
特に学習指導案の作成・提出は教育内容にかかわる事項の中でも教諭の主体性・自主性等が強く保障されるべき教諭の教育権限行使の領域である。
そこで仮に校長にこの領域においてまでも職務命令を発令することが許容されることがあり得るという立場に立つとしても,それが許容されるのは,第一に学校長が上記指導助言を十二分に果たしてもなお学習指導案の作成・内容が果たし得ず,第二に職務命令を発令してもそれを果たす必要性が高いときに限られるはずである。
しかしながら,H校長がここで求められる十二分の指導を果たさなかったのは,事実経過から明らかであるし,また,本件学校訪問の観点は社会科だったのであるから,社会科以外の学習指導案の書面による作成と県教育委員会への提出強要は,本件学校訪問の目的から逸脱したものであり,本件学校訪問の目的を達成するため必要が高いとはいえない。
-44-

仮に,校長が教諭に対して教育内容にかかわる事項に関して職務命令を発令し得ると解しても,本件学校訪問に関する指導案の文書化及び提出に関する職務命令は違法である。
(エ)

以上によれば,本件学校訪問に関する指導案の文書化及び提出に関
する職務命令は違法であって,原告Aが同職務命令の発出を妨害したことは適法であり,これを懲戒事由とする本件停職処分は違法である。〔被告〕
(ア)

前述のように,
初等教育において教諭の教育権は保障されていない。
また,
学習指導案は年間指導計画や単元指導計画に基づいて作成する1

単位時間を中心とした学習指導計画であり,
学校が定めた学習指導計画に
基づき指導目標を達成するために作成する具体的な指導予定を組んだ計画である。学習指導案は,本来,教諭が自らの授業のために作成するものであるが,
学校訪問においては学習指導案が公開授業に先立って指導主事に
配布されることにより,
指導主事は公開授業に臨んで事前に公開授業の内
容を把握し,的確な指導助言を行うことができるものであり,学習指導案は,学校訪問の目的の効果的な達成に寄与するものである。
そして,思想及び良心の自由(沈黙の自由)の対象は,宗教上の信仰に準ずべき世界観,人生観等個人の人格形成の核心をなすものに限られ,一般道徳上,常識上の事物の是非,善悪の判断や一定の目的のための手段,対策としての当不当の判断を含まないと解されるものであり最高裁判所(
昭和31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁補足意見参照),
職務として学習指導案を作成し,
提出することがこの思想及び良心の自由
を侵害するものとはいえず,職務命令により学習指導案の文書化及びその提出を命じることは,憲法19条の保障する思想・良心の自由を侵害するものではない。
(イ)

地公法32条及び地教行法43条2項に定めるところによれば,
上司

-45-

から職務命令が発令された場合,受命者たる部下職員はこれに拘束され,当該職務命令に重大かつ明白な瑕疵があり客観的に無効である場合を除いては,
当該職務命令は権限ある上司が取り消すまでは有効の推定を受けるものであり,職務命令は,
発令者が職務上の上司であること,受命者の職務に関するものであること,その内容が法規に抵触しないことの要件を具備することを要するところ,これらの要件の欠缺が重大かつ明白な場合には,かかる職務命令は拘束力を有せず,受命公務員は,自ら職務命令の無効を判断することができ,これに服することを要しない。(最高裁判所昭和53年11月14日第三小法廷判決・裁判集民事125号565頁参照)とされているとおりである。
本件学校訪問に際してH校長から発出された学習指導案の作成,
提出を
内容とする職務命令は,次のとおり適法である。
学校における校長の職務命令については,
学校教育法51条が準用する同法28条3項は,校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する。『』と規定する。右規定は,校長の職務権限を定めたものであり,右規定によれば,校長はすべての校務について決定権があるというべきである。そして,右の校務としては,人事,予算編成,施設管理などの人的,物的教育条件に関する事務のほか,教育課程編成,全校的な教材選択,生活指導の方針などそれ自体教育内容を規定する全校的教育事項ともいうべき事務があり,更に教育活動そのものがある。(福岡高等裁判所宮崎支部平成5年3月22日判決・判例タイムズ813号146頁参照)とされているとおり,
学教法28条3項の校長の校務の中には同条同項により所属職員である教諭の教育活動に関することも含まれるものである。また,学教法28条6項については,同法28条6項は,教諭は,児童の教育をつかさど『る。と定めているが,』これは,教師の主たる職務を摘示したにすぎないと解すべきであるから,同条6項の規定を根拠として,児童に対する教育活-46-動以外は一切教諭の職務に含まれないものと断ずることはできない。それゆえ,校長は,教育課程の編成などの全校的教育事項は児童の教育に密接に関連し,教諭の職務にふさわしい事項であるから,これを校務監督権に基づき教師に分掌させ,これにつき包括的あるいは個別的に職務命令を発することができるというべきである。また,教育活動そのものについても,職務命令を発することができるというべきであるが,教師の主体性,自主性を尊重する上で,おのずから制約が存することがあるということができるが,教育活動のうち,授業の実施そのものなどについては当然に職務命令を発することができるというべきである。前記福岡高裁宮崎支部平成(
5年判決)としており,校長は教諭の教育活動についても職務命令を発出することができるものである。
以上のことから,本件学校訪問に当たってH校長が,学習指導案の作成と提出を内容とする職務命令を発出することは,
学教法28条3項,
6項,
地公法32条,地教行法43条2項に基づく権限の行使であり,H校長の所掌に属する事務である。そして,前記(ア)で主張したとおり,学校訪問において公開授業に関する学習指導案があらかじめ提出されることは,学
校訪問の目的の効果的な達成に寄与するものであることから,
当該職務命
令の発出は学校訪問という目的のため必要かつ合理的な行為であり,教育
基本法10条の定める不当な介入に当たるとはいえない。
(ウ)

原告らは,O通知の学習指導案の作成・提出の前提条件としての校長の十分な指導を欠く本件職務命令は違法であると主張している。しかし,
本件学校訪問においてH校長が本件小学校教諭に対して学習指
導案の提出を求める職務命令を発出する権限を有することは地公法32条,地教行法43条2項,学教法28条3項,6項の規定から導き出されるもので,前記O通知の記載内容によって根拠づけられるものではなく,原告らの主張は是認されない。

-47-

(エ)

以上によれば,本件学校訪問に関する指導案の文書化及び提出に関
する職務命令は適法であって,原告Aが同職務命令の発出を妨害したことは懲戒事由に当たるから,これを懲戒事由とする本件停職処分が違法であるとはいえない。

懲戒処分の裁量権の逸脱・濫用

〔原告ら〕
(ア)

本件小学校における民主教育の実践
本件小学校は,子供たちのために,教職員が力を合わせてがんばって
いた民主的な学校であった。保護者とも協力関係が築かれ,地域に開かれた学校でもあった。その一端を示す以下のような事例を挙げることができる。

子どもの事を語る会
6年生の「夜の懇談会」
から始められたが,
それ以外の学級も参加可
能な「子どもの事を語る会」へと発展していった。内容は,しつけ・学習・テレビ・漫画など多岐にわたり,各家庭の取組が紹介され,いつも笑いのある和やかな懇談会であった。月1回の例会はa町公民館b支所であり,役員の保護者が借用手続もし,年に一度は懇親会も行われた。その後,会員が増え,会場を各地区持ち回りですることになるなど,地域と教職員の関係も良好であった。


コスモス学校
子どもの事を語る会への教職員の参加も増え始め,子供たちの縦のつながりの希薄さが交わる力を弱めているのではないかという理由から,参加教師たちは,異年齢集団での活動を提起することにした。いわゆる野外活動である。機運が高まり始めた平成2年11月,第1回のコスモス学校を開催することになった。低学年と高学年の児童が一緒にゲームや野外活動を楽しむなど,語る会の親が中心となり,野外
-48-

活動での異学年交流ができた。

校内サークル
新規採用1年目の教師の学級担当は,不安と戸惑いの日々である。そのような中で,若い教師たちは勉強会を発足させ,先輩教師に学ぼうと浄庵会をつくった。例会は,校長室を借りて行われ,先輩教師も含めお互いに悩みを出し合い,子供の顔が見える話合いはとても有意義であった。いろいろな問題を抱えている子供一人一人を大切にするために,顔と名前の一致する校内での研究会は,まさに民主教育そのものであった。


児童会活動
児童会が計画・運営した野山を歩こう会は,地域の自然に触れるよい機会となった。
また,
運動会でのダンス・ソーラン節が好評を得て,
b地区の運動会にも参加して踊った。更に,校内の演劇が,町の文化祭に出演依頼を受けたこともあった。まさに,地域に開かれた小学校であった。


校内研修
校内研修では国語の研究が進められていた。経験豊富な先生を講師に校長室で教材分析会を行い,先輩教師たちも自ら教材を分析し,自分なりの解釈や作者の思いなどを紹介し討論がされた。若い教師たちには,とても新鮮でやる気の出る会となった。子供たちの発言一つ一つを記録し,授業後全員で討論がされた。作者の願いや授業する教師の願い,児童の自由な発想から学ぶことなど,学力をどうやってつけていくのか真剣に議論が交わされた。更に,校内研修の次のテーマである「学級作り」
については,
教師の自主性を尊重しながら進められた。
平成元年度の学校訪問における研究協議でも,子供の見方,とらえ方をテーマに議論がされた。

-49-


校外サークル
校内だけでなく,校外でも民間サークルに所属して学習を深める教師たちもいた。e・c地区や全国的な傾向も含め学習し,子供たちの指導に当たっていたのである。

(イ)

学校訪問について
第2次世界大戦中まで,教育勅語及び視学制度が,教育を支配し,教
育内容にまで干渉し,忠君愛国の思想が児童生徒に教え込まれていた。しかし,上記大戦後に制定された教育基本法10条1項により,教育行政による介入も禁止され,教育委員会法に基づく指導主事が設けられたが,同法第46条は

指導主事は,教員に助言と指導を与える。ただし,命令及び監督をしてはならない。として,視学制度への反省が盛り

込まれた。
その後,民主的な指導主事の在り方を模索する者もいれば,視学のやり方を踏襲する者もあり,指導主事を迎える学校側でも,視学を迎えるようなやり方から抜け出せない状況もあった。このような中,昭和31年制定の地教行法により,
指導主事は「上司の命を受け・・・指導に関す
る事務を行う」ことになった。
また,昭和33年,学習指導要領が官報に告示され,学習指導要領の法的拘束力が強調されて,指導主事訪問を通して教育行政による介入復活への道が開かれることになった。
そして,指導主事の学校訪問の際に学習指導案を準備するようになった。これに対して,昭和30年から40年代には,教職員組合により,学校訪問時の私帳簿(法定外帳簿)の提出強要を拒否し,かかる取扱いを認めさせていく取組が進められた。その後,昭和40年から50年代にかけて,単元や教科の目標まで等,教職員組合の学習指導案簡略化の取組が強められ,広がっていった。それに伴って,提出強要も執拗にな
-50-

っていった。
この後,平成元年3月,リクルートまみれで詰め込みの新学習指導要領が告示され,本件小分会でも白紙撤回の意見書採択運動が大きく取り組まれていった。このことが,後に指導案提出強要の問題と絡んでくることになる。
このように,視学制度の復活の様相を呈してきた学校訪問と学習指導案提出の強要に対して,県教職員組合に結集する教職員は,以下のように取組をした。
職務命令発出の前年,平成元年の県教職員組合のたたかいの総括
と「運動方針」は次のようなものであった。

たたかいの総括:県教育委員会,
地教委,事務所等の計画訪問は,相変わらず一方的に行われ,学校現場に要らぬ負担と混乱をもたらしています。訪問当日の指導案の提出強要はもちろん,経営簿,指導案簿等の私帳簿の提出強要も若い先生方,新採の先生に対して,再びみられるようになってきました。運動方針:学校訪問は戦前の視学官制度の遺物であり,
あきらかに教育内容に介入するものであることを意思統一し,教育内容に介入している今日の県教育委員会,地教委等の計画訪問には反対します。訪問に際しては,平常校時,勤務時間の遵守,児童・生徒にしわよせをしないこと等,学校の主体的な計画で行うよう分会で意思統一して取り組みます。特に指導案,法定外帳簿の提出強要に反対します。そこには,当時の学校訪問の実態が「教育基本法」第10条第1項により禁止された不当な支配に当たるとして,学校訪問を民主化し,「教育の自由」を守ろうとする決意が表れている。また,前述した「新学習指導要領」の持つ問題点とも相まって,
学習指導案提出の強要への疑問

-51-

も大きくなってきていたのである。
県教育委員会は,平成元年度までの学校訪問では,学習指導案を書かせるよう指示することができるという見解であり,職務命令が出せるという見解ではなかった。実際にも,県内における小中高校の平成元年度までの学校訪問で,校長が学習指導案の提出について職務命令を発出したことはなかった。
しかし,平成2年度における学校訪問の際,県教育委員会作成の計画訪問実施要綱に文言上の変更がないにもかかわらず,平成2年度県教育委員会学校教育課のf小学校への学校訪問では,初めて学習指導案の提出の職務命令が出され,その後各地で乱発された。
この背景には,県教育委員会のO通知があり,それによれば,平成2年6月の段階で,
前年度までの方針を変更して,県教育委員会としては
平成2年度から校長の十分な指導にもかかわらず・・・・校長が職務命令を発せざるをえないと判断すれば,その判断を支持することに方針を変更し,それに従わないときは処分の対象となりうるという方針を打ち出しました。とされ,①校長の十分な指導にもかかわらず不提出又は目
標・展開などの欄が白紙での提出の場合において,校長が職務命令を発せざるを得ないと判断すれば,その判断を(県教育委員会が)支持すること及び②その職務命令の発令にも従わないときは懲戒処分の対象とし得ることの新方針が定められていた。
(ウ)

本件各処分は,懲戒権を逸脱したかその濫用による違法な処分であ
る。
長い年月にわたり教育現場において行われてきた方針を変更して新方針を樹立し,かつ,その新方針が職務命令の発出とこれに従わない場合の懲戒処分という原告らにとって重大な人事上の不利益になるものであるにもかかわらず,原告らに対しては事前に全く知らせず従前のままの
-52-

方針であると思い込ませて,原告らに対応させ,その対応した所為(職務命令の発令そのものへの抗議・抵抗ないしその他の関連する所為)をもって,懲戒処分事由とすることは,原告らに対する不意打ち・だまし討ちに当たる。
この懲戒処分のやり方は,法律的には,指導助言を原則とする教育行政の在り方に違反しかつ当然教育の世界においては(直接的には校長教諭間においては)一層強調されるはずの信義誠実の原則に違反しかつ懲戒権の濫用であって違法であり,不当である。
地公法27条1項はすべての職員の分限及び懲戒については公正でなければならないと規定し,また,同法13条はすべて国民は,この法律の適用について,平等に取り扱われなければならないと規定する。公正について特に問題となるのは,処分が苛酷であるか否か及び他の処分との均衡がはかられているかどうかの2点である。処分が苛酷であるか否かは,処分を行うこと自体について及びどのような種類の処分を行うかという2点に関して論議されることになる。
本件の場合には,県教育委員会の学校訪問に関し学校長がどういった態度でその推進を画策したのか(民主的な学校運営といえたか)また,,
これに対し原告らの対応の動機や目的がどのようなものであったかなどを考慮して,原告らの当該行為に対して懲戒処分をなすべきであったか否か,なすべきとしてどの種類の懲戒処分をなすべきであったかが判断されなければならない。
次に,他の処分との均衡がはかられているかどうかについての判断については,これまでの同種事案での処分の有無と同種行動に対する他の学校所属の教諭に対する処分との違いがないかなどが考慮されなければならない。
更に原告らが教職員であることから特別に考慮しなければならない事
-53-

情がある。教育基本法6条2項,ILO/UNESCO教員の地位に関する勧告45項及び46項では,教育の目的,目標を実現する上で教師の身分保障が十分にされなければならないとしている。この身分保障を十全なものとするためには恣意的な処分を事前にチェックするための手続的保障を整備することが不可欠である。また,懲戒権の発動が教育委員会の教育行政の一貫であることからすれば,教育委員会の懲戒権の発動は教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない(教育基本法10条2項)
。懲戒権の発動を恣意的
に行ったり,専断的に行ったりして現場教職員の信頼を失墜し,信頼関係を破壊してしまうようであれば,それは教育条件を破壊するものとして教育基本法10条2項に違反するものといわなければならない。原告らの行為は,教諭の教育権,原告ら自身の思想・良心の自由をその侵害から防禦する正当な目的に出たもので,かつ,H校長の行為は,県教育委員会の要請を絶対至上のものとし専断的に学校経営をして本件小学校の教師集団たる原告らの意見を無視した不当なものである。また,
学校内の問題なのに地域の住民をまきこみ,原告らに圧力をかけるといった不当な手段を弄し無用な混乱を引きおこしたのであり,H校長にこそ責任があり,H校長の責任を放置し不問にして,原告らだけを懲戒するのは極めて不当であり,差別的取扱いとして平等の取扱原則にも反する。また,原告らの行った行為の目的や動機,態様,結果,影響等当然考慮すべき点を考慮せず出された処分である点でも著しく合理性を欠く処分である。
原告らが職員会議に出席しなかったことについては,本職員会議が11月8日の職員朝会でH校長を含めて決めた結論をH校長がその直後に一方的に無視・変更して開催したものであること,本職員会議を開催するについてはそれが職務命令であることは告知しなかったこと,職員会
-54-

議の招集については原告らへの周知徹底をしなかったこと,不出席の場合は処分もあり得ることの告知は全くなかったこと,H校長は原告らの不出席があり得ることを予想しながらも本職員会議を開催したこと,原告らが職員会議に出席しなかったことについてはそれまでの経緯においてH校長が本件学校訪問を実現することのみを急ぎ,教諭らに対する納得を得るための説明責任を果たさないなど校長に求められる指導をしていなかったこと等の事情がある。更に職員会議不出席を理由とする処分の前例がないのに,あえて原告らを処分しているのは不公正・不均等である。
本件各処分に当たり,県教育委員会は校長の一方的な報告だけで処分を行い,原告らに弁明や反論の機会を与えなかったのは,原告らの教師としての身分保障の趣旨に著しく背くものである。しかも,その処分時において自らの実施した学校訪問の法的根拠も曖昧なまま,校長を半ば手先として学校訪問を原告らに押しつけ,これに対し原告らが正当に抗議したことをとらえて原告らを懲戒処分にしたのは,恣意的かつ専断的な懲戒権の発動であり,教育条件を破壊するものであり,教育基本法10条2項に違反する。
本件各処分は,原告らが本件小学校において進めてきた民主的校務運営や学校訪問の民主化を求める活動を嫌悪し,これら活動を粘り強く推し進める原告らを見せしめとして,今後の佐賀県下における県教育委員会の主催する学校訪問を強圧的に展開することを目的としたものであり,教育の正常化の確保といった処分目的に背馳するものである。(エ)

以上のとおり,本件各処分は合理性をもつ判断として許容される限
度を超えた不当なものであり,懲戒権の逸脱,濫用に当たるものであるから,本件各処分は違法である。
〔被告〕

-55-

(ア)

本件小学校における民主教育の実践
原告らが主張するような教育的活動の具体的内容詳細及びその評価に
ついては不知であるが,認められる部分があるとしても,原告らの行為が正当化されるものではない。
(イ)

学校訪問について
平成元年度までの学校訪問の実態
(a)

学校訪問反対の取組
原告らが加入していた県教職員組合は,県教育委員会等が行う学

校訪問について,一方的な強制訪問で,戦前の視学制度の復活」に等しいとして,従来から反対運動,活動を活発に行っており,県教職員組合l支部でも学校訪問を反対する立場で,指導案の提出拒否や目標までを記載する方針を定めて取り組んでいた。更に,l支部に限らず県教職員組合本部で方針を立てて全県下で取組を行い,本件小分会においても同本部からの通知を受けて話合いをし,本件学校訪問については,同本部の方針のとおりに取り組むことを決定しており,原告らは,組合員として,もともと本件学校訪問に反対していたのである。(b)本件事案発生の直接の原因本件の強硬な学校訪問反対の活動の直接の原因は,f小学校・g中学校において指導案提出に関して職務命令が出されたことを契機として,県教職員組合が学校訪問に反対し,これを阻止する方針を確認強化したことによるものであり,もともとH校長の対応の仕方に問題があっての反対行動ではなかったのである。このことは,本件小学校への学校訪問が決定されて以降,校長に特段の問題行動がなかったにもかかわらず,平成2年6月7日及び14日付けで要請書が出され,原告らが学校訪問の日程の白紙撤回-56-を求めたことからも明らかである。また,平成2年6月8日に県教職員組合本部は中央委員会を再開して,f小学校・g中学校における指導案提出職務命令問題と今後の学校訪問対策について協議し,今後の学校訪問については,①指「導案・法定外帳簿は提出しない②特別校時を組まない
③研究授業はしない
④指導・講評の時間はつくらない
⑤学校訪問によって児童生徒にしわよせをしないを目標に,全県一致した闘いを再構築するとともに,教育への不当介入反対の運動を展開することを確認したとあり,県教職員組合本部の方針に基づき,本件小分会としても学校訪問反対に動き出した。
更に,c支部が作成した文書に加えて,本件小分会全体の意見と
して,教育事務所の訪問に限らず,県教育委員会の学校訪問に対して職務命令が出される状況下であれば県の学校訪問は受けたくないという独自の要求をしており,原告A自身もこの動きを認める供述をしているところである。
(c)

原告A自身の見解信条等
同原告は,当時,組合員であったが,昭和54年4月から昭和5

7年3月までの3年間は役員として組合専従となるなど,積極的に組合活動に携わってきた。
平成2年4月19日,職員朝会においてH校長から同月25日に
行われる県の学校訪問説明会に出席してもらいたいと要請されたにもかかわらず,同原告は,これを拒否し,県の行う研修には反対だという趣旨の発言をし,学校訪問に反対し,これを廃止すべきだという考えを持っていた。
また,同原告は,教務主任について

校長の命令に従っていくというそういうものではないと思う。と,校時について「校長も含め


-57-

て,全職員で話し合って決めるべき問題だと思っている。と,学校」
訪問における全員授業について

全員授業をするかどうかという問題は,学校現場で十分話し合って決めるべきことだ。と供述するな

ど,校務運営に関することはすべて職員が話し合って決めるべきであり,校長にはそれらを決定する権限はなく,校長の意向や指示に従う必要はないとの考えを持って行動していたものである。
(d)

原告らは,県教育委員会が行う学校訪問をもって,戦前戦時中

の教育勅語と視学制度の復活であると位置付けて,本件学
校訪問に反対した原告らの行動を正当化しようとしているが,本件指導主事による学校訪問は,後に詳述するように,国民の厳粛な信託を受けた国会の場において民主的に審議制定された教育基本法,地教行法,教特法等の法令に基づいて実施されるものであって,戦前戦中の視学制度とは趣旨目的はもとよりその内容も本質的に異なるものであって,原告らの反対の論拠自体が誤った認識に基づくものであったといわねばならない。

原告らは平成元年度までの学校訪問では,職務命令が出せる』と『いう見解ではなかったと主張する。しかし,県教育委員会は,平成元年度までは,指導案の提出について校長の指導により改善することが望ましいという方針(甲B第237号証)をとっていたのであり,原告らの主張するように「職務命令が出せるという見解ではなかった」ということはない。
そもそも,前述のように,校長が学習指導案の作成と提出を内容とする職務命令を発出することは,学教法28条3項,6項,地公法32条,地教行法43条2項に基づく権限の行使であり,法的には,前年度(平成元年度)までの段階でも職務命令は出せなかったわけではなく,当然,県教育委員会でも職務命令が出せないという見解で

-58-

はなかった。
ただ,なるだけなら職務命令によらずして指導案を提出してもらうのが望ましいということから,前述のとおり校長の指導により改善することが望ましいという方針だったのである。ところが,校長の指導だけでは指導案を提出しない事例が後を断たなかったことから,
校長が職務命令を発せざるを得ないと判断すれば,その判断を支持することに方針を変更したのである。更に,原告らは教職員には,平成2年度には,この県教育委員会の方針変更は知らされていなかったと主張するが,前述のように,原告らは校長が職務命令を発出する方針になったことを,本件学校訪問の前に了知していたと認められるのであり,校長が知らせたかどうかということと,原告らの本件行為の不当・違法性との関係はない。原告らは,O通知により,平成2年度の県教育委員会学校訪問における学習指導案の作成・提出について,
校長が職務命令を発出できると方
針を変更したことを原告らに事前に知らせず,
本件処分を行ったことは
不意打ちであり,信義則に反し,かつ懲戒権の濫用であるとの主張をしている。
しかし,前述のように,本件学校訪問に際してH校長が学習指導案の作成と提出を内容とする職務命令を発出することは正当な職務権限の行使であって,O通知の内容を原告らに事前に通知することまで要しない。
しかも,本件学校訪問に先立って実施されたf小学校,g中学校,本件小学校d分校,同h分校における学校訪問において,学習指導案の提出を内容とする職務命令が発出されており,本件小分会では,平成2年6月から9月にかけてこれらの職務命令の発出に関する抗議と要請の文書を再三にわたってH校長及びN教育長に提出し,
10月4日にはH校

-59-

長に対して職務命令を出してまでの学校訪問に対しては協力しない旨の発言を行っており,これらの事実関係から,原告らは,平成2年度から学校訪問に際して学習指導案が提出されない場合,
被訪問校の校長は職
務命令を発出するとの方針となったことを本件学校訪問の前に了知していたと認められる。原告らの主張はこの点からも認められない。

原告らは本件処分はH校長との関係で平等取扱いの原則に違反すると主張するが,本件学校訪問に際してH校長の校務運営に違法性,不当性は認められないものであり,
H校長が処分されなかったことをもって平
等取扱いの原則に違反するとの主張は認められない。
また,原告らは,正当な理由もなく職員会議に出席しなかったとの処分事由に該当するものであって,
職員会議不出席を理由とする処分の前
例がないから本件処分が違法又は不当であるとの原告らの主張は認められない。
原告らは,弁明や反論の機会を与えられなかったことは,教諭としての身分保障の趣旨(教育基本法6条2項,ILO/UNESCO勧告教員の地位に関する勧告45,46項)に背くと主張する。しかし,地公法平成11年法律第107号による改正前のもの。29条2項は,職(

員の懲戒の手続及び効果は,法律に特別の定がある場合を除く外,条例で定めなければならない。と規定し,

佐賀県市町村立学校県費負担教職
員の懲戒の手続,
効果等に関する条例昭和31年佐賀県条例第47号)

2条により準用する職員の懲戒の手続,効果等に関する条例(昭和27年佐賀県条例第19号)
3条に,戒告,

減給,停職又は懲戒処分としての免職の処分は,辞令を当該職員に交付して行わなければならない。と

定めており,
懲戒処分に当たっての弁明や反論の機会の付与は法定要件
とはなっていない。
これらに基づき本件処分がされたものである。
また,
本件処分は校長経過報告書により事実関係を把握し,
地教行法38条に

-60-

基づくN教育長の内申書の提出を受けて行われているものである。以上
のことから,
本件処分に際して処分者が原告らに弁明及び反論の機会を
与えなかったことをもって本件処分が違法となるものではない。
また,原告らは,本件懲戒処分は,恣意的でありかつ専断的な懲戒権の発動であり,教育条件を破壊するものであり,教育基本法10条2項に違反するとも主張しているが,
このような事情が認められないことは
前述のとおりである。
(ウ)

以上のとおり,本件各処分は合理性をもつ判断として許容される限
度を超えた不当なものとはいえず,適法である。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記争いのない事実等及び証拠(甲B1∼6,11∼27,33,36の1∼6,38,42,46,59,61,69,112∼114,117,118,146,182,232,237,293,甲C16∼40,甲E2,6,7,9,25,43,52,53,58の1∼3,乙B1,2の1・2,3∼5,7∼16,23,24,乙C1∼9,証人O,原告A本人,原告B本人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)ア

本件小学校は,本校,d分校及びh分校を有していた(以下,特に記載
しない限り本校における事実である。。


平成2年度当時の本件小学校には,校長としてH校長が,教頭としてJ教頭が,教務主任及び研究主任(学級担任はない。として原告Aが,1年)
生の担任教諭としてF教諭が,2年生の担任教諭としてE教諭が,3年生の担任教諭としてC教諭が,4年生の担任教諭としてL教諭が,5年生の5の1の担任教諭として原告Bが,5の2の担任教諭としてI教諭が,6年生の6の1の担任教諭としてG教諭が,6の2の担任教諭としてD教諭が,なかよしの担任教諭としてM教諭が,それぞれ勤務していた。
-61-


原告Aは,昭和39年4月1日付けで佐賀県に小学校教諭として採用され,県教職員組合に所属し,昭和54年度から昭和56年度まで県教職員組合本部北部ブロック担当執行委員として専従職員を務め,平成2年度には本件小分会代議員であった。


原告Bは,昭和54年4月1日付けで佐賀県に小学校教諭として採用され,県教職員組合に所属し,本件小分会長であった。


本件小分会には,原告らの外に,G教諭,C教諭,E教諭,I教諭,D教諭及びF教諭らの本件小学校本校の教諭並びにd分校及びh分校の教諭らが組合員として所属していた。なお,L教諭及びM教諭は県教職員組合に所属していなかった。

(2)ア

本件小学校において平成2年度に実施された学校訪問は,
県教育委員会

教育長平成2年3月6日・教委学第2232号平成2年度県学校教育課の計画訪問について(通知)によれば,以下の内容のものであった。(ア)

趣旨
平成2年度佐賀県教育の基本方針に基づいて,県下の小学校及び中学
校を計画的に訪問して,学校教育の実態を把握し,指導行政の参考とするとともに,その学校が当面している教育指導上の諸問題について研究協議し,必要な指導助言を行って学校教育の充実を図る。
(イ)

訪問校の選定
全県で35校程度の訪問を標準とすることなどを踏まえ,県教育委員
会が関係市町村教育委員会と協議して訪問校を決定する。
(ウ)

訪問の観点
訪問の観点のうち一つは,訪問校が当面している教育課題(研究主題)を観点とし,市町村教育委員会が県学校教育課長に報告する。

他の一つは,計画訪問の趣旨達成のため,県学校教育課が別に定める(以下,この観点を第2観点という。。


-62-

(エ)

訪問者
県学校教育課の担当者並びに教育事務所及び市町村教育委員会の関係

(オ)

訪問の日程
日程は訪問校の計画による。ただし,原則として,日程は勤務時間終了30分前までとする。


訪問校の計画には,訪問校の概要説明,授業の公開,研究協議等を含むものとする。
(a)

訪問校の概要説明は,日程の中に適当な時間を設定して行う。

(b)

授業は,原則として全員公開する。

(c)

公開授業の中に訪問の観点の教科等を組み込み,道徳,特別活

動についてもできる限り実施する。
(d)

研究協議の主題は,訪問の観点に関するものとし,研究協議は

全員参加の全体研究協議会とする。なお,第2観点の内容によっては,別に時間を設けて行う場合もある。
(カ)

便覧の作成
訪問校は,日程,授業参観のための学習指導案及び研究議題,質問事項等を含む便覧を作成する。


訪問校は,訪問の7日前までに,便覧を県学校教育課に4部,教育事務所に3部提出する。

(キ)

報告
訪問校は,訪問後10日以内に学校訪問における指導事項と対策を,
市町村教育委員会教育長を通じ,教育事務所長,県学校教育課長に報告する。

県教職員組合は,遅くとも昭和46年の第71回定期大会において,県学校教育課による学校訪問に反対することを方針として採択し,その後,
-63-

中央委員会で上記学校訪問に対する反対闘争の強化を決定したり,昭和51年ころから学校訪問における指導案の提出を拒否したり,授業における目標及び展開を記載しない簡略な指導案(以下3行指導案という。を)
提出したりするなど,一貫して学校訪問に反対していた。

平成2年度以前は,教諭が学校訪問における指導案の提出を拒否したことに対して,訪問校の学校長が上記指導案の提出について文書で職務命令を発することは稀であった。
また,佐賀県内の小中学校の校長で組織された自主研修団体である佐賀県小中学校校長会の法制部会が作成した資料では,学校訪問の際の指導案の提出について,校長が教諭に対して職務上の上司として指示することができるとしているが,職務命令を発することができることは明示されていなかった。


県教育委員会は,従前,教諭が学校訪問の際に指導案を提出しない又は3行指導案を提出する場合について,校長の指導により改善するのが望ましいという方針であったが,平成2年度から,校長の十分な指導にもかかわず指導案の不提出又は3行指導案の提出があったときに校長の判断により職務命令が発せられた場合はその校長の判断を支持し,教諭が職務命令に従わない場合は処分の対象にする方針に変更した。

以下,本件の事実経過について認定する(以下,特に断らない限り平成2年の出来事である。。

(3)

県教育委員会は,佐賀県内の市町村教育委員会に対し,3月6日付け平成2年度県学校教育課の計画訪問について(通知)をもって,各教育委員会管内の学校に対する学校訪問を計画していることを通知し,併せて,本件小学校等訪問校の候補の適否について意見を求めた。
a町教育委員会は,3月19日,県教育委員会に対し,本件小学校に対する学校訪問を受諾する旨回答し,平成2年度に本件小学校に対して,d分校
-64-

及びh分校を含めて県学校教育課による学校訪問が実施されることとなった。
H校長は,4月中旬ころ,本件小学校の教諭らと相談して,学校訪問の実施時期を調整し,学校訪問の課題について従前の研究テーマのとおりとすることにした。
a町教育委員会は,
上記調整を受けて,
4月16日,
県教育委員会に対し,
本件小学校に対する学校訪問について,観点を学級づくりを基礎に,一人ひとりの意欲を高める特別活動(仮題)とし,訪問希望時期を第1希望10月下旬,第2希望11月上旬,第3希望6月中旬とする旨連絡した。(4)ア

県教育委員会は,
4月25日,
訪問校の校長及び研究主任に対する平成

2年度県学校教育課計画訪問の説明会を実施した。
H校長は,事前に原告Aに対し,研究主任として上記説明会への出席を求めたが,原告Aは,県の一方的押しつけ研修には反対するなどとして出席を拒否した。

H校長は,翌26日,原告Aに対し,県教育委員会の訪問計画実施要項を手渡し,同日の職員朝会で学校訪問の期日が10月24日であることや学校訪問の概要について説明を行った(第1回学校訪問)原告らは,学校。
訪問の期日については了承した。
H校長は,5月14日の職員朝会で,学校訪問の第2観点が社会科になったことを説明した。

(5)ア

佐賀県e市立f小学校では,同校校長が,5月31日,学校訪問に関し
て3行指導案を提出した組合員の教諭3名に対し,学習指導案提出について文書による職務命令を発した。

県教育委員会は,翌6月4日の緊急県教育長会議において,佐賀県内の市町村教育委員会に対して,県教育委員会の指導主事による市町村立学校の学校訪問について,学校訪問自体やその際の指導案提出に関する校長の
-65-

職務命令に関する法的根拠,裁判例を示しながら,上記職務命令の適法性等を説明した。

佐賀県c郡g町立g中学校では,同校校長が,同日,学校訪問に関して3行指導案を提出した組合員の教諭5名に対し,指導案提出について文書による職務命令を発した。
佐賀県c郡内のi小学校及びj小学校でも,6月中に各校校長による学校訪問に関する指導案提出について文書による職務命令が発せられた。

県教職員組合は,上記職務命令の発出に関して,県教育委員会の指示によるものとして,直ちに全分会及び全組合員による抗議はがき等の抗議運動を行うとともに,県教職員組合中央委員も参加して,校長らに対して職務命令の撤回等を要求した。


原告らは,6月7日,本件小分会として,H校長に対し,f小学校及びg中学校において,学校訪問に関する学習指導案提出について文書で職務命令が発せられたことに関連して,職務命令で学校訪問を実施するならば第1回学校訪問を取りやめること等を要求する学校訪問に関する要請書を交付した。
なお,本件小分会の5月11日付け1990年度職場要求書では,H校長に対して,命令や指導をそのまま聞くという姿勢では困るとして,教育委員会等に対して本件小学校職員の代弁者として行動してもらいたい旨要請したり,県教育委員会等に対して,初任者研修の廃止等を要請したりしていたが,学校訪問については明示的に要請を行っていなかった。原告らは,
H校長に対し,
f小学校等における職務命令の発出に関して,
第1回学校訪問の無条件の中止等を要求する6月14日付け文書を交付した。
H校長は,翌15日の臨時職員朝会でも,本件分会員から,第1回学校訪問の中止を求められた。

-66-

(6)

H校長は,8月27日,原告ら及びd分校の教諭らから,9月7日に予定
されていたd分校の学校訪問に関し同校長が指導案提出を求めたことについて,抗議を受けた。
原告らは,本件小分会として,H校長に対し,学校訪問の際の指導案提出の強要はやめてくださいと題する8月29日付け文書を交付した。d分校の教諭らが,9月1日,H校長に対し,d分校の学校訪問に関する訪問便覧及び学習指導案を提出した。
H校長は,提出された学習指導案が3行指導案であったので,上記教諭らに対し,同月5日の朝までに目標と展開を記載した学習指導案を提出するよう要求した。
H校長は,9月5日午後4時に,d分校において,上記教諭らに対し,翌6日午後3時を期限として学習指導案の提出を命ずる旨の文書による職務命令を発した。
H校長は,帰校後,本件小分会の申し出により上記職務命令について同分会との話合いの機会を設け,
同分会から上記職務命令の撤回を求められたが,
これを拒絶した。
H校長は,翌6日午後3時に,d分校の教諭らから学校訪問に関する学習指導案の提出を受け,
これを受領したが,
いずれも3行指導案であったので,
その後,上記教諭らに対し,十分な指導案とはいえないとして,翌朝の学校訪問前までに留意点を記載するよう求めた。
H校長は,翌7日,原告Aに本校で執務するように命じて,d分校にJ教頭と一緒に赴き,d分校で県教育委員会教育事務所による学校訪問が実施された。
c支部長らが,同日の学校訪問終了後来校し,原告らとともに,H校長に対して,d分校の学校訪問に関して,職務命令を発したこと,学習指導案の留意点欄の記載を求めたこと及び原告Aに学校訪問の際に本校での執務を命
-67-

じたことを抗議した。
(7)

県教職員組合中央委員会は,
9月25日,
学校訪問における指導案提出の

職務命令に対する以下の方針を決定した。

学校訪問について
6月に出された職務命令による指導案提出強要は,学校訪問において,校長の権限強化をねらったもの,学習指導要領・教科書通りの授業展開がされているかの監視・点検,学力向上答申通り実施させるための布石,視学制度の復活を図ったものとしてとらえ,中央委員会での確認の徹底をしていく,学校訪問に当たっては,指導案・法定外帳簿は提出しない,特別校時を組まない,
特別の研究授業を作らせないし,
その授業者にならない,
指導講評の時間を特別に作らせない,学校訪問によって,児童生徒にしわよせがあるようなことは一切しない,以上のことをたたかいの目標として設定し,各支部・分会は全力でたたかい,昨年より前進したたたかいとする。


職務命令を出させないたたかいを強化し,対県交渉・地教委交渉・校長交渉を強化する,地域へ出て学習指導要領撤回,学力向上答申撤回などの取組とあわせて,学校訪問の不当性をアピールし種々の署名活動を行う。

指導案提出のたたかいは,
教師の思いも十分に組んでいき,
最終的には,
中央委員会確認に基づき,各級機関で対応する。


支部・分会は,教育懇話会,対話集会等に取り組む。

(8)ア

H校長は,9月26日,h分校の教諭及び講師らに対し,翌10月3日
午後3時までに,同月5日に予定されていたh分校の学校訪問に関する学習指導案を提出するよう求めた。
H校長は,同月3日,h分校に赴き,学習指導案の提出を受けたが,h分校の教諭2名が目標欄までは記載されているが展開欄以下の記載を欠く学習指導案を提出したので,上記教諭らに対し,学習指導案の提出を命ず
-68-

る文書による職務命令を発した。

H校長は,翌4日,職員朝会において,原告らに対して,第1回学校訪問における質問事項の提案を要請したところ,原告Aは,職務命令を出してまでの学校訪問に関しては一切協力しないとして,質問事項の提案を行わない旨発言し,原告Bは,h分校の教諭2名に対する職務命令に関し,本件小分会との話合いの機会を設けるよう要求した。
H校長は,同日昼休みに,本件小分会との話合いを行ったが,上記職務命令の発出や県教育委員会による学校訪問についての抗議を受け,第1回学校訪問の質問事項の提案について原告らの協力を得るに至らなかった。

H校長は,同日の本件小分会との話合いの後,上記h分校の教諭2名から学習指導案の提出を受けたところ,いずれも3行指導案であり,十分な指導案とはいえないとしながらも,これらを受領した。
原告らは,
H校長に対し,
c支部長と連名で上記職務命令に抗議する学

習指導案提出の職務命令発令による教育への不当な介入に断固抗議する。

と題する同日付けの文書を交付した。
H校長は,翌5日,原告Aに本校で執務するように命じて,h分校にJ教頭と一緒に赴き,h分校で学校訪問が実施された。

(9)

10月8日の原告AのH校長の指示への不服従について
H校長は,同月8日の職員朝会で,原告ら教諭に対し,質問事項用紙及び
指導案用紙を配布し,質問事項については同月13日までに,指導案については同月24日の第1回学校訪問の1週間前までに県に便覧を提出することになっているので,同月15日(月曜日)からの週の早々に提出するよう要請した。
原告Bは,第1回学校訪問については同月24日に実施されることを聞いただけであり,原告ら教諭は誰も承諾していないとして協力できない旨の発言をした。

-69-

H校長が,県教育委員会学校訪問の説明会後の4月26日の職員朝会で口頭で本件学校訪問の概要について説明したこと,全員が公開授業をし,午後は研究協議会の時間を設定することを原告らも承知しているはずであるとの発言を行うと,原告Aは,10月24日(水曜日)の午後の時間割と同月25日(木曜日)の午後の時間割を入れ替えて,同月24日に午後2時間6校時まで授業を行うとの日程案を書面で配布・提案した。
なお,本件小学校を含めた佐賀県内のほとんどの小中学校では,平成2年当時,毎週水曜日は研修日として,午後の時間は研修に当てられ,5校時及び6校時の授業は行われておらず,10月24日も5校時以降の授業は予定されていなかった。また,原告Aは,8月28日の校内研だよりで以前から10月24日に予定されていた校内研を翌25日に実施することを提案し,9月5日の校内研究推進委員会及び翌6日の校内研でこれが了承されたが,10月25日の5校時及び6校時の授業を同月24日に実施することなどについては提案をしておらず,また,9月下旬の教務主任としての10月の行事予定の提案でも,上記各授業を同月24日に実施する旨の提案を行っていなかった。
H校長が,原告Aの日程案について,10月24日の午後は研究協議を行うことになっていると説明すると,原告Bは,学校訪問に反対し,協力できない旨の発言を行い,
原告Aは,校長は職務命令だけは文書で出すくせに我

々が要求している法的根拠とか,dで要求していたコメントとかは文書で一つも回答していない。やり方が汚い。

と大声で述べた。H校長が,
第1回学校訪問の法的根拠等を文書で示すことを検討し,
後日,
日程も含めて提案すると言って,職員朝会は終了した。
なお,被告は,H校長が同月8日以前に第1回学校訪問の日程について,午前中の4校時までを授業,午後は研究協議を行うことを既に提案していた旨主張するところ,上記認定のとおり,第1回学校訪問の実施日である同月
-70-

24日は水曜日として午後は授業を行わないのが通例であったと認められるが,H校長が原告らに対し明示的に午後に授業を行わず研究協議のみを行う旨の提案を行っていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
(10)

H校長は,10月9日,原告Bに対して,第1回学校訪問の法的根拠等
を文書で示すことを断った。
(11)

10月11日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する侮
辱的発言について
H校長は,同日の職員朝会前に,県教育委員会の訪問計画実施要項及び以下の内容の平成2年度学校訪問日の計画と題する書面を配布した。ア
質問事項の提出期限を同月13日とする。


指導案の提出期限を同月15日とする。


諸帳簿提出を同月20日とする。


同月24日の日程は普通校時として,1校時及び2校時を普通授業,3校時及び4校時を公開授業とし,5校時以降は行わず,午後2時30分から同4時までを研究協議とする。
同日の職員朝会の司会であったD教諭が他の議題を優先させたため,同日
の職員朝会では,第1回学校訪問の日程について協議する十分な時間が確保できなくなった。
そこで,H校長は,原告らに対し,第1回学校訪問の日程について,上記平成2年度学校訪問日の計画のとおり提案するが,研究協議に1時間30分程度必要であり,学校訪問は勤務終了30分前に終了することとなっていることから,遅くとも午後3時ころから研究協議を開始しなければならないものの,
詳細については訪問校で日程を決定できると説明して,
近日中に,
改めて日程について話合いの機会を設けるよう提案した。
しかし,原告Aは,校長は我々の言うことをまともに聞いてくれないし,

文書で要求しても一つも答えていない。今更,県の要項をそのまま出してく-71-るとは話にならん。話し合う余地も全くないし,話し合うつもりもない。と

大声で述べた。
H校長は,再度,第1回学校訪問の日程について話合いの機会を設けるよう提案したが,原告Aは,

時間が来ている。早く打ち切ろう。

と言い,D教諭が職員朝会の終了を宣言して,職員朝会は終了した。
原告Aは,職員朝会後,職員室を出ていく際に,校長は全くのロボットに

なっている。

と大声で述べた。(12)

10月15日の原告AのH校長の指示への不服従及び他の教諭に対する
恫喝的発言について
H校長が,同日の職員朝会で,同月20日(土曜日)の朝までに学習指導案を提出するよう依頼し,訪問便覧の提出期限が迫っているので,5校時を訪問授業とする日程案を書面で示して同日程案のとおり行うこととし,質問事項については提案がなかったのでH校長らが作成したものとする旨説明した。
原告Bは,我々は6時間やりたいと言っている。前提になる,今まで回答

を要求してきた話も解決しないままにそんなものは出せない。と言い,

原告
Aは,今まで何遍も趣旨に反対してきた。文書でも要求してきた。それなの

に文書で一つも答えていない。みんなも納得していない

と大声で言いながら,机をたたいた。
また,原告Aは,H校長がL教諭やI教諭を個別に校長室に呼び出して第1回学校訪問に関して要請をしていたことを知っており,職員朝会終了後,職員室内の非組合員であるM教諭及びL教諭の机付近に行って,これは,

組合員とか,非組合員とかの問題ではない。個人的に日程等の相談に絶対のるな。

と大声で言った。なお,原告Aの上記発言後,H校長に対して,L教諭は,既に指導案を提出したことを内密にするよう依頼し,M教諭は,指導案の提出を躊躇して,
-72-

早く提出すると何を言われるか分からないとして同月20日(土曜日)に指導案を提出する旨述べた。
H校長は,原告Aに対して,教務主任としての協力を依頼したが,原告Aは

そんな知恵はもたん。自分の都合のよか話ばかり言いなさんな。と述べ

て,これを拒否した。
(13)

H校長は,10月16日午前,県学校教育課に対して,第1回学校訪問
について,以下の内容の訪問便覧を提出した。なお,訪問便覧にはL教諭の学習指導案のみが添付されていた。

日程は,1校時,2校時及び5校時を普通授業,3校時及び4校時を訪問授業とし,午後1時から同時45分までを諸帳簿の指導とし,午後3時10分から午後4時30分までを研究協議とする。


質問・協議事項は,①本校では,係活動をとおして,一人一人がいきいきと取り組む仲間づくりを主題に自ら学ぶ力を付けることをねらっていますが,他の学習にもさらに意欲的になるような子どもにするには,どんな点に留意して指導すればよいでしょうか,②社会科で地域のようすを具体的に観察したり,調査したり,また作業学習をとりいれたりすると時間不足になりがちですが,指導計画にはどんな留意点が必要でしょうか,③生活科の指導計画について,
とくに留意すべき点についてご教示ください,
④日頃の作文指導と関連して,読書感想文を書かせる時の留意点についてご教示ください,である。

(14)

10月16日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告らは,同日,県教育委員会から帰校したH校長に対して,原告らがf
小学校等における職務命令の発出やd分校及びh分校の各学校訪問に関して行った要求に対して同校長がことごとく応じて来なかったとして,改めて,第1回学校訪問に反対であることを表明する

職員との合意なくして,学校訪問を一方的に強行することはやめてください。と題する書面に,

要求事項

-73-

として①学習指導案の提出に職務命令を出さないこと及び②学校訪問の計画・日程等は職員の合意を得て実施することとする非組合員を含めた教諭らの署名付きの文書(以下10月16日の署名付き文書という。を添えて交)
付した。
原告Aは,
上記書面の交付の際,
H校長に対し,これでも強行したときは,

当日は混乱が起こることを考えておきなさいよ。混乱の責任は全部あなたにありますから。

と言った。また,原告らは,H校長に対して,第1回学校訪問について,平成元年以前の学校訪問と同様の方式で実施することを求めた。
(15)

H校長が10月18日に修学旅行から帰校したところ,原告らの以下の
点について回答を求める書面が机上に置かれていた。

同校長の同月16日の県教育委員会訪問時の詳細


同月15日の日程の再提案時に5校時目を訪問授業とした理由等


学習指導案提出の職務命令の法的根拠についての文書による回答


学校訪問に関する職員との合意の要否についての同校長の考え
H校長は,原告Bに対し,10月16日の署名付き文書の要求事項を含め
て,翌19日に話合いの機会を設けることを提案した。
(16)

10月19日の原告AのH校長に対する恫喝的発言について
H校長が,同日の職員朝会で,10月16日の署名付き要求書における要
求に対して,学習指導案提出の職務命令については,原告らが学習指導案を提出しなければ,職務命令を発せざるを得ないので指導案を提出するよう要請したが,学校訪問に関する職員との合意については,今後も合意とまではいかなくても話合いで歩み寄れないかと思っている旨述べた。
これに対して,原告ら教諭らからは,職務命令の発出を批判したり,学校訪問を教諭らとの合意に従って行うことを要求する発言があった。原告Aは,H校長に対して,第1回学校訪問の日程に関して,同校長は水
-74-

曜日終日の時間割と木曜日終日の時間割の入替えを提案しているが,原告らが要求しているのは水曜日午後の時間割と木曜日午後の時間割の入替えである旨発言をした。
H校長は,昼休みに本件小分会と話合いを行うつもりであったが,原告Aが年休を取得して不在であったので,原告Bと話をしたのみで,同日午後4時からの臨時職員会議を招集した。
原告Aは,上記臨時職員会議前に帰校していたが,H校長が職員朝会の際には周知せずに,その後,突然に臨時職員会議を招集したことに立腹していた。
H校長は,上記臨時職員会議において,10月16日の署名付き要求書の要求に対する回答として,原告Aの日程案の提案内容を勘違いしていたので第1回学校訪問日の3校時及び4校時の授業を水曜日の時間割で行うことを提案したところ,原告ら教諭はこれに異議を述べなかった。
また,
H校長は,
日程案につき5校時を訪問授業としている点については,
普通授業と記載すべきところをうっかりして間違って記載したとして,普通授業に訂正した。
更に,H校長は,第1回学校訪問の実施日の午後に木曜日の5校時及び6校時の授業を行うことについては,5校時の実施については既に了解を得ているが,6校時の実施については上司と相談しなければならない旨述べた。原告Aは,H校長に対し,職務命令が出れば,指導案を出すと思ったら大

間違いするということを教育長にも言っておきなさいよ。と語気を強くして

言った。
(17)

10月20日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する侮辱
的発言について
原告Bは,
同日,
H校長に対し,
職員朝会前に,
要求は認められていないが,
昨日の話合いで一応職員全体の意向が同校長に伝わったとして,
10月16日

-75-

の署名付き文書の返却を要求したところ,H校長は同文書を返却した。H校長は,
学級終了後の午前11時40分ころ,
指導案を提出していない教
諭に職務命令書を渡すために,職員が職員室に集合するよう校内放送を行った。
H校長は,
L教諭を除く教諭らが集まった時点で,
指導案を提出していない
学級担任教諭に校長室に来るよう,
指導案を提出した教諭は帰ってよい旨述べ
た。
なお,
L教諭は前記のとおり第1回学校訪問に関する学習指導案を既に提出していた。
これに対し,原告Aは,

何ばするとか。また6校時の返事も,前からの話もついていないのに何をしようと言うのか。6校時の話はどうなったか。

と述べた。
H校長は,
N教育長から研究協議ができなくなるので6校時はできない旨の
N教育長の職務命令が発せられた旨述べた。
原告Aは,H校長に対し,校時について執拗に抗議し,

教育長は校時等に職務命令が出せるのか。そんなことが分からんお前は,それでも校長か。

と激高した様子で赤チョークで,職員室内の週行事の黒板に教育長―校長,職務命令と大きく書いた。H校長は,
N教育長の校時に関する指示を上司の命令であると解釈している
旨述べたところ,原告Aが同教育長を呼ぶよう要求し,H校長が,J教頭と一緒に校長室から同教育長に電話をかけたが同教育長と話をすることはできなかった。
原告Aは,
校長室から職員室に戻ったH校長に対し,
法的根拠を示すよう要
求するなどして抗議を行い,
H校長との間で激しい言い争いとなり,
H校長が,
勤務時間を過ぎているので今日のところはお引き取りくださいと言って,一同
は解散した。
H校長は,原告B,G教諭,D教諭,I教諭,C教諭,E教諭及びF教諭に
-76-

対する学習指導案提出の職務命令書を準備していたが,
上記の経過をたどった
ため,結局,これらを手渡すことができなかった。
(18)

10月22日の原告AのH校長の指示への不服従,
原告B外6名に対する

職務命令書手交の妨害,
C教諭に対する職務命令書発出の妨害,
職務命令書の
回収及びH校長の指示への不服従について

10月22日は,育友会の授業参観と教師との懇談が予定されていた。H校長は,
同日の職員朝会で,
第1回学校訪問の日程に関する20日の発
言について,
N教育長から職務命令があったとしていたが,
強い指導があっ
たと言うべきであったと訂正した。
これに対して,原告Aは,

我々はあくまで6校時まで予定している。子どもにもそのことを伝えるつもりだし,6校時までと放送するつもりだ。

と発言した。


H校長は,職員朝会終了後,職員室で,第1回学校訪問に関し指導案を提出していない原告B外6名に対し職務命令書を渡すため,
原告Bらに対し,

指導案が出ていない担当の先生方は校長室にお集まりください。

と指示したが,
原告Bらが席を立って職員室を出て行こうとしたので,
原告Bらを
追いかけた。
原告Aは,席から立ち上がりH校長の進路を塞いで,
何で校長室に呼ぶのかと言い,更に,原告Bらに

校長室に行く必要はないよ。

と大声で言った。
H校長は,
職員室内でI教諭に追いついたが,
同教諭は受け取れないと言
って,足早に去った。
H校長が,廊下に出ると,C教諭が,職員室向かいの事務室から出てきたところであったので,
事務室の出入口前で職務命令書を手に持ってC教諭に
対し

これを受け取ってください。

と述べた。その際,原告Aが,職務命令書の交付を阻止するために,同校長とC教諭
-77-

のすぐ横に立って,

今授業に行くところだろうが。授業とその書類とはどっちが大事か。と言い,これに対して,H校長が「今はこっちが大事だ。


と言い,更に,原告Aが

よし授業より大事と言ったな。忘れるな。

と言い,また,H校長は

邪魔をしないでください。

と言うなどして原告AとH校長でやり取りを行っていたところ,C教諭が

休み時間にしてください。

と言ったため,H校長は職務命令書を渡すことができなかった。ウ
H校長は,
指導案を提出していない原告B外6名を校内放送で呼び出し,
職員室に招集した。
H校長は,
職員室で,
原告B,
G教諭,
I教諭,
E教諭及びF教諭に対し,
各人の机上にそれぞれ職務命令書を置き,口頭で命令の内容を確認した。C教諭及びD教諭は職員室に来なかったので,
H校長は,
J教頭とともに,
各教諭の教室まで行き,
廊下で職務命令書を渡そうとしたが,
いずれの教諭
も受け取らなかったので,各教諭に対し,口頭で同命令の内容を確認して,職員室の机上に置いておく旨伝えた。
H校長が,
職員室に戻ると,
原告Aが原告Bらの机上に置かれていた職務
命令書を回収していた。更に,H校長が,C教諭及びD教諭の机上に職務命令書を置くと,原告Aはこれらをも回収した。
なお,
原告Aは,
原告Bらから職務命令書を回収することについて事前に
了解を得ていなかった。
その後,H校長が,町内校長会に出席して同日午後3時に帰校すると,原告B外6名に対する職務命令書が二つ折りにして職員室の同校長の机上に置かれていた。
上記原告Bらに対する職務命令書の内容は,
10月23日午前8時30分
までに学習指導案を10月8日にH校長が交付した書式を用いて作成しH校長に提出するというものであった。


原告らは,
H校長に対し,
N教育長の第1回学校訪問の実施日の6校時の

-78-

授業を行わない旨の職務命令及び同校長の学習指導案提出に関する職務命令の撤回等を要求する10月22日付け本件小分会名義の文書及び同日付けの本件小学校職員有志名義の文書を交付した。
(19)

H校長は,10月23日,原告Bらに対して,処分の可能性もあるとし
て学習指導案の提出を説得した。
原告Bらは,本件分会員同士の話合いの結果に従って,第1回学校訪問に関する学習指導案を提出しなかった。
なお,県教職員組合は,平成3年5月1日付け県教職員組合新聞で,学習指導案の提出について校時及び同提出に関する各職務命令の撤回を前提条件とする本件小分会の戦術は,被処分者を出さないという県教職員組合の基本方針との間で問題を生じさせたとした。
原告Aは,原告Bと相談して,翌日の学校訪問時に本件小学校の玄関付近に置くために,職員室に置かれていた移動式の黒板に

本日の学校訪問については多くの先生方は反対しています。無断で教室に入らないでください。b小職員有志

と書いた。H校長は,第1回学校訪問を延期する通知を受け,J教頭とともに,原告らを含む全教諭に対し,同月23日午後10時50分ころから翌24日午前0時15分ころまでの間に学校訪問の延期の連絡を行った。
(20)

H校長は,同月25日に,N教育長から第2回学校訪問の日が11月2
0日となった旨の連絡を受けた。
(21)

原告らは,H校長に対し,10月26日の教育事務所交渉で同校長の一
方的な報告に基づいて原告Aや本件小学校分校が悪者になっている等として第1回学校訪問に関する経緯を確認する同月27日付けの文書及び同校長に対し処分につながる報告書の提出を行わないことや職務命令の撤回を求める同日付けの文書を交付した。
(22)

H校長は,10月29日の職員朝会で原告Aから11月行事について提
-79-

案があった際に,第2回学校訪問の実施日が11月20日となったことを初めて伝えた。
原告Aは,H校長から10月25日には第2回学校訪問の実施日について連絡を受けていたことを聞いて,翌26日の臨時職員会議等で早期に知らせなかったことを非難した。
原告らは,H校長に対し,第2回学校訪問の実施日の連絡が遅れたことなどに抗議し,第1回学校訪問に関する職務命令を撤回するよう要求する10月30日付けの文書を交付した。
(23)

原告らは,H校長に対し,以下の要求事項の非組合員を含む教諭らの署
名付きの10月31日付け文書(以下10月31日の署名付き文書という。
)を交付した。


学習指導案提出,研究協議の日程についての職務命令を撤回すること


校長のうその報告に基づく不当な処分を出さないこと



学校訪問の計画・日程等は,職員の合意を得て実施すること

(24)

10月31日の原告AのH校長の指示への不服従について
同日午後2時30分から同3時30分までの職員会議時に,11月の月行
事の再確認を行うこととなった。
H校長が,11月12日の即位の礼の日を出席簿上祝日として扱うよう連絡を受けた旨述べると,
原告Bから,
祝日扱いすることについて抗議を受け,
原告Aら教諭から学校訪問に関するH校長の校務運営について抗議を受け,ことに原告Aからは,校長は自分の考えを含めてプリントで詳しく計画を出

せ。何遍も同じことを言わせなさんな。

と言われた。その後,原告Aは,H校長に対し,H校長の第1回及び第2回の各学校訪問に関する校務運営を非難する趣旨で,

私はもう11月の行事は提案しない。あとは校長,教頭でせよ。と発言し,職員室の週行事黒板及び月行事黒

板の11月1日以降の予定の記載を全部消した。

-80-

そのため,J教頭が,上記週行事黒板及び月行事黒板の予定を記載し直した。
(25)

原告らは,H校長に対し,10月31日の署名付き文書における要求事
項についての同日の職員会議での同校長の話を非難し,要求事項を確認する11月1日付け文書を交付した。
(26)

11月2日の原告AのH校長に対する恫喝的発言について
原告Aは,校長室で,H校長に対し,第1回学校訪問に関する職務命令に
抗議しその経過について報告したことを文書で出すことを要求して,教育長は,あいた時でしか仕方がないが,それまで学校では徹底してやるからね。県教職員組合からの報告によれば,処分は校長からの報告を基にすると県教育委員会も言っている。我々はもし処分があれば前の山下問題のように徹底して追及する。我々だけが処分を受けて,校長,教頭がそのままで済ませるはずはない。このようになったのも校長,教頭のやり方が間違っていたからで,徹底して追及するからその覚悟でいるように。dで言った不当労働行為的な発言も取り上げて全県的に追及する。職務命令は出すくせに我々の要求していることは,文書で出せないなら,職務命令は出すな。ひっこめろ。法的根拠は一体何ですか。と語気を荒くして言った。(27)

11月5日の原告AのH校長に対する恫喝的発言について
H校長は,同日の職員朝会時に,第2回学校訪問について以下のア∼ウの
内容の県学校教育課の訪問日の計画案と題する文書を示した。

訪問日の日程
1校時,2校時及び5校時は普通授業,3校時及び4校時は訪問授業とし,午後3時10分から同4時30分まで研究協議を行う。
3校時の訪問授業は,1年,2年,3年,4年,5の2及びなかよし学級(ただし,なかよし学級については4校時に調整することもある。,4)
校時の訪問授業は5の1,5の2,6の1,6の2とする。

-81-


研究協議の柱
第1回学校訪問における2つの課題である本件小学校の研究主題及び第2の課題である社会科に加えて,校務・学校運営等での問題点。


当日までのスケジュール
11月8日に教科,日程,協議の柱についての職員会議,同月10日に質問事項の提出,同月14日に学習指導案提出及び訪問便覧の作成,翌15日に訪問便覧の提出,同月17日に諸帳簿提出,同月20日学校訪問とする。
なお,4校時の5の2の授業は原告Aが出張授業として理科の授業を担当
していた。
H校長は,上記文書の補足説明として,原告Aを含めた教諭全員が訪問授業を行う場合は5の2は3校時及び4校時の2回訪問授業をすることになり,なかよし学級の訪問授業は4校時となること及び研究協議の柱に校務・学校運営等での問題点を加えたことを説明し,11月8日に第2回学校訪問について協議するために職員会議を開催することを提案した。
原告Aは,H校長が10月31日の署名付き文書における要求事項である処分に関する回答を行わない限り学校訪問は受け入れられず,白紙に戻すべきである旨発言し,

処分するなら,校長も処分を覚悟せよ。

と述べた。なお,11月8日の職員会議の開催については,原告Bからこれを拒否する旨の発言があった。
(28)

11月8日の原告AのH校長の指示への不服従
H校長は,同日の職員朝会で,同日午後4時開始予定の第2回学校訪問に関する職員会議を,翌9日午後4時からに延期することを提案した。同職員朝会の司会であったF教諭は,同月5日の職員朝会で要求していたH校長の回答がなければ職員会議はできない旨発言し,原告A及び原告Bは,職員会議の開催に反対する旨発言した。

-82-

F教諭が,H校長に対して,上記5日の職員朝会で要求していた回答を求めると,H校長は,第1回学校訪問についての職務命令に関する処分の点について,事実を報告していますので,

過去のことは既に私の手を離れています。と述べた(以下,この発言を「11月8日のH校長の発言

と」
いう。。

原告ら教諭は,11月8日のH校長の発言を不誠実なものとして,同校長を非難した。そして,F教諭は,職員会議を開催する前提条件であるH校長の回答がなかったとして,第2回学校訪問に関する職員会議を開かないものとまとめて,職員朝会を終了した。

H校長は,職員朝会の終了後,翌9日午後4時からの職員会議を招集する趣旨で,行事黒板の同日欄に職員会議4:00∼と黄色のチョークで記載した。
原告Aは,同月8日午前9時ころまでに,上記職員会議開催の黒板の記載の下に

このままでは話合いになりません。一方的招集には応じられません。(有志)

と赤チョークで記載した。育友会会長及び副会長が,県PTA研究大会への出席に当たり,職員室に来て,H校長に挨拶を行った。H校長は,育友会会長らに対し,上記黒板への原告Aによる記載について,最近校内がうまくいっていない旨説明した。
原告Bは,11月8日午前中に,上記の職員会議開催の行事黒板の記載を見て,他の本件分会員と話し合った上で,翌9日の職員会議についてはこれを開催しないとの職員朝会の結論が優先するとして,翌9日の職員会議には出席しないこととした。


原告らは,H校長に対して,同校長が同月5日の職員朝会で第1回学校訪問の職務命令に関して処分が出ないように努力するといった発言をしないで,第2回学校訪問について,原告ら教諭の要求より教育事務所や県教
-83-

育委員会に従っていることなどを非難し,職務命令の撤回等を要求する11月8日付けの文書を交付した。
(29)

11月9日の原告らの職員会議への不出席について
H校長は,同日午後4時に,J教頭に職員会議開催についての校内放送を
2回にわたり行わせた。
しかし,原告A,原告B,G教諭,D教諭,C教諭,E教諭及びF教諭は,職員会議に出席しなかった。
なお,I教諭は上記職員会議開催の黒板の記載を見ていたが,本件分会員との話合いの結果に基づいて職員会議には出席する必要がないと考え,2時間の年休を取得していた。
H校長,J教頭,L教諭,M教諭ら6名の出席で,職員会議が午後4時10分ころから開催された。
H校長は,第2回学校訪問の日程の概要を説明し,訪問授業の学習指導案の作成について指示した。
(30)

11月10日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する侮
辱的発言

H校長が,職員室で,原告Aに対し,訪問授業を行うよう要請したところ,原告Aは,そんな話の段じゃないじゃないか。校長はその前にするこ

とがあろうもん。校長と教頭はヒラメのように上の方ばっかり見ている。そんな話はできません。と語気を強くして言って,上記要請を拒否した。



育友会の評議員13名が,同日,校長室,職員室からよく怒鳴り声が聞こえると子供が言っており,また,怒鳴り声を聞いた母親もいるが,学校が何かでもめており,子供に影響しないかと心配であり,新入学齢児検診が遅れている理由について教育委員会からは先生たちが協力しないためと説明を受けたなどとして,H校長に対し説明を求めに来校した。


原告らは,H校長に対し,11月8日のH校長の発言を非難する内容の
-84-

校長として一方的なウソの報告』を『事実を報告している』と平然と居『直るH校長に立腹するのは当然と題する同月10日付けの文書を交付した。
(31)

区民全戸で組織されている育友会後援会の役員である区長が,11月1
3日,育友会の役員からの話を聞いたとして,H校長に対し説明を求めに来校した。
H校長は,原告ら及びc支部長らが参加した話合いで,処分に関する内申を行うようとの要請については断ったが,11月8日のH校長の発言については,誤解を招く点もあるとして,これを取り消した。
(32)

11月14日の原告AのH校長の指示への不服従について
原告らは,11月13日のH校長との話合いの結果を受けて,同月14日午後4時からの臨時職員会議に出席した。
H校長は,原告Aに対し,第2回学校訪問において訪問授業を行うよう要請したが,原告Aはこれを拒否した。
H校長は,原告Aの訪問授業について他の教諭の意見を求めたところ,原告Bから他の教諭も原告Aは訪問授業を行う必要がない意見である旨の発言がされたこともあって,原告Aを訪問授業からはずすこととする旨の発言をした。
また,研究協議には,校務・学校運営上の問題点を加えることで合意された。


H校長が,臨時職員会議後,N教育長らに対し,原告Aが訪問授業を行わないこととなったことなどを報告したところ,同教育長らから,原告Aに訪問授業を行わせるよう強い要請があった。

(33)

11月15日のH校長の指示への不服従について
H校長は,同日の職員朝会で,原告Aに対し,第2回学校訪問において訪
問授業を行うよう要請した。

-85-

原告Aは,

何ば言いよるですか。昨日はみんなで合意したではないですか。と言い,

J教頭が原告Aが訪問授業を行わないことについては合意して
いない旨言うと,原告Bらから反論がされるなどして紛糾した。
原告Aは,H校長に対して,同校長が昨日の合意を覆すのは強い指導があったのであろうとして,N教育長を呼ぶよう強く迫った。
H校長は,同日午後4時からの臨時職員会議で,原告Aの訪問授業については昨日の職員会議における合意のとおりとすること,第2回学校訪問の質問事項の提出の提出期限を翌16日の昼までとすること,学習指導案の提出期限を同月17日午前8時30分とすることを連絡した。
原告Aは,合意したことを簡単にひっくり返しておいてまた元に戻せばい

いと思っているのか。教育長を今すぐ呼びなさい。この間の事情を釈明させなさい。と言ってN教育長を呼ぶことを強く要求し,

H校長がN教育長に電
話連絡を取ろうとしたができなかった旨報告すると,教育長が所在不明って

あるか。明日までに教育長を連れてこないなら話は進まないよ。と言って,

第2回学校訪問に関する協議を拒否し,職員会議も終了した。
(34)

N教育長が,11月16日の職員朝会で,原告Aの訪問授業の実施に関
して,指導の行き過ぎを認めて釈明した。
同日午後4時からの臨時職員会議では,第2回学校訪問の研究協議における研究協議事項の協議が行われ,
協議事項及び時間配分について決定された。
H校長は,原告Bらに対し,学習指導案の提出期限を再確認し,この旨の板書を行った。
原告Bは,臨時職員会議終了後,H校長に対し,原告B,G教諭,D教諭,C教諭,E教諭,F教諭及びI教諭の学習指導案を提出したが,いずれの学習指導案も,同校長が事前に交付していた書式ではなく,B5版1枚に2人分の学習指導案を記載する様式の,学級,指導者,教科,単元,目標,展開の各欄が設けられた書式を用いていたが,学級,指導者及び教科欄のみ記載
-86-

があり,単元,目標及び展開欄は白紙であった。
H校長は,原告Bに対し,事前に交付した書式にきちんと記載するよう述べて,原告B外6名の学習指導案を返した。
(35)

11月17日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する恫
喝的発言について

原告Bは,同日午前8時20分ころ,H校長に対し,同月16日に提出したものと同じ原告B外6名の学習指導案を提出した。
H校長は,原告Bに対し,上記学習指導案は受け取れない旨述べた。H校長は,原告B外6名に対する第2回学校訪問についての学習指導案提出について文書による職務命令を準備し,
1校時終了後の休み時間中に,
校内放送で上記教諭らを校長室に招集した。
原告Aは,原告B外6名とともに,校長室に入ってきた。
H校長が,原告B外6名に対し,学習指導案提出について文書で職務命令を発する旨述べると,原告Aは,職務命令の法的根拠を文書で出すよう抗議し

文書でやらないなら当日混乱が起きるよ。教育長,所長は行政職だから授業を見る権限がないから,つきまとって抗議するからそのつもりでいなさい。時間が来たから授業に行こう。と言って,原告B外6名とと

もに校長室から退出した。
H校長が,J教頭とともに,職務命令書を渡すために原告B外6名の担任の教室に行こうとしたところ,原告Aが,職員室で,文書で命令を出す

ような行政的発想は教育現場ではなじまないことを知りなさい。と大声で

言った。
その後のH校長と原告Aとの間のやり取りで,原告Aが同月19日に学習指導案を提出することを約束し,H校長がこれを信用するとして文書による職務命令の発令を中止することになった。


H校長は,同日2校時後の休み時間等に,原告B,G教諭,C教諭,E
-87-

教諭,I教諭,D教諭及びF教諭に対し,口頭で学習指導案を同月19日午前8時30分までに提出するよう命じた。
(36)

11月19日の原告AのH校長に対する恫喝的発言について
原告Aは,同日,原告Bと一緒に,H校長に対し,同月18日の原告Bら
に対する学習指導案提出の指示について,口頭による職務命令とお願いのいずれであるか尋ね,
H校長が職務命令である旨回答すると,そりゃおかしい
じゃないですか。17日にあなたはその前の時点で信用するとおっしゃった。信用しておいて命令というのは筋が通らないではないか。あなたが命令と解しているなら話が違うのでまた話を元に戻さなくてはならなくなる。我々はいろんな行動を起こすがいいですか。と声高に述べた。H校長が,上記指示について,要請,お願いになる旨言うと,原告Aは追及をやめ,原告Bは,同原告外6名の学習指導案を提出した。
上記学習指導案は,いずれもB5版1枚に2人分の学習指導案を記載する書式で,単元,目標及び展開も含めて記載されていた。
(37)

11月20日,本件小学校で本件学校訪問が実施された。

以上認定事実に反する証拠は,
関係各証拠に照らしていずれも採用できない。
2
原告らの本件各処分事由の有無(争点(1))について
(1)

原告らの本件職員会議への不出席について
前記認定事実によれば,H校長は,11月8日の職員朝会後の行事黒板への板書をもって本件職員会議を招集し,原告らは同板書を見て同招集があったことを知りながら第2回学校訪問を妨害すべく他の本件分会員と示し合わせて意図的に上記職員会議に出席しなかったと認められる。H校長の上記招集は,a町立小,中学校の管理に関する規則17条3項に基づく,原告らに対する職員会議出席の職務命令に当たるから,原告らは同職務命令に反したものであって,地公法32条に違反し,同法29条1項1号及び2号の定める事由に当たる。

-88-


原告らは,H校長が本件職員会議開催が職務命令であることを説明しておらず,職務命令書も渡していないし,指導や警告もしていないから,手続上不備がある旨主張している。
しかしながら,職務命令の発出については,特定の形式を要するものではなく,その意思内容が明確に受命者に伝達されれば足りるところ,前記認定にかかる事実経過,とりわけ,本件学校訪問実施に関するH校長と原告らとの紛争経緯,8日の職員朝会のやり取り,H校長が行事黒板の9日の欄に職員会議4:00∼と明記した上,2回にわたる校内放送により本件職員会議への出席を求めたことなどに照らすと,その指示内容からして,これが職務命令であることは容易に理解し得るのであって,小学校教諭として,一般の人以上の判断能力を有していると解される原告らがこれを職務命令と理解することができなかったとは到底認め難い。原告らの上記主張は採用できない。


原告らは,他の職員会議に出席しなかった教諭に懲戒処分がされていないことなどを指摘して,本件が謀略的である旨主張している。
なるほど,単に1回職員会議に出席しなかったという事実だけをとらえれば,通常これに対して懲戒処分までされることは稀であろう。しかしながら,前記認定のとおり,本件職員会議への原告らの不出席は,他の職員会議への不出席と同視することはできない。すなわち,前記認定の事実経過からすると,原告らは,終始,本件学校訪問の実施に反対する闘争を行っている中で,本件職員会議において,第2回学校訪問の実施に関する協議が行われることを知り,これを妨げる目的で,いわば集団で本件職員会議をボイコットしたものであることは明らかであって,原告らの本件学校訪問実施反対行動の象徴ともいうべき出来事であり,そうである以上,これに対して懲戒処分がされたからといって,何ら違法・不当ということはできない。

-89-

(2)

原告Aの職務命令発出の妨害について
10月22日の職務命令書手交の妨害
原告Aは,同日の職員朝会終了後の職員室内で,H校長の進路を塞いだり,大声で抗議するなどして,同校長の原告B外6名に対する第1回学校訪問に関する学習指導案提出の職務命令書の手交を妨害した。かかる原告Aの行為がその態様等に照らして,正当な行為と認められないことは明らかである。


C教諭に対する職務命令書手交の妨害
原告Aは,同日の職員朝会終了後の事務室出入口付近の廊下で,H校長とC教諭のすぐ横に立って執拗に抗議し,同教諭に対する第1回学校訪問に関する学習指導案提出の職務命令書の手交を妨害した。かかる原告Aの行為もまたその態様等に照らして正当な行為と認められないことは明らかである。


職務命令書の回収
原告Aは,同日,H校長が職員室の原告B外6名の各机上に置いた職務命令書を回収し,同校長の第1回学校訪問に関する学習指導案提出の職務命令の発出を妨害した。
原告Aは,上記行為は発出を妨害したものではなく,何らの問題もないと主張するが,前記1(18)ウ認定のとおり,原告Aは,上記回収について事前に原告Bらの承諾を得ていたものではなく,また,上記職務命令書はいずれもH校長の机上に返却されていたことからすれば,原告Aの行為はH校長の職務命令の発出を不明確にしてこれを妨害するものである。原告Aの主張は採用できない。


小学校の校長は,学教法28条3項に基づき,教育活動を含む教諭らが処理する校務のすべてについて必要に応じて職務命令等の措置を講ずることができるから,H校長の上記職務命令書の手交等はいずれも適法な職務
-90-

行為であるところ,これを妨害する原告Aの行為は,公務員の信用を失墜させる行為として地公法33条に違反し,同法29条1項1号の定める事由に当たる。
(3)

原告Aの教師としてあるまじき行為について
原告Aの職務上の義務
原告Aは,a町立小,中学校の管理に関する規則8条の2第2項に基づき,本件小学校教務主任として校長の監督の下教育計画の立案その他教務に関する事項を分掌している。そして,事前にa町教育委員会の承諾を得ていた県教育委員会の指導主事による本件学校訪問は,地教行法19条3項,同法23条5号,同法48条に照らして適法である。したがって,原告Aは,
第1回及び第2回学校訪問の日程の決定や指導案の提出について,H校長に協力して職務を遂行すべき義務を負っていた。


10月8日・H校長の指示への不服従
原告Aは,10月8日,H校長が第1回学校訪問の当日の午後は研究協議を行うことを予定していることが明らかであったにもかかわらず,あえて研究協議の実施が困難となる時間割の入替えを提案した。
なお,原告Aは,第1回学校訪問の実施を妨害する目的がなかった旨主張するが,
前記1(9)認定のとおりの事実が認められるのであって,
同認定
を覆すに足りる事情はうかがえない。原告Aの上記主張は理由がない。

10月11日・H校長の指示への不服従及びH校長に対する侮辱的発言原告Aは,同日の職員朝会において,H校長の第1回学校訪問当時の校時についての話合いの提案に対して,話合い自体を拒否する発言を大声で行った。
また,原告Aは,H校長に対し,校長は全くのロボットになっている」と声高に侮辱的発言をした。なお,原告Aは,上記の話合いを拒否する発言は同原告が教務主任とし-91-てH校長に対して学校訪問に関する基本的なことを含めて見識とリーダーシップを発揮した上で日程についても話し合うのがいいのではないかという意見を述べたものであると主張するが,これを認めるに足りる事情は窺えない。エ10月15日の原告AのH校長の指示への不服従及び他の教諭に対する恫喝的発言原告Aは,同日の職員朝会で,H校長の第1回学校訪問の日程案の提案に対して,机を叩いて話合いを拒否し,その後のH校長からの教務主任としての協力の依頼も拒否した。原告Aは,第1回学校訪問を妨害する目的で,非組合員である教諭らにH校長との上記学校訪問に関する個別の協議を躊躇させるべく,これは,「組合員とか,非組合員とかの問題ではない。個人的に日程等の相談に絶対のるな。と大声で恫喝的発言をした。

10月16日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告Aは,同日,H校長に対し,これでも強行したときは,当日は混乱

が起こることを考えておきなさいよ。混乱の責任は全部あなたにありますから。

と恫喝的発言をした。なお,原告Aは,上記発言は,新たな不信と混乱を持ち込んだ校長への要請の言葉であったと主張するが,
これを認めるに足りる事情は窺えない。


10月19日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告Aは,同日の臨時職員会議において,H校長に対し,職務命令が出

れば,指導案を出すと思ったら大間違いするということを教育長にも言っておきなさいよ。

と語気を強くして言った。

10月20日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する侮辱的発言
原告Aは,同日のH校長が第1回学校訪問について学習指導案を提出し
-92-

ていない原告B外6名を校長室に呼び出した際に,同校長に対し,第1回学校訪問の日程等について執拗に抗議を行い,H校長が原告Bらに対して学習指導案の提出について話しをすること自体を妨害した。
また,原告Aは,上記抗議において,H校長に対し,教育長は校時等に

職務命令が出せるのか。そんなことが分からんお前は,それでも校長か。

との侮辱的発言をした。

10月22日の原告AのH校長の指示への不服従
原告Aは,同日の職員朝会で,H校長に対して,同校長の第1回学校訪問の日程案に反対して,我々はあくまで6校時まで予定している。

子どもにもそのことを伝えるつもりだし,6校時までと放送するつもりだ。と発

言した。


10月31日の原告AのH校長の指示への不服従
原告Aは,同日の職員会議で,私はもう11月の行事は提案しない。あ

とは校長,教頭でせよ。などと言って,教務主任の職務である11月の行

事の提案を拒否し,職員室の週行事黒板と月行事黒板の記載すべてを消した。
原告Aは,H校長の校務運営に非があったとして,正当な行為であった旨主張するが,上記行為の内容等に照らして,到底これを正当な行為ということはできない。


11月2日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告Aは,同日,H校長に対し,教育長は,あいた時でしか仕方がないが,それまで学校では徹底してやるからね。県教組からの報告によれば,処分は校長からの報告を基にすると県教育委員会も言っている。我々はもし処分があれば前の山下問題のように徹底して追及する。我々だけが処分を受けて,校長,教頭がそのままで済ませるはずはない。このようになったのも校長,教頭のやり方が間違っていたからで,徹底して追及するから-93-その覚悟でいるように。dで言った不当労働行為的な発言も取り上げて全県的に追及する。職務命令は出すくせに我々の要求していることは,文書で出せないなら,職務命令は出すな。ひっこめろ。法的根拠は一体何ですか。と語気を荒くして恫喝的発言をした。サ
11月5日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告Aは,
同日,
H校長に対し,処分するなら,

校長も処分を覚悟せよ。


と言った。


11月8日の原告AのH校長の指示への不服従
原告Aは,同日の職員朝会で,H校長が第2回学校訪問についての職員会議を開催する提案を行った際に,あくまでも職員会議の開催自体に反対する旨の発言を行った。


11月10日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する侮辱的発言
H校長が,同日,原告Aに対し,訪問授業を行うよう要請したところ,原告Aは,そんな話の段じゃないじゃないか。

校長はその前にすることがあろうもん。校長と教頭はヒラメのように上の方ばっかり見ている。そんな話はできません。と語気を強くして侮辱的発言をして,

上記要請を拒否
した。


11月14日の原告AのH校長の指示への不服従
H校長は,同日,原告Aに対し,第2回学校訪問において訪問授業を行うよう要請したが,原告Aはこれを拒否した。


11月15日の原告AのH校長の指示への不服従
原告Aは,同日,H校長に対し,教育長が所在不明ってあるか。明日ま

でに教育長を連れてこないなら話は進まないよ。と言って,

第2回学校訪
問に関する協議を拒否した。


11月17日の原告AのH校長の指示への不服従及びH校長に対する恫
-94-

喝的発言
原告Aは,同日,H校長に対し,職務命令の法的根拠を文書で出すよう抗議し

文書でやらないなら当日混乱が起きるよ。教育長,所長は行政職だから授業を見る権限がないから,つきまとって抗議するからそのつもりでいなさい。時間が来たから授業に行こう

と言い,原告B外6名に対し第2回学校訪問の学習指導案提出について文書による職務命令の発出を恫喝的発言をもって妨害した。

11月19日の原告AのH校長に対する恫喝的発言
原告Aは,同日,H校長に対し,あなたが命令と解しているなら話が違

うのでまた話を元に戻さなくてはならなくなる。我々はいろんな行動を起こすがいいですか。

と声高に恫喝的発言をした。

保護者・校区内住民の動揺及び学校に対する不信
原告Aは,H校長に対する大声による抗議等の言動を校内の児童がこれを感知するか否かに一切配慮することなく行ったため,児童の感知するところとなった。このため,これを知った保護者や校区内住民の動揺と学校に対する不信を生じさせるところとなった。
なお,原告Aは,上記保護者らの動揺等はH校長が意図的に話しをすることにより作出されたものである旨主張するが,これを認めるに足りる事情はうかがえない。


原告Aは,以上のとおり,H校長からの本件学校訪問に関する日程等の協議の要請等を大声を出したり,恫喝的発言及び侮辱的発言を行うなどして拒否し,a町立小,中学校の管理に関する規則に基づく教務主任としての職務上の義務を怠ったものであり,地公法32条に違反し,同法29条1項1号及び2号の定める事由に該当する。
更に,原告Aの上記行動は,保護者や校区内住民の動揺と学校に対する不信を生ぜしめたものであり,また,これら恫喝的発言及び侮辱的発言を
-95-

行うこと自体が教職員の信用を傷つけ失墜させるものとして,地公法33条に違反し,同法29条1項1号及び3号の定める事由に該当する。3
本件各処分の違法性の有無(争点(2))について
(1)

本件学校訪問の違憲,違法性について
憲法上,国は,適切な教育政策を樹立,実施する権能を有し,国会は,国の立法機関として,教育の内容及び方法についても,法律により直接に又は行政機関に授権して必要かつ合理的な規制を施す権限を有するのみならず,子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のためにそのような規制を施すことが要請される場合もあり得ることに鑑みれば,教育基本法10条1項,2項は,国の教育統制権能を前提としつつ,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,教育行政機関がそのための措置を講ずるにあたっては,教育の自主性尊重の見地から,これに対する不当な支配となることのないようにすべき旨の限定を付したところにその意味があると解される。したがって,教育に対する行政機関の不当,
不要の介入は,
排除されるべきではあるとしても,
教育行政機関が,許容される目的のために,必要かつ合理的と認められる規制等を施すことは,それがたとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,
必ずしも同条の禁止するところではないと解されるのであって最

高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)憲法23条,同26条及び教育基本法10条にかかわらず,教育委員,
会等が許容される目的のために,必要かつ合理的な範囲であるならば,教育の内容及び方法について一定の関与を行うことも許容されるというべきである。
そして,本件学校訪問の趣旨は,県下の小学校及び中学校を計画的に訪問して,学校教育の実態を把握し,指導行政の参考とするとともに,その学校が当面している教育指導上の諸問題について研究協議し,必要な指導
-96-

助言を行って学校教育の充実を図ることにある。教育基本法10条2項の定める教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立のためには,学校教育の実態を把握し,学校の当面する教育指導上の問題点について研究協議をすることが有用であることは明らかであり,本件学校訪問はこれを通して学校教育の充実を図ることを目的とし,
指導主事らによる授業の参観,
研究協議等を行うものであって,その内容も必要かつ合理的な範囲であるということができる。したがって本件学校訪問が憲法23条,同26条及び教育基本法10条に反するとはいうことはできない。

原告らは,本件学校訪問が学教法28条6項に違反すると主張するが,同条は小学校に勤務する職員の主たる職務ないし職務権限を摘示した規定にすぎないものと解されるのであって,同条6項の規定を根拠として,児童に対する教育活動以外は一切教諭の職務に含まれないというものではない。したがって,本件学校訪問が同条6項の規定を根拠に違法であるということはできない。


原告らは,本件学校訪問は地教行法48条,19条,47条の2に違反する旨主張する。
しかしながら,
地教行法48条1項は,
都道府県教育委員会は市町村の教
育に関する事務の適正な処理を図るため,学校の組織編成,教育課程,学習指導,生徒指導,職業指導,教科書その他の教材の取扱その他学校運営に関すること,校長等教育関係職員の研究集会,講演会その他研修に関することなど,同条2項各号例示事項について,市町村に対し,必要な指導,助言又は援助を行うものと規定し,また,同法23条は,市町村の教育に関する事務,すなわち,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関すること,教科書その他の教材の取扱に関すること,校長等教育関係職員の研修に関することなど,同条各号列挙事項について,市町村教育委員会が管理し,執行することと規定している。したがって,地教行法48条1
-97-

項において都道府県教育委員会が指導,助言又は援助を行う対象には,市町村,
市町村教育委員会に加えて市町村教育委員会が所管する学校及び当該学校に所属する校長等教育関係職員が含まれると解するのが相当である。それ
ゆえ,本件学校訪問が同法48条1項に違反するということはできない。また,上記でみたところに鑑みれば,都道府県教育委員会の指導主事が,市町村教育委員会の所管する学校における教育課程,
学習指導その他学校教
育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事することを禁止される理由はなく,
県教育委員会の指導主事による指導及び助言を一内容とする本件学校訪問が,同法19条に違反するということもできない。
更に,
同法47条の2は,
市町村教育委員会は,
初任者研修を実施する場合
において,
市町村の設置する小・中学校等に指導教員として非常勤講師を勤
務させる必要があると認めるときは,
都道府県教育委員会に対して都道府県
教育委員会の事務局の非常勤の職員の派遣を求めることができ1項)この(

求めに応じて派遣される職員は,
派遣を受けた市町村の職員の身分を併せ有
するものとされ2項)派遣された非常勤講師の服務を監督するのは市町村(

教育委員会と規定している(3項)これは,非常勤講師が勤務する学校は,。
市町村の設置する学校であり,
市町村立の学校に勤務する教職員の人的管理
を含め,その管理権を有するのは市町村教育委員会であること,市町村立の学校における非常勤講師の勤務は初任者研修を実施する都道府県の事務の一つとして行うものであると同時に,
学校を構成する教職員の資質向上のため
の事務は,学校全体の教育力を高めるものとして,校務として位置付けられる性格のものであり,
非常勤講師は市町村立学校の教員の職務に従事してい
ると解されること等に基づくものである。しかるに,県教育委員会の指導主事は,前記のとおり,県教育委員会の所管に属する学校だけでなく,市町村教育委員会の所管に属する学校における教育課程,
学習指導その他学校教育
に関する専門的事項の指導に関する事務に従事し,また,市町村職員の身分
-98-

をも併有するものでもなく,
同法47条の2に規定する非常勤講師とは,
その
職務内容,勤務形態を全く異にするものであるから,県教育委員会の指導主事による指導及び助言を一内容とする本件学校訪問が,
同条に違反するとい
うこともできない。
エもっとも,原告らが指摘しているように,教育は本来人間の内面的価値に関する文化的な営みであって,
党派的な政治的観念や利害によって支配され
るべきでないことや子どもの人格の独立を妨げるような国家的介入は許されないこと等を考えると,
教育に対する国家的介入はできる限り抑制的である
ことが要請されていることは明らかである。そして,学校訪問の内容等に関しては,原告らが指摘しているように,ILO/UNESCO教員の地位に関する勧告(仮訳)63項が参考になる。すなわち,同条項は,いかなる指

導監督制度も,教員の職務の遂行に際して教員を鼓舞し,かつ,援助するように計画されるものとし,また,教師の自由,創意,責任を減殺しないようなものとする。と規定しているのであり,

これらの観点に配慮して学校訪問
が実施されるべきことはいうまでもない。したがって,被告としても,あらゆる学校訪問が常に許されるというものではなく,その内容によっては,上記の必要かつ合理的な範囲を超え,
違法と評価されることがあり得ることに
は十分な留意が必要であろう。
(2)

学習指導案提出に関する職務命令の違憲,違法性
学習指導案は年間指導計画や単元指導計画に基づいて作成する1単位時間を中心とした学習指導計画で,
学校が定めた学習指導計画に基づき指導目標
を達成するために作成する具体的な指導予定を組んだ計画であり,各授業の
教育の内容を含むものである。
そして,学習指導案提出の職務命令は,憲法23条,同26条及び教育基本法10条にもかかわらず,前記のとおり,許容される目的のために,必要かつ合理的な範囲であるならば,教育の内容及び方法にわたるもので
-99-

あっても,これを発出することが許されるというべきである。
これを本件についてみるに,学習指導案は,本件学校訪問における学校教育の実態把握及び研究協議等により学校教育の充実を図るという目的を達成するに必要不可欠であるといえ,その提出を求める職務命令は,上記本件学校訪問の目的のために,必要かつ合理的なものということができるから,憲法23条,同26条及び教育基本法10条に反するということはできない。

上記職務命令は,教師に対し授業計画を学習指導案として明らかにすることを命じるものであるから,思想・良心の自由の一内容である沈黙の自由を侵害するものとして,憲法19条に違反するのではないかが問題となる。
しかしながら,学習指導案は,学級・指導者・教科・単元・目標・展開をその内容として記載するのであって,それ自体は教諭が通常授業において常に念頭において児童の教育に当たるべき事項であり,これを記載させることが,殊更に当該教諭の世界観・歴史観等の特定の思想を有することを外部に表明させるものということはできない。
憲法15条2項は,すべ

て公務員は,全体の奉仕者であって,一部の奉仕者ではない。と定めてお

り,原告ら教諭を含む地方公務員も地方公共団体の住民全体の奉仕者としての地位を有するものである。こうした地位の特殊性及び職務の公共性に鑑み,地公法30条は,地方公務員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては全力を挙げてこれに専念しなければならない旨規定し,同法32条は,地方公務員がその職務を遂行するに当たっては,法令等に従い,かつ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない旨規定するところであって,原告らを含む教諭も,法令等や上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない立場にあるから,上記本件学校訪問の目的の達成のために教諭に対して学習指導案の作
-100-

成を命じることは何ら不合理なものではない。以上の点に鑑みると,上記職務命令が憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。ウ
また,校長は,学教法28条3項に基づき,学習指導を含む校務に関して職務を分担する教職員を監督するについて必要な措置を講じることができるところ,校長による学習指導案提出の職務命令は上記必要な措置ということができるから,同条項に違反するということもできない。


なお,学習指導案提出に関しても,前記の学校訪問に関して述べたことが当てはまるのであって,本件で要求された程度の学習指導案の提出を求めることが許されるのは,上記で判示したとおりであるが,その内容いかんによっては,違法となる余地があることは留意されるべきであろう。
(3)

懲戒処分に関する裁量権違反
地方公務員に懲戒事由がある場合において懲戒権者が裁量権の行使として
した懲戒処分は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したものと認められる場合でない限り違法とならないものと解すべきである(最高裁判所昭和63年1月21日第一小法廷判決・裁判集民事153号117頁,最高裁判所昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁参照)前記のとおり,原告らは,適法。
な本件学校訪問及び学習指導案提出に関する職務命令の発出を妨害する目的で,各懲戒事由に当たる行為を行っており,原告Bに対する処分は地公法上最も軽微な戒告処分であること,原告Aに対する処分は4か月の停職処分であるが,懲戒事由に当たる行為の悪質性や学校教育現場にもたらした混乱並びに保護者及び校区内住民に対する影響などの結果の重大性に照らせば,いずれも社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱したものとは認められないし,上記裁量権を濫用したものと認めるに足りる事情はうかがえない。
4
結論

-101-

以上によれば,県教育委員会が原告らにした本件各処分はいずれも適法であって,
本件各処分の取消しを求める,
原告らの本訴請求はいずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。

佐賀地方裁判所民事部

裁判長裁判官

神山隆一
裁判官

田中芳樹
裁判官

稲吉大輔
-102-

(別紙)
時系列主張対比表

被告の主張

1
原告らの主張

平成2年10月8日
H校長の指示への不服従
(1)

H校長は,学校訪問当日の日程

(1)

について,午前中の4校時までを授
業,午後は研究協議を行うことを計
画し,提案していた。

原告Aは,以下の日程案の提案を

文書で行った。
24日(水)と25(木)の午後の日
程を入れ替える。

原告Aは,
H校長の提案に反して,

25日(木)午後は校内研究会(9

同月8日職員朝会時に,午後2時間

日に決定済み)なので,木曜日の午

6校時まで授業を行うとの研究協議

後が授業できないので,24日(水)

の時間が取れないような日程案を職

は,午後2時間(五,六校時)授業

員に提示し,同月11日には職員朝

をするようにしてほしい。

会で,H校長が校時についての話合

運動会の練習などで,勉強が遅れ

いを呼び掛けたにもかかわらず,話

ており,その取り返しをぜひしてほ

合い自体についても拒否する発言を

しい。

行った。
通常の時間割で6校時までの授業

なお,上記日程案は,10月24

を行うと午後3時55分までかか

日午後は2時間(五,六校時)授業

り,十分な(訪問便覧では1時間2

をして,その後に1時間30分の研

0分程度)研究協議の時間を確保す

究協議の時間をとるものであり,研

ることはできず,また,計画訪問実

究協議の時間がとれないものではな

施要項では原則として学校訪問の終

い。

-103-

了時間は勤務時間終了前30分とな
っていた。


H校長は,上記提案について,
6校時については,とにかく,研究協議の時間を確保してほしいとの反対意見を述べたが,他に反対意見は
なかった。

2
10月11日
H校長の指示への不服従
侮辱的発言
原告Aは,職員朝会時に,H校長

原告Aは,H校長の10月4日の

が校時の決定についての話合いを提

質問事項について
,同月8日の

案したところ,これを拒否し,職員

質問事項,指導案形式配布
,同

朝会終了後,職員室を出て行く際に

月11日の学校訪問日の日程の

校長は全くのロボットになってい提案につき,H校長が「学校訪問のる。

と大声で言った。
目的,趣旨」や研究協議の内容,柱などの学校訪問の基本的なことについての提案及び協議がないまま,
学習指導案以下指導案」

という。)や質問事項,そして日程などを一方的に定めてきたものと考えて,上記提案及び協議の後,日程についても話し合うのがいいのではないかと意見を述べた。校長が職場の意見には耳を貸さず,-104-上司の言うがままになって,ロボット化していることを批判したものである。「声高に言ったは否認する。
3
10月15日
H校長の指示への不服従
恫喝的発言
(1)

原告Aは,10月15日の職員

(1)

原告Aは,
同趣旨の発言はしたが,

朝会時にH校長が提示した5校時ま

のるななどとは言っておらず,

で授業を行う案に反対したばかりで

丁寧に言っており,大声で威圧的に

なく,職員朝会終了後,他の教諭に

言ったことは否認する。

対して職員室で

これは,組合員とH校長が提案した日程は,計画をか,非組合員とかの問題ではない。変更して5校時まで授業を行うもの個人的に日程等の相談に絶対のるであったが,5校時目も訪問授業とな。

と大声で威圧的に言った。
なっていた。
これは,本件小学校は9学級しか
ないのに,3,4校時と合わせて3
時間を訪問授業に当てるものであっ
た。
また,上記提案は,原告Aが教務主
任として提案し了承されていた水曜
と木曜の午後の入れ替えを変更して,
午前中からの入れ替えを提案するも
のであった。
H校長は,
なぜ,5校時を訪問授業にするのかあるいは,
水曜-105-と木曜の校時の入れ替えを,午前中からとしたのはなぜなのか等の疑問について,職員に納得いく説明を
十分にすることができなかった。
(2)

原告Aのこの発言を受けた教諭

らは,既に指導案を提出していた者
はそのことを内密にするように,ま
た,まだ提出していなかった者は提
出をちゅうちょする発言をH校長に
対して行った。
(3)

原告Aは,H校長から教務主任

(3)

原告Aは,H校長から,職員会議

としての協力を依頼されたが,これ

終了後

知恵をかしてもらえないだを取り合わなかった。ろうか

と言われたが,そんな知恵はありませんと断った。

4
10月16日
恫喝的発言
原告Aは,H校長に対し,指導案

原告Aは,同趣旨の発言を行った

提出に関し職務命令を出さないこと

が,恫喝的発言を行う意図はなかっ

及び職員の合意に基づく校時の決定

た。

をすることを求めた要求書を提出
し,

これでも強行したときは,当日は混乱が起こることを考えておきなさいよ。混乱の責任は全部あなたにありますから。

との発言を行った。

-106-

5
10月19日
恫喝的発言
H校長が,職員会議時に,延期前

原告Aは,このような発言はして

の学校訪問の日程の決定について,

いない。

H校長が5校時まで授業を行うこと
は問題ないが,6校時の授業につい
て上司と相談する旨発言したとこ
ろ,原告Aは,職務命令が出れば,

指導案を出すと思ったら大間違いをするということを教育長にも言っておきなさいよ。と語気強く言った。


6
10月20日
H校長の指示への不服従
侮辱的発言



H校長は,J教頭に相談して,教
務主任である原告Aには相談なく,
午前11時45分に臨時職員会議を
招集した。臨時職員会議は,職員室
の黒板の週行事の欄に記載されてい
たが,周知は不十分であった。
当日は土曜日で,月曜日は参観,
懇談ということもあって,職員は大
変忙しい時であった。開始時間を,
数分過ぎても職員はそろわなかった。

-107-

全員そろわない中で,職員会議は始
まった。H校長は,

指導案を出してください。後で個人的にお願いします。

と言った。

職員らが,19日の臨時職員会議
で継続審議となっていた校時の件に
ついて質問した。
H校長は,
校時の件については,月曜日に言おうと思っていたと答
えた。
それはおかしい,継続審議になっていたのだし,来週行事のことだから,今日はっきりしてほしいと職員から意見が出た。
このようなやり取りの中で,H校
長が,
校時については,教育長から校長に職務命令が出た
と言った。
そのことの是非をめぐって,同校長
と職員との意見が対立し,職員から
N教育長を呼んでほしいという
要望がされた。同校長が要望を受け
てa町教育委員会などに校長室から
電話したが,N教育長と連絡が取れ
なかった。
12時10分の退勤時間になって,
同校長は,
勤務時間が過ぎましたので,おひきとりくださいと言っ

-108-

て,職員会議は終了した。
(3)

原告Aは,H校長に対し,校時

(3)

原告Aは,H校長に対し,執拗に

について執拗に抗議し,

教育長は抗議したり,激高したりしたことは校時等に職務命令が出せるのか。そないが,「教育長―校長―職務命令


んなことが分からんお前は,それで

と赤チョークで黒板に書いた。

も校長か。
」と激高して赤チョーク
で,
(教育長―校長,職務命令)と
大書した。
(4)

原告Aは,H校長が指導案提出

について職務命令を行おうと他の教
諭等を校長室に招集した際にも,同
校長に対し,校時について執拗に抗
議を行い,その結果H校長は用意し
ていた職務命令書を手渡すことがで
きなかった。

7
10月22日
H校長の指示への不服従
(1)

原告Aは,職員朝会時に,H校

(1)

H校長は,22日の職員朝会にお

長の5校時までの授業の指示に反対

いて,
校時については,教育長かして,6校時まで授業を行うことをら職務命令が出たとの前言につい
主張し,

我々は飽くまで6校時まて,勘違いだった旨を言った。で予定している。子供にもそのことその後,校長が,「教育長からは,を伝えるつもりだし,6校時までと5校時までやってくれという強い指放送するつもりだ。

との発言を行
導があった。
」と言った。そこで職

った。

員らが

それは,校時について6校-109-時目カットの職務命令なのか。

と確認すると,校長は,

そうとってもらってもいい。

ということで,校時についての職務命令が口頭で出
されたのである。
原告Aは,6校時までの授業を行
う旨を児童に対しても伝えるという
趣旨の発言は行っていない。
原告B外6名に対する職務命令書手
交の妨害
(2)

H校長が,職員朝会終了後,職

(2)

H校長が原告Bらに対し1時限が

員室で,第1回学校訪問に関し指導

既に始まっているにもかかわらず校

案を提出していない原告B外6名に

長室に来るように指示したため,原

職務命令書を渡すため,

指導案が告Aは,「もう授業が始まっていま出ていない担任の先生方は校長室にす。

と立って言った。
お集まりください。
」と校長室に来

原告Aは,
何で校長室に呼ぶのるよう指示したが,同教諭等が立ちかと言ってH校長の前に立ちはだ
上がり教室に行こうとしたので,直

かっていない。

接職務命令書を渡そうと自席を離れ
同教諭等のところへ行こうとした。
原告Aは,
何で校長室に呼ぶのかと言い,H校長の前に立ちはだ
かり,更に上記原告Bらに対し

校長室に行く必要はないよ。

と大声で伝え,校長の職務命令の発出を妨
害した。

-110-

また,原告Aは,原告Bらに対し,
すぐ授業に行ってくださいと言
った。

C教諭に対する職務命令書発出の妨

(3)

H校長が,
職務命令書を持って,

教室に向かった原告Bらを追い掛け

(3)

H校長は,印刷を頼みに急いで事

廊下に出ると,同教諭等のうちの1

務室に行ったC教諭を追いかけて,

人であるC教諭が,一旦職員室を出

職務命令書を渡そうと話しかけてい

て事務室で用を済ませ出てきていた

た。C教諭は,H校長に対し,
要ので,H校長が職務命令書を渡そうりませんと言ったが,なおもH校

これを受け取って下さい。


長が職務命令書を渡そうとしていた。

言うと,原告AがH校長とC教諭の

そこで,原告Aが,H校長に対し,

間に割り込んで,

今授業に行くと「授業と職務命令とどちらが大事でころだろうが。授業とその書類とはすか。もう,授業が始まっているじどっちが大事か。

と言って,職務
ゃないですか」と言い,H校長が,

命令の発出を妨害した。

授業よりも,これが大事と言っ
た。C教諭が休み時間にもらいますからと言って,やりとりは終わった。
なお,原告Aは,H校長とC教諭
との間に割り込んだことはない。

職務命令書の回収
(4)

(4)

原告Aは,
同日1校時終了後に,

校長が学習指導案を提出していない
原告B外6名に対し発出した職務命
令書を,職員室の同人らの机上から
収集した。

-111-

原告Aは,原告B外6名の職務命

令書を収集した。

8
10月31日
原告AとH校長のやり取りがあっ

H校長の指示への不服従
原告Aは,職員朝会時に,延期後
の学校訪問に関するH校長の校務運

たのは,午後4時からの定例の職員会議であった。

営に抗議し,教務主任としての職務

原告Aは,H校長に対し,校務運

である11月の行事の提案を拒否す

営に抗議したことはなく,24日以

る趣旨の

私はもう11月の行事は降の校長の学校運営について,教務提案しない。あとは校長,教頭でせ主任として意見を述べたものである。よ。

との発言を行い,職員室の週
原告Aは,11月の月行事の提案

行事黒板と月行事黒板の予定の記載

が既に29日の職員朝会で済んでい

を全部消した。

たことから,
黒板に書くのは教頭先生の方でやってほしい」と言ったが,11月の行事の提案を拒否する旨の発言はしていない。また,原告Aは,黒板の予定の記載を全部消した。911月2日恫喝的発言原告AとH校長との校長室におけ原告Aは,校長室で,H校長に対るやり取りは,本件小分会長であるし,第1回学校訪問に関する職務命原告Bも含めた3人のやりとりであ令に抗議しその経過について報告しる。たことを文書で出すことを要求し原告Aは,同趣旨の発言を行ったて,「教育長は,あいた時でしか仕-112-が,「・・・出すな,ひっこめろ
方がないが,それまで学校では徹底

と言ったり,語気を荒くして言って

してやるからね。県教組からの報告

いない。

によれば,処分は校長からの報告を
基にすると県教育委員会も言ってい
る。我々はもし処分があれば前の山
下問題のように徹底して追及する。
我々だけが処分を受けて,校長,教
頭がそのままで済ませるはずはな
い。このようになったのも校長,教
頭のやり方が間違っていたからで,
徹底して追及するからその覚悟でい
るように。dで言った不当労働行為
的な発言も取り上げて全県的に追及
する。職務命令は出すくせに我々の
要求していることは,文書で出せな
いなら,職務命令は出すな。引っ込
めろ。法的根拠は一体何ですか。

と語気を荒くして言った。

10

11月5日
原告Aは,H校長に対し,延期前

恫喝的発言
原告Aは,職員朝会時に,H校長

の学校訪問に関する処分について,

に対し,第1回学校訪問に関する処

回答を求めたが,「処分するなら,校

分について,回答を求め,

処分す長も処分を覚悟せよ。

とは言って
るなら,校長も処分を覚悟せよ。


いない。

と言った。

-113-

11

11月8日
H校長の指示への不服従



同日の職員朝会では,H校長の同
日である8日に第2回学校訪問に関
する職員会議を開催するとの提案に
ついて,5日に引き続き,2回目の
話し合いとなった。
校内の行事であるb小祭りとの関
係で,
校長を含めて全職員一致して,
「8日は開かない」ことで合意した。
H校長は,更に,学校訪問に関す
る職員会議を翌9日に開催する旨提
案した。
職員からは,開催にあたって「校長
が誠意あるコメントをしてほしい」
との意見が多く出た。
職員朝会の司会者であったF教諭
は,上記意見を受けて,H校長に処
分についてのコメントを求めたが,
H校長から,
事実を報告している
過去のことは,既に私の手を離れているという発言しかなかった。H校長の不誠実な回答を受けて,
職員において9日の職員会議開催に
反対する雰囲気が一段と強まった。
b小祭りに向けての多忙さと相まっ

-114-

て,校長の誠意あるコメント(せめ
て,処分をしないでほしいという職
員の声を地教委に伝え,校長として
も努力する旨)を求める意見が多く
出た。
(2)
(2)

H校長は,職員朝会で,延期後

原告Aは,H校長の延期前の学校

訪問に関する職員会議開催の提案を

の学校訪問に関する職員会議を翌9

拒否する発言はしておらず,職員朝

日午後4時から開催することを口頭

会の中で,意見を述べた。

で指示するとともに,職員室の行事

H校長は,その後,多くの職員に

黒板に職員会議4:00∼と記

知らせることなく,職員室の行事黒

載した。

板に翌9日午後4時の臨時職員会議

原告Aは,
H校長の板書の下にこ

の予定を記載した。のままでは話し合いに応じられませまた,原告らは,H校長が行事黒ん,一方的招集には応じられません板の記載を行ったことを知らなかっ(有志)と赤チョークで記載した。


た。
(3)

(3)

なお,職員朝会の司会者であっ

F教諭が,8日の職員朝会で,9

日は職員会議は開かないと締めくく

たF教諭は,職員全体の意見を集約
したものではなかった。

12

った発言をしたが,H校長からは何
の異議も出されなかった。

11月9日

(原告ら共通)職員会議への不出席
職員会議は,第2回学校訪問の実
施につき,日程及び指導案等必要な

-115-

事項について話合いを行うため,山
中校長が招集したものであった。
H校長は,
職員会議の招集につき,
前日の8日職員朝会時に口頭での指
示及び職員室の行事黒板の記載,更
に,9日の午後4時には,J教頭が
当該職員会議開催の校内放送を2回
にわたり行った。

原告らは,職員会議に出席してい

それにもかかわらず,原告A及び

ない。

原告Bは当該職員会議に出席しなか
ったものである。

13

11月10日
H校長の指示への不服従
侮辱的発言

(1)

(1)

H校長が,職員室で,原告Aに

原告AとH校長との2人の個人的

な話合いにおけるやり取りであり,

対し,訪問授業を行うよう要請した

原告Aは,同趣旨のことを発言した

ところ,原告Aは,

そんな話の段が,言葉は丁寧に言っており,語気じゃないじゃないか。校長はその前を強めていない。にすることがあろうもん。校長と教頭はヒラメのように上の方ばっかり見ている。そんな話はできません。

と語気を強めた。
(2)

(2)

原告Aは,H校長から学校訪問

原告Aは,H校長に対し,10日

の校長との個人的な話合いの場,1

当日教務主任を含め全教諭が訪問授

4日の臨時職員会議,並びに,15

業を行う方針に従って第2回学校訪

日の定例の職員朝会及び臨時職員会

-116-

問当日に訪問授業を実施するよう要

議で,意見を述べたことはあるが,

請されたが,これを拒否した。

要請を拒否したことはない。

(3)

原告Aらの行動が本件小学校の

一部児童及び保護者の知るところと
なり,11月10日には,育友会の
役員が,学校が何かでもめており,
子供に影響しないかと心配である等
と校長に対し説明を求めに来校し,
また,同月13日には,育友会後援
会の役員も育友会の役員からの話を
聞き説明を求めに来校するなど,保
護者や校区内住民に動揺と学校に対
する不信を生ぜしめるところとなっ
た。

14

11月13日

H校長は,13日5時からの分会
との話合いで,H校長の8日の職員
朝会での発言を取り消し,「先生方の
声を地教委に伝え,処分が出ないよ
うに努力する」との誠意あるコメン
トがされた。

15

11月14日

-117-

H校長の指示への不服従

14日の職員会議では,13日の

原告Aは,H校長から,学校訪問

H校長と本件小分会との話合いを受

当日は教務主任を含め全教諭が訪問

けて,学校訪問について一定の合意

授業を行うとの方針に従って,第2

に達した。

回学校訪問当日に訪問授業を実施す

H校長を含めた全職員で,教務主

るよう要請されたが,これを拒否し

任は訪問授業を行わないとの合意に

た。

至っていた。
しかし,H校長は,その職員会議
において,それに反して,教務主任
である原告Aに訪問授業を行うよう
要請した。
原告Aは,H校長から提案に対し
て,合意形成の場としての職員会議
において意見を述べたものである。

16

11月15日

前日のH校長から原告Aに対する

H校長の指示への不服従

訪問授業の要請について,午後の職

原告Aは,H校長から,学校訪問

員会議で話合いが行われた。

当日は教務主任を含め全教諭が訪問
授業を行うとの方針に従って,第2
回学校訪問当日に訪問授業を実施す
るよう要請されたが,これを拒否し
た。
11月14日のH校長の原告Aに

-118-

17

11月16日

対する要請について,16日の臨時
職員朝会でも話合いが行われた。
H校長は,上記要請を撤回した。

18

11月17日
H校長の指示への不服従
恫喝的発言

(1)

(1)

H校長が,第2回学校訪問に係

原告Aは,H校長と本件小分会と

の話合いになったので,校長室に行

る指導案の提出につき職務命令を出

って話合いに参加したが,職務命令

すため指導案を提出していない教諭

について法的根拠を文書で出すよう

を校長室に招集したところ,原告A

抗議したことはない。

は,これら教諭と一緒に校長室に入

原告Aは,
教育長,所長は行政り,職務命令について法的根拠を文職だから授業を見る権限がないと
書で出すよう抗議し

文書でやらなは言ったが,その他の発言は行っていなら当日混乱が起きるよ。教育長,いない。所長は行政職だから授業を見る権限がないから,つきまとって抗議するからそのつもりでいなさい。

と言った。
(2)

(2)

原告Aの発言の結果,
H校長は,

H校長が文書による職務命令の発出を断念したのは,原告Aが「抗
文書による職務命令の発出を断念せ

議」したからではなく,本件小分会

ざるを得なかった。

と,訪問の目的,内容,日程等につ
いて合意し,指導案を出す用意があ
ることをある程度明らかにしたこと

-119-

や原告Aが指導案の提出を示唆した
ことによる。

19

11月19日
同月19日の話合いは,原告Aと

恫喝的発言
原告Aは,同月17日にH校長が

校長の2人での個人的な話である。

指導案提出について他の教諭に対し

原告Aが,H校長に対し,命令かど

て出した職務命令を命令かどうか確

うか確認をし,

あなたが命令と解認し,「あなたが命令と解しているしているなら話が違うのでまた話をなら話が違うのでまた話を元に戻さ元に戻さなくてはならなくなる。


なくてはならなくなる。我々はいろ

と発言したが,

我々はいろんな行んな行動を起こすがいいですか。


動を起こすがいいですか。
」とは言

と声高に言った。

っておらず,また,抗議を行うに当

原告Aは,
抗議を行うに当たって,
度々大きな声をあげたり,机をたた

たって,度々大声をあげたり机をた
たくなど行っていない。

くなどした。

20

保護者,校区内住民の動揺と不信
保護者,校区内住民の動揺と不信
原告AらのH校長に対する恫喝的

は,9月30日の運動会後の育友会

発言及び侮辱的発言は本件小学校の

との懇親会の中止をお願いした際の

一部児童及び保護者の知るところと

発言,10月22日の授業参観の際

なった。

のH校長及びJ教頭の言動,11月

11月10日,育友会の会員が,

9日にH校長が育友会役員に対して

本件小学校に来校して,H校長に対

職員室行事黒板の原告Aの板書を説

-120-

して,学校で何かでもめており子供

明したこと,11月10日の育友会

に影響しないかと心配であるなどの

役員及び同月13日の育友会後援会

話をした。

役員各来校時に学校運営等のことを

11月13日,育友会後援会の役
員も育友会の役員から話を聞き説明

H校長が話したことによるものであ
る。

を求めて来校した。

-121-


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