判例検索β > 平成18年(あ)第2319号
詐欺被告事件
事件番号平成18(あ)2319
事件名詐欺被告事件
裁判年月日平成19年7月17日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別決定
結果棄却
判例集等巻・号・頁刑集 第61巻5号521頁
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成18(う)1339
原審裁判年月日平成18年10月11日
判示事項預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たるか
裁判要旨預金通帳等を第三者に譲渡する意図であるのに,これを秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み,預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
参照法条刑法246条1項,金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律16条の2第1項,金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律16条の2第2項
裁判日:西暦2007-07-17
情報公開日2017-10-17 13:55:23
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主文
本件上告を棄却する
当審における未決勾留日数中140日を本刑に算入する。
理由
弁護人近藤広明の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論にかんがみ,本件各詐欺罪の成否について検討する。
1
原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事実
関係は次のとおりである。
(1)

被告人は,第三者に譲渡する預金通帳及びキャッシュカードを入手するた
め,友人のAと意思を通じ,平成15年12月9日から平成16年1月7日までの間,前後5回にわたり,いずれも,Aにおいて,五つの銀行支店の行員らに対し,真実は,自己名義の預金口座開設後,同口座に係る自己名義の預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘し,自己名義の普通預金口座の開設並びに同口座開設に伴う自己名義の預金通帳及びキャッシュカードの交付方を申し込み,上記行員らをして,Aが,各銀行の総合口座取引規定ないし普通預金規定等に従い,上記預金通帳等を第三者に譲渡することなく利用するものと誤信させ,各銀行の行員らから,それぞれ,A名義の預金口座開設に伴う同人名義の普通預金通帳1通及びキャッシュカード1枚の交付を受けた。
(2)

被告人は,A及びBと意思を通じ,平成17年2月17日,Bにおいて,上記(1)と同様に,銀行支店の行員に対し,自己名義の普通預金口座の開設等を申し込み,B名義の預金口座開設に伴う同人名義の普通預金通帳1通及びキャッシュカード1枚の交付を受けた。
(3)

上記各銀行においては,いずれもA又はBによる各預金口座開設等の申込
み当時,契約者に対して,総合口座取引規定ないし普通預金規定,キャッシュカード規定等により,預金契約に関する一切の権利,通帳,キャッシュカードを名義人以外の第三者に譲渡,質入れ又は利用させるなどすることを禁止していた。また,A又はBに応対した各行員は,第三者に譲渡する目的で預金口座の開設や預金通帳,キャッシュカードの交付を申し込んでいることが分かれば,預金口座の開設や,預金通帳及びキャッシュカードの交付に応じることはなかった。2
以上のような事実関係の下においては,銀行支店の行員に対し預金口座の開
設等を申し込むこと自体,申し込んだ本人がこれを自分自身で利用する意思であることを表しているというべきであるから,預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これにより預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。被告人の本件各行為が詐欺罪の共謀共同正犯に当たるとした第1審判決を是認した原判断に誤りはない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官
田原睦夫

藤田宙靖

裁判官

裁判官

堀籠幸男

近藤崇晴)裁判官

那須弘平

裁判官

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