判例検索β > 平成17年(ワ)第20670号
損害賠償
事件番号平成17(ワ)20670
事件名損害賠償
裁判年月日平成19年3月22日
裁判所名・部東京地方裁判所  民事第14部
結果その他
裁判日:西暦2007-03-22
情報公開日2017-10-18 04:08:01
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平成19年3月22日判決言渡

同日原本領収

平成17年(ワ)第20670号

損害賠償請求事件(甲事件)

平成17年(ワ)第20671号

損害賠償請求事件(乙事件)

平成17年(ワ)第20672号

損害賠償請求事件(丙事件)

平成17年(ワ)第20673号

損害賠償請求事件(丁事件)

平成17年(ワ)第20674号

損害賠償請求事件(戊事件)

口頭弁論終結日

裁判所書記官

平成19年2月1日
判決
甲事件原告


乙事件原告


丙事件原告


丁事件原告


戊事件原告


(以下,
併せて原告ら」

という。)原告ら訴訟代理人弁護士矢花公平浅野明子全事件被告F(以下「被告

という。)

同訴訟代理人弁護士
主大文谷直1
被告は,甲事件原告に対し,2730円及びこれに対する平成15年12月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2
被告は,乙事件原告に対し,64万6550円及びこれに対する平成16年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3
被告は,丙事件原告に対し,131万6015円及びこれに対する平成16年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
被告は,丁事件原告に対し,59万0155円及びこれに対する平成16年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
被告は,戊事件原告に対し,60万4950円及びこれに対する平成16年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

7
訴訟費用は,甲事件原告に生じた費用の10分の9と被告に生じた費用の80分の9を甲事件原告の負担とし,乙事件原告に生じた費用の4分の3と被告に生じた費用の16分の3を乙事件原告の負担とし,丙事件原告に生じた費用の4分の1と被告に生じた費用の24分の1を丙事件原告の負担とし,丁事件原告に生じた費用の5分の4と被告に生じた費用の30分の7を丁事件原告の負担とし,戊事件原告に生じた費用の4分の3と被告に生じた費用の8分の1を戊事件原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

8
本判決は,第1項ないし第5項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由

第1
1
請求
甲事件
被告は,甲事件原告に対し,142万9091円及びこれに対する平成15年12月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
乙事件
被告は,乙事件原告に対し,283万1550円及びこれに対する平成16
年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3
丙事件
被告は,丙事件原告に対し,205万2015円及びこれに対する平成16年7月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4
丁事件
被告は,丁事件原告に対し,350万9155円及びこれに対する平成16年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5
戊事件
被告は,戊事件原告に対し,195万0150円及びこれに対する平成16年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,原告らが,その所有するペットが被告の診療を受けるなどし,その際又はその後に当該ペットが死亡した又は後遺障害を負ったことについて,被告において,診療契約締結時に詐欺行為があった,動物傷害行為があった,被告の診療行為には注意義務に違反した点があったなどと主張し,不法行為等に基づき,その損害の賠償等を請求している事案である。各事件の概要については,後記する。
なお,証拠については,原則として,例えば,甲事件の甲A1号証の場合甲・甲A1というように,事件名・証拠番号との表記をすることとする。
ただし,各事件についての個別的な事案の概要及び当裁判所の判断が記載されている項(下記2ないし6,第3の1ないし5)においては,その項の事件の証拠を表記する場合は,事件名を省略することとし,また,その事件の原告を表記する場合も事件名を省略することとする。

1
全事件共通
(1)

前提事実(当事者間に争いがない。

被告は,獣医師であり,冒頭肩書住所地の建物の1階において,
多摩センター動物病院という名称の動物病院(以下被告動物病院という。)
を開設している。
(2)

原告らの主張
被告の経歴及び被告動物病院の診療体制
被告は,①アメリカにおいて,獣医師免許を有しておらず,したがって獣医師として動物の診療に当たることは許されていなかったし,②獣医師としての賞を受賞しておらず,③また,被告動物病院は,被告1人の体制であり,24時間体制ではない。しかるに,被告は,①アメリカにおいてモデストマクリーン賞という獣医師としての賞を受賞した,②アメリカにおいて獣医師として勤務し,チンチラやフェレットなどのエキゾチックペットの獣医療が進んでいるといわれ,アメリカでも最も先進的な動物病院として有名なニューヨーク市アニマルメディカルセンターやサンディエゴ動物園に勤務していた,③被告動物病院は,獣医師2名,看護師3名の体制で24時間365日対応しているとの虚偽の広告(以下本件広告という。
)をした。
そのため,原告らは,被告が,アメリカで獣医師としての勤務経験を有し,エキゾチックペット診療にも詳しい獣医師であり,被告動物病院は,アメリカの大病院のように手厚い看護治療を受けられる体制が整っているものと誤信した。


カルテの不備
獣医師には,カルテの作成,保管義務があり,その不作成や虚偽記載,保管違反は罰則付で禁じられている。
被告の作成したカルテは,カルテとしての体をなしていない。また,虚偽記載や追加,
修正記載なども多数見られる。特に,
丙事件のカルテには,
鉛筆書き,ペン書きを含め多数の書き換えた痕跡があり,しかも,被告自身,平成17年1月18日の検証(下記4(2)ウ)後にカルテを書き換え
たことを認めている。
なお,平成17年1月18日の後記各検証の直前まで原告らや他の飼い主らと被告間で遣り取りがあり,被告は,いずれ訴訟になることは分かっていたから被告動物病院のカルテには改ざんの余地があった。

社会的意義
本件は,本来動物を守るべき獣医師である被告が,獣医師としての地位と,飼い主のペットに対する愛情を利用して,金を払えそうな飼い主に対し,虚偽の診断や検査結果などを告げてペットホテルで預かり,治療費名目で取れるだけ金銭を取ることを繰り返している極めて悪質な詐欺,動物虐待事件である。

(3)

被告の主張
上記(2)ア(被告の経歴及び被告動物病院の診療体制)について被告が,モデストマクリーン賞を受賞したこと,アメリカにおいて獣医師として働き,アニマルメディカルセンターやサンディエゴ動物園に勤務していたこと,被告動物病院が24時間365時間体応をしているとの広告をしたことは認め,その余の事実は否認する。
上記の広告の内容は全て真実であるが,被告動物病院の獣医師が2名で看護師が3名という記載のあるホームページは全国の動物病院の紹介であり,被告は関与していない。被告は,アメリカ獣医師会の審査を受け,アメリカの獣医師資格(開業資格)及びステートボード(開業資格)所持者と同程度もしくは同程度以上の能力があると認められ,アメリカ獣医師会の会員になった。アメリカでは,開業資格がなくとも獣医師として働くことはできる。


上記(2)イ(カルテの不備)について
争う。
被告のカルテには,法的にカルテに記載すべき事項は全て記載されてお
り,それ以外のカルテの記載方法には特に決まりはないから,不備があるとはいえない。

上記(2)ウ(社会的意義)について
争う。

2
甲事件(日付は,
平成15年11月,
12月のものについては平成15年の,
平成16年1月ないし10月のものについては平成16年の記載を省略する。)
(1)

甲事件の概要
甲事件は,原告が,その所有する犬が被告動物病院においてペットホテル
での預かり保管を受けるとともに診療を受け,その後死亡したことに関し,①被告は,実際には,当該犬の糞便検査を実施せず,実施したとしても,糞便からサナダムシを発見していなかったのに,原告に対し,発見したとの虚偽の説明をし,さらに,そのサナダムシの駆虫処置をしたと告げて,それらの治療費を請求した,②被告は,<ア>当該犬を預かっている間,その健康状態を適切に管理すべき義務,<イ>血液検査を実施して肝障害を診断した上,その治療を実施すべき義務,<ウ>皮下補液を実施すべき義務があったのにこれらの義務を怠った,そのため,当該犬が死亡したなどと主張して,被告に対し,①の点については詐欺による不法行為に基づき,②の点については債務不履行に基づき,被告及び後獣医に支払った治療費,慰謝料等の損害金の賠償及びこれに対する原告が被告動物病院のペットホテルから当該犬を引き取った日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めている事案である。これに対し,被告は,①駆虫,糞便検査は原告から依頼された,虚偽の説明はしていない,②<ア>ペットホテルで預かっていた期間中,当該犬の健康状態は適切に管理していた,<イ>血液検査の実施は勧めたが原告に拒否された,<ウ>皮下補液を実施すべき義務はなかった,③当該犬の死亡と被告の治療は無関係であるなどと主張して責任を全面的に争っている。
(2)

前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。



当事者等
原告は,本件当時,被告動物病院の入居しているマンションと同じマンションに居住し,ペットA」と名付けた犬(ミニチュアダックスフンド,平成14年10月18日生,雌。)を所有し,飼育していた。イペットAの診療経過等(ア)原告は,12月25日から31日まで,ペットAを被告動物病院のペットホテルに預け,少なくとも,被告に対し,予防接種,ノミ予防を依頼した。(イ)原告は,12月31日,被告動物病院のペットホテルからペットAを引き取り,その際,①皮下注射料及び駆虫処置料1890円,②糞便検査料840円を含む合計2万9920円を支払った。(ウ)原告は,1月,ペットAを被告動物病院に受診させ,被告との間で,ペットAの診療に関する契約(以下「本件甲契約という。)を締結し
た。原告は,その後も12日までに数回,ペットAを連れて被告動物病院を受診した。
(エ)

原告は,被告に対し,本件甲契約に基づく治療費として,1月6日
に2415円,同月8日に1890円を支払った。
(オ)

原告は,1月25日以降,ペットAを永山動物病院に受診させた。
ペットAは,8月7日に死亡した(甲B1,C3の1∼22)


平成17年1月18日実施の検証(東京地方裁判所八王子支部平成16年(モ)第2605号)の際,被告動物病院において,カルテ,診療費明細書,レントゲン写真2枚が保管されていた。
被告は,検証期日において,糞便検査は実施したが,検査結果としては異常はなかったため,マスターシート裏面のプログレスシートにNと記載してあるのみで,特に別書面としては作成していない旨陳述した。(検証の結果)

(3)

原告の主張
原告の診療経過についての主張は,別紙甲事件診療経過一覧表原の告の反論欄記載のとおりである。なお,1月に,原告がペットAを連れて被告動物病院を受診したのは,6日及び12日のほか,3日及び8日である。


詐欺による不法行為
被告は,12月31日にペットAを渡す際,糞便検査を依頼されておらず,
実際には糞便検査を実施せず,
又は糞便検査を実施していたとしても,
実際には糞便検査においてサナダムシを発見していなかったのに,原告に対し,糞便検査をしたところサナダムシを発見した,皮下注射によりサナダムシの駆虫処置をしたと虚偽の事実を告げ,その旨原告を誤信させて,その費用合計2730円を支払わせた。
この被告の行為は詐欺であり,不法行為(民法709条)を構成するから,被告は,原告に対し,上記2730円(下記エ(ウ))の損害を賠償すべき責任がある。


債務不履行
(ア)

下記aないしcの被告の義務違反は,債務不履行(民法415条)
を構成する。

被告は,
12月25日から31日までのペットAを預かっている間,
ペットAの健康状態を適切に管理すべき義務があったが,これを怠った。そのため,健康な状態であったペットAは,ガリガリに痩せ,異臭がし,ずっとだるそうに寝ているようになり,洗うと大量の毛が抜けるに至り,食べ物の塊を吐いたり,下痢をするようになり,不健康な状態になってしまった。


被告は,1月3日又は6日に原告がペットAを被告動物病院に受診させた際,ペットAの症状及び原告を問診した結果から血液検査を実
施すべきであり,その検査結果から肝障害と診断し,それに応じた治療を実施すべき義務があった。
しかるに,被告は,
この義務を怠った。
なお,原告が,被告の勧める血液検査等の検査を拒否したという事実はない。

ペットAは絶食状態が続いていたのであるから,被告は,遅くとも1月12日には,ペットAに対し,皮下補液(リンカイ液)の点滴を実施すべき義務があった。しかるに,被告は,この義務を怠った。なお,原告が,被告の勧める皮下補液を拒否したという事実はない。
(イ)

ペットAは,
被告動物病院に預けられた時点では健康であったのに,

1月25日に永山動物病院において,重篤な肝障害が認められ,8月7日に死亡したことからすれば,ペットAは被告の上記(ア)aないしcの義務違反があったために,
肝臓病により死亡するに至ったといえるから,
被告は,原告に対し,債務不履行に基づき,ペットAの死亡により生じた下記エの損害を賠償すべき責任がある。

損害

合計

(ア)

ペットAの購入費

(イ)

ペットホテル代

(ウ)

142万9091円
17万5000円

被告動物病院における治療費

1万5750円
7035円

糞便検査,皮下注射及び駆虫処置の料金として計2730円,1月6日及び8日に支払った治療費計4305円の合計額。
(エ)
(オ)
(4)

永山動物病院における治療費
慰謝料

23万1306円
100万円

被告の主張
被告の診療経過についての主張は,別紙甲事件診療経過一覧表診の療経過(入通院状況・主訴・所見・診断),検査・処置欄記載のとおりである。

なお,1月に,原告がペットAを被告動物病院に受診させたのは,6日及び12日のほか,7日である。

上記(3)イ(詐欺による不法行為)について
被告が糞便検査においてサナダムシを発見していないことは認め,その余の事実は,否認する。
被告は,原告から,ペットAを預かるに際し,先日ペットAの糞便の表面に米粒のようなものが付いていたとの話を聞いたため,原告に対し,それはおそらくサナダムシであるとの説明をしたところ,原告から駆虫を頼まれ,実施したものである。また,被告は,原告から他の寄生虫もいるかもしれないということで,糞便検査も頼まれ,実施した。


上記(3)ウ(債務不履行)について
(ア)

上記(3)ウ(ア)本文は争う。
上記(3)ウ(ア)aについては,第1文は争い,第2文は否認する。ペットAは,預かり時も引渡し時も体重の変化はなく,被告は,原告から,預かり時,ペットAについて,普段からガリガリに痩せており,余り食べず,元気がないとの話を聞き,原告に対し,その血液検査を勧めた程であるから,預かり時と引渡し時とでペットAの健康状態に変化があったとはいえないし,むしろ1月12日には通常通り食べるようになるなど健康状態は好転していた。


上記(3)ウ(ア)bについては,その頃被告が血液検査をすべきであったこと,しかし,被告はそれを実施しなかったことは認めるが,その余は争う。
原告は,1月3日にペットAを被告動物病院に受診させていない。被告は,ペットAが吐いたり,下痢をしたり,食欲が全くなかったりしたことから,原告に対し,12月25日以降,診療のたびごとに血液検査を勧めたが,原告から,お金がない,様子を見たいなどと言
われて許可されなかったので実施できなかった。

上記(3)ウ(ア)cについては,被告において原告主張の皮下補液を実施しなかった事実は認め,その余は争う。
被告は,12月25日から31日までのペットホテルとの扱いで預かっていた間,ペットAに対してビタミン注射を実施しており,1月6日,7日,12日とペットAの調子はだんだん良くなってきたのであるから,この段階で,吐き気止めや整腸胃腸薬のほかに皮下補液の点滴まで実施すべき義務はなかった。なお,被告は,原告に対し,1月6日に皮下補液も勧めたが拒否された。

(イ)

上記(3)ウ(イ)は争う。

上記(3)エ(損害)について
争う。

3
乙事件(日付は,平成16年9月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

乙事件の概要
乙事件は,原告が,その所有するチンチラが被告動物病院において診療を
受け,その後死亡したことに関し,①当該チンチラの診療に関する診療契約を締結するに際し,被告において,適切な治療をする意思も能力もなく,入院させた上で,完全閉塞を確認できないために手術の必要がないと判断されるべき場合であっても,切って縫うだけの手術をして治療費を請求しようという意図を秘して,
完全閉塞を確認するためと虚偽の説明をして入院を勧め,
入院させ,手術した,そのため当該チンチラが死亡した,②被告において,完全閉塞を確認していないにもかかわらず,
確認したとの虚偽の説明をして,
手術を勧め,手術した,そのため当該チンチラが死亡した,③他にも被告の診療には注意義務に違反する点があり,そのため当該チンチラが死亡したなどと主張した上,<ア>①,②の点は詐欺に当たるから,不法行為に該当し,診療契約を取り消した,<イ>①,②,③のうち手術に及んだ点は動物傷害で
あって,不法行為に該当する,<ウ>①の点は,説明義務違反に当たり,債務不履行に該当し,③の点は債務不履行ないし不法行為に該当し,それらの債務不履行により診療契約を解除したと主張して,
被告に対し,
主位的に<ア>,
<イ>の不法行為(被告に支払った治療費については選択的に不当利得)に基づき,予備的に<ウ>の債務不履行ないし不法行為(被告に支払った治療費については選択的に解除に基づく原状回復)
に基づき,
被告に支払った治療費,
慰謝料等の損害金の賠償(返還)及び当該ペットの死亡日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を請求している事案である。これに対し,被告は,①当該診療契約を締結するに際し,
適切な治療をする意思も能力もあったし,
虚偽の説明はしていない,
②被告の診療に注意義務に違反する点はなかった,③当該チンチラの死亡と被告の治療は無関係であるなどと主張して責任を全面的に争っている。
(2)

前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。

当事者等
原告は,
ペットBと名付けたチンチラ(平成16年9月12日当時
10歳,雄。なお,チンチラはモルモットに似た草食性の小型齧歯類である。
)を所有し,飼育していた。


ペットBの診療経過
(ア)

原告は,13日午前1時頃,ペットBを被告動物病院に受診させ,
被告との間で,ペットBの診療に関する診療契約(以下本件乙契約という。
)を締結し,入院させた(以下本件乙入院という。。

(イ)

被告は,13日午前中,原告に電話を掛けたが,その際の遣り取り
で,ペットBに開腹手術(以下本件乙手術という。
)が実施される
ことと決まり,同日実施された。
(ウ)

原告は,被告に対し,13日夕方までに,本件乙契約に基づく治療
費の内金として,合計2万円を支払った。

(エ)

原告は,16日,ペットBを被告動物病院から退院させた。

(オ)

原告は,
17日朝,
ペットBをハロー動物病院に受診,
入院させた。

ペットBは,19日,ハロー動物病院において死亡した(甲A19,C1,2,原告本人)


平成17年1月18日実施の検証(東京地方裁判所八王子支部平成16年(モ)第2655号)の際,被告動物病院において,カルテ,診療費明細書,血液生化学検査報告書,レントゲン写真4枚8カットなどが保管されていた。
被告は,検証期日において,尿検査は実施したが,検査結果に異常はなかったため,マスターシート裏面に検査結果としてNと記載してあるのみで,特に別書面としては作成していない旨陳述した。
(検証の結果)


原告は,被告に対し,平成18年12月21日の乙事件口頭弁論期日において,本件乙契約について,下記(3)カ(ア)の詐欺を理由に取り消す,ないし,下記(3)カ(ウ)a,bの債務不履行を理由に解除するとの意思表示をした。

(3)

原告の主張
原告の診療経過についての主張は,別紙乙事件診療経過一覧表原の告の反論欄記載のとおりである。

本件乙契約締結の経緯
(ア)

被告は,手術という侵襲に弱いチンチラであるペットBに対して,
毛球症が疑われるとしても,客観的には,内科的治療によって改善を図るのが原則であって,毛球が胃に詰まり完全閉塞している場合に限って手術の適応があり,その判断のためには,造影レントゲン検査をして,経時的に造影剤の位置を確認し,完全閉塞があることを確認する必要があったのに,そのような適切な治療をする意思も能力もなく,適切な内
科的治療を施さず,造影レントゲン検査によって胃が毛球によって完全閉塞していると確認できなくとも,原告に対しては,異物を確認するためには造影レントゲン撮影が必要である,造影レントゲン検査によって異物を確認したから外科手術の適応がある,外科手術をしなければ死亡する可能性が高いと告げて,ペットBを入院させ,切って縫うだけの手術をし,それらの治療のために必要な入院費用,手術費用等の治療費を取得しようと考えた。そこで,13日の初診時,原告に対し,上記の意図を秘して,ペットBの胃には毛球が詰まっている可能性がある,毛球が詰まっていたら手術が必要である,その判断のためには入院の上造影レントゲン検査が必要であると告げ,ペットBの入院を勧めた。
初診時,ペットBは,ケージを揺らすほど元気があった。被告は,ペットBを20分ないし30分間別室に連れていき,その後,戻ってきて,原告に対し,レントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査を実施したと説明したが,そのような短時間にこれらの検査を全て終えられるはずはない。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明及び上記1(2)アの本件広告の内容
を信じたため,本件乙契約を締結し,ペットBを入院させ,
被告に対し,
13日までに治療費として合計2万円を支払った。

本件乙手術実施の経緯
(ア)

被告は,造影レントゲン検査を実施せずに,又は実施したものの,
異物が発見されておらず,又は仮に発見されたとしても,それによる完全閉塞は認められず,手術の適応はなかったし,手術をしなければ死んでしまう状態でもなかったのに,
13日昼頃,
原告に対して電話を掛け,
造影レントゲン検査の結果異物が発見された,したがって手術の適応がある,手術をしなければペットBが死亡する可能性が高い,被告がチンチラの名医であり成功率が90%以上であるなどと説明して,ペットB
に手術を受けさせることを強く勧めた。
なお,原告からペットBの入院や手術を希望し,被告に強要したことはない。レントゲン写真(甲A1・2(乙A2)
(枝番は全て含む。)

は,ペットBのものではなく,ウサギか他のチンチラのものであると思われる。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明を受けたため,手術に同意し,被告
は,13日午後,ペットBの胃の周辺を単に切って縫うだけの手術(本件乙手術)を行った。
原告は,13日夕方,それに伴う治療費として,被告に対し,上記イ(イ)のうち,初診時に支払済みの1万円を除く1万円を支払った。原告は,本件乙手術後,被告から,胃内に詰まっていたという毛球を見せられたが,長年胃内に詰まっていたにしてはフワフワと柔らかく,また大量であったこと,退院後ペットBの背中の毛が抜けていたことからして,被告がペットBの背中の毛を抜いて水に浸して見せたとも思われる。

他の注意義務違反
(ア)

手術の不適応
下記a,bの点からすれば,本件乙手術に適応はなく,被告は,この
手術に踏み切ってはならなかった。しかるに,被告は,本件乙手術を実施した。

チンチラの便秘に対しては,内科的治療が第一とされ,外科的治療はなるべくしないのが基本であるところ,
ペットBは,
高齢であるし,
内服薬の投与により便秘改善の兆しを見せており,手術の緊急の必要性はなく,13日の時点で虚脱,起立不能の状態にあり,手術に踏み切るのは危険な状態であった。


被告は,術前に造影レントゲン検査を実施して毛球により完全閉塞
が生じていることを確認すべきであったところ,被告は,同検査を実施しなかったか,同検査を実施したものの毛球により完全閉塞が生じていることを確認していない。
(イ)

不適切なレントゲン検査
異物があれば造影剤が異物に染み込みまだらに写ったり,造影剤が肛
門に流れず途中で詰まったり,流れても極端に遅いという現象が現れるので,異物確認のための造影レントゲン検査であれば,造影剤を経口投与の直後,10∼15分後,30分後,1時間後,3時間後など時間を追って何枚も撮っていくものであるのに,被告は,午後3時15分と午後5時15分しか撮影しておらず,造影剤が肛門まで到達する前に撮影を終了していて,撮影時刻などのメモもしていない。
レントゲン検査を実施する際は,ペットの後ろ足を重ねて撮影すべきところ,被告は,そのような方法でしていない。

本件乙入院,本件乙手術と死亡との間の因果関係
(ア)

上記イないしエのとおり,ペットBは,本件乙入院をせず,本件乙
手術を受けなければ,死亡することはなかった。
(イ)

なお,被告は,
食欲のないペットBに対し,強制給餌や給水をせず,

不十分な輸液量のまま全身麻酔をし,術中の麻酔管理も不十分で,術後も強制給餌や給水,十分な輸液を行っておらず,より具体的には動物の最低維持量は体重比1キロ当たり1日10㏄必要であって,ペットBの体重からして最低維持量は60㏄であるのにその半分しか与えていなかったのであるから,この点も,上記(ア)のペットBの死亡に拍車を掛けた。

被告の責任
(ア)

主位的請求-詐欺による不法行為等
詐欺による不法行為

上記イ(ア),ウ(ア)の被告の行為は詐欺に当たり,違法であって,上記イ(イ),ウ(イ)のとおり,この詐欺行為がなければ,ペットBを入院させ,手術を受けさせることはなく,上記オのとおり,ペットBは,手術を受けなければ死亡することもなかったのであるから,被告は,原告に対し,不法行為(民法709条)に基づき,下記キの損害を賠償すべき責任がある。

詐欺取消に基づく不当利得返還請求
上記イ(ア),ウ(ア)の被告の行為は,詐欺(民法96条1項)に該当するところ,
本件乙契約は取り消されたから,
被告は,
原告に対し,
本件乙契約に基づき原告が交付した下記キ(ア)の治療費を,不当利得として返還すべき責任がある。

(イ)

主位的請求-動物傷害による不法行為
上記のイ,ウ,エ(ア)のとおり,被告が,ペットBの手術に及んだ行
為は,正当な業務行為とはいえず,動物傷害に該当し,違法であって,それによってペットBが死亡したものであるから,
被告は,
原告に対し,
不法行為に基づき,下記キの損害を賠償すべき責任がある。
(ウ)

予備的請求-(債務不履行,不法行為等)
説明義務違反(債務不履行)
獣医師は,飼い主に対し,飼い主がペットに適切な治療を受けさせることができるよう説明をすべき義務があるところ,被告は,原告に対し,ペットBについては,急いで手術をする必要性がなかったにもかかわらず,かえって,上記イ(ア)のとおり,緊急に手術の必要があり,自信があるという説明をして,上記義務に違反した。そして,この義務違反は債務不履行(民法415条)を構成し,原告は,上記イ(イ),オのとおり,この被告の説明がなければペットBに手術を受けさせることはなかったのであるから,被告は,原告に対し,下記キの
損害を賠償すべき責任がある。

a以外の注意義務違反(債務不履行,不法行為)
上記エ(ア),(イ)の点は,獣医師の注意義務に違反するものであるから,被告は,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。


解除(原状回復請求)
上記a,bの点は,債務不履行に該当し,原告は,それらの債務不履行を理由に本件乙契約を解除したから,被告は,原告に対し,解除に基づく原状回復として下記キ(ア)の治療費の返還をする責任がある。


損害

合計

283万1550円

(ア)

ハロー動物病院における治療費

2万6550円

(ウ)

葬儀費用

2万8000円

(エ)

慰謝料

(オ)


2万円

(イ)

(4)

被告動物病院における治療費

弁護士費用

250万円
25万7000円

被告の主張
被告の診療経過についての主張は,別紙乙事件診療経過一覧表診の療経過(入通院状況・主訴・所見・診断),検査・処置欄記載のとおりである。


上記(3)イ(本件乙契約締結の経緯)について
(ア)

上記(3)イ(ア)は否認する。
ペットBは,被告動物病院初診時,横に倒れて立てないほど衰弱して
いた。原告は,ペットBの便を持参し,被告に対し,レントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査をするよう強要した。被告は,原告に対し,かかりつけの動物病院の受診を勧めたが,原告は,被告動物病院で治療
を受けることを強く希望した。被告は,本件入院に際し,ペットBは重症であるため死亡しても責任は取れないとの説明をし,原告にその旨の同意書に署名をしてもらい,治療費についても見積書を作成して原告の了解を得た。被告は,レントゲン検査時を除き,原告に保定などを手伝ってもらって2時間以上掛けて上記の検査を実施した。
初診時,被告は,原告から,かかりつけの動物病院で胃内に異物を発見し,内科療法を実施したが奏功しなかったので,手術で異物を除去して欲しいと希望され,被告が手術を断ってペットが死亡したらどうしてくれるなどと手術の実施を強要された。被告は,原告に対し,完全閉塞を診断するために造影レントゲン検査を勧めたが,原告は拒否した。ただ,上記のかかりつけの動物病院における話,ペットBがぐったりとしていたこと,触診で腹部に異物を触知したことから,完全閉塞があると判断した。被告は,原告に対し,翌日かかりつけに行くようにと言ったが,原告は,被告に対し,心配なので預かって欲しいと依頼した。(イ)

上記(3)イ(イ)は争う。

上記(3)ウ(本件乙手術実施の経緯)について
(ア)

上記(3)ウ(ア)は否認する。
初診時の遣り取りについては,上記イ(ア)のとおりである。
13日午前中に,被告が,原告に電話を掛け,かかりつけへの転院を
勧めたところ,原告から,内科治療はかかりつけで行ってだめだったので,まだ,体力のある今のうちに至急手術をして異物を除去して欲しいと依頼をされた。被告は,全身麻酔の使用,高齢のチンチラであることから,手術のリスクを説明した(手術の成功率が90%以上という話はしていない。
)が,原告は,完全閉塞であると自己診断し,被告の意見
を聞こうとせず,手術をしてペットBが死亡しても責任を問わないことを承諾したため,被告は,本件乙手術を実施することとした。

原告の希望で,本件乙手術前には,造影レントゲン検査は行っていないが,本件乙手術直後,原告の依頼によって,術部の切開創について漏れがないかを確認するため,造影レントゲン検査を行った(甲A2の1∼4,乙A2の3・4)

(イ)

上記(3)ウ(イ)は,第1段落は争い,第2段落は否認する。
本件乙手術においては,しっかりと胃を切開し,異物による完全閉塞
を目視で確認して取り出し,この異物は手術後原告にも見せたのであるし,手術の結果,ペットBは元気に動き回れるようになるほど回復したのであるから,
被告が切って縫うだけの手術をしようとしたはずがない。
また,本件乙手術の際,腸重積を見つけたので,引っ張って直した。エ
上記(3)エ(他の注意義務違反)について
(ア)

上記(3)エ(ア)本文,a,bについては,いずれも争う。
上記イ(ア),ウ(ア)のとおり,被告は,原告に対し,術前の造影レン
トゲン検査を勧め,
本件乙手術のリスクも説明したのであるが,
原告が,
術前の造影レントゲン検査を拒否し,被告に対し,手術の実施を強要した。
(イ)

上記(3)エ(イ)については,前提としているレントゲン写真が術前
に撮影したものであることを否認し,その余は争う。
原告が指摘する造影レントゲン写真は,術後に,胃の術部からの漏洩がないかどうかの確認を原告に依頼されて撮影したものである。
レントゲン検査を実施する際,後ろ足を無理矢理揃えるのは,弱っていたペットBにはストレスになるのであり,すべきではなかった。オ
上記(3)オ(本件乙入院,本件乙手術と死亡との間の因果関係)につい

争う。
ペットBは,手術の結果,元気に動き回れるようになるほどに回復して
いた。ただ,9月16日の被告動物病院退院当時,抜糸前で絶対安静にしていなければならない状態であったにもかかわらず,原告によって無理に退院させられた。また,被告は,原告に対し,直ちにかかりつけの動物病院を受診するよう指示したにもかかわらず,原告はこの指示を無視して,自宅において一夜を過ごさせ,翌日まで入院させなかった。そのため,ペットBの状態は不可逆的なほどに悪化し,死亡した。

上記(3)カ(被告の責任)
,キ(損害)について
争う。

4
丙事件(日付は,平成16年のものについてはその記載を省略する。)
(1)

丙事件の概要
丙事件は,原告が,その所有するフェレットが被告動物病院において診療
を受け,その後慢性腎不全等になったことに関し,①当該フェレットの診療に関する診療契約を締結するに際し,被告において,適切な診療をする意思も能力もなく,入院させた上で,手術の必要がないと判断されるべき場合であっても切って縫うだけの手術をして治療費を請求しようという意図を秘して,腸に何か詰まっているかもしれず,手術の必要性を診断するため検査をするとの虚偽の説明をして入院を勧め,入院させ,手術した,その手術等によって,当該フェレットが慢性腎不全等になった,②被告において,手術の必要性がないのに,腸が動いていないので,手術をしなければ死んでしまうとの虚偽の説明をして,手術を勧め,手術した,その手術等によって,当該フェレットが慢性腎不全等になった,③その手術は獣医学的適応がなく,他にも被告の診療に注意義務に違反する点があり,そのため当該フェレットが慢性腎不全等になったなどと主張した上,<ア>①,②の点は詐欺に当たるから,不法行為に該当し,診療契約を取り消した,<イ>①,②,③の点のうち手術に及んだ点は動物傷害であって,不法行為に該当する,<ウ>①,②の点は説明義務違反に当たり,債務不履行に該当し,③の点は不法行為ないし債
務不履行に該当し,それらの債務不履行により診療契約を解除したと主張して,被告に対し,主位的に<ア>,<イ>の不法行為(被告に支払った治療費については選択的に不当利得)に基づき,予備的に<ウ>の債務不履行ないし不法行為(被告に支払った治療費については選択的に解除に基づく原状回復)に基づき,被告及び後獣医に支払った治療費,慰謝料等の損害金の賠償(返還)及び当該フェレットが被告動物病院を退院した日からの民法所定の遅延損害金の請求をしている事案である。これに対し,被告は,①当該診療契約を締結するに際し,又は手術を実施するに際し,適切な治療をする意思も能力もあったし,虚偽の説明などしていない,②その手術については適応があり,他にも被告の診療に注意義務に違反する点はなかった,③当該フェレットが慢性腎不全等になったことと被告の治療は無関係であるなどと主張して責任を全面的に争っている。
(2)

前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。

当事者等
原告は,ペットC」と名付けたフェレット(平成11年7月14日生,雌。なお,フェレットは食肉目イタチ科の哺乳動物である。)を所有し,飼育している。イペットCの診療経過(ア)原告は,6月29日ないし30日初診日については争いがある。,()ペットCについて,少なくとも嘔吐と食欲不振を訴え,被告動物病院に受診させ,遅くとも同月30日に,被告との間で,ペットCの診療に関する診療契約(以下「本件丙契約という。を締結し,入院させた(以)
下本件丙入院という。。

(イ)

原告は,7月1日朝,被告動物病院を訪れ,被告と話をした。被告
は,同日夜,原告に電話を掛け,原告は,その電話において,ペットCの開腹手術に同意した。

(ウ)

被告は,
7月1日午後9時30分頃,ペットCに開腹手術(以下本件丙手術という。)を施した。
(エ)

原告は,被告に対し,本件丙契約に基づく治療費及びそれに関連す
る費用として,7月2日までに合計28万6125円を支払った。(オ)

原告は,7月2日,ペットCを被告動物病院から退院させた。

(カ)

原告は,上記(オ)の退院の後,ペットCをクラーク動物病院に受診
させ,入院させた(甲A30の1・2,B1)

(キ)

クラーク動物病院のG獣医師は,7月2日夜,ペットCに緊急開腹
手術(以下本件丙後手術という。
)を施した(甲A30の1・2,
B1)

(ク)

ペットCには,7月3日以降,急性肝不全及び急性腎不全が認めら
れ,
その後,
慢性腎不全が認められた甲A30の1・2,

43,
B1)


平成17年1月18日実施の検証(東京地方裁判所八王子支部平成16年(モ)第2656号,以下本件丙検証という。
)の際,被告動物病院
において,カルテ,診療費明細書,血液生化学検査報告書,血液・尿・便検査報告書,血液検査結果,レントゲン写真4枚8カット,動物健康共済診断書兼医療照会同意書が保管されていた。被告は,その後,カルテに加筆をし,さらにその後,カルテを本件丙検証時と同様に書き直した。被告は,検証期日において,原告に貸し出していたレントゲン写真4枚8カットを借用書と引換えに返還してもらった,同レントゲンには名前は書いていないが,ペットCのものであることは間違いない旨陳述した。(乙A1,5の各1・2,検証の結果)


原告は,被告に対し,平成18年12月21日の丙事件口頭弁論期日において,本件丙契約について,下記(3)カ(ア)記載の詐欺を理由に取り消す,ないし,下記(3)カ(ウ)a,b記載の債務不履行を理由に解除するとの意思表示をした。

(3)

原告の主張
原告の診療経過についての主張は,別紙丙事件診療経過一覧表原の告の反論欄記載のとおりである。

本件丙契約締結の経緯
(ア)

被告は,6月30日の初診時に,ペットCの症状を適切に診断して
治療を施す意思も能力もなく,真実は吐き気と脱水症状が見られるのみであったのに,入院させた上で,手術の適応を判断しないまま,手術の適応があると説明して手術を勧め,手術を実施し,手術代等の治療費名目で金員の支払を受けようと考えた。そこで,被告は,ペットCを別室に連れていき,①単純レントゲン検査,②糞便検査,③注射,④点滴,⑤血液検査,⑥駆虫のうち,①は実施しておらず,②ないし⑥の全部又は一部を実施していないのに,原告に対し,上記意図を秘した上,それらを全て実施したふりをし,実施したと説明した上で,腸に何か詰まっているかもしれないという虚偽の説明をして,造影レントゲン検査のために入院させた方がいいと勧めた。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明及び上記1(2)アの本件広告の内容
を信じたため,本件丙契約を締結し,ペットCを入院させ,
被告に対し,
7月2日までに治療費として合計28万2975円を支払い,原告加入のペットの医療共済であるアニコムに対する診断書兼医療照会同意書(甲A4,以下アニコムに対する診断書という。
)の費用として3
150円を支払った。

本件丙手術実施の経緯
(ア)

被告は,7月1日午後8時頃,原告に電話を掛け,真実は,ペット
Cの病状を適切に診断して治療を施す意思も能力もなく,ペットCについて,吐き気と脱水症状が見られるのみで,触診,適切な単純レントゲン検査及び造影レントゲン検査によって異物を確認しておらず,消化管
閉塞でも,腸重積でもなく,手術の適応はなかったし,手術をしなければ死んでしまう状態ではなかったのに,腸が動いていないので,手術をしなければ死んでしまうと虚偽の事実を告げて手術を勧めた。
このことは,被告が,本件丙手術後,原告に対し,腸重積を起こしたので小腸部分切開術を施したと説明し,アニコム給付金請求書及びアニコムに対する診断書(甲A3,4)にその旨を記載したことからして明らかである。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明を信じたため,手術に同意し,被告
は,7月1日午後9時30分頃,胃と腹部を切開しただけの手術(本件丙手術)を実施した。手術中,被告は,ペットCの胃の中に毛球を認めず,胃の完全閉塞も腸閉塞も認めなかった。
原告は,7月2日,治療費等として,被告に対し,上記イ(イ)のうち,23日の初診時に支払済みの5万5545円を除く計23万0580円を支払った。

他の注意義務違反
(ア)

手術の不適応
被告は,当時,ペットCについて触診,適切な単純レントゲン検査及
び造影レントゲン検査によって異物を確認しておらず,ペットCは腸重積でも消化管閉塞でもなかったから,本件丙手術を実施する必要性は全くなく,被告は,本件丙手術を実施してはならなかった。しかるに,被告は,本件丙手術を実施した。
(イ)

脱水及び輸液の不適切な管理
脱水症状を解除しないで全身麻酔下での開腹手術をすることは,患獣
に危険が伴うものであるのに,被告は,7月1日までペットCが脱水症状を起こしていたのに,その解除をせず,全身麻酔下で本件丙手術を行った。なお,7月1日までペットCが脱水を起こしていたのは,6月3
0日の被告動物病院での血液検査結果から明らかである。
また,被告は,本件丙手術の術中,術後も必要十分な量の輸液管理を行わず,術中の麻酔管理を怠り,腎臓に負担を掛けた。
(ウ)

全身状態の不適切な管理
ペットCが,被告のカルテの記載のとおり本件丙手術がされた7月1
日当日の午前9時頃,虚脱状態で起立不能,即ち,瀕死の状態であったのであるから,その改善をしないまま,全身麻酔下で開腹手術を行うことは患獣に危険が伴うものであるのに,被告は,その改善をすることなく,全身麻酔下で本件丙手術を行った。
(エ)

本件丙手術における縫合不全
被告は,本件丙手術において,腹部を縫合する際の間隔を,通常約3
∼4㎜とすべきところ,約15㎜などの雑で粗いピッチで縫ったため,術創から小腸の大網部が飛び出した。
(オ)

クッシング症候群に対する不適切な対応
被告は,原告から,ペットCにクッシング症候群を起こす重篤な疾患
があった可能性があったことを聞いたのに,治療,本件丙手術をする際に,これを何の考慮もしていない。
(カ)

不適切な造影レントゲン検査
異物があれば造影剤が異物に染み込みまだらに写ったり,造影剤が肛
門に流れず途中で詰まったり,流れても極端に遅いという現象が現れるので,異物確認のための造影レントゲン検査であれば,本来,造影剤が正しく流れるか,
造影剤を経口投与の直後,10∼15分後,30分後,
1時間後,3時間後など時間追って何枚も撮っていくものであるのに,被告は,午前7時と午前9時しか撮影しておらず,造影剤が肛門まで到達する前に撮影を終了していて,撮影時刻などのメモもしていない。オ
本件丙入院,本件丙手術とクラーク動物病院での治療及び急性腎不全,
急性肝不全並びに慢性腎不全との間の因果関係
下記(ア)ないし(ウ)のとおり,ペットCは,本件丙入院をせず,本件丙手術を受けなければ,急性腎不全,急性肝不全,慢性腎不全となり,また,クラーク動物病院での治療及び本件丙後手術を受けることを余儀なくされることはなかった。
(ア)

本件丙手術によって,その術創から小腸の大網部が飛び出し,それ
によって,ペットCはクラーク動物病院での治療及び本件丙後手術を余儀なくされた。
(イ)

ペットCは,本件丙後手術後重篤な急性腎不全,急性肝不全である
ことが判明したが,それは,①本件丙手術前に脱水解除がされていなかったこと,②本件丙手術中に輸液量が不足したこと,③本件丙手術中に麻酔薬が効きすぎたこと,④本件丙手術後に輸液量が不足したこと,⑤本件丙手術と本件丙後手術の2度の手術による侵襲及びその際の全身麻酔の影響による。
したがって,
本件丙手術によって,
重篤な急性腎不全,
急性肝不全が生じたと解される。
なお,被告は,本件丙手術後の血液検査において,腎不全や肝不全が認められなかったことを根拠に,本件丙手術によって本件後丙手術後の急性腎不全と急性肝不全が生じたことを否定するが,被告における本件丙手術後の血液検査結果は,被告において十分な輸液が与えられていなかったのに,6月30日の血液検査に比して脱水症状が著しく改善された値を示していることからすると,捏造されたもので,本件丙手術後の血液検査は実施されていないと考えられる。
(ウ)

慢性腎不全は,本件丙手術による重篤な急性腎不全が移行したもの
である。

被告の責任
(ア)

主位的請求-詐欺による不法行為等


詐欺による不法行為
上記イ(ア),ウ(ア)の被告の行為は詐欺に当たり,違法であって,上記イ(イ),ウ(イ),オのとおり,詐欺行為がなければ,原告が,ペットCを入院させ,本件丙手術を受けさせることはなく,上記オの結果が生じることもなかったものであるから,被告は,原告に対し,不法行為(民法709条)に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。


詐欺取消に基づく不当利得返還請求
上記イ(ア),ウ(ア)の被告の行為は詐欺(民法96条1項)に該当するところ,本件丙契約は取り消されたから,被告は,原告に対し,本件丙契約に基づき原告が交付した下記キ(ア)の治療費等を,不当利得として返還する責任がある。

(イ)

主位的請求-動物傷害による不法行為
上記イ,ウ,エ(ア),オのとおり,被告が,ペットCの手術に及んだ
行為は,正当な業務行為とはいえず,動物傷害に該当し,
違法であって,
それによって,ペットCには上記オの結果が生じたものであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。
(ウ)

予備的請求-(債務不履行,不法行為等)
説明義務違反(債務不履行)
獣医師は,飼い主に対し,飼い主がペットに適切な治療を受けさせることができるよう説明をすべき義務があるところ,被告は,原告に対し,上記イ(ア),ウ(ア)のとおり,事実に反した説明をして,上記義務に違反した。
そして,この義務違反は債務不履行(民法415条)
を構成し,原告は,上記イ(イ),ウ(イ),オのとおり,この被告の説明がなければ,ペットCは手術を受けることはなく,上記オの結果が
生じることもなかったものであるから,被告は,原告に対し,下記キの損害を賠償する責任がある。

a以外の注意義務違反(債務不履行,不法行為)
上記エの点は,獣医師の注意義務に違反するものであるから,被告は,原告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。


解除(原状回復請求)
上記a,bの点は,債務不履行に該当し,原告は,それらの債務不履行を理由に,本件丙契約を解除したから,被告は,原告に対し,解除に基づく原状回復として下記キ(ア)の治療費等の返還をする責任がある。


損害

合計

205万2015円

(ア)

被告動物病院における治療費等

28万6125円

(イ)

クラーク動物病院における治療費

57万9890円

(ウ)

慰謝料

100万円

ペットCは,原告とG獣医師の献身的な治療によって奇跡的に救命したものであって,原告は,仕事も休み,多額の治療費を支払い,毎日,クラーク動物病院に面会又は治療に通った。また,ペットCの慢性腎不全は一生治ることがなく,ペットCは,今後も定期的な検診を受けながら静かに暮らすほかはない。
(エ)
(4)

弁護士費用

18万6000円

被告の主張
被告の診療経過についての主張は,別紙丙事件診療経過一覧表診の療経過(入通院状況・主訴・所見・診断),検査・処置欄記載のとおりである。


上記(3)イ(本件丙契約締結の経緯)について

(ア)

上記(3)イ(ア)については,その主張がペットCの初診時のことで
あれば否認し,6月30日の診察時のことであれば,ペットCを別室に連れていき,①単純レントゲン検査,②糞便検査,③注射,④点滴,⑤血液検査,⑥駆虫を実施したと説明したことは認め,その余の事実は否認する。
ペットCが被告動物病院を初診した日は6月29日である。原告は,その際,被告にペットCが28日から食べておらず,排便なく,元気もなく,嘔吐と異嗜(何でも口に入れて飲み込んでしまうフェレットによく見られる悪癖)があると訴えた。さらに,被告は,触診で腹部腫瘤,身体検査,皮膚つまみ検査等で脱水を認め,ペットCに消化管内の異物等が疑われたのですぐに単純レントゲン検査,血液検査,糞便検査を勧めた。しかし,原告が,被告に,様子を見たい,かかりつけに相談してからにしたい,旅行に行くのでペットホテルとしての預かりをお願いしたいなどと話し,対症療法を希望した。被告は,身体検査及び皮膚つまみ検査等で脱水を認め,
やむなく原告の希望した皮下補液のみを行った。
原告は,6月30日,被告動物病院にペットCの面会に訪れたので,被告は,原告に対し,再度インフォームドコンセントを行ったところ,原告は,単純レントゲン検査,血液検査,糞便検査,駆虫,造影レントゲン検査,静脈輸液(点滴)
,抗生剤,吐き気止め注射の実施を指示し
たので,被告はそれに従い,造影レントゲン検査で,造影剤の流れが胃内異物等のせいで悪いことを確認した。
(イ)

上記(3)イ(イ)は争う。

上記(3)ウ(本件丙手術実施の経緯)について
(ア)

上記(3)ウ(ア)については,被告が,原告に対し,原告が主張する
頃電話を掛けた事実は認めるが,その余は否認する。
7月1日午前9時,ペットCについて,虚脱が起き,触診で腹部にガ
スが貯まっていて,消化管閉塞(完全閉塞又は不完全閉塞)等の可能性があったため,被告は,同日朝に来院した原告にそのことを伝え,手術を勧めた。しかし,
原告は,かかりつけの動物病院と相談したいと話し,
造影レントゲン写真を借りた。
なお,それは,
未だに返却されていない。
被告が,原告に対し,同日夜に電話を掛けたのは,ペットCの症状を知らせることをあらかじめ約束していたためであって,その際,触診でガスがかなり貯まっていて,元気がないと説明した。原告は,7月1日朝来院時に被告から消化管の完全閉塞等の説明を詳しく受け,異常にガスが貯まり手術しないと死ぬことがあると聞いていたため,それを気にして,被告に対し,手術をして異物を取り出すよう依頼した。被告は,原告に対し,手術の必要性ばかりでなく危険性についても説明し,深夜の手術は実施したくないから,手術はかかりつけの動物病院で受けてもらえないかと断ったが,原告から手術の実施を強要され,死亡しても被告は責任を取れないことを承諾してもらった上で,やむなく,本件丙手術を実施した。
甲A4(アニコムに対する診断書)のうち小腸部分切開術)(と
の記載は,原告の偽造であって,被告が作成した乙A4に原告が加筆したものである。
(イ)

上記(3)ウ(イ)は争う。

上記(3)エ(他の注意義務違反)について
(ア)

上記(3)エ(ア)は否認する。
上記イ(ア),ウ(ア)のとおり,被告が本件丙手術を実施したことに不
適切な点はなかった。術中,胃に異物と小腸に腸重積を視認し,異物を取り出し,用手解除をしたものであるし,本件丙手術後,ペットCの症状は改善したのであるから,結果的にも,本件丙手術をする必要性はあった。なお,重積後時間が経過していなかったため,壊死はなく,小腸
の切除はしていない。
(イ)

上記(3)エ(イ)は否認する。
フェレットの1日必要補液量は,犬猫の量を目安にすべきであって,
それは50ml/㎏/日であるから,820gのペットCについては41mlとなり,
6月29日の皮膚つまみ検査の結果5%の脱水を認めたので,
仮にこれを前提とすると,不足量が41mlとなる。そして,フェレットの1日の飲水量は100ml以上であるところ,ペットCも,100ml/日以上の栄養水の飲水があったので,被告は,輸液量を6月29日は20ml/日とし,30日は30ml/日としたのであるから,術前の脱水への対応について不適切であったとはいえず,現に7月1日の本件丙手術直前のルーチン血液検査において,PCV,TP,AST(GOT),
ALT(GPT)
,BUN,CREは正常であって,脱水は解除され,
腎臓,肝臓に問題がないことが確認されたものである。
術前にペットCに脱水はなかったところ,被告は,術中に30ml輸液を追加しているから,術中に脱水が起こる可能性はない。
また,
術中の麻酔については,
肝臓及び腎臓への負担がほとんどなく,
極めて安全な管理しやすいイソフルレンガスを用い,麻酔が効きすぎないように最小限の濃度に調整していたのであるから,麻酔管理が不適切であったとはいえない。術後の血液検査結果からも,脱水はなく,肝機能及び腎機能に異常はなかったのであるから,術前,術中,術後の麻酔管理及び輸液管理に不適切な点があったとはいえない。
(ウ)

上記(3)エ(ウ)は争う。

(エ)

上記(3)エ(エ)は否認する。
被告は,本件丙手術の際,しっかりとペットCの皮膚と腹壁を細かい
間隔で縫った。本件丙手術後,内膜が露出したのは,原告及びG獣医師がエリザベスカラーを装着しなかったため,
ペットCが術部を舐めたり,

縫合糸を囓ったりしたためである。仮に,被告の縫合が粗かったとしても,G獣医師は,転院時にそれに気付き,縫い直すべきであったのに,そのような処置を取らなかったのは,
G獣医師の明らかな過失であって,
被告には責任がない。
(オ)

上記(3)エ(オ)については,ペットCがクッシング症候群であり,
原告がそのような話をしたことはいずれも否認し,その余は争う。フェレットにはクッシング症候群はあり得ず,被告は,ペットCがクッシング症候群であったとは聞いていないし,何らかの特別な治療等が必要であったともいえない。
(カ)

上記(3)エ(カ)は,前提としているレントゲン写真が術前に撮影し
たものであることを否認し,その余は争う。
原告が指摘する造影レントゲン写真は術後に,創の開放がないかを確認したものである。術前の造影レントゲン写真のうち胃内異物等が写っていたものについては,被告が,7月1日,原告の求めで貸し出したまま返還をみていない。

上記(3)オ(本件丙入院,本件丙手術とクラーク動物病院での治療及び急性腎不全,急性肝不全並びに慢性腎不全との間の因果関係)について(ア)

上記(3)オ本文は争う。

(イ)

上記(3)オ(ア)は否認する。
上記エ(エ)のとおり。

(ウ)

上記(3)オ(イ)第1段は否認する。
上記エ(イ)のとおり,本件丙手術の術前,術中,術後の輸液管理や麻
酔管理が不適切であったとはいえないから,それが原因で,急性腎不全や急性肝不全となるとは考えにくい。
また,ペットCは,7月2日の被告動物病院退院時は元気であって,同日の血液検査では肝機能及び腎機能は正常であったことからすると,
7月3日の時点で急性腎不全,急性肝不全であったとしても,それは,本件丙後手術等クラーク動物病院における治療によるものであって,本件丙入院及び本件丙手術との因果関係はない。
(エ)
カ5
上記(3)オ(ウ)は争う。

上記(3)カ(被告の責任)
,キ(損害)は争う。

丁事件(日付は,平成16年7月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

丁事件の概要
丁事件は,原告が,その所有する犬が被告動物病院において診療を受けた
際に死亡したことに関し,①当該犬の診療に関する診療契約を締結するに際し,被告において,適切な治療をする意思も能力もなく,重篤な腎不全で対症療法,延命治療しかできないのに,治療によって軽快するとの虚偽の説明をして,入院を勧め,入院させた,そのため当該犬が死亡した,②被告は,不必要な治療をした,ないし治療をしていないのに,それらの治療費を請求した,③他にも被告の診療には注意義務に違反する点があり,そのため当該犬が死亡した,<ア>①,②の点は詐欺に当たるから,不法行為に該当し,診療契約を取り消した,<イ>①,③の点は,動物傷害であって,不法行為に該当する,<ウ>①の点は説明義務違反に当たり,債務不履行に該当し,②,③の点は債務不履行ないし不法行為に該当し,それらの債務不履行により診療契約を解除したと主張して,
被告に対し,主位的に<ア>,
<イ>の不法行為(被
告に支払った治療費については選択的に不当利得)に基づき,予備的に<ウ>の債務不履行ないし不法行為(被告に支払った治療費については選択的に解除に基づく原状回復)に基づき,被告に支払った治療費,慰謝料等の損害金の賠償(返還)及び当該犬の死亡日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を請求をしている事案である。これに対し,被告は,①当該診療契約を締結するに際し,適切な診療をする意思も能力もあったし,虚偽の事実を告げるなどしていない,②不必要な治療をしていないし,治療費を請求した治療
は実施した,③注意義務に違反する治療をしていない,④当該犬の死亡は腎不全によるもので,被告の治療とは無関係であるなどと主張して責任を全面的に争っている。
(2)

前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。

当事者等
原告は,
ペットDと名付けた犬(スコッチテリア,平成元年10月
7日生,雌。
)を所有し,その子であるHとともに飼育していた。


ペットDの診療経過
(ア)

原告は,15日以降,ペットDをニュータウンペットクリニックに
受診させ,治療を受けさせていた(甲A1の1∼3,B6)

(イ)

原告は,22日午後11時ないし午後11時30分頃,ペットDを
被告動物病院に受診させ,被告との間で診療契約(以下本件丁契約という。
)を締結して,ペットDを入院させた。
(ウ)

ペットDは,その後被告動物病院において入院中(以下本件丁入院という。,24日午前10時10分頃までに死亡した。)
(エ)

原告は,被告に対し,同日までに,本件丁契約に基づく治療費とし
て,合計19万0155円を支払った。

平成17年1月18日実施の検証(東京地方裁判所八王子支部平成16年(モ)第2658号)の際,被告動物病院において,カルテ,診療費明細書,血液検査結果,尿検査報告書,レントゲン写真(5枚,10カット)などが保管されていた(検証の結果)



原告は,被告に対し,本件丁契約について,平成18年12月21日の丁事件口頭弁論期日において,下記(3)カ(ア)記載の詐欺を理由に取り消す,ないし,下記(3)カ(ウ)a,bの債務不履行を理由に解除するとの意思表示をした。

(3)

原告の主張


原告の診療経過についての主張は,別紙丁事件診療経過一覧表原の告の反論欄記載のとおりである。

本件丁契約締結の経緯
(ア)

被告は,ペットDの病状を適切に診断して治療を施す意思も能力も
なく,また,現にペットDは腎臓等が極めて悪く,対症療法を施しながら,延命を図るほかは効果的な治療法がない状態であったにもかかわらず,原告に対し,その旨を秘した上,被告動物病院で入院治療を受ければ軽快するとの虚偽の説明をしてペットDを入院させ,その治療のために必要な入院費用等の治療費を取得しようと考えた。そこで,被告は,原告に対し,ペットDについて,腎臓はそれほど悪くなく,24時間体制で点滴治療を行えば,4,5日で良くなると思われる,被告動物病院で治療できなければ,他の動物病院でも治療できないと話し,入院治療を強く勧めた。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明及び上記1(2)アの本件広告の内容
を信じたため,本件丁契約を締結し,ペットDを入院させ,
被告に対し,
19日までに治療費として合計19万0155円を支払った。

上記イ以外の被告の詐欺,注意義務違反
下記(ア)ないし(エ)の各処置等の治療費については,本来請求できないものであるにもかかわらず,平成16年7月24日までに,被告においてこれらの治療費を請求したため,原告はこれを支払った。
(ア)

被告は,必要性がないのに,レントゲン写真を8枚も撮影した。

(イ)

被告は,尿検査,糞便検査,血液検査を実施していない。
ペットDが,被告動物病院で実施された血液検査におけるBUN値は
38.9であるとされているところ,この数値は,重度末期の慢性腎不全によりペットDが死亡したこととは矛盾する。
なお,各検査の報告書は存在するが,これらは,ペットDの検査結果
を記載したものではない。
(ウ)

被告は,蘇生措置を実施していない。
被告は,24日午前9時2分頃の原告からの電話の際,原告に対し,
ペットDは元気であると話した上,もしもの場合には蘇生措置を実施してもよいかと尋ね,
蘇生措置の実施について原告の同意を得た。
さらに,
被告は,同日午前10時頃の電話の際には,ペットDが心肺停止したので蘇生中であると説明し,同日午前10時10分頃に原告が被告動物病院に到着した際には,ペットDは,被告により段ボールから取り出されようとしており,既に死亡して冷たくなっていた。
この経過からすると,24日午前9時2分の時点において,ペットDは既に死亡していて,被告は蘇生措置を実施していないことは明らかである。
(エ)

夜間料金は,通常入院代金に含まれるべき性質のものである。
また,仮に24時間体制で看護をした場合には夜間料金を請求できる
としても,被告は24時間体制での看護をしていない。

他の注意義務違反
(ア)

不適切なクレメジンの経口投与
ペットDは,繰り返し嘔吐していたのであるから,経口投薬の効果は
期待できなかったのに,クレメジンを経口投与した。
(イ)

輸液,治療薬等の投与の不実施
輸液,治療薬等の投与を行っていたのか疑わしい。

(ウ)

不必要,不適切な点滴
5%グルコースの投与には必要性がなく,また,尿量のチェックなど
の管理をしながら点滴量を調整している痕跡がない。
(エ)

けいれんの原因の診断の懈怠
原告が,ペットDのけいれんを主訴として被告の診察,治療を求めて
いることからすると,被告は,血液検査において,カルシウム値を調べるなどしてその原因の検索をすべきであるのに,それを怠った。

本件丁入院と死亡との間の因果関係
本件入院中,重度の慢性腎不全のペットDに対し,被告が,十分な観察(尿量,食事,吸水量など)に基づく十分な治療(輸液や投薬,保温)を行わず放置したことによって,その体力を奪い,一気に病状を悪化させたのであるから,本件丁入院をしなければ,ペットDが死亡か,少なくともその死を避けることができ,又は延命の可能性を侵害されることもなかった(以下,これらの結果を本件死亡等という。
)といえる。


被告の責任
(ア)

主位的主張-詐欺による不法行為等
詐欺による不法行為
上記イ(ア),ウの被告の行為は,詐欺に当たり,違法であって,上記イの詐欺行為がなければ,原告がペットDを被告動物病院に入院させ,被告に対して治療費を支払うことはなく,上記オのとおり,本件死亡等の結果も生じなかったといえ,上記ウの詐欺行為がなければ,上記ウ(ア)ないし(エ)の各処置等に係る治療費を支払うことはなかったから,被告は,原告に対し,不法行為(民法709条)に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。


詐欺取消に基づく不当利得返還請求
上記イ(ア),ウの被告の行為は,詐欺(民法96条1項)に該当するところ,本件丁契約は取り消されたから,被告は,原告に対し,本件丁契約に基づき原告が交付した下記キ(ア)の治療費を,不当利得として返還する責任がある。

(イ)

主位的請求-動物傷害による不法行為
上記イないしエの被告の行為は,正当な業務行為とはいえず,動物傷
害に該当し,違法であって,それによってペットDに本件死亡等の結果が発生したものであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。
(ウ)

予備的請求-(債務不履行,不法行為等)


説明義務違反(債務不履行)
被告は,獣医師として事実を正確に説明すべき義務があるところ,上記イ(ア)のとおり,事実に反した説明をして上記義務に違反したものであり,上記義務が尽くされていれば,上記イ(イ)のとおり,ペットDが被告動物病院に入院することはなく,上記オのとおり,本件死亡等の結果も生じなかったといえるから,被告は,原告に対し,債務不履行(民法415条)に基づき,下記キの損害を賠償する責任がある。


a以外の注意義務違反(債務不履行,不法行為)
上記ウ(ア)ないし(エ),エ(ア),(イ)の点は,獣医師として負うべき注意義務に違反し,それらは債務不履行ないし不法行為を構成するものであるから,被告は,原告に対し,下記キの損害を賠償する責任がある。


解除(原状回復請求)
上記a,bの点は,債務不履行に該当し,原告は,それらの債務不履行を理由に本件丁契約を解除したから,被告は,原告に対し,解除に基づく原状回復として下記キ(ア)の治療費の返還をする責任がある。


損害

合計

(ア)

被告動物病院における治療費

(イ)

慰謝料

350万9155円
19万0155円
300万円

原告は,ペットDを不本意な形で死亡させたことにより著しい精神的
苦痛を受け,そのために,精神科病院に入院して治療を受けたり,就業先を退職することを余儀なくされた。なお,ペットDの購入代金は30万円であった。
(ウ)
(4)

弁護士費用

31万9000円

被告の主張
診療経過についての主張は,別紙丁事件診療経過一覧表の,
診療経過(入通院状況・主訴・所見・診断),検査・処置欄記載のとおりである。


上記(3)イ(本件丁契約締結の経緯)について
(ア)

上記(3)イ(ア)については,ペットDの当時の病状は認め,その余
の事実は否認する。
原告は,22日の初診時,被告に対し,ペットDには肝不全と慢性腎不全があって色々な動物病院においてもう寿命だと言われていること,ペットDがけいれんを起こしたことを話した。被告は,原告に対し,検査や治療法について,その費用の見積もりもした上で十分説明し,原告から,ペットDが死んでしまっても責任は取れないことについて了承をしてもらった上,基本的には対症療法をして,一晩中看護をして欲しいとの依頼をされ,同意書に署名をしてもらい,本件丁契約を締結し,治療を実施した。
(イ)

上記(3)イ(イ)については争う。

上記(3)ウ(上記イ以外の被告の詐欺)について
(ア)

上記(3)ウ本文は争う。

(イ)

上記(3)ウ(ア)は,レントゲン検査を実施したことは認めるが,そ
の枚数は否認し,必要性がなかったことは争う。
被告において撮影したレントゲン写真の枚数は10枚である。また,原告は,被告に対し,レントゲン検査の実施及び枚数についても指示を
したのであるから,必要性がなかったとはいえない。
本件のレントゲン写真がピンぼけであるとしても,なお様々な診断情報が得られるし,また,動物を保定することは動物にストレスとなるのであるから,暴れることによりピンぼけとなってしまってもやむを得ないというべきである。
(ウ)

上記(3)ウ(イ)は否認する。
被告は,尿検査,糞便検査及び血液検査(計4回)を実施した。
ペットDの検査結果においては,Cre及びBUNが正常値を超えて
おり,そのような場合には既にネフロンの75%は破壊されていると判断されるから,ペットDの腎不全が重度末期であったことと矛盾するとはいえない。
(エ)

上記(3)ウ(ウ)は否認する。
被告は,恐らく午前9時30分ころ,心肺停止状態のペットDを発見
し,蘇生措置(気道確保,酸素吸入,心臓マッサージ,蘇生のための薬剤注射等)を実施したが,奏功しなかった。
カルテには,被告が心肺停止状態のペットDを発見したのは午前9時55分頃であったとの記載があるが,後に思い出してカルテに時間を記載したので,正確ではなく,その前後のペットDの状態に鑑みるとそれより前の時点であったと考えられる。
原告が到着した際,長時間前に死亡したほどには冷たくなってはいなかった。
(オ)

上記(3)ウ(エ)については,夜間料金が請求できないとの主張は争
い,その余は否認する。
被告は,24時間体制でペットDの看護をしていた。

上記(3)エ(他の注意義務違反)について
(ア)

上記(3)エ(ア)は争う。

(イ)

上記(3)エ(イ)は否認する。

(ウ)

上記(3)エ(ウ)はグルコースの投与の必要性がないという点は争い,
その余は否認する。
(エ)

上記(3)エ(エ)は争う。
被告が,けいれんの原因探索のためにカルシウムの検査をしなかった
理由は,原告から,
ペットDが,
他院において血液検査を受けたところ,
カルシウムが正常値であり,腎不全と診断されたからカルシウムの検査は不要であるとして,その検査を許可しなかったことによる。

上記(3)オ(本件丁入院と死亡との間の因果関係)
,カ(被告の責任)
及びキ(損害)について
争う。

6
戊事件(日付は,平成16年9月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

戊事件の概要
戊事件は,原告が,その所有する猫が被告動物病院において診療を受け,
その後死亡したことに関し,①当該猫の診療に関する診療契約を締結するに際し,被告において,副木固定を実施すべきであることを認識し,外科手術を実施する必要はなく,実施する意思もなかったのに,原告に対し,副木固定を実施すべきことの説明をせず,
手術を実施するという虚偽の説明をして,
入院を勧め,入院させた,そのため当該猫が死亡した,②被告は,原告に対し,虚偽の説明をして,支払う必要のない治療費を請求した,③他にも被告の診療には注意義務に違反する点があり,そのため当該猫が死亡した,④被告は,原告に対し,当該猫の退院の際,暴力を振るい,傷害を負わせたと主張した上,<ア>①,②の点は詐欺に当たるから,不法行為に該当し,診療契約を取り消した,
<イ>①,③の点は動物傷害であって,不法行為に該当する,
<ウ>③の点は債務不履行ないし不法行為に該当し,その債務不履行により診療契約を解除した,<エ>④は暴行による不法行為に該当すると主張して,被
告に対し,①②③の点については,主位的に<ア>,<イ>の不法行為(被告に支払った治療費については選択的に不当利得)に基づき,予備的に<ウ>の債務不履行ないし不法行為(被告に支払った治療費については選択的に解除に基づく原状回復)に基づき,④の点については<エ>の不法行為に基づき,被告に対し,被告に支払った治療費,原告の傷害に係る治療費,慰謝料等の損害金の賠償(返還)及び当該猫の退院日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を請求している事案である。これに対し,被告は,①当該診療契約を締結するに際し,骨折の手術を実施するとの説明はしておらず,虚偽の説明はしていないし,副木固定は実施した,②被告の診療には注意義務に違反する点はなかった,③当該猫の死亡と被告の治療は無関係である,④原告に対して暴力を振るっていないなどと主張して責任を全面的に争っている。(2)

前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。

当事者等
原告は,
ペットEと名付けた猫(本件当時11歳,雄。
)を所有し,
その子であるIとともに飼育していた。


ペットEの診療経過
(ア)

原告は,22日又は23日,骨折したペットEを被告動物病院に受
診させ,被告との間で,ペットEの診療に関する診療契約(以下本件戊契約という。)を締結し,ペットEを入院させた。
(イ)

原告は,被告に対し,25日までに,本件戊契約に基づく治療費の
内金として,合計15万0690円を支払った。
(ウ)

原告は,25日,ペットEを被告動物病院から退院させたが,その
時点では,ペットEについて,副木等による外固定措置は取られていなかった。
(エ)

原告は,25日,上記(ウ)の退院の後,ペットEをのづた動物病院
に受診させ,入院させた。ペットEは,27日,のづた動物病院におい
て死亡した(甲B2)


平成17年1月18日実施の検証(東京地方裁判所八王子支部平成16年(モ)第2657号)の際,被告動物病院において,カルテ,診療費明細書,血液検査結果,誓約書,同意書,問診票,レントゲン写真3枚8カットなどが保管されていた。
被告は,検証期日において,診療費明細書のうち,23日付のものに記載してあるワクチンというのは実際には打っていないため,その分を差し引いた額を請求する予定である旨陳述した。
(検証の結果)


原告は,被告に対し,平成18年12月21日の戊事件口頭弁論期日において,本件戊契約について,下記(3)カ(ア)の詐欺を理由に取り消す,ないし,下記(3)カ(ウ)の債務不履行を理由に解除するとの意思表示をした。

(3)

原告の主張
原告の診療経過についての主張は,別紙戊事件診療経過一覧表原の告の反論欄記載のとおりである。

本件戊契約締結の経緯
(ア)

原告は,23日,ペットEが階段から落下して骨折したため,その
治療を受けさせるべく,ペットEを連れて被告動物病院を初めて受診した。なお,22日には,原告は,終日研修業務に従事していたのであるから,被告動物病院にペットEを受診させる時間的余裕は全くなく,初診日が22日であるはずはない。
被告は,ペットEの骨折に対し,副木固定を実施すべきであることを認識し,かつ,手術を実施する必要はなく,実施する意思もなかったにもかかわらず,手術を実施したことにして,手術費用等の治療費の支払を受けようと考えた。そこで,初診時,原告に対し,上記の意図を秘し
て,ペットEの骨折の治療として手術を実施する必要があると告げ,ペットEを入院させた上で手術等の治療を受けさせることを勧めた。なお,
被告は,初診時,アブセス手術を実施するというような説明はしていない。
(イ)

原告は,上記(ア)の被告の説明及び上記1(2)アの本件広告の内容
を信じたため,本件戊契約を締結し,ペットEを入院させ,
被告に対し,
25日までに治療費として15万0690円を支払った。

違法な留置権の行使
(ア)

被告は,原告に対し,暴力を振るい,被告の請求する治療費を支払
わなければペットEを退院させない言動を示して,原告に対し,治療費の支払を請求した。
(イ)

そのため,原告は,被告に対し,9万円を支払った。

他の注意義務違反
(ア)

血液検査の懈怠
被告は,
23日ないし25日に血液検査を実施すべき義務があったが,

一切実施しなかった。
25日の血液検査結果の記録はないから,被告は,25日に血液検査を実施してはいない。そして,①原告が初診した日は23日であるのに22日に実施したという血液検査結果が存在すること,②被告動物病院の検査結果とのづた動物病院の検査結果との間には矛盾があること(WBC,CKなど)からすれば,被告は,一切血液検査を実施しななかったと考えられる。
(イ)

不適切な骨折の治療
被告は,23日,ペットEの骨折に対し,手術を実施すると説明して
いたのであるから,それを実施すべき義務があったし,少なくとも副木固定を実施すべき義務があったが,いずれも実施しなかった。

副木固定を実施していないことは,副木固定を実施した場合に見られる跡が全く見られないことから明らかである。
(ウ)

急変の原因の精査,治療及び病状の説明の懈怠
被告は,ペットEが酸素室に入らなければならないほど急変をしてい
たのであるから,その原因を精査した上で,治療を実施するとともに,原告に対し,ペットEの病状について説明をすべき義務があったが,この義務を怠った。
(エ)

不適切なレントゲン検査
レントゲン検査において,本来腫瘍の画像が認められるはずであるに
もかかわらず,被告は,それを撮影できていない。
(オ)

アブセス手術における不適切な麻酔の使用
アブセス手術は,通常ガス麻酔なしでできるにもかかわらず,被告は
ガス麻酔を使用した。
(カ)

レントゲン検査や心電図の実施の遅滞
レントゲン検査や心電図を早期に実施すべきであったが,被告はそれ
を実施していない。

被告の原告に対する暴行
被告は,25日,原告が被告動物病院からペットEを退院させた際,原告の両腕付け根付近をうっ血が生じるほど強く握り,原告に対し,左上腕打撲,血腫による全治2週間の傷害を負わせた。


被告の責任
(ア)

主位的主張-詐欺による不法行為等
詐欺による不法行為
上記イ(ア),ウ(ア)の被告の行為は詐欺に当たり,違法であって,上記イ(イ)のとおり,上記イ(ア)の詐欺行為によって,ペットEは,入院させられ,死亡したのであり,上記ウ(イ)のとおり,上記ウ(ア)
の詐欺行為によって,原告は,被告に対し,被告動物病院の治療費のうち9万円を支払ったのであるから,被告は,原告に対し,不法行為(民法709条)に基づき,下記キの損害を賠償すべき責任がある。b
詐欺取消に基づく不当利得返還請求
上記イ(ア),ウ(ア)の被告の各行為は,詐欺(民法96条1項)に該当するところ,本件戊契約は取り消されたから,被告は,原告に対し,本件戊契約に基づき原告が交付した下記キ(ア)の治療費を,不当利得として返還すべき責任がある。

(イ)

主位的請求-動物傷害による不法行為
上記イ(ア),エの被告の行為は,正当な業務行為とはいえず,動物傷
害に該当し,違法であって,それによって,ペットEが死亡したものであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,下記キの損害を賠償すべき責任がある。
(ウ)

予備的主張-(債務不履行,不法行為等)
注意義務違反(債務不履行,不法行為)
上記エ(ア)ないし(カ)の点は,被告の債務不履行(民法415条)ないし不法行為を構成するところ,それらがなければペットEが死亡することもなかったから,被告は,原告に対し,下記キの損害を賠償すべき責任がある。


解除(原状回復請求)
上記aの点は,債務不履行に該当し,原告は,それらの債務不履行を理由に本件戊契約を解除したから,被告は,原告に対し,解除に基づく原状回復として下記キ(ア)の治療費の返還をすべき責任がある。
(エ)

暴行による不法行為
上記オの行為は,暴行であり,違法であって,それによって原告は傷
害を負ったものであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,
それにより生じた損害を賠償すべき責任がある。

損害

合計

195万0150円

(ア)
(イ)

剖検費用

7万9800円

(エ)

葬儀費用

8400円

(オ)

宮国医院における原告の治療費

4260円

(カ)

慰謝料

(キ)


のづた動物病院におけるペットEの治療費

(ウ)

(4)

被告動物病院におけるペットEの治療費

15万0690円

弁護士費用

3万円

150万円
17万7000円

被告の主張
被告の診療経過についての主張は,別紙戊事件診療経過一覧表診の療経過(入通院状況・主訴・所見・診断),検査・処置欄記載のとおりである。


上記(3)イ(本件戊契約締結の経緯)について
(ア)

上記(3)イ(ア)は,第1文のうち,来院日は否認し,骨折の原因は
知らず,その余は認め,第2文は争い,第3文から第5文は否認する。原告がペットEを連れて初めて来院したのは,23日ではなく22日であり,ペットホテルと診察を希望して来院した。マスターシートに初診日が23日と記載されているのは,
コンピューターの入力ミスによる。
その際,被告は,原告に対し,
レントゲン検査と血液検査等を勧めたが,
かかりつけ動物病院があるから様子を見たいと言われ,そのうち,とりあえず血液検査だけを実施するように依頼された。
被告は,前肢の骨折部皮膚(出血有り)
,右胸部(出血有り)に細菌
感染と見られる膿があることを肉眼で確認したため,
アブセス膿除去)

手術を実施し,また,骨折部の皮膚が損傷し出血もあったためにその縫合をすることとし,原告に対し,その説明をして承諾を得た。骨折に対
する手術については,落ち着いてからしましょうというだけで,実施するとは説明していない。
(イ)

上記(3)イ(イ)は争う。

上記(3)ウ(違法な留置権の行使)について
(ア)

上記(3)ウ(ア)は,被告が原告に治療費を請求したことは認めるが,
その余は否認する。
被告が,原告に対し,暴力を振るっていないことは,下記オのとおりである。
(イ)

上記(3)ウ(イ)は,原告が,被告に対し,9万円を支払ったことは
認めるが,その余は争う。
原告は,25日朝の電話において,治療費を9万円に減額するよう求め,その金額であれば支払うと約束していたのであり,来院時,その約束した9万円を支払ったにすぎない。

上記(3)エ(他の注意義務違反)について
(ア)

上記(3)エ(ア)は否認する。
原告は,22日から25日まで毎日血液検査を実施した。のづた動物
病院の血液検査結果については,被告動物病院退院後何が起きたのかは不明であること,血液検査には誤差もあり得ること,最終の血液検査と1日の間隔があり,猫の場合1日は人間の4日分であるから,その程度の変化はあり得ること,肥満細胞腫の血液検査結果には特異的な所見はないこと,のづた動物病院で誤った検査がなされている可能性があることからして,被告動物病院での血液検査の結果の信用性を否定するものではない。
(イ)

上記(3)エ(イ)は,骨折に対する手術を実施していないことは認め,
その余は否認する。
被告は,原告に対し,ペットEの骨折の手術を実施すると説明をした
ことはない。
副木固定はしていたが,交換中にいきなり原告がペットEを退院させるため来院したから,その時点では装着しておらず,原告が再び副木を装着する必要はないと指示したため,そのままペットEを退院させた。被告は,柔らかい綿を巻いた上に粘着テープを貼ることにより副木固定をしたのであるから,粘着性のテープを貼った跡が固定していた部分に残っていなかったとしても何ら不思議はない。
(ウ)

上記(3)エ(ウ)は,ペットEが酸素室に入らなければならないほど
急変をしていたこと,その原因を精査した上で,治療を実施することが望ましいことは認め,原告にペットEの病状を説明していないことは否認し,その余は争う。
被告は,原告に対し,詳しい検査を勧めたが,様子を見たいということで断られた。
(エ)

上記(3)エ(エ)は争う。
肥満細胞腫が,レントゲン検査で必ず写るわけではない。

(オ)

上記(3)エ(オ)は争う。
アブセス手術において,ガス麻酔を使用しなければ,患獣に大きなス
トレスや痛みを与え,また,患獣が暴れて危険である。
(カ)

上記(3)エ(カ)は争う。

上記(3)オ(被告の原告に対する暴行)について
被告が,原告に対し,暴力を振るったという点は否認し,それによって原告が傷害を負ったという主張は争う。
原告が,約6万円の返金を要求して被告から拒否されると,勝手に検査室に入り,うちの猫を返せとすごんできた。そこで,被告は,原告に対し,はさみなどがあり危険なので出ていくようにとなだめたところ,原告は納得して待合室に戻った。


上記(3)カ(被告の責任)について
争う。
特に,ペットEは,肥満細胞腫という不治の病に罹患し,治療不能の段階に達しており,また,血液検査などでは肥満細胞腫は発見できなかったのであるから,被告の治療行為とペットEの死亡との間にはいかなる意味においても因果関係はない。


上記(3)キ(損害)について
争う。

第3
1
当裁判所の判断
甲事件(日付は,
平成15年11月,
12月のものについては平成15年の,
平成16年1月ないし10月のものについては平成16年の記載を省略する。)
(1)

獣医学的知見
証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の獣医学的
知見が認められる。

犬のサナダムシ(乙B1,2)
(ア)

虫体の一部(老熟片節)が切り離されて糞便とともに体外へ排出さ
れる。片節は縦長であるため,一個ずつバラバラの状態で糞塊の表面に付着していることが多く,一見米粒状である。ノミを犬が食べると,サナダムシの幼虫も同時に摂取されて感染する。
(イ)

サナダムシの駆虫薬は,錠剤のほか,注射液もある。

糞便検査と腸内寄生虫(乙B3)
糞便検査で虫卵が見つからない場合にも,寄生虫に感染している可能性は否定できない。


予防接種(甲B1,証人J)
健康状態に問題のある動物には予防接種はすべきではない。


犬猫の肝臓を評価する際のレントゲン検査所見(乙B4)

肝臓が非常に小さくなった場合を除いて肝臓の大きさが縮小したことを確定することは困難である。犬と猫では,肝臓の測定法に関するレントゲン写真上の基準は確立されていない。

血液検査(甲A6)
血液検査について,永山動物病院で使用している基準値は,別紙甲事件血液検査結果等一覧表の基準値欄に記載のとおりである。アンモニア(NH3)が基準値より高いと,肝障害が疑われる。
総蛋白質(TP)が基準値より低いと,栄養不良,腎障害が疑われる。AST(GOT)が基準値より高いと,肝障害,筋炎,心損傷又は壊死が疑われる。
ALPが基準値より高いと,肝障害が疑われる。


肝臓疾患(甲B1)
肝臓はもの言わぬ臓器とも言われ,肝臓疾患は痛みや症状を伴わない。
(2)

認定事実
前記前提事実に証拠(甲A7,原告本人,後掲各証拠及び下記(3)で認定
に用いた証拠。認定に際しての補足説明は,下記(3)において述べる。)及
び弁論の全趣旨を併せ考えると,次の事実を認定することができる。ア
平成15年までの永山動物病院における診療経過(甲B1,証人J)原告は,ペットAを永山動物病院に継続的に受診させており,11月28日にはシャンプーを受けるために永山動物病院に行った。その際の体重は,2.62Kgであった。


被告動物病院における診療経過等(甲A1∼5,乙A2の1・2,被告本人。甲A1∼5,乙A1の1∼4,2の1・2,3,4,被告本人のうち,これに反する部分は採用しない。

(ア)

原告は,12月中旬,旅行に行ってる間ペットAをペットホテルに
預けるべく,被告動物病院を訪れて料金やサービスの内容を確認した上
で同月25日から31日まで預ける旨の予約をした。
原告が,同月25日,ペットAを連れ,被告動物病院を訪れた際,ペットAは,外見上,健康であった。被告は,原告に対し,ペットホテルの間に,
避妊手術や糞便検査など色々な処置を実施することを勧めたが,
血液検査については勧めなかった。原告は,出発の時間が迫っていたこともあり,そのうち,予防注射,ノミ予防については同意した。原告は,被告に対し,先日ペットAの糞便の表面に米粒のようなものが付いていたという話はしていないし,糞便検査,駆虫を依頼してもいない。(下記(3)ア,イ,エ参照)
ペットホテルにおいて預かり中,ペットAについて,糞便検査,予防注射,ノミ予防が実施されたかどうかは判然としないが,仮に糞便検査が実施されたとしても,サナダムシは発見されていない(下記(3)イ参照)

原告は,同月31日,ペットAを受け取るため,被告動物病院を訪れた。被告は,原告に対し,糞便検査をしたら,サナダムシがいたので,注射で駆虫をしておきましたと話し,糞便検査の代金840円,注射料(皮下)1050円,処置料(駆虫)840円,整腸剤代金420円,ペットホテル代金1万5750円を含む合計2万9220円を請求し,原告はこれを支払った。ペットAは,同月25日より痩せており,異臭がした。
被告動物病院から引き取った後,
入浴させると大量の毛が抜け,
ずっとだるそうに寝たり,嘔吐や下痢をするようになった。
(下記(3)イ参照)
(イ)

原告は,ペットAを引き取った後の状態が,上記のように悪く,好
転しないため,1月3日,6日,8日及び12日に,ペットAを連れて被告動物病院を受診した。被告は,胃炎だろう,何ともないようだなどと説明し,整腸薬等を処方し,レントゲン検査を同月12日に実施した
が,原告又はその夫に対して,ペットAの血液検査を提案したり,これを実施することはなく,
肝臓病を具体的に疑うことはなかった。
原告は,
被告に対し,請求されたとおり,同月6日に2415円,同月8日に1890円,同月12日に8715円を支払った(下記(3)ウ,エ参照)。

平成16年の永山動物病院における診療経過等(甲A6,10,B1,C3の1∼22,証人J。

(ア)

原告は,1月16日,永山動物病院で,ペットAにシャンプーを受
けさせた。その際の体重は2.40Kgであった。
(イ)

原告は,1月25日,ペットAが嘔吐したので,永山動物病院を受
診させた。その際の体重は2.24Kgであった。永山動物病院のJ獣医師が,血液検査を実施したところ,別紙甲事件血液検査結果等一覧表の検査結果欄のとおりであり,NH3及びALT(GPT)の上昇,TPの低下,AST(GOT)のやや上昇,ALPの上昇,γ-GPTの上昇を認め,肝臓機能の低下が重篤であると判断し,かなり痩せていることもあるので余りよい状態ではないと考えた。
(ウ)

その後,永山動物病院において,静脈注射,皮下注射など,ペット
Aの肝臓病に対する治療が実施されたところ,3月18日頃までにペットAの肝臓機能は改善し,4月を最後にペットAは永山動物病院をしばらく受診しなかった。しかし,ペットAは,再び具合を悪くし,7月16日に永山動物病院を再診した際の血液検査では,肝臓機能が悪くなっていた。ペットAは,8月7日に死亡したが,その死因を特定して認定することはできない。
(下記(3)オ参照)
(3)

事実認定の補足説明
12月25日に被告動物病院のペットホテルに預けられた際のペットAの健康状態

(ア)

被告は,ペットAは預かり時も引渡し時も体重の変化はなく,原告
は預かり時に被告に対し,ペットAは普段からガリガリに痩せており,余り食べず,元気がないと話していて,被告が原告に血液検査を勧めた程であったと主張し,乙A1の2∼4(カルテ,被告作成の注釈及びカルテの訳文(以下,全事件について,カルテ,被告作成の注釈及びカルテの訳文のことをカルテ類という。)
),4(被告の陳述書)
,被告
本人にはそれに副う部分がある。
(イ)

しかし,その際,予防接種が実施されることとされたものであると
ころ,上記(1)ウのとおり,予防接種は,健康な動物にしか実施されないので,少なくとも,その時点で外見上健康に問題があるとは判断されなかったと解され,そのことと被告の上記の主張は矛盾すると解されることも考慮すると,甲A7(原告の陳述書)
,原告本人に照らし,上記
(ア)の各証拠は採用することができない。

糞便検査及び駆虫に関する原被告間の遣り取りの内容,糞便検査及び駆虫を実施したか否か並びに糞便検査においてサナダムシが発見されたか否かについて
(ア)

被告が,糞便検査においてサナダムシを発見していなかったことは
当事者間に争いがない。
(イ)

糞便検査及び駆虫に関する原被告間の遣り取り並びに糞便検査及び
駆虫の実施について,被告は,糞便検査でサナダムシを見つけたのではなく,原告から,ペットAを預かるに際し,先日ペットAの糞便の表面に米粒のようなものが付いていたとの話を聞いたため,原告に対し,それはおそらくサナダムシであるとの説明をしたところ,原告から駆虫を頼まれ,実施した,
また,
他の寄生虫もいるかもしれないということで,
糞便検査も頼まれ,実施したと主張し,乙A1の2∼4,被告本人にはそれに副う部分がある。

(ウ)

しかし,下記aないしeの点からすれば,甲A7,原告本人に照ら
し,上記(イ)の各証拠は採用することができず,そうすると,糞便検査及び駆虫の実施を裏付ける証拠の信用性がないことになるので,それらが積極的に実施されたと認定することは困難である。

原告は,
継続的にかかりつけ医を受診させていることなどからして,
仮に原告がペットAの便に異常を認めた場合,その時点でペットAを動物病院に受診させていたであろうことが推認できるところ,本件では,原告は,12月中旬,ペットAを被告動物病院のペットホテルに預けることとして予約を取り,その後は永山動物病院も被告動物病院も受診せず,予定通り被告動物病院に来院しているのであり,ペットホテルに預ける直前に,原告がたまたまサナダムシに気付いたという可能性は一般的にはかなり低いと考えられることからして,被告の上記主張は不自然である。


被告は,ペットホテルにペットAを預ける目的で来院した原告に対し,避妊手術などの様々な処置を勧めており(被告本人は,この点を否定する供述をするが,乙A1の2(カルテ)にペットAのそれらの処置に関する事実がこと細かく書かれていることからすると,採用しない。,糞便検査や駆虫だけは原告が特に希望したとは考えにくく,)
これらについても,被告が12月25日に勧めたか.同月31日に事後承諾を得ようとしたという方がこの経緯に副うものである。


被告が自らの主張を裏付けるものとして提出する乙A1の2には,12月25日の欄にFT,8種,ノミ希望と記載されているが,
駆虫の希望については記載がされておらず,駆虫に関する記載は,上記記載の下の段である1月6日の欄に条虫→く虫と記載されてい
るのみであるから,少なくとも12月25日に原告が駆虫を依頼したということはなく,検便を実施した結果条虫が発見され,駆虫を実施
したと読むのが自然であり,このことは被告の主張や供述と一致しない。

同じく乙A1の2には,
条虫→く虫という記載より上である,
12月25日の欄と1月6日の間の部分に,
2ndく虫という記
載があり,不自然である。


同じく乙A1の2にはR-chなしという記載があり,その趣
旨について,乙A1の3(カルテの被告作成の注釈)によれば,確認のための糞便検査を実施しないが,その理由はかかりつけ医で糞便検査を受けると原告が話したからである旨の記載があるところ,被告が主張するように,他の寄生虫もいるかもしれないという理由で糞便検査も頼まれたということであれば,駆虫をした後に,サナダムシが駆除されたことと他の寄生虫がいないことを確認するために糞便検査を1回実施すれば済むはずであるから,上記乙A1の3の記載は,被告の主張に照らして不自然である。


1月に原告が被告動物病院に来院した日
(ア)

被告は,1月に,原告が,ペットAを連れて被告動物病院を受診し
たのは,6日及び12日のほか,7日であると主張し,被告本人によれば,7日に診療を受けたが,原告は持ち合わせがなかったために診療費明細書の日付は8日となっているなど,この主張に副う供述をし,乙A1の2∼4にはそれに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記aないしeの点からすれば,甲A4(診療費明細書),

7,原告本人に照らし,上記(ア)の各証拠は採用することができない。a
甲A4の日付が1月8日付である。


請求された金額はわずか1890円であり,この程度の金額であれば用意しているのが通常である。


原告が被告動物病院の入居するマンションに居住していたことから
すれば,仮に持ち合わせがなかったとしてもその日のうちに支払に来るのが通常である。

上記明細書の領収日欄は空白となっており,1月8日という記載があるのは,診療した日又は期間を記載することが予定されている箇所である。


水曜日は休診である(乙・甲A14の1,丙・甲A13の1,丁・甲11の1)ところ,1月7日は水曜日であり(顕著な事実)
,休診
日の診療費も請求されていない(甲A4)



血液検査を実施しなかった経緯
(ア)

被告は,原告に対し,12月25日以降,診療のたびごとに血液検
査を勧めたが,原告から,お金がない,様子を見たいなどと言われて許可されなかった旨を主張し,乙A1の2∼4,乙A4,被告本人にはそれに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記aないしcの点からすれば,甲A7,原告本人に照ら
し,上記(ア)の各証拠は採用することができない。

原告は,少なくとも1月3日以降は,ペットAの状態が悪いために計4回も被告動物病院を受診し,同月12日はレントゲン検査を受けさせたにもかかわらず,血液検査だけは再三の被告の勧めにもかかわらず拒み続けたことについて,被告本人は,何ら合理的理由を供述していない。


原告は,永山動物病院を定期的に受診し,11月及び1月にはシャンプーも永山動物病院でさせていたのであり,原告はペットAについてある程度の出費を惜しむことはなかったと考えられる。


上記イのとおり,糞便検査及び駆虫に関する12月25日及び31日の原被告間の遣り取りについての被告本人は,信用できないことからすれば,同月25日に原告が血液検査の実施を拒否したということ
についての供述もまた信用性に乏しいと解される。

ペットAの死因
原告は,ペットAは,肝臓病によって死亡したと主張し,甲A10(原告の陳述書)には,ペットAは6月末頃からよだれを垂らして,頭をゆらゆらさせるようになった,J獣医師はペットAに血液検査を施した後それを肝臓由来のアンモニア脳症であると診断した,その症状は徐々に悪化したが,対症療法しか取れず,それはペットAに負担を負わせるので,自宅で看取ろうと思い,7月17日を最後に通院しなかったとの記載があり,それらの事実からすると,ペットAの死亡が肝障害による可能性も十分ある。
しかし,その陳述書が提出されたのは証人Jの証人尋問及び原告本人尋問実施後の口頭弁論終結期日においてであって,各尋問の際についてはこの点について供述されておらず,反対尋問による信用性の吟味がされていないばかりか,裏付けとなるべき永山動物病院でのカルテ,血液検査結果及び前提となる獣医学的知見を立証する証拠の提出がないことからすると,甲A10のみから,ペットAの死亡が肝障害によると特定して認定することは困難である。

(4)

被告の責任
詐欺による不法行為について
前記認定事実によれば,
被告が糞便検査を実施したかどうかはともかく,
サナダムシが発見されたという事実はなかったにもかかわらず,被告は,原告に対し,
ペットAを引き渡す際,
糞便検査によりサナダムシを発見し,
サナダムシを駆除するために駆虫をしたという虚偽の説明をしており,その説明を誤信し,原告は被告に糞便検査及び駆虫のための費用として合計2730円を支払ったものであるから,これは詐欺に当たり不法行為(民法709条)を構成する。

ここで,注射料(皮下)1050円も駆虫の費用であることは,被告作成の甲A2(診療費明細書)において注射・皮下欄に続けて虫くだしとの記載があることから容易に認められる。
なお,乙B3(パンフレット)によると,製薬会社は,糞便検査によって定期的な駆虫をすることを推奨していると認められるが,被告は,原告に対し,そのような観点からの説明をしていたわけではないから,このことは,上記不法行為の成否には影響しない。
したがって,被告は,原告に対し,上記費用を損害として賠償すべき責任がある。

債務不履行について
(ア)

原告の主張ウ(ア)aについて
前記認定事実によれば,11月18日には2.62Kgあったペット
Aの体重は,1月16日には2.40Kgにまで減少し,原告が12月31日にペットAを引き取った際,ペットAは,同月25日より痩せており,異臭がしたこと,その後,入浴させると大量の毛が抜け,ずっとだるそうに寝たり,嘔吐や下痢をしたりするようになり,1月25日には肝臓の機能の悪化が判明したものであったこと,原告がペットAを被告動物病院から引き取った際の症状とその後の症状に連続性があったこと,12月25日被告がペットAを預かる時点では元気であったことからすると,同月31日以降の症状は肝機能障害によるものであって,それが顕在化したのは同月25日以降であると解される。
しかし,肝臓はもの言わぬ臓器とも言われ,肝臓疾患は痛みや症状を伴わないこと(上記(1)カ)からすると,血液検査等で確認していない以上,被告動物病院に預けられた以前に肝臓病がなかったと認めることも困難であり,J獣医師も,被告動物病院における予防接種,駆虫,預かりによる環境からのストレスが肝臓障害の影響になった可能性を指摘
するにとどまること(甲B1,証人J)からすれば,ペットAの肝臓病が,被告動物病院のペットホテルにいた際に発症した,又は悪化したと認めることは困難であって,原告の主張する義務違反と肝臓病の発症,悪化,又はそれに伴う死亡との間の因果関係の立証まではないから,原告の主張する義務違反の成否について判断するまでもなく,この義務違反を理由とする原告の請求は理由がない。
(イ)

原告の主張ウ(ア)b,cについて
義務違反か否か
(a)

原告の主張ウ(ア)bの血液検査の点について
上記(1)オのとおり血液検査によって肝障害が確認できることに,
甲B1(J獣医師の陳述書)
,乙A4,証人J,被告本人のとおり
J獣医師も獣医師である被告も1月6日の時点で血液検査の必要性があることを認めていることを加えると,被告は,同日の時点で,血液検査を実施すべき義務があったと窺える。
なお,被告は,この点について,原告に勧めたが拒否されたこと
を理由に実施が不可能であったと主張しているが,上記(3)エのとおり被告の主張する事実は認められない。
したがって,被告は,血液検査を実施することにより,ペットA
の肝障害を確認した上で,それに応じた適切な治療を実施すべきであったと窺える。もっとも,本件の場合,どのような治療が実施されるべきであったかについての具体的な主張,立証はない。
(b)

原告の主張ウ(ア)cの皮下補液について
肝障害の場合,どのような症状ないし検査結果の場合に皮下補液

実施が必要か等についてのこの争点にかかわる獣医学的知見について,具体的な主張,立証がないので,その点を義務違反と捉えることは困難である。


上記a(a),(b)の点と死亡との間の因果関係について
ペットAについて,3月18日頃までにペットAの肝臓機能は一旦は改善し,4月を最後にペットAが永山動物病院を受診することはしばらくなかったこと,ペットAの死因が肝障害によるとの認定は困難であることからすれば,原告の主張する上記a(a),(b)の点と死亡との間の因果関係は認められない。
なお,上記a(a)の点に関し,一般的に,疾病は,早期発見,早期治療が望ましいとの観点からすると,1月3日ないし6日に肝障害の診断がされ,それに対して有効な治療がされた場合は,肝障害の悪化が現実のもの程ではなく,治療期間の短縮や治療費の減額がされた可能性も窺えるが,
本件において,その点に関する具体的な主張,
立証,
例えば,肝障害に対する治療一般,肝障害の予後一般,カルテ等を証拠提出することによって立証可能な本件の具体的なペットAの症状の経過等の主張,立証はない。


そうすると,血液検査の懈怠については義務違反は窺えるものの,義務違反と死亡結果との因果関係の立証まではないから,この義務違反を理由とする原告の損害賠償請求も理由がないことにならざるを得ない。

(5)

よって,原告の請求は,現段階の証拠状態では,被告に対し,2730
円及びこれに対する不法行為日である平成15年12月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,
その限度で認容し,
その余は理由がないから棄却することとする。
2
乙事件(日付は,平成16年9月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

獣医学的知見
証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の獣医学的
知見が認められる。


チンチラの寿命(甲B3)
平均寿命は15年くらいで,20年近く生きるものも珍しくない。

チンチラのストレス耐性と外科手術(甲B1,4,7)
チンチラは犬,猫ないし人とはストレスに対する反応が異なり,ストレスが加わると胃腸の動きが鈍くなったり,血圧が下がったりするなどの望ましくない生体反応を起こす。特に,外科手術による侵襲は大きなストレスとなる。


チンチラの毛球症による腸閉塞,便秘(乙B1)
(ア)

病態
消化管の中で毛球を形成したり,異物を摂取した場合,消化管内で閉
塞が発生する。
チンチラの毛球症の発生頻度はウサギやモルモットに比較してまれである。
(イ)

症状
食欲不振,糞塊の縮小又は排便の欠如,鼓腸等で,次第に飲水だけを
行い体重減少が見られ,衰弱する。急性閉塞では元気喪失,腹部疼痛,低体温,ショック等の症状も見られる。便秘では腹部膨満が特徴的な症状である。
(ウ)

診断
触診で消化管内の毛球や異物の確認をし,単純レントゲン検査で胃内
の塊状物,異物と鼓腸,糞塊の確認をバリウム等の造影レントゲン検査で閉塞像の確認等を行い,診断する。
(エ)

治療
不完全閉塞や便秘では,毛球予防(除去)剤や消化管運動を刺激させ
る薬剤の投与を行う。便秘に対しては,高繊維の食餌等の給餌,運動が良い。体を水和させるためには,補液等が必要である。

完全閉塞であれば,鎮痛剤やステロイドの投与を行い,外科的に摘出手術を行う。

チンチラの腸重積,腸捻転(乙B1,9)
(ア)

病態
慢性の消化器疾患に併発又は続発する。

(イ)

症状
盲腸曲又は結腸曲での捻転,重積が見られる。急性の腹部の疼痛が見
られ,元気喪失,食欲廃絶を示す。次第に衰弱しながら,鼓腸やショックを引き起こし,多くは死亡する。
(ウ)

診断
レントゲン検査でガス貯留した胃や盲腸,そして鼓腸等の閉塞像を確
認する。
(エ)

治療
捻転や重積による閉塞が発症した症例には迅速な治療が必要となる。
一般に静脈からの点滴,鎮痛薬の投与,ショック状態の症例にはステロイドの投与を行うが,多くは予後不良である。

チンチラの採血(乙B2,3)
チンチラにとって採血は非常にストレスであり,麻酔下での採血が良いが,飼い主の理解が得られない場合も多い。
採血部位としては,耳介静脈をアルコール,キシレンで努張させ採血を行うと容易である。末梢の静脈(外側伏在静脈又は撓側皮静脈)
,頸静脈
(より多くの血液が得られる。
)からも採血する。


レントゲン検査(上部胃腸検査法)
(乙B4∼8)
(ア)

造影剤
25%ないし30%W/Vの硫酸バリウム,ガストログラフィン及び
空気や二酸化炭素を含む陰性造影剤の3種類の造影剤が使用される。
脂溶性のバリウムを用いた消化管造影は,消化管穿孔の症例やイレウスが疑われる症例に対しては禁忌となる。バリウム便の場合は,便秘傾向となりやすい。
ガストログラフィンは,腹膜腔に漏れてもすぐ吸収されるため,胃や腸の切除後(穿孔,縫合不全の危険のある場合)の消化管造影にも使用される。ガストログラフィン使用後は下痢を起こすこともある。
(イ)

撮影法
まず,腹背像(VD像)とラテラル像(L像)の探査的単純レントゲ
ン撮影を行う。造影剤の投与直後にVD像,背腹像(DV像)
,RL像
とLL像を撮影する。15分後,30分後,1時間後にVD像とRL像を撮影する。
(2)

認定事実
前記前提事実に証拠(甲A18,26,原告本人,後掲各証拠)及び弁論
の全趣旨を併せ考えると,次の事実を認定することができる。

西荻窪動物病院における診療経過(甲A20の1,B7)
ペットBが,
9日から排便がなく,
食欲も極端に落ちている様子であり,
活力低下も甚だしかったことから,原告は,11日,ペットBを西荻窪動物病院に受診させた。西荻窪動物病院のK獣医師は,触診しても腹部の異物等は認めず,
単純レントゲン検査の結果胃腸内のガスの異常貯留を認め,
鼓張症と診断するが,毛球症も否定できないと判断した。治療方針としては,ガス吸着剤等の薬物治療で排便の有無を確認し,食欲,活力が2日程度で改善しなければ,油剤等の経口投与の必要性がある,高齢のチンチラであるペットBには外科処置は危険であると考えていた。
原告は,11日の受診を終えた後,ペットBに処方薬を飲ませていたところ,同日午後2時∼3時にペットBの排便を認めたので,原告ないしその家族は,K獣医師にその旨連絡した。そこで,K獣医師は,12日朝ま
で処方薬の内服を続けるよう返答した。ペットBは同日も排便はあった。イ
被告動物病院における診療経過甲A4∼10,

16・17の各1・2,
20の1,27,乙A1の1∼4,2∼5,被告本人及び下記(3)で認定に用いた証拠。甲A1・2の各1∼4,12,16・17の各1・2,乙A1の1∼4,5,被告本人のうち,これに反する部分は採用しない。認定に際しての補足説明は,下記(3)において述べる。

(ア)

原告は,ペットBの具合が悪くなったため,12日深夜,被告動物
病院に電話をし,ペットBの病状について相談したところ,被告から,すぐ被告動物病院に連れてくるよう指示された。そこで,13日午前1時頃,ペットBを被告動物病院に受診させた。
原告は,被告に対し,ペットBの便が出にくいこと,来院前に横になっていたことを話した。被告が検査を実施しているという間,原告は待合室等において待機していた。
20分ないし30分程度した後,
被告は,
単純レントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査,点滴を実施したと説明し,レントゲン写真と血液検査結果の報告書を示しながら,消化管にガスが貯まっており,異物が詰まっているかもしれないので,朝から造影レントゲン検査を実施するためにペットBを入院をさせるよう勧めた(この際の被告の意図は事実であるが,主観的なものであって,争点に直結するものであるから,下記(4)によって認定判断する。。また,)
便から腸内悪玉菌と回虫が発見されたから駆虫を実施したという説明をした。なお,その際,被告が実施したと説明した検査等の全部又は一部は実施されておらず,少なくとも糞便検査と駆虫は実施されていない。そのため,原告は,ペットBを入院させることとし,同意書(甲A5)に署名をし,被告との間で本件乙契約を締結した。
(下記(3)イ参照)
被告は,治療費として合計7万8750円を請求し,原告はその内金
として1万円を支払い,被告の求めに応じ,残金6万8750円については9月25日までに支払う旨の誓約書(甲A4)を差し入れた。(イ)

被告は,
本件乙手術までに,
造影レントゲン検査を実施しておらず,

又は造影レントゲン検査を実施したとしても,異物や完全閉塞を確認できなかった。しかるに,被告は,13日昼頃,原告に対して電話を掛け,造影レントゲン検査の結果,異物があり,薬で処置はできない,手術を受けないと危ない,
手術は成功する確率が高い旨を説明した。
そのため,
原告は,ペットBに本件乙手術を受けさせることを承諾した。
その際や初診時において,①原告の方から,被告に対し,手術の実施を希望したり,強要したという事実,②原告が,被告から造影レントゲン検査を勧められたにもかかわらず,これを拒否したという事実,③原告が,被告から手術のリスクの説明を受けたにもかかわらず,完全閉塞であると自己診断し,被告の意見を聞こうとしなかったという事実はいずれもなかった(下記(3)ア参照)

被告は,同日午後,本件乙手術を実施した。なお,本件乙手術の際,被告は開腹をしたが,腸重積はなく,その解除はしていない。胃を切開したか,切開した胃に毛球があったかは判然としないが,少なくとも,胃の完全閉塞はなかった。
(下記(3)ウ参照)
(ウ)

原告は,13日の夕方,ペットBに面会するため,被告動物病院を
訪れた。その際,被告は,原告に,本件乙手術前に検査した造影レントゲン写真と称するものを見せ,胃に毛球がある旨の説明をし,さらに約4万円掛かり,これまでの治療費は合計12万1065円であるという説明をし,原告はその内金として1万円支払い,初診時に支払った1万円も併せた計2万円を控除した10万1065円を支払う旨の誓約書(甲A6)を差し入れた。

(エ)

原告は,被告の発言が二転三転すること,料金がどんどんあがって
いくことなどに不信感を覚え,消費者センターなどに相談した結果,ペットBを退院させることとし,16日午後7時過ぎ,友人とともに被告動物病院へ行った。
被告は,原告に対し,ペットBについてはまだ入院治療が必要であるから,退院をさせる場合にはペットBに今後悪い結果が生じても責任は取れないことを説明し,原告の自己責任で退院させる旨の誓約書を差し入れるよう求めるとともに,未払い分の治療費として,上記10万1065円に38万9340円を加えた合計49万0405円を請求し,この請求金額を支払う旨の誓約書を差し入れるよう求めたため,原告は,ペットBを退院させるため,
上記2点についての誓約書甲A7∼10)

を差し入れた。

ハロー動物病院における診療経過(甲A19,甲B1)
原告は,ペットBを退院させた後,自宅で一夜を過ごさせ,17日朝,ハロー動物病院に連れていき,L獣医師の診察を受けさせ,入院させた。ペットBの腹部には縫合痕があり,浸出液の漏出が認められた。ペットBは,入院当初から重体であり,胃腸の動きが弱まったことが大きな要因となり,19日にハロー動物病院において死亡した。

(3)

事実認定の補足説明
本件乙手術を実施した経緯について
(ア)

被告は,本件乙手術を実施した経緯について,初診時ないし13日
の午前中に電話で,①原告から,かかりつけの動物病院で胃内に異物を発見したため内科療法を実施したが奏功しなかったので,手術で異物を除去して欲しいと希望され,被告が手術をしないことによってペットが死亡したらどうしてくれるなどと手術の実施を強要され,
②原告に対し,
完全閉塞を診断するために造影レントゲン検査を勧めたが,原告は拒否
した,③原告は,被告から手術のリスクについて説明を受けたにもかかわらず,完全閉塞であると自己診断し,被告の意見を聞こうとせず,手術をしてペットBが死亡しても被告の責任を問わないことを承諾した,④他方,被告は,原告から,かかりつけの動物病院で胃内に異物を発見し,内科療法を実施したが奏功しなかったと聞いていたこと,ペットBがぐったりとしていたこと,触診で腹部に異物を触知したことから,完全閉塞があると判断したと主張し,被告本人は,原告は自らをチンチラの専門家であると話した上で①ないし③の対応をしたなど,この主張に副う供述をし,乙A1の1∼4(カルテ類)
,5(被告の陳述書)には
それに副う部分がある。
(イ)

しかし,
下記aないしfの点からすれば,
甲A18原告の陳述書)



原告本人に照らし,
上記(ア)の各証拠は,
到底採用することができない。

乙A1の2(カルテ)には,被告の勧めたという術前の造影レントゲン検査を原告が拒否した旨の記載はなく,むしろ,左中央部に9/13(ope9/13ひる)→毛球除去,その4行上から2行上
にかけてガス多毛球しょくしん?+Echo+造影XP(1,万),Gastrograph中央部には「XPGastr2㏄poとの記載があり,右
異物+→ope(毛球除去」との記

載があることからすると,これらのカルテの記載は,かえって,造影レントゲン検査を本件乙手術前に実施したとも取れる記載であって,被告の主張を裏付けるものではない。

内科治療は11日に開始したばかりであり,原告がペットBを被告動物病院に受診させたのはそのわずか2日後であることからすると,内科療法が奏功しなかったとまでは判断できないはずである。


仮に被告において毛球様の異物を触知したとしても,毛球等の異物によって完全閉塞があるか否かまでは分からないのであり,かかりつ
け動物病院についての原告からの話と触診などにより,完全閉塞と判断したとの被告本人の供述は,獣医学的にあり得ないもので,信用し難い。

獣医療の素人である原告が,被告に対し,手術の実施について相談をするのであればともかく,それを強要したりであるとか,また,被告の勧めに反して造影レントゲン検査を拒否するということは考えにくいところ,西荻窪動物病院においても内科的処置を実施するという治療方針により内服薬の処方をされていて,11日と12日に一応排便があったことからすれば,原告の方から自らが認識していたペットBの症状を超えて,ペットBに手術を受けさせるような事情を積極的に話さなければならない理由もなく,
本件乙手術の実施を希望したり,
まして,強要することは考え難い。


被告本人の供述は,原告は本件乙手術前の造影レントゲン検査を拒否しながら術後の造影レントゲン検査を希望していたとするものであって,飼い主の対応として一貫性がなく不自然である。


乙A1の2には,
肺せんい化+と読める記載があるが,そのま
ま読めば,それは甲A1の1・2(乙A2の1)
(レントゲン写真)

被告本人,証人Mによって認められるそのレントゲン写真に肺せんい化が認められないことと矛盾するものであって,信用性が乏しい。

初診時の原被告間の遣り取りの内容及びレントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査,駆虫を実施したか否か
(ア)

被告は,①原告が,初診時において,ペットBの便を持参し,被告
に対し,レントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査をするよう強要し,被告からかかりつけの動物病院の受診を勧められても,原告は,被告動物病院で治療を受けることを強く希望した,②そしてやむを得ず,レントゲン検査,血液検査,糞便検査,尿検査を実施し,駆虫をしたが,
そのうち,レントゲン検査の実施時を除き,原告に保定などにおいて協力を得た,これらの検査には2時間以上を要したと主張し,乙A5,被告本人にはそれに副う部分があり,
②の点については,
乙A1の1∼4,
甲A1・2の各1∼4(乙A2の1・2)
(レントゲン写真)
,甲A3
(乙A4の1・2)
(血液生化学検査報告書)にはそれに副う部分もあ
る。
(イ)

しかし,上記(ア)①の被告の主張は,上記ア(ア)の被告の主張と極
めて類似しているところ,上記ア(ア)の被告の供述がおよそ信用できないことからして,
上記(ア)①の点に係る各証拠も信用することはできず,これに反する甲A18,原告本人に照らし,到底採用できない。
(ウ)a

上記(ア)②の点については,甲A18,原告本人によると,被告
が検査のためとして費やした時間は20∼30分程度であり,原告は各検査に協力していないと認められ,甲B1(L獣医師の意見書)及び被告本人によると,被告が,20分∼30分程度で上記(ア)の各検査全てを実施することは不可能であるといえるから,上記(ア)の各検査及び駆虫の全部又は一部は実施されていないと推認できる。

これに反する上記(ア)②の点に係る各証拠は,上記a,下記(a),(b),(エ)の点からすれば,採用することができない。
(a)

上記(イ)のとおり,上記(ア)の各検査を実施することとなった
経緯について,被告本人の供述は信用できない。
(b)

尿検査については,丁事件においては提出されている検査報告

書等すら本件においては提出されていないことは,その実施がなかったことを窺わせる事実である。
(エ)a

また,上記(ア)②のうち,糞便検査及び駆虫については,甲A1
8,原告本人によると,原告は初診時にペットBの便を持参していなかったことが認められ,被告本人によると,被告は,初診時ペットB
から便を採取したことはないと認められるところ,これらの事実からすると,初診時に対象であるペットBの便が存在しなかったこととなるから,被告が,初診時に糞便検査及び駆虫を実施しなかったと推認できる。

この点,被告本人は,原告がペットBの便秘を訴えていたが,同時にペットBの便を持参し,その検便を希望した,検査して回虫はいなかったが,予防的に駆虫をしたと供述する。


しかし,
上記a及び下記(a)ないし(c)の点からすれば,
甲A18,
原告本人に照らし,上記bの証拠は採用することができない。
(a)

原告がペットBの便秘を訴えながらペットBの便を持参したと

いう点は不自然である。
(b)

仮にそのような訴えがあれば,
その便がいつ排泄されたものか,

検便に適した時期に排泄されたものかの確認をした上で検便を実施すると解されるのに,
そのような遣り取りについては,
被告は一切,
主張,供述していない。
(c)

状態の悪いペットBについて回虫がいなかったのに予防的に駆

虫することは考え難く,乙A1の2には回虫+→く虫という記
載があることと矛盾している。

本件乙手術の具体的内容
(ア)

胃の完全閉塞の存否
下記(a)ないし(d)の点からすれば,13日の本件乙手術の時点でも胃の完全閉塞はなかったものと推認できる。
(a)

毛球症が疑われるとしても,完全閉塞を窺わせる所見等がない

のに,胃内を確認したところたまたま完全閉塞が発見されるという可能性は一般的には低いと考えられる。
(b)

上記(2)アのとおり,11日,12日にある程度排便があった。
(c)

11日の西荻窪動物病院受診時には完全閉塞とは診断されなか

った。
(d)

乙A1の2にも完全閉塞を認めたなどの裏付けとなる記載がな

い。

なお,被告は,本件乙手術において,異物による完全閉塞を目視したと主張し,乙A5,被告本人にはそれに副う部分があるが,上記a(a)ないし(d)の点からすれば信用できない。

(イ)

腸重積の存否及びその解除を実施したか否か
下記(a),(b)の点からすれば,本件乙手術の時点で腸重積はなかったものと推認できる。
(a)

上記アのとおり,乙A1の2には,
胃腸内切開手で,,おし出したとの記載があり,胃は切開し,腸内は手で押し出したというように読めるが,腸を切開するというのであればともかく,腸重積を用手解除するのみであれば,腸内」の問題ではないこと,上記3つの記載はいずれも太さや濃さの異なる鉛筆でなされていることからすると記載時期が異なると窺え,その信用性は低く,結局,被告動物病院のカルテ上腸重積であるとの有意な記載がないに等しい。(b)原告が本件乙手術以降被告から腸重積があったとの説明を受けていない。bなお,被告は,本件乙手術の際,腸重積を見つけたので引っ張って直したと主張し,乙A1の2∼4,被告の供述にはそれに副う部分があるが,上記a(a),(b)の点からすれば信用できない。(4)ア被告の責任詐欺による不法行為について前記認定事実によれば,被告は,初診時,異物が詰まっているかもしれないとして,造影レントゲン検査を実施することを理由に本件乙入院を勧め,さらに,本件乙手術を実施するに先立ち,原告から拒否されたなどの特段の事情がないにもかかわらず,完全閉塞か否かを判断するための造影レントゲン検査を実施すべきことを認識しながらこれを実施せず,又は実施したのに完全閉塞を認めなかった。しかし,被告は,手術の適応が認められないのに,原告に対しては,造影レントゲン検査を実施したところ,異物があり,手術の適応があるとの虚偽の事実を告げ,薬で処置はできない,手術を受けないと危ない,手術は成功する確率が高い旨を説明して本件乙手術を勧めた。これらのことからすると,被告は,本件乙契約の締結の当時,既に,ペットBについて,造影レントゲン検査をせずに,手術の適応を判断しないまま,又は造影レントゲン検査をして完全閉塞が認められなかったとしても,原告に対し,異物を確認した,手術を実施しなければ,ペットBは死亡するなどの虚偽の事実を告げ,手術の実施についての承諾を得て,手術を実施し,原告から治療費を得る意図があったと推認することができ,これに反する乙A5,被告本人は採用できない。そうすると,被告は,本件乙契約締結に際し,原告に対し,虚偽の事実を告げ,それによって原告は本件乙契約を締結したものであるから,被告のその行為は詐欺といえ,不法行為(民法709条)に該当する。イ動物傷害による不法行為について上記(3)ウによると,本件乙手術時に客観的には胃の完全閉塞や腸重積はなく,上記(1)イ,ウによると外科的侵襲に弱いチンチラの毛球症においては,内科的治療が奏功しない場合に,造影レントゲン検査において完全閉塞を確認した上で手術をすることが原則であって,上記(3)イのとおり,原告が,術前の造影レントゲン検査を拒んだとの事情がないのに,本件乙手術前に造影レントゲン検査によって完全閉塞の確認がされていない以上,本件乙手術は適応がない手術であったことは明らかであること,さらに,本件においては,上記アのとおり,被告において本件乙手術の適応を検討する意思はなかったことを併せ考えると,本件乙手術は,正当な業務行為とはいえず,動物傷害といえ,不法行為に該当する。ウ上記ア,イの不法行為と結果,損害との間の因果関係及び過失相殺について(ア)上記アの詐欺行為がなければ,原告は,被告との間で本件乙契約を締結せず,被告動物病院における治療費を被告に支払うこともなかったものであるから,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,その全額の支払(下記エ(ア))を求めることができる。(イ)また,ペットBは,少なくとも11日の時点では,内科的治療を受けて経過観察を受ければ足りる程度の症状であり,上記(3)ウ(ア)のとおり,完全閉塞はなかったのであるから,手術前に死亡しうる原因がある状態であったとはいえない。そして,本件乙手術には,上記イのとおりの危険があり,ハロー動物病院に入院時には重体であったのであるから,ペットBの死亡は,本件乙手術に起因するものであって,上記ア,イの不法行為とペットBが重体となり死亡したこととの間の因果関係はあると推認できる。この点,被告は,原告が,ペットBを自宅において一夜を過ごさせ,翌日までかかりつけの動物病院に入院させなかったために,ペットBは,不可逆的なほどに状態を悪化させ,死亡したと主張する。しかし,ペットBを自宅において一夜過ごさせたことが,ペットBの病状を悪化させる一因になったと認めるに足りる証拠はなく,仮にその一因となったとしても,上記ア,イのとおり詐欺,動物傷害行為があったことからすれば,原告がペットBを被告動物病院から一刻も早く退院させようと判断し,翌朝かかりつけの動物病院に受診させるまでに一時自宅においてペットBを過ごさせるということも一般的にあり得ることであり,そのような判断をした原告は責められるべきとは考えられないから,そのことによって,上記ア,イの不法行為とペットBの死亡という結果との間の因果関係は否定されるとはいえず,その点は,過失相殺事由ともならない。したがって,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,ペットBが重体となり死亡したことにより生じた損害(下記エ(イ),(エ))を賠償する責任がある。エ損害(ア)被告動物病院における治療費2万円(イ)ハロー動物病院における治療費(甲C1)2万6550円(ウ)葬儀費用この点については,独立の損害と考えるのではなく,慰謝料において考慮することとする。(エ)慰謝料50万円飼い主のペットに対する愛情はペットの財産的価値を超えて保護されるべきものであるところ,そのペットであるペットBが死亡したこと,本件の被告の不法行為の態様,特に,それが詐欺や動物傷害という故意に基づくものであり,本来ペットの生命身体を守るべき獣医師である被告が,飼い主である原告のペットBに対する愛情を利用して詐欺行為を働き,原告に治療費を負担させるとともに,ペットBに対して適切な治療行為を施すどころか死に至らしめたことは,獣医師に対する,飼い主である原告の信頼,社会的信頼を裏切るものであって,後記6(1)で記載するように,その被告の行為は,計画的,常習的であることも併せ考慮すると,極めて悪質であること,ペットBの葬儀費用として原告は2万8000円を支出したこと(甲C2)等本件の一切の事情を総合すると,被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するには50万円をもって相当と認める。(オ)弁護士費用10万円本件不法行為と相当因果関係ある弁護士費用損害金は,本件訴訟の難易,本件訴訟の経緯,請求認容額等に鑑みて10万円と認めるのが相当である。オなお,原告は,他の構成に基づく請求もするが,上記ア,イで認定判断した被告の行為の内容は他の構成より最も原告に対し精神的損害を与えるものであることからすると,上記エを超える損害を認めるべき構成はない。(5)よって,原告の請求は,被告に対し,64万6550円及びこれに対する不法行為後の日である平成16年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。3丙事件(日付は,平成16年のものについてはその記載を省略する。)(1)獣医学的知見証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の獣医学的知見が認められる。アフェレットの寿命(甲B3の3,乙B3)フェレットの寿命は5年ないし8年である。イフェレットの腸閉塞(甲B7,乙B2,7,9,10)(ア)病態フェレットは,咬癖,盗癖があり,誤飲をすることが多いが,1歳以上の個体ではこうした誤飲の発生頻度は低下する。また,毛球症は一般的に発生が見られるが,特に2歳以上の個体に好発するといわれている。通過困難である異物や毛球の多くが胃に滞留し,慢性の消耗性疾患を発生させる。それより小さい,例えば果物の種くらいのものは,十二指腸から空回腸に閉塞を引き起こす。(イ)診断総論嘔吐の認められる場合,異物による腸閉塞,胃腸炎,それ以外を念頭において問診,検査を行い鑑別する。(ウ)臨床徴候一般的に食欲低下,頻回な吐出する嘔吐等が認められるが,嘔吐が観察されないこともある。唾液亢進と前肢で口をぬぐうといった悪心を示す症状が見られる。身体検査では脱水を示す。重傷例では元気喪失,食欲廃絶等を示し,鼓腸,ショックに移行する。(エ)触診触診において,消化管内の異物が触れ,認識できる場合があり,閉塞部分を触ると嫌がり,鼓腸していればより腸閉塞の可能性が高くなるが,胃内異物は触診では分かりにくい。(オ)レントゲン検査単純レントゲン検査による診断は,胃腸内の異物やガスの有無で確認する。異物やガスが見られなくとも疑わしい場合は,硫酸バリウム又は水溶性ヨード系造影剤を用い,消化管造影を行い経時的観察をすれば,異物の有無が確認できる。特に,胃内異物は,単純レントゲン検査では確認できず,単純投与後数時間経って,バリウムが流れきってから見えてくることが多い。バリウムの投与により,異物が便中に排泄されることがよくある。バリウムは,投与後,正常であれば3∼4時間で全て直腸近くに流れていくが,確定的判断が得られなければ,6∼12時間位後まで撮影を行う。(カ)治療軽症例では,毛球予防剤の投与により,異物の排泄を促進させ,不完全閉塞の症例では,消化管の運動を刺激する薬剤の投与を行う。重症例や完全閉塞の症例では,外科的に異物の摘出手術を行い,手術を遅らせてはならない。術後12時間∼24時間は絶飲食として,食事が可能となるまでは,維持輸液と非経口的な抗生物質療法を行う。ウフェレットの腸重積(甲B1)腸重積は,腸の一部が中に潜り込む症状であり,通常は,触診,エコー,造影レントゲン検査で診断する。治療方法としては,通常は開腹して引っ張って治すが,壊死していれば,その部分を切除して吻合する。エ脱水,輸液,腎不全(ア)脱水の意義(乙B6)脱水とは,総体液量が正常以下に減少した状態であり,一般的には,嘔吐や下痢によって起こる場合が多い。(イ)小動物の輸液(乙B6,12,証人G,証人M)脱水は補液によって解消を図るが,重傷でなければ1日掛けて均一に投与し,より早い脱水の改善が必要な場合は,4∼8時間で補液を行う。輸液量は,維持必要量,脱水による不足量及び継続的喪失量を合計したもので計算される。維持必要量とは,総体液量と電解質を正常に保つために必要な液体の容量と電解質含量であり,1日に失われる量である。維持必要量は,不感蒸泄(呼気中の水蒸気,正常便の排出,汗は犬と猫では無視できる。)と感蒸泄(尿成分)に区分される。ケージで飼育の犬と猫における水分と電解質の維持必要量について丙事件別表1のとおりであるとの見解,犬の1日水分必要量について丙事件別表2のとおりであるとの見解,フェレットについて約60∼70ml/㎏/日との見解,犬の維持必要量は55ml/㎏/日であって,フェレットも同程度との見解(被告平成19年1月25日付準備書面)がある。(ウ)小動物の腎不全(甲B1,5,乙B6,丁・乙B3,証人G,証人M)腎不全とは,腎機能が低下し,異常(高窒素血症と尿濃縮能の低下)が持続する状態である。両側の腎臓のネフロンの約4分の3が機能しなくなったときに,BUNやCreが異常値を示す。急性腎不全においては,腎の障害は可逆的であるが,慢性腎不全は,不可逆的に腎が障害された状態である。急性腎不全の際,腎が不可逆的に障害を受けることによって,慢性腎不全に移行する。急性腎不全は,腎機能の突然の低下によって,障害を受けてから数時間から数日のうちに発症し,一般的に虚血又は中毒性物質による腎臓の障害によって起き,その主要な原因は,それぞれ丙事件別表3,4のとおりである。腎灌流量の低下は,腎臓に対する腎毒性や虚血性障害の危険性を増加させる。脱水と体液量の減少がおそらく腎灌流量の減少の最も一般的な原因である。既に存在する無症候性の腎機能性不全を有する高齢の犬や猫において,不適切な輸液療法しか行っていない状態における長時間麻酔は,腎虚血と急性腎不全の原因となることが多い。(エ)動物の手術の際の,脱水,全身麻酔の腎への影響(甲B1,2,6,8,証人G,証人M)脱水については,嘔吐,下痢を呈する疾患など体液及び電解質の著しい不均衡を呈する症例では,手術に伴う体液の喪失や麻酔,手術の侵襲も加わるため,循環血液量の減少や血液低下に伴うショックをきたす可能性がある。したがって,手術前に可能な限りこのような不均衡を輸液などにより是正しておくことが望ましい。脱水の程度は,身体検査でもある程度推測されるが,PCV,TPなどを測定し,できれば電解質を測定してその程度を判定する。腎は麻酔,手術に伴う低酸素,血流量の低下などによる影響を受け,機能不全を起こしやすく,これは最も気を付けなければならない術後合併症の1つである。特に機能が低下してはいるが臨床症状には現れていない潜在的な腎機能低下症の場合に,しばしば麻酔,手術に伴って症状が発現することがある。全身麻酔は,短期間における繰り返しを極力避けるべきである。オ血液検査(甲A7,30の1・3,43)(ア)血液検査について,被告動物病院,クラーク動物病院及びくらた動物病院で使用している基準値は,別紙「丙事件血液検査結果等一覧表の基準値欄に各記載のとおりである。
(イ)

ALT(GPT)が基準値より高いと,肝疾患,中毒,薬物などが
疑われる。
AST(GOT)が基準値より高いと,肝疾患,中毒,薬物,心疾患,骨格筋の障害などが疑われる。
ALP,ALKPが基準値より高いと,幼弱動物,肝疾患,胆管異常,くる病,骨折などが疑われる。
尿素窒素(BUN)が基準値より高いと,腎不全,尿毒症,尿路結石,脱水,消化管内出血などが疑われる。
クレアチニン(Cre)が基準値より高いと,腎不全,尿毒症,尿路結石,脱水などが疑われる。
リン(P)が基準値より高いと,幼齢,腎不全,食餌性,ビタミンD過剰,上皮小体機能低下などが疑われる。

開腹手術後,感染症の危険がある場合の再開腹手術(甲B8)
胃の切開を伴う開腹手術実施後,
胃壁の縫合が不十分で,
これに重なり,
手術創が開き,大網膜が体外に出ていた場合には,細菌感染による腹膜炎
の発症の危険があり,これが原因となって敗血症などの重篤な細菌感染の危険があるところ,それらがあれば,再度開腹手術による腹腔内の洗浄と再縫合を行い,これに併せて抗生物質の全身投与を行う。

エリザベスカラー(乙B1の1∼4)
エリザベスカラーとは,動物が,患部等を噛んだり舐めたりすることなどを防止するため,首に装着する襟巻き状の道具である。

(2)

認定事実
前記前提事実に証拠(甲A27,38,原告本人,後掲各証拠)及び弁論
の全趣旨を併せ考えると,次の事実を認定することができる

被告動物病院受診前のクラーク動物病院における診療経過(甲A30の1・2,証人G)
原告が,1月17日,ペットCをクラーク動物病院に受診させた際の血液検査結果は,
別紙丙事件血液検査結果一覧表」クラーク動物病院
の,「1月17日欄に記載のとおりである。
原告が,
5月27日,
ペットCをクラーク動物病院に受診させた際には,
腎臓機能障害を窺わせる明らかな症状は認められなかった。


被告動物病院における診療経過(甲A1∼6,28の1・2,29,乙A1の1∼4,2∼4,5の1・2,被告本人及び下記(3)で引用する各証拠。甲A1∼4,7,8,乙A1の1∼4,4,5の1・2,7,8,被告本人のうち,これに反する部分は採用しない。認定に際しての補足説明は,下記(3)において述べる。

(ア)

原告は,6月29日深夜,食欲不振で,ペットCが吐きたそうな動
作を繰り返すのを見たが,かかりつけのクラーク動物病院が7月2日の午前中まで休診であったため,毛球取りであるラクサトーンを舐めさせ様子を見た。念のため,24時間対応でフェレットを診てくれる動物病院を探し,被告動物病院のホームページを見つけた。

(イ)

原告は,6月30日早朝,ペットCが吐きたそうな動作をし,食欲
もなかったため,被告動物病院を初めて受診し,被告との間で本件丙契約を締結した(この際の被告の意図は事実であるが主観的なものであって,争点に直結するものであるから,下記(4)によって認定判断する。。)
原告が,被告に対し,ペットCの昨夜からの症状を伝えたところ,被告は,ペットCを連れて診察室に入った。
(下記(3)ア,イ参照)
被告は,診察室から何度か顔を出し,原告に対し,検便をしたら虫がいたので駆虫をする,血液検査をする,レントゲン写真を4枚撮ると言ったため,原告は了承した。しかし,被告が,検便,駆虫,血液検査,レントゲン写真4枚の撮影を実施したか否かは不明である。
(下記(3)ウ参照)
(ウ)

被告は,診察室から出てきて,原告に対し,腸に何か詰まっている
かもしれない,単純レントゲン検査だけでは分からないから造影レントゲン検査をしましょう,時間が掛かるから入院になると説明を受けたのでそれを了承した。
被告は,原告に対し,治療費の明細を示し,治療費として,初診・時間外・休日診察それぞれの診察料1575円・10500円・5250円,6月30日の入院料3150円を含む合計5万5545円を請求した。なお,その明細には,ペットホテル代は含まれていなかった。その際,被告は,原告に対し,被告の治療・手術等についての同意書(甲A5(乙A2)
)を示し,署名を求め,原告は署名した。
(エ)

原告は,7月1日午前9時過ぎ,かねてから予定されていた旅行に
行く前,ペットCと面会するため被告動物病院を訪れたが,被告の指示でガラスのドア越しにしか面会できなかった。被告は,その際,原告にペットCのものと称する造影レントゲン写真を示し,腸の動きが良くな
いと言った。原告は,被告に一泊旅行に行くのでペットCをもう一晩様子を見て欲しい,何かあった場合に電話を掛けて欲しいと携帯電話番号を被告に伝えた。
(下記(3)エ参照)
(オ)

被告は,
7月1日,
午後9時過ぎ頃,原告の携帯電話に電話を掛け,

ペットCちゃんがぐったりしています。今すぐに手術をしないと大変なことになります。手術に同意されますか?

手術しないと死んで,しまう。

と言ったため,原告は,手術をしなければペットCが死ぬと考え,同意しますと言った。その際,被告は,

手術費なんですが,胃に異物が詰まっていたら10万円,腸に詰まっていたら20万円掛かります。いいですか?

とも言ったので,原告は了承した。(下記(3)エ参照)
被告は,同日午後9時30分頃の本件丙手術の際,開腹をしたが,腸重積はなく,その解除はしておらず,また,胃を切開したが,胃に異物はなかった。なお,被告は,本件丙手術前に,適切な造影レントゲン検査によってペットCの消化管内の異物や消化管の閉塞を確認したことはない。また,被告が,手術の前後に血液検査を実施したか否かは不明である。
(下記(3)ウ,オ,カ参照)
(カ)

原告は,7月2日朝,宿泊先から直行し,被告動物病院を訪れ,ペ
ットCに会わせるよう求めたところ,被告は,

手術は成功しました。腸閉塞でした。異物はありませんでした。腸重積により小腸の一部が壊死していたので切除しました。

と言い,ペットCに会わせないまま,2週間の入院を迫った。そこで,原告は,被告に対し,不信感を持ち,転院させることにして,その旨被告に告げ,その後ペットCをガラスドア越しに見ることができたところ,ペットCは,点滴をされ,エリザベ
スカラーを装着されていた。
原告は,クラーク動物病院を訪れ,G獣医師に会えた同日午後5時30分,被告動物病院で緊急と言われて腸重積で小腸の手術をしたが様子がおかしいので転院をさせたい旨申し入れ,転院の了承をもらい,被告に電話を掛け,点滴とエリザベスカラーをそのままにして転院させることを依頼したが,被告は既に点滴とエリザベスカラーを外しているとのことであった。
原告が,被告動物病院を訪れ,ペットCの受け取りを求めたところ,被告は,原告に対し,明細を示し,治療費として合計22万7430円の支払を求め,原告はこれを支払った。また,被告は,原告に対し,アニコムに対する診断書料3150円を請求し,原告はそれを支払った。その際,被告は,ペットCについて,転院後のことには責任を負わない旨の誓約書(甲A6(乙A3)を原告に渡し,署名を求め,原告は,)
ペットCを早く退院させたかったため,署名した。
(キ)

被告は,本件丙手術実施時を含め,本件丙入院中,輸液を施すに際
し,ペットCの維持必要量,脱水の程度や嘔吐等症状に応じて加えるべき量及び現実の飲水等によって差し引くべき量を検討した上で,脱水の解除,予防を考えた輸液をしておらず,そのような輸液をする意思も能力もなかった(下記(3)キ参照)


被告動物病院受診後のクラーク動物病院における診療経過(甲A15∼26,30の1・2,43,甲B1,証人G)
(ア)

原告は,7月2日,被告動物病院から退院させたペットCをケージ
に入れ,
車に乗せ5分程運び,
そのままクラーク動物病院に入院させた。
G獣医師は,ペットCが入院当初元気がなかったので,一晩様子を見ることとした。クラーク動物病院の看護師は,同日午後8時頃,ペットCが,腹部の術創から飛び出していた大網の一部を舐めたり,噛んだり
しているのを発見した。そこで,G獣医師は,飛び出した臓器を腹部内に納める必要があること,
術創に臓器が飛び出していることからすると,
腹部内に何らかの問題がある可能性があるが,被告動物病院での手術の詳細が分からないため確かめる必要性が高いこと,腹部から臓器が飛び出していることから感染の危険性,腹膜炎発症の危険性があることなどから,開腹し,腹部の状態を確認し,その状態に応じた処置を取る必要があると判断して,原告の同意を得て,全身麻酔の上,開腹手術をし,腹腔内を調べ,元に戻し,洗浄して縫合した(本件丙後手術)

その手術所見は次のとおりである。皮膚と腹膜の縫合がほとんど外れており,大網の一部が体外に出ていた。
小腸は正常で,切開痕はなく(こ
の点について,被告は争っていない。,腸重積があったことを窺わせ)
るうっ血もなかった。胃には4∼5㎜程度のメスで切った浅い傷があったが,その縫合がほどけていて,糸がちょっと引っかかっている状況であって,その時点では胃の内容物は腹腔内に漏れていなかったが,放置しておくと,感染が起き,腹膜炎を起こし,重篤化する状況であった。肝臓は色が悪くなっていて肝機能に問題があることを窺わせる所見であった。
(イ)

G獣医師は,ペットCについて,7月3日に血液検査を実施したと
ころ,
その結果は,
別紙丙事件血液検査結果等一覧表」検査結果
の,「クラーク動物病院7月3日欄に記載のとおりであり,その結,
果と,
肝臓の病理検査の結果,
全身黄疸症状が現れていたことなどから,
ペットCは重篤な急性腎不全,急性肝不全を起こしていると判断した。また,原告は,同月8日,ペットCをくらた動物病院に受診させ,血液検査を受けさせたところ,その結果は,丙事件血液検査結果等一覧表」の「検査結果くらた動物病院7月8日欄に記載のとおりで


あった。同月3日の時点で,G獣医師は,ペットCは腎不全で数日後に
死亡する危険性が高いと判断していたが,ペットCを入院させて,日に一,二度の皮下補液等を施し,時々自宅に帰らせるという治療を平成16年中続けた結果,慢性腎不全は残ったものの,平成17年7月時点では,定期的な検診に通う程度で落ち着いた。
(3)

事実認定の補足説明
初診日
(ア)

被告は,初診日は6月29日であると主張し,被告本人は,同日は
ペットホテルとしてペットCを預かり,同月30日から入院の扱いとした,ペットホテル代はサービスした,乙A1・5の各1(カルテのマスターシート)に初診を6月30日と書いたのは誤記であるとそれに副う供述をし,乙A1・5の各2(カルテのプログレスノート)
,乙A1の
3(被告作成のカルテの注釈)にはそれに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記aないしeの点からすれば,甲A27・38(原告の
陳述書)
,原告本人に照らし,上記(ア)の各証拠は採用できない。

被告本人は,カルテのマスターシートの初診日を誤記した理由について説得的な供述をしていない。


被告の供述する診察をしたところ閉塞や異物の誤飲が疑われたペットCを入院でなくペットホテルで預かるとの扱いや最終的にその代金をサービスするとの扱いは不自然で信じ難い。


7月20日に被告自身が作成した甲A4(アニコムに対する診断
書)
,乙A4には,
初診日が6月30日と記載され,
発病日又は受傷日も?が付記されているものの6月30日と記載されていることは同月29日が初診日であるとの被告の主張と矛盾する。


診療費明細書においては初診料が計上されているが再診料は計上されておらず,6月30日までに診察は1回しかされていないことが窺われ,このことは同月29日と30日の2回診療したという被告の主
張と矛盾する。

前提事実ウのとおり,被告が,カルテを書き換えたこと,体重の記載が毎日されていて,それは計測の結果と供述するがその変化もないことからすると,本件においては被告動物病院におけるカルテの信用性が低い事情がある。


初診時の原被告間の遣り取りの内容,糞便検査,駆虫,血液検査を実施したか否か
(ア)

被告本人は,初診時頃,原告から,ペットCは前日から食物を食べ
ず,嘔吐があり,元気がなく,排便もなく,異嗜癖があると説明を受け,触診したところお腹にしこりがあったため,原告に対し,栄養剤を皮下に注射し様子を見る,閉塞や異物の誤飲が疑われるので,レントゲン検査や血液検査を受けた方が良いと述べたところ,原告から,心配なので預かって欲しいが検査は不要であると言われ,ペットCを預かったが,6月30日,来院した原告から,糞便検査,駆虫,血液検査等の諸検査を依頼されたので実施したと供述し,甲A1(診療費明細書)
,7(血
液生化学検査報告書)
,8(血液検査報告書)
,乙A1の2∼4・5の
2(カルテ類)
,8(被告の陳述書)にはそれに副う部分がある。そし
て,上記血液検査報告書には,同日の血液検査結果が,別紙丙事件血液検査結果等一覧表の血液検査結果被告動物病院6,,月30日欄のとおりであることの記載がある。(イ)

しかし,下記aないしcの点からすれば,甲A27,38,原告本
人に照らし,上記(ア)の各証拠は信用することができない。

上記アのとおり初診日についての被告本人,乙A1・5の各1・2(カルテ)の信用性が低いのであれば,初診時の遣り取りについての被告本人の供述や被告作成の証拠の信用性にも自ずと限界があると考えられる。


乙A1・5の各2には,レントゲン検査,血液検査,糞便検査,駆虫がいずれも6月29日の欄に記載があり,被告本人の上記(ア)の供述と矛盾する。


6月30日付の血液・尿・便検査報告書である甲A8には血液検査の記載はあるのに,糞便検査欄に結果の記載がない。


被告が実施したレントゲン検査の具体的内容,枚数及び時期並びにそれによって胃の完全閉塞が確認できたか否か
(ア)

甲A1,2,9∼12・28の各1・2,29,本件丙検証の結果,
原告本人,被告本人及び弁論の全趣旨によると,①原告は,原告代理人弁護士を通じて,被告に,本件丙検証の際,レントゲン写真4枚(8カット)を返還したが,その時点で,被告動物病院においては,ペットCのものとして他のレントゲン写真は存在しなかったこと,②原告代理人のその返還に対して,被告は他にレントゲン写真が存在するとの異議を述べていないこと,③被告は,原告に対し,被告本人が7月2日に撮影したと供述するレントゲン検査についての費用を請求していないことが認められるから,それらの事実からすると,被告は,ペットCについては,多くとも原告代理人が被告に返還した4枚(8カット)のレントゲン写真(甲A9∼12の各1・2)しか撮影していないと推認できる。そして,甲A9∼12の各1・2のレントゲン写真には,消化管内の異物ないし消化管の閉塞が窺える造影レントゲン写真は含まれていないと認められる(当事者間に争いがない。
)ことからすると,被告におい
て,本件丙手術前に造影レントゲン検査によって,消化管内の異物や消化管の閉塞を確認したことはないと推認できる。
(イ)

この点,被告本人は,6月30日,午後3時に胸と腹部の単純レン
トゲン写真を2枚ずつ,午後3時30分に全身の造影レントゲン写真を2枚,午後6時30分に全身の造影レントゲン写真を2枚撮影した,造
影レントゲン写真で異物を確認した,7月2日の午前6時30分にも単純レントゲン検査,午前7時,午前9時にも造影レントゲン検査を行った,これらのレントゲン写真は,原告がかかりつけの獣医師と相談するために借りることを希望したため,被告は,原告に対し,6月30日撮影分は7月1日に貸し出し,7月2日撮影分も貸し出したが,原告からは6月30日午前6時30分撮影分,7月2日午前7時撮影分,午前9時撮影分を返還されたのみであって,被告が,異物ないし閉塞を窺わせる所見を確認した6月30日の午後3時30分の造影レントゲン写真と7月2日の午前6時30分の単純レントゲン写真は,返還を受けていないと供述し,乙A1・5の各2∼4,8にはそれに副う部分がある。(ウ)

しかし,下記aないしcの点からすれば,甲A27,38,原告本
人に照らし,上記(イ)の各証拠は,採用することができない。

7月1日,旅行に赴く原告が,レントゲン写真を借り受けることは考え難い。


7月1日当時,ペットCは被告動物病院において入院中で,被告の供述によると少なくとも経過観察がされるべき状態であったのに,その診断に不可欠ともいうべきレントゲン写真をその診断をしようとする獣医師である被告が貸し出すとも考え難い。


甲A28の1・2(差入書)
,29(報告書)
,検証の結果及び弁
論の全趣旨によると,
被告は,
7月2日にレントゲン写真を貸し出し,
その際,原告に甲A28の1・2の差し入れを求め,本件丙検証時に原告代理人からレントゲン写真を返却された際,甲A28の1・2を原告代理人に交付した事実が認められるのに,<ア>甲A28の1・2は,同月1日のレントゲン写真の貸出の際に差し入れてもらったと供述しており,上記事実に明らかに反すること,<イ>6月30日撮影分の貸出の際は差入書を求め,後の貸出である7月2日撮影分の貸出の
際はそれを求めず,<ウ>検証の期日にレントゲン写真の返却を受けた際,それが貸し出したうちの一部であり,乙A7を参照すればそのことを確認できたはずであるのに,一部のレントゲン写真が返却されていないことを確認しないことは不自然である。

7月1日朝の原告来院時及び同日の電話時等の被告の原告に対する説明内容
(ア)

被告本人は,7月1日朝,来院した原告に対し,造影レントゲン検
査によって消化管内の異物ないし消化管の閉塞が疑われる,ペットCがぐったりしていたことから,消化管内の異物ないし消化管の閉塞かも知れず,完全閉塞だったら死ぬかもしれないと話した,それに対し,原告は,少し考えたい,かかりつけもあるのでと答えた,ペットCの症状は朝と特に変わらなかったが午後9時過ぎに原告の旅行先に電話を掛け,手術内容とそれに伴う危険性を説明した上,手術をするかを尋ね,了承を得たと供述する。
(イ)

しかし,下記aないしcの点からすれば,甲A27,38,原告本
人に照らし,上記(ア)の証拠は採用することができない。

被告本人の上記(ア)の供述のとおりだとすると,原告は,危険性が高いと説明を受けた7月1日の朝には手術を希望しないのに,症状が変わらない午後9時過ぎには手術を希望していることとなり,不自然である。


被告本人の供述のとおり午前9時過ぎと午後9時過ぎとで症状に変化がないのであれば,手術を始める時間としては遅く,多額の追加料金が掛かる午後9時に電話を掛けるという約束をした理由が不明である。


被告本人の供述によれば,原告は,かかりつけ医に相談するため,レントゲン写真まで借り出し,手術を依頼するか否かの判断を留保し
ていたということであるところ,<ア>前記のとおり,原告は,7月1日に被告からレントゲン写真を借りてはいないこと,<イ>原告は同日には旅行に出かけ,手術を受けるか否かを判断するに先立ち,かかりつけの動物病院であるクラーク動物病院に受診や相談はしていないのに(甲A30の1・2)
,この点について,原告が,被告に対し,あ
えて虚偽の事実を述べる理由は見当たらないこと,<ウ>被告本人も,同日午後9時過ぎの電話において,かかりつけの獣医師との相談結果について,原告がどのような話をしたかは何ら供述をしていない。オ
本件丙手術の内容,原告が7月2日被告から説明を受けた本件丙手術の内容及び甲A4の手術名欄の小腸部分切開術)(の成立が真正か否か(ア)

甲A4の手術名欄の小腸部分切開術)(については,該当部分

の筆跡が同じ甲A4の他の部分の筆跡と一見して酷似していることに原告本人を合わせ考えると,真正に成立した,即ち,被告がその意思に基づき作成したものと認めることができる。
そして,上記ウのとおり,被告は,本件丙手術前に,造影レントゲン検査によってペットCの消化管内の異物や消化管の閉塞を確認していないこと,甲A4によって認められる被告作成のアニコムに対する診断書に手術名として腸重積解除処置(小腸部分切開術)と記載があること,甲A28,36,原告本人によって認められる被告は原告に対し,本件丙手術について,

腸閉塞でした。異物はありませんでした。腸重積により小腸の一部が壊死していたので切除しました。

と説明したこと,しかし,他方,本件丙後手術の際,小腸に切開痕がなかったことからすると,本件丙手術の際,胃に異物はなく,腸重積も認められなかったと推認できる。
(イ)

この点,被告は,甲A4の手術名欄の小腸部分切開術)(は原

告において偽造したものであるとして,その真正な成立を争い,本件丙
手術の内容は,胃を切開し,幽門部を完全閉塞させていた毛球を取り出したものである,その際腹部を確認したところ小腸に重積が見つかったので解除した,原告が7月2日に来院した際,その旨の説明をしたと供述し,被告の陳述書である乙A8はそれに副い,それを裏付ける書証として乙A1の2∼4・5の2には本件丙手術の内容についてその旨の記載がある。
(ウ)

しかし,①被告が作成をしたと認めている診断書兼医療照会同意書
である乙A4(甲A4のうち上記小腸部分切開術)(部分を除いたもの。
)に被告がもともと目的としていて現に実施したと供述する胃の
切開及び毛球の取出の記載がないこと,②本件丙手術前に,適切な造影レントゲン検査によってペットCの消化管内の異物や消化管の閉塞を確認したことはないのに,上記(イ)の各証拠は,それをしたことを前提としていていることからすると,信用性に重大な疑義があり,これに反する甲A27,38,原告本人に照らし,採用できない。

本件丙手術の前後に血液検査を実施したか否か
(ア)

被告本人は,本件丙手術の直前に血液検査を実施し,本件丙手術後
にも血液検査を実施したと供述し,乙A8にはそれに副う部分があり,術後の血液検査については,乙A1の2∼4,5の2にもこれに副う部分がある。そして,カルテには,術後の血液検査結果が,別紙丙事件血液検査結果等一覧表の血液検査結果被告動物病院7月,,1日欄のとおりであることの記載がある。(イ)

しかし,①上記イのとおり,6月30日の血液検査結果が信用でき
ないこと,②術前及び術後に実施したとする血液検査の料金が請求されていないこと,③術前の血液検査については実施されたことさえカルテに記載されていないことからすると,上記(ア)の各証拠を採用することはできず,本件丙手術の前後に血液検査が実施された可能性は低い。

被告の本件丙手術の術前,術中及び術後の輸液管理の状況
(ア)

乙A1の2には,6月29日欄から7月2日欄まで毎日ペットCの
体重として820gと記載されていて,脱水と輸液に関し,6月29日欄にきのうからたべれない嘔吐(Vomit),(+++),脱水5%(ひふつまみ+BT),HART20㏄/sc,同月30日欄
に嘔吐が日に6回,
唾液のみ(salivaonly),HART30㏄/24h
,7月1日欄に嘔吐が日に3回,
HART30㏄/24h
,同月2日欄に絶食,絶飲HART40㏄/24h

との記載がある。
(イ)

上記(ア)の記載を信用するとすれば,下記aないしeのとおり,6
月29日から7月2日にかけて慢性的に輸液不足があったことは明らかであるし,被告は,ペットCを診療していた当時,脱水解除ないし予防のための必要な輸液量を判断した上で輸液をする意思も能力もなく,現実にも,その点を考慮して輸液量を定めた輸液をしたことはないと推認できる。

ペットCの体重は,5月27日は860gであったと認められ(甲A31の1・2)
,乙A1の2にも6月29日から7月2日まで82
0gであったとの記載があることからすると,本件丙入院中は800g程度であったと推認できるところ,上記(1)エ(イ)によれば,1日当たりの維持必要量は最も少ない被告の主張によるとしても44ml程度で,嘔吐があることによる継続的な喪失量をも考慮した輸液が必要であったものと解され,さらに,6月29日の時点では,5%の脱水を解除するために40ml程度の輸液が必要であったものと解される。

術前については,輸液量が,6月29日は20ml,同月30日,7月1日は30mlにとどまり不十分といえ,飲水がない限り,脱水症状を解除できないと解されるところ,下記(a)ないし(c)の点からすれ
ば,その程度の飲水はなく,本件丙手術の時までに脱水は解除されていなかったと推認でき,したがって,被告が実施したと主張している術前の血液検査も実施していないことが窺われる。
(a)

6月28日からものが食べられず,同月29日以降,+++)


と評価されるような嘔吐,又は日に何回もの嘔吐があったこと,まして嘔吐しても唾液しか出てこないような状態であったことからすると,仮に被告の主張するようにフェレットの1日の飲水量が100ml程度あるとしても,ペットCにも同様の飲水量があったとは到底考えられない。
(b)

術前に5%の脱水があり,しかも上記(a)のような状態であっ

たにもかかわらず,ペットCが十分な飲水をし,それによって脱水が改善したとすれば,飲水量,又は少なくとも術前の血液検査結果をカルテに記載するのが通常であると考えられるところ,術後の血液検査結果の記載はあるのに,飲水量及び術前の血液検査結果の記載がない。
(c)

脱水が解除されれば,その分体重が増加すると考えられるとこ

ろ,6月29日から手術のあった7月1日及び手術後である同月2日にも体重の変化が全くない。

術中についても,①カルテには術中の輸液量についての記載がないこと,②上記bのとおり,術前にも輸液量が不足し,本件丙手術時までに脱水が解除されていなかったことに上記b(c)の点を併せると,本件丙手術時にも,少なくとも適切な輸液がなされていなかったことが窺われる。


術後についても,輸液量が,7月1日は30ml,同月2日は40mlにとどまり,飲水がない限り輸液量が不足すると解されるところ,同月2日欄に絶食,絶飲との記載があり,上記(1)イ(カ)のとおり
術後12時間∼24時間は絶飲食とされるべきであり,これに,同月1日の術後及び同月2日は絶飲食とされていたと推認できることと上記b(c)の点を併せると,本件丙手術後の輸液も不足していたものと推認できる。

輸液は本件における重大な争点であったのに,被告が本訴において輸液について具体的で有意な主張を初めてしたのは,被告本人尋問後である(被告平成19年1月25日付準備書面(6))上に,その主張においても,嘔吐の点,絶飲食の点の顧慮は一切なされておらず,被告本人の供述においてさえ確認していないことを認めている1日当たり100ml以上の飲水量で辻褄を合わせるものである。

(ウ)

カルテの記載の全部又は一部が信用できないとした場合の輸液管理
については,後の被告の作為により輸液量が記載されたとすると,後に作成したものでさえ輸液不足の内容であることとなり,被告はペットCを診療していた当時も輸液については本来必要な量より少ない量でよいとの判断をしていたとの可能性が高いことに上記(イ)eを総合すると,この場合も,被告は,ペットCを診療していた当時,脱水解除ないし予防のための必要な輸液量を判断した上で輸液をする意思も能力もなく,現実にも,その点を考慮して輸液量を定めた輸液をしたことはないと推認できる。
(エ)

この点,被告本人は,輸液,栄養水の飲水等を行い脱水の補正を行
い,
術前に脱水がないことを血液検査において確認した後手術を行った,術後血液検査によって脱水がないことを確認した,1日に与えていた輸液量はカルテ記載の2倍であると供述し,乙A8にも,概括的であるが適切な輸液管理をしていた旨のこれに副う記載がある。
しかし,上記(イ)及び(ウ)の点,被告本人の輸液量に関する供述はあいまいかつ変遷していること,輸液量算出の根拠についてもあいまいな
供述しかされていないこと,その供述と最終的な主張と一致もないことに照らし,採用できない。
(4)

被告の責任
詐欺による不法行為について
前記認定事実によれば,被告は,初診時,異物が詰まっているかもしれないとして,造影レントゲン検査を実施することを理由に本件丙入院を勧め,さらに,本件丙手術を実施するに先立ち,消化管内に異物が認められるか及び消化管の閉塞の有無を判断するための造影レントゲン検査を実施すべきことを認識しながらこれを実施せず,又は実施したのに異物や閉塞が窺えなかった。しかし,被告は,手術の適応が認められないのに,原告に対しては,造影レントゲン検査を実施したが,その結果,手術を受けないと危ないと説明して本件丙手術を勧めた。これらのことからすると,被告は,本件丙契約の締結の当時,既に,ペットCについて,造影レントゲン検査をせずに,手術の適応を判断しないまま,又は造影レントゲン検査をして消化管内異物ないし消化管の閉塞が認められず,その適応が確認されなくとも,原告に対し,手術を実施しなければ,ペットCは死亡するなどの虚偽の事実を告げ,
手術の実施についての承諾を得て,
手術を実施し,
原告から手術代等の治療費を得る意図があったのに,原告にその被告の意図を秘し,本件丙契約を締結したと推認することができ,これに反する乙A8,被告本人は採用できない。
そうすると,被告は,本件丙契約締結に際し,原告に対し,虚偽の事実を告げ,それによって原告は本件丙契約を締結したものであるから,被告のその行為は詐欺といえ,不法行為(民法709条)に該当する。

動物傷害による不法行為について
上記(3)オによると,本件丙手術時に客観的には胃内の異物や腸閉塞はなく,上記(1)イによると,特に胃内異物は,単純レントゲン検査では確
認できず,造影レントゲン検査において消化管内の異物や消化管の閉塞を確認した上で,重症例や完全閉塞の場合に手術をすることが原則であるのに,本件丙手術前に造影レントゲン検査によって異物や閉塞の確認がされていない以上,本件丙手術は適応がなかったことは明らかであること,さらに,本件においては,上記アのとおり,被告において本件丙手術の適応を検討する意思はなかったことを併せ考えると,本件丙手術は,正当な業務行為とはいえず,動物傷害といえ,不法行為に該当する。

上記ア,イの不法行為と結果,損害との間の因果関係について
(ア)

上記アの被告の詐欺がなければ,原告は,被告との間で本件丙契約
を締結せず,被告動物病院における治療費を被告に支払うこともなかったものであるから,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,その全額の支払(下記エ(ア))を求めることができる。
(イ)

下記aないしdの点からすると,上記ア,イ記載の不法行為とペッ
トCの慢性腎不全との間には因果関係が認められる。

上記アの不法行為と本件丙手術
上記アの被告の不法行為がなければ,原告は,被告との間で本件丙契約を締結せず,
ペットCに本件丙手術を受けさせることもなかった。


本件丙手術の実施と本件丙後手術の実施
本件丙手術の際の縫合等の手技に問題があった否かをおいても,被告が,本件丙手術をしなければ,ペットCの腹部に術創ができることはなく,それができなければ,そこから小腸の大網部が露出したことによって,感染の危険が生じることはなく,ペットCが本件丙後手術を受けざるを得なくなることもなかった。
仮に,G獣医師にエリザベスカラーを再度装着する義務があり,エリザベスカラーの装着があった場合,小腸の大網部が露出しなかったとの立証があったとしても,それは,共同不法行為が問題となるのみ
であって,それによって,因果関係を否定すべき事情とはならない。c
本件丙手術及び本件丙後手術とペットCの7月3日の重篤な急性腎不全及び急性肝不全
(a)

①ペットCについては全身麻酔の上,本件丙手術と本件丙後手
術が連日行われ,上記(1)エからすると,その侵襲は極めて大きいこと,②その直後である7月3日に急性肝不全及び重篤な急性腎不全となっていたこと,③上記(2)イの症状からして,被告動物病院の初診時である6月30日時点で少なくとも急性腎不全の症状があるとは窺われず,上記(3)キのとおり,被告動物病院においては,少なくとも食欲不振と吐き気が認められたペットCについて,脱水解除ないし予防のための必要な輸液量を判断した上での輸液がされていなかったこと,④上記(1)エのとおり,脱水時に全身麻酔が行われた場合,腎臓への血流量の維持が困難となり,急性腎不全を発症する可能性が十分あること,⑤他に急性腎不全を生じさせるような事情が窺われないことに鑑みると,7月3日の急性腎不全及び肝不全は,本件丙手術ないし本件丙後手術自体の侵襲,そのいずれかの際の脱水等による腎臓への血流量の維持困難,本件丙手術ないし本件丙後手術によって施された麻酔による影響のいずれか,又はそれらが複合作用して生じたと推認できる。
(b)

なお,被告は,7月1日の本件丙手術後の血液検査におけるB

UN,Cre,AST(GOT)ALT(GPT)の値からして,,
その時点の腎障害や肝障害はないから上記(a)とはいえないと主張するが,被告が,本件丙手術直後の血液検査を実施したとは認められず,実施したか否かは不明であること,本件丙後手術がペットCの急性腎不全や急性肝不全に何らかの影響を与えていたとしても上記bのとおり本件丙後手術を余儀なくされたのは本件丙手術の実施
によることからすると,この点の被告の反論は上記(a)の結論を左右するものではない。

7月3日の重篤な急性腎不全とその後の慢性腎不全
上記(1)エのとおり,急性腎不全は,腎が不可逆的に障害されることによって,慢性の腎不全に移行すること,7月3日の急性腎不全は重篤なものであったこと,その後の症状の経過及び他に慢性腎不全を発症させるべき事実は窺えないことからすると,その後の慢性腎不全は,同日の重篤な急性腎不全によると認められる。


損害
(ア)

被告動物病院における治療費等

28万6125円

(イ)

クラーク動物病院における治療費(甲A15∼25)
57万9890円

(ウ)

慰謝料

30万円

飼い主のペットに対する愛情はペットの財産的価値を超えて保護されるべきものであるところ,そのペットであるペットCが急性腎不全と急性肝不全を経た後,慢性腎不全が残存していること,特に急性腎不全は一時は救命も困難な状態であったのを,クラーク動物病院での長期間の療養によって,それを脱したものであるが,その治療に費やした原告の負担は著しいものであったこと,本件の被告の不法行為の態様,特に,それが詐欺や動物傷害という故意に基づくものであり,本来ペットの生命身体を守るべき獣医師である被告が,飼い主である原告のペットCに対する愛情を利用して詐欺行為を働き,原告に多額の治療費等を負担させるとともに,ペットCに対して適切な治療行為を施すどころか,後遺障害を負わせるに至ったことは,獣医師に対する,飼い主である原告の信頼,社会的信頼を裏切るものであって,後記6(1)で記載するように,その被告の行為は,計画的,常習的であることも併せ考慮すると,極め
て悪質であること等本件の一切の事情を総合すると,被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するには30万円をもって相当と認める。
(エ)

弁護士費用

15万円

本件不法行為と相当因果関係ある弁護士費用損害金は,本件訴訟の難易,本件訴訟の経緯,請求認容額等に鑑みて15万円と認めるのが相当である。

なお,原告は,他の構成に基づく請求もするが,上記ア,イで認定判断した被告の行為の内容は他の構成より最も原告に対し精神的損害を与えるものであることからすると,上記(ア)ないし(エ)を超える損害を認めるべき構成はない。

(5)

よって,原告の請求は,被告に対し,131万6015円及びこれに対
する不法行為後の日である平成16年7月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。
4
丁事件(日付は,平成16年7月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

獣医学的知見
証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の獣医学的
知見が認められる。

犬の慢性腎不全(甲B1,8の2,10,11,乙B1,3)
(ア)

意義等
慢性腎不全とは,ネフロンの機能喪失が数か月ないし数年以上を掛け
て進行し,腎臓が十分な機能を果たさなくなった状態をいう。尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)は,ネフロンの約75%が機能を失わないと異常値を示さない。
(イ)

国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の病期分類(以下IRIS分類という。)は,丁事件別表のとおりである。
(ウ)

宮本賢治獣医師の病期分類(以下宮本分類という。

第1段階
ネフロンの損傷が75%未満にとどまる初期段階では,代償機能により損傷が覆い隠される。この段階の末期になると,多尿や多飲多渇などが認められる場合がある。
したがって,BUNやCreの上昇は見られない。


第2段階
ネフロンが最低でも正常の75%程度失われた状態で,窒素血症や貧血などの臨床病理学的異常は存在するが,尿毒症に起因した臨床症状はまだ認められない。この段階では,BUN>25∼80mg/dℓ,Cre>2∼4mg/dℓ及び早朝尿の尿比重<1.030となる。


第3段階
窒素血症のほかに尿毒症に起因する臨床症状が存在する状態であ
る。臨床症状は第2段階の腎機能不全状態程度の軽いものから,末期の不全状態で重度な尿毒症の全身状態を呈するものまで様々である。腎不全段階では,BUN>80mg/dℓ,Cre>4mg/dℓの窒素血症を示すのが普通である。

(エ)

その他の症状等
慢性腎不全の場合,元気喪失,運動不耐性が見られ,特に貧血時に見
られる。尿毒症になると,嘔吐や下痢をはじめ様々な症状が強く現れ,中にはけいれんなどの神経症状を示すものもある。
血液検査及び尿検査について,中等度及び重度の腎機能不全の犬の典型的な臨床データとしては,別紙丁事件血液検査結果等一覧表及び丁事件尿検査結果等一覧表の腎不全の典型的な臨床データ欄に

各記載のとおりである。
(オ)

検査,治療法
臨床では,血液検査によって,BUN,Creの値を測り,腎機能を
評価する。また,腹部レントゲン検査により,腎臓の大きさや結石症の有無を調べる。
一度低下した腎機能の回復をすることはできない。
しかし,
輸液療法,
食事療法,薬物療法などにより進行を抑えることはできる。

血液検査(甲A1の1,13の1∼4,B2,6,乙A9の1∼4,B8,9)
(ア)

検査値は,同じ検体を違う検査所で検査をした場合,全く同じ数値
にはならないが全く違う数値が出ることもない。
(イ)

血液検査について,ニュータウンペットクリニック及び被告動物病
院で使用している基準値並びに各文献記載の基準値は,別紙丁事件血液検査結果等一覧表の基準値欄に各記載のとおりである。(ウ)

BUNが基準値より高いと,腎不全,尿毒症,尿路閉鎖,消化管出
血などが疑われる。
クレアチニンが基準値より高いと,腎不全,尿毒症,尿路閉鎖,腎機能障害などが疑われる。Creは,BUNよりは徐々に上昇する。リン(P)が基準値より高いと,腎不全,組織損傷,骨吸収などが疑われる。
ヘマトクリット(赤血球容積)が基準値より低いと,貧血,出血,造血機能低下などが疑われる。
ALT(GPT)が基準値より高いと,肝機能障害,低酸素症などが疑われる。
AST(GOT)が基準値より高いと,肝機能障害,筋肉壊死などが疑われる。

ALPが基準値より高いと,肝機能障害,ストレス,クッシング,胆汁うっ滞,腫瘍などが疑われる。

蘇生措置(甲B4,5,6,乙B2)
(ア)

蘇生措置の手順
原則として,①気道確保,②人工呼吸(換気と酸素化),③循環の維

持(心マッサージ)
,④薬剤の使用,⑤電気的処置の優先順位に従って蘇生措置をする。
(イ)

死後の温度変化
室温や死因によっても左右されるが,通常,動物は死亡から約1時間
経過後に冷たくなり,約10分経過後に触って冷たいと感じるほど冷えてしまうことはない。
(2)

認定事実
前記前提事実に証拠(甲A17,18,原告本人,後掲各証拠)及び弁論
の全趣旨を併せ考えると,次の事実を認定することができる。

ニュータウンぺットクリニックにおける診療経過(甲A1の1・2,B3,6)
原告及びその母は,15日から22日までの間,嘔吐するなどして具合が悪くなったペットDを,ニュータウンペットクリニックに受診させた。同クリニックのN獣医師が,血液検査を実施したところ,別紙丁事件血液検査結果等一覧表の検査結果ニュータウンペットクリニック,
欄に記載のとおりであったため,肝臓と腎臓が悪く,慢性腎不全であると判断して点滴治療を施した。
同クリニックでの治療中,ペットDの状態は悪化していった。


被告動物病院における診療経過等(甲A2∼5,19,乙A2,被告本人及び下記(3)で認定に用いた証拠。甲A13・乙A9・10の各1∼4,11,被告本人のうち,これに反する部分は採用しない。認定に際しての
補足説明は,下記(3)において述べる。

(ア)

22日午後11時頃,ペットDはけいれんを起こした。原告は,ニ
ュータウンペットクリニックが診察時間外であったことから,ペットDを被告動物病院に受診させた。原告は,被告に対し,他医にかかっていること,肝臓と腎臓が悪いと伝えられており,点滴治療を受けていること,けいれんを起こしたことなどを説明した。
ペットDは,この時点で,客観的には,重篤な慢性腎不全によって,死亡の危機に瀕した状態であった(下記(3)ア参照)

被告は,原告に対し,概ね,ペットDは,24時間体制の点滴を受けた方がよい,診断のため尿検査,血液検査,糞便検査及びレントゲン検査をする,慢性腎不全については,4,5日で改善し,退院できる旨の説明をした(下記(3)イ参照)
(この際の被告の意図は事実認定の問題
であるが主観的なものであって,争点に直結するものであるから,下記(4)において認定判断する。。なお,この際,原告が被告に検査内容を)
具体的に指示したことはない(下記(3)ウ参照)
。また,被告は,この
説明の前提である診断に際しても,またその後も,血液検査を実施していないし,尿検査及び糞便検査をしたかは判然としない(下記(3)エ,オ参照)

原告は,ペットDに入院治療を受けさせることとし,Hが同意書(甲A5(乙A2)
)に署名をし,被告との間で本件丁契約を締結した上,
2日分の治療費として合計7万8015円を支払った。
(イ)

原告は,23日の朝及び夕に被告動物病院を訪問したが,ペットD
には会えなかった。被告は,同日夜,原告に対して電話を掛けて,ペットDの治療費についての説明をした。
(ウ)

原告は,24日午前8時56分に自宅の固定電話から被告動物病院
に電話を掛けたがつながらず,午前9時2分(通話時間約2分)に再度
電話を掛けたところつながった。
その電話において,
原告は,被告から,
ペットDが大分良くなったとの説明を受け,被告に対して,これからペットDの面会に行く旨を話した。
その時点で,
ペットDは死亡していた,
ないし,死に瀕していたが,被告は,原告に対し,それを秘し,一般論として,心肺停止になった場合には蘇生措置を実施すること,その場合1万5000円かかることを説明し,原告の承諾を得た。原告は午前9時22分(通話時間約7分)
(甲A4)
,ニュータウンペットクリニッ
クに電話を掛けて経過報告をしたところ,N獣医師より,ペットDを入院させて4,5日点滴を受けるより,自宅で生きさせた方がよいのではないかとのアドバイスを受けたため,すぐに退院させるべく被告動物病院に向かった。午前10時2分頃,被告は,蘇生措置を実施していないのに,Hの携帯電話に連絡をし,心停止しているため蘇生措置を実施していると告げた。それに対し,Hは,被告に対し,あと10分で被告動物病院に到着する旨を答えた。
(下記(3)カ参照)
原告及びHは,10時10分頃に被告動物病院に到着した。その時には,ペットDは既に慢性腎不全により死亡しており,処置台などにも特に緊急処置をしたような形跡はなく,原告がペットDに触れると冷たいと感じた(下記(3)ア参照)

ペットDの死亡を巡って,原告が,被告動物病院で,植木鉢などを壊し,警察官が呼ばれた。その後,最終的に,被告は,原告にペットDを引き渡し,原告は,被告に対し,治療費として合計11万2140円を支払った。

原告の精神疾患等(甲C2∼8)
原告は,ペットDの死亡後,抑うつ症状や円形脱毛症を生じ,生活及び仕事に支障をきたし,平成16年12月1日,東京女子医科大学病院精神
科を受診してうつ病と診断され,その後,通院したが,通院中もリストカット,大量服薬を繰り返した。平成18年4月以降,症状が悪化し,数回飛び降りを試み,同年6月21日,実家2階から飛び降り,体の痛みを訴え,救命救急を受診し,同月27日から同年8月6日までの間,躁うつ病(混合状態)との診断により医療法人社団聖美会多摩中央病院精神科に入院し,治療を受けた。
原告は,同年8月18日,それまで勤務していた株式会社CHIKARAを退職した。
(3)

事実認定の補足説明
初診時のペットDの症状の程度とペットDの死因
下記(ア)ないし(エ)の点からすると,ペットDの24日当時の慢性腎不全は死亡の危機に瀕するほど重篤であったと推認することができ,他の死亡原因は特段窺われないことも併せ考えると,ペットDの死亡原因は慢性腎不全であったと認められる。
(ア)

ニュータウンペットクリニックにおける15日の血液検査の結果に
よれば,BUNが216.3,Creが2.7,Pが9.8であって,いずれも基準値を超えている(上記(1)イ(イ))
。そして,Creは,
IRIS分類でステージⅢ(尿毒症性腎不全初期)
,宮本分類で第2段
階に分類される値であり,中等度の腎不全の犬の典型的な臨床データに近い(上記(1)ア(イ),(ウ))
。さらに,BUNは非常に悪く,宮本分
類では第3段階に分類される値であり,重度の腎不全の犬の典型的な臨床データである155をはるかに上回る(上記(1)ア(エ))

(イ)

ニュータウンペットクリニックにおいて,ペットDは,通院による
点滴投与を受けていたものの,症状は悪くなっていた。
(ウ)

尿毒症になると,嘔吐をはじめ様々な症状が強く現れ,けいれんな
どの神経症状を示すものもあるところ,ペットDは,嘔吐をしたり,け
いれんを起こしたりしていた。
(エ)

M医師も,上記(ア)の血液検査の結果を前提とすれば,ペットDが
慢性腎不全により死亡した可能性も十分あると判断しているし(証人M)
,被告も,ペットDは慢性腎不全でいつ死んでもおかしくない状態であると思っていた(被告本人)


初診時の被告のペットDの予後についての原告への説明の内容
(ア)

被告は,原告が,ペットDの余命がいくばくもないと判断した上,
被告から,
検査や治療法について,
その費用についての説明も十分受け,
被告に対し,ペットDが死んでしまっても責任は取れないとの申し入れを了承した上,基本的には対症療法をして,一晩中看護をして欲しいとの依頼をして本件丁契約を締結したものであって,
その際,
原告に対し,
腎臓はそれほど悪くなく,24時間体制で点滴治療を行えば,4,5日で良くなると思われると話したことはないと主張し,乙A1の2,乙A11(被告の陳述書)
,被告本人には,これに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記aないしdの点からすれば,甲A17・18(原告の
陳述書)
,原告本人に照らし,上記(ア)の各証拠は採用することができ
ない。

原告自身が被告の治療にかかわらず,症状が改善する余地がなく,余命がいくばくもないと判断していたのに一晩中の看護を依頼するとの被告の上記主張は,やや不自然な内容である。


被告本人の供述は,上記(ア)のような遣り取りがされたのが被告動物病院での諸検査の前後かなどの重大な点についてもあいまいであって,乙A11も内容が判然としない。


上記アのとおり,同じ時点についての被告本人の供述は不自然で到底採用し難いものである。


下記エ,カのとおり,被告においては実施していない血液検査,蘇
生措置を実施したと虚偽の事実を告げ,原告にその費用を請求している。

治療及び諸検査の実施に関する初診時の遣り取りの内容
(ア)

被告本人は,初診時に,原告から,部位及び10枚という枚数の点
も含めレントゲン検査の実施,1日2回という頻度の点も含め血液検査の実施,尿検査の実施,糞便検査の実施を指示され,使用薬剤も特定して指示されたため,ペットDに対し,これらの検査を実施し,薬剤の投与をしたと供述し,乙A11にはそれに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記a,bの点からすれば,甲A17,18,原告本人に
照らし,上記(ア)の各証拠は到底採用することができない。

原告が,獣医師である被告に対し,上記のような具体的な指示をするとは考え難い。ことに,本件丁入院中にレントゲン検査を計10枚も実施し,血液検査を4回も実施することについては,被告本人もその意義は乏しく,その結果によって,特に治療方法が変えられたこともなかった旨の供述をしていることからすれば,あえて原告がそのような検査の要求をするというのは考え難い。


また,仮にそのような要求がなされれば,通常の獣医師であれば,そのような検査を実施する獣医学的必要性に乏しいことを説明をした上,それでも要求された場合は,その検査を実施することを拒否するか,少なくとも強く説明すると考えられるのに,そのような経過について被告本人は何ら供述していない。


血液検査を実施したか否か
(ア)

被告動物病院での血液検査の結果は,被告の作成した甲A13の1
∼4(乙A9の1∼4)
(血液検査結果報告書)によれば,別紙丁事件血液検査結果等一覧表の検査結果被告動物病院欄に記載,
のとおりであるとされているところ,それを前提とすると,下記aない
しcのとおり,ニュータウンペットクリニックの検査結果及びペットDが慢性腎不全により死亡した本件の経過と矛盾するものであるから,上記血液検査結果報告書は,ペットDの血液検査結果を示したものではなく,被告は,ペットDの血液検査を実施しなかったものと推認できる。a
BUNが,ニュータウンペットクリニックでの検査結果は216.3であるのに対し,被告動物病院での検査結果は32ないし38.9であるとされている。このような著しい改善は,急性の可逆性疾患であれば起こりうるが,慢性腎不全では考えにくいものといえる(証人M)



ヘマトクリットが,ニュータウンペットクリニックでは28.9であったのに対し,被告動物病院では44ないし52であったとされているところ,このような著しい改善は,輸血をしない限り考えられないといえ(証人M)
,被告本人も輸血はしていないと供述しているこ
とからして,被告動物病院での検査結果は不自然である。


腎不全の指標であるBUN,Cre及びPは,被告動物病院入院中いずれも次第に改善傾向にあり,死亡直前の7月24日午前8時の検査値が最も良い検査値ということになる。しかしながら,これらの検査値が,慢性腎不全によって死亡する直前の犬のものとは考えにくい(証人M)ものといえる。
この点,被告本人は,被告動物病院における血液検査結果報告書の記載において,CreやBUNに異常値が出ていたということは,ネフロンの75%以上が障害されていたといえるから,その記載はペットDがいつ死んでもおかしくない重度の慢性腎不全であったことを表している旨の供述する。しかし,ネフロンの75%以上が障害されていたことから直ちに死に瀕した慢性腎不全であると認められるものではなく,むしろ,IRIS分類ではステージⅡ以上,宮本分類でも第
2段階以上であれば,BUNやCreが異常値を示すようになり,それ以上重篤なステージや段階があることからすると,被告のこの供述は採用できない。
(イ)

なお,被告は,ペットDの血液検査を計4回実施したと主張し,甲
A2・3(診療費明細書)
,甲A13の1∼4(乙A9の1∼4)
(血
液検査結果報告書)
,乙A1の1∼4(カルテ類)
,11,被告本人に
はそれに副う部分があるが,上記(ア)aないしcの点からすれば信用できない。

尿検査及び糞便検査を実施したか否か
(ア)a

被告は,
尿検査を実施したと主張し,
甲A2・3診療費明細書)



甲A14の1∼4(乙A10の1∼4)
(尿検査報告書)
,乙A1の
1∼4,11,被告本人にはそれに副う部分もある。そして,上記尿検査報告書には,22日に1回,23日に2回,24日に1回尿検査を実施し,その各検査結果は別紙丁事件尿検査結果等一覧表の
検査結果被告動物病院欄のとおりであることの記載がある。


上記尿検査報告書に記載されている検査は,その検査結果が腎
不全の犬の典型的な臨床データ(上記(1)ア(エ))との間に明らかな矛盾がないことからすると,実施された可能性も否定できないが,治療及び諸検査の実施に関する初診時の遣り取りに関する上記イでの認定からすると,上記aの各証拠の信用性には疑義もあり,実施されたと積極的に認定することも困難である。

(イ)

被告は,
糞便検査を実施したと主張し,
甲A2・3診療費明細書)



乙A1の1∼4,11,被告本人にはそれに副う部分もある。
そして,被告が主張する糞便検査は,客観的証拠と積極的な矛盾がないので,
実施された可能性も否定できないが,
上記(ア)と同様の理由で,
実施されたと積極的に認定することも困難である。


24日のペットDの死亡時点及びペットDの蘇生措置を実施したか否か(ア)

原告側と被告間で24日の朝された電話の時間,具体的内容,原告
が来院した時点でのペットDの状態,
周囲の状況については,
甲A4通

話明細書)
,17,18,19(Hの陳述書)
,原告本人,被告本人(た
だし,被告本人のうちこれに反する部分は採用しない。
)によって,下
記a,bのとおりと認められる。

原告は,24日午前8時56分に自宅の固定電話から被告動物病院に電話を掛けたがつながらず,午前9時02分(通話時間約2分)に再度電話を掛けた際につながった。その際,被告がペットDが大分良くなった旨告げ,他方,原告は,被告に対してこれからペットDの面会に行く旨を話した。被告は,原告に対し,一般論として,心肺停止になった場合には蘇生措置を実施すること,その場合1万5000円かかることを説明し,原告の承諾を得た。原告は午前9時22分(通話時間約7分)
(甲A4)
,ニュータウンペットクリニックに電話を
掛けて経過報告をしたところ,N獣医師より,ペットDを入院させて4,5日点滴を受けるより,自宅で生きさせた方がよいのではないかとのアドバイスを受けたため,すぐに退院させるべく被告動物病院に向かった。午前10時2分頃,被告は,Hの携帯電話に連絡をし,心停止しているため蘇生措置を実施していると告げた時間はさておき,(
そのような電話を掛けたことは,被告本人も認めている)
。Hは,被
告に対し,あと10分で被告動物病院に到着する旨を答えた。


原告及びHは,10時10分頃に被告動物病院に到着した。その時には,ペットDは既に死亡していた。処置台などにも特に緊急処置をしたような形跡はなく,原告がペットDに触れたところ冷たいと感じた。

(イ)a

上記(ア)aの点について,被告本人は,原告に対し,正確な時間
ははっきりしないが,概ね原告の主張する時間に原告との間で電話をし,1回目の電話において,ペットDの調子があまり良くない,できたら会いに来て下さいと言ったと供述し,乙A1の2∼4にはそれに副う部分がある。

また,上記(ア)bの点について,被告は,原告が来院した午前10時10分頃,ペットDは長時間前に死亡したほどには冷たくなっていなかったと主張し,被告本人にはそれに副う部分がある。

(ウ)

しかし,下記aないしdの点からすれば,乙A1の2∼4及び被告
本人は,24日の事実関係全体についての証拠としての信用性自体が乏しいといえ,さらには,下記aの点は,上記(イ)aの点と直接矛盾するので,上記(イ)a,bの各証拠は,甲A17∼19,原告本人に照らして採用できない。

乙A1の2には,
①9AM頃,家へ℡し,キケンゆえあいにきてと℡との記載があるところ,この記載は,甲A4によって明らかに認められる,原告が,自宅の固定電話から,同日午前8時56分頃及び午前9時2分頃,
被告動物病院に電話を掛けていることと矛盾する。


被告本人は,心肺停止状態のペットDを発見した時刻は午前9時55分以前であり,乙A1の2に9:55AM頃と記載したのは後
のことであり,その際は記憶があいまいになっていたため,
?の
記号を付したと供述する。しかし,乙A1の2の9:55AM頃
という記載はペンで記載されているのに対し,
?という記載は,
鉛筆で後に加筆されたように読めることができることからして,特に?という記載の信用性は低いし,このように5分単位での具体的
時刻をカルテに記載しているのに,その際,記載した時刻が正確かどうかは不明であるというのは不自然である。


被告本人は,蘇生措置を実施して諦めた頃に原告に電話を掛け,電
話中は蘇生措置を実施しなかった,電話を終えた後にまた10分くらいは蘇生措置を続けていたと供述しているところ,被告本人も認めているとおり,一旦蘇生措置をやめてしまえば蘇生する可能性はほとんどなくなることからして,この被告本人の供述は不自然である。

被告は,ペットDを24時間体制で看護しており,23日夜から24日朝にかけても厳重に看護していたと供述する一方で,同日朝に心肺停止状態に陥ったペットDの発見状況について,極めてあいまいな供述をしていて,不自然である。

(エ)

さらに,上記(ア)a,bの事実からすると,下記aないしcのとお
り,24日午前9時2分頃,ペットDは死に瀕していたないし既に死亡していたのに,被告は,そのことを秘して,ペットDが元気であると告げた上,一般論として,ペットDにもしものことがあれば蘇生措置を実施してよいかと尋ねたものの,実際は蘇生措置を実施していないと推認できる。

原告は,午前10時10分頃に被告動物病院に到着した際,ペットDに触れると冷たいと感じたところ,通常,動物は死亡から約1時間経過後に冷たくなり,約10分経過後に触って冷たいと感じるほど冷えてしまうことはない(上記(1)ウ(イ))のであるから,ペットDは,午前9時10分より以前に死亡していた可能性が高い。


被告は,原告に対し,午前10時2分頃,ペットDについて,蘇生措置を実施している旨の電話を掛け,午前10時10分頃に原告が被告動物病院に到着した時点では,処置台などにも特に緊急処置をしたような形跡はなかったところ,
甲B6(N獣医師の陳述書)によれば,
蘇生開始後10分くらいでは蘇生継続中か蘇生を中止していたとしても使用していた器具が散乱しているのが通常であると考えられるから,上記電話の際には,被告は,既に蘇生措置を実施していなかった
可能性が極めて高い。

被告は,午前9時2分の電話において,ペットDは大分良くなった旨を告げた上で,原告からペットDへ面会に行くとの申し出を受けたのに対し,一般論として,蘇生措置を実施してもよいかどうかを確認し,承諾を得ていたものであるが,大分良くなったペットDが急変する可能性は低いと考えられるから,その時点で,ペットDは既に死亡していたか,死に瀕していたのに,被告は,そのことを隠し,言い逃れるための辻褄合わせをしようとした可能性が高い。

(オ)

この点,被告は,おそらく午前9時30分ころに心肺停止状態のペ
ットDを発見し,蘇生措置を施したが奏功しなかったと主張し,乙A1の2∼4,被告本人にはこれに副う部分もある。
しかし,上記(ウ)のとおり,乙A1の2∼4及び被告本人は,24日の事実関係全体についての証拠としての信用性自体が乏しいこと及び上記(エ)aないしcの点からすると,到底採用できない。
(4)

被告の責任
前記認定事実によれば,ペットDは,客観的には被告動物病院初診時に重篤な慢性腎不全によって,死亡の危機に瀕した状態であったのに,被告は,原告に対し,概ね,ペットDの慢性腎不全が,被告動物病院での治療によって,4,5日で改善し,退院できる旨の説明をし,その説明に先立ち,血液検査を実施していない。これらのことからすると,被告は,本件丁契約締結の当時,ペットDの上記重篤な状態に気付いていたか,又はペットDの症状が重篤か否か,それに対する適切な治療は何かについて診断し,治療をする意思はなかったのに,被告動物病院での治療によって,改善するとの虚偽の事実を告げ,原告から治療費を得る意図があったと容易に推認することができ,
これに反する乙A11,
被告本人は採用できない。
そうすると,いずれにしても,被告は,本件丁契約締結に際し,原告に
対し,虚偽の事実を告げ,それによって,原告は,本件丁契約を締結したものであるから,被告のその行為は,詐欺といえ,不法行為(民法709条)に該当する。

上記アの不法行為と結果,損害との間の因果関係について
(ア)

上記アの詐欺行為がなければ,原告は,被告との間で本件丁契約を
締結せず,被告動物病院における治療費を被告に支払うこともなかったものであるから,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,その全額の支払(下記ウ(ア))を求めることができる。
(イ)

原告は,ペットDに本件死亡等の結果が生じたのは,ペットDが,
本件丁契約によって,被告動物病院に入院させられ,被告により,十分な観察に基づく十分な治療を受けられず放置されたことによって,その体力を奪われ,一気にその病状を悪化させられたことによるから,上記アの詐欺行為と,ペットDの本件死亡等の結果との間には因果関係があると主張する。
しかし,上記(2)イのとおり,①被告動物病院入院時にはペットDは重篤な慢性腎不全によって死に瀕していたこと,②ペットDと同程度の症状の患犬についてどのような治療が適切であって,そのような治療が施された場合,どの程度の延命効果があるかについての主張,立証まではされていないこと,③被告動物病院におけるカルテ等に信用性がないなどのため,ペットDに施された治療内容を具体的に特定して認定するに足りる証拠はないことからすると,上記アの詐欺行為と,ペットDのその時点での死亡との間に積極的な因果関係を認めることは困難である。
しかし,本来,飼い主は,ペットが重篤な疾病や寿命等によって死を迎えるに当たって,ペットを自宅で看取るか,動物病院で看取るかを選択し,
かつ,
その死亡を見守るべき立場であったのに,本件においては,

被告の詐欺行為によって,原告が主体的に自宅等で看取り,その死亡を見守る利益が害され,その上,原告にとってはペットDがどのような経緯で正確にはいつ死亡したかも分からない状況とされたものであるところ,その利益も法律上保護されるべきものと考えられ,原告は,その点も主張しているものと解されるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,そのことにより生じた損害(下記ウ(イ))を賠償する責任があると考えるべきである。

損害
(ア)

被告動物病院における治療費

19万0155円

(イ)

慰謝料

30万円

飼い主のペットに対する愛情は保護されるべきものであるところ,上記イ(イ)で検討したとおり,そのペットであるペットDを看取り,死亡を見守る利益が害されたこと,本件の被告の不法行為の態様,特に,それが詐欺という故意に基づくものであり,本来ペットの生命身体を守るべき獣医師である被告が,飼い主である原告のペットDに対する愛情を利用して詐欺行為を働き,原告に治療費を負担させるとともに,原告がペットDを看取り,死を見守ることを妨げたことは,獣医師に対する,飼い主の信頼,社会的信頼を裏切るものであって,後記6(1)で記載するように,その被告の行為は,計画的,常習的であることも併せ考慮すると,極めて悪質であること,ペットDの死亡後原告はうつ病に罹患したものであって,ペットDの死亡が被告の不法行為に起因していることの立証はないが,被告の不法行為によって,本件当時,原告はペットDの死に至る経過や死因を把握することが妨げられ,そのことが原告の疾病の一因となった可能性は否定できないこと等本件の一切の事情を総合すると,被告の不法行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するには30万円をもって相当と認める。

(ウ)

弁護士費用

10万円

本件不法行為と相当因果関係ある弁護士費用損害金は,本件訴訟の難易,本件訴訟の経緯,請求認容額等に鑑みて10万円と認めるのが相当である。

なお,原告は,他の構成に基づく請求もするが,上記(4)で認定判断した被告の行為の内容は他の構成より最も原告に対し精神的損害を与えるものであること,上記イ(ア)の検討からは,他の構成によってもペットDの死亡自体との因果関係を肯定することは困難であることからすると,上記(ア)∼(ウ)を超える損害を認めるべき構成はない。

(5)

よって,原告の請求は,被告に対し,59万0155円及びこれに対す
る不法行為後の日である平成16年7月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。
5
戊事件(日付は,平成16年9月のものについてはその記載を省略する。)
(1)

獣医学的知見
証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の獣医学的
知見が認められる。

猫の肥満細胞腫(乙B1,2)
皮膚腫瘍の1つであり,肥満細胞が腫瘍性に増殖することから起こる疾患である。
猫の肥満細胞腫の大部分は,悪性であり,脾臓及び腸管の場合は常に悪性である。ただし,悪性の生物学的挙動を示さないことが多い。脾臓及び腸管に発生すると,慢性の嘔吐や下痢を伴う。肥満細胞質内の顆粒が放出されると,ショックや血液凝固不全が起きたり,ヒスタミンの分泌が高まり胃液の産生が過剰となり,胃潰瘍又は十二指腸潰瘍,さらには腸管穿孔を起こすことがある。血液検査では,特異的な所見は認められないことが
多い。肝臓腫大,脾腫,腰下リンパ節の腫大を確認するために腹部レントゲン検査を行う。

血液検査(甲A2∼4,B4,乙B4)
(ア)

血液検査について,被告動物病院及びのづた動物病院で使用してい
る基準値は,別紙戊事件血液検査結果等一覧表の基準値欄に各
記載のとおりである。
(イ)

白血球数(WBC)が基準値より高いと,感染,中毒,組織壊死,
炎症,興奮,ストレスなどが疑われ,基準値より低いと,骨髄の異常,ウイルス感染,敗血症,ショックなどが疑われる。
血小板数(Plat)が基準値より低い場合は,骨髄疾患,免疫疾患,激しい出血が疑われる。
AST(GOT)が基準値より高いと,肝障害,心筋損傷,壊死,筋炎などが疑われる。
総蛋白質(TP)が基準値より低いと,栄養障害,消化吸収・栄養不良,肝・腎障害などが疑われる。
クレアチニンキナーゼ(CK)が基準値より高いと,打撲,組織内出血,筋障害,神経異常,心筋損傷,壊死,筋炎などが疑われる。
(ウ)

猫では,興奮すると,白血球が2倍ほどに増え,また,脾収縮で赤
血球,血小板も増える。
(2)

認定事実
前記前提事実に証拠(甲A13,原告本人,被告本人,後掲各証拠)及び
弁論の全趣旨を併せ考えると,次の事実を認定することができる。ア
22日の原告の行動(甲A11,15)
原告は,22日午後1時15分から午後3時35分までの間,多摩総合精神保健福祉センターにおいて介護実習を受けた。


被告動物病院におけるペットEの診療経過等(甲A1,5∼8,10,
B1,C1,6,乙A1,6,8,12(枝番は全て含む。,被告本人)
及び下記(3)で認定に用いた証拠。甲A1∼5,乙A1∼3,8,11,12(枝番は全て含む。,被告本人のうち,これに反する部分は採用し)
ない。認定に際しての補足説明は,下記(3)において述べる。

(ア)

23日午前11時45分頃,ペットEは,原告方の階段から転落し
た。そのため,原告は,被告動物病院に対し,電話で問い合わせをした上,同日午後0時10分頃,ペットEを被告動物病院に受診させた。被告は,ペットEについて,レントゲン検査を実施し,副木やギプスによる外固定処置が最も適切であると考えていたが,原告に対し,ペットEは左前足を骨折し,出血しているので入院して骨折に対する手術を受ける必要があること,入院するには予防接種が必要であること,血液検査を実施すべきこと,治療費は15万円から25万円かかることなどを説明し,副木固定やアブセス手術を実施すべきこと又はこれから実施する予定であることは説明しなかった。また,その時点で,ペットEには膿のある外傷はなかった。原告は,上記のような説明を受けた結果,被告において,骨折に対する手術を実施するものと考え,その治療費として6万0690円を支払った。
(下記(3)ア,エ,オ参照。

原告は,帰宅した後,被告から連絡を受け,ペットEを入院させるに当たり,同意書に署名をするように求められた。そこで,午後1時51分に被告動物病院からFAX送信された同意書に署名した上,
午後2時,
その同意書を被告動物病院に送信した。
(イ)

被告は,ペットEの入院後,副木固定,骨折に対する手術,アブセ
ス手術を実施することはせず,左胸及び骨折部を切開して縫合する処置のみを実施した。また,ペットEの呼吸状態が悪かったため,酸素室に入れ,点滴を実施した。血液検査は,一切実施しなかった。

(下記(3)イないしエ参照)
(ウ)

Iは,24日,
ペットEを見舞うため,被告動物病院に立ち寄った。

ペットEは,酸素室に入れられており,点滴を受けていたが,その際,副木固定はされていなかった。Iは,被告から,ペットEについて,呼吸が苦しいようで,
酸素室に入れており,
入院には2週間くらい掛かる,
その費用として35万円くらい掛かるという説明を受けた。Iは,同意書(甲A7)に署名をしたが,その際,既に35万円/見積り額という記載がされていたか否かは不明である。
(下記(3)ウ参照)
(エ)

原告は,被告動物病院の診療費が説明を受けるたびに高くなってい
くことに不信感を覚えたため,ペットEを被告動物病院から退院させ,のづた動物病院に転院させることとして,25日,被告動物病院に行った。その際,ペットEには,ギプスや副木は装着されていなかった。被告は,ペットEの退院に際し,原告との間で,診療費の支払について争いになり,原告の左腕付け根付近をつねるような行為をした。原告は,被告に対し,治療費として9万円を支払い,ペットEを退院させた。ウ
のづた動物病院におけるペットEの診療経過等(甲B1,2,4)原告は,ペットEを,被告動物病院から退院させた後,直ちにのづた動物病院に受診させた。
のづた動物病院のO獣医師は,ペットEについて,骨折部と胸部の皮膚がナイロン縫合糸で縫合されているが,外固定,内固定,テーピング,包帯等の処置は一切行われておらず,骨折部付近の毛に粘着性の成分が付着していないこと,静脈点滴用の留置針処置は行われていたことを認めた。そして,ペットEは,来院時には既に極度の呼吸困難,虚脱状態に陥っていたため,O獣医師は,直ちに血液検査及びレントゲン検査を行い,レントゲン写真により左前肢橈骨尺骨の完全骨折,肺気腫を認めた。のづた動
物病院で25日に実施された血液検査の結果は,別紙戊事件血液検査結果一覧表の検査結果のづた動物病院25日欄に記載のと,

おりであった。O獣医師は,WBC及びPlatが著しく低い上に,AST,ALKP,CK及びTPに異常を認め,骨折よりも,その発端となった階段からの落下原因に大きな問題がある,重度のウイルス性疾患や白血病等の全身性疾患の可能性がある,ショック状態下でのワクチン摂取による影響も十分あり得る,血小板が異常に少ない点から,脳内出血等による一時的な意識消失を伴う階段からの落下の可能性がある,呼吸困難については,肺水腫,肺気腫に起因するものである可能性が高いと考え,その旨を原告に説明した。ペットEの食欲は旺盛であったため,O獣医師は,静脈点滴は行わず,酸素室において安静(レスト)とし,強心剤,利尿剤,抗生物質,消炎剤の注射処置及び栄養剤の経口投与を繰り返し行うこととし,27日まで同様の処置を実施した。
ペットEは,同日午後1時45分頃,突然苦しみだして,酸素室内で呼吸停止した。O獣医師は,直ちに挿管して,人工呼吸等蘇生措置を行ったが,ペットEは,午後2時20分に死亡が確認された。
原告は,ペットEの死を不審に思い,被告の不適切な行為によるものではないかとの疑いを持ったため,下記エの解剖を依頼した。

ペットEの解剖結果及び死因(甲B2)
(ア)

ペットEの解剖結果は次のとおりである。
脾実質内を置換するように,増生する肥満細胞腫が認められ,検索し
た諸臓器でも,肥満細胞腫の浸潤性増生が散見され,肥満細胞性白血病を呈して全身に播種していたことが示唆されている。この肥満細胞腫からのヒスタミンの放出が原因となって虚脱して,肝変化といわれる高度萎縮の状態で,呼吸不全が直接的な死因と考えられる。さらに,心臓では,慢性の感染性病変と考えられる心筋炎も認められ,循環不全や全身
状態の悪化に関連したと考えられる。
ギプスで外固定されていた左前肢前腕部では,脛骨及び腓骨骨折が認められたが,骨周囲には出血や切開痕(手術痕)は認められない。打撲による頭部の出血は皮下組織に限局していた。左胸部には,1糸の縫合痕が見られるが,胸壁皮下には肉眼的に確認できる切開・縫合痕は見られない。
(イ)

ペットEの死因は,肥満細胞腫である。このことは,ペットEの上
記(ア)記載の解剖結果によって判明した。

原告の診療経過(甲C1,6)
原告は,25日に医療法人社団泰永会宮国医院を受診し,左上腕打撲,血腫により,全治2週間の見込みであると診断された。
平成16年10月2日及び3日の当時,原告の左腕付け根付近には,指の先端部を2本並べて縁取りをしたような形の内出血の跡があった。
(3)

事実認定の補足説明
初診日及びその際の検査の依頼内容
(ア)

被告は,原告がペットEを被告動物病院に受診させたのは22日で
あり,その際,被告は,原告に対し,レントゲン検査と血液検査等を勧めたが,かかりつけ動物病院があるから様子を見たいと言われ,そのうち,とりあえず血液検査だけを実施するように依頼されたと主張し,甲A2(血液検査結果)
,甲A5(乙A8)
(手紙)
,乙A1の2∼4(カ
ルテ類)
,被告本人にはこれに副う部分がある。
(イ)

しかし,下記aないしfの点からすれば,甲A10(乙A6)
(手

紙)
,甲A13(原告の陳述書)
,B1(O獣医師の報告書)
,原告本人
に照らし,上記(ア)の各証拠は採用することができない。

上記(ア)の被告の主張を前提にしても,原告が被告に対して依頼した内容は主に診療であり,夜突然ペットホテルを依頼するというのは
不自然であるし,23日以降は入院に切り替えられており,22日だけペットホテルである合理的理由が見当たらない。

ペットホテルの代金も含め,22日に実施されたとされる血液検査等の治療費が全く請求されていない。


乙A1の1(カルテのマスターシートの表)の初診日欄には23日と記載され,入院に係る同意書(甲A6)も同日付である。


乙A1の2(カルテのマスターシートの裏)には,22日に関する記載と読める部分にXp(4)+Xp(4)と記載され,同日に
計8枚のレントゲン写真を撮影した趣旨と取れ,23日に関する記載と読める部分にはレントゲン検査に関する記載がないところ,これは上記(ア)の被告の主張と矛盾する。


原告は,わざわざ夜間に来院したにもかかわらず,骨折という主訴で,血液検査等の他の処置は依頼したが,かかりつけの動物病院があるからという理由でレントゲン検査だけは拒否し,結局23日には被告動物病院でレントゲン検査の実施に同意したという経過はあまりに不自然である。


被告本人が作成した甲A5(乙A8)
(手紙)においてはレントゲ
ン検査を実施したのは9月22日と記され,これは上記(ア)の被告の供述と矛盾する。


血液検査を実施したか否か
(ア)

被告動物病院での血液検査は,被告の作成した甲A2∼4(血液検
査結果)によれば,22日から24日までの血液検査の結果は別紙戊事件血液検査結果等一覧表の検査結果被告動物病院欄に記,
載のとおりであるとされているところ,それを前提とすると,下記a,b,dのとおり,客観的な事実と矛盾する,又は不自然な点があるから,上記血液検査結果は,ペットEの血液検査結果を示したものではな
いことになるから,被告は,22日から24日までペットEの血液検査を実施しなかったものと推認でき,22日から24日まで血液検査の実施がないことに下記bの点を併せると,25日もペットEの血液検査を実施しなかったものと推認できる。

上記アのとおり,初診日は22日ではなく,23日である。


25日の血液検査については,
血液検査結果
(甲A2∼4)や
カルテ記載はなく,血液検査の代金(1回6000円)も計3回分しか請求されていない(甲A1の1・2)



WBC,Plat,AST,CKの各検査値は,被告動物病院入院中にはほとんど変化がなく,しかもWBCがわずかに基準値を超えているほかは基準値の範囲内であるとされているが,のづた動物病院の検査結果は,いずれも基準値を外れており,WBCについても,被告動物病院における検査値とは反対に基準値より低い値となっていること,
M医師は,ASTについて,このような激しい変化は普通はなく,CKの変化も,極めて違和感があると判断していること(証人M)からして,被告動物病院における検査値とされているものには極めて不自然な点がある。


本件において,毎日血液検査を実施する獣医学的な必要性は乏しいと考えられる(証人M)ところ,原告が,獣医師である被告に対し,そのような検査を実施するようあえて要求するとは考えにくいし,通常の獣医師であれば,そのような検査を実施する獣医学的必要性に乏しいことの説明などをすると考えられるところ,かかる経過について被告本人は何ら供述していない。

(イ)

この点,被告本人は,9月22日から25日まで,原告の依頼によ
り毎日血液検査を実施したと主張し,甲A2∼4(血液検査結果),甲
A5(乙A8)
(手紙)
,乙A1の2∼4,12(被告の陳述書)
,被告

本人にはそれに副う部分があるが,上記(ア)aないしdの点からすれば信用できない。

副木固定を実施したか否か
(ア)

下記aないしdの点からすれば,被告は,副木による固定を実施し
ていなかったものと推認できる。

25日,原告が来院した際,ペットEには副木による固定処置がなされていなかった。
この点,被告本人は,その際たまたま副木が汚れていたために交換中であったと供述しているが,たまたま交換中であったという可能性は一般的には低いと考えられるし,なぜ交換しなければならなかったかについて,被告はあいまいな供述をしていて,この点の被告の供述は信用性が低い。


証人Mによれば,動物の前足には毛が密生してすっぽりと抜けてしまう可能性があるため,副木を装着する際には,通常,絆創膏のようなものを活用して滑らないよう固定し,そのような場合には粘着性の成分が毛に付着することが認められるところ,
前記認定事実のとおり,
被告動物病院退院直後に受診したのづた動物病院ではそのような粘着性の成分が骨折部付近の毛に付着していることもなかったのであるから,被告動物病院においては,少なくとも上記のように副木を滑らなくするための措置は施されていなかった。
この点,被告は,柔らかい綿を巻いた上に粘着テープを貼ることにより副木固定をしたのであるから,粘着性のテープを貼った跡が固定していた部分に残っていなかったとしても何ら不思議はないと主張している。しかし,上記の点に照らせば,被告の主張する方法では,副木がすっぽりと抜けてしまう可能性があると考えられるのであり,あえてそのような方法で固定するというのは不自然である。


乙A1の2(カルテ)には,
骨折opeは,おちついてからと
の記載があり,被告において骨折に対する手術を予定していたと読めるところ,ペットEの骨折に対する処置としては,外固定で十分であったと認められ(甲B1,被告本人,証人M)
,手術の必要性は乏し
かったのであるから,このカルテ記載は,副木固定をしていたことと矛盾する。


被告本人は,固定方法について,副木を用いたのかギプスを用いたのかについてあいまいな供述をしている。

(イ)

この点,被告本人は,副木固定はしていたが,交換中にいきなり原
告が来院したために装着しておらず,原告が再び副木を装着する必要はないと指示したため,そのままペットEを退院させたと主張し,甲A1の1(診療費明細書)
,乙A1の2∼4,甲A5(乙A8)
(手紙)
,乙
A12,被告本人にはそれに副う部分があるが,上記(ア)aないしdの点からすれば信用できない。

膿の存否及びアブセス手術を実施したか否か
(ア)

下記aないしfの点からすれば,初診時において,ペットEには膿
のある外傷はなく,被告がアブセス手術を実施することもなかったものと推認できる。

開放性骨折により化膿すると,腫脹が生じたり,膿が貯まることがあり,レントゲン写真上に腫脹の画像が見られるはずであるところ,アブセス手術実施前のペットEのレントゲン写真乙A10の1∼3)(
には何ら腫脹の画像が見られない(甲B3,証人M)



原告は,ペットEの骨折を主訴として被告動物病院に来院したのであるから,手術を依頼するのであれば,骨折に対する手術を依頼するのが自然であり,アブセス手術だけを依頼するというのは不自然である。


膿の貯まった外傷の位置及び個数,アブセス手術の実施日,開放性骨折に伴うものか否か等について,いずれも被告が作成した乙A1の2,8,被告本人が一致していない。


乙A1の2には,骨折が開放性であるとの記載があり,乙A1の3(被告作成のカルテの注釈)には,骨が皮膚を貫通して出血していたとの記載があるところ,被告本人は,骨が出ていない状態であったと矛盾した供述をし,上記(2)エ(ア)のとおり,解剖結果によれば,骨周囲には出血や切開痕(手術痕)は認められないとされていることとも一致しない。


上記イのとおり,被告は,実施すると説明していた血液検査を実施しなかったのであるから,アブセス手術についても,同様ではないかとの疑いを持たざるを得ない。


上記アの点で,被告の供述等の証拠の信用性が認められないことからすると,それと関連する,エの点の供述等の証拠の信用性もまた乏しいといわざるを得ない。

(イ)

被告本人は,ペットEについて,膿を認め,アブセス手術を実施し
たと供述し,乙A1の2∼4(カルテ類)
,甲A5(乙A8)
(手紙)
にはそれに副う部分があるが,上記(ア)aないしfの点からすれば信用できない。

23日のレントゲン検査の時刻
乙A11(エックス線照射記録表)には,23日の午後2時35分にレントゲン検査が実施されたとの記載がある。
しかし,前記認定事実によれば,原告は,少なくとも午後1時51分より以前に被告動物病院から帰宅しており,被告から,レントゲン写真に基づいて説明を受け,骨折に対する手術等を勧められたのであるから,甲A13,原告本人に照らし,上記証拠は採用できない。

(4)

被告の責任

ア(ア)

詐欺による不法行為について
前記認定事実によれば,被告は,23日の初診時,レントゲン検査を
実施した時点で,骨折に対する治療としては,副木やギプスによる外固定処置が最も適切であると認識していたにもかかわらず,副木固定ではなく手術をする必要があるとして入院を勧め,その後,結局骨折に対する手術も副木固定も実施しなかった。このことからすると,被告は,本件戊契約の締結の当時,既に,ペットEの骨折について,副木固定及び手術を実施する意思がなかったのに,手術を実施するからとの虚偽の事実を告げ,入院を勧め,その承諾を得て,原告から治療費を得る意図があったと推認することができ,これに反する乙A12,被告本人は採用できない。
そうすると,被告は,本件戊契約締結に際し,原告に対し,虚偽の事実を告げ,それによって原告は本件戊契約を締結したものであるから,被告のその行為は詐欺といえ,不法行為(民法709条)に該当する。(イ)

動物傷害による不法行為について
原告は,被告の診療行為は,正当な業務行為とはいえず,動物傷害に
該当し,
違法であって,
それによってペットEが死亡したと主張するが,
その真意として,ペットEの傷害を理由とする請求を排除する趣旨とは解されないところ,前記認定事実のとおり,被告は,ペットEに膿が認められない,したがって,手術の必要性は全くないのに,アブセス手術と称して,ペットEの左前肢部と胸部を切開して縫合する手術を施したものであるから,正当な業務行為とはいえず,動物傷害といえ,不法行為に該当する。
(ウ)

上記(ア),(イ)の不法行為と結果,損害との間の因果関係について

上記(ア)の詐欺行為がなければ,原告は,被告との間で本件戊契約
を締結せず,被告動物病院における治療費を被告に支払うこともなかったものであるから,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,その全額の支払(下記ウ(ア))を求めることができる。b
ペットEの死亡原因は肥満細胞腫であるところ,ペットEが,仮に被告動物病院に入院しなかったとしても,入院しなければ,肥満細胞腫により死亡することもなかったとはいえないから,ペットEが肥満細胞腫に罹患したことや死亡したことによる損害の賠償を求めることはできない。


上記(イ)の不法行為がなければ,ペットEは,上記(イ)の手術を受けることはなかったのであるから,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,そのことにより生じた損害(下記ウ(カ))を賠償する責任がある。

イ(ア)

暴行による不法行為について
前記認定事実によれば,被告は,ペットEの退院に際し,原告の左腕
付け根付近をつねるような行為をしたところ,これは原告に対する暴行といえ,不法行為(民法709条)に該当する。
(イ)

上記(ア)の不法行為と結果,損害との間の因果関係について

被告の暴行行為により,原告は左上腕打撲,血腫による全治2週間の傷害を負ったから,そのことにより生じた損害(下記エ(オ),(カ))を賠償する責任がある。

損害
(ア)

被告動物病院におけるペットEの治療費

(イ)

15万0690円

のづた動物病院におけるペットEの治療費
これは,主に肥満細胞腫に対する治療費と考えられ,その部分は,被
告の不法行為と因果関係がない。
また,他に,骨折に対する治療費も含まれると窺えるが,これについ
ては,被告の不法行為の有無に関係なく,治療が必要であるから,初診が23日から遅れたことによって,治療費が増加した旨の主張,立証がない限り,原告に損害が認められない。
したがって,この点は,損害として認められない。
(ウ)

剖検費用
剖検は,本訴提起及び維持のための費用といえ,弁護士費用と類する
ものと考えられるから,この点については,独立の損害と考えるのではなく,弁護士費用と併せて考慮することとする。
(エ)

葬儀費用
これは,ペットEが死亡したことによる費用だから,この点の損害賠
償を求めることはできない。
(オ)

宮国医院における原告の治療費(甲C5)

(カ)

慰謝料

4260円
30万円

被告が原告に対して全治2週間の傷害を負わせたこと,被告は,ペットEの退院に際し,治療費の支払に関して争いとなり,その状況下で原告に対する暴行に及んだところ,上記アのとおり被告が詐欺行為を行っていたことに鑑みると,そのような争いが生じるに至ったのは被告の責任にあるといえるにもかかわらず暴行に及んだという点において悪質であること,また,飼い主のペットに対する愛情は保護されるべきものであるところ,そのペットであるペットEに対して手術の必要もないのにアブセス手術を2箇所に施したこと,本件の被告のペットEに関する不法行為の態様,特に,それが詐欺や動物傷害という故意に基づくものであり,本来ペットの身体を守るべき獣医師である被告が,飼い主である原告のペットEに対する愛情を利用して詐欺行為を働き,原告に治療費を負担させるとともに,ペットEに対して適切な治療行為を施すことなく傷害を負わせたということは,獣医師に対する飼い主の信頼,社会的
信頼を裏切るものであって,後記6(1)で記載するように,その被告の行為は,計画的,常習的であることも併せ考慮すると,極めて悪質であることなど本件の一切の事情を総合すると,被告の暴行行為及び動物傷害行為によって被った原告の精神的損害を慰謝するには30万円をもって相当と認める。
(キ)

弁護士費用等

15万円

原告は,剖検費用として7万9800円を支出した(甲C3)
ところ,
剖検により,前肢の骨折に対する被告の治療の具体的内容を確認でき,そのことが上記ア(ア)の詐欺行為の解明の一助となったこと,被告は上記アで認定したとおり,詐欺行為,動物傷害を行っていたことから,原告においてペットEの死亡が被告の行為と関係があるかを疑って剖検をすることは一般的にはありうべきものであること,しかし,他方,死因は,被告の行為とは関係がなかったことなどの事情も加味すると,本件不法行為と相当因果関係ある弁護士費用等の損害金は,
本件訴訟の難易,
本件訴訟の経緯,請求認容額等に鑑みて15万円と認めるのが相当である。

なお,原告は,他の構成に基づく請求もするが,上記ア,イで認定判断した被告の行為の内容は他の構成より最も原告に対し精神的損害を与えるものであること,上記ア(ウ)bの検討からは,他の構成によってもペットEの死亡自体との因果関係を肯定することは困難であることからすると,上記ウを超える損害を認めるべき構成はない。

(5)

よって,原告の請求は,被告に対し,60万4950円及びこれに対す
る不法行為後の日である平成16年9月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとする。
6
全事件共通

(1)

各事件についての判断は上記1ないし5の各事件の項で説示したとおり
であるから原告らが全事件共通において主張している点を認定判断するまでもなく,各事件における主張,証拠によって,慰謝料額の算定以外の争点に対する判断は可能である。
慰謝料額の算定についても,上記1ないし5で説示したことからすると,少なくとも,該当事件の外4件において,同種行為を繰り返していることが認められるので,原告らが全事件共通において主張している点を認定判断するまでもなく,被告の行為は計画的,常習的で悪質というほかはないから,原告らが全事件共通において主張している点を認定判断するまでもなく,上記1ないし5の検討によって判断は可能ということになる。
(2)ア

なお,被告は,原告らは,集団で,嘘の作り話や誹謗中傷によって被
害者を演じ,被告を詐欺師呼ばわりするなどして本件提訴に及んだと記載した陳述書(甲・乙A4,乙・乙A5,丙・乙A8,丁・乙A11,戊・乙A12)
,飼い主3名(うち1名はトリマーでもある。
)名義の被告が
ペットに対して適切な診療をした旨の記載のある陳述書(甲・乙Cの1,2,丙・乙C4)
,被告動物病院で7か月勤務したが,その間,被告動物
病院には大勢のトリマーや動物看護師がおり,被告は凄腕の獣医師で適切な治療を行っていたという記載のある獣医助手スタッフの陳述書(甲・乙C3,丙・乙C5)
,被告が仕事に積極的に立ち向かい,アメリカでの研
究成果を多く取り入れて行動するようになったなどという記載がある被告の出身大学の獣医学科の名誉教授の陳述書(丙・乙C6)を提出する。イ
このうち,被告以外の者が作成した陳述書については,内容自体が上記1ないし5や上記(1)における各事件における裁判所の認定・判断と直接的に矛盾するものではないから,仮に,作成名義が真正で,内容が信用できるとしても,その認定・判断を覆すものではない。また,被告の陳述書の上記アの記載についても,それを裏付ける事実がなく,上記1ないし5
の各事件の項で検討した点からすると,
その各事件の証拠のみを捉えても,
採用することはできない。

また,上記アの点を含む,被告作成のカルテ等,被告の陳述書,被告本人の供述が信用できないことは,全事件について共通する下記(ア),(イ)の点からも明らかである。
(ア)

被告作成の診療記録等の信用性について
カルテ等は,獣医師が,当該患獣の症状やそれに対する処置等を記録することにより,後の診療に役立てることなどを目的として,診療をしたその当時に作成するものであり,法令によってその作成及び保管を義務づけられているものであるから,その記載内容については,通常信用性が類型的に高いものとされている。


しかしながら,甲・乙A1の1・2,乙・乙A1の1・2,丙・乙A1の1・2,5の1・2,丁・乙A1の1・2,戊・乙A1の1・2(各事件のカルテ)によれば,被告の記入したカルテは,鉛筆で記載されている部分とペンで記載されている部分があること,鉛筆で記載されている部分には,
一部書き直されている部分もあること,
また,
プログレスノート及びマスターシートの裏面は,経時的に整理されて記載されていないため,どのような順序で記載されたのかが判読不可能な状態となっていること,診療とは直接関係しない記載もあることが認められ,これらのことからすれば,その体裁からして,被告の作成したカルテの信用性は,類型的に低いと解さざるを得ない(乙・甲B9,丙・甲B2,丁・甲B7,戊・甲B3参照)



さらに,上記1ないし5の各事件の項で検討したとおり,被告の作成したカルテ等は,①実施していない処置等について,実施した旨のカルテ記載,検査記録,診療費明細書があったり,②逆に,実施したと主張しているペットホテルの預かりや検査について,料金を請求し
ていなかったり,検査記録がなかったりなど,客観的な事実に明らかに反している点や矛盾ないし不自然な点が多数あり,その内容からしても,被告の作成したカルテ等は,全体として,極めて信用性に乏しいといわざるを得ない。
(イ)

多数の飼い主,獣医師等の陳述について
甲・甲A8の1∼26,9,11,12,13の1∼3,B3の1∼
9,C4,乙・甲A32の1∼24,丙・甲A42の1∼27,44∼48,丁・甲A26の1∼24,戊・甲A14の1∼24(陳述署名又は陳述書)によれば,①被告動物病院の近隣で獣医療を営んでいる獣医師計21名が,被告動物病院での診療は,通常の獣医療の水準から大きく外れる事例が多く含まれていると陳述し,②飼い主計30名以上が,その所有するペット等を被告動物病院に受診させたところ,実際にはしていない治療の費用を請求され,
預かり中に適切な世話をしてもらえず,
不要な手術や治療をされるなどの被害に遭った旨陳述していることが認められるところ,
このように多数の獣医師,飼い主が,獣医師に対して,
上記①,②のような評価をすることは通常は考え難いものであることからすると,被告動物病院における診療にはある程度問題があることが窺われる。
7
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第14部

裁判長裁判官

水野有子
裁判官

片野正樹
裁判官

井出正弘
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