判例検索β > 平成15年(わ)第6824号
住居侵入、強姦未遂、強姦致傷、窃盗、殺人未遂、現住建造物等放火、邸宅侵入、非現住建造物等放火、建造物侵入被告事件
事件番号平成15(わ)6824
事件名住居侵入,強姦未遂,強姦致傷,窃盗,殺人未遂,現住建造物等放火,邸宅侵入,非現住建造物等放火,建造物侵入被告事件
裁判年月日平成19年2月19日
裁判所名・部大阪地方裁判所  第5刑事部
判示事項の要旨約4年9か月の間に,5つの都府県において,7歳から13歳までの女児15名に対して強姦等を試み,そのうちの1名に対して,姦淫を遂げるとともに処女膜裂傷やPTSDの傷害を負わせ,その余の被害者に対しては,いずれも姦淫は遂げなかったものの,そのうち2名の被害者に対して傷害を負わせるなどした一方,13回にわたり建物への放火を繰り返した(11件は現に住居として使用されていた建物に対するもので,そのうちの5件において,火災を直接又は間接的な原因として,居住者がそれぞれ1名死亡している。)被告人に対し,死刑選択の余地を検討しつつ,強姦等1件及び放火の各犯行については,刑法上の自首が成立し,あるいは自首と同視できる状況があることなどを考慮し,被告人には更生の可能性がないとはいえないとして,無期懲役に処した事例
裁判日:西暦2007-02-19
情報公開日2017-10-13 01:38:57
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主文
被告人を無期懲役に処する
未決勾留日数中600日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1

V1(当時7歳)が13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,平成10年10月14日午後3時ころ,大阪市(以下略)所在のV2方に玄関口から侵入し,同居宅台所兼居間において,前記V1に対し,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして同女を姦淫しようとしたが,同女の兄が帰宅したため,その目的を遂げなかった

第2

V3(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,平成11年4月8日午前11時15分ころ,大阪府松原市(以下略)所在のV4方に玄関口から侵入し,同所において,前記V3を姦淫し,その際,同女に処女膜裂傷の傷害を負わせるとともに,前記姦淫行為に起因する重大な精神的ストレスにより,全治不明の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の傷害を負わせた

第3

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同年5月22日午後5時35分ころ,大阪府高槻市(以下略)所在の木造瓦葺一部スレート葺平屋建空家北側6畳間前において,同空家及び同空家北側に近接して建てられているV5ら2名が現に住居に使用し,かつ,V6が現にいる二戸一棟住宅(木造瓦葺平屋建,床面積約59.2平方メートル)を焼損させる意図で,同空家の北側壁面に接して置かれたプロパンガスボンベに接続されている高圧ゴムホース上にタオル様の布片を置き,同布片に所携のライターで点火して放火し,その火を同ゴムホースに燃え移らせてこれを焼損させ,同焼損箇所から噴出したプロパンガスに引火させて火炎を噴射させるなどして同空家に燃え移らせた上,前
記二戸一棟住宅の軒,天井及び柱等に燃え移らせ,よって,同住宅を全焼させた
第4

V7(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同女を姦淫しようと企て,同年11月4日午後3時10分ころ,大阪市(以下略)所在のV8方に玄関口から侵入し,同所において,前記V7に対し,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして同女を姦淫しようとしたが,同女に抵抗されるなどしたため,その目的を遂げなかった

第5

V9(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を姦淫しようと企て,平成12年3月4日午後4時30分ころ,堺市(以下略)所在のV10方に玄関口から侵入し,同所において,前記V9をベッド上に仰向けに押し倒し,その陰部に手指を挿入してかき回すなどしたところ,畏怖した同女が大声をあげて暴れ出したため,犯行が発覚することを恐れ,とっさに同女を殺害して抵抗を止めさせようと決意し,

黙れ。おとなしくせんかったら殺すぞ。

などと語気鋭く申し向け,同女の上に馬乗りになって,その頸部を両手で絞め,同女を殺害しようとしたが,同女が抵抗するのを止めたことから,殺害を中止した上,前記暴行脅迫により反抗を抑圧された同女を強いて姦淫しようとしたが,同女の陰部から出血していることに気付いて嫌悪感を抱いたため,その目的を遂げず,その際,前記暴行により,同女に対し,全治約3週間を要する性器出血,両眼結膜下出血及び右眼瞼皮下出血の傷害を負わせた
第6

V11(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を姦淫しようと企て,同年7月19日午前11時45分ころ,大阪市(以下略)所在のV12方に玄関口から侵入し,同所において,前記V11に対し,「脱げ。」と語気鋭く申し向け,同女を仰向けに押し倒してその上に覆いかぶさるなどの暴行脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,勤務先から自己の携帯電話にかかってきた電話に応答しようとしてその場から離れたため,その目的を遂げなかった

第7

V13(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を姦淫しようと企て,同年11月16日午後3時45分ころ,京都府長岡京市(以下略)所在のV14方に玄関口から侵入し,同居宅2階6畳間(寝室)において,前記V13に対し,

しゃべったら口ふさぐぞ。言うこときけ。

下も脱げ。」などと語気鋭く申し向ける脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,同女を全裸にし,自己の陰茎を同女の陰部に挿入しようとするなどして,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の家族が帰宅することを恐れて逃走したため,その目的を遂げなかった

第8

V15(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を姦淫しようと企て,平成13年3月15日午後3時20分ころ,兵庫県姫路市(以下略)所在のV16方に玄関口から侵入し,同所において,前記V15に対し,「脱いで。」などと語気鋭く申し向ける脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の家族が帰宅することを恐れて逃走したため,その目的を遂げなかった

第9

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同年9月25日午後1時50分ころ,放火の目的で,東京都墨田区(以下略)所在のV17ら5名が現に住居に使用し,かつ,同人ら2名が現にいる共同住宅A(木造瓦・スレート葺2階建,床面積合計約150平方メートル)に無施錠の1階南側共同出入口から侵入し,そのころ,同共同住宅1階通路の階段裏付近において,同所に置かれていたビニール袋等に所携のライターで点火して放火し,その火を同階段脇壁板等に燃え移らせ,よって,同共同住宅1階及び2階の各一部を焼損(焼損床面積合計約103平方メートル)させた

第10

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同年10月25日午後
3時15分ころ,放火の目的で,東京都府中市(以下略)所在のV18ら3名が現に住居に使用し,かつ,V19ら2名が現にいる前記V18方住宅(木造
厚型スレート葺平屋建,床面積合計約117平方メートル)の北側に近接して建てられ,同人が看守する木造トタン波板葺平屋建物置に無施錠の出入口から侵入し,そのころ,同所において,前記住宅を焼損させる意図で,前記物置内に積み置かれていた段ボール箱に所携のライターで点火して放火し,その火を同段ボール箱等を介して同物置壁面の塩化ビニール製波板等に燃え移らせた上,前記住宅北側壁面等に燃え移らせ,よって,前記住宅を全焼させた第11

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,平成14年2月6日午
後3時20分ころ,東京都板橋区(以下略)のV20ら5名が現に住居に使用し,かつ,同人ら3名が現にいる共同住宅B(木造セメント瓦葺2階建,床面積合計215.19平方メートル)中央棟1階のV21が看守する空室7号室に無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同室内において,同室押入れに置かれていた段ボール箱に所携のライターで点火して放火し,その火を同段ボール箱を介して同押入れ壁面及び天井板等に燃え移らせ,よって,同共同住宅の1・2階部分を焼損(焼損床面積合計約152.91平方メートル)させた第12

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同月10日午前2時3
0分ころ,東京都墨田区(以下略)所在の木造平屋建八軒棟割空家西側路地において,同空家及びその西側に近接する同区(以下略)所在のV22ら3名が現に住居に使用し,かつ,同人ら4名が現にいる四軒棟割店舗併用居宅(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建,総床面積約251.30平方メートル)等の近隣の建物を焼損させる意図で,前記空家の西側木造板壁に所携のライターで点火して放火し,その火を同空家に燃え移らせた上,前記四軒棟割店舗併用居宅及びその北側に近接する同区(以下略)所在のV23ら4名が現に住居に使用し,かつ,現にいる四軒棟割店舗倉庫併用居宅(木造亜鉛メッキ鋼板一部セメント瓦葺2階建,総床面積335.04平方メートル)に燃え移らせ,よって,前記四軒棟割店舗併用居宅及び四軒棟割店舗倉庫併用居宅の各一部を焼損(焼損延床面積約289.83平方メートル)させた

第13

帰宅途中のV24(当時13歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと
企て,同年3月13日午後2時27分ころ,東京都足立区(以下略)所在のV25方前廊下において,前記V24に対し,所携のカッターナイフを突き付けながら,

中に入れ。騒ぐと殺すぞ。

などと語気鋭く申し向けて脅迫し,同女に前記V25方玄関の施錠を解かせて同所に侵入し,そのころ,同所北東側6畳間及び同所北側6畳間において,同女に対し,前記カッターナイフを突き付けながら,

パンツを脱げ。そこに横になれ。

胸を見せろ。触らせろ。

などと語気鋭く申し向ける脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の母親が帰宅したため,その目的を遂げなかった
第14

V26(当時11歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女
を姦淫しようと企て,同年4月1日午後5時15分ころ,大阪府豊中市(以下略)所在のV27方に玄関口から侵入し,同所において,前記V26に対し,その面前で同女の弟に所携のカッターナイフを突き付け,

死にたくなかったら黙っとけ。

などと語気鋭く申し向けるなどの脅迫を加えて,同女の反抗を抑圧した上,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の家族が帰宅することを恐れてその場から逃走したため,その目的を遂げなかった
第15

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同年5月6日午後7時
50分ころ,大阪市(以下略)所在のV28が現に住居に使用する三戸一棟建物(木造瓦葺一部トタン・スレート葺平屋建,床面積102平方メートル)中央部のCセンター玄関前付近において,同建物の木製窓格子に固定された木製掲示板上に貼付されていた紙製ポスター数枚に所携のライターで点火して放火し,それらの火を同掲示板及び同窓格子等に燃え移らせ,よって,同建物の一部を焼損させた
第16

V29(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を
姦淫しようと企て,同年12月4日午後5時ころ,同市(以下略)所在のV30方に玄関口から侵入し,同所において,前記V29に対し,

ナイフで刺されたくないやろ。言うこと聞きや。

などと語気鋭く申し向けるなどの脅迫を加えて,同女の反抗を抑圧した上,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の家族が帰宅することを恐れて逃走したため,その目的を遂げなかった
第17

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,平成15年2月2日午
後11時ころ,放火の目的で,同区(以下略)所在のV31ら3名が現に住居に使用し,かつ,現にいる店舗兼共同住宅D(木造瓦葺一部トタン葺トタン張2階建,床面積合計約173.4平方メートル)の1階北側出入口から階段を利用して同店舗兼共同住宅2階に侵入し,前記V31が物置として使用している同2階8号室において,同室内に置かれていた段ボール箱の側面角部に所携のライターで点火して放火し,その火を同室内の柱,天井等に燃え移らせ,よって,前記店舗兼共同住宅を全焼させた
第18

V32(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女を
姦淫しようと企て,同年6月13日午後3時55分ころから同日午後4時ころまでの間,大阪府三島郡(以下略)所在のV33方に玄関口から侵入し,同所において,前記V32に対し,所携のカッターナイフを突き付け,

言うこと聞かんと刺すぞ。

などと語気鋭く申し向け,タオル様の布を同女の口内に押し込むなどの暴行脅迫を加えて,同女の反抗を抑圧した上,自己の陰茎を同女の陰部に押し当てるなどして,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の兄が帰宅したため,その目的を遂げなかった
第19

V34(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女
を姦淫しようと企て,同月18日午後3時50分ころ,兵庫県姫路市(以下略)所在のEのエレベーター内及び同マンション3階通路において,同女に対し,そのティーシャツをまくり上げて,両乳房を両手の手指でもてあそび,所
携のカッターナイフを突き付け,

パンツを見せて。

などと語気鋭く申し向け,その半ズボンをつかんで引っ張り,ずり下ろそうとするなどの暴行脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女が悲鳴を上げて助けを求めたことから,犯行の発覚を恐れてその場から逃走したため,その目的を遂げなかった
第20

V35(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,強いて同女
を姦淫しようと企て,同月19日午後3時55分ころ,岡山市(以下略)所在のV36方に玄関口から侵入し,同所において,自己の右手に巻き付けたタオルを前記V35の口内に押し込み,左手で同女の頸部を絞め,さらに,同女の後頭部をテーブルに数回打ち付け,

殺さんから,言うことを聞け。

などと語気鋭く申し向けるなどの暴行脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,同女の母親が帰宅したため,その目的を遂げず,その際,前記暴行により,前記V35に全治約4日間を要する後頭部打撲,上下口唇挫傷,歯牙脱臼等の傷害を負わせた
第21

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同月30日午後11時
20分ころ,放火の目的で,大阪府高槻市(以下略)所在のV37ら5名が現に住居に使用し,かつ,同人ら4名が現にいる共同住宅F(中棟)(木造瓦葺2階建,床面積合計約436平方メートル)1階のV38が看守する空室の5号室に無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同室において,居室内の襖に所携のライターで点火して放火し,さらに,そのころ,同共同住宅1階の前記V38が看守する空室の2号室に無施錠の玄関から侵入し,同室において,ベランダに置かれていた襖及び居室内の襖にそれぞれ所携のライターで点火して放火し,それらの火を同2号室の天井等に燃え移らせ,よって,同共同住宅の一部である1階部分等を焼損(焼損床面積合計約222平方メートル)させた第22

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同年7月1日午前零時
10分ころ,放火の目的で,同市(以下略)所在のV39ら2名が現に住居に
使用し,かつ,現にいる同人方住宅(木造瓦葺2階建,床面積合計約133平方メートル)の敷地内に表門から侵入し,そのころ,同所において,同住宅を焼損させる意図で,同住宅東側に近接して建てられている木造瓦葺平屋建納屋の南側軒下に藁束,新聞紙等と共に積み置かれていた段ボール箱に所携のライターで点火して放火し,その火を同藁束等を介して同納屋に燃え移らせた上,同住宅東面の柱,梁等に燃え移らせ,よって,同住宅の東側壁面を焼損(焼損面積合計約36.66平方メートル)させた
第23

V40(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同月12日午
後6時40分ころ,同市(以下略)所在のG3階通路において,同女に対し,

ばんざいして。

などと申し向けてその両手を頭上に上げさせ,同女のティーシャツをまくり上げ,その両乳房を両手の手指でもてあそび,顔をなめるなどの行為をしたところ,同女が極度に畏怖しているのに乗じ,引き続き,同女を姦淫しようと決意し,その両手を頭上に上げさせたまま,同女の半ズボンのファスナーを下ろし,同女を姦淫しようとしたが,同女が泣き出したことから,犯行の発覚を恐れてその場から逃走したため,その目的を遂げなかった第24

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同月15日午前5時
25分ころ,放火の目的で,大阪府東大阪市(以下略)所在のV41が看守する同人所有の,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない物置(木造トタン葺トタン張平屋建,床面積約6.8平方メートル)に無施錠の出入口から侵入し,そのころ,同物置内において,その壁面に接して置かれた木製箱上の衣類に所携のライターで点火して放火し,その火を同衣類等を介して同物置の柱,梁等に燃え移らせ,よって,同物置の内側壁面及び天井等を焼損(焼損面積約2平方メートル)させた
第25

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同日午前6時45分こ
ろ,放火の目的で,大阪府八尾市(以下略)所在のV42ら8名が現に住居に使用し,かつ,同人ら9名が現にいる共同住宅H(木造カラーベスト葺モ
ルタル塗2階建,床面積合計約532平方メートル)2階のV43が看守する空室の13号室に無施錠の玄関から侵入し,そのころ,同室内において,押入れに置かれた発泡スチロール等在中の段ボール箱に所携のライターで点火して放火し,その火を同押入れの中棚等に燃え移らせ,よって,同共同住宅の一部である2階及び1階部分を焼損(焼損床面積合計約80平方メートル)させた第26

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同日午前7時20分こ
ろ,放火の目的で,大阪市(以下略)所在のV44ら6名が現に住居に使用し,かつV45ら4名が現にいる共同住宅I(木造瓦葺2階建,床面積合計約259平方メートル)1階の前記V44方に玄関引き戸の施錠を外して侵入し,同人方において,室内に置かれていた布団を押入れ内に移動させた上,同布団に所携のライターで点火して放火し,その火を同押入れの天井等に燃え移らせ,よって,前記共同住宅の一部である1階部分を焼損(焼損床面積合計約4.34平方メートル)させた
第27

自己の満足感を得るため建物に放火しようと企て,同日午後零時30分こ
ろ,放火の目的で,大阪府大東市(以下略)所在のV46が看守する同人所有の,現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない家屋(木造瓦葺平屋建,床面積約86平方メートル)に無施錠の玄関から侵入し,同家屋内において,押入れに置かれていた布団に所携のライターで点火して放火し,その火を同押入れの柱,天井等に燃え移らせ,よって,前記家屋を全焼させた
第28

通行中のV47(当時13歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企
て,同日午後2時15分ころ,大阪府門真市(以下略)所在のV48方に玄関口から侵入し,同所において,
1
前記V47に対し,同所にあったはさみを突き付け,

言うことを聞け。

などと語気鋭く申し向けるなどの脅迫を加えて,同女の反抗を抑圧した上,強いて同女を姦淫しようとしたが,姦淫前に射精し,同女の家族が帰宅することなどを恐れて逃走したため,その目的を遂げなかった

2
V49所有の前記はさみ1丁(時価200円相当)を窃取した

ものである。
(法令の適用)


判示第1及び第4の各所為のうち
住居侵入の点
いずれも刑法130条前段
強姦未遂の点
いずれも行為時においては平成16年法律第156号(以下法律第156号という。)による改正前の刑法179条,177条後段(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条後段(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第2の所為のうち
住居侵入の点
刑法130条前段
強姦致傷の点
行為時においては法律第156号による改正前の刑法181条(177条後段)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法181条2項(177条後段)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第3,第12及び第15の各所為

いずれも刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
判示第5の所為のうち
住居侵入の点
刑法130条前段
殺人未遂の点
行為時においては刑法203条,法律第156号による改正前の刑法199条(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においては刑法203条,同改正後の刑法199条(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
強姦致傷の点
行為時においては法律第156号による改正前の刑法181条(179条,177条)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法181条2項(179条,177条)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第6ないし第8,第14,第16及び第18の各所為のうち
住居侵入の点
いずれも刑法130条前段
強姦未遂の点

いずれも行為時においては法律第156号による改正前の刑法179条,177条(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第9,第17,第22及び第26の各所為のうち
住居侵入の点
いずれも刑法130条前段
各現住建造物等放火の点
いずれも刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
判示第10の所為のうち
建造物侵入の点
刑法130条前段
現住建造物等放火の点
刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
判示第11及び第25の各所為のうち
各邸宅侵入の点

いずれも刑法130条前段
各現住建造物等放火の点
いずれも刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
判示第13の所為のうち
住居侵入の点
刑法130条前段
強姦未遂の点
行為時においては法律第156号による改正前の刑法179条,177条前段(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条前段(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第19の所為
行為時においては法律第156号による改正前の刑法179条,177条(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第20の所為のうち
住居侵入の点

刑法130条前段
強姦致傷の点
行為時においては法律第156号による改正前の刑法181条(179条,177条)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法181条2項(179条,177条)(有期懲役刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第21の所為のうち
空室の5号室及び2号室にそれぞれ侵入した各邸宅侵入の点
包括して刑法130条前段
現住建造物等放火の点
刑法108条(有期懲役刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)
判示第23の所為
行為時においては法律第156号による改正前の刑法179条,177条後段(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条後段(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
判示第24の所為のうち
建造物侵入の点

刑法130条前段
非現住建造物等放火の点
刑法109条1項(刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)判示第27の所為のうち
邸宅侵入の点
刑法130条前段
非現住建造物等放火の点
刑法109条1項(刑の長期は,行為時においては法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によるが,犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)判示第28の所為のうち
住居侵入の点
刑法130条前段
強姦未遂の点(判示第28の1)
行為時においては法律第156号による改正前の刑法179条,177条前段(刑の長期は,同法12条1項による。),裁判時においてはその改正後の刑法179条,177条前段(刑の長期は,同法12条1項による。)
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。
窃盗の点(判示第28の2)
行為時においては平成18年法律第36号による改正前の刑法235
条,裁判時においてはその改正後の刑法235条
犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い裁判時法の刑による。
科刑上一罪の処理
判示第1,第4,第6ないし第8,第13,第14,第16及び第18について
刑法54条1項後段,10条(いずれも1罪として重い強姦未遂罪の刑で処断)
判示第2及び第20について
刑法54条1項後段,10条(いずれも1罪として重い強姦致傷罪の刑で処断)
判示第5について
刑法54条1項後段,10条(1罪として最も重い殺人未遂罪の刑で処断)
判示第9ないし第11,第17,第21,第22,第25及び第26について
刑法54条1項後段,10条(いずれも1罪として重い現住建造物等放火罪の刑で処断)
判示第24及び第27について
刑法54条1項後段,10条(いずれも1罪として重い非現住建造物等放火罪の刑で処断)
判示第28について
刑法54条1項後段,10条(1罪として最も重い強姦未遂罪の刑で処断)
刑種の選択
判示第2,第5,第10,第15,第17,第20,第22,第25及び第
26の各罪
いずれも有期懲役刑
判示第3,第9,第11,第12及び第21の各罪
いずれも無期懲役刑
法律上の減軽
判示第5の罪
刑法43条ただし書,68条3号
併合罪加重
刑法45条前段,46条2項本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第12の罪について無期懲役に処し,他の刑を科さない)
未決勾留日数の算入
刑法21条
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1
本件は,被告人が,7歳から13歳までの女児15名に対して強姦等を試みる(判示第1,第2,第4ないし第8,第13,第14,第16,第18ないし第20,第23及び第28,以下女児強姦等という場合,これらの犯行を指す。)一方,13回にわたり建物への放火を繰り返した(判示第3,第9ないし第12,第15,第17,第21,第22及び第24ないし第27,以下放火という場合,これらの犯行を指す。)事案である。女児強姦等については,15件の犯行のうち,1件においては9歳の被害者に対して姦淫を遂げるとともに処女膜裂傷やPTSDの傷害を負わせている(判示第2)。また,その余の件については,いずれも姦淫は遂げなかったものの,うち2名の被害者に対して傷害を負わせ(判示第5及び第20),さらに,そのうちの1件においては,中止犯が成立するものの,抵抗した被害者を殺害しようと
した殺人未遂行為を伴っている(判示第5)。また,被害者方にあったはさみを脅迫に用い,そのままそれを盗んだ窃盗罪を伴うもの(判示第28)もある。また,放火13件のうち,2件は物置(判示第24)や空家(判示第27)など非現住建造物に対するものであるが,その余の11件は現に住居として使用されていた建物への放火であり,その大半において出火時には人が現在していた。被告人は,平成10年10月から平成15年7月までの約4年9か月の間に,5つの都府県でこれらの女児強姦等と放火という罪種の異なる犯行を重ねたものであり,本件は,わが国において希にみる凶悪重大事案である。
2(1)

女児強姦等の犯行について
被告人は,かねてより,幼い女児に対して強い性的関心を有し,本件各犯行
も専らその歪んだ性欲を満たすためになされたものである。相手が女児であれば抵抗されにくく,妊娠の可能性もないので犯行が発覚しにくいことも理由として女児を狙ったというのであって,その動機は誠に身勝手で,かかる発想自体戦慄すべきものがある。
被告人は,当初から強姦目的で自宅を出て,女児を探し回った挙げ句犯行に至ったこともあれば,勤務中の外出時にたまたま女児を見つけて犯行に及んだこともあり,犯行が生活の一部となっていたとすらいえる。また,発覚を免れるため,居住地から離れた遠方の地域まで電車で出向き,レンタル自転車で女児を物色するなどして及んだ犯行(判示第8,第19及び第20)もあり,犯行遂行への執念には尋常ならざるものがある。そして,そのようにして姦淫できそうな女児を見つけるとその自宅まで跡をつけ,多くの場合,女児が自ら鍵を取り出して玄関扉を開ける様子などから家族が留守であることを確認した上,女児が扉を開けた隙等にその自宅内に侵入し,その後は,女児に,自分が父親の友人であると名乗ったり,家族の行き先や帰宅時間を聞くなどして女児の警戒心の程度や犯行に費やすことのできる時間を確認するなどしており,犯行に向けた準備も周到で狡猾である。

その上で,被告人は,判示のとおり,おぞましい各犯行に及んだものである。抗うべき力を持たない7歳から13歳の非力な女児に対して,暴行脅迫を加え,着衣を脱がせ,その乳房や陰部を触り,陰茎を押し当てるなどしており,その中には,タオル等を口内に押し込んだり(判示第18及び第20),カッターナイフ(判示第13,第14,第18及び第19)やはさみ(判示第28)を突き付けるなどの危険かつ強度の暴行脅迫を加えた犯行もある。また,被告人は,逃走時に,被害者に

親に言うな。

などと言って口止めを図る行為に出たり,犯行後しばらくして再び被害者宅付近に赴くなどしたこともある。その中でも,判示第2の犯行(住居侵入強姦致傷)においては,被告人は,9歳の被害者の体をもてあそんだ上,姦淫を果たした。これにより,被害者は,処女膜裂傷の傷害を負ったばかりか,以来,長年にわたってPTSDに苛まれており,取り返しのつかない重大な結果を招いている。しかるに,被告人は,犯行後,多いときには週に3ないし4回程度被害者方に電話をかけ,被害者本人に卑わいな言葉を告げたり,被害者方付近にいることを伝えたりし,応対した母親に対しても,その心情を逆撫でするかのような卑劣極まる言辞を浴びせるなど,被害者らに追い打ちを掛ける行為にまで及んでいる。また,判示第5の犯行(住居侵入殺人未遂,強姦致傷)においては,抵抗した9歳の被害者に対し,その抵抗を止めさせるためにとっさに殺害を決意し,その身体の上に馬乗りになって両手で首を絞める行為にまで及んでいる。被害者の両目の出血状態などからすると,被告人は相当強い力を被害者に加えたことがうかがわれる上,殺害のための行為を中止した後も,抗拒不能の状態にある被害者を更に姦淫しようとしており,凶悪さと執拗さが際立っている。被害者は,一連の暴行により全治約3週間を要する性器出血等の傷害を負った上,暴れると殺されるなどと考えて被告人の暴力等に必死に耐えたこと,事件のことを思い出すと何度も死にたくなったことなどを供述しており,身体的苦痛に加え,その被った精神的な被害も計り知れない。さらに,判示第20の犯行(住居侵入
強姦致傷)においても,被告人は,被害者の頸部を絞め,その後頭部をテーブルに打ち付けるなどの危険な暴行を加えるとともに,場所を移動しつつ執拗に姦淫しようとして,被害者に後頭部打撲等の傷害を負わせている。その他の犯行においても,被害者らの肉体的・精神的苦痛は甚大であったと考えられる上,幼い被害者らの心に刻み付けられた傷がその後の人生に深刻な影響を及ぼすのではないかとの危惧も大きく,現に,一人でいることを怖がるようになったり,男性に恐怖感を抱くようになるなど様々な後遺症に苦しんでいる被害者もいる。被害者本人及びその保護者らの被害感情は大きく,いずれも被告人に対する厳罰を望んでいる。
(2)

放火について
被告人は,消防無線を傍受して火災現場に行き,火災や消火活動の様子を見
て興奮を味わうなどしていたところ,平成10年ころからは,被告人自身が火を放って火災現場を作り出そうと考えるようになった。しかも,被告人は,住宅等が密集している地域にあり,かつ,住居として使用されている建物の方が,消火活動等の規模が大きくなってより大きな満足感が得られるなどと感じて,積極的にこのような建物を選んで放火を繰り返してきた。このように,放火の各犯行は,いずれも,被告人自身の満足感を得るという一事のためになされたものであり,その経緯に酌量すべきものは微塵もなく,動機は身勝手この上ない。さらに,被告人は,判示第3の放火により死者が出たことを翌日の新聞報道で知りながら,悔い改めるどころか,平然と同様の放火を繰り返したものであって,他人の生命を脅かしてでも自己の欲望を満たそうとするその行動傾向は,人倫にもとること甚だしく,非道の極みである。
犯行態様についてみるに,被告人は,多くの場合,建物内に侵入した上,可燃性が高い布団等に点火したり,襖等の点火対象物に切れ目を入れるなどし,さらに,発見を遅らせるため,点火した物がある押入れの襖を閉めるなどもしている。また,大規模な火災を起こす目的で,屋外に置かれたプロパンガスボ
ンベのゴムホース部分に点火した犯行(判示第3)もあり,いずれも,自らが犯人であると疑われることを回避しつつ,確実に出火することを目指した極めて悪らつで危険この上ないものである。そして,犯行後はいったん逃走した後,消防無線を聞いたり,放火現場に戻って消火活動等の様子を見て満足感を味わうなどしており,犯行後の情状も悪い。
その結果,被告人が火を放った11棟の現住建造物と2棟の非現住建造物の全てが焼損し,そのうち4棟(現住3棟,非現住1棟)が全焼した。焼損面積は合計1300平方メートル近くに及び,3億円近くに上る財産的被害が生じている。また,焼損した現住建造物のうち10棟には,出火当時現に人がいたほか,周辺建物への延焼被害も生じており,合計で40名以上が被告人の放った火炎と煙に襲われ避難を余儀なくされた。そして,V6(判示第3),V17(判示第9),V20(判示第11),V22(判示第12)及びV37(判示第21)の5名が,逃げ遅れ,あるいは逃げ場を失って2階から飛び降りることを強いられて,そのかけがえのない命を失った。この5人の被害者は,いずれも,最も安全であるはずの自宅が突然煙火に包まれ,何一つ落ち度などないのに,恐怖と絶望のうちに非業の終焉を余儀なくされたものであって,その無念さは察するに余りある。また,被害者らの遺族の被害感情にも峻烈なものがある。すなわち,公判廷において,V6の夫であるV5は,未だに助けを求める妻の姿が頭に浮かび,妻を助けてあげられなかった心苦しさを抱える日々が続いているとの心情を述べ,V22の長女であるJも,母の写真を持参した上,最愛の母を喪った哀切を訴え,共に極刑を望む旨の意見を述べている。その他の3名の遺族も,捜査官に対して,痛切な悲しみと被告人に対する憎しみを吐露しているところ,本件放火の非道ぶりと結果の重大性に照らせば,このような遺族らの心情も当然というべきである。
(3)

本件各犯行に対する総合的な評価
被告人は,以上のように,女児強姦等と放火を繰り返していたものである。
被告人にとって,女児に対する強姦放火とは,女性の下着の窃盗と併せて,ごく日常的な一種の気晴らしであり,街を徘徊し,その時々に可能な犯行を気の向くまま敢行しており,被告人自身も自認するように,いわばゲーム感覚による連続的犯行と評価しても過言ではない。これを象徴しているのが,判示第24ないし第28の一連の犯行である。被告人は,その当日の午前2時ころ,強姦放火の目的で,当時居住していた友人宅を出て,自転車で大阪府内を徘徊しながら南下し,判示第24の物置を見つけて放火し,さらに,立て続けに判示第25及び第26の各共同住宅にも放火した。その後,小学生の登校時間になったことから強姦できそうな女児を物色したが見つからず,判示第26の放火の現場に様子を見に行くなどした上,更に移動して判示第27の放火に及び,その付近のマンションから火災や消火活動の様子を眺めた後,通行中の女児を発見して判示第28の犯行に及んだというものである。
このように,女児強姦等及び放火はいずれも,被告人の性格,性癖の深刻な問題性に根ざす犯行であり,被告人の社会規範を全く意に介さず,他人の尊厳を踏みにじる人格態度には,人間性の片鱗さえ見出しがたい。
また,これまでに述べたように,本件各犯行により被告人が招いた結果はあまりにも重いが,被害者らに対しては何らの慰謝の措置も講じられていない。さらに,本件は5つの都府県にわたる無差別の女児強姦等及び放火であり,犯行の全貌が明らかになるにつれ,社会に及ぼす影響も軽視しえないものになっている。以上を要するに,本件各犯行の罪質,動機,態様,結果の重大性,とりわけ放火の結果5名もの人命が失われていること,被害者や遺族の処罰感情,社会的影響等からすると,被告人の刑事責任は非常に重大であって,それらを償わせるについては,死刑選択の余地もないとはいえない状況にある。3
しかしながら,他方,被告人のために酌むべき事情に目を転じ,本件の情状を更に検討すると,以下の諸点が挙げられる。
(1)

まず,女児強姦等に関しては,1件を除いて姦淫は未遂にとどまっており,
判示第5の殺人未遂は偶発的なものであって計画性はなく,途中で任意に殺害行為を中止している。また,判示第28の2の窃盗は被害の程度がごく小さい。放火に関しては,判示第15及び第24については,いずれも幸いにして発見・消火が早かったため,焼損面積及び被害額が小さく,判示第26についても,焼損面積は小さく,焼損した物品も多くない。判示第3,第9,第11及び第21については,被害建物の所有者や居住者らが火災保険金等を受領しており,財産的被害の一部がてん補されている。
(2)

これに加えて,被告人は,捜査及び公判において,本件各犯行の全てを認
めているところ,とりわけ判示第1の住居侵入強姦未遂と全ての放火について,刑法上の自首が成立し,あるいは,自首と同視すべき状況がある。すなわち,本件は,第8回公判期日(平成16年9月27日)までに,女児強姦等のうち13件(判示第2,第4ないし第8,第13,第14,第16,第18,第20,第23及び第28)が審理され,検察官・弁護人の各意見が述べられて結審し,同年11月11日に判決宣告期日が指定されていた。しかるところ,被告人は,結審後同月ころまでの間に,捜査官に対し,判示第1の犯行を任意に自供した。さらに,同年9月から10月にかけて,自らが多数の放火事件を敢行した旨と,その概ねの時期及び場所を記載した手紙2通を作成し,同年11月15日,これらの手紙を検察官及び警察官にあてて発送した。捜査機関は,これらの手紙の内容を受けて被告人の取調べを再開し,被告人は手紙の内容を説明した。さらに,平成17年2月末ころ,被告人は,警察官に対し,道路地図を見て放火事件を自供したい旨を申し出て,同年3月から4月にかけて,道路地図に書き込むなどして,大阪府近辺における116件の放火を自供し,警察官から指示があった事件については別に自供書も作成した。また,そのころ,東京都近辺における放火8件についても上申書を作成するなどし,同年6月以降には,それらの放火の具体的な日時・場所も自供した。判示第1及び放火の各犯行は,以上のような経緯の中で,被告人の申告から直接,
あるいはその申告に関連する取調べの過程で,被告人が犯人であることが特定されて順次起訴されるに至ったもので,その中には,たばこの不始末による失火として処理されていた事件(判示第26)や,出火原因不明とされていた事件(判示第25)も含まれていた。そうすると,このような被告人の自発的な自供が,闇の中にあった事案の真相を明らかにするきっかけを作り,結果として適正な刑事司法の実現に大きく寄与した側面があることは否定できない。もっとも,被告人の供述によれば,被告人が放火を自供する手紙を捜査機関に送ったのは,当時収容されていた大阪拘置所で同房者などからいじめを受けていると感じた被告人が,いじめから逃れたい一心で,新たな犯罪を申告すれば警察の留置場に戻されるであろうと目論んでのことである。そうであるとすれば,必ずしも反省悔悟による自供とはいえないことになるが,さりとて,それまでに審理されていた強姦等の罪よりも法定刑が重く,極刑すら予想される放火の罪を多数告白することは,軽々になしうることとも考えられず,いかなる重刑をも甘受しようとする覚悟が被告人にあったこともまた間違いないものと思われる。現に,その後再開された捜査において,被告人は自らの犯した罪について記憶にある限り積極的かつ真摯に供述していることがうかがわれるのであって,反省と悔悟,そして被害者らに対する謝罪の明確な態度を見て取ることができる。
(3)

さらに,再開後の公判廷においても,被告人は,自身にとって明らかに不
利な事柄まで含めて犯行に関わる事実を詳細に供述するとともに,犯した罪の重さを反省し,被害者や遺族に対して謝罪する言葉を述べ,極刑に服する覚悟があるとも繰り返し述べている。そこには,自らの利を図る計算ずくの態度や投げやりな姿勢はうかがわれないのであり,犯行の全部を語り尽くしたことによって,被告人の人格態度に変化が現れつつあるその萌芽と見ることも可能である。加えて,被告人には前科がないことやその年齢も考慮すると,被告人の更生にはなお多大の困難を伴うとしても,その可能性がないとまではいえない。
4
そこで,当裁判所は,これら諸事情を総合考慮の上,被告人に対しては主文の刑に処するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。

(求刑

無期懲役)

平成19年2月19日
大阪地方裁判所第5刑事部

裁判長裁判官

中川
裁判官

丸田
裁判官

林博之顕扶友
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