判例検索β > 平成18年(ネ)第209号
損害賠償請求控訴事件
事件番号平成18(ネ)209
事件名損害賠償請求控訴事件
裁判年月日平成19年1月26日
裁判所名・部札幌高等裁判所  第2民事部
結果破棄自判
原審裁判所名札幌地方裁判所
原審事件番号平成17(ワ)1161
原審結果その他
判示事項の要旨交通事故を起こした車両の同乗者が,事故の発生を知り,運転者に事故現場に戻ることを提案した上で現場に戻り,低速で走行するうちに,真冬の北国の早朝に,雪の積もっている道路に負傷して倒れていると考えられる被害者を発見した場合には,同人に条理上の救護等の義務が発生する。
裁判日:西暦2007-01-26
情報公開日2017-10-18 04:09:18
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主1文
原判決の主文第1項から第3項までを次のとおり変更する。
(1)

被控訴人らは,控訴人Aに対し,連帯して,165万円及びこれに対す
る平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)

被控訴人Bは,控訴人Aに対し,4021万9087円及びこれに対す
る平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)

被控訴人らは,控訴人Cに対し,連帯して,165万円及びこれに対す
る平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)

被控訴人Bは,控訴人Cに対し,3856万9087円及びこれに対す
る平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)
2
控訴人A,控訴人Cのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は,第1,第2審を通じ,控訴人Aと被控訴人らとの間に生じたものを20分し,その18を被控訴人Bの,その1を被控訴人らの,その余を控訴人Aの負担とし,控訴人Cと被控訴人らとの間に生じたものを20分し,その18を被控訴人Bの,その1を被控訴人らの,その余を控訴人Cの負担とする。

3
この判決は,第1項(1)から(4)まで及び第2項に限り,仮に執行することができる。

第1
1実及び理由
控訴の趣旨
原判決を次のとおり変更する。
(1)

被控訴人らは,控訴人Aに対し,連帯して,4286万9087円及び
これに対する平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)

被控訴人らは,控訴人Cに対し,連帯して,4121万9087円及び
これに対する平成15年2月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
訴訟費用は,第1,第2審とも被控訴人らの負担とする。

3
仮執行宣言

第2

事案の概要

1
本件は,交通事故により死亡したD(以下本件被害者という。
)の相続
人である控訴人らが,車両の運転者である被控訴人B(以下被控訴人Bという。
)及び同乗者である被控訴人E(以下被控訴人Eという。
)に対し,
交通事故並びに事故後の報告及び救護義務違反の各不法行為に基づく損害賠償として,連帯して,控訴人A(以下控訴人Aという。
)については503
7万6320円,控訴人C(以下控訴人Cという。
)については4708
万4349円及びそれぞれの損害額に対する不法行為の日である平成15年2月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求したところ,被控訴人Bは,被控訴人Bの脇見運転による交通事故の発生や救護義務違反等の責任原因について争わず,原審が,被控訴人Bに関してのみ,請求を一部認容したことから,控訴人らが,控訴の趣旨の裁判を求めて控訴した事案である。
なお,控訴人らは,当審において,原審が認容した損害のうち慰謝料額以外の点については,原審の認定に従ったため,請求が減縮された。

2
事実及び争点(当事者の主張)は,以下のとおり加除,訂正するほか,原判決書の事実及び理由欄の第2等2,争点及び3事案の概要の1争いのない事実争点についての当事者の主張に各記載のとお
りであるから,これを引用する。

(1)

原判決書3頁12行目の次に,行を改めて次のとおり加入する。また,被控訴人Bの本件事故後の行動は,救護義務違反,報告義務違反として,不法行為に基づく責任を負う。

(2)

原判決書3頁14行目の以下「原告Aという。」を削除する。



(3)

原判決書3頁15行目の以下「原告Cという。」を削除する。



(4)

原判決書4頁17行目の広く知られており,の次に道路交通法の酒酔い運転では,アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転をすれば,呼気中のアルコール濃度を問わずに処罰されるし,酒気帯び運転では,一定量のアルコールを身体に保有して車両等を運転した者は,運転の適否に関係なく処罰されるのであり,このいずれの運転も速度超過より刑罰が重く定められていることからしても,飲酒が運転に与える影響について考慮されているのであって,を加入する。(5)

原判決書4頁19行目の末尾の次に

よって,被控訴人Bの飲酒と本件事故との間に因果関係がある以上,被控訴人Bの飲酒運転を助長した被控訴人Eにおいても,本件事故に対する責任を免れない。

を加入する。(6)

原判決書6頁21行目冒頭から同7頁2行目までを次のとおり改める。
本件事故当時,本件被害者は16歳の高校生であり,基礎収入を平成15年度賃金センサス産業計・企業規模計・男性労働者・学歴計の全年齢平均給与額である547万8100円,就労可能期間を49年間(18歳から67歳まで),生活費控除率を50パーセントとして,中間利息控除率を年5パーセントのライプニッツ方式(係数16.4795)で計算すると,その逸失利益は,4513万8174円となる。【計算式】547万8100円×(1-0.5)×16.4795=4513万8174円
(7)

原判決書7頁8行目から9行目にかけての2600万円を1800万円と改める。
(8)

原判決書7頁11行目冒頭から13行目末尾までを次のとおり改める。

控訴人Aは,原判決書添付別紙のとおり,実費として299万1970円を支出しており,本件事故と相当因果関係のある損害は,150万円である。


(9)

原判決書7頁23行目の400万円を300万円と改める。

(10)

原判決書8頁23行目冒頭から末尾までを控訴人Aにつき380万円,

同Cにつき365万円が相当である。

に改める。(11)

原判決書8頁25行目から同9頁11行目までを次のとおり改める。以上によれば,控訴人らの損害額は,別表「損害の一覧

のとおり,控訴
人Aにつき4286万9087円,控訴人Cにつき4121万9087円となる。

(12)

原判決書9頁12行目冒頭から同頁末尾までを次のとおり改める。

被控訴人らの主張〕〔控訴人らの主張する損害は,いずれも争う。

第3
1
当裁判所の判断
争点(1)(被控訴人Eの不法行為の成否)について

(1)

争いのない事実等に加え,証拠(甲4の2から4まで,10,11,14,16,12,
13,16から19まで,乙イ2から4まで,8から13まで,被控訴人B本人,被控訴人E本人。ただし,下記認定に反する部分を除く。
)及び弁論
の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

被控訴人Bは,平成15年2月11日午後6時30分ころから,友人宅で麻雀をした後,翌同月12日(以下の日時は,特に断りがない限り同日である。
)午前1時ころに,前年の夏に知り合った被控訴人Eに電話をか
け,どこかへ行こうと誘ったところ,被控訴人Eは,長女が母親宅に泊まり留守であったためこの誘いに応じた。


被控訴人Bは,上記麻雀の際に缶ビールを飲んでいたが,本件車両を運転し,午前1時30分ころ被控訴人E宅に到着した。


被控訴人らは,当初どこへ行くかは必ずしも決めていなかったが,被控訴人Bが本件車両を運転し,札幌市a区所在のFという喫茶バー(以下Fという。
)に向かい,午前2時過ぎころ同店に入った。


被控訴人Bは,Fにおいて,少なくとも約350ミリリットル入りの中ジョッキでビールを2杯とバラライカというウォッカベースのカクテル1杯を飲み,被控訴人Eは,同じくビール3,4杯くらいとカクテル2杯を飲み,店の従業員にもビールをおごり,最終的にビール11杯とカクテル3杯を注文し,2時間ほど店に居た。


被控訴人らは,Fを出たが,被控訴人Bは酔っていることは感じていたが,被控訴人Eにおいても,被控訴人Bが酔っているようには見えず,運転のできない状態であるような状況は見受けられなかった。そして,Fから約14キロメートルほど離れ,自動車であれば20分程度の距離にある被控訴人Eの家まで,被控訴人Bは,被控訴人Eを助手席に同乗させて本件車両を運転し,被控訴人E宅に向かって江別市内の市道を時速約60キロメートルで走行中,午前4時50分ころ,本件事故の発生地点(衝突地点)
(以下本件事故地点という。
)の約87.7メートル手前からカー
オーディオのMDを取り替えようとしてコンソールボックスにあった数枚の中から特定のMDを探し始め,本件事故地点の約7.2メートル手前で自車の前方を同一方向に自転車で走行していた本件被害者を発見し,反対車線方向にハンドルを切ったものの間に合わず,自車左前部を本件被害者の自転車の後部に衝突させ,本件事故を起こした。その際,大きな音がした。
(甲4の2,16,乙イ3)
なお,本件被害者は,午前5時5分ころに通り掛かった者に発見されたが,ほぼ即死であった。
(甲4の1,10,11)


本件事故の現場は,幅員9.8メートルの片側1車線の市道で,最高速度時速40キロメートルの規制があり,b町方面からc町方面に向けた道
路の左側にJR函館本線が走り,右側には一般住宅が建ち並び,街路灯が整備されており,直線で見通しはよく,路面はアスファルトで舗装され,本件事故の発生当時は圧雪凍結された状態であり,道路の左右にも雪が堆積し,事故直前まで少し雪が降っており,道路上もうっすらと積もっていた。
(甲4の2,3,16,12,13,17から19まで,乙イ3)キ
本件事故後,被控訴人Bは,自転車を引きずったまま,その音を聞きながらもブレーキをかけずにそのまま本件車両を走行させ,本件事故の直後に目を覚ました被控訴人Eに対し,人をひいた旨を告げた。被控訴人Eは,本件事故の際,本件車両の助手席で眠っていたが,大きな音で目を覚まし,本件車両の前方で本件車両に何か引っかかっているような音がするのを聞き,また,被控訴人Bの言葉を聞いて,同人に対し,
戻った方がよい
と述べた。


被控訴人Bは,本件車両をUターンさせ,時速約10キロメートルで本件事故現場の道路を戻り,その途中で,本件事故地点から約101.6メートルの道路右側に倒れていた自転車及び約44.7メートル離れた道路右側に倒れていた本件被害者を発見し,動いている様子がないことを確認したが,本件車両を止めずに通過し,本件事故地点先の交差点で再度本件車両をUターンさせ,本件被害者の横を再度通り,通常の速度で被控訴人E宅に向かった。また,被控訴人Eも,最初に本件車両がUターンして本件事故の現場に戻ったときに,自転車が倒れていたことに気付き,さらに,本件被害者に気が付き,被控訴人Bが再度本件車両をUターンさせて被控訴人E宅に向かう際にも,戻った方が良い旨,被控訴人Bに進言していた。(甲4の2,乙イ3)
【事実認定の補足】
被控訴人Eは,本件事故発生時は寝ていたし,被控訴人Bが本件車両をUターンさせ,本件事故の現場にゆっくり戻る途中,自転車は見かけたが,
本件被害者は見なかったと主張し,その旨の供述調書(乙イ4)や法廷供述もある。
しかしながら,確かに被控訴人Eは,本件事故の直前まで半ば眠っていたから,直ちに覚せいできなかったとしても,被控訴人Eの供述によっても,寝ていた被控訴人Eが,衝撃音で起き,何があったかを被控訴人Bに尋ね,被控訴人Bから人をひいたことを聞かされていることが認められること,本件事故現場付近は,一定間隔で街路灯が設置されており,未明においてもある程度の明るさがあること,被控訴人らは,様子見のために本件事故現場に時速約10キロメートル程度のゆっくしたスピードで戻っていたのであり,被控訴人Bは,本件被害者が乗っていた自転車及び本件被害者を発見し,
本件被害者が動いている様子がないことまで見ていること,
本件事故の約15分後の午前5時5分ころに本件事故現場を通り掛かった者も本件被害者を発見していること,被控訴人Eも上記自転車は発見しており,辺りが暗くて見えなかったとか,雪が降り積もって本件被害者が隠されたなどの事情も考え難いこと,被控訴人Bが,捜査段階において,被控訴人Eの自宅に向かう途中に,被控訴人Eから戻った方がよいと言われたという,
自己に不利益とも思われることを供述していることを考えると,
被控訴人Eが,本件被害者に気が付かなかったという被控訴人Eの供述を信用することはできず,前記認定の状況からして,本件被害者に気が付いたと認められる。

被控訴人らは,午前5時ころ被控訴人E宅に到着し,明かりをつけずに本件車両を確認したところ,
本件車両の左側前部のライトが破損していた。
被控訴人Bは,その日,被控訴人E宅に泊まった。


被控訴人Bは,昼前には起き,再度本件車両を見たが,事故後に見た時より,破損がひどいと感じ,衝突の衝撃が予想以上に大きかったことを認識し,午後1時ころに起きてきた被控訴人Eに,本件被害者の生存につい
て否定的な発言をした。被控訴人Eは,自ら本件車両の状態を確認し,被控訴人Bに対して警察に行こうと勧めたりしたが,携帯電話のメールで友人を呼び出すなどした。被控訴人らは,その友人から,夕刊に高校生がひき逃げ事故で死亡した記事が掲載されていることを知った。

被控訴人Bは,その後,母親に電話で本件事故を伝え,警察に出頭しようとしたところ,捜査中の警察官により緊急逮捕された。
(乙イ2)

(2)

以上の事実に基づき,被控訴人Eの本件事故発生に対する責任について
検討する。
被控訴人Eは,被控訴人Bの運転する本件車両によりFに赴き,そこで同人とともに相当量のビール等を飲んだ上で,同人が飲酒運転となることを認識していながら,何ら制止等することなく,自宅に帰るため,被控訴人B運転の本件車両に同乗していたものであること,本件事故の原因は,前記認定のとおり,被控訴人Bが,本件車両のカーオーディオを操作するため,自車の前方に対する注意を怠った過失により,本件被害者の発見が遅れたことであると認められる。
控訴人らは,
被控訴人Bの飲酒量が,
被控訴人Bの供述等よりも多いとし,
控えめに見ても,相当のアルコール保有量になっていたことを前提として,本件事故と飲酒との因果関係について,酒酔い運転では,運転者の体内のアルコール量にかかわらず,酒の影響で正常な運転ができない場合には処罰されるし,酒気帯び運転では,運転者が,正常に運転ができるか否かにかかわらず,一定量以上のアルコールが呼気に含まれている状態で運転することで処罰されるのであり,これらは,アルコールによる影響を考慮したものであるところ,飲酒により,人間の認識力,注意力,判断力,視力等が低下するのであって,事故が発生した場合には,飲酒により,注意力等が一般的・全体的に低下し,それが事故発生に寄与していることを事実上推認すべきであり,本件事故と被控訴人Bの飲酒行為との間には因果関係が認められると主
張する。
しかしながら,交通事故の原因である過失と発生した結果との因果関係についても,通常の因果関係と同様に,相当因果関係が必要であるところ,控訴人らの主張するように,飲酒運転があった場合の交通事故について,飲酒があれば,それによる影響が当然事故の発生に寄与しているとするのは,いわば,過失と結果との間に条件関係があればよいとするにも等しくなるから相当とは言えない。また,運転者が飲酒した以上,発生したすべての結果について,
飲酒の影響があったと事実上推定することも相当でない。
一般的に,
飲酒の影響により,注意力等が低下することは認められるものの,その低下の程度は,飲酒量,飲酒者のアルコールに対する分解能力,飲酒前の空腹の度合い及び気候等によって異なるのであって,本件事故と飲酒との関係については,当該事故の態様や過失の内容に照らし,その有無を事実関係に即して具体的に判断した上で,飲酒運転が原因となって事故が発生したのかどうかを検討すべきである。
そこで検討するに,①まず,被控訴人Bの飲酒量や飲酒後の様子については,被控訴人Bが,上記(1)イ及びエで認定した以上の飲酒をしたことを認めるに足りる的確な証拠はなく,上記認定の酒量を前提としても,被控訴人らがFに入店してから本件事故まで2時間はあると考えられ,退店間際に全量の飲酒をしたのでない限りは,体内でのアルコール分解が一定程度は進んでいると考えられるところ,被控訴人Bが退店間際に全量の飲酒をしたことをうかがわせる証拠はなく,かえって,被控訴人Eは,被控訴人Bが,店を出る前ころはほとんど飲んでいなかったし,被控訴人Bが,Fを退店する際に,被控訴人Bが,酔っているようには見えず,運転のできない状態であるような状況は見受けられなかったと供述している。②また,被控訴人Bの過失の態様については,上記(1)オの認定のとおり,本件事故の原因となった被控訴人Bの直接の過失(本件事故と相当因果関係のある過失)は,被控訴
人BがMDを探すため,数秒間進路前方に対する注意を欠いたことである。そして,このような脇見運転自体は,飲酒と無関係に時折発生するものであるから,本件の脇見運転が,被控訴人Bの飲酒行為によって引き起こされたと認められるような特段の事情がない限り,飲酒によって引き起こされたとは認められないところ,確かに,被控訴人Bに飲酒の影響が全くなかったとは言えないとしても,飲酒により脇見運転をしたとする特段の事情を認めるに足りる証拠は見受けられない。したがって,①の状況をも併せ考えると,被控訴人Bが,
飲酒行為のために,
脇見運転を引き起したとまでは言えない。
そうすると,被控訴人Bの飲酒行為と本件事故の発生との間に,相当因果関係を認めることはできない。
なお,控訴人らは,同乗者の責任を肯定しているとしていくつかの裁判例等を掲げている。そして,その事案は,同乗者が運転者に飲酒を勧めたり,運転者が運転不適格である状況を知りながら漫然と運転を継続させたり,同乗者が運転者の運転を阻害するなどして,同乗者側に明らかな過失が認められるケースである。しかし,被控訴人Eは,被控訴人Bとともに飲酒をしてはいるものの,
当初は飲みに行くつもりで出掛けた訳ではなく上記(1)ウ)


被控訴人Bが酔っているようには見えず,運転に支障のある状態とは認識していなかった(上記(1)オ)
。さらに,被控訴人Eが,無理やりに被控訴人
Bに酒を勧めたり,本件車両への同乗を強要したり,被控訴人Bの運転を阻害するような行為をとっていたような状況被控訴人Eは,

本件事故時には,
半ば眠った状態であった。
)は証拠上うかがわれないのであるから,上記各
裁判例は本件とは事案を異にし,参考にならない。
よって,争点(1)のうち,本件事故の発生に対する被控訴人Eの責任に関する控訴人らの主張は理由がない。
(3)

本件事故後の行為についての被控訴人Eの責任について
上記(1)クのとおり,被控訴人Eは,本件事故の直後,その衝撃音など
で,本件事故が発生したことを認識したと認められる。

上記(1)クの事実認定によれば,被控訴人Eは,本件被害者が倒れているのを目撃したものと認められる。
ところで,控訴人らは,このような場合,被控訴人Eが,道路交通法72条1項所定のその他の乗務員に該当し,救護義務を負っていたと主張するが,同条項のその他の乗務員とは,運転者と同様に考えられる乗り合い自動車の車掌,ハイヤーやタクシーの助手などを指すから,単なる同乗者は含まれないと解され,被控訴人Eがこれに該当しないことは明らかである。
しかしながら,被控訴人らは,本件被害者が存在する可能性を考えて,わざわざ本件事故現場に戻る途中,本件被害者を発見できるように低速で走行した結果,本件被害者を発見した者らであり,真冬の北国の早朝に,雪の積もっている道路に負傷して倒れていると考えられる本件被害者を発見した以上は,直ちに救護しなければ,事故の傷害による生命の危険のみならず凍死の危険もあり,あるいは即死に近い形であっても,放置せずに何らかの措置をとるべく,援助依頼等をすべきだったのであり,被控訴人Bにおいて道路交通法上の救護義務があるのはもとより,条理上の救護義務,援助依頼等の義務が発生すると言うべきである。そしてこの理は,被控訴人Eが本件車両を運転していなかったとしても,何ら変わりはないと言うべきである。
そうすると,被控訴人Eは,本件事故後の対応において,被控訴人Bとともに,民法719条の共同不法行為責任を負うべきである。

2
争点(2)(本件事故による損害)について
損害額の認定については,以下のとおり改めるほか,原判決書の事実及び理由欄の第3争点に対する判断の

2引用する。争点(2)について

の記載を
(1)

原判決書16頁25行目冒頭から同17頁5行目末尾までを次のとおり
改める。
前記のとおり,被控訴人らの本件事故後の行動については,本件事故とは別の不法行為と評価することができるところ,本件被害者は,ほとんど即死の状態であったことから,救護の問題は生じないとも言える。しかしながら,仮に,救援依頼が結果として無意味であったとしても,被控訴人らが,義務を果たさなかったために,本件被害者は放置されたのであり,そのことにより,控訴人らは精神的苦痛を受けたと認めることができる。そして,控訴人らは,本件事故後,社会に対してひき逃げに対する罰則強化を訴え,街頭署名活動等を積極的に行うなどし(甲9,10,27),いまだその苦痛は癒されていないことがうかがわれる。そこで,本件被害者が,本件事故に遭遇してから発見されるまで15分程度であったこと,その他本件で認められる一切の事情を総合すると,被控訴人らは,連帯して,控訴人らそれぞれに対して慰謝料を支払うべきであり,その額は各150万円が相当である。なお,被控訴人Bは,附帯控訴をしていないので,原審における250万円の認定を不利益に変更することはできない。
(2)
原判決書17頁7行目冒頭から8行目末尾までを次のとおり改める。本件では,控訴人らの弁護士費用として,控訴人Aについては370万円が相当であるが,被控訴人Bについては,附帯控訴がないから,原審における380万円の認定を不利益に変更することはできない。また,控訴人Cについては355万円が相当であるが,被控訴人Bについては,附帯控訴がないから,原審における365万円の認定を不利益に変更することはできない。(3)


原判決書17頁10行目冒頭から14行目末尾までを次のとおり改める。よって,控訴人Aの損害は,本件被害者の相続分が3156万9087円
((4513万8174円+1800万円)×1/2)
,本件事故の固有の慰

謝料が250万円,葬祭費が150万円のほか,本件事故後の行為の慰謝料として150万円ただし,

被控訴人Bに対しては250万円請求できる。,

弁護士費用が370万円(ただし,被控訴人Bに対しては380万円請求できる。
)となる。そして,本件被害者の死亡原因が,本件事故にあると認められるから,本件被害者の死亡にかかる,本件被害者の相続分,葬祭費,本件事故にかかる固有の慰謝料は,被控訴人Bのみが負担し,本件事故後の行為の慰謝料は,被控訴人らの不真正連帯債務となり,弁護士費用の認容額は370万円が相当であるところ,被控訴人Bについては,原審認容額の380万円を負担すべきである。また,被控訴人Eの弁護士費用における寄与分は15万円とするのが相当であるところ,これについては被控訴人らが連帯して負担すべきであるから,15万円は被控訴人らが連帯して負担し,380万円から15万円を控除した365万円は被控訴人B1人が負担するのが相当である。
また,
控訴人Cの損害は,
本件被害者の相続分が3156万9087円(4

513万8174円+1800万円)×1/2)
,本件事故の固有の慰謝料
が250万円,本件事故後の行為の慰謝料として150万円(ただし,被控訴人Bに対しては250万円請求できる。,弁護士費用が355万円(た)
だし,被控訴人Bに対しては365万円請求できる。
)となる。そして,本
件事故後の行為の慰謝料は,被控訴人らの不真正連帯債務となり,控訴人Aと同様の理由から,弁護士費用の認容額は355万円が相当であるところ,被控訴人Bについては原審認容額である365万円を負担すべきであるが,被控訴人Eの寄与分にかかる15万円については被控訴人らが連帯して負担し,365万円から15万円を控除した350万円は被控訴人B1人が負担するのが相当である。
3
以上によれば,控訴人Aの請求は,①被控訴人らに対して連帯して165万円及びこれに対する不法行為の日である平成15年2月12日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による金員の支払,②被控訴人Bに対し,4021万9087円及びこれに対する不法行為の日である平成15年2月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,控訴人Cの請求は,①被控訴人らに対して連帯して165万円及びこれに対する不法行為の日である平成15年2月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払,②被控訴人Bに対し,3856万9087円及びこれに対する不法行為の日である平成15年2月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,これと異なる原判決は変更の必要があり,主文のとおり判決する。札幌高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官

末永
裁判官

千葉和則
裁判官

杉浦徳宏進
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