判例検索β > 平成17年(行コ)第248号
規則変更認証処分取消請求控訴事件(原審・水戸地方裁判所平成16年(行ウ)第10号)
事件番号平成17(行コ)248
事件名規則変更認証処分取消請求控訴事件(原審・水戸地方裁判所平成16年(行ウ)第10号)
裁判年月日平成18年6月28日
法廷名東京高等裁判所
判示事項1 宗教法人甲が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人乙が当該被包括関係を廃止し,規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項2号が規定する「その変更の手続が第26条の規定に従つてなされていること」という要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求が,棄却された事例 2 宗教法人「天理教」が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人甲が,当該被包括関係を廃止して名称を「天理教水京教会」とする旨規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項1号が規定する「その変更しようとする事項がこの法律その他の法令の規定に適合」しているとの要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求が,棄却された事例
裁判要旨1 宗教法人甲が,自己の被包括宗教法人であった宗教法人乙が当該被包括関係を廃止し,規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項2号が規定する「その変更の手続が第26条の規定に従つてなされていること」という要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求につき,宗教法人法18条1項,4項,19条,26条1項等の規定に照らすと,宗教法人乙の前記変更前の規則により要求されている責任役員全員の同意とは合議制の議決機関としての責任役員が,個々の責任役員全員の賛意(同意)の下に宗教法人としての意思を決定することを要すると解するのが相当であり,これとは別に個々の責任役員の個別の同意を要する趣旨とは解されず,個々の責任役員が賛意の表明を撤回するとの意思表示をしたとしても,前記規則変更の意思決定は変更することができないというべきであり,同申請に関わる事項は同法28条1項2号の要件を具備しているなどとして,前記請求を棄却した事例 2 宗教法人「天理教」の被包括宗教法人であった宗教法人甲が,当該被包括関係を廃止して名称を「天理教水京教会」とする旨規則を変更したことにつき,知事がした認証処分が,宗教法人法28条1項1号が規定する「その変更しようとする事項がこの法律その他の法令に適合」しているとの要件が具備されていないことを看過してされたもので違法であるなどとしてした前記処分の取消請求につき,同法28条1項1号の趣旨,目的は,宗教法人が設立にあたって同法14条1項2号の要件の具備の審査を経た規則を設立後に変更することで,法人格を付与される宗教団体としては適切でない程度に不備で法令に違反するような規則をもつ宗教法人の出現を排除することにあると解されるので,当該規則の法令適合性をすべての法令との関係で厳格に審査しなければならないとすると,所轄庁に対し,同法の趣旨,目的を超えた審査を要求することになるとした上,所轄庁には,宗教法人の名称と同一又は類似の名称を他の団体に使用されない利益の侵害の有無のような実質的審査をする権限も義務もなく,また,宗教儀礼の執行や教義の普及伝導活動等の本来的な宗教活動に関しては,営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提とするものではなく,不正競争防止法の対象とする競争秩序の維持を観念することができないものであるから,取引社会における事業活動と評価することはできず,同法の適用の対象外であると解するのが相当であり,前記申請に係る事項は宗教法人法28条1項1号の要件を具備しているなどとして,前記請求を棄却した事例
裁判日:西暦2006-06-28
情報公開日2017-10-19 19:40:07
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主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人が平成15年11月12日付け総指令第93号で行った宗教法人
Aα分教会の規則変更認証処分を取り消す。
第2
1
事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う。)
本件は,被控訴人訴訟参加人(参加人。当時の名称Aα分教会)が,そ
の包括宗教法人であった控訴人との包括関係を廃止し,名称及び法人規則(本件規則)を変更したことに関し,控訴人が,本件規則の変更を認証する旨の本件処分をした被控訴人に対し,本件規則の変更は,①

参加人の責任役員全員及びA甲府大

教会代表役員のいずれの同意もなくして行われたから,宗教法人法28条1項2号の手続要件に違反し,②

参加人が控訴人との被包括関係廃止後も名称の一部に控

訴人の名称を使用することは,控訴人の人格権を侵害し,また,不正競争防止法2条1項1号,2号に違反するから,宗教法人法28条1項1号の法令適合性の要件を欠いており,これらを看過してされた本件処分は違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。
2
原審は,控訴人の請求を棄却した。

当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求を棄却すべきものと判断した。3
前提事実及び当事者の主張は,原判決の事実及び理由の第2の1実及び2前提事当事者の主張(原判決2頁3行目から16頁13行目まで)に記
載のとおりであるから,これを引用する。
第3

当裁判所の判断

当裁判所の判断は,次のとおり改めるほかは,原判決の事実及び理由の第3当裁判所の判断1から3まで(原判決16頁15行目から25頁7行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1
原判決18頁10行目から20頁3行目の

文面上明らかである。

までを,
次のとおり改める。
①宗教法人法は,宗教法人には,3人以上の責任役員を置き,そのうち1人を代表役員とする(18条1項),責任役員は,規則で定めるところにより,宗教法人の事務を決定する(同条4項),規則に別段の定めがなければ,宗教法人の事務は,責任役員の定数の過半数で決し,その責任役員の議決権は,各々平等とする(19条)と定める。これらの規定によれば,「議決が予定されているところからみて,個々の責任役員は,合議体の構成員として,事務に関して宗教法人の意思決定に関与することが宗教法人法の予定するところであり,責任役員は,全体として,宗教法人の合議制の議決機関として,その権能と職責を有するというべきである。


宗教法人法26条1項前段が,宗教法人は,規則を変更しようとするときは,
規則で定めるところによりその変更のための手続をしなければならないと定めているのは,規則変更に関する宗教法人の意思決定手続を経ていることを要求するものであり,同法27条が,規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類(同条1号)の添付を義務づけているのは,所轄庁が,当該書類によって,上記意思決定がされていることを確認,審査するためであると解される。③

宗教法人法の前記規定に照らすと,参加人の本件旧規則28条1項のこの規則を変更しようとするときは,責任役員全員・・・の同意を得なければならないとする定めは,同法19条にいう別段の定めに当たり,参加人の規則を変更するには,合議制の議決機関としての責任役員が,個々の責任役員全員の賛意(同意)の下に宗教法人としての意思を決定することを要すると解するのが相当であり,これとは別に,個々の責任役員の個別の同意を要するとする趣旨ではないと解される。


本件認証申請に際し,参加人が被控訴人に提出した規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類である本件会議録(甲5号証)によれば,本件規則の変更につき,個々の責任役員全員の賛意(同意)により,参加人の合議制の議決機関としての責任役員において,規則変更に係る同意の議決がされ,当該同意の下に参加人の意思として,本件規則を変更することが決定されたことが文面上明らかである。」
2
原判決24頁15行目から25頁4行目までを,次のとおり改める。
また,不正競争防止法違反の主張についてみるに,不正競争防止法は,営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提に,経済活動を行う事業者間の競争が自由競争の範囲を逸脱して濫用的に行われ,あるいは,社会全体の公正な競争秩序を破壊するものである場合に,これを不正競争として防止しようとするものにほかならないと解される。そうすると,同法の適用は,上記のような意味での競争秩序を維持すべき分野に広く認める必要があり,社会通念上営利事業といえないものであるからといって,当然に同法の適用を免れるものではないが,他方,そもそも取引社会における事業活動と評価することができないようなものについてまで,同法による規律が及ぶものではないというべきである。これを宗教法人の活動についてみるに,宗教儀礼の執行や教義の普及伝道活動等の本来的な宗教活動に関しては,営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提とするものではなく,不正競争防止法の対象とする競争秩序の維持を観念することはできないものであるから,取引社会における事業活動と評価することはできず,同法の適用の対象外であると解するのが相当である。また,それ自体を取り上げれば収益事業と認められるものであっても,教義の普及伝道のために行われる出版,講演等本来的な宗教活動と密接不可分の関係にあると認められる事業についても,本来的な宗教活動と切り離してこれと別異に取り扱うことは適切でないから,同法の適用の対象外であると解するのが相当である(最高裁平成17年(受)第575号同18年1月20日第二小法廷判決参照)。そうすると,宗教法人の宗教活動も不正競争防止法の「営業に含まれることを前提に,Aα教会という名称を使用することが同法に違反し,違法であるとの控訴人の主張は,理由がない。」
第4

結論

以上によれば,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部

裁判長裁判官

江見弘武
裁判官

生野考司
裁判官

植垣勝

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