判例検索β > 平成17年(行コ)第138号
農林漁業金融公庫の情報不開示決定に対する取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第83号)
事件番号平成17(行コ)138
事件名農林漁業金融公庫の情報不開示決定に対する取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第83号)
裁判年月日平成17年11月9日
法廷名東京高等裁判所
判示事項1 金融機関である独立行政法人の顧客である株式会社に対する貸付けに係る「貸付決定票」,「貸付決定通知書」,「担保明細」,「実行前貸付条件変更入力済確認票」及び「実行未了案件現在利率一覧表」に記録された情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条2号イの不開示情報に該当するとされた事例 2 金融機関である独立行政法人の顧客である株式会社に対する貸付けに係る「貸付決定票」,「貸付決定通知書」,「担保明細」,「実行前貸付条件変更入力済確認票」及び「実行未了案件現在利率一覧表」に記録された情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条4号トの不開示情報に該当するとされた事例
裁判要旨1 金融機関である独立行政法人の顧客である株式会社に対する貸付けに係る「貸付決定票」,「貸付決定通知書」,「担保明細」,「実行前貸付条件変更入力済確認票」及び「実行未了案件現在利率一覧表」に記録された情報につき,前記各文書の記載内容を公にすることにより,当該会社と競争関係にある企業は,当該会社が投資計画を立てた時期,実際に投資を行う時期,投資内容,借入金への依存度,調達コスト,当該会社の償還能力,資金調達能力及び当該会社に対する独立行政法人の評価の程度等を推定することが可能となり,ひいては,これらの情報を総合し,あるいは公表されている有価証券報告書等の情報を併せ考慮することにより,当該会社の企業戦略,投資性向,資金繰り,資金調達能力等,当該会社の経営状況を相当程度推定することが可能となるから,当該会社の競争上の地位を害されるおそれが生じると認められ,また,他の金融機関は,担保を含めた独立行政法人の貸付条件が分かれば,これを一つの基準として当該会社と融資に関する交渉等を進める可能性があるから,当該会社の正当な利益を害されるおそれが生じると認められるとして,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条2号イの不開示事由に該当するとした事例 2 金融機関である独立行政法人の顧客である株式会社に対する貸付けに係る「貸付決定票」,「貸付決定通知書」,「担保明細」,「実行前貸付条件変更入力済確認票」及び「実行未了案件現在利率一覧表」に記録された情報につき,融資を受ける企業は,外部に知られていない当該企業の経営状況に関する情報を金融機関が他に漏らすことはないという信頼関係の下に,金融機関に必要な情報提供をしているのであるから,仮に独立行政法人が前記各文書を開示した場合には,当該会社との信頼関係は破壊され,独立行政法人にとって今後の債権管理や貸付審査に必要な情報の入手が困難になったり,あるいは当該会社が独立行政法人からの借入を回避する事態が生じるおそれがあると認められ,また,独立行政法人が前記各文書を開示したこと,あるいはこれにより独立行政法人と当該会社との信頼関係が破壊されたことが他に伝われば,独立行政法人の潜在的な顧客との取引にも悪影響を及ぼすと認められるとして,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条4号トの不開示情報に該当するとした事例
裁判日:西暦2005-11-09
情報公開日2017-10-19 19:58:23
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主文1
本件控訴を棄却する

2
控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
被控訴人が,控訴人に対し,平成15年6月17日付でした平成9年度から
平成13年度までのA株式会社に対する貸付けに係る貸付決定票,貸付決定通知書,担保明細,実行未了案件現在利率一覧表及び実行前貸付条件変更入力済確認票を不開示とする決定を取り消す。
第2
1
事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う。)
本件は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法
律第51号による改正前のもの。本法)に基づき,控訴人が行った控訴の趣旨2記載の法人文書の開示請求に対し,被控訴人がこれを不開示とする旨の決定をしたため,控訴人が被控訴人に対し,同決定の取消しを求める事案である。2
原審は,控訴人が開示を求める本件各文書には,いずれも本法5条2号イに
掲げる不開示情報が記録されているなどとして,控訴人の請求を棄却した。当裁判所も,控訴人の請求を棄却すべきものと判断した。
3
法令の定め,前提となる事実,当事者の主張及び争点は,原判決の事実及び
理由の第2事案の概要1から4まで(原判決2頁2行目から同9頁20行目
まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3
1
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求は,理由がないと判断する。その理由は,原判決
の事実及び理由の第3争点に対する判断1から3まで(原判決9頁22行目
から同13頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。2
控訴人は,当審において,本件各文書に本法5条4号柱書及びトに掲げる不開示情報が記載されているか否かの点につき,①訴外会社に対する貸付けは,農林漁業金融公庫法1条2項に規定する目的を逸脱し,大企業に対して緩やかな貸付条件で多額の融資をした,②訴外会社は,125期及び126期のいずれにおいても,被控訴人に対して105億円の担保しか提供しておらず,これは200億円を超える融資残高の半分にすぎないことから,訴外会社に対する貸付けは,不適切で異常かつ違法であるから,被控訴人には,本法5条4号柱書の当該事務又は事業の適正な遂行も同号トの企業経営上の正当な利益というものは存在しない旨主張する。
しかし,①については,農林漁業金融公庫法1条2項は,農林漁業金融公庫は、前項に記載するもののほか、食品の製造、加工又は流通の事業を営む者に対し、食品の安定供給の確保に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。としており,その文言上,いわゆる大企業に対する融資を禁じていると解釈することはできない。また,②については,確かに,訴外会社の有価証券報告書(第126期。甲28)には,126期注記事項(貸借対照表関係)として,農林漁業金融公庫からの長期借入金の担保のため有形固定資産のうち建物,土地(約26億円)等約143億円に抵当権を設定している旨の記載があり,125期の注記事項にもほぼ同様の記載がある(担保としての提供資産額は約156億円)。しかし,商法施行規則(平成17年法務省令第4号による改正前のもの)29条により,株式会社において貸借対照表上に記載すべき土地の評価額は,取得価額を付することが認められていたのであり,訴外会社の貸借対照表上の土地の評価額は必ずしも時価と一致しておらず,時価が同評価額を大幅に上回っている可能性も否定できない。また,訴外会社の有価証券報告書における貸借対照表関係の特記事項に記載されているのは,訴外会社の所有に係る担保提供資産であり,関連企業あるいは第三者が担保提供したものが記載されるわけではない。したがって,上記記載の存在をもって,直ちに,担保として提供された資産の額が貸付金額を著しく下回っていたと認めることはできない。
控訴人は,当審において,その他,本件各文書に記録されている情報が本法5条2号イ,4号柱書及びトに掲げる不開示情報に該当しないなど縷々主張するが,いずれも原審においてした主張を繰り返すものであり,いずれも採用できないことは既に説示したとおりである。
3
第4

よって,控訴人の請求は,理由がない。
結論

以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部

裁判長裁判官

江見弘武
裁判官

植垣勝裕
裁判官

村田斉

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