判例検索β > 平成17年(わ)第1317号
強盗予備、銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗被告事件
事件番号平成17(わ)1317
事件名強盗予備,銃砲刀剣類所持等取締法違反,強盗被告事件
裁判年月日平成18年2月6日
裁判所名・部神戸地方裁判所  第4刑事部
判示事項の要旨不法領得の意思否認(排斥)
裁判日:西暦2006-02-06
情報公開日2017-10-13 01:40:12
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主文
被告人を懲役5年に処する
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1

コンビニエンスストアから金品を強取しようと企て,平成17年4月13日午前1
時17分ころ,神戸市中央区a町b番地cビル1階所在のd店において,同店店員A(当時31歳)に対し,文化包丁1丁(刃体の長さ約14.7センチメートル・平成17年領第2423号符号1)を突きつけ,「金を出せ。」などと告げて脅迫し,同人の反抗を抑圧して,同店経営者Bの所有する現金約6万6600円及び整髪料1本(物品時価630円相当)を強取した。
第2

業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第1記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
第3

コンビニエンスストアから金員を強取しようと企て,同月19日午前1時27分こ
ろ,神戸市灘区e通f丁目g番h号i1階所在のj店において,同店店員C(当時35歳)に対し,前記文化包丁1丁を突きつけ,「金を出せ。」などと告げて脅迫し,同人の反抗を抑圧して,同店店長Dの管理する現金約12万2000円を強取した。第4

業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第3記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
第5

コンビニエンスストアから金員を強取しようと企て,同年8月15日午前3時12
分ころ,神戸市中央区k町l番地m1階所在のo店において,同店店員E(当時20歳)に対し,前記文化包丁1丁を突きつけ,「動くな。」などと告げて脅迫し,同人の反抗を抑圧して,同店経営者Fの所有する現金合計約15万2000円を強取した。第6

業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第5記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。

第7

コンビニエンスストアから金員を強取する目的で,平成17年10月17日午前2時
25分ころ,前記文化包丁1丁を携え,神戸市中央区p町q番地のr所在のs店に入店して,金品強取の機をうかがい,もって強盗の予備をした。
第8

業務その他正当な理由による場合でないのに,前記第7記載の日時場所におい
て,前記文化包丁1丁を携帯した。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
判示第1の事実のうち整髪料(以下本件整髪料という。)を強取した点に関し,被告人は,当公判廷において,整髪料は強盗するつもりはなかったと供述し,弁護人も,整髪料については,被告人に不法領得の意思がなく,強盗罪は成立しない旨主張する。
しかしながら,以下の理由により,本件整髪料についても不法領得の意思が認められ,弁護人の主張は採用できない。
すなわち,関係各証拠によれば,被告人は,判示第1の日時場所において現金約6万6600円を強取するにあたり,店内の商品陳列棚から本件整髪料を手に取ってレジまで持って行き,レジで代金の精算をしようとした店員に対し,包丁を突きつけてその反抗を抑圧した上,レジから上記現金を奪うとともに,レジカウンター上に置いていた本件整髪料をつかんでズボンのポケットに入れ,そのまま店を出た事実が認められ,これによれば,被告人が,本件整髪料についても,店員の反抗を抑圧し,その意思に反してこれを持ち出すことを認識していたことは明らかであって,強盗の故意はこれを優に認めることができる。
被告人は,公判廷において,

店から整髪料を持ち出したのは無意識です。

などと述べているところ,それが上記認識を否定する趣旨であるとすれば,上記の経過に照らして到底信用することはできない。
もっとも,上記供述が,強盗行為を遂行中の緊迫した状況下にあったことなどの
理由から,本件整髪料を持ち出した後,これをどうするかについて,明確な意図を有していなかったという趣旨であれば,あながち不合理とは言えないし,被告人が上記強盗現場から車で逃走中これを投げ捨てていることからすると,被告人が本件整髪料を整髪のために自ら使用し,または,第三者をして使用させるためにこれを譲渡する明確な意図を有していたとは認め難い。
しかし他方,被告人は,公判廷において,

整髪料を持ったとき,後で捨てようとか,隠そうとか思ったわけではない。

と述べており,本件整髪料を店から持ち出した当時,その価値を自ら享受し又は第三者に享受させることなくこれを廃棄・隠匿する意図を有していなかったことも明らかであるところ,そうであれば,被告人は,本件整髪料を持ち出すにあたって,その権利者を完全に排除して,たとえ短時間であっても自ら本件整髪料を所持することについて,漠然とではあっても何らかの効用・効果を見込んでいたものと認めるべきであり,強盗罪における不法領得の意思としては,そのような心理状態で足りるものと解するのが相当である。(法令の適用)
被告人の判示第1,第3,第5の各行為はいずれも刑法236条1項に,判示第2,第4,第6,第8の各行為はいずれも銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条に,判示第7の行為は刑法237条に該当するが,判示第2,第4,第6,第8の各罪について所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役5年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は,深夜のコンビニエンスストアで店員に文化包丁を突きつけて現金等を強取し又は強取を目論んでその準備をしたという強盗3件,強盗予備1件及びこれらに伴う銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。

被告人は,借金の返済に窮して本件犯行に及んだものであるが,その借金の原因に特に同情すべき点はなく,結局,本件は自己中心的で短絡的な犯行というほかない。
態様も刃物を用いた危険かつ悪質なものである上,このような凶悪な強盗行為を3回も重ねた上,さらに同様の犯行に及ぶことを企図していたのであって,この種犯行の常習性さえうかがわせる。
また,強取した現金額は合計約34万円余りと少なくない上,包丁を突きつけられた店員らの受けた恐怖感は大きく,被害者らの処罰感情には一部を除きなお厳しいものがある。
以上の諸点に照らせば,被告人の犯情は悪く,その刑事責任は重大である。しかし他方,被告人が借金の返済について内妻に迷惑をかけまいとして,思い詰めた末,本件犯行に及んだ経緯がうかがわれること,財産的損害については各被害店に対して弁償がなされており,さらに,被告人は,各被害店に対し,弁護人を通じて謝罪の手紙を送付して精神的被害についても慰謝の努力をしようとしていること,また,被告人はおおむね犯行を認めており,反省の情を示していること,被告人の前科は平成元年に業務上過失傷害罪で受けた罰金のみであること,被告人の内妻が,被告人の帰りを待ち,社会復帰後の被告人の監督を誓約していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
そこで,以上の諸情状を総合考慮し,主文の刑を定めた。
(求刑

懲役7年)

(検察官大原裕吉

出席)

平成18年2月6日
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判官

佐茂


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