判例検索β > 昭和30年(う)第21号
公職選挙法違反被告事件
事件番号昭和30(う)21
事件名公職選挙法違反被告事件
裁判年月日昭和30年5月30日
法廷名広島高等裁判所  松江支部
結果棄却
判例集等巻・号・頁第8巻4号578頁
判示事項一、 多数の選挙人あるいは選挙運動者を同一の機会に饗応する行為と罪数
二、 右行為を包括一罪と認める場合における判示方法
裁判要旨一、 公職の候補者が当選を得る目的を以て、多数の選挙人あるいは選挙運動者を同一の日時、場所において、酒食の方法により饗応する行為は、包括一罪を以て論ずべきものである。
二、 包括一罪と認定した公職選挙法第二二一条第一項第一号に該当する饗応の罪を判示するには、その犯罪の日時、場所および饗応の内容を明らかにする外、被饗応者の氏名としてその中一名のものを掲げた上、同人等約何名と判示するを以て足り、必ずしも被饗応者の各人につき、逐一その氏名を掲げることを要しない。
裁判日:西暦1955-05-30
情報公開日2017-10-13 01:58:10
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主 文
本件控訴を棄却する
理 由
弁護人大脇英夫の控訴の趣意は記録編綴の昭和三〇年二月二八日附控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
第一点について。
原判決が本件犯罪事実中第一の(一)及び(二)の摘示として、被饗応者につきそれぞれ所論摘録の如く判示したことは、所論のとおりである。併しながら、原審においては、右(一)のA等約二〇名及び(二)のB等約一〇名に対する各饗応の行為をそれぞれ包括的に公職選挙法第二二一条第一項第一号違反の各一罪と認めた上、右第一の(一)(二)の両罪と第二の罪とが刑法第四五条前段併合罪の関係に在るものとして相当法条を適用したものであり、決して被饗応者各一人毎につきそれぞれ独立の犯罪が成立するものと認めたものでないことは、原判決の判文に照し明白である。ところで、訴訟記録及び原裁判所が取調べた証拠を精査するに、原判決挙示の証拠により、原判示第一の(一)及び(二)の如く被告人から饗応を受けた者がいずれも選挙人であり、又同人等が何人であるかの点を断ずるに難くない。而して、C及びDと被告人とがそれぞれ所論の如き身分関係に在ることが窺われるけれども、右両名も亦選挙人或いは選挙運動者の一員として参集したものであること<要旨第一>は、諸般の証拠によつて明らかである。抑も、本件の如く公職の候補者が当選を得る目的を以て多数の選挙人或いは選挙運動者を同一の日時、場所において、酒食の方法により饗応する行為は包括一罪を以て論ずべきも<要旨第二>のであるから、原判決が被饗応者の各人につき逐一その氏名を掲げることなく、所論摘録の如く、被饗応者の氏名としてその中一名のものを掲げた上、同人等約何名と判示するに止めたとて、包括一罪を構成すべき罪となる事実の摘示としては、毫も欠けるところはないといわなければならない。原判決には所論の如き理由のくいちがいその他何等違法と認めるべき点を発見することができないから、論旨は採用の限りでない。
第二点について。
被告人が当初立候補を一応辞退していたこと、而して原判示第一の(一)記載の日時、場所にA等約二〇名が参集したのは、被告人自らが招集したものでないことは、所論のとおりであるけれども、被告人において、原審相被告人E等が原判示の如き趣旨で饗応せんがため酒食を準備せる事情を熟知しながらこれを制止しないで放置した儘、自ら列席して原判示の如き依頼をしたことは、諸般の証拠によつて認めることができる。然らば、被告人としては到底共謀による饗応者としての責任を免れることはできないものといわざるを得ない。原判決には原審が所論の如き事実の誤認を犯した形跡は毫も発見することができないから、論旨は採用の限りでない。
なお、本件犯罪の動機、態様、共犯関係における地位、被告人の経歴等諸般の事情を考量するとき、原審の刑はまことに相当であつて、又、公職選挙法第二五二条第三項による措置も亦極めて妥当であるということができる。
ちなみに原判決が法令の適用を示すに当り、原判示第一の(一)(二)の各罪につきいずれも所定刑中罰金刑を選択した上、これと原判示第二の罪とが刑法第四五条前段併合罪の関係に在るものとして

同法第四八条第二項、第一〇条に従い犯情の重いと認められる判示第一の(一)の罪について定めた刑に法定の加重をなし云々

と説示したのは、原審が併合罪の処分に関し自由刑と財産刑の両者につき刑法上取扱を異にすることを理解せざるによる過誤に出でたものであることが窺われるけれども、原審の刑は、原判示各罪につき定めた罰金の合算額範囲内において処断したものであるから、結局、右瑕疵はこれを以て判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤となし難い。
よつて、刑事訴訟法第三九六条により、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 岡田建治 裁判官 組原政男 裁判官 黒川四海)
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