判例検索β > 昭和26年(う)第623号
封印破棄被告事件
事件番号昭和26(う)623
事件名封印破棄被告事件
裁判年月日昭和27年8月30日
法廷名高松高等裁判所
結果棄却
判例集等巻・号・頁第5巻10号1612頁
判示事項一、 皿鉢に対する差押の標示方法
二、 債務者以外の第三者の所有物件に対する差押と封印破棄罪の成否
裁判要旨一、 執行吏が有体動産の差押をするに際して、皿鉢二二枚について各皿鉢に封印するのを不適当と認め、債務者立会の上、封印用用紙に皿鉢二二枚と記入してこれを台所の見えやすい箇所にはりつけたときは、皿鉢の一枚一枚に封印がなされなかつたとして、有効な差押の標示がされたものということができる。
二、 債務者以外の第三者の所有物件であつても、執行吏が債務者の所有に属するものと判定して差押がされた以上、右差押は一応有効であつて、これが封印または差押の標示を無効ならしめる行為は、刑法第九六条の罪を構成する。
裁判日:西暦1952-08-30
情報公開日2017-10-13 01:59:51
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主 文
本件控訴を棄却する
理 由
弁護人中沢良一の控訴趣意は別紙記載の通りである。
控訴趣意第一点について。
論旨は本件皿鉢二十二枚については差押の標示がなされていなかつたのに拘らず原審が右皿鉢についても差押の標示がなされていたものと認定したのは誤認であると主張する。しかし原判決が証拠として掲げる証人<要旨第一>Aの原審公判廷における証言(原審第三回公判調書参照)に徴すれば同証人は執行吏として被告人の有体動産に対する差押をなすに際し本件皿鉢二十二枚については各皿鉢に封印をするのは不適当と認め被告人立会の上封印用用紙に皿鉢二十二枚と記入してこれを被告人方台所の見え易い箇所に貼りつけて以て差押の標示をした真実を認めることができ、皿鉢の一枚一枚に封印がなされなかつたとしても右の如き方法が採られた以上本件皿鉢二十二枚につき差押の標示がなされたものと見なければならない。従で原判決が本件各皿鉢につき差押の標示があつたものと認定したのは相当であり、原審が取調べた各証拠を検討しても原判決に所論の如き事実誤認又は審理不尽の点は認められない。従て論旨は理由がない。
同第二点について。
論旨は仮に差押の標示がなされていたとしても本件皿鉢及び大型水屋は第三者の所有物であり執行吏はその<要旨第二>情を知つて差押をしたものであるからかかる差押は無効であると主張する。仍て原審が取調べた各証拠を検討して判断するに本件大型水屋一個及び皿鉢二十二枚はBの所有物であつて被告人は当時右Bよりこれ等を借用していたものであることを窺い得るけれども、執行吏であるAは右水屋及び皿鉢も債務者である被告人の所有に属するものと判定して本件差押をしたものであること明かであり(前掲証人Aの証言参照)右各物件が第三者の所有物件であつたとしても差押の効力は一応有効に生じたものと謂わなければならない。本件各証拠に徴するも右A執行吏が右各物件が第三者の所有物件であることを知りながら差押をしたものとは到底認められない。然らば右差押のなされた原判示各物件につき被告人がこれを他へ搬出して封印又は差押の標示を無効ならしめる行為をした以上被告人は刑法第九十六条の罪責を免れることはできない。原判決の認定及び法律の適用は相当であつて論旨は理由がない。
第三点について。
論旨は本件につき被告人は犯意がなかつたものであると主張する。 しかし原判決挙示の各証拠を綜合すれば被告人は原判示各物件につき封印又は差押の標示がなされていることを知りながちこれを搬出したこと明かでおり、所論の如く被告人に本件犯意がなかつたものとは到底認められない。又仮りに当時債権者との間に示談が成立していたとしても差押が適法に解除されていない限り被告人の行為は刑法第九十六条の罪を構成すること言う迄もなく、論旨は採用できない。 仍て本件控訴は理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条により主文の通り判決する。
(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)
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